説明

裏面電極型太陽電池の製造方法、裏面電極型太陽電池および裏面電極型太陽電池モジュール

【課題】工数を低減して、効率的に製造することが可能な裏面電極型太陽電池、裏面電極型太陽電池の製造方法、および裏面電極型太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】シリコン基板4の受光面に、シリコン基板4の導電型と同じ導電型になるような不純物を含む化合物、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む溶液を塗布し熱処理することにより受光面拡散層6と反射防止膜7とを形成する工程と、シリコン基板4の受光面に熱処理により受光面パッシベーション膜8を形成する工程とを有する裏面電極型太陽電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型太陽電池の製造方法、裏面電極型太陽電池および裏面電極型太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギを直接電気エネルギに変換する太陽電池は、近年、特に地球環境問題の観点から、次世代のエネルギ源としての期待が急激に高まっている。太陽電池としては、化合物半導体または有機材料を用いたものなど様々な種類があるが、現在、主流となっているのは、シリコン結晶を用いたものである。
【0003】
現在、最も多く製造および販売されている太陽電池は、太陽光が入射する側の面(受光面)と、受光面の反対側である面(裏面)とに電極が形成された構造のものである。
【0004】
受光面に電極を形成した場合、電極の吸収があることから、形成された電極の面積分だけ入射する太陽光が減少するので、裏面にのみ電極を形成した裏面電極型太陽電池が開発されている。
【0005】
図9は、特許文献1に開示されている従来の裏面電極型太陽電池の断面を表す模式図である。以下に、従来の裏面電極型太陽電池101について説明する。
【0006】
n型シリコンウェーハ104の受光面側には凹凸形状105が形成され、n型前面側拡散領域106であるFSF(Front Surface Field)層が形成されている。そして、凹凸形状105上には、n型シリコンウェーハ104側から、二酸化ケイ素を含む誘電性パッシベーション層108、窒化シリコンを含む反射防止コーティング107が形成されている。
【0007】
また、n型シリコンウェーハ104の裏面には酸化物層109が形成されている。さらに、n型シリコンウェーハ104の裏面側にはn型ドープされた(n)領域110とp型ドープされた(p)領域111とが交互に形成されている。そして、n領域110にはn型用金属コンタクト102が形成されており、p領域111にはp型用金属コンタクト103が形成されている。
【0008】
次に、裏面電極型太陽電池101の受光面側の形成方法を示す。n型シリコンウェーハ104の受光面となる面にエッチングによる凹凸形状105を形成後、拡散によりn型前面側拡散領域106を形成し、その後、高温酸化による二酸化シリコンの誘電性パッシベーション層108形成し、プラズマ化学気相成長法(PECVD)による窒化シリコンの反射防止コーティング107を形成する。
【0009】
また、裏面電極型太陽電池101の裏面側の形成方法を示す。n型シリコンウェーハ104の受光面となる面と反対の面側である裏面に、n型ドープされた(n)領域110とp型ドープされた(p)領域111とを形成し、その後、裏面電極型太陽電池101の裏面側に酸化物層109を形成する。次に、酸化物層109にパターン形成し、n型用金属コンタクト102とp型用金属コンタクト103とを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2008−532311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のFSF層をもつ裏面電極型太陽電池の受光面側の製造方法では、n型シリコンウェーハの受光面に凹凸形状を形成後、拡散によるn型前面側拡散領域を形成し、その後、誘電性パッシベーション層を形成し、さらに、反射防止コーティングを形成しているため、工程数が多く、裏面電極型太陽電池を効率的に製造することができなかった。
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、工程数を低減して、効率的に製造することが可能な裏面電極型太陽電池および裏面電極型太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池の製造方法において、シリコン基板の受光面に、シリコン基板の導電型と同じ導電型になるような不純物を含む化合物、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む溶液を塗布し熱処理することにより受光面拡散層と反射防止膜とを形成する工程と、シリコン基板の受光面に熱処理により受光面パッシベーション膜を形成する工程とを有する裏面電極型太陽電池の製造方法である。
【0014】
ここで、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面パッシベーション膜が酸化シリコンであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面パッシベーション膜を形成する工程において、シリコン基板の裏面に裏面パッシベーション膜を同時に形成することが好ましい。
【0016】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面拡散層のシート抵抗が、30〜100Ω/□であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面パッシベーション膜の膜厚が、30nm〜200nmであることが好ましい。
【0018】
本発明は、シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池において、シリコン基板の受光面側に形成されたシリコン基板の導電型と同じ導電型で不純物濃度がシリコン基板よりも高い濃度である受光面拡散層と、受光面拡散層の受光面上に形成された受光面パッシベーション膜と、受光面パッシベーション膜の受光面上に形成されたシリコン基板の導電型と同じ導電型の不純物を含む酸化チタンである反射防止膜とを有する裏面電極型太陽電池である。
【0019】
本発明は、シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池において、シリコン基板の受光面側に形成されたシリコン基板の導電型と同じ導電型で不純物濃度がシリコン基板よりも高い濃度である受光面拡散層と、受光面拡散層の受光面上に形成された受光面パッシベーション膜と、受光面パッシベーション膜の受光面上の一部に形成されたシリコン基板の導電型と同じ導電型の不純物を含む酸化チタンである反射防止膜とを有する裏面電極型太陽電池である。
【0020】
ここで、本発明の裏面電極型太陽電池において、反射防止膜に含まれる不純物がn型不純物であり、n型不純物はリン酸化物として15wt%〜35wt%含有することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上記の裏面電極型太陽電池が複数配置された裏面電極型太陽電池モジュールであって、裏面電極型太陽電池の受光面側に、封止樹脂、ガラスを順次有する裏面電極型太陽電池モジュールである。
【0022】
ここで、本発明の裏面電極型太陽電池モジュールにおいて、封止樹脂が、EVA(エチレンビニルアセテート)、シリコーン樹脂、ポリオレフフィン樹脂のいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む溶液に、裏面電極型太陽電池に用いられるシリコン基板の導電型と同じ導電型になるような不純物を含む化合物を含めることで、反射防止膜とFSF層である受光面拡散層を形成することができるため、工程数を低減して、効率的に製造することが可能な裏面電極型太陽電池および裏面電極型太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の裏面電極型太陽電池の一例の模式的な裏面図である。
【図2】本発明の裏面電極型太陽電池の一例の模式的な断面構成図である。
【図3】本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を示す模式的な図である。
【図4】本発明の裏面電極型太陽電池の他の一例の模式的な断面構成図である。
【図5】本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の他の一例を示す模式的な図である。
【図6】本発明の裏面電極型太陽電池の一例の受光面の表面反射率と従来技術の裏面電極型太陽電池の一例の受光面の表面反射率とを示す図である。
【図7】(a)は本発明の裏面電極型太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。(b)は従来技術の裏面電極型太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図8】本発明の裏面電極型太陽電池モジュールの一例の受光面の表面反射率と従来技術の裏面電極型太陽電池モジュールの一例の受光面の表面反射率とを示す図である。
【図9】従来技術の裏面電極型太陽電池の一例の模式的な断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図1、図2は、本発明の裏面電極型太陽電池を表す図である。図1は、裏面電極型太陽電池1の受光面とは反対側の面である裏面側から見た図であり、裏面電極型太陽電池1の裏面には、n型用電極2およびp型用電極3がそれぞれ帯状に交互に形成されている。
【0026】
図2は、図1で示したa−a′の断面を表す図である。n型シリコン基板4の受光面側には凹凸形状5が形成されている。受光面側全面には受光面拡散層6であるn層がFSF層として形成され、受光面拡散層6の受光面側には受光面パッシベーション膜8が形成されている。さらに、受光面側には反射防止膜7が形成されている。ここで、受光面パッシベーション膜8は酸化シリコン膜で、その膜厚は30nm〜200nmであり、裏面電極型太陽電池特性として30nm以上が好ましい。また、反射防止膜7は酸化チタン膜で、膜厚は、0〜500nm、リンが含まれており、そのリンはリン酸化物として15〜35wt%含有する。
【0027】
また、n型シリコン基板4の裏面には、裏面パッシベーション膜9が形成されている。n型シリコン基板4の裏面側にはn層(n型拡散層)10とp層(p型拡散層)11とが交互に形成されており、n層10にはn型用電極2が形成され、p層11にはp型用電極3が形成されている。
【0028】
以下に、本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法を示す。
【0029】
図3は、図1、および図2に示す本発明の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例である。図3に示すように模式的断面図を参照して説明する。
【0030】
まず、図3(a)に示すように、n型シリコン基板4の裏面となる面(n型シリコン基板4の裏面)に窒化シリコン膜等のテクスチャマスク21をCVD法、またはスパッタ法等で形成する。その後、図3(b)に示すように、n型シリコン基板4の受光面となる面(n型シリコン基板4の受光面)に凹凸形状5からなるテクスチャ構造をエッチングにより形成する。エッチングは、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加し、70℃以上80℃以下に加熱した溶液により行われる。
【0031】
次に、図3(c)を用いて次工程を説明する。図3(c)は、n型シリコン基板4の裏面側が上となっている。図3(c)に示すように、n型シリコン基板4の裏面に形成したテクスチャマスク21を除去後、n型シリコン基板4の受光面に酸化シリコン膜等の拡散マスク22を形成する。その後、n型シリコン基板4の裏面において、n層10を形成しようとする箇所以外に、例えば、溶剤、増粘剤および酸化シリコン前駆体を含むマスキングペーストをインクジェット、またはスクリーン印刷等で塗布し、熱処理により拡散マスク23を形成し、POClを用いた気相拡散によって、n型シリコン基板4の裏面の露出した箇所に、n型不純物であるリンが拡散してn層10が形成される。
【0032】
次に、図3(d)に示すように、n型シリコン基板4に形成した拡散マスク22ならびに拡散マスク23、および拡散マスク22、23にリンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去した後、n型シリコン基板4の裏面にp層11を形成するため、n型シリコン基板4の受光面に酸化シリコン膜等の拡散マスク24を形成し、n型シリコン基板4の裏面において、p層11を形成しようとする箇所以外に、例えば、溶剤、増粘剤および酸化シリコン前駆体を含むマスキングペーストをインクジェット、またはスクリーン印刷等で塗布し、熱処理により拡散マスク25を形成する。その後、n型シリコン基板4の裏面に、有機性高分子にホウ素化合物を反応させたポリマーをアルコール系溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥後、熱処理によりn型シリコン基板4の裏面の露出した箇所にp型不純物であるボロンが拡散してp層11が形成される。
【0033】
次に、図3(e)を用いて次工程を説明する。図3(e)は、n型シリコン基板4の受光面側が上となっている。図3(e)に示すように、n型シリコン基板4に形成した拡散マスク24ならびに拡散マスク25、および拡散マスク24、25にボロンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去した後、n型シリコン基板4の裏面に酸化シリコン膜等の拡散マスク26を形成する。その後、n型シリコン基板4の受光面に受光面拡散層6であるn層および反射防止膜7を形成するため、n型シリコン基板4の受光面にリン化合物、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む混合液27をスピン塗布等により塗布し、乾燥する。ここで、混合液27のリン化合物としては五酸化リン、チタンアルコキシドとしてはテトライソプロピルチタネート、およびアルコールとしてはイソプロピルアルコールを用いる。
【0034】
次に、図3(f)に示すように、熱処理によりn型不純物であるリンが拡散して受光面側全面に受光面拡散層6であるn層および反射防止膜7となるリンを含有した酸化チタン膜が形成される。ここで、熱処理後のn層のシート抵抗値は、30〜100Ω/□、望ましくは、50±10Ω/□である。n型シリコン基板4の受光面を、図3(j)に示す。
【0035】
次に、図3(g)に示すように、n型シリコン基板4の裏面に形成した拡散マスク26をフッ化水素酸処理により除去する。この際、反射防止膜7が一部エッチングされ、n型シリコン基板4表面が露出する。ここで、反射防止膜7にリンを含むことで、フッ化水素酸耐性が向上するので、図3(k)に示すように、反射防止膜7の薄いn型シリコン基板4の凸部のみが露出する。その後、n型シリコン基板4の裏面に酸化シリコン膜による裏面パッシベーション膜9を形成するため、酸素または水蒸気による熱酸化を行う。この際、n型シリコン基板4の裏面に酸化シリコン膜が形成されると同時に、図3(k)に示すように、n型シリコン基板4の受光面全面にも、酸化シリコン膜が形成され、受光面パッシベーション膜8となる。その際に、受光面拡散層6と反射防止膜7との間にも受光面パッシベーション膜8である酸化シリコン膜が形成されている。
【0036】
次に、図3(h)に示すように、n型シリコン基板4の裏面側に形成されたn層10、p層11に電極を形成するため、n型シリコン基板の裏面に形成された裏面パッシベーション膜9にパターニングを行う。パターニングは、エッチングペーストをスクリーン印刷法などで塗布し加熱処理により行われる。その後、パターニング処理を行ったエッチングペーストは超音波洗浄し酸処理により除去する。ここで、エッチングペーストとしては、例えば、エッチング成分としてリン酸、フッ化水素、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含み、水、有機溶媒および増粘剤を含むものである。
【0037】
次に、図3(i)に示すように、n型シリコン基板4の裏面の所定の位置に銀ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、乾燥する。その後、焼成により、n層10にはn型用電極2が形成され、p層11にはp型用電極3が形成され、裏面電極型太陽電池1を作製した。
【0038】
以上のように、上記の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面拡散層6および反射防止膜7を同時に形成する(1工程で形成する)ことが可能であり、さらに、受光面パッシベーション膜8と裏面パッシベーション膜9とを同時に形成する(1工程で形成する)ことも可能であることから、工程削減が可能である。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の他の裏面電極型太陽電池を表す断面図である。図2に示す実施例1と異なるところは、受光面側全面に反射防止膜12が形成されていることと、裏面には、n型シリコン基板4側から、第2裏面パッシベーション膜14、第1裏面パッシベーション膜13の2層からなる裏面パッシベーション膜15が形成されていることである。ここで、実施例1と同様、受光面パッシベーション膜8は酸化シリコン膜で、その膜厚は30nm〜200nmであり、裏面電極型太陽電池特性として30nm以上が好ましい。また、反射防止膜12は酸化チタン膜で、膜厚は、30nm〜500nm、リンが含まれており、そのリンはリン酸化物として15〜35wt%含有する。
【0040】
図5は、図4に示す本発明の他の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例である。図5に示すように模式的断面図を参照して説明する。
【0041】
図5(a)から図5(d)までの製造方法は、図3(a)から図3(d)までの製造方法と同様である。よって、図5(e)から説明する。
【0042】
図5(e)に示すように、n型シリコン基板4に形成した拡散マスク24ならびに拡散マスク25、および拡散マスク24、25にボロンが拡散して形成されたガラス層をフッ化水素酸処理により除去した後、n型シリコン基板4の裏面に酸化シリコン膜等の拡散マスクを兼ねた第1裏面パッシベーション膜13をCVD法、またはSOG(スピンオングラス)の塗布、焼成などにより形成する。その後、n型シリコン基板4の受光面に受光面拡散層6であるn層および反射防止膜12を形成するため、n型シリコン基板4の受光面にリン化合物、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む混合液27の塗布を行い、乾燥する。ここで、混合液27のリン化合物としては五酸化リン、チタンアルコキシドとしてはテトライソプロピルチタネート、およびアルコールとしてはイソプロピルアルコールを用いる。
【0043】
次に、図5(f)に示すように、熱処理によりn型不純物であるリンが拡散して受光面側全面に受光面拡散層6であるn層および反射防止膜12となるリンを含有した酸化チタン膜が形成される。ここで、熱処理後のn層のシート抵抗値は、実施例1と同様、30〜100Ω/□、望ましくは、50±10Ω/□である。
【0044】
n型シリコン基板4の裏面に酸化シリコン膜による第2裏面パッシベーション膜14を形成するため、酸素または水蒸気による熱酸化を行う。この際、n型シリコン基板4の裏面に第2裏面パッシベーション膜14である酸化シリコン膜が形成されると同時に、図5(i)に示すように、n型シリコン基板4の受光面全面にも、酸化シリコン膜が形成される。この受光面全面に形成された酸化シリコン膜は、受光面拡散層6と反射防止膜12との間に形成され、受光面パッシベーション膜8となる。また、第2裏面パッシベーション膜14と受光面パッシベーション膜8との形成は、受光面拡散層6および反射防止膜12を形成する熱処理に引き続き、ガスを切り替えて酸素または水蒸気による熱酸化を行うことによっても可能である。
【0045】
本実施例では、第1裏面パッシベーション膜13形成後、第1裏面パッシベーション膜13をエッチング除去する工程が無く、第2裏面パッシベーション膜14を形成するので、反射防止膜12は実施例1のようにエッチングされることはない。
【0046】
次に、図5(g)に示すように、n型シリコン基板4の裏面側に形成されたn層10、p層11に電極を形成するため、n型シリコン基板の裏面に形成された裏面パッシベーション膜15にパターニングを行う。パターニングは、エッチングペーストをスクリーン印刷法などで塗布し加熱処理により行われる。その後、パターニング処理を行ったエッチングペーストは超音波洗浄し酸処理により除去する。ここで、エッチングペーストとしては、例えば、エッチング成分としてリン酸、フッ化水素、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含み、水、有機溶媒および増粘剤を含むものである。
【0047】
次に、図5(h)に示すように、n型シリコン基板4の裏面の所定の位置に銀ペーストをスクリーン印刷法により、塗布、乾燥する。その後、焼成により、n層10にはn型用電極2が形成され、p層11にはp型用電極3が形成され、裏面電極型太陽電池16を作製した。
【0048】
以上のように、上記の裏面電極型太陽電池の製造方法において、受光面拡散層6および反射防止膜12を同時に形成する(1工程で形成する)ことが可能であり、さらに、受光面パッシベーション膜8と第2裏面パッシベーション膜14とを同時に形成する(1工程で形成する)ことも可能であることから、工程削減が可能である。
【0049】
また、屈折率の高い酸化チタン膜でn型シリコン基板4の受光面が覆われ受光面凸部が露出されていないので、表面反射率を低減できる。
【0050】
次に、本発明の裏面電極型太陽電池の受光面の評価を行った。評価は、入射光の波長を変化させ、受光面の表面反射率を測定した。また、比較例1として、プラズマCVD法により形成した窒化シリコン膜を反射防止膜とした裏面電極型太陽電池を用いた。
【0051】
図6は実施例1、比較例1の測定結果である。Aは実施例1の波形であり、Bは比較例1の波形である。
【0052】
図6からわかるように、裏面電極型太陽電池の状態では、実施例1では波長依存性はあまりないが、比較例1では可視光域(400nm〜750nm)で明確な表面反射率の波長依存性が見られることから、受光面で干渉効果による特定の色が見られる。一方、表面反射率は比較例1の方が小さくなることがわかる。
【0053】
次に、本発明の裏面電極型太陽電池を裏面電極型太陽電池モジュールにした時の受光面の評価を行った。評価は、裏面電極型太陽電池モジュールを作製し、上記の裏面電極型太陽電池の場合と同様、入射光の波長を変化させ、受光面の表面反射率を測定した。
【0054】
図7は、裏面電極型太陽電池モジュールの受光面側の構造を示す模式図である。(a)は、本発明の実施例1の裏面電極型太陽電池1を用いた裏面電極型太陽電池モジュール35(実施例3)であり、(b)は、比較例1の裏面電極型太陽電池31を用いた裏面電極型太陽電池モジュール36(比較例2)である。裏面電極型太陽電池モジュール35、36共、受光面側の構造は、裏面電極型太陽電池の受光面側に、封止樹脂32、例えばEVA(エチレンビニルアセテート)、シリコーン樹脂、ポリオレフフィン樹脂など、ガラス33の順となる構造である。なお、34はバックシートである。
【0055】
図8は実施例3、比較例2の測定結果である。Cは実施例3の波形であり、Dは比較例2の波形である。
【0056】
図8から、裏面電極型太陽電池モジュールCとDとの波形の差が、裏面電極型太陽電池AとBとの波形の差に比べて、小さくなることがわかった。
【0057】
これから、裏面電極型太陽電池の状態では反射率に差がみられていたものの、裏面電極型太陽電池モジュールの状態では、簡略化されたプロセスで作製した裏面電極型太陽電池を用いた裏面電極型太陽電池モジュールでも、プラズマCVD法による窒化シリコン膜を反射防止膜とした裏面電極型太陽電池(比較例1)を用いた裏面電極型太陽電池モジュールの表面反射率と差が少ない裏面電極型太陽電池モジュールが得られる。
【0058】
加えて、裏面電極型太陽電池モジュールは、受光面と裏面の両面に電極が形成されている太陽電池を用いた太陽電池モジュールに比べ、受光面側に電極がないので、より表面反射率の低減による電流向上効果が大きくなる。
【0059】
今回、n型シリコン基板について記載したが、p型シリコン基板を用いることも可能である。その場合は、受光面拡散層はp型不純物を用いたp層となり、反射防止膜はp型不純物が含まれた膜となり、他の構造はn型シリコン基板について記載した上記構造と同様である。
【0060】
また、本発明の裏面電極型太陽電池の概念には、半導体基板の一方の表面(裏面)のみにp型用電極およびn型用電極の双方が形成された構成の裏面電極型太陽電池だけでなく、MWT(Metal Wrap Through)型(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などの構成の太陽電池も含まれる。
【0061】
また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る裏面電極型太陽電池、裏面電極型太陽電池の製造方法および裏面電極型太陽電池モジュールは、裏面電極型太陽電池、裏面電極型太陽電池の製造方法および裏面電極型太陽電池モジュール全般に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 裏面電極型太陽電池、2 n型用電極、3 p型用電極、4 n型シリコン基板、5 凹凸形状、6 受光面拡散層、7 反射防止膜、8 受光面パッシベーション膜、9 裏面パッシベーション膜、10 n層、11 p層、12 反射防止膜、13 第1裏面パッシベーション膜、14 第2裏面パッシベーション膜、15 裏面パッシベーション膜、16 裏面電極型太陽電池、21テクスチャマスク、22 拡散マスク、23 拡散マスク、24 拡散マスク、25 拡散マスク、26 拡散マスク、27 混合液、31 裏面電極型太陽電池、32 封止樹脂、33 ガラス、34 バックシート、35 裏面電極型太陽電池モジュール、36 裏面電極型太陽電池モジュール、101 裏面電極型太陽電池、102 n型用金属コンタクト、103 p型用金属コンタクト、104 n型シリコンウェーハ、105 凹凸形状、106 n型前面側拡散領域、107 反射防止コーティング、108 誘電性パッシベーション層、109 酸化物層、110 n型ドープされた領域、111 p型ドープされた領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池の製造方法において、
シリコン基板の受光面に、前記シリコン基板の導電型と同じ導電型になるような不純物を含む化合物、チタンアルコキシドおよびアルコールを少なくとも含む溶液を塗布し熱処理することにより受光面拡散層と反射防止膜とを形成する工程と、
前記シリコン基板の受光面に熱処理により受光面パッシベーション膜を形成する工程とを有することを特徴とする裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記受光面パッシベーション膜が酸化シリコンであることを特徴とする請求項1に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記受光面パッシベーション膜を形成する工程において、前記シリコン基板の裏面に裏面パッシベーション膜を同時に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記受光面拡散層のシート抵抗が、30〜100Ω/□であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記受光面パッシベーション膜の膜厚が、30nm〜200nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の裏面電極型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池において、
前記シリコン基板の受光面側に形成された、前記シリコン基板の導電型と同じ導電型で不純物濃度が前記シリコン基板よりも高い濃度である受光面拡散層と、
前記受光面拡散層の受光面上に形成された受光面パッシベーション膜と、
前記受光面パッシベーション膜の受光面上に形成された、前記シリコン基板の導電型と同じ導電型の不純物を含む酸化チタンである反射防止膜とを有する裏面電極型太陽電池。
【請求項7】
シリコン基板の受光面とは反対側の面にn型用電極とp型用電極とを有する裏面電極型太陽電池において、
前記シリコン基板の受光面側に形成された、前記シリコン基板の導電型と同じ導電型で不純物濃度が前記シリコン基板よりも高い濃度である受光面拡散層と、
前記受光面拡散層の受光面上に形成された受光面パッシベーション膜と、
前記受光面パッシベーション膜の受光面上の一部に形成された、前記シリコン基板の導電型と同じ導電型の不純物を含む酸化チタンである反射防止膜とを有する裏面電極型太陽電池。
【請求項8】
前記反射防止膜に含まれる不純物がn型不純物であり、前記n型不純物はリン酸化物として15wt%〜35wt%含有することを特徴とする請求項6または7に記載の裏面電極型太陽電池。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の裏面電極型太陽電池が複数配置された裏面電極型太陽電池モジュールであって、
前記裏面電極型太陽電池の受光面側に、封止樹脂、ガラスを順次有することを特徴とする裏面電極型太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記封止樹脂が、EVA(エチレンビニルアセテート)、シリコーン樹脂、ポリオレフフィン樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の裏面電極型太陽電池モジュール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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