補強カバー部材構造
【課題】車体剛性を効率的に向上させることが出来る補強カバー部材構造を提供する。
【解決手段】ストラットハウジング10の取付部11の上面側周縁には、カウルトップパネル7と共に、補強カバー部材8を構成するストラットサポートバー部材20が取り付けられる。ストラットサポートバー部材20は、車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈して、前記カウルトップパネル7の前縁部7bの形状に沿うように、略水平に平板状を呈する車幅方向の中央部が、この前縁部7bの車両上下方向下面側から当接される。また、車幅方向左右に延設された左,右腕部は、各々縦壁部7d,7dに車両前方から当接されて、各々ボルト部材13,13が用いられて、一体となるように締結固定される。
【解決手段】ストラットハウジング10の取付部11の上面側周縁には、カウルトップパネル7と共に、補強カバー部材8を構成するストラットサポートバー部材20が取り付けられる。ストラットサポートバー部材20は、車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈して、前記カウルトップパネル7の前縁部7bの形状に沿うように、略水平に平板状を呈する車幅方向の中央部が、この前縁部7bの車両上下方向下面側から当接される。また、車幅方向左右に延設された左,右腕部は、各々縦壁部7d,7dに車両前方から当接されて、各々ボルト部材13,13が用いられて、一体となるように締結固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体前部に設けられたエンジンルーム等、フロントコンパートメントに設けられる補強カバー部材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体前部で、エンジンルーム等のフロントコンパートメント空間内に補強カバー部材が、配置されているものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような従来の補強カバー部材構造では、車体前部の剛性を向上させる為、左右一対のストラットタワー間に跨って、カウルトップパネルが、設置されている。
【0004】
すなわち、このカウルトップパネルの車幅方向左右前側縁は、前記ストラットタワーの後壁面に各々接合されている。
【0005】
これらの左右前側縁間には、上面側を略平坦として、このカウルトップパネルの車幅方向中央部に位置する庇部が設けられている。
【0006】
この庇部は、更に、車体後方へ向けて延設されて、このエンジンルームと、乗員室との間を仕切るダッシュパネル部材に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−78575号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の補強カバー部材構造では、前記ストラットタワーからのサスペンション入力によって、前記カウルトップパネルの庇部が、車幅方向中央の前縁部を上方に移動させながら後方へ傾くように転び、全体が折り曲げ変形可能な角度まで、迎え角を与えられてしまう虞があり、所望の車体剛性を向上させる効果を発揮させることが困難であるといった問題があった。
【0009】
そこで、この発明は、車体剛性を効率的に向上させることが出来る補強カバー部材構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の補強カバー部材構造では、前記補強カバー部材の前記庇部の前縁部に締結されたストラットサポートバー部材が、車幅方向左右に沿って延設されて、車両上下方向下面側から当接されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材によって、前記庇部の前縁部に所望の強度が与えられて、車両上方への変形移動が抑制される。
【0012】
このため、前記補強カバー部材の庇部が、車幅方向中央の前縁部を上方に移動させながら後方へ傾くように転ぶ虞が無くなり、前記カウルトップパネルに所望の剛性を発揮させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の斜視図である。
【図2】実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の上面図である。
【図3】実施の形態の補強カバー部材構造で、車両前方方向から見た正面図である。
【図4】実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の分解斜視図である。
【図5】実施の形態の補強カバー部材構造で、カウルトップパネル取り付け部分周縁の構成を説明する上面図である。
【図6】実施の形態の補強カバー部材構造で、カウルトップパネル取り付け部分周縁の構成を説明する上面図である。
【図7】実施の形態の補強カバー部材構造で、車体左側のストラットハウジング上面部付近の構成を示し、車両前方から見た正面図である。
【図8】実施の形態の補強カバー部材構造で、ストラットハウジング上面部付近の構成を示す図12中F−F線に沿った位置に相当する位置での鉛直方向断面図である。
【図9】実施の形態の補強カバー部材構造で、車体右側のストラットハウジング上面部付近の構成を示し、車両前方から見た正面図である。
【図10】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材の上面図である。
【図11】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材の正面図である。
【図12】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材を車両斜め後ろ方向から見た斜視図である。
【図13】実施の形態の補強カバー部材構造で、図2中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図14】実施の形態の補強カバー部材構造で、図3中B部の構成を示す拡大分解斜視図である。
【図15】実施の形態の補強カバー部材構造で、図2中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図16】実施の形態の補強カバー部材構造で、図3中D部の構成を示す拡大分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の補強カバー部材構造を、図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、図1乃至図16を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の補強カバー部材構造では、図1に示す様に、車体前部に位置するフロントコンパートメントE空間部の下部の車幅方向左右両側には、一対のサイドメンバ部材1,1が車両前後方向に長手方向を沿わせて、延在されている。
【0016】
また、フロントコンパートメントEと乗員室Rとの間には、図4に示す様に、ダッシュパネル部材2が介装されて、このフロントコンパートメントE内空間が独立するように、隔成されている。
【0017】
そして、図1に示す様に、乗員室R内空間では、運転席側DS空間及び助手席側HS空間が、車幅方向中央のセンタトンネル部STを挟んで左右に設けられていて、このうち、運転席側DSのダッシュパネル部材2には、アクセルペダル部材及びブレーキペダル部材等からなる操作ペダル部材Pが配置されている。
【0018】
更に、これらのサイドメンバ部材1,1の後端部は、各々エクステンションサイドメンバ3,3となって、ダッシュパネル部材2の下側に潜り込むように傾斜し、さらに、その後方部分が図示省略したフロアパネルの下側へと延設されている。
【0019】
また、前記フロントコンパートメントEの車幅方向両側の上部には、フードリッジメンバ部材4,4が車両前後方向に延在しており、そのフードリッジメンバ部材4,4の取付基部となる後端部分とダッシュパネル部材2の左右側縁部との間に、各々ダッシュサイドパネル部材5,5が接合されている。
【0020】
この実施の形態では、これらのフードリッジメンバ4とダッシュサイドパネル部材5とによって、フードリッジ部材6が形成されている。
【0021】
また、この実施の形態では、ダッシュパネル部材2の上部の中央部に、固着部材としての取付ボルト23,23によって、補強カバー部材8の一部を構成するカウルトップパネル7が装着されている。
【0022】
このカウルトップパネル7は、前記車幅方向中央部に水平板状を呈する庇部7eが設けられていると共に、この庇部7eからは、車両後方へ向けて延設された取付部7cが一体に設けられいて、前記取付ボルト23,23の螺合によりに、これらの補強カバー部材8の後縁部が、固定されて、このフロントコンパートメントE空間内に固定されている。
【0023】
また、このカウルトップパネル7には、前記取付部7cから、前記フロントコンパートメントE空間内方向、左右両側に向けて斜め前方に二股状に左右に広がりながら延設されて、このフロントコンパートメントEの後側周縁を囲繞する縦壁部7d,7dが一体に設けられている。
【0024】
更に、図示省略のフロントサスペンションは、前輪を取り付けるホイールハブが、ナックルスピンドルに固定されている。
【0025】
ナックルスピンドルはサスペンションアームによって上下揺動可能に車体側に支持されており、また、その上下揺動を吸収するショックアブソーバとしてのストラットが設けられている。
【0026】
このストラットの上端部は、車体側のストラットハウジング10の取付部11に、下面側から当接されて、取り付けられている。
【0027】
このストラットハウジング10は、このストラットの上端部を下方から当接させる取付部11を頂壁として上側に膨出する形状を備えており、ストラットの主として上側、前側、後側、および車幅方向中央側が覆われている。
【0028】
また、この左右に位置する取付部11,11の各中央部には、調整穴11a,11aが、各々開口形成されていると共に、これらの取付部11,11の上面側周縁には、前記カウルトップパネル7と共に、補強カバー部材8を構成するストラットサポートバー部材20が取り付けられる取り付けリブ11b,11bが、各々一体となるように立設されている。
【0029】
この各取り付けリブ11b,11bには、図13乃至図16に示す様に、前記カウルトップパネル7の左右縦壁部7d,7dの各前端部7a,7a及び、車幅方向断面形状をL字状とする取り付けブラケット部材21,22が、ボルト部材13及びナット部材14によって共締め固定されている。
【0030】
この取り付けブラケット部材21,22には、図13乃至図16に示す様に、前記取り付けリブ11bと直交するように、車幅方向に沿って延設されるサポート取り付け面21a,22aが一体に形成されている。
【0031】
そして、この補強カバー部材8には、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに沿って、図10乃至図12に示す様なストラットサポートバー部材20が締結されている。
【0032】
このストラットサポートバー部材20は、車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈して、左右両端に位置する前端部20a,20bが、一組若しくは二組のボルト部材13及びナット部材14によって、前記サポート取り付け面21a,22aに締結されるように構成されている。
【0033】
この実施の形態では、車両左側に位置する前端部20bの二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分に比して、車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されている部分によって、取付剛性が比較的、低剛性とされている。
【0034】
このため、図1に示す様に、前記ダッシュパネル部材2の車幅方向で、車体剛性が比較的高くなっている部分である前記操作ペダル部材Pが装着されている部分に対応して、運転席側DSである車体右側の前記ストラットハウジング10の取付部11に連結されている前記補強カバー部材8の取付部分の取付剛性が、比較的低剛性となるように構成されている。
【0035】
また、この実施の形態のストラットサポートバー部材20は、図10乃至図12に示されるように、前記カウルトップパネル7の前縁部7bの形状に沿うように、略水平に平坦な水平板状を呈する車幅方向の中央部20cの上面側20dが、図4に示す様に、この前縁部7bの車両上下方向で下面側7gから当接されて、車幅方向左右に延設され、左右一対の締結部材としてのボルト部材13,13及びナット部材14,14が用いられて、一体となるように締結固定されることにより、締結されている。
【0036】
更に、この実施の形態のストラットサポートバー部材20では、この中央部20cから、車両前方右方向へ延設される右腕部20dには、一定の間隔を置いて、ボルト部材13…が各々螺着される雌ねじ部24…が、3箇所、一体に設けられている。
【0037】
また、この実施の形態のストラットサポートバー部材20では、この中央部20cから、車両前方左方向へ延設される左腕部20eには、一定の間隔を置いて、ボルト部材13…が各々螺着される雌ねじ部24…が、4箇所、一体に設けられている。
【0038】
そして、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20fが当接されることにより、安定して固定されるように構成されている。
【0039】
また、図8に示す様に、各ボルト部材13…を用いて、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、このストラットサポートバー部材20が、当接して固定される際、右腕部20dが、左腕部20eよりも、一本少ないボルト部材13…によって螺着されて、容易に締結出来、取付剛性を比較的低剛性とすることができる。
【0040】
また、図10に示す様に、このストラットサポートバー部材20の前記右腕部20dの幅方向寸法W1が、左腕部20eの幅方向寸法W2よりも、小さくなる(W1<W2)ように設定されていて、ストラットサポートバー部材20の強度が、右腕部20dが、左腕部20eよりも比較的低く、低剛性となるように構成されている。
【0041】
しかも、この実施の形態では、図13乃至図16に示す様に、前記右腕部20d,左腕部20eの各前端部20a,20bが、介装された取り付けブラケット部材21,22に固定されるサポート取り付け面21a,22aの位置が、図2又は図5に示す様に、車両前後方向にオフセットされて、前端部20a位置を、前端部20b位置よりも、車両前方に設定している。
【0042】
このため、図5に示す様に、前記右腕部20dの前端部20aに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置が、前記左腕部20eの前端部20bに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置よりも、車両前後方向で、前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に開口形成された調整穴11a,11aの開口中心からずらすように、寸法d1、オフセットされて、右腕部20dの全長寸法を、前記左腕部20eの全長寸法よりも長くなるように設定されている。
【0043】
次に、この実施の形態の補強カバー部材構造の作用効果について説明する。
【0044】
この実施の形態の補強カバー部材構造では、図2に示す様に、前記補強カバー部材8の前記庇部7eの前縁部7bに締結されたストラットサポートバー部材20が、車幅方向左右方向に沿って延設されている。
【0045】
例えば、前記ストラットハウジング10,10からのサスペンション入力によって、前記庇部7eの前縁部7bが、図3中二点鎖線で示す様に車両後方斜め上方へ変形すると、この庇部7eの前縁部7bと、延設された取り付け部7cまでとの間の角度が、略くの字状から、略180度に近づいて、平板状になる虞がある。
【0046】
このような平板状となった断面形状では、左右から突き上げられるようなサスペンション入力に対して、所望の剛性が発揮されず、このカウルトップパネル7の中央部で、湾曲若しくは、屈曲してしまう。
【0047】
しかしながら、この実施の形態では、前記ストラットサポートバー部材20が、平坦な中央部20cの上面部が、車両上下方向で、この前縁部7bの下面側から当接されて固着されている。
【0048】
また、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20f,20fが当接されることにより、安定して固定される。
【0049】
このため、前記ストラットサポートバー部材20が、平坦な前記中央部20cの上面部及び側面部20f,20fを、略直交する二側面で、ボルト部材13…及びナット部材14…若しくは、取付ボルト23及び雌ねじ部24…によって、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに締結されることにより、何れの方向への曲げ剛性も向上させることが出来る。
【0050】
また、ボルト部材13…及びナット部材14…を用いて、直交する二側面に固着された前記前縁部7bは、車両前後方向断面で、略くの字状に屈曲された形状を保持することが出来る。
【0051】
このように、この実施の形態の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材20によって、曲げ応力に比較的強い車両前後方向の断面形状で、略くの字状を呈する前記庇部7eの前縁部7bには、所望の強度が与えられて、車両上方への変形移動が抑制される。
【0052】
このため、前記補強カバー部材8のカウルトップパネル7の庇部7eが、車幅方向中央の前縁部7bを上方に移動させながら後方へ傾くように転び、平板状となる虞が無くなり、前記カウルトップパネル7に所望の剛性を発揮させることが出来る。
【0053】
更に、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20fが当接されることにより、安定して固定される。
【0054】
このため、このストラットサポートバー部材20とカウルトップパネル7との密着度が更に向上して、前記カウルトップパネル7の庇部7eの車両上方への変形が更に抑制されると共に、この庇部7eが、捻れる方向への剛性も向上させることが出来る。
【0055】
更に、この実施の形態では、前記ストラットサポートバー部材20の車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈している。
【0056】
このため、カウルトップパネル7の前縁部7b及び、左,右腕部20e,20d、の各面及び前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に設けられた取り付けブラケット部材21,22に対して、車両側方若しくは上方から、前記ボルト部材13…による締結作業を行い易い姿勢で確実に固定出来る。
【0057】
また、この実施の形態では、車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bのように、二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分よりも取付剛性が比較的、低剛性となるように構成されている。
【0058】
このため、前記操作ペダル部材Pの設定により、車体剛性が助手席側の車体剛性よりも比較的高くなっていても、この運転席側の高剛性部分に対応して、車両前方に位置する前記ストラットハウジング10の各上部に連結されている取付部分の取付剛性を容易に低剛性とすることが出来る。
【0059】
従って、車体全体では、車体剛性のバランスが、左右対称で均等に近くなるように調整出来る。また、この実施の形態では、前記補強カバー部材8が、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、前記ストラットサポートバー部材20を、複数の締結部材としてのボルト部材13…によって一体となるように締結している。
【0060】
このため、この補強カバー部材8の剛性のバランスの調整は容易に行え、この実施の形態では、図8に示す様に、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、このストラットサポートバー部材20を締結する際、右腕部20dが、左腕部20eよりも、一本少ないボルト部材13…によって螺着されて締結固定することが出来る。
【0061】
しかも、ストラットサポートバー部材20の前記右腕部20dの幅方向寸法W1が、左腕部20eの幅方向寸法W2よりも、小さく(W1<W2)設定されて、ストラットサポートバー部材20の強度が、右腕部20dが、左腕部20eよりも比較的低く、低剛性としている。
【0062】
このため、取付剛性及び補強カバー部材8自体の剛性を、前記操作ペダル部材Pや、センタトンネル部ST若しくは、フロントコンパートメントE内の機器の設置による設置スペース上の制約に拘わらず、与えられる剛性の変更が可能となり、左右のバランスを均等に近づけることができる。
【0063】
更に、この実施の形態では、図13乃至図16に示す様に、前記右腕部20d,左腕部20eの各前端部20a,20bが、介装された取り付けブラケット部材21,22に固定されるサポート取り付け面21a,22aの位置が、図2又は図5に示す様に、車両前後方向にオフセットされて、前端部20a位置が、前端部20b位置よりも、車両前方に位置する。
【0064】
このため、図5に示す様に、前記右腕部20dの前端部20aに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置が、前記左腕部20eの前端部20bに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置よりも、車両前後方向で寸法d1だけ、前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に開口形成された調整穴11a,11aの開口中心からずれて、開口中心軸を結ぶ直線の前後に互い違いに設けられる。
【0065】
よって、前記右腕部20dの全長寸法が、前記左腕部20eの全長寸法よりも長くなるように設定されて、更に、前記ストラットサポートバー部材20の右腕部20dの強度が、前記左腕部20eの強度に比較して、小さく低剛性とすることができる。
【0066】
そして、この実施の形態では、更に、図14に示す様に、前記前端部20aが、ボルト部材13及びナット部材14によって、一点で前記サポート取り付け面21aの車両前側面に固定されている。
【0067】
更に、図16に示す様に、同様に、二組のボルト部材13及びナット部材14によって、サポート取り付け面21bの車両後側面に面当たり状態で固定された前記前端部20bよりも、入力した荷重は、前記前端部20aと前記サポート取り付け面21aとの間に剥離方向に作用しやすい。
【0068】
よって、更に、前記ストラットサポートバー部材20の右腕部20dの取り付け強度が、前記左腕部20eの取り付け強度に比較して、小さく低剛性とすることができる。
【0069】
このように、この実施の形態の補強カバー部材8では、前記ストラットサポートバー部材20によって、前記カウルトップパネル7が所望の剛性を発揮出来るので、例えば、フロントコンパートメントEのエンジン若しくはモータ及びこれらの補機等の収納された機器の上部を開放して、前記ストラットハウジング10,10間を直線的に連結するストラットタワーバー部材等に比して、上面部の開口面積を拡大することが出来る。
【0070】
また、これらの機器の上方に、前記従来の様なストラットタワーバー部材等が位置しないので、この開口を開閉塞するフード部材を、これらの機器の上面に少ないクリアランスで近接させて配置出来、車両前部の視界を良好なものとすると共に、空力性能も向上させることが出来る造形とすることが出来る。
【0071】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の補強カバー部材構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0072】
即ち、前記実施の形態の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材20の車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bのように、二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分よりも取付剛性が比較的、低剛性となるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、前端部20aが、二組のボルト部材13及びナット部材14…によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bが、三組以上の前記ボルト部材13及びナット部材14…によって、締結されている等、取付られる部分に用いられる締結部材の本数を少なく設定するものであれば良く、また、締結部材の数量、形状及び材質若しくはこれらの締結固定される位置等が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
前記実施の形態では、この発明の補強カバー部材構造として、車両の車体前部に位置するエンジンルーム等の補強カバー部材構造に適用したものを用いて説明してきたが、例えば、車体の前部のフロントコンパートメント内に設けられた駆動源が、エンジン等の内燃機関によるものに限定されることは無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等であっても良く、他の車載搭載機器の収納スペースやトランクスペース等として用いられていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
E フロントコンパートメント
R 乗員室
DS 運転席側(車体高剛性側)
HS 助手席側(車体低剛性側)
1,1 サイドメンバ部材
2 ダッシュパネル部材
7 カウルトップパネル
7b 前縁部
7d,7d 縦壁部
7e 庇部
7g 下面側
7i 前側面
8 補強カバー部材
10,10 ストラットハウジング
11,11 取付部(上部)
13,23 ボルト部材(締結部材)
14 ナット部材(締結部材)
20 ストラットサポートバー部材
20c 中央部
20d 右腕部
20e 左腕部
20f 側面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体前部に設けられたエンジンルーム等、フロントコンパートメントに設けられる補強カバー部材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体前部で、エンジンルーム等のフロントコンパートメント空間内に補強カバー部材が、配置されているものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような従来の補強カバー部材構造では、車体前部の剛性を向上させる為、左右一対のストラットタワー間に跨って、カウルトップパネルが、設置されている。
【0004】
すなわち、このカウルトップパネルの車幅方向左右前側縁は、前記ストラットタワーの後壁面に各々接合されている。
【0005】
これらの左右前側縁間には、上面側を略平坦として、このカウルトップパネルの車幅方向中央部に位置する庇部が設けられている。
【0006】
この庇部は、更に、車体後方へ向けて延設されて、このエンジンルームと、乗員室との間を仕切るダッシュパネル部材に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−78575号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の補強カバー部材構造では、前記ストラットタワーからのサスペンション入力によって、前記カウルトップパネルの庇部が、車幅方向中央の前縁部を上方に移動させながら後方へ傾くように転び、全体が折り曲げ変形可能な角度まで、迎え角を与えられてしまう虞があり、所望の車体剛性を向上させる効果を発揮させることが困難であるといった問題があった。
【0009】
そこで、この発明は、車体剛性を効率的に向上させることが出来る補強カバー部材構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の補強カバー部材構造では、前記補強カバー部材の前記庇部の前縁部に締結されたストラットサポートバー部材が、車幅方向左右に沿って延設されて、車両上下方向下面側から当接されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材によって、前記庇部の前縁部に所望の強度が与えられて、車両上方への変形移動が抑制される。
【0012】
このため、前記補強カバー部材の庇部が、車幅方向中央の前縁部を上方に移動させながら後方へ傾くように転ぶ虞が無くなり、前記カウルトップパネルに所望の剛性を発揮させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の斜視図である。
【図2】実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の上面図である。
【図3】実施の形態の補強カバー部材構造で、車両前方方向から見た正面図である。
【図4】実施の形態の補強カバー部材構造で、全体の構成を説明する車両前部の分解斜視図である。
【図5】実施の形態の補強カバー部材構造で、カウルトップパネル取り付け部分周縁の構成を説明する上面図である。
【図6】実施の形態の補強カバー部材構造で、カウルトップパネル取り付け部分周縁の構成を説明する上面図である。
【図7】実施の形態の補強カバー部材構造で、車体左側のストラットハウジング上面部付近の構成を示し、車両前方から見た正面図である。
【図8】実施の形態の補強カバー部材構造で、ストラットハウジング上面部付近の構成を示す図12中F−F線に沿った位置に相当する位置での鉛直方向断面図である。
【図9】実施の形態の補強カバー部材構造で、車体右側のストラットハウジング上面部付近の構成を示し、車両前方から見た正面図である。
【図10】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材の上面図である。
【図11】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材の正面図である。
【図12】実施の形態の補強カバー部材構造に用いられる補強カバー部材を車両斜め後ろ方向から見た斜視図である。
【図13】実施の形態の補強カバー部材構造で、図2中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図14】実施の形態の補強カバー部材構造で、図3中B部の構成を示す拡大分解斜視図である。
【図15】実施の形態の補強カバー部材構造で、図2中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図16】実施の形態の補強カバー部材構造で、図3中D部の構成を示す拡大分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の補強カバー部材構造を、図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、図1乃至図16を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の補強カバー部材構造では、図1に示す様に、車体前部に位置するフロントコンパートメントE空間部の下部の車幅方向左右両側には、一対のサイドメンバ部材1,1が車両前後方向に長手方向を沿わせて、延在されている。
【0016】
また、フロントコンパートメントEと乗員室Rとの間には、図4に示す様に、ダッシュパネル部材2が介装されて、このフロントコンパートメントE内空間が独立するように、隔成されている。
【0017】
そして、図1に示す様に、乗員室R内空間では、運転席側DS空間及び助手席側HS空間が、車幅方向中央のセンタトンネル部STを挟んで左右に設けられていて、このうち、運転席側DSのダッシュパネル部材2には、アクセルペダル部材及びブレーキペダル部材等からなる操作ペダル部材Pが配置されている。
【0018】
更に、これらのサイドメンバ部材1,1の後端部は、各々エクステンションサイドメンバ3,3となって、ダッシュパネル部材2の下側に潜り込むように傾斜し、さらに、その後方部分が図示省略したフロアパネルの下側へと延設されている。
【0019】
また、前記フロントコンパートメントEの車幅方向両側の上部には、フードリッジメンバ部材4,4が車両前後方向に延在しており、そのフードリッジメンバ部材4,4の取付基部となる後端部分とダッシュパネル部材2の左右側縁部との間に、各々ダッシュサイドパネル部材5,5が接合されている。
【0020】
この実施の形態では、これらのフードリッジメンバ4とダッシュサイドパネル部材5とによって、フードリッジ部材6が形成されている。
【0021】
また、この実施の形態では、ダッシュパネル部材2の上部の中央部に、固着部材としての取付ボルト23,23によって、補強カバー部材8の一部を構成するカウルトップパネル7が装着されている。
【0022】
このカウルトップパネル7は、前記車幅方向中央部に水平板状を呈する庇部7eが設けられていると共に、この庇部7eからは、車両後方へ向けて延設された取付部7cが一体に設けられいて、前記取付ボルト23,23の螺合によりに、これらの補強カバー部材8の後縁部が、固定されて、このフロントコンパートメントE空間内に固定されている。
【0023】
また、このカウルトップパネル7には、前記取付部7cから、前記フロントコンパートメントE空間内方向、左右両側に向けて斜め前方に二股状に左右に広がりながら延設されて、このフロントコンパートメントEの後側周縁を囲繞する縦壁部7d,7dが一体に設けられている。
【0024】
更に、図示省略のフロントサスペンションは、前輪を取り付けるホイールハブが、ナックルスピンドルに固定されている。
【0025】
ナックルスピンドルはサスペンションアームによって上下揺動可能に車体側に支持されており、また、その上下揺動を吸収するショックアブソーバとしてのストラットが設けられている。
【0026】
このストラットの上端部は、車体側のストラットハウジング10の取付部11に、下面側から当接されて、取り付けられている。
【0027】
このストラットハウジング10は、このストラットの上端部を下方から当接させる取付部11を頂壁として上側に膨出する形状を備えており、ストラットの主として上側、前側、後側、および車幅方向中央側が覆われている。
【0028】
また、この左右に位置する取付部11,11の各中央部には、調整穴11a,11aが、各々開口形成されていると共に、これらの取付部11,11の上面側周縁には、前記カウルトップパネル7と共に、補強カバー部材8を構成するストラットサポートバー部材20が取り付けられる取り付けリブ11b,11bが、各々一体となるように立設されている。
【0029】
この各取り付けリブ11b,11bには、図13乃至図16に示す様に、前記カウルトップパネル7の左右縦壁部7d,7dの各前端部7a,7a及び、車幅方向断面形状をL字状とする取り付けブラケット部材21,22が、ボルト部材13及びナット部材14によって共締め固定されている。
【0030】
この取り付けブラケット部材21,22には、図13乃至図16に示す様に、前記取り付けリブ11bと直交するように、車幅方向に沿って延設されるサポート取り付け面21a,22aが一体に形成されている。
【0031】
そして、この補強カバー部材8には、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに沿って、図10乃至図12に示す様なストラットサポートバー部材20が締結されている。
【0032】
このストラットサポートバー部材20は、車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈して、左右両端に位置する前端部20a,20bが、一組若しくは二組のボルト部材13及びナット部材14によって、前記サポート取り付け面21a,22aに締結されるように構成されている。
【0033】
この実施の形態では、車両左側に位置する前端部20bの二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分に比して、車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されている部分によって、取付剛性が比較的、低剛性とされている。
【0034】
このため、図1に示す様に、前記ダッシュパネル部材2の車幅方向で、車体剛性が比較的高くなっている部分である前記操作ペダル部材Pが装着されている部分に対応して、運転席側DSである車体右側の前記ストラットハウジング10の取付部11に連結されている前記補強カバー部材8の取付部分の取付剛性が、比較的低剛性となるように構成されている。
【0035】
また、この実施の形態のストラットサポートバー部材20は、図10乃至図12に示されるように、前記カウルトップパネル7の前縁部7bの形状に沿うように、略水平に平坦な水平板状を呈する車幅方向の中央部20cの上面側20dが、図4に示す様に、この前縁部7bの車両上下方向で下面側7gから当接されて、車幅方向左右に延設され、左右一対の締結部材としてのボルト部材13,13及びナット部材14,14が用いられて、一体となるように締結固定されることにより、締結されている。
【0036】
更に、この実施の形態のストラットサポートバー部材20では、この中央部20cから、車両前方右方向へ延設される右腕部20dには、一定の間隔を置いて、ボルト部材13…が各々螺着される雌ねじ部24…が、3箇所、一体に設けられている。
【0037】
また、この実施の形態のストラットサポートバー部材20では、この中央部20cから、車両前方左方向へ延設される左腕部20eには、一定の間隔を置いて、ボルト部材13…が各々螺着される雌ねじ部24…が、4箇所、一体に設けられている。
【0038】
そして、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20fが当接されることにより、安定して固定されるように構成されている。
【0039】
また、図8に示す様に、各ボルト部材13…を用いて、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、このストラットサポートバー部材20が、当接して固定される際、右腕部20dが、左腕部20eよりも、一本少ないボルト部材13…によって螺着されて、容易に締結出来、取付剛性を比較的低剛性とすることができる。
【0040】
また、図10に示す様に、このストラットサポートバー部材20の前記右腕部20dの幅方向寸法W1が、左腕部20eの幅方向寸法W2よりも、小さくなる(W1<W2)ように設定されていて、ストラットサポートバー部材20の強度が、右腕部20dが、左腕部20eよりも比較的低く、低剛性となるように構成されている。
【0041】
しかも、この実施の形態では、図13乃至図16に示す様に、前記右腕部20d,左腕部20eの各前端部20a,20bが、介装された取り付けブラケット部材21,22に固定されるサポート取り付け面21a,22aの位置が、図2又は図5に示す様に、車両前後方向にオフセットされて、前端部20a位置を、前端部20b位置よりも、車両前方に設定している。
【0042】
このため、図5に示す様に、前記右腕部20dの前端部20aに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置が、前記左腕部20eの前端部20bに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置よりも、車両前後方向で、前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に開口形成された調整穴11a,11aの開口中心からずらすように、寸法d1、オフセットされて、右腕部20dの全長寸法を、前記左腕部20eの全長寸法よりも長くなるように設定されている。
【0043】
次に、この実施の形態の補強カバー部材構造の作用効果について説明する。
【0044】
この実施の形態の補強カバー部材構造では、図2に示す様に、前記補強カバー部材8の前記庇部7eの前縁部7bに締結されたストラットサポートバー部材20が、車幅方向左右方向に沿って延設されている。
【0045】
例えば、前記ストラットハウジング10,10からのサスペンション入力によって、前記庇部7eの前縁部7bが、図3中二点鎖線で示す様に車両後方斜め上方へ変形すると、この庇部7eの前縁部7bと、延設された取り付け部7cまでとの間の角度が、略くの字状から、略180度に近づいて、平板状になる虞がある。
【0046】
このような平板状となった断面形状では、左右から突き上げられるようなサスペンション入力に対して、所望の剛性が発揮されず、このカウルトップパネル7の中央部で、湾曲若しくは、屈曲してしまう。
【0047】
しかしながら、この実施の形態では、前記ストラットサポートバー部材20が、平坦な中央部20cの上面部が、車両上下方向で、この前縁部7bの下面側から当接されて固着されている。
【0048】
また、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20f,20fが当接されることにより、安定して固定される。
【0049】
このため、前記ストラットサポートバー部材20が、平坦な前記中央部20cの上面部及び側面部20f,20fを、略直交する二側面で、ボルト部材13…及びナット部材14…若しくは、取付ボルト23及び雌ねじ部24…によって、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに締結されることにより、何れの方向への曲げ剛性も向上させることが出来る。
【0050】
また、ボルト部材13…及びナット部材14…を用いて、直交する二側面に固着された前記前縁部7bは、車両前後方向断面で、略くの字状に屈曲された形状を保持することが出来る。
【0051】
このように、この実施の形態の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材20によって、曲げ応力に比較的強い車両前後方向の断面形状で、略くの字状を呈する前記庇部7eの前縁部7bには、所望の強度が与えられて、車両上方への変形移動が抑制される。
【0052】
このため、前記補強カバー部材8のカウルトップパネル7の庇部7eが、車幅方向中央の前縁部7bを上方に移動させながら後方へ傾くように転び、平板状となる虞が無くなり、前記カウルトップパネル7に所望の剛性を発揮させることが出来る。
【0053】
更に、図8に示す様に、前記縦壁部7d,7dの上縁部7hの車両前方の前側面7iから、このストラットサポートバー部材20の右腕部20d及び左腕部20eの側面部20fが当接されることにより、安定して固定される。
【0054】
このため、このストラットサポートバー部材20とカウルトップパネル7との密着度が更に向上して、前記カウルトップパネル7の庇部7eの車両上方への変形が更に抑制されると共に、この庇部7eが、捻れる方向への剛性も向上させることが出来る。
【0055】
更に、この実施の形態では、前記ストラットサポートバー部材20の車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈している。
【0056】
このため、カウルトップパネル7の前縁部7b及び、左,右腕部20e,20d、の各面及び前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に設けられた取り付けブラケット部材21,22に対して、車両側方若しくは上方から、前記ボルト部材13…による締結作業を行い易い姿勢で確実に固定出来る。
【0057】
また、この実施の形態では、車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bのように、二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分よりも取付剛性が比較的、低剛性となるように構成されている。
【0058】
このため、前記操作ペダル部材Pの設定により、車体剛性が助手席側の車体剛性よりも比較的高くなっていても、この運転席側の高剛性部分に対応して、車両前方に位置する前記ストラットハウジング10の各上部に連結されている取付部分の取付剛性を容易に低剛性とすることが出来る。
【0059】
従って、車体全体では、車体剛性のバランスが、左右対称で均等に近くなるように調整出来る。また、この実施の形態では、前記補強カバー部材8が、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、前記ストラットサポートバー部材20を、複数の締結部材としてのボルト部材13…によって一体となるように締結している。
【0060】
このため、この補強カバー部材8の剛性のバランスの調整は容易に行え、この実施の形態では、図8に示す様に、前記カウルトップパネル7の前縁部7bに、このストラットサポートバー部材20を締結する際、右腕部20dが、左腕部20eよりも、一本少ないボルト部材13…によって螺着されて締結固定することが出来る。
【0061】
しかも、ストラットサポートバー部材20の前記右腕部20dの幅方向寸法W1が、左腕部20eの幅方向寸法W2よりも、小さく(W1<W2)設定されて、ストラットサポートバー部材20の強度が、右腕部20dが、左腕部20eよりも比較的低く、低剛性としている。
【0062】
このため、取付剛性及び補強カバー部材8自体の剛性を、前記操作ペダル部材Pや、センタトンネル部ST若しくは、フロントコンパートメントE内の機器の設置による設置スペース上の制約に拘わらず、与えられる剛性の変更が可能となり、左右のバランスを均等に近づけることができる。
【0063】
更に、この実施の形態では、図13乃至図16に示す様に、前記右腕部20d,左腕部20eの各前端部20a,20bが、介装された取り付けブラケット部材21,22に固定されるサポート取り付け面21a,22aの位置が、図2又は図5に示す様に、車両前後方向にオフセットされて、前端部20a位置が、前端部20b位置よりも、車両前方に位置する。
【0064】
このため、図5に示す様に、前記右腕部20dの前端部20aに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置が、前記左腕部20eの前端部20bに設けられるボルト部材13及びナット部材14の位置よりも、車両前後方向で寸法d1だけ、前記ストラットハウジング10,10の取付部11,11に開口形成された調整穴11a,11aの開口中心からずれて、開口中心軸を結ぶ直線の前後に互い違いに設けられる。
【0065】
よって、前記右腕部20dの全長寸法が、前記左腕部20eの全長寸法よりも長くなるように設定されて、更に、前記ストラットサポートバー部材20の右腕部20dの強度が、前記左腕部20eの強度に比較して、小さく低剛性とすることができる。
【0066】
そして、この実施の形態では、更に、図14に示す様に、前記前端部20aが、ボルト部材13及びナット部材14によって、一点で前記サポート取り付け面21aの車両前側面に固定されている。
【0067】
更に、図16に示す様に、同様に、二組のボルト部材13及びナット部材14によって、サポート取り付け面21bの車両後側面に面当たり状態で固定された前記前端部20bよりも、入力した荷重は、前記前端部20aと前記サポート取り付け面21aとの間に剥離方向に作用しやすい。
【0068】
よって、更に、前記ストラットサポートバー部材20の右腕部20dの取り付け強度が、前記左腕部20eの取り付け強度に比較して、小さく低剛性とすることができる。
【0069】
このように、この実施の形態の補強カバー部材8では、前記ストラットサポートバー部材20によって、前記カウルトップパネル7が所望の剛性を発揮出来るので、例えば、フロントコンパートメントEのエンジン若しくはモータ及びこれらの補機等の収納された機器の上部を開放して、前記ストラットハウジング10,10間を直線的に連結するストラットタワーバー部材等に比して、上面部の開口面積を拡大することが出来る。
【0070】
また、これらの機器の上方に、前記従来の様なストラットタワーバー部材等が位置しないので、この開口を開閉塞するフード部材を、これらの機器の上面に少ないクリアランスで近接させて配置出来、車両前部の視界を良好なものとすると共に、空力性能も向上させることが出来る造形とすることが出来る。
【0071】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の補強カバー部材構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0072】
即ち、前記実施の形態の補強カバー部材構造では、前記ストラットサポートバー部材20の車両右側に位置する前端部20aが、一組のボルト部材13及びナット部材14によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bのように、二組の前記ボルト部材13,13及びナット部材14,14によって、締結されている部分よりも取付剛性が比較的、低剛性となるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、前端部20aが、二組のボルト部材13及びナット部材14…によって、締結されていて、車両左側に位置する前端部20bが、三組以上の前記ボルト部材13及びナット部材14…によって、締結されている等、取付られる部分に用いられる締結部材の本数を少なく設定するものであれば良く、また、締結部材の数量、形状及び材質若しくはこれらの締結固定される位置等が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
前記実施の形態では、この発明の補強カバー部材構造として、車両の車体前部に位置するエンジンルーム等の補強カバー部材構造に適用したものを用いて説明してきたが、例えば、車体の前部のフロントコンパートメント内に設けられた駆動源が、エンジン等の内燃機関によるものに限定されることは無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等であっても良く、他の車載搭載機器の収納スペースやトランクスペース等として用いられていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
E フロントコンパートメント
R 乗員室
DS 運転席側(車体高剛性側)
HS 助手席側(車体低剛性側)
1,1 サイドメンバ部材
2 ダッシュパネル部材
7 カウルトップパネル
7b 前縁部
7d,7d 縦壁部
7e 庇部
7g 下面側
7i 前側面
8 補強カバー部材
10,10 ストラットハウジング
11,11 取付部(上部)
13,23 ボルト部材(締結部材)
14 ナット部材(締結部材)
20 ストラットサポートバー部材
20c 中央部
20d 右腕部
20e 左腕部
20f 側面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントコンパートメント空間部の車幅方向左右両側に位置する一対のストラットハウジングの各上部間を連結する縦壁部を設けると共に、車幅方向中央に水平板状を呈する庇部を、車体後方に位置して乗員室との間を仕切るダッシュパネル部材まで延設して接続する補強カバー部材を有する補強カバー部材構造であって、
前記補強カバー部材の前記庇部の前縁部には、車幅方向左右方向に沿って延設されて、車両上下方向下面側から当接させるストラットサポートバー部材を締結したことを特徴とする補強カバー部材構造。
【請求項2】
前記ストラットサポートバー部材の前記庇部から車幅方向左右方向に沿って延設された左右腕部は、前記縦壁部の車両前方の前側面から、当接して固定されることを特徴とする請求項1記載の補強カバー部材構造。
【請求項3】
前記ストラットサポートバー部材の車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈することを特徴とする請求項1又は2記載の補強カバー部材構造。
【請求項1】
フロントコンパートメント空間部の車幅方向左右両側に位置する一対のストラットハウジングの各上部間を連結する縦壁部を設けると共に、車幅方向中央に水平板状を呈する庇部を、車体後方に位置して乗員室との間を仕切るダッシュパネル部材まで延設して接続する補強カバー部材を有する補強カバー部材構造であって、
前記補強カバー部材の前記庇部の前縁部には、車幅方向左右方向に沿って延設されて、車両上下方向下面側から当接させるストラットサポートバー部材を締結したことを特徴とする補強カバー部材構造。
【請求項2】
前記ストラットサポートバー部材の前記庇部から車幅方向左右方向に沿って延設された左右腕部は、前記縦壁部の車両前方の前側面から、当接して固定されることを特徴とする請求項1記載の補強カバー部材構造。
【請求項3】
前記ストラットサポートバー部材の車両前後方向断面形状が、矩形形状を呈することを特徴とする請求項1又は2記載の補強カバー部材構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−81860(P2012−81860A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229639(P2010−229639)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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