説明

製パン機

【課題】製造コストや本体サイズの増大を抑えながら、洗浄や手入れが比較的簡単な構造で、混練羽根による穴が形成されず略平面状の底面を持つパンを製造することができる製パン機を提供する。
【解決手段】本体1、パン容器2、混練羽根3、焼成室4、駆動部5、操作部6、エレベータ7、制御部8を備える製パン機において、混練羽根3の底面がパン容器2の底面の最上位置より上にある状態で混練工程を行ない、混練工程が終了すると、エレベータ7が上昇して混練羽根3の上面と前記パン容器2の底面の最上位置が略同一平面上になる位置までパン容器2を上昇させ、上昇後の位置で焼成工程を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭で使用される製パン機に関し、特に、パンの底に混練羽根による穴を形成することなく、略平面状の底面を持つパンを製造することができる製パン機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な家庭用製パン機では、モータ駆動によりパン容器内で混練羽根を回転させることでパン材料を混練してパン生地を形成する。このような製パン機では、パン容器の底面中央部にシャフトが貫設され、シャフトの上端が混練羽根に嵌合し、シャフトの下端がカップリング部材等を介して駆動部の回転軸に連結される構成が一般的である。この構成では、カップリング部材の周囲を囲むように、パン容器を支持する台座がパン容器の底に固定されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような製パン機では、混練羽根でパン材料を混練しパン生地を形成した後、混練羽根をパン生地内に埋没させた状態で焼成工程を行なう。従って、焼成後パンから混練羽根を抜き取ることになり、パンの底から内側にかけて混練羽根による穴が形成されてしまう。この穴はパンの外観を損ねる。さらに、焼き上がったパンをパン容器から取り出す際、混練羽根の周囲にパンが固着してパン容器から取り出しにくい、また、混練羽根に固着したパンの一部が引きちぎられてしまう、といった状況が起こることがある。こうした状況は使用者に不快感やストレスを与える上、取り出しの際に火傷をするおそれもある。
【0004】
この混練羽根による穴を無くすため、製パン機本体の上蓋部の裏面に混練羽根を設け、混練工程後に混練羽根をパン生地の上方に移動してからパンを焼成する構成や、パン容器の底に混練羽根を設け、焼成工程の直前に混練羽根をパン生地の下方に移動してからパンを焼成する構成等が提案されている。
【0005】
前者の構成としては、上蓋部裏面に取り付けた混練羽根に対してパン容器を上昇させることで混練羽根をパン容器内のパン材料の中に進入させて混練工程を行ない、その後パン容器を下降させて混練羽根をパン生地から引き抜いて焼成工程を行なう構成(特許文献2参照)や、上蓋部裏面に取り付けた混練羽根をパン容器に対して下降させることで混練羽根をパン材料内に進入させて混練工程を行ない、その後混練羽根を上昇させて混練羽根をパン生地から引き抜いて焼成工程を行なう構成(特許文献3参照)等がある。
【0006】
一方、後者の構成としては、混練工程が終了して焼成工程に入る若干手前のパン生地がある程度固まった段階でパン容器の下方に設けた空間へ混練羽根を移動させて焼成工程を行なう構成が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−246590号公報
【特許文献2】特開平10−192151号公報
【特許文献3】特開平10−179410号公報
【特許文献4】特開2009−125516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前者の構成では、パンに混練羽根の跡が残らないようにするため、出来るだけパン生地から離れた位置に混練羽根を移動させなければならない。パン生地が発酵及び焼成過程で上方に膨張することを考慮に入れると、混練羽根とパン生地の間の距離を大きく取る必要がある。その結果、製パン機本体の高さが増し、本体サイズの増大につながる。また、混練工程後にパン生地から引き抜かれた混練羽根にはパン生地の一部が付着しており、この付着したパン生地の一部がパン容器内に戻されないまま焼成工程が行なわれるため、結果として材料の無駄が出てしまう。また、特許文献2の構成では、混練羽根の回転用のモータとは別にパン容器の昇降用のモータが必要となり、製造コストや本体サイズの増大を招く。
【0009】
一方、後者の構成例である特許文献4の構成では、一つの駆動機構で混練羽根の回転と昇降を行なうため、上記コストとサイズの問題は解消される。しかし、元々水分量が多いパン生地では焼成工程の直前の段階でもパン生地は軟らかく、混練羽根の下降とともにパン容器下方の空間に流れ込んでしまうため、この構成では調理できるパンの種類が限定されてしまう。また、この構成では、本体にパン容器をセットし混練羽根を回転軸に装着した後にパン材料がパン容器に投入される。つまり、作業台等の別の場所でパン材料を計量しパン容器へ投入してから本体にパン容器をセットすることはできないため、使用者にとっては不便である。さらに、パン容器下方の空間に下降した混練羽根にはパン生地の一部が付着しており、前述した材料の無駄の問題は残る。さらに、混練羽根の他にも、混練羽根に近接して設けられて混練羽根とともに下方空間に移動するシール部材にもパン生地が付着してしまうため、使用者にとっては洗浄や手入れの手間が増えてしまう。
【0010】
また、前述したように、一般的なパン容器にはシャフトやカップリング部材等の部品が組み付けられているため、使用者にとっては洗浄や手入れがしにくい。
【0011】
これらの状況を鑑み、本発明の目的は、製造コストや本体サイズの増大を抑えながら、洗浄や手入れが比較的簡単な構造で、混練羽根による穴が形成されず略平面状の底面を持つパンを製造することができる製パン機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態による製パン機は、製パン機本体内に設けられ、パンの焼成を行なう焼成室と、パン材料が投入され、前記焼成室内に着脱可能に収容されるパン容器と、前記パン容器に着脱可能に装着され、パン材料を混練する混練羽根と、前記混練羽根を回転駆動させる駆動部と、前記パン容器を混練位置から焼成位置まで上昇させるエレベータを備え、前記混練位置では前記混練羽根の底面が前記パン容器の底面の最上位置より上方に位置し、前記焼成位置では前記混練羽根の上面が前記パン容器の底面の最上位置と略同一平面上に位置し、前記混練位置で前記混練羽根による混練工程が終了した後、前記エレベータが前記パン容器を前記焼成位置まで上昇させ、前記焼成位置で前記パン容器が加熱されて焼成工程が行なわれる。
【0013】
上記製パン機において、前記パン容器の底面には、上方から前記混練羽根が嵌合する開口部と、前記開口部の周囲に沿って延設され、前記混練羽根の上面と前記パン容器の底面の最上位置が略同一平面上に位置するように前記混練羽根を保持する段部が形成され、前記パン容器の側周面には、少なくとも1つのスライダが垂直方向に延設される構成としてもよい。
【0014】
また、上記製パン機において、前記パン容器から独立した中空の台座をさらに備え、前記台座の上に前記パン容器を載置した状態において、前記パン容器の前記段部が前記台座の中空部分の内側に位置する構成としてもよい。
【0015】
また、上記製パン機において、前記焼成室は、前記パン容器を加熱する加熱装置と、垂直方向に延設され、前記パン容器の前記スライダと係合する少なくとも1つのガイドレールと、前記焼成室の底面に設けられ、前記混練位置で前記パン容器の前記開口部に嵌合するシール部材を備え、前記シール部材は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記パン容器の底面の最上位置から最下位置までの距離以上の高さを持つ構成としてもよい。
【0016】
また、上記製パン機において、前記混練羽根は、パン材料を混練するブレード部と、前記駆動部の回転軸が嵌合する軸穴部を有する軸部と、前記パン容器の前記段部に保持される上面部と、前記上面部の側周面を被覆するシール膜と、前記軸穴部に対向する前記上面部の領域に設けられ、前記駆動部の前記回転軸の上端に設けられた磁性体と反対の極性を持つ磁性体を備え、前記ブレード部と前記軸部を併せた部分は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記混練工程終了後に前記開口部の内側に位置する構成としてもよい。
【0017】
また、上記製パン機において、前記駆動部は、前記混練羽根に嵌合するとともに、前記混練羽根の上面部に設けられた磁性体と反対の極性を持つ磁性体が上端に設けられた回転軸と、2方向に回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの一方の出力軸に接続された第1プーリと、前記回転軸の下端に接続された第2プーリと、前記第1及び第2プーリに張架された無端ベルトと、前記駆動モータの前記一方の出力軸と前記第1プーリの間に介設される第1ワンウェイクラッチを備え、前記駆動モータが一方向に回転すると、前記第1ワンウェイクラッチによって前記駆動モータの駆動が前記第1プーリに伝達されて前記回転軸が回転し、前記駆動モータが他方向に回転すると、前記第1ワンウェイクラッチによって前記駆動の伝達が遮断される構成としてもよい。
【0018】
また、上記製パン機において、前記エレベータは、前記駆動モータの他方の出力軸に接続されたネジ軸と、前記ネジ軸に螺合するナットと、前記ナットに一端が接続され、他端が前記焼成室内に配置される支持部材と、前記支持部材に固定され、前記パン容器が載置される底板と、前記駆動モータの前記他方の出力軸と前記ネジ軸の間に介設される第2ワンウェイクラッチを備え、前記駆動モータが前記他方向に回転すると、前記第2ワンウェイクラッチによって前記駆動モータの駆動が前記ネジ軸に伝達されて前記底板が上昇し、前記駆動モータが前記一方向に回転すると、前記第2ワンウェイクラッチによって前記駆動の伝達が遮断される構成としてもよい。
【0019】
また、上記製パン機において、前記パン容器の底面には、上方から前記混練羽根が嵌合する開口部と、前記開口部の周囲に沿って延設され、前記混練羽根の上面と前記パン容器の底面の最上位置が略同一平面上に位置するように前記混練羽根を保持する段部が形成されるとともに、中空の台座が固設され、前記台座の中空部分の内側に前記段部が位置し、前記台座の内周面には、少なくとも1つの線状の凸部が垂直方向に延設される構成としてもよい。
【0020】
また、上記製パン機において、前記焼成室の底面には、前記パン容器の前記台座が嵌合する溝部が形成され、前記溝部の内周面には、前記台座の前記凸部と係合する少なくとも1つの線状の凹部が垂直方向に延設され、前記焼成室は、前記パン容器を加熱する加熱装置と、前記焼成室の底面の前記溝部の内側に設けられ、前記混練位置で前記パン容器の前記開口部に嵌合するシール部材を備え、前記シール部材は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記パン容器の底面の最上位置から最下位置までの距離以上の高さを持つ構成としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、焼成工程において混練羽根の上面とパン容器の底面の最上位置が略同一平面上に位置するため、焼き上がったパンに混練羽根による穴が形成されず、略平面状の底面を持つパンを提供することができる。従って、パンの外観も損なわれず、パン容器からパンを取り出しやすい。
【0022】
また、混練羽根の回転とパン容器の上昇という2つの動作が一つの駆動モータで実施されるため、昇降用のモータを別途設ける場合に比べて、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【0023】
また、混練工程後にパン容器の底面が混練羽根の側周面に沿って焼成位置まで上昇することで、混練工程中に混練羽根の周囲に付着したパン生地がパン容器内に戻される。つまり、パン容器の上昇過程で、混練羽根の周囲に付着したパン生地がパン容器の開口部によって掻き取られてパン容器内に戻される。従って、パン生地から抜き取った混練羽根にパン生地の一部が付着した状態のまま焼成工程を行なう構成と比べて、材料の無駄がほとんど出ない。
【0024】
また、一般的なパン容器に組み付けられているシャフトやカップリング部材等の部品が無いため、パン容器の洗浄や手入れが容易である。また、シャフトやカップリング部材等の部品が無いことで、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の製パン機の縦断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態の焼成室の説明図であって、図2(a)は焼成室の平面図、図2(b)は図2(a)のA‐A線に沿った焼成室の縦断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態のパン容器の説明図であって、図3(a)はパン容器の平面図、図3(b)は図3(a)のB‐B線に沿ったパン容器の縦断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態の混練羽根の斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態の製パン機におけるパン容器の装着状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】図6は、第1実施形態の製パン機の製パン工程を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態の製パン機の縦断面図である。
【図8】図8は、第2実施形態のパン容器の台座と焼成室の底面の中央部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の各図は理解を容易にするための模式的なものであり、図面上の寸法比率等は必ずしも実際のものとは一致しない。
【0027】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図5を参照しながら、本発明の第1実施形態の製パン機の構成を説明する。
【0028】
(製パン機の構成)
図1は、本発明の第1実施形態の製パン機の縦断面図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態の製パン機は、本体1、パン容器2、混練羽根3、焼成室4、駆動部5、操作部6、エレベータ7、制御部8を有する。
【0029】
本体1は、上蓋部1a、外壁部1b、内壁部1cを有する。上蓋部1aは、本体1の背面側(図1の右側)の外壁部1bの上端にヒンジ機構(図示せず)を介して開閉可能に取り付けられている。上蓋部1aと内壁部1cに取り囲まれた空間が焼成室4を形成している。焼成室4には、混練羽根3を装着したパン容器2が着脱可能に収容される。内壁部1cの底面と外壁部1bの底面の間の空間には、駆動部5が配置されている。本体1の正面側(図1の左側)の内壁部1cと外壁部1bの間の空間には、エレベータ7が配置されている。本体1の正面側の外壁部1bの上部には操作部6が設けられ、その下方に制御部8が配置されている。
【0030】
図2(a)、(b)に示すように、焼成室4の内壁には、パン容器2を加熱するヒータ4aがパン容器2の周囲を取り囲むように配置され、パン容器2の本体1への装着をガイドするガイドレール4cが垂直方向に延設されている。焼成室4の底面には、弾性樹脂等の材料からなるシール部材4bが設けられ、焼成室4の底面に形成された開口部とシール部材4bに形成された開口部を通じて駆動部5の回転軸5aが上方へ突出している。焼成室4の底面の開口部、シール部材4bの開口部、駆動部5の回転軸5aの横断面は、略等しい円形状に形成されている。シール部材4bは、後述するパン容器2の底面の外側における開口部2c(図3(b)参照)の形状と略等しい横断面を持ち、焼成室4にパン容器2が装着されると、シール部材4bは開口部2cに嵌合する。シール部材4bの機能については後述する。なお、焼成室4内には、エレベータ7の支持部材7aの一部と、支持部材7aに固定された底板7bが収容されている。
【0031】
上記のように構成された焼成室4には、パン容器2が着脱可能に収容される。アルミニウム合金等の金属で形成されるパン容器2は、図3(a)、(b)に示すように、ハンドル2a、スライダ2b、開口部2c、段部2dを有する。パン容器2は上面が開口し、使用者がパン容器2の持ち運びの際に把持するハンドル2aがパン容器2の上縁部に回動可能に取り付けられている。
【0032】
また、パン容器2の側周面には、焼成室4の内壁に設けたガイドレール4cに対して摺動するスライダ2bが垂直方向に延設されている。ガイドレール4cに対してスライダ2bが摺動することで、本体1へのパン容器2の装着が円滑に行なわれるとともに、図1に示すように、パン容器2に装着した混練羽根3と焼成室4のシール部材4bが垂直方向に重なり回転軸5aが混練羽根3に嵌合するように、パン容器2が焼成室4に対して適切に位置合わせされる。また、スライダ2bとガイドレール4cは、互いに係合することで、混練工程中に混練羽根3の回転によってパン容器2がぐらつかないようにパン容器2を固定する機能も持つ。パン容器2を安定的に固定するためには、スライダ2bとガイドレール4cを複数設けるのが好ましい。本実施形態では、一例として、スライダ2bとガイドレール4cを対向する位置に2つずつ設けている。なお、本実施形態では、スライダ2bとガイドレール4cを、それぞれ凸形状と凹形状としているが、凹形状と凸形状の組合せにしてもよい。
【0033】
また、パン容器2の底面には、混練羽根3が着脱可能に装着される開口部2cが設けられ、開口部2cの周囲には、混練羽根3の上面部3a(図4参照)を保持する段部2dが形成されている。従って、図3(b)に示すように、パン容器2に装着した混練羽根3(破線で示す)の上面とパン容器2の底面の最上位置(図5のUに相当)が略同一平面上になる。この状態で焼成工程が行なわれるため、焼き上がったパンの底には混練羽根3による穴が形成されず、略平面状の底面を持つ外観の良いパンが提供できる。なお、パンの離型性を向上させるため、パン容器2の内側表面にフッ素樹脂加工等を施してもよい。
【0034】
図3(b)に示すように、混練羽根3をパン容器2に装着した状態では、混練羽根3の底面がパン容器2の底面より下方に位置する。従って、使用者が作業台等の上でパン容器2にパン材料を投入する作業を行なう際には、パン容器2とは別に用意された中空の台座2eの上にパン容器2を載置する。台座2eは例えば円筒状に形成され、混練羽根3を保持するパン容器2の段部2dが台座2eの中空部分の内側に位置し、混練羽根3の上面とパン容器2の底面の最上位置が略同一平面上となる状態でパン容器2を支持するように構成されている。台座2eは作業台等の上で使用されるものであって、焼成室4に収容されることはないため、耐熱性は特に必要なく、プラスチック等の材料で形成してよい。また、本実施形態では台座2eを円筒状としているが、台座2eの形状はこれに限らない。例えば、上記中空部分の内側にパン容器2の段部2dが位置し、混練羽根3の上面とパン容器2の底面の最上位置が略同一平面上となる状態でパン容器2を安定的に載置できるものであれば、他の形状であってもよい。
【0035】
混練羽根3はアルミニウム合金等の金属で形成され、図4に示すように、パン容器2の段部2dに保持される上面部3a、パン材料を混練するブレード部3c、駆動部5の回転軸5aが嵌合する軸穴部3eを有する軸部3d、シール膜3b、底面部3gを有する。ブレード部3cと軸部3dは一体的に成形され、ブレード部3cと軸部3dを併せた部分は、上述した焼成室4のシール部材4bと同様に、パン容器2の底面の外側における開口部2cの形状と略等しい横断面を持つ。上面部3aの側周面は、弾性樹脂等の材料からなるシール膜3bで被覆されている。これにより、パン容器2に混練羽根3が装着された状態において密閉性が保たれ、パン容器2からパン材料またはパン生地が外に漏れ出すのを防ぐことができる。なお、ブレード部3cと軸部3dの側周面も同様に弾性材料からなるシール膜で被覆してもよい。これにより、パン容器2の本体1への装着時にパン容器2が混練羽根3に対して下降する際、また、後述する焼成位置への移動時にパン容器2が混練羽根3に対して上昇する際、つまり、パン容器2がブレード部3cと軸部3dの側周面に沿って垂直方向に移動する際、パン容器2と混練羽根3との間の密閉性を保つことができる。
【0036】
また、軸穴部3eは略D形状の横断面を持ち、同様のD形状の横断面を持つ回転軸5aの上部と係合する。さらに、軸穴部3eに対向する上面部3aの領域に磁性体3fを設ける。磁性体3fは、図5に示す回転軸5aの上端に設けられた磁性体5bと反対の極性を持ち、磁性体5bと磁性体3fが互いに引き合うことで、パン容器2の本体1への装着時に混練羽根3と回転軸5aとが確実に係合し、混練工程中に回転軸5aから混練羽根3が離脱するのを防ぐことができる。
【0037】
本実施形態では、軸穴部3eとこれに対応する回転軸5aの上部の横断面を略D形状としているが、他の形状でもよい。例えば、軸穴部3eと回転軸5aの上部が互いに係合可能な略等しい横断面を持っていれば、上記D形状以外の形状であってもよい。また、図4に示した例においては、ブレード部3cが混練羽根3の回転方向に湾曲した曲面状に形成されているが、ブレード部3cの形状はこれに限らない。例えば、ブレード部3cを平面状に形成したり、あるいは複数の平面から成るとともに混練羽根3の回転方向に湾曲した形状等に形成することができる。その場合、上記ブレード部3cの形状に応じて混練羽根3の上面部3a、焼成室4のシール部材4b、パン容器2の開口部2c等の形状を調整する。
【0038】
図5は、本体1におけるパン容器2の装着状態を示す。装着状態では、回転軸5aが焼成室4の開口部及びシール部材4bの開口部を通じて混練羽根3の軸穴部3eに嵌合し、回転軸5aの上端の磁性体5bと混練羽根3の磁性体3fとが磁力の働きにより互いに吸着している。また、混練羽根3の底面部3gとシール部材4bとの間には、混練羽根3がシール部材4bに接触せず良好に回転できるよう僅かな間隙が設けられている。混練羽根3とシール部材4bとの間に入り込むパン材料やパン生地の量を最小限に抑えるため、上記間隙は極力狭くすることが望ましい。なお、以下の説明において、図5の実線で示したパン容器2の位置を装着位置または混練位置、破線で示したパン容器2の位置を焼成位置という。つまり、上記実線で示した位置にパン容器2が装着され、この位置で混練工程が行なわれた後、上記破線で示した位置にパン容器2が移動して焼成工程が行なわれる。
【0039】
上記シール部材4bは、パン容器2の装着位置への下降時や焼成位置への上昇時において、混練羽根3の底面部3gと焼成室4の底面との間の空間をパン容器2の底面が垂直方向に移動する際に、パン容器2内のパン材料やパン生地が外に漏れ出すのを防ぐ役割を果たす。図5に示すように、混練工程において混練羽根3が段部2dを持つパン容器2の底面に接触することなく回転するためには、混練羽根3がパン容器2の底面の最上位置Uより上方に位置していなければならない。混練羽根3の底面部3gとシール部材4bとの間に設けられる上記間隙を考慮すると、シール部材4bの高さは、パン容器2の底面の最上位置Uから最下位置Lまでの距離以上に設定すればよい。なお、図5は、シール部材4bの高さがパン容器2の底面の最上位置Uから最下位置Lまでの距離と等しい場合を示している。
【0040】
図1に戻り、駆動部5は、内壁部1cの底面より下方に設けられ、回転軸5a、駆動モータ5c、第1プーリ5d、第2プーリ5e、無端ベルト5f、第1ワンウェイクラッチ(図示せず)を有する。駆動モータ5cの一方の出力軸には、第1ワンウェイクラッチを介して第1プーリ5dが設けられ、第1プーリ5dおよび第2プーリ5eには無端ベルト5fが張架されている。駆動モータ5cを一方向に回転駆動すると、第1ワンウェイクラッチ、第1プーリ5d、無端ベルト5f、および第2プーリ5eを介して駆動モータ5cの回転駆動が回転軸5aに伝達され、回転軸5aが回転する。それに伴い、回転軸5aに連結された混練羽根3が回転し、混練作業が行なわれる。一方、モータ5cを前記一方向とは反対の他方向に回転させると、第1ワンウェイクラッチが上記回転駆動の伝達を遮断するため、混練羽根3は回転しない。
【0041】
図1に示すように、エレベータ7は、本体1の正面側の内壁部1cと外壁部1bの間に設けられ、支持部材7a、底板7b、ネジ軸7c、ナット7d、第2ワンウェイクラッチ(図示せず)を有する。エレベータ7は、混練工程後にパン容器2を混練位置から焼成位置まで上昇させるためのものである。図1において、混練位置のパン容器2とエレベータ7を実線で、焼成位置のパン容器2とエレベータ7を破線で示す。図1に示すように、焼成位置において、パン容器2の底面の最上位置と混練羽根3の上面が略同一平面上に位置する。
【0042】
図1及び図2(a)に示すように、支持部材7aは、内壁部1cに垂直方向に形成されたスリット4dを通じて、その一部が焼成室4内に配置されている。なお、上記スリット4dの長さは、混練位置から焼成位置までの距離以上に設定される。
【0043】
支持部材7aの一端には、パン容器2が載置される底板7bの一辺が固定されている。本実施形態では、図2(a)に示すように、底板7bを略コの字型に形成し、その中央の開口部分の内側にパン容器2の段部2dが位置するように構成している。ただし、底板7bの形状はこれに限らない。例えば、中空の円盤形または矩形であって、中空部分の内側にパン容器2の段部2dが位置するように構成してもよい。
【0044】
また、支持部材7aの他端には、ナット7dが取り付けられている。ナット7dはネジ軸7cと螺合し、ネジ軸7cは第2ワンウェイクラッチを介して駆動モータ5cの他方の出力軸に取り付けられている。駆動部5の駆動モータ5cが前記他方向に回転するとネジ軸7cが回転し、これに螺合するナット7dが上方へ移動して支持部材7a及び底板7bが上昇する。一方、駆動モータ5cが前記一方向に回転すると、駆動モータ5cの回転駆動のネジ軸7cへの伝達が第2ワンウェイクラッチによって遮断されるため、支持部材7a及び底板7bは上昇しない。つまり、駆動モータ5cを一方向に回転させると混練羽根3が回転し、他方向に回転させるとエレベータ7の底板7bが上昇する。この構成により、混練羽根3の回転とエレベータ7の上昇という二つの異なる動作が一つの駆動モータ5cで実施される。従って、混練羽根回転用とエレベータ上昇用のモータを別々に設ける構成に比べて、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【0045】
なお、エレベータ7の下降に関しては、パン容器2を本体1へ装着する際に使用者が手で底板7bを押し下げることで実行される。底板7bの下降距離、つまりパン容器2の焼成位置から混練位置までの距離は、図5に示すように、混練羽根3の軸部3dの高さと同程度であって比較的短く、使用者は比較的簡単にエレベータ7を手で下降させることができる。従って、製パン機によるエレベータ7の下降動作は特に必要ではない。
【0046】
図1に戻り、操作部6は操作パネルや表示パネル(図示せず)を含む。操作パネルには、開始ボタンの他、パンの種類や、調理コース、調理時間等を選択するための各種選択ボタンや、選択内容を取り消すための取消ボタン等を含む複数の操作ボタン(図示せず)が設けられている。選択内容や各種メッセージ等は、表示パネルに表示される。使用者が操作パネルに入力した指示に基づき、制御部8が混練、焼成等を含む各種動作を制御する。
【0047】
(製パン機の製パン工程)
次に、本実施形態の製パン機の製パン工程を説明する。図6に示すように、本実施形態の製パン機の製パン工程は、パン容器2の本体1への装着(ステップS01)、混練工程(ステップS02)、一次発酵工程(ステップS03)、混練工程(ステップS04)、パン容器2の上昇(ステップS05)、最終発酵工程(ステップS06)、焼成工程(ステップS07)を含む。ステップS01のみ使用者によって行なわれ、ステップS02乃至S07は本実施形態の製パン機によって行なわれる。
【0048】
ステップS01では、図3(b)のように、まず、使用者は作業台等に中空の台座2eを置き、その台座2eの上にパン容器2を載置する。そして、混練羽根3を上方から開口部2cに装着する。この状態で、水、小麦粉、塩、イースト等のパン材料をパン容器2の中に投入する。次に、エレベータ7の底板7bが焼成室4の底面に当接していることを確認する。もし底板7bが焼成室4の底面より上方の位置にあれば、底板7bを焼成室4の底面まで手で押し下げておく。その後、パン容器2を本体1内に装着する。このとき、パン容器2の側周面に設けられたスライダ2bを焼成室4のガイドレール4cに対し摺動させながら、パン容器2の開口部2cに装着した混練羽根3に回転軸5aが嵌合するようにパン容器2を降ろす。パン容器2を装着位置に装着した後、上蓋部1aを閉じ、操作部6の操作ボタンを操作して所望の調理コース等を選択する。
【0049】
なお、パン容器2の装着時に底板7bが焼成室4の底面より上方の位置にある場合や、パン容器2が正しい装着位置に装着されていない場合等に、その状況を使用者に知らせるため、底板7bやパン容器2の位置をセンサで検知し、検知結果に応じて報知音を発する構成としてもよい。また、本実施形態では、本体1の外でパン材料をパン容器2に投入した後にパン容器2を本体1に装着しているが、パン容器2を本体1に装着してから材料を投入してもよい。さらに、本実施形態では、底板7bを焼成室4の底面に当接させているが、底板7bは、装着位置にあるパン容器2の底面と焼成室4の底面の間に位置していれば、必ずしも焼成室4の底面に当接させなくてもよい。
【0050】
次に、操作部6への入力に基づく制御部8からの指示に従って、駆動部5と混練羽根3による混練工程が行なわれる(ステップS02)。まず、駆動部5の駆動モータ5cが一方向に回転駆動される。これにより、駆動モータ5cの一方の出力軸に取り付けられた第1ワンウェイクラッチ、第1プーリ5d、無端ベルト5f、第2プーリ5e、回転軸5aを介して駆動モータ5cの回転駆動が混練羽根3に伝達され、混練羽根3が回転する。この混練羽根3の回転によりパン材料が混練され、パン材料からパン生地が形成される。所定の混練時間が経過すると、混練羽根3の回転が停止し、混練工程が終了する。
【0051】
次に、ヒータ4aに通電し、本体1に設けた温度センサ(図示せず)の測定値に基づいて焼成室4の内部を所定温度に保ち、一次発酵工程を行なう(ステップS03)。
【0052】
所定の発酵時間が経過した後、ステップS04の混練工程に進む。ステップS04の混練動作の仕組みはステップS02の混練動作と基本的に同じだが、ステップS02の混練工程がパン材料の混練が主な目的であるのに対して、ステップS04の混練工程は混練後のパン生地のガス抜きが主な目的であり、混練の時間や速度等はステップS02と異なる。所定の混練時間が経過すると、混練羽根3が所定の位置で停止し、混練工程が終了する。
【0053】
その後、パン容器2を図1の破線で示された焼成位置まで上昇させ(ステップS05)、最終発酵工程を行なう(ステップS06)。なお、パンの種類等により、上記混練工程と発酵工程を適宜繰り返してもよい。例えば、ステップS04の後にステップS03に戻って発酵工程を繰り返してもよい。
【0054】
ステップS05では、エレベータ7がパン容器2を焼成位置まで上昇させる。まず、制御装置8の指示に基づき、駆動部5のモータ5cが前記一方向と反対の他方向に回転する。これにより、第2ワンウェイクラッチを介してモータ5cの他方の出力軸に連結されたネジ軸7cが回転し、これに螺合するナット7dが上方へ移動し、支持部材7a及び底板7bが上昇する。そして、焼成位置、つまり混練羽根3の上面とパン容器2の底面の最上位置が略同一平面上となる位置までパン容器2が上昇したところで、エレベータ7が停止する。なお、混練羽根3は、上記ステップS04において所定の位置で停止するように設定されている。ここでいう所定の位置とは、混練羽根3がパン容器2の開口部2cの内側に位置するとともに、シール部材4bと垂直方向に重なり合う位置である。例えば、位置センサ等を用いて混練羽根3が所定の位置で停止するよう制御部8が動作制御を行なう。このように停止位置を予め設定しておくことにより、ステップS05において、パン容器2の上昇とともに混練羽根3が上昇することなく、パン容器2のみが上昇する。
【0055】
ステップS06では、ステップS03の一次発酵工程と同様に、ヒータ4aに通電して焼成室4の内部を所定温度に保って最終発酵工程を行なう。そして、所定の発酵時間が経過した後、焼成工程に移る(ステップS07)。
【0056】
ステップS07では、ヒータ4aによってパン容器2が所定温度で加熱される。そして所定の焼成時間が経過すると、ヒータ4aの通電が停止し、焼成工程が終了する。
【0057】
以上の工程を経てパンが焼き上がると、使用者はパン容器2を本体1から取り出し、作業台等の上でパン容器2からパンを取り出す。この際、混練羽根3はパン内部に埋没せず、混練羽根3の上面がパン容器2の底面の最上位置と略同一平面上にあるため、パンの底に混練羽根3による穴が形成されない。従って、略平面状の底面を持った外観の良いパンが提供できるとともに、パン容器2からパンが取り出しやすい。なお、パンの離型性をさらに向上させるために、混練羽根3の上面部3aにフッ素樹脂加工等を施してもよい。
【0058】
このように、上記構成の本実施形態の製パン機によれば、パンの底に混練羽根による穴を形成することなく、略平面状の底面を持つ外観の良いパンを提供することができ、パン容器2からパンが取り出しやすい。
【0059】
また、本実施形態の製パン機によれば、混練羽根3の回転とパン容器2の上昇という2つの動作が一つの駆動モータ5cで実施される。従って、昇降用のモータを別途設ける場合に比べて、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【0060】
また、混練工程後にパン容器2の底面が混練羽根3の側周面に沿って混練羽根3の上面部3aまで上昇することで、混練工程中に混練羽根3の周囲に付着したパン生地がパン容器2内に戻される。つまり、パン容器2の上昇過程で、混練羽根3の軸部3dやブレード部3cの周囲に付着したパン生地が、パン容器2の開口部2cによって掻き取られてパン容器2内に戻される。従って、材料の無駄がほとんど出ない。
【0061】
また、一般的なパン容器では、シャフト、カップリング部材、台座等の部品が組み付けられているのに対し、本実施形態のパン容器2はそのような部品を設けていない。従って、パン容器2の洗浄や手入れが容易であるとともに、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には同じ参照番号を付して重複する説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0063】
図7は、本発明の第2実施形態の製パン機の縦断面図である。図8は、第2実施形態のパン容器の台座と焼成室の底面の中央部の平面図である。本実施形態と第1実施形態との違いは、パン容器200と焼成室40の構成にある。
【0064】
本実施形態のパン容器200においては、第1実施形態の台座2eに相当する中空の台座200eがパン容器200の底面に固設されている。これにより、パン容器200は作業台等の上に安定的に載置される。第1実施形態の台座2eと同様、台座200eは例えば円筒状に形成され、混練羽根3を保持するパン容器200の段部2dが台座200eの中空部分の内側に位置するように構成されている。台座200eはパン容器200に固定されているため、パン容器200とともに焼成室40内に収容され、ヒータ4aによる加熱を受ける。そのため、台座200eは耐熱性のある例えばアルミニウム合金等の金属等で形成される。また、本実施形態の台座200eは円筒状に形成しているが、上記中空部分の内側にパン容器200の段部2dが位置し、混練羽根3の上面とパン容器200の底面の最上位置が略同一平面上に位置する状態でパン容器200を安定的に支持できるものであれば、他の形状であってもよい。
【0065】
図8に示すように、台座200eの内周面には線状の凸部200bが垂直方向に延設され、この凸部200bが、後述する焼成室40の底面の中央部40eに設けられた線状の凹部40fに係合する。凹部40fに対して凸部200bが垂直方向に摺動することで、本体1へのパン容器200の装着が円滑に行なわれる。また、凸部200bと凹部40fが係合することで、混練工程中に混練羽根3の回転によってパン容器200がぐらつくのを抑えることができる。パン容器2を安定的に固定するには、凸部200bと凹部40fを複数設けるのが好ましい。本実施形態では、一例として、凸部200bと凹部40fを一定間隔で4つずつ設けている。
【0066】
本実施形態の焼成室40においては、上記パン容器200の台座200eの内側部分に対応する焼成室40の底面の領域が中央部40eとして形成されている。中央部40eは、例えば円筒状に形成され、台座200eに係合する。上述したように、中央部40eの側周面には、台座200eの線状の凸部200bに係合する線状の凹部40fが垂直方向に延設されている。また、中央部40eにはシール部材4bが設けられ、図2(b)に示す第1実施形態と同様に、焼成室40の底面に形成された開口部とシール部材4bに形成された開口部を通じて駆動部5の回転軸5aが上方へ突出している。
【0067】
図7に示すように、上記中央部40eは溝部40gによって画定されている。パン容器200を本体1に装着した状態において、溝部40gの底面にはパン容器200の台座200eの底面が当接している。
【0068】
上記のように構成された本実施形態では、台座200eの凸部200bと中央部40eの凹部40fが第1実施形態のスライダ2bとガイドレール4cの機能をそれぞれ果たしている。そのため、本実施形態では第1実施形態のスライダ2bとガイドレール4cを設けていないが、本体1へのパン容器200の装着をより円滑にし、混練工程中のパン容器200のぐらつくのをより抑えるため、スライダ2bとガイドレール4cを追加してもよい。なお、上記パン容器200と焼成室40以外、本実施形態の構成は前述した第1実施形態と同様である。また、製パンの手順も前述した第1実施形態の手順と同様である。
【0069】
また、本実施形態では台座200eを円筒状としているが、第1実施形態と同様、台座200eの形状はこれに限らず、上記中空部分の内側にパン容器200の段部2dが位置し、混練羽根3の上面とパン容器200の底面の最上位置が略同一平面上に位置する状態でパン容器200を安定的に支持できるものであれば、他の形状であってもよい。同様に、焼成室40の底面の中央部40eの形状も円筒状に限らず、パン容器200の台座200eの形状に応じて他の形状に構成してもよい。また、本実施形態では台座200eに凸部を形成し、中央部40eに凹部を形成しているが、台座200eに凹部を形成し、中央部40eに凸部を形成してもよい。
【0070】
上記構成の本実施形態の製パン機によれば、第1実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、第1実施形態とは異なりパン容器2に台座200eが組み付けられているものの、それ以外にシャフトやカップリング材等の部品を含まないため、そのような部品が組み付けられている一般的なパン容器に比べると、パン容器200は洗浄や手入れが容易であり、製造コストおよび本体サイズの増大を抑えることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者の通常の知識に基づいて、種々の変更を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…本体
1a…上蓋部
1b…外壁部
1c…内壁部
2…パン容器
2a…ハンドル
2b…スライダ
2c…開口部
2d…段部
2e…台座
3…混練羽根
3a…上面部
3b…シール膜
3c…ブレード部
3d…軸部
3e…軸穴部
3f…磁性体
3g…底面部
4…焼成室
4a…ヒータ
4b…シール部材
4c…ガイドレール
4d…スリット
5…駆動部
5a…回転軸
5b…磁性体
5c…駆動モータ
5d…第1プーリ
5e…第2プーリ
5f…無端ベルト
6…操作部
7…エレベータ
7a…支持部材
7b…底板
7c…ネジ軸
7d…ナット
8…制御部
200…パン容器
200b…凸部
200e…台座
40…焼成室
40e…中央部
40f…凹部
40g…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製パン機本体内に設けられ、パンの焼成を行なう焼成室と、
パン材料が投入され、前記焼成室内に着脱可能に収容されるパン容器と、
前記パン容器に着脱可能に装着され、パン材料を混練する混練羽根と、
前記混練羽根を回転駆動させる駆動部と、
前記パン容器を混練位置から焼成位置まで上昇させるエレベータを備え、
前記混練位置では前記混練羽根の底面が前記パン容器の底面の最上位置より上方に位置し、前記焼成位置では前記混練羽根の上面が前記パン容器の底面の最上位置と略同一平面上に位置し、
前記混練位置で前記混練羽根による混練工程が終了した後、前記エレベータが前記パン容器を前記焼成位置まで上昇させ、前記焼成位置で前記パン容器が加熱されて焼成工程が行なわれる製パン機。
【請求項2】
前記パン容器の底面には、上方から前記混練羽根が嵌合する開口部と、前記開口部の周囲に沿って延設され、前記混練羽根の上面と前記パン容器の底面の最上位置が略同一平面上に位置するように前記混練羽根を保持する段部が形成され、
前記パン容器の側周面には、少なくとも1つのスライダが垂直方向に延設される、請求項1に記載の製パン機。
【請求項3】
前記パン容器から独立した中空の台座をさらに備え、
前記台座の上に前記パン容器を載置した状態において、前記パン容器の前記段部が前記台座の中空部分の内側に位置する、請求項2に記載の製パン機。
【請求項4】
前記焼成室は、
前記パン容器を加熱する加熱装置と、
垂直方向に延設され、前記パン容器の前記スライダと係合する少なくとも1つのガイドレールと、
前記焼成室の底面に設けられ、前記混練位置で前記パン容器の前記開口部に嵌合するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記パン容器の底面の最上位置から最下位置までの距離以上の高さを持つ、請求項2に記載の製パン機。
【請求項5】
前記混練羽根は、
パン材料を混練するブレード部と、
前記駆動部の回転軸が嵌合する軸穴部を有する軸部と、
前記パン容器の前記段部に保持される上面部と、
前記上面部の側周面を被覆するシール膜と、
前記軸穴部に対向する前記上面部の領域に設けられ、前記駆動部の前記回転軸の上端に設けられた磁性体と反対の極性を持つ磁性体を備え、
前記ブレード部と前記軸部を併せた部分は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記混練工程終了後に前記開口部の内側に位置する、請求項2に記載の製パン機。
【請求項6】
前記駆動部は、
前記混練羽根に嵌合するとともに、前記混練羽根の上面部に設けられた磁性体と反対の極性を持つ磁性体が上端に設けられた回転軸と、
2方向に回転駆動する駆動モータと、
前記駆動モータの一方の出力軸に接続された第1プーリと、
前記回転軸の下端に接続された第2プーリと、
前記第1及び第2プーリに張架された無端ベルトと、
前記駆動モータの前記一方の出力軸と前記第1プーリの間に介設される第1ワンウェイクラッチを備え、
前記駆動モータが一方向に回転すると、前記第1ワンウェイクラッチによって前記駆動モータの駆動が前記第1プーリに伝達されて前記回転軸が回転し、前記駆動モータが他方向に回転すると、前記第1ワンウェイクラッチによって前記駆動の伝達が遮断される、請求項1に記載の製パン機。
【請求項7】
前記エレベータは、
前記駆動モータの他方の出力軸に接続されたネジ軸と、
前記ネジ軸に螺合するナットと、
前記ナットに一端が接続され、他端が前記焼成室内に配置される支持部材と、
前記支持部材に固定され、前記パン容器が載置される底板と、
前記駆動モータの前記他方の出力軸と前記ネジ軸の間に介設される第2ワンウェイクラッチを備え、
前記駆動モータが前記他方向に回転すると、前記第2ワンウェイクラッチによって前記駆動モータの駆動が前記ネジ軸に伝達されて前記底板が上昇し、前記駆動モータが前記一方向に回転すると、前記第2ワンウェイクラッチによって前記駆動の伝達が遮断される、請求項6に記載の製パン機。
【請求項8】
前記パン容器の底面には、上方から前記混練羽根が嵌合する開口部と、前記開口部の周囲に沿って延設され、前記混練羽根の上面と前記パン容器の底面の最上位置が略同一平面上に位置するように前記混練羽根を保持する段部が形成されるとともに、中空の台座が固設され、
前記台座の中空部分の内側に前記段部が位置し、前記台座の内周面には、少なくとも1つの線状の凸部が垂直方向に延設される、請求項1に記載の製パン機。
【請求項9】
前記焼成室の底面には、前記パン容器の前記台座が嵌合する溝部が形成され、前記溝部の内周面には、前記台座の前記凸部と係合する少なくとも1つの線状の凹部が垂直方向に延設され、
前記焼成室は、
前記パン容器を加熱する加熱装置と、
前記焼成室の底面の前記溝部の内側に設けられ、前記混練位置で前記パン容器の前記開口部に嵌合するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記パン容器の底面の外側における前記開口部の形状と略等しい横断面を持ち、前記パン容器の底面の最上位置から最下位置までの距離以上の高さを持つ、請求項8に記載の製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−52109(P2013−52109A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192224(P2011−192224)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(711008629)
【Fターム(参考)】