説明

製品の製造方法

【課題】回転検出センサの製造工程においてパレットレス化を実現する。
【解決手段】射出成形工程(S100)では、ワーク200に対して、板部70、71および延出部74a、74bからなる支持部を設け、ワーク200自体が自立した状態で搬送装置300により各加工工程(S130〜S160)の位置に搬送される。したがって、ワーク200を搬送装置300により各加工位置に搬送する際に、パレットを用いる必要が無くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形によりワークを成型し、この成型されたワークをパレットに載せてワークを自立させ、このワークをパレットとともに搬送装置により各加工機器のそれぞれの位置に搬送して、この搬送したワークを各加工機器により加工・組立して製品を完成する製造方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−176747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の製造方法では、パレットの上でワークを自立させるために、製品毎に種類の異なるパレットを用意することが必要となっている。このため、パレットの製造コストの増加を招いたり、パレットの収納スペース不足を招いている。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、パレットレスで成型製品を製造することを可能とする製品の製造方法を提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、ワークを成形する成型工程(S100)と、成型工程により成型されたワークを加工する加工工程(S130、S140)と、を有し、成型工程により成型されたワークを搬送装置(300)により加工工程の加工位置に搬送する成型製品の製造方法であって、成型工程では、成型製品の加工前の状態である製品部(1A)と、この製品部を支持してワークを自立可能にする支持部(70a、70b、74a、74b)とが一体成型されてなるものをワークとして成型し、ワークは、支持部によって自立させた状態で、搬送装置により加工位置に搬送されることを第1の特徴とする。
【0006】
これにより、ワークを支持部により自立させた状態で、搬送装置によりワークを加工位置に搬送する際に、ワークを支持部により自立させることが可能になるので、パレットを用いる必要がなくなる。
【0007】
なお、「ワーク」とは、鋳造や射出成形において成形型から取り外された成形品であって、製品化するための加工前の加工対象物となるものである。
【0008】
本発明は、成型工程では、ランナにより成形されるランナ成形物として前記支持部を成型することを第2の特徴とする。
【0009】
本発明は、成型工程では、前記製品部を挟むように配置される2枚の板状部材(70a、70b)と、前記2枚の板状部材からそれぞれ前記製品部に向けて延びるように形成されて前記製品部を宙づり状態にして支持する延出部(74a、74b)とからなるものを前記支持部として成型すること第3の特徴とする。
【0010】
本発明は、前記加工工程の終了後に前記製品部から前記支持部を外す外し工程(S150)と、前記外し工程で外された前記支持部を前記成型工程の原材料として再利用するために粉砕する粉砕工程(S170)と、を有することを第4の特徴とする。
【0011】
これにより、支持部を成型工程の原材料として再利用することができるので、成型工程で用いる原材料を減らすことができる。
【0012】
本発明は、加工工程に先だって、前記支持部に当該製品の識別情報を付けるマーキング工程を有することを第5の特徴とする。
【0013】
これにより、加工工程では支持部の識別情報に基づいて製品の識別を図ることができるので、ワークの加工を行い易くなる。
【0014】
本発明は、前記成型工程では、前記支持部に当該製品の識別情報を付けるように前記支持部を成型することを第6の特徴とする。
【0015】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る製品の製造方法を回転検出センサの製造方法に適用した一実施形態について、図1、図2に基づいて説明する。
【0017】
図1は本実施形態に係る回転検出センサを示す側面図である。なお、図1において、説明の便宜のためキャップ3内を図示しており、磁石2は断面構成を示している。図2は本実施形態に係る回転検出センサの磁石2およびキャップ3のない状態を示しており、(a)は平面図で、(b)は側面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の回転検出センサは、センサ本体1と、磁石2とからなる。
【0019】
図2(a)、(b)に示すように、センサ本体1は、略円柱状のハウジング部4を備えており、ハウジング部4は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂にて形成されている。
【0020】
ハウジング部4には、一端側から外方向に向けて板状に延出する被加工部41が設けられている。ハウジング部4の他端側には、コネクタ部42が設けられている。
【0021】
被加工部41には、電子部品(ICチップ)5が実装されている。電子部品5には、磁界の変化に伴った出力を発生するセンサIC51と、センサIC51からの出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し出力するロムIC52とがある。センサIC51には、MRE(磁気抵抗効果)素子が形成されている。
【0022】
センサIC51は、MRE素子が歯車状の着磁ロータ200の外周面に対向するように配置され、磁石2からの磁気(磁束)に基づいて着磁ロータ200の回転検出を行うように構成されている。
【0023】
ここで、コネクタ部42から被加工部41にかけてターミナル6が配置されている。ターミナル6の一端がコネクタ部42の内側に位置し、ターミナル6の他端がロムIC52と接続されている。このターミナル6は、ハウジング部4の内部にて固定されている。回転検出センサは、コネクタ部42の内側のターミナル6の一端と外部装置(図示せず)とを接続することで、センサIC51からの出力信号が外部装置に受信されるようになっている。
【0024】
図1に戻り、センサ本体1には、被加工部41を覆うようにキャップ状の磁石2が取り付けられている。磁石2は、被加工部41および被加工部41に実装された電子部品5に当たらないように配置されている。
【0025】
センサ本体1には、後述するように、治具により把持される被把持部4aが設けられており、被把持部4aは、コネクタ部42および被加工部41の間に設けられおり、被把持部4aは、図3に示すように、表面から内側に4つの凹部4bを形成することにより、断面略十字状に形成されている。図3は図1中A−A断面図である。
【0026】
次に、回転検出センサの製造方法について図4を参照して説明する。図4は回転検出センサの製造工程を示す図である。
【0027】
まず、射出成形工程(S100)では、ワーク200を成型する。ワーク200は、図5に示すように、回転検出センサ(センサ本体1)の加工前の状態である製品部1Aに対して、ランナ成形物70、およびスプール成形物72が繋がっているものである。
【0028】
ランナ成形物70は、成型型のうちランナ内に充填された樹脂からなるものである。本実施形態では、ランナ成形物70は、ワーク200を自立可能にするための支持部を構成するものであり、具体的には、ランナ成形物70は、製品部1Aを挟むように配置される板部70a、70bと、板部70a、70bから製品部1Aに向けて延出して製品部1Aを宙づり状態にして支持する延出部74a、74bとからなる。スプール成形物72は、成型型のうちスプール内に充填された樹脂からなるものである。
【0029】
ここで、製品部1Aは、ハウジング部4(コネクタ部42、被加工部41)に対してターミナル6が一体成型されてなるものである。
【0030】
また、板部70aには識別情報部73が設けられており、識別情報部73は、例えば、凹部を「1」、凸部を「0」(或いは、凹部を「0」、凸部を「1」)とし、凹部および凸部を所定パターンで一列に並べて、Nビットの識別情報を構成するものであり、識別情報部73は製品の識別を示す情報である。
【0031】
次に、ランナの整形工程(S110)に移行して、ワーク200から不要物としてのスプール成形物72を取り外す。これにより、ワーク200は、図6に示すように、製品部1Aに対してランナ成形物70が繋がっているものである。
【0032】
その後、ワーク200を搬送装置300に載せる。このとき、ワーク200の板部70、71が搬送方向に平行に配置され、ワーク200自体が、板部70、71および延出部74a、74bによって製品部1Aを宙づり状態で自立している。
【0033】
次に、ワーク200が搬送装置300により部品実装位置に搬送されて部品実装工程(S130)に移る。ここでは、被加工部41を下方から支える治具G1が設置され、被加工部41に対して電子部品5を実装する。
【0034】
次に、ワーク200が搬送装置300により部品組付位置に搬送されて部品組付位置工程(S140)に移る。ここでは、被加工部41を上下方向から支える治具G2が設置され、被加工部41に対してキャップ状の磁石2を組み付ける。 治具G2は、センサ本体1の被把持部4aを上下方向から挟み込んで水平方向および垂直方向の位置決めして支えるものである。
【0035】
次に、ワーク200が搬送装置300によりランナカット位置に搬送されてランナカット工程(S150)に移る。ここでは、ワーク200のうち板部70、71および延出部74a、74bを切断する。
【0036】
その後、ロボット移送工程(S160)では、ロボットにより、製品部1Aを梱包用箱に入れて完成品となる。
【0037】
また、粉砕工程(S170)では、ワーク200から切断された板部70、71および延出部74a、74bは、粉砕されて、ワーク200の射出成形に用いられる。
【0038】
以上説明した本実施形態によれば、ワーク200に対して、板部70、71および延出部74a、74bからなる支持部を設け、ワーク200自体が自立した状態で搬送装置300により各加工位置に搬送される。したがって、ワーク200を搬送装置300により各加工位置に搬送する際に、パレットを用いる必要が無くなる。
【0039】
本実施形態では、ランナカット工程(S150)により、ワーク200のうち板部70、71および延出部74a、74bを切断し、粉砕工程(S170)では、ワーク200から切断された板部70、71および延出部74a、74bを粉砕してその後ワーク200の射出成形に用いる。
【0040】
これにより、支持部を成型工程の原材料として再利用することができるので、成型工程で用いる原材料を減らすことができる。
【0041】
本実施形態では、射出成形工程(S100)では、板部70aに識別情報部73(当該製品の識別情報)を付けて記支持部を成型する。したがって、加工工程(S110〜S150)では支持部の識別情報に基づいて製品の識別を図ることができるので、ワークの加工を行い易くなる。
【0042】
本実施形態では、部品組付工程では、製品部1Aを治具G2により水平方向および垂直方向で位置決めした状態で、被加工部41に対してキャップ状の磁石2を容易に組み付けることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、治具G2としては、センサ本体1の被把持部4aを上下方向から挟み込んで水平方向および垂直方向の位置決めして支えるものについて説明したが、これに代えて、図7に示すように、センサ本体1の被把持部4aを左右方向から挟み込んで水平方向および垂直方向の位置決めして支える治具G3を用いても良い。
【0043】
本発明の実施に際して、製品部1Aのうち被加工部41を支持部に対して相対的に同一位置になるように製品毎にワークを成型してもよい。
【0044】
これにより、製品が異なりその形状が異なる場合でも、支持部に対して被加工部41を相対的に同一位置にすれば、加工機側で変更を加えなくても、ワーク200の加工を行うことができる。
【0045】
本発明の実施に際して、加工工程(S110〜S160)に先だって、支持部に対してレーザーマーキングにより当該製品の識別情報を付けるマーキング工程を設定しても良い。
【0046】
これにより、加工工程では支持部の識別情報に基づいて製品の識別を図ることができるので、ワークの加工を行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転検出センサの構造を示す図である。
【図2】上述の実施形態に係る回転検出センサの構造を示す図である。
【図3】図1中のA−A断面図である。
【図4】上述の実施形態に係る回転検出センサの製造工程を示す図である。
【図5】上述の実施形態に係る回転検出センサのワークを示す斜視図である。
【図6】上述の実施形態に係る回転検出センサのワークを示す斜視図である。
【図7】上述の実施形態に係る治具の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1…センサ本体、1A…製品部、2…磁石、4…ハウジング部、
41…被加工部、42…コネクタ部、5…電子部品、
51…センサIC、51…センサIC、70…ランナ成形物、
72…スプール成形物、70a、70b…板部、73…識別情報部、
74a、74b…延出部、200…ワーク、300…搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを成形する成型工程(S100)と、
前記成型工程により成型されたワークを加工する加工工程(S130、S140、S150)と、を有し、
前記成型工程により成型されたワークを搬送装置(300)により前記加工工程の加工位置に搬送する成型製品の製造方法であって、
前記成型工程では、前記成型製品の加工前の状態である製品部(1A)と、この製品部を支持して前記ワークを自立可能にする支持部(70a、70b、74a、74b)とが一体成型されてなるものを前記ワークとして成型し、
前記ワークは、前記支持部によって自立させた状態で、前記搬送装置により前記加工位置に搬送されることを特徴とする成型製品の製造方法。
【請求項2】
前記成型工程では、ランナにより成形されるランナ成形物として前記支持部を成型することを特徴とする請求項1に記載の成型製品の製造方法。
【請求項3】
前記成型工程では、前記製品部を挟むように配置される2枚の板状部材(70a、70b)と、前記2枚の板状部材からそれぞれ前記製品部に向けて延びるように形成されて前記製品部を宙づり状態にして支持する延出部(74a、74b)とからなるものを前記支持部として成型することを特徴とする請求項1または2に記載の成型製品の製造方法。
【請求項4】
前記加工工程の終了後に前記製品部から前記支持部を外す外し工程(S150)と、
前記外し工程で外された前記支持部を前記成型工程の原材料として再利用するために粉砕する粉砕工程(S170)と、
を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の成型製品の製造方法。
【請求項5】
前記加工工程に先だって、前記支持部に当該製品の識別情報を付けるマーキング工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成型製品の製造方法。
【請求項6】
前記成型工程では、前記支持部に当該製品の識別情報を付けるように前記支持部を成型することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成型製品の製造方法。
【請求項7】
前記加工工程では、前記製品部を治具により水平方向および垂直方向で位置決めした状態で、前記加工位置で前記ワークを加工することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の成型製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−201085(P2008−201085A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42199(P2007−42199)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】