説明

製本装置及び製本システム

【課題】接着剤の残量不足を防止し、適正に冊子を作製すること。
【解決手段】用紙束SSの背部に接着剤ADを塗布し冊子を作製する製本装置において、塗布ローラ602から用紙束SSの背部に塗布された接着剤ADの量が所定量以上になった場合、接着剤槽601内の接着剤ADの量が少なくなったものと判断し、固形状の接着剤であるペレットPTを接着剤槽601へ補給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙束の背部に接着剤を塗布し冊子を作製する製本装置及び製本システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等で画像を形成した複数枚の用紙の束に表紙を接合し、簡易的に冊子を作製する製本装置が知られている。一般的な製本技術の概要を説明すると、まず画像を形成した複数枚の用紙を集積・整合して用紙束を生成する。次に集積・整合した用紙束の背部に糊等の接着剤を塗布する。そして表紙を搬送させて所定位置に停止させ、表紙を用紙束の接着剤塗布面に接合する。このような手順で用紙束と表紙が一体となり冊子が作製される。
【0003】
冊子を作製すると用紙束の背部に塗布される接着剤が消費されるため、冊子を連続的に作製するためには製本装置内に一定量の接着剤を確保しなければならない。そこで従来より製本装置内に一定量の接着剤を確保する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の製本装置では、溶解した高温の接着剤を貯留する接着剤溜が設置されている。この接着剤溜には熱電対が設置されており、接着剤溜内の温度を検知している。接着剤溜内の接着剤の残量が多いと、溶解した接着剤が熱電対に接触し、熱電対により検知される温度は高いが、接着剤の残量が少ないと、溶解した接着剤が熱電対に接触せず、熱電対により検知される温度は低くなる。従って熱電対により検知される温度が所定温度以下になった場合は接着剤の残量が少ないものとみなし、接着剤溜に固形状の接着剤を補給するようにしている。このような動作により接着剤溜には一定量の接着剤が確保される。
【特許文献1】特開2004−209746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では接着剤溜内の温度を検知することにより接着剤の残量が少ないかどうか判断しているが、接着剤の残量が少ない状態でも接着剤溜内のヒータ等の影響で熱電対により検知される温度が所定温度以下にならない場合がある。その結果、接着剤の残量が少ない状態にもかかわらず固形状の接着剤が補給されず、接着剤の残量不足により冊子の作製が適正に行われない場合がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、接着剤の残量不足を防止し、適正に冊子の作製を行う製本装置及び製本システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係る製本装置は、
用紙束の背部に接着剤を塗布し冊子を作製する製本装置であって、
接着剤を収容する接着剤槽と、
固形状の接着剤を前記接着剤槽へ補給する補給部と、
前記接着剤槽へ補給された固形状の接着剤を溶解する溶解部と、
前記用紙束の背部に接着剤を塗布する塗布部と、
前記塗布部により塗布された接着剤の量が所定量以上になった場合、前記補給部より前記接着剤槽へ固形状の接着剤を補給すべく、前記補給部を制御する制御部と、
を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る製本システムは、
用紙に画像を形成する画像形成装置と、
当該画像形成装置から出力される用紙を受け取って冊子を作製する請求項1乃至4の何れか1項に記載の製本装置と、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る製本装置及び製本システムによれば、接着剤の残量不足を防止し、適正に冊子を作製することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、製本システムの中央断面図である。
【0011】
製本システムは画像形成装置A及び製本装置Bを有する。
【0012】
画像形成装置Aは電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、画像形成部A1、原稿搬送部A2、及び画像読取部A3を有する。画像形成部A1において、ドラム状の感光体1の周囲に帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5A、分離装置5B及びクリーニング装置6が配置されており、帯電、露光、現像及び転写の各プロセスが実行され、用紙S1、表紙S2にトナー像が形成される。製本された場合に表紙S2にくるまれる用紙S1は2つの給紙トレイ7Aに収納されており、表紙S2は給紙トレイ7Bと製本装置Bの表紙収納部80に収納されている。給紙トレイ7A、7Bから用紙S1や表紙S2が1枚ずつ排出され、画像形成部A1へ搬送される。トナー像が転写された用紙S1、表紙S2は定着装置8を通過して定着処理される。定着処理された用紙S1、表紙S2は、排紙ローラ7Cから画像形成装置Aの外へ排出される。
【0013】
なお、本実施形態における画像形成装置Aは電子写真方式により用紙にモノクロ画像を形成するものであるが、本発明に係る画像形成装置は本実施形態に限定されるものではなく、カラー画像形成装置であってもよいことは勿論のこと、その画像形成方式も電子写真方式以外のどのような画像形成方式であっても構わない。
【0014】
製本装置Bは、画像形成装置Aから出力される用紙S1を受け取って複数枚束ねて用紙の束とし、当該束に表紙S2を接合して冊子を作製する。製本装置Bは、搬送部10、排紙皿20、用紙反転部40、集積部50、塗布ユニット60、用紙束に表紙S2を接合する接合部90、本排出部100を有する。画像形成装置Aから製本装置Bへ搬送されてきた用紙S1は、搬送部10に設けられた切り替えゲート11により、排出路12を経て排紙皿20に排出されるか又は用紙反転部40に搬送される。排紙皿20には、製本装置Bにおいて製本しない場合に用紙S1が排出される。
【0015】
製本装置Bにおいては、用紙S1は搬送路13を経て用紙反転部40に搬送され、用紙反転部40においてスイッチバックした後に、集積部50に搬送される。集積部50において設定枚数の用紙S1が集積され、用紙S1が設定枚数に到達すると集積部50が回転し、用紙S1の束がほぼ垂直状態で保持される。そして用紙S1の束の背部である下面に塗布ユニット60によって接着剤が塗布され、用紙S1の束に表紙S2が接触し接着される。用紙S1の束に表紙S2が接着されて作成された冊子S3は本排出部100に排出される。
【0016】
表紙S2は給紙トレイ7Bのほかに表紙収納部80にも収納されており、表紙S2に画像を形成する場合は給紙トレイ7Bから排出され、表紙S2に画像を形成しない場合は表紙収納部80から排出される。表紙S2が長い不定形サイズである場合は、用紙S1のサイズ情報及び用紙束の厚さの情報により所定の長さでカッター81により断裁される。
【0017】
図2は用紙束に接着剤を塗布する工程を示す説明図である。
【0018】
モータMT1によって第2の挟持部材503が用紙S1の束である用紙束SSに向けて移動し、第2の挟持部材503が用紙束SSを一定の圧で押圧すると、モータMT1の駆動トルクの増大を駆動トルク検知センサ(図示せず)で検知して第2の挟持部材503の移動が停止する。このような構成により用紙束SSが第1の挟持部材502と第2の挟持部材503により強固に挟持される。第2の挟持部材503の移動量はエンコーダ509により測定され、RAM等に記憶される。用紙束SSの厚さを測定する方法は後述する。
【0019】
用紙束SSが第1の挟持部材502と第2の挟持部材503により挟持された段階で、受け板506が90°回転して、図2(b)に示すように退避する。受け板506が退避した段階では、用紙束SSの下面SAと塗布部として機能する塗布ローラ602は接触していない(図2(c)参照)。
【0020】
次に図2(d)に示すように、接着剤ADが収容されている塗布ユニット60が上昇して塗布ローラ602が用紙束SSの背部である下面SAに接触し、塗布ユニット60が用紙束SSの下面SAに沿って移動することによって、接着剤ADが用紙束SSの下面SAに塗布される。
【0021】
図3は用紙束に接着剤を塗布する工程を示す別の説明図である。
【0022】
塗布ローラ602を含む塗布ユニット60はモータMT2の駆動により矢印W2の方向及び矢印W3の方向に往復移動する。塗布ローラ602は往動時及び復動時にモータMT3の駆動で矢印W1の方向に回転する。塗布ローラ602が矢印W1の方向に回転すると、接着剤ADが接着剤槽601から汲み上げられ、塗布ローラ602によって用紙束SSの下面SAに塗布される。
【0023】
塗布ユニット60のホームポジションは図3に示す左側の位置(図1に示す製本装置Bの正面から見て奥側の位置)である。このホームポジションの位置において、固形状の接着剤であるペレットPTが補給部61の補給管63から接着剤槽601へ補給される。
【0024】
図4は塗布ユニット60の構成を示す説明図である。
【0025】
塗布ユニット60は接着剤ADを収容する接着剤槽601、塗布ローラ602、規制部材603、604、溶解部として機能するヒータ605、検知部として機能する残量検知センサ606等を有する。
【0026】
接着剤槽601に補給されたペレットPTはヒータ605により加熱されて溶解し、溶融状態の接着剤ADが形成される。接着剤槽601に収容された接着剤ADの量は残量検知センサ606により検知され、液面が一定になるよう制御されている。
【0027】
規制部材603は断面がほぼ円形の棒状部材である。
【0028】
規制部材604は板状の支持部材607により支持されている。規制部材604の下端エッジ604Bは塗布ローラ602上の接着剤の層厚を規制し、規制部材604の上端エッジ604Aは用紙束SSの下面SA上の接着剤の層厚を規制する。
【0029】
接着剤槽601は軸601Aを中心に回動して、点線で示す待機位置から実線で示す塗布位置に移動する
残量検知センサ606はサーミスタからなる温度検知素子を有し、接着剤槽601内の温度を検知する。溶融状態の接着剤ADが残量検知センサ606に接触すると検知温度が高く、溶融状態の接着剤ADが残量検知センサ606に接触しないと検知温度が低下する。従って、接着剤槽601内の接着剤の量が所定量以下になると、残量検知センサ606により検知される温度が所定温度以下になる。接着剤の残量の減少検知信号が出ると、ペレットPTが接着剤槽601に補給される。このように残量検知センサ606により接着剤槽601内の温度を検知すれば簡易に接着剤の残量を検知できる。
【0030】
補給部61を図5〜図8により説明する。
【0031】
図5は補給部61の断面図である。
【0032】
補給部61は、固形状の接着剤であるペレットPTを収容するホッパ62及びペレットPTが落下する補給管63により構成される。ホッパ62を構成する枠62Aは、以下に説明する諸部品を支持する。
【0033】
補給部61は図5に示す状態、即ち、ホッパ62及び補給管63が左下がりに傾斜した状態で製本装置Bに組み付けられており、ペレットPTは枠62Aの底面及び補給管63の底面に沿って落下し、接着剤槽601に補給される。
【0034】
FSはホッパ62から落下するペレットPTを検知する補給センサであり、発光素子FS1と受光素子FS2から構成される。補給センサFSにより、塗布ユニット60に補給されるペレットPTの数が検知される。補給センサFSによるペレットPTのカウント数は、補給されるペレットPTの数に比例する。
【0035】
ホッパ62の下部において、ペレットPTを搬送するベルト663がローラ664、666、667、669及び673により張架されている。ローラ666は駆動ローラであり、モータMT4により駆動されて反時計方向に回転する。
【0036】
ベルト663は拡大図5Aに示すように外周面に凹凸が形成されている。ベルト663の外周面に凹凸が形成されていることにより、ベルト663によりペレットPTが確実に搬送され、またベルト663とペレットPTとの接触面積を小さくして、ペレットPTのベルト663への固着が防止される。
【0037】
4個の押圧ローラ670はバネの付勢によりベルト663を枠62Aに押圧している。このようにベルト663を枠62Aに押圧することにより、ベルト663により搬送されるペレットPTの量をほぼ一定に保つことが出来る。
【0038】
ローラ664、666はローラ666の回転軸666Aを中心に揺動可能な支持板662により支持されており、支持板662は引っ張り型のバネ665により時計方向に付勢されている。このような構成によりベルト663には一定の張力が付与される。
【0039】
図6は補給部61が補給動作を開始する前の状態を示した図であり、ローラ669はペレットPTの排出口を狭くしている。ペレットPTはローラ669により支持されたベルト663によりブロックされてホッパ62に留まっている。
【0040】
図7は補給部61が補給動作を開始した状態を示した図であり、補給動作が開始されるとローラ669が左方に移動してベルト663が後退する。ベルト663が後退することによりペレットPTの排出口が広くなり、ペレットPTが落下する。落下したペレットPTはベルト663の搬送作用により枠62Aの底面に沿って移動することとなる。
【0041】
補給部61が補給動作を行う間、ローラ669は図6に示す位置と図7に示す位置とを往復する。この往復する動作によりペレットPTが少量ずつ制御された割合で落下し、接着剤槽601に補給される。
【0042】
ローラ669を往復移動させる駆動機構を図8により説明する。
【0043】
ローラ666の軸666Aにはローラ666と一体に回転する支持板675が固定されており、支持板675の一端に設けられたピン677にはリンク676が回転可能に支持されている。ローラ669の軸669Aは、リンク676に設けられた長孔676Aに嵌入している。ローラ669の軸669Aは引っ張り型のバネ668により図8の右方に付勢されている。従って、ローラ669はベルト663の張力とバネ668の付勢力により所定の位置に保持される。ローラ666が回転すると支持板675も回転するが、支持板675の回転によりリンク676の右端が図7の左右方向に移動する。この移動によりローラ669の位置が左右に移動して、ホッパ62のペレット排出口が図6の状態と図7の状態のように縮小・拡大する。この縮小・拡大が補給動作中に繰り返され、ペレットPTが少数個ずつ制御された割合で接着剤槽601に補給される。
【0044】
製本装置Bにおける塗布ユニット60及び補給部61は以上説明した通りであるが、ここで接着剤槽601における接着剤の残量について述べる。
【0045】
接着剤槽601内における残量検知センサ606が接着剤槽601内の温度を検知し、接着剤の残量が所定値以下になると、検知温度が所定温度以下になる。しかし、接着剤槽601内の接着剤の残量が少ない状態でも接着剤溜内のヒータ605などの影響で残量検知センサ605により検知される温度が所定温度以下にならない場合がある。その結果、接着剤槽601における接着剤の残量が少ない状態にもかかわらずペレットPTが補給部61から補給されず、接着剤の残量不足により冊子の作製が適正に行われない場合がある。
【0046】
そこで、通常の残量検知結果に基づく補給制御に加えて、塗布ローラ602により塗布された接着剤の量をもとにペレットPTを補給するようにする。塗布ローラ602により塗布された接着剤の量は用紙束SSの厚さに対応するため、本実施形態では用紙束SSの厚さを測定して、その測定結果によりペレットPTを接着剤槽601に補給するようにする。この点を図9〜図14を用いて詳しく説明する。
【0047】
まず、製本システムにおける制御系のブロック図を図9に示す。図9に示すブロック図は代表的なものだけを示す。
【0048】
画像形成装置Aにはパソコン等の端末であるPCと製本装置Bが接続されている。
【0049】
CPU101は画像形成装置A全体の動作を制御するものであり、ROM(Read Only Memory)102やRAM(Random Access Memory)103等に接続されている。このCPU101は、ROM102に格納されている各種制御プログラムを読み出してRAM103に展開し、各部の動作を制御する。また、CPU101は、RAM103に展開したプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM103に格納する。そして、RAM103に格納した処理結果を所定の保存先に保存させる。
【0050】
画像読取部A3によって生成された画像データや、画像形成装置Aに接続されたPCから送信される画像データは画像処理部104によって画像処理される。画像形成部A1は、画像処理部104によって画像処理された画像データを受け取り、シート上に画像を形成する。
【0051】
製本装置BにおけるCPU201(制御部)は製本装置B全体の動作を制御するものであり、画像形成装置Aから送信される信号に基づき所定のタイミングで冊子を作製する動作を実行する。CPU201はROM202に格納されている各種制御プログラムを読み出してRAM203に展開し、各部の動作を制御する。
【0052】
塗布ローラ602、補給部61の動作はCPU201によって制御される。固形状の接着剤であるペレットPTを補給部61から接着剤槽601へ補給するか否かは残量検知センサ606が検知した温度に基づいてCPU201が判断する。
【0053】
測定部204は用紙束SSの厚さを測定するものである。測定部204により測定された用紙束SSの厚さに基づいて、ペレットPTを補給部61から接着剤槽601へ補給するか否かをCPU201が判断する。
【0054】
測定部204によって用紙束SSの厚さを測定する動作を図10と図11を用いて説明する。
【0055】
図10は用紙束SSの厚さを測定する動作を示すフローチャート図であり、図11は第1の挟持部材502と第2の挟持部材503の動作に関する説明図である。測定方法を分かりやすくするために図11において不要な部材は省略している。
【0056】
図11(a)は第1の挟持部材502と第2の挟持部材503との間に用紙S1の束SSが集積されていない状態を示し、両挟持部材は傾斜している。なお、第2の挟持部材503は初期位置に位置する。この状態の際に第1の挟持部材502と第2の挟持部材503の初期間隔Aの測定を実行する。
【0057】
まず製本システム内の製本装置B等の電源が投入されると(図10のS1)、初期間隔Aを測定するプログラムがRAM203から読み出され、CPU201が測定動作を実行する。CPU201はモータMT1を作動し、第2の挟持部材503を初期位置から第1の挟持部材502へ向けて移動させる(図10のS2)。そしてモータMT1の駆動トルクが所定値に達したかどうかを駆動トルク検知センサ(図示せず)により検知する(図10のS3)。
【0058】
モータMT1の駆動トルクが所定値に達したと検知すると第2の挟持部材503の移動を停止させる(図10のS4)。第2の挟持部材503の移動が停止すると、図11(b)に示すように第1の挟持部材502と第2の挟持部材503が接触している状態になっている。第2の挟持部材の移動量はエンコーダ509によって測定されているため、この移動量が第1の挟持部材502と第2の挟持部材503の初期間隔Aとなる(図10のS5)。
【0059】
測定された初期間隔AはRAM203に記憶される。初期間隔Aの測定が終了すると、用紙束SSを集積されるために、第2の挟持部材を初期位置へ移動させる(図10のS6)。次に用紙S1の集積が完了すると(図10のS7)、軸501を軸として回転して、初期間隔Aを保ちながら第1の挟持部材502及び第2の挟持部材503が傾斜状態から垂直状態になる。そして、用紙束SSの厚さは製本装置Bにおける測定部204において測定される。測定部204は、第1の挟持部材502、第2の挟持部材503、モータMT1、駆動トルク検知センサおよび前記第2の挟持部材の移動量を検知するエンコーダ509を有している。まず、第2の挟持部材503を第1の挟持部材502へ向けて移動させ(図10のS8)、モータMT1の駆動トルクが所定値に達したかどうかを駆動トルク検知センサにより検知する(図10のS9)。モータMT1の駆動トルクが所定値に達したことを検知すると第2の挟持部材503の移動を停止させる(図10のS10)。第2の挟持部材503の移動が停止すると、図11(d)に示すように第2の挟持部材503と用紙S1が接触している状態になっている。第2の挟持部材の移動量(図11(c)におけるB)はエンコーダ509によって測定されている(図10のS11)。そしてRAM203から測定済みの初期間隔Aを読み出し、初期間隔Aから移動量Bを差し引くことで、用紙束SSの厚さが測定される(図10のS12)。図11における測定方法は第2の挟持部材503をモータMT1により移動させて用紙S1の束の厚さを測定するものであるが、第2の挟持部材503を移動させる形態に限らず第1の挟持部材502を移動させる形態であっても良い。また、第1の挟持部材502と第2の挟持部材503の双方にモータ、エンコーダを接続し、両挟持板を移動させて用紙S1の束の厚さを測定する形態であっても良い。
【0060】
次にペレットPTを補給部61から接着剤槽601へ補給する動作を詳しく説明する。
【0061】
図12はペレットPTを補給する動作を示すフローチャート図である。
【0062】
冊子を作製する動作がスタートすると、まず用紙束SSの厚さを測定する(ステップS21)。用紙束SSの厚さを測定する方法は図10及び図11で説明した通りである。
【0063】
用紙束SSの厚さを測定すると、用紙束SSの厚さの積算値Xを算出する(ステップS22)。この積算値XはステップS29で第2の補給動作を行うか否かを判断するために算出される。1部目の冊子を作製する動作であれば、積算値Xは1部目の用紙束SSの厚さとなり、2部目の冊子を作製する動作であれば、積算値Xは1部目と2部目の用紙束SSの厚さを加算した値となる。積算値Xは用紙束SSの厚さを測定する毎にRAM203に記憶される。
【0064】
用紙束SSの厚さの積算値Xを算出すると、次に塗布ローラ602により用紙束SSに接着剤を塗布し(ステップS23)、その後で接着剤槽601内の温度Tを残量検知センサ606により検知する。ここで検知した温度Tを補給禁止温度Tcと比較し、TがTcより高いかどうか判断する(ステップS24)。溶融状態の接着剤は高温であるため、接着剤槽601内の温度Tが補給禁止温度Tcよりも高いと、接着剤槽601には十分な接着剤が収容されていると判断できる。そのような状態でペレットPTを接着剤槽601へ補給してしまうと接着剤槽601から接着剤があふれてしまう可能性がある。そこで検知した温度Tと補給禁止温度Tcを比較し、TがTcより高い場合(ステップS24;Yes)は、ペレットPTを補給せず、ジョブが終了したかどうか判断する工程(ステップS32)へ移行する。補給禁止温度Tcは例えば150℃であり、ステップS24の判断はCPU201が判断する。TがTcより低い場合(ステップS24;No)は、更にペレットPTを接着剤槽601へ補給するかどうかの判断ステップへ移行する。
【0065】
まず、第2の補給動作の実行回数Yが3回より多いかどうか判断する(ステップS25)。第2の補給動作は後述するように用紙束SSの厚さの積算値Xに基づいて実行する補給動作である。ステップS25の判断は、接着剤槽601の接着剤の量を判断するための基準となる所定温度をTaにするかTbにするかを決定するために行う。例えばTaは132℃、Tbは137℃とし、両者の温度差を5℃とする。
【0066】
接着剤槽601内の残量検知センサ606により検知した温度が基準である所定温度より低ければ接着剤の量が少ないと判断し、所定温度より高ければ接着剤の量が多いと判断するわけであるが、製本装置Bが設置された環境等により接着剤の量を検知するために適した所定温度が異なる状況が考えられる。例えば製本装置Bをある環境下に設置した場合は低めの所定温度Taを基準とした方が適正に接着剤の量を検知でき、別のある環境下に製本装置Bを設置した場合は高めの所定温度Tbを基準とした方が適正に接着剤の量を検知できる場合もある。
【0067】
従ってまず最初は低めのTaを基準として接着剤の量を判断する。Taを基準として接着剤の量が多いと判断した後、用紙束SSの厚さの積算値Xに基づいて第2の補給動作が実行されるということは、基準となっているTaが適正な基準ではないと判断出来る。そこで第2の補給動作が3回以上実行された場合に高めのTbを基準とするように所定温度を変更する。つまり第2の補給動作の実行回数Yが3回より少ない場合(ステップS25;No)は基準となる所定温度を低い方のTaにし、3回より多い場合(ステップS25;Yes)は基準となる所定温度を高い方のTbとする。なお、基準となる所定温度をTa、Tbのどちらか一方に固定にする態様であっても良い。
【0068】
次にステップS26、S27で接着剤槽601内の残量検知センサ606により検知した温度Tが所定温度であるTaやTbより低い場合は、接着剤槽601内の接着剤の量が少ないものと判断できるため、第1の補給動作を実行する(ステップS28)。
【0069】
この第1の補給動作について図13を用いて説明する。
【0070】
図13は第1の補給動作を示すフローチャート図である。
【0071】
まず、固形状の接着剤であるペレットPTの適正な補給量を算出する(ステップS41)。補給量は直前に冊子として形成された用紙束SSの枚数により決定されるものであり、図14に用紙束SSの枚数とペレットPTの補給量との関係を示す。図14において横軸は用紙束SSの枚数P、縦軸は補給されるペレットPTの補給センサFSによるカウント数Nであり、図14は塗布ユニット60を用いて塗布実験を行って得られた結果である。
【0072】
適正な補給量を示す直線L1は次の式により表される。
【0073】
N=10+0.019P・・・・・式1
補給センサFSのカウント数Nは必ずしも補給するペレットPTの数に一致するわけではなく、実験例では補給センサFSの1カウントがペレット2.5個分に対応した。なお、実際の補給量は折れ線L2で示すように小数点以下を切り捨てたカウント数とした。図14に示す特性データがROM201に記憶されており、この特性データを参照してCPU201が補給量を算出する。
【0074】
CPU201により補給量が算出されると、次に補給動作を開始する(ステップS42)。補給動作は補給部63におけるモータMT4を起動させてペレットPTを補給する。
【0075】
そして補給量が適正値に達したか否かを判断し(ステップS43)、補給量が適正値に達すると補給動作を停止する(ステップS44)。補給量が適正値に達したか否かは補給センサFSの出力を監視し、補給センサFSのカウント値が適正値に達した段階でモータMT4の動作を停止し、補給動作を停止する。
【0076】
なお、ペレットPTの適正な補給量は図14に示すような補給量に限られるものではなく、常時一定量としても良い。
【0077】
図12のフローチャート図に戻って補給動作の説明を続ける。
【0078】
ステップS26、S27において、接着剤槽601内の残量検知センサ606により検知した温度TがTaやTbより低い場合、接着剤槽601内の接着剤の量が少ないものと判断し、第1の補給動作を実行することを説明した。(ステップS28)。しかし、接着剤溜601内のヒータ605などの影響で、接着剤槽601内の接着剤の残量が少ない状態でも残量検知センサ605により検知される温度TがTaやTbよりも高い場合があり得る。従って残量検知センサ606による検知結果だけでペレットPTの補給動作を行い、他に何ら対策がとられていないと、接着剤の残量が少ない状態にもかかわらずペレットPTが補給部61から補給されず、接着剤の残量不足により冊子の作製が適正に行われない状態が生じることがある。
【0079】
そこで、塗布ローラ602により塗布された接着剤の量に基づきペレットPTを補給するか否か判断するようにする。塗布ローラ602により塗布された接着剤の量は用紙束SSの厚さに対応する。用紙束SSの厚さの積算値Xが所定値以上であれば接着剤槽601の接着剤が消費されていると判断できる。このような考えのもとでステップS29では用紙束SSの厚さの積算値Xが70mmより多いかどうか判断する。なお「70mm」という基準は一例であり、他の数値であっても良い。ステップS29における判断はCPU201が判断し、RAM203に記憶された用紙束SSの厚さの積算値Xを参照して判断する。
【0080】
用紙束SSの厚さの積算値Xが70mm以上でなければ(ステップS29;No)、接着剤槽601の接着剤がそれほど消費されていないものと判断し、ペレットPTの補給動作を実行しない。一方、積算値Xが70mm以上であれば(ステップS29;Yes)、残量検知センサ606による検知結果にかかわらず、塗布ローラ602により用紙束SSに塗布された接着剤の量が所定量以上となり、接着剤槽601内の接着剤が消費されたものと判断し、第2の補給動作を実行する(ステップS30)。
【0081】
第2の補給動作は基本的に第1の補給動作と同様であるが、接着剤が多く消費されているものとして補給センサFSのカウント数が15になるまでペレットPTを補給する。
【0082】
そして第2の補給動作を実行した場合は、補給判断温度を適正なものとするため第2の補給動作の実行回数Yを1UPし(ステップS31)、ジョブが終了していなければ(ステップS32;No)、ステップS21〜S31の動作を繰り返す。
【0083】
以上ペレットPTを補給する動作を図12をもとに説明してきたが、ステップS29、S30で実行したように用紙束SSに塗布された接着剤の量(図12では用紙束SSの厚さの積算値X)が所定値(図12では70mm)以上になった場合に接着剤を補給すれば、接着剤の残量不足を防止でき、適正な冊子を作製することが出来る。また接着剤槽601の接着剤の量を検知する残量検知センサ606を使用して接着剤を補給するか否かを判断する動作も行えば、接着剤槽601の接着剤の量を適正に判断できるため、接着剤の残量不足を更に確実に防止することができる。
【0084】
なお、本発明は当該実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0085】
用紙束SSに塗布された接着剤の量は用紙束SSの厚さに対応するため、本実施形態では用紙束SSの厚さの積算値Xを算出して接着剤を補給するか否か判断したが、塗布された接着剤の量に対応する値であれば他の数値をもとに判断してもよい。例えば、用紙束SSの厚さの積算値Xと、用紙束SSの背部における長辺方向の長さ、の両者の値に基づいて接着剤を補給するか否かを判断してもよい。用紙束SSの背部における長辺方向の長さは用紙S1のサイズによって決定されるため、ユーザーが画像形成装置Aの操作部等で設定した用紙S1のサイズのデータと、用紙束SSの厚さの積算値Xに基づいて接着剤を補給するか否か判断することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】製本システムの中央断面図である。
【図2】用紙束に接着剤を塗布する工程を示す説明図である。
【図3】用紙束に接着剤を塗布する工程を示す別の説明図である。
【図4】塗布ユニット60の構成を示す説明図である。
【図5】補給部61の断面図である。
【図6】補給部61が補給動作を開始する前の状態を示した説明図である。
【図7】補給部61が補給動作を開始した状態を示した説明図である。
【図8】ローラ669を往復移動させる駆動機構を示す説明図である。
【図9】製本システムにおける制御系のブロック図である。
【図10】用紙束SSの厚さを測定する動作を示すフローチャート図である。
【図11】第1の挟持部材502と第2の挟持部材503の動作に関する説明図である。
【図12】ペレットPTを補給する動作を示すフローチャート図である。
【図13】第1の補給動作を示すフローチャート図である。
【図14】用紙束SSの枚数とペレットPTの補給量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
A 画像形成装置
B 製本装置
60 塗布ユニット
61 補給部
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 測定部
601 接着剤槽
602 塗布ローラ
606 残量検知センサ
MT1〜MT4 モータ
PT ペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束の背部に接着剤を塗布し冊子を作製する製本装置であって、
接着剤を収容する接着剤槽と、
固形状の接着剤を前記接着剤槽へ補給する補給部と、
前記接着剤槽へ補給された固形状の接着剤を溶解する溶解部と、
前記用紙束の背部に接着剤を塗布する塗布部と、
前記塗布部により塗布された接着剤の量が所定量以上になった場合、前記補給部より前記接着剤槽へ固形状の接着剤を補給すべく、前記補給部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記接着剤槽に収容された接着剤の量を検知する検知部を有し、
前記検知部により検知された接着剤の量が所定量以下になった場合、前記補給部より前記接着剤槽へ固形状の接着剤を補給すべく、前記制御部が前記補給部を制御することを特徴とする請求項1に記載の製本装置。
【請求項3】
前記検知部は前記接着剤槽内の温度を検知するものであり、
前記制御部は、前記検知部により検知された温度が所定温度以下になった場合に、前記接着剤槽に収容された接着剤の量が所定量以下になった場合の制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の製本装置。
【請求項4】
前記用紙束の厚さを測定する測定部を有し、
前記測定部により測定された前記用紙束の厚さの積算値が所定値以上になった場合、前記塗布部により塗布された接着剤の量が所定量以上になったものとして、前記制御部が前記補給部を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の製本装置。
【請求項5】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、
当該画像形成装置から出力される用紙を受け取って冊子を作製する請求項1乃至4の何れか1項に記載の製本装置と、
を有することを特徴とする製本システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−114477(P2008−114477A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300022(P2006−300022)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】