説明

製膜装置

【課題】比較的簡便な方法により、基板面上に形成された柱状構造物の配向方位角を均一に近づける製膜装置を提供する。
【解決手段】製膜装置1は、基板200上に形成される膜を構成する膜材料を供給する膜材料源14と、膜材料源及び基板を設置するための空間11aを規定すると共に、空間を真空に維持することが可能な真空槽11と、空間において、基板の少なくとも一部が膜材料源の少なくとも一部と対面するように基板を保持する保持手段121と、基板が一の方向に沿って移動するように保持手段を移動する移動手段123と、基板及び膜材料源間に配置され、一の方向と交わる方向である他の方向に沿って延在する開口部122aを有するスリット板122とを備える。開口部の端部は、スリット板の面内においてずらし、他の方向から開口部を通過する膜材料の他の方向の角度分布の広がりを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に、例えば斜方蒸着法、高レートスパッタ法等により膜を形成可能な
製膜装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、例えば基板面上に形成された柱状構造物の配向方位角を均一に近づ
けることが図られる。例えば、特許文献1乃至3には、蒸着物質の蒸気が流通可能なスリ
ットが、蒸着源と被蒸着材としての基板との間に配置された装置が記載されている。或い
は、特許文献4には、蒸着源と、基板を回転可能な基板支持台との間に、移動可能なスリ
ット板が配置された装置が記載されている。ここでは特に、スリット板の移動制御と、基
板支持台の回転角度制御による蒸着物質の入射角制御とを同時に行うことによって、基板
面内における蒸着角度を均一化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−129225号公報
【特許文献2】特開2003−129228号公報
【特許文献3】特開2006−350323号公報
【特許文献4】特開2007−277645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に記載の技術では、基板が大型化した場合に、
例えば基板面上に形成された柱状構造物の配向方位角を均一に近づけることが困難になる
という技術的問題点がある。特許文献4に記載の技術では、装置の制御が比較的複雑にな
るという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡便な方法により、
基板面上に形成された柱状構造物の配向方位角を均一に近づけることができる製膜装置を
提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製膜装置は、上記課題を解決するために、基板上に形成される膜を構成する膜
材料を供給する膜材料源と、前記膜材料源及び前記基板を設置するための空間を規定する
と共に、前記空間を真空に維持することが可能な真空槽と、前記空間において、前記基板
の少なくとも一部が前記膜材料源の少なくとも一部と対面するように前記基板を保持する
保持手段と、前記基板が一の方向に沿って移動するように前記保持手段を移動する移動手
段と、前記基板及び前記膜材料源間に配置され、前記一の方向と交わる方向である他の方
向に沿って延在する開口部を有するスリット板とを備え、前記開口部の端部は、前記スリ
ット板の面内において、前記他の方向から、前記開口部を通過する膜材料の前記他の方向
の角度分布の広がりを抑制する方向にずれている。
【0007】
本発明の製膜装置によれば、膜材料源は、基板上に形成される膜を構成する膜材料を供
給する。膜材料源は、具体的には例えば、蒸着源やスパッタリングターゲット等である。
尚、本発明に係る「膜材料源」は、典型的には、点源(ポイントソース)である。
【0008】
真空槽は、膜材料源及び基板を設置するための空間を規定すると共に、該空間を真空に
維持することが可能である。ここで、「真空槽」は、例えば、チャンバ等の箱体を表す概
念である。係る概念が担保される限りにおいて、真空槽の形状及び材質などは何ら限定さ
れない。尚、真空槽の構成材料としては、機械的、物理的及び化学的な安定性に鑑みて、
例えば金属材料、鉄鋼材料、ガラス材料、陶器又は陶磁器材料等を使用することが望まし
い。
【0009】
「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされている空間の状態を包括する概念
であり、好適には、膜が基板上に形成される際の膜質に大気雰囲気中に含まれる酸素や窒
素等の不純物が影響しない程度に大気圧から減圧された空間の状態を指す。尚、係る真空
を作り出すための排気機構、排気装置又は排気システムの構成も、係る真空を作り出すこ
とが可能である限りにおいて何ら限定されない。例えば、ロータリーポンプ、メカニカル
ブースターポンプ、油拡散ポンプ又はターボ分子ポンプ等によって係る真空状態が作り出
されてもよい。或いは、これらがその排気特性などに鑑みて予備排気系及び主排気系とし
て複合的に使用されることによって真空が作り出されてもよい。
【0010】
「真空に維持する」とは、このような排気系によって排気される気体の量と、真空槽に
おける気体の漏れ量(即ち、リーク量)とが相殺する結果として、一定或いは一定とみな
し得る程度に安定した真空度に到達している状態を含む概念である。
【0011】
保持手段は、前記空間において、基板の少なくとも一部が膜材料源の少なくとも一部と
対面するように該基板を保持する。ここで、「対面して」とは、正対していることのみを
表すものではなく、膜材料源又は膜材料の飛行方向(例えば、蒸着方向)に対し、一定の
傾きをもって基板が設置されてもよい趣旨である。尚、本発明に係る「保持手段」は、こ
のように基板と膜材料源の夫々少なくとも一部が相互に対面するように基板を保持するこ
とが可能である限りにおいてその態様は何ら限定されない。
【0012】
移動手段は、基板が一の方向に沿って移動するように保持手段を移動する。つまり、移
動手段は、基板が一の方向に沿って移動するように、該基板と保持手段とを一体として移
動する。
【0013】
スリット板は、基板及び膜材料源間に配置され、前記一の方向と交わる方向である他の
方向に沿って延在する開口部を有する。膜材料源から放出された膜材料は、スリット板に
形成された開口部を通過するものを除いて、基板に到達することなく、該スリット板で遮
蔽される。他方、開口部を通過した膜材料は、基板と開口部との相対的な位置関係により
規定される所定の範囲内の入射角度で基板の表面に到達し、膜を形成する。
【0014】
ここで、「他の方向」とは、典型的には、一の方向に延びる直線と他の方向に延びる直
線とが互いになす角が90度に近づくような方向を意味する。具体的には例えば、「他の
方向」は、当該製膜装置上で平面的に見て、膜材料源を中心とする円周の接線方向である

【0015】
「他の方向に沿って延在する」とは、開口部の長手方向が他の方向と平行であることに
限らず、開口部の長手方向が、実践上、他の方向に沿っているとみなせる範囲内において
、他の方向から大なり小なりズレている場合も含んでよい。
【0016】
本発明では特に、開口部の端部は、スリット板の面内において、前記他の方向から、開
口部を通過する膜材料の他の方向の角度分布の広がりを抑制する方向にずれている。ここ
で、「開口部を通過する膜材料の他の方向の角度分布の広がりを抑制する方向」とは、膜
材料源及び開口部の端部を結ぶ直線と、開口部の中心及び開口部の端部を結ぶ直線と、の
なす角が小さくなる(即ち、0度に近付く)方向である。
【0017】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、生産効率を向上させる
観点から、比較的大きな基板上に、例えば液晶装置等の装置を一挙に複数個形成した後に
、個々の装置に分割する方法が採られることが多い。この場合、例えば斜方蒸着法、高レ
ートスパッタ法等により、基板上に膜を形成しようとすると、基板上の場所によって柱状
構造物の配向方位角や膜厚等にバラツキが生じる。これは、膜材料源が点源であることに
起因して、基板に到達する膜材料がスリット板の開口部の長手方向に角度分布を持ってい
るためである。そして、上記バラツキは、基板が大型化する程顕著になる。ここで、基板
上に形成される膜が、例えば液晶装置の配向膜である場合、上記バラツキに起因して、液
晶分子のプレチルト角にバラツキが生じる可能性がある。すると、液晶装置の表示画像の
品質が低下する可能性がある。
【0018】
しかるに本発明では、上述の如く、開口部の端部が、スリット板の面内において、前記
他の方向から、開口部を通過する膜材料の他の方向(即ち、開口部の長手方向)の角度分
布の広がりを抑制する方向にずれるように構成されている。このため、基板上に形成され
る柱状構造物の配向方位角のバラツキを抑制することができる。従って、本発明の製膜装
置によれば、スリット板の開口部の形状を工夫するという比較的簡便な方法により、基板
上に形成された柱状構造物の配向方位角を均一に近づけることができる。
【0019】
尚、開口部の幅が、該開口部の中心から該開口部の端部に向かう程広くなるように構成
すれば、基板上に形成される膜の膜厚のバラツキをも抑制することができ、実用上非常に
有利である。また、スリット板に複数の開口部を形成すれば、成膜レートを向上させるこ
とができる。或いは、スリット板に複数の開口部を形成すると共に、該複数の開口部の幅
を比較的狭くすれば、成膜レートを低下させることなく、成膜精度を向上させることがで
きる。
【0020】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶装置を、TFTアレイ基板上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る真空蒸着装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基板の移動を示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するための概念図である。
【図6】本発明の実施形態に係るスリット板に開口された開口部の変形例を示す概念図である。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の第2変形例に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る製膜装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、以下の各図
では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするために、該各層・各部材毎
に縮尺を異ならしめている。
【0023】
(液晶装置)
先ず、本発明に係る製膜装置により形成された無機配向膜を備えてなる液晶装置の実施
形態を、図1及び図2を参照して説明する。尚、本実施形態では、液晶装置として、駆動
回路内蔵型のアクティブマトリックス駆動方式の液晶装置を例に挙げる。
【0024】
本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。図
1は、本実施形態に係る液晶装置を、TFT(Thin Film Transisto
r)アレイ基板上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図であり、図
2は、図1のH−H´線断面図である。
【0025】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置100では、TFTアレイ基板10
及び対向基板20が対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば、石英基板、
ガラス基板、シリコン基板等の基板からなり、対向基板20は、例えば、石英基板、ガラ
ス基板等の基板からなる。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封
入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは画像表示領域10aの周囲に位
置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0026】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂、
又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10
上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52
中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、ギャップ)を所定値とす
るためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャ
ップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a
又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0027】
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域
10aを規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、
このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜とし
て設けられてもよい。
【0028】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、デ
ータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿っ
て設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側にサンプリング回路7が額縁
遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に
隣接する2辺に沿ったシール領域の内側の額縁領域に、額縁遮光膜53に覆われるように
して設けられている。
【0029】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両
基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これ
らにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができ
る。更に、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104
、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0030】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のト
ランジスタや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層
構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、IT
O(Indium Tin Oxide)を含んでなる画素電極9aが、画素毎に所定の
パターンで島状に形成されている。
【0031】
画素電極9aは、後述する対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の
画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面す
る側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成され
ている。尚、配向膜16、及び後述する配向膜22は、斜方蒸着法又は高レートスパッタ
法により形成された無機配向膜である。
【0032】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されて
いる。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形
成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光
膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライ
トから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成
し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素と
によって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0033】
遮光膜23上に、ITOを含んでなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向して形
成されている。遮光膜23上に、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、
開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルタが形成
されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向
膜22が形成されている。
【0034】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路1
01、走査線駆動回路104、サンプリング回路7等に加えて、複数のデータ線に所定電
圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造
途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよ
い。
【0035】
(製膜装置)
次に、本発明に係る製膜装置の実施形態について、図3乃至図5を参照して説明する。
尚、本実施形態では、製膜装置の一例として、真空蒸着装置を挙げる。
【0036】
本実施形態に係る真空蒸着装置の全体構成について、図3を参照して説明する。図3は
、本実施形態に係る真空蒸着装置の全体構成を示すブロック図である。
【0037】
図3において、真空蒸着装置1は、チャンバ11、基板ユニット12、支持部材13、
蒸着源14及び制御部15を備えて構成されている。
【0038】
チャンバ11は、基板ユニット12及び蒸着源14を設置するための空間11aを規定
する。チャンバ11は、ここでは図示しない、例えばロータリーポンプ等の排気系に接続
されており、空間11a内の気体が排気系により排気されることによって、空間11aが
真空に維持されている。
【0039】
基板ユニット12は、大型基板200を保持する基板保持部材121、大型基板200
の蒸着源14に対向する側に配置され蒸着源から蒸発される蒸発物質が通過する開口部1
22aが開けられたスリット板122、及び基板保持部材121を移動可能なアクチュエ
ータ123を備えて構成されている。
【0040】
蒸着源14は、例えばSiOやSiO等の無機材料を保持するルツボ(図示せず)、
及び電子銃(図示せず)を備えて構成されている。動作時には、電子銃から出射される電
子ビームによって、ルツボ内の無機材料を加熱し、該無機材料を蒸発させる。
【0041】
制御部15は、基板200上に蒸着膜を成膜する際に、蒸着源14を制御すると共に、
基板保持部材121を移動させるようにアクチュエータ123を制御する。
【0042】
尚、本実施形態に係る「チャンバ11」、「蒸着源14」、「基板保持部材121」、
「アクチュエータ123」、「大型基板200」及び「無機材料」は、夫々、本発明に係
る「真空槽」、「膜材料源」、「保持手段」、「移動手段」、「基板」及び「膜材料」の
一例である。
【0043】
次に、大型基板200上に、本発明に係る「膜」の一例としての蒸着膜を成膜する際に
おける、大型基板200(即ち、基板保持部材121)の移動について、図4を参照して
説明する。図4は、本実施形態に係る基板の移動を示す概念図である。
【0044】
例えば、大型基板200の複数のTFTアレイ基板10となるべき領域の各々に、所定
の製造工程を経て、画素電極9a(図2参照)が形成された後に、或いは、大型基板20
0の複数の対向基板20となるべき領域の各々に、所定の製造工程を経て、対向電極21
(図2参照)が形成された後、大型基板200が基板保持部材121に固定される。
【0045】
次に、チャンバ11内の気体が排気系により排気され、所定の真空度に到達した後に、
制御部15は、蒸着源14を制御すると共に、基板保持部材121(即ち、大型基板20
0)を、図4に矢印aで示すように、スリット板122に対してZ軸方向に沿って往復移
動するようにアクチュエータ123を制御する。
【0046】
この際、蒸着源14から飛来した蒸着材料(無機材料)が開口部122aを通過して、
大型基板200と開口部122aとの相対的な位置関係により規定される所定の範囲内の
入射角度で大型基板200の表面に到達することにより、蒸着膜(ここでは、配向膜16
又は22)が形成される。
【0047】
尚、本実施形態に係る「Z軸方向」は、本発明に係る「一の方向」の一例である。また
、図4に示すように、スリット板122の開口部122aは、本発明に係る「他の方向」
の一例としてのX軸方向に沿って延在している。
【0048】
次に、スリット板122の開口部122aについて、図5を参照して説明を加える。図
5は、本実施形態に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するための概念図で
ある。
【0049】
図5に示すように、開口部122aの形状は、開口部122aの中心O及び端部を結ぶ
直線a1又はa2と、蒸着源14及び開口部122aの端部を結ぶ直線b1又はb2との
なす角(例えば、θ)が、大型基板200に到達する蒸着材料のX軸方向の角度分布が
広がる方向(即ち、該なす角が90度に近付く方向)とは、逆方向(即ち、該なす角が0
度に近付く方向)になるように構成されている。
【0050】
言い換えれば、開口部122aの端部が、スリット板122の面内において、X軸方向
から、開口部122aを通過する蒸着材料のX軸方向の角度分布の広がりを抑制する方向
に、角度θだけずれている。ここで、角度θ1は、図5に示すように、直線a1とX軸
方向に沿う直線x1とがなす角である。
【0051】
すると、直線a1又はa2に対して垂直に入射する蒸着材料が、開口部122aを比較
的多く通過するため、大型基板200に到達する(即ち、開口部122aを通過する)蒸
着材料のX軸方向の角度分布の広がりを抑制することができる。この結果、大型基板20
0上に形成される蒸着膜を構成する柱状構造物の配向方位角のバラツキを抑制することが
できる。
【0052】
尚、角度θと、直線b1とZ軸方向に沿う直線z1とがなす角θとは、同程度であ
ることが望ましく、同一であることがより望ましい。
【0053】
尚、スリット板122に開口された開口部は、図4及び図5に示した開口部122aに
限らず、例えば、図6(a)に示すような、一部分だけ曲がった形状を有する開口部12
2bや、図6(b)に示すような、円弧状の開口部122cであってもよい。図6は、本
実施形態に係るスリット板に開口された開口部の変形例を示す概念図である。
【0054】
<第1変形例>
次に、本実施形態の製膜装置に係る第1変形例について、図7を参照して説明する。図
7は、本実施形態の第1変形例に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するた
めの図である。
【0055】
図7に示すように、本変形例に係るスリット板122に開口された開口部122dの幅
は、開口部122dの中心から開口部122dの端部に向かう程広くなっている。このよ
うに構成すれば、開口部122dの中心近傍と、開口部122dの端部近傍との成膜レー
トのバラツキを抑制することができる。この結果、大型基板200上に形成される蒸着膜
の膜厚のバラツキを抑制することができる。
【0056】
<第2変形例>
次に、本実施形態の製膜装置に係る第2変形例について、図8を参照して説明する。図
8は、本実施形態の第2変形例に係るスリット板に開口された開口部の形状を説明するた
めの図である。
【0057】
図8に示すように、本変形例では、スリット板122に複数の開口部が開口されている
。例えば図8(a)に示すように、比較的幅の広い二つの開口部122eを、スリット板
122に開口すれば、成膜レートを向上させることができる。或いは、例えば図8(b)
に示すように、比較的幅の狭い二つの開口部122fを、スリット板122に開口すれば
、例えば図4又は図5に示した開口部122aが形成されたスリット板122と比べて、
成膜レートを低下させることなく、成膜精度を向上させることができる。
【0058】
尚、スリット板122に開口される開口部は二つに限らず、三つ以上であってよい。
【0059】
尚、実施形態では真空蒸着装置1を本発明に係る製膜装置の一例として挙げたが、本発
明は、該真空蒸着装置1に限らず、例えばスパッタリングターゲットを備えたスパッタ装
置等にも適用可能である。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体
から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような
変更を伴う製膜装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1…真空蒸着装置、10…TFTアレイ基板、11…チャンバ、12…基板ユニット、
13…支持部材、14…蒸着源、15…制御部、20…対向基板、100…液晶装置、1
21…基板保持部材、122…スリット板、122a、122b、122c、122d、
122e、122f…開口部、123…アクチュエータ、200…大型基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される膜を構成する膜材料を供給する膜材料源と、
前記膜材料源及び前記基板を設置するための空間を規定すると共に、前記空間を真空に
維持することが可能な真空槽と、
前記空間において、前記基板の少なくとも一部が前記膜材料源の少なくとも一部と対面
するように前記基板を保持する保持手段と、
前記基板が一の方向に沿って移動するように前記保持手段を移動する移動手段と、
前記基板及び前記膜材料源間に配置され、前記一の方向と交わる方向である他の方向に
沿って延在する開口部を有するスリット板と
を備え、
前記開口部の端部は、前記スリット板の面内において、前記他の方向から、前記開口部
を通過する膜材料の前記他の方向の角度分布の広がりを抑制する方向にずれている
ことを特徴とする製膜装置。
【請求項2】
前記角度分布の広がりを抑制する方向は、前記膜材料源及び前記開口部の端部を結ぶ直
線と、前記開口部の中心及び前記開口部の端部を結ぶ直線と、のなす角が小さくなる方向
であることを特徴とする請求項1に記載の製膜装置。
【請求項3】
前記開口部の幅は、前記開口部の中心から前記開口部の端部に向かう程広くなることを
特徴とする請求項1又は2に記載の製膜装置。
【請求項4】
前記スリット板は、前記開口部を複数有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
か一項に記載の製膜装置。
【請求項5】
前記膜材料源は、蒸着源であり、
前記膜は、蒸着膜である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−214123(P2011−214123A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85847(P2010−85847)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】