説明

製造システム

【課題】製品の製造時間の増大が抑制された製造システムを提供する。
【解決手段】複数の製造設備(30)及び管理部(10)を有する製造システムであって、第1製造工程の終了から、第2製造工程の実施までの間には、制限時間があり、製造設備(30)は、製造工程を実施する製造部(31)、該製造部(31)のメンテナンス情報を記録する記録部(32)、及び、管理部(10)と通信する通信部(33)を有し、管理部(10)は、第2製造工程を行う製造設備(30)の通信部(33)からメンテナンス情報を受け取ると、第2製造工程を行う製造設備(30)のメンテナンス実施期間を算出し、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールを、第2製造工程を実施する製造設備(30)のメンテナンスの終了後から制限時間内に、第2製造工程が実施されるように変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を製造する製造工程を実施するための複数の製造設備、及び、製品の製造スケジュールと複数の製造設備を統括して管理する管理部を有する製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、各ロットの処理工程に関するデータを記憶するロットデータベースと、各処理工程に関するデータを記憶する工程データベースと、各処理工程を実施する処理装置に関するデータを記憶する装置データベースと、上記した各データベースに格納されているデータを基に各ロットの処理工程をスケジューリングするシミュレーションエンジンと、を有する半導体素子製造用スケジューリング装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の半導体素子製造用スケジューリング装置は、各ロットの処理工程を経時的にシミュレートして、或るロットの任意の複数処理工程間に時間制限を有する場合、各処理工程を連続した1つの工程とみなす。そして、処理装置のメンテナンス予定を算出して、その算出結果に基づいて、時間制限の許す範囲でロットの処理を行うように、各処理装置の製造スケジュールを設定する。これにより、上記した複数の処理工程を実施する複数の処理装置の内、幾つかの処理装置がメンテナンスとなった結果、そのメンテナンスによる待ち時間のために、上記した時間制限を越える、という不具合が生じることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−31709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように、特許文献1に示される半導体素子製造用スケジューリング装置では、或るロットの任意の複数処理工程間に時間制限を有する場合、各処理工程を連続した1つの工程とみなす。したがって、例えば、第1処理工程と第2処理工程との間に時間制限があり、第2処理工程を実施する処理装置がメンテナンスとなった場合、第1処理工程を実施することができるにも関わらず、メンテナンス実施期間中、2つの処理が行われなくなる。効率よくロットの処理を行うのであれば、時間制限がある連続した処理とは言え、メンテナンス実施期間を利用して、第1処理工程を実施するべきである。しかしながら、特許文献1では、そのような構成とはなっていないため、ロットの製造時間が増大する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、製品の製造時間の増大が抑制された製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、製品を製造する製造工程を実施するための複数の製造設備(30)、及び、製品の製造スケジュールと複数の製造設備(30)を統括して管理する管理部(10)を有する製造システムであって、製造工程には、第1製造工程、及び、該第1製造工程の後に実施される第2製造工程が含まれており、第1製造工程の終了から、第2製造工程の実施までの間には、制限時間があり、製造設備(30)は、製造工程を実施する製造部(31)、該製造部(31)のメンテナンス情報を記録する記録部(32)、及び、管理部(10)と通信する通信部(33)を有し、管理部(10)は、第2製造工程を行う製造設備(30)の通信部(33)からメンテナンス情報を受け取ると、第2製造工程を行う製造設備(30)のメンテナンス実施期間を算出し、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールを、第2製造工程を実施する製造設備(30)のメンテナンスの終了後から制限時間内に、第2製造工程が実施されるように変更することを特徴とする。
【0008】
このように本発明によれば、当初、第2製造工程を実施する製造設備(30)(以下、第2製造設備(30)と示す)のメンテナンス実施期間にて、第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールが、第2製造設備(30)のメンテナンスの終了後から制限時間内に、第2製造工程が実施されるように変更される。これによれば、メンテナンス実施期間を利用して、第1処理工程が実施されるので、メンテナンス時に、2つの製造工程が待機状態となる製造スケジュールと比べて、製品の製造時間の増大が抑制される。また、第1製造設備(30)がスタンバイ状態となる期間が減るので、製造システム(100)の稼働率が向上される。更に言えば、電力の無駄が省かれるので、発電所におけるCO2の発生が抑制され、地球環境にも優しくなる。
【0009】
請求項2に記載のように、管理部(10)は、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールだけではなく、他の製品の製造スケジュールも変更することで、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールを、第2製造工程を実施する製造設備のメンテナンスの終了後、制限時間内に第2製造工程が実施されるように変更する構成が好適である。
【0010】
1つの製品の製造スケジュールを変更すると、それに伴い、他の製品の製造スケジュールを変更しなくてはならない場合がある。これに対して、請求項2では、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールだけではなく、他の製品の製造スケジュールも変更する。これにより、当初、メンテナンス実施期間にて第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールが、第2製造工程を実施する製造設備のメンテナンスの終了後、制限時間内に第2製造工程が実施されるように変更される。
【0011】
第1製造工程の終了から、第2製造工程の実施までの間に制限時間を要する製造方法にて製造される製品としては、請求項3に記載のように、半導体ウエハを採用することができる。
【0012】
請求項1に記載の第1製造工程、及び、第2製造工程としては、請求項4に記載のように、第1製造工程は洗浄、第2製造工程は拡散がある。または、請求項5に記載のように、第1製造工程は洗浄、第2製造工程は成膜がある。
【0013】
請求項6に記載のように、第2製造工程を実施する製造設備(30)は、ダミーウエハを有しており、第2製造工程を実施する製造設備(30)のメンテナンスは、ダミーウエハの交換を含む構成を採用することができる。これによれば、ダミーウエハの交換時(メンテナンス時)においても、メンテナンス実施期間を利用して、第1処理工程を実施することができる。
【0014】
管理部の具体的な構成としては、請求項7に記載のように、管理部(10)は、製造工程を実施するのに要する時間を保持する実施時間情報データベース(13)と、全ての製品の製造工程フローを保持する工程フロー情報データベース(14)と、全ての製品の物理的な位置、実施済みの製造工程、未実施の製造工程、製造工程実施の優先度、及び、納期に対する進度を保持する製品情報データベース(15)と、製造設備の通信部から送られてくるメンテナンス情報を保持するメンテナンス情報データベース(16)と、上記した各情報データベース(13〜16)に保持された情報に基づき、製品の製造スケジュール、及び、製造設備(30)を制御する制御部(12)と、を有する構成を採用することができる。
【0015】
また、各製造工程を実施するための具体的な構成としては、請求項8に記載のように、製品や非製品を搬送する自動搬送機(50)、及び、製品や非製品を保管する在庫ストア(70)を有し、自動搬送機(50)は、管理部(10)の指示によって、在庫ストア(70)及び製造部(31)から、製品や非製品を在庫ストア(70)や製造部(31)に搬送する構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る製造システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】製造システムの特徴点を説明するためのフロー図であり、(a)はメンテナンス終了後に洗浄が行われる場合、(b)はメンテナンス終了後に拡散が行われる場合を示している。
【図3】各製品ロットの製造スケジュールを示すフロー図である。
【図4】図3の製造スケジュールにメンテナンスが加えられたフロー図である。
【図5】図4のメンテナンスに対応して、ある製品ロットの製造スケジュールが変更されたフロー図である。
【図6】図5の製品ロットの製造スケジュール変更に伴って、他の製品ロットの製造スケジュールが変更されたフロー図である。
【図7】管理部における製品ロットの製造スケジュール調整を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、半導体ウエハの製造に適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る製造システムの概略構成を示すブロック図である。図2は、製造システムの特徴点を説明するためのフロー図であり、(a)はメンテナンス終了後に洗浄が行われる場合、(b)はメンテナンス終了後に拡散が行われる場合を示している。図3は、各製品ロットの製造スケジュールを示すフロー図である。図4は、図3の製造スケジュールにメンテナンスが加えられたフロー図である。図5は、図4のメンテナンスに対応して、ある製品ロットの製造スケジュールが変更されたフロー図である。図6は、図5の製品ロットの製造スケジュール変更に伴って、他の製品ロットの製造スケジュールが変更されたフロー図である。図7は、管理部における製品ロットの製造スケジュール調整を示すフロー図である。
【0018】
図1に示すように、製造システム100は、要部として、管理部10と、製造設備30と、自動搬送機50と、在庫ストア70と、を有する。管理部10と製造設備30、及び、管理部10と自動搬送機50は、ローカルネットワークエリア(LAN)によって接続されており、製造設備30及び自動搬送機50は、管理部10によって制御されている。
【0019】
管理部10は、半導体ウエハに素子を形成する製造スケジュール、複数の製造設備30、及び、自動搬送機50を統括して管理するものである。管理部10は、半導体ウエハの製造に必要な情報が保持された情報データベース11と、情報データベース11に保持された情報に基づき、半導体ウエハの製造スケジュール、製造設備30、及び、自動搬送機50を制御する制御部12と、を有する。
【0020】
情報データベース11は、製造工程を実施するのに要する時間を保持する実施時間情報データベース13と、全ての半導体ウエハの製造工程フローを保持する工程フロー情報データベース14と、全ての半導体ウエハの物理的な位置、実施済みの製造工程、未実施の製造工程、製造工程実施の優先度、及び、納期に対する進度を保持する製品情報データベース15と、製造設備30の通信部(図示略)から送られてくるメンテナンス情報を保持するメンテナンス情報データベース16と、を有する。なお、図1では、データベースをDBと示している。
【0021】
制御部12は、各情報データベース13〜16の情報に基づいて、半導体ウエハの製造スケジュールを演算する演算部17と、該演算部17の演算結果に基づいて、各製造設備30に、製造工程実施の指示を含む指示信号を出力する製造設備指示装置18と、自動搬送機50に半導体ウエハ搬送の指示を含む指示信号を出力する自動搬送機指示装置19と、を有する。
【0022】
製造設備30は、半導体ウエハの製造工程を実施する製造部31と、該製造部31のメンテナンス実施期間を含むメンテナンス情報を記録する記録部32と、管理部10と通信する通信部33と、を有する。通常、25枚の半導体ウエハ(以下、製品ロット40と示す)がひとまとまりで、同一の製造工程を経て製造される。半導体ウエハの製造工程には、感光剤塗布、露光、現像、エッチング、洗浄、拡散、成膜、レジスト剥離、平坦化などが含まれており、各製造設備30にて、上記した各工程の1つが行われる。上記した各工程は、周知公用技術であるので、その説明を省略するが、上記した各工程には順番が決まっている。例えば、洗浄の後に拡散が行われ、洗浄の後に成膜が行われる。そして、洗浄してから拡散、及び、洗浄してから成膜するまでには制限時間がある。
【0023】
以下、上記した制限時間の問題点を説明するために、拡散を行う製造設備30を説明する。拡散を行う製造設備30は、複数の半導体ウエハそれぞれが独立して配置される複数のスリットが形成されたボート、及び、該ボートが搬送される拡散炉を有しており、全てのスリットに半導体ウエハが配置された状態で拡散が行われる。このように、全てのスリットに半導体ウエハが配置されるのは、全ての半導体ウエハ(製品ロット40)の製造条件を同一とするためであるが、製造スケジュールの都合上、拡散を行う製造設備30に搬送されてくる半導体ウエハ(製品ロット40)の数が、スリットの数よりも少なくなる場合がある。この場合、全ての半導体ウエハ(製品ロット40)の製造条件を同一とするために、ダミーの半導体ウエハ(非製品)が余ったスリットに配置される。
【0024】
上記した非製品は、繰り返し使用されるが、その使用回数には限度があり、使用回数、及び、使用可能回数は記録部32に記録されている。25枚ひとまとまりの非製品(以下、非製品ロットと示す)の使用回数が限度を超えると、非製品ロットを交換しなくてはならなくなるが、この非製品ロットの交換中(メンテナンス期間中)、拡散を行うことができなくなる。そのため、メンテナンスが発生した場合、洗浄し終わった製品ロット40をすぐに拡散することができず、製品ロットが待機状態となる場合がある。メンテナンスが上記した制限時間内に終了した場合、問題はないが、メンテナンスが制限時間を超過した場合、再び洗浄を実施しなくてはならず、製品ロット40(半導体ウエハ)の製造時間が増大する、という問題が生じる。
【0025】
これに対して、図2の(a)に示すように、拡散を行う製造設備30のメンテナンス終了後に洗浄と拡散を行うよう、製品ロット40の製造スケジュールを変更することも考えられる。しかしながら、上記したメンテナンス中は、洗浄を行う製造設備30は使用可能なので、図2の(b)に示すように、メンテナンス終了直後に拡散を行うよう、拡散を行う製造設備30のメンテナンス中に洗浄を行い、製品ロット40の製造スケジュールを変更することで、製品ロット40の製造時間を短縮することができる。本実施形態に係る製造システム100では、図2の(b)に示すように、製品ロット40の製造スケジュールを組むが、それについての詳細は後述する。なお、図2に示す横軸は時間、矩形で表された洗浄及び拡散の横幅は、実施時間(処理時間)を示している。
【0026】
搬送機50は、半導体ウエハ(製品ロット40)やダミーの半導体ウエハ(非製品ロット)を搬送するものである。在庫ストア70は、半導体ウエハ(製品ロット40)やダミーの半導体ウエハ(非製品ロット)を保管するものである。搬送機50は、管理部10の指示によって、在庫ストア70及び製造設備30から、製品ロット40や非製品ロットを在庫ストア70や製造設備30に搬送する。
【0027】
次に、本実施形態に係る製造システム100による半導体ウエハ(製品ロット40)の製造スケジュールの変更を図3〜図6に基づいて説明する。図3〜図6に示す横軸は時間、ハッチングのある矩形は製品ロット40、矢印は製品ロット40a〜40fの製造設備30a〜30fへの搬送を示している。なお、図3〜図6には、製品ロット40a〜40f以外の製品ロットも図示されているが、説明が煩雑となるため、これらには符号を付与せず、その説明を省略している。
【0028】
製造設備30aは現像を実施する設備、製造設備30bはエッチングを実施する設備であり、製造設備30cは洗浄を実施する設備、製造設備30d〜30fは拡散を実施する設備である。図3に示すように、各製品ロット40a〜40fは、製造設備30a〜30cにて現像、エッチング、洗浄が実施された後、製造設備30d〜30fのいずれかにて拡散が実施される。上記したように、洗浄してから拡散するまでには制限時間があるため、製造設備30cにて洗浄された製品ロット40a〜40fは、制限時間内に製造設備30d〜30fのいずれかに搬送され、拡散が実施されなければならない。図3に示す各製品ロット40a〜40fの製造スケジュールでは、洗浄の実施後、制限時間内に拡散が実施されている。
【0029】
しかしながら、図4に示すように、製造設備30dにてメンテナンスが生じた場合、当初、メンテナンス発生タイミングにて、製造設備30dにて拡散実施予定の製品ロット40bは、当初の製造スケジュール(図3に示す製造スケジュール)では拡散を行うことができなくなる。管理部10は、メンテナンス情報を製造設備30dから受け取り、図4に示すメンテナンス実施期間を算出すると、製品ロット40bの当初の製造スケジュールをキャンセルする。そして、メンテナンス終了後、制限時間内に製造設備30dにて拡散が行われるように、製品ロット40bの製造スケジュールを変更する。本実施形態に係る管理部10は、図5に示すように、洗浄の終了とメンテナンスの終了とが同時のタイミングとなり、洗浄終了直後に製造設備30dにて拡散が実施されるように、製品ロット40bの製造スケジュールを変更する。ただし、図5に示すように、製品ロット40bの製造スケジュールの変更によって、製造設備30cにて、製品ロット40b,40e,40fの製造スケジュールが重なる場合、図6に示すように、他の製品ロット40c〜40eの製造スケジュールも変更する。これにより、各製品ロット40a〜40fの製造スケジュールが製造設備30cにて重なることなく、メンテナンス終了後、制限時間内に製品ロット40bの拡散が製造設備30dにて実施される。
【0030】
次に、管理部10(演算部17)における製品ロット40の製造スケジュール調整を、図7に基づいて詳説する。先ず管理部10は、各製造設備30の通信部33から、製造工程の終了と製造設備30(製造部31)のメンテナンス情報を受信する(ステップS10、S20)。そして、受信したメンテナンス情報に基づいて、拡散若しくは成膜を実施する製造設備30のメンテナンス発生時期を計算する(ステップS30)。その後、製造スケジュール実施期間(製造システム100が製造スケジュールを実施する期間であり、例えば、5日などに設定される期間)内にメンテナンスが発生するか否かを判定する(ステップS40)。上記期間内にてメンテナンスが発生しない場合、製造スケジュール調整を終了し、メンテナンスが発生する場合、メンテナンス実施期間をメンテナンス情報データベース16に記憶する(ステップS50)。そして、メンテナンス実施期間中、メンテナンスの行われる製造設備30にて製品ロット40の製造工程(拡散、若しくは、成膜)が実施予定か否かを判定する(ステップS60)。メンテナンス期間中にて、製品ロット40の製造工程が実施予定ではない場合、製造スケジュール調整を終了し、実施予定の場合、当初の製品ロット40の製造スケジュールをキャンセルして、メンテナンス終了予定時刻に、メンテナンス終了後の製造設備30にて製造工程(拡散、若しくは、成膜)が実施されるように、製品ロット40の製造スケジュールを変更する(ステップS70)。次いで、変更後の製造スケジュールにて、制限時間内に製造工程が実施されるか否かを判定する(ステップS80)。制限時間内に製造工程が実施される場合、ステップS90に移行し、制限時間内に製造工程が実施されない場合、再びステップS70に移行して、再度製造スケジュールを変更する。
【0031】
管理部10は、ステップS90にて、ステップS70での製造スケジュール変更によって、複数の製品ロット40の製造スケジュールが、ある製造設備30にて重なるか否かを判定する。製造スケジュールが重なる場合、ステップS100に移行し、重ならない場合、製造スケジュール調整を終了する。管理部10は、ステップS100にて、複数の製品ロット40の製造スケジュールが、ある製造設備にて重ならないように、製造スケジュールを調整する。そして、ステップS110にて、複数の製品ロット40の製造スケジュールの変更後、各製造スケジュールが、ある製造設備30にて重なるか否かを判定する。製造スケジュールが重なる場合、再びステップS100を実施し、重ならない場合、製造スケジュール調整を終了する。管理部10(演算部17)は、以上に示したステップS10〜S110を行うことで、製品ロット40の製造スケジュールを調整(変更)する。
【0032】
次に、本実施形態に係る製造システム100の作用効果を説明する。図3〜図6に基づいて説明したように、当初、拡散を実施する製造設備30dのメンテナンス実施期間にて、拡散の実施予定であった製品ロット40bの製造スケジュールが、製造設備30dのメンテナンスの終了後、制限時間内に拡散が実施されるように変更される。これによれば、メンテナンス実施期間を利用して、洗浄を実施することができるので、メンテナンス時に、2つの製造工程が待機状態となる製造スケジュールと比べて、製品ロット40bの製造時間の増大が抑制される。また、製造設備30cがスタンバイ状態となる期間が減るので、製造システム100の稼働率が向上される。更に言えば、電力の無駄が省かれるので、発電所におけるCO2の発生が抑制され、地球環境にも優しくなる。
【0033】
1つの製品ロット40bの製造スケジュールを変更すると、それに伴い、他の製品ロット40c〜40eの製造スケジュールを変更しなくてはならない場合がある。これに対して、本実施形態では、当初、拡散を実施する製造設備30dのメンテナンス実施期間にて、拡散の実施予定であった製品ロット40bの製造スケジュールだけではなく、他の製品ロット40c〜40eの製造スケジュールも変更する。これにより、各製品ロット40a〜40fの製造スケジュールがある製造設備30cにて重なることなく、製品ロット40bの製造スケジュールが、製造設備30dのメンテナンス終了後、制限時間内に拡散が実施されるように変更される。
【0034】
本実施形態では、洗浄の終了とメンテナンスの終了とが同時のタイミングとなり、洗浄終了直後に製造設備30dにて拡散が実施されるように、製品ロット40bの製造スケジュールを変更する。これによれば、洗浄の終了とメンテナンスの終了とが異なるタイミングとなるように、製品ロットの製造スケジュールを変更する構成と比べて、製品ロット40の製造時間の増大が抑制される。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0036】
本実施形態では、製造設備30のメンテナンスの具体例として、非製品ロットの交換を示したが、製造設備30のメンテナンスとしては、他に、製造設備30の洗浄、製造設備30の部品交換、製造設備30のチェックなどがある。製造設備30の記憶部32には、非製品ロットの使用回数、及び、使用可能回数だけではなく、製造設備30の洗浄期間、部品の交換期間、製造設備30のチェック期間などが記憶されている。管理部10は、これら全てのメンテナンス情報に基づいて、メンテナンス実施期間を算出する。そして、管理部10は、算出したメンテナンス実施期間に基づいて、製品ロット40の製造スケジュールを変更する。
【0037】
本実施形態では、拡散を行う製造設備30のメンテナンスが発生した場合における、製品ロット40の製造スケジュール変更を示した。しかしながら、成膜を行う製造設備30のメンテナンスが発生した場合においても、本実施形態で示したのと同様にして、製品ロット40の製造スケジュール変更が行われる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・管理部
11・・・情報データベース
12・・・制御部
30・・・製造設備
31・・・製造部
32・・・記録部
33・・・通信部
40・・・製品ロット
50・・・自動搬送機
60・・・在庫ストア
100・・・製造システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造する製造工程を実施するための複数の製造設備(30)、及び、前記製品の製造スケジュールと複数の前記製造設備(30)を統括して管理する管理部(10)を有する製造システムであって、
前記製造工程には、第1製造工程、及び、該第1製造工程の後に実施される第2製造工程が含まれており、
前記第1製造工程の終了から、前記第2製造工程の実施までの間には、制限時間があり、
前記製造設備(30)は、前記製造工程を実施する製造部(31)、該製造部(31)のメンテナンス情報を記録する記録部(32)、及び、前記管理部(10)と通信する通信部(33)を有し、
前記管理部(10)は、前記第2製造工程を行う製造設備(30)の通信部(33)から前記メンテナンス情報を受け取ると、前記第2製造工程を行う製造設備(30)のメンテナンス実施期間を算出し、当初、前記メンテナンス実施期間にて前記第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールを、前記第2製造工程を実施する製造設備(30)のメンテナンスの終了後から前記制限時間内に、第2製造工程が実施されるように変更することを特徴とする製造システム。
【請求項2】
前記管理部(10)は、当初、前記メンテナンス実施期間にて前記第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールだけではなく、他の製品の製造スケジュールも変更することで、当初、前記メンテナンス実施期間にて前記第2製造工程の実施予定であった製品の製造スケジュールを、前記第2製造工程を実施する製造設備のメンテナンスの終了後、前記制限時間内に第2製造工程が実施されるように変更することを特徴とする請求項1に記載の製造システム。
【請求項3】
前記製品は、半導体ウエハであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造システム。
【請求項4】
前記第1製造工程は洗浄、前記第2製造工程は拡散であることを特徴とする請求項3に記載の製造システム。
【請求項5】
前記第1製造工程は洗浄、前記第2製造工程は成膜であることを特徴とする請求項3に記載の製造システム。
【請求項6】
前記第2製造工程を実施する製造設備(30)は、ダミーウエハを有しており、
前記第2製造工程を実施する製造設備(30)のメンテナンスは、前記ダミーウエハの交換を含むことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の製造システム。
【請求項7】
前記管理部(10)は、
前記製造工程を実施するのに要する時間を保持する実施時間情報データベース(13)と、
全ての前記製品の製造工程フローを保持する工程フロー情報データベース(14)と、
全ての前記製品の物理的な位置、実施済みの製造工程、未実施の製造工程、製造工程実施の優先度、及び、納期に対する進度を保持する製品情報データベース(15)と、
前記製造設備の通信部から送られてくる前記メンテナンス情報を保持するメンテナンス情報データベース(16)と、
上記した各情報データベース(13〜16)に保持された情報に基づき、前記製品の製造スケジュール、及び、前記製造設備(30)を制御する制御部(12)と、を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の製造システム。
【請求項8】
前記製品や非製品を搬送する自動搬送機(50)、及び、前記製品や前記非製品を保管する在庫ストア(70)を有し、
前記自動搬送機(50)は、前記管理部(10)の指示によって、前記在庫ストア(70)及び前記製造部(31)から、前記製品や前記非製品を前記在庫ストア(70)や前記製造部(31)に搬送することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65736(P2013−65736A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203962(P2011−203962)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】