説明

製造方法

【課題】医薬として使用可能な高ホスフェート結合能のホスフェート吸着剤を提供すること。さらに均質で安定である吸着剤に至る、そして製剤および/または包装が容易にできる、そして吸着剤の特性に、すなわちそのホスフェート結合能に影響することなく大規模で行うことができる製造法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1gのホスフェート吸着剤で約120mgの吸着されたホスフェート、好ましくは1gのホスフェート吸着剤で約140mgの吸着されたホスフェートのホスフェート結合能を特徴とする、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の提供により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規鉄含有ホスフェート吸着剤、その製造方法、その使用およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リンは骨石灰化、細胞構造、遺伝子コーディング、およびエネルギー代謝に重要である。多くの有機および無機形態が存在する。リンはほとんど全ての食品に存在し、食事形態のGI吸収は非常に有効である。リン・ホメオスタシスは通常数種の機構を介して維持されている(腎臓排出、細胞放出、ホルモン制御等)。リン負荷(GI吸収、外因性投与、または細胞放出から)が腎臓排出および組織取り込みを超えたとき、高リン血症が起こる。
【0003】
高リン血症は罹病および死亡の著しい増加に関連し、低カルシウム血症、ビタミンD産生の減少、転移性石灰化のような重篤な合併症を誘発し得る。高リン血症はまた透析依存患者の中の心血管疾患の発生率を上昇させ、骨病態をもたらし得る。
【0004】
腎機能不全または腎不全患者の少なくとも70%が高リン血症を示す。多くの場合、食事からのリン摂取の制限は、血清ホスフェートレベルを正常範囲に低下させるには不十分であり、経口ホスフェート結合剤を摂取する必要がある。
【0005】
高リン血症の処置のために経口で摂取されるカルシウムおよびアルミニウム塩が既知である。しかし、それらの長期間の安全性に関する懸念がある。伝統的アルミニウムベースのホスフェート結合剤はアルミニウム吸収のために副作用の欠点を有する(骨軟化症、脳症、小球性貧血)。カルシウム含有ホスフェート結合剤(炭酸カルシウムまたは酢酸カルシウム)は、特にそれらをビタミンD類似体および高カルシウム透析液濃縮物と共に摂取したとき、転移性石灰化を悪化させ得る。
【0006】
ZerenexTMとして既知の鉄ベースのクエン酸鉄(III)ホスフェート結合剤がUS6,903,235Bに記載されている。ZerenexTMはリンと結合し、非吸着性複合体を形成できる経口で、無機の、鉄ベースの化合物である。この製品が可溶性であるため、この長期投与は胃腸管における鉄濃度の増加を誘発し得て、それは上記の安全性の問題であり得る。
【0007】
Renagel(登録商標)の名でGenzymeから市販されている合成ポリマーであるセベラマー、ポリ(アリルアミン−コ−N,N'−ジアリル−1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン)ヒドロクロライドは鉄交換ゲルマトリクスである。
【0008】
酸化水酸化金属のホスフェート結合能は当分野で既知である。ホスフェート結合剤としての金属水酸化物および酸化水酸化金属の可能性のある医学的適用も記載されている。例えばWO9201458は、摂取されたホスフェートに結合する酸化水酸化鉄により、患者の血清ホスフェートレベルを制御する方法を開示する。
【0009】
例えば、その内容を出典明示により本明細書に包含させるUS6,174,442は、炭水化物および/またはフミン酸により安定化させた多核β−鉄水酸化物を含むホスフェートのための吸着剤を記載する。その内容をまた出典明示により本明細書に包含させるWO2006/000547は、硝酸鉄(III)または硫酸鉄(III)から得て、デンプンおよびスクロースにより安定化させたホスフェートのための吸着剤を記載する。
【0010】
酸化水酸化物を含む既知ホスフェート吸着剤のホスフェート結合能は限界がある。さらに、このような化合物について記載の製造方法は、大量の化合物の製造には適さない。
【0011】
過剰な鉄が身体の臓器に毒であるため、何らかの鉄含有薬剤または化合物からの生理学的条件下での鉄の遊離が、特にUS6,174,442に記載のホスフェート吸着剤の場合、安全性の問題である。好ましくは鉄の毎日の遊離が20mg 鉄/日より低いべきである。高すぎる鉄の遊離は、特にヘモクロマトーシスを有する患者の場合、問題である。ヘモクロマトーシスは、腸からの鉄の吸収が、体飽和レベルに達していてさえ制御されない、鉄代謝の非常に一般的な遺伝的障害。
【0012】
さらに先行技術で利用可能なホスフェート結合剤およびホスフェート吸着剤は、製品1gあたり約120mg ホスフェートを超えては結合できない。これらのホスフェート吸着剤の相対的に低い吸着能のために、毎日摂取すべき吸着剤の量、例えばそれを含む経口投与形態の量および/または数は多いはずである。例えば高リン血症の予防/処置のために透析患者が摂取すべき平均一日量は、ZerenexTMの場合約9個のカプセル、およびRenagel(登録商標)の場合14個のフィルムコート錠である。これは、利用可能なホスフェート吸着剤の患者コンプライアンスが非常に低いことを示す。
【0013】
食事に含まれる相対的に高いホスフェート含量のためおよび利用可能なもしくは先行文献に記載のホスフェート吸着剤の相対的に低い吸着能のために、ホスフェートの血中レベルを効率的に制御するために、このような吸着剤を高投与量で投与する必要がある。故に、ホスフェート結合能のわずかな増加でさえ、毎日投与すべき吸着剤の投与量の減少が、例えば毎日投与すべき経口投与形態の数の減少が可能となり得る。故に、ホスフェート結合能のわずかな増加でさえ患者にとって有益であり、例えば患者コンプライアンスを改善するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
故に、医薬として使用可能な高ホスフェート結合能のホスフェート吸着剤の必要性がある。
【0015】
さらに、均質で安定である吸着剤に至る、そして製剤および/または包装が容易にできる、そして吸着剤の特性に、すなわちそのホスフェート結合能に影響することなく大規模で行うことができる製造法の提供が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
要約
本発明は、現在まで入手可能なホスフェート吸着剤または先行文献に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤よりも高いホスフェート結合能を有する新規ホスフェート吸着剤含有鉄(III)オキシドヒドロキシド、ならびにその使用およびそれを含む医薬組成物を提供する。特に本発明は、i)吸着剤基材、好ましくは不溶性炭水化物、ii)多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、およびiii)可溶性炭水化物を含み、ここで、該可溶性炭水化物が、多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに取りこまれて、例えば部分的に取りこまれている、多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤に関する。本多核酸化水酸化鉄は可溶性炭水化物により安定化し得る。本鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤はさらにカーボネートを含んでよく;本カーボネートは多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに取りこまれて、例えば部分的に取りこまれていてよい。
【0017】
本発明はさらに多核鉄(III)オキシドヒドロキシドを含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤であって、ここで、該多核酸化水酸化鉄が多核ガンマ−酸化水酸化鉄、および所望によりフェリハイドライト、例えば微量のフェリハイドライトを含む、吸着剤を提供する。本多核酸化水酸化鉄は可溶性炭水化物により安定化し得る。
【0018】
本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は、多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、デンプンのような不溶性炭水化物、およびグルコース誘導体(例えばスクロースまたはマルトデキストリン)のような可溶性炭水化物の複合体であると考えられる。本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤に含まれる酸化水酸化鉄は、故に、グルコース誘導体で安定化された全体として生理学的条件下で不溶性の複合体である。恐らく、グルコース誘導体は、過剰乾燥がホスフェート結合能の低下に至り得るため、ホスフェート吸着剤が、その精製中に過剰乾燥するのを妨げることにより作用する。
【0019】
本発明はさらに鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法を提供する。特に容易に包装される、例えば直接小袋に詰めるのに適した乾燥粉末のような形の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を製造し、単離する方法を提供する。
【0020】
さらに本発明は、鉄(III)からガンマ−配置を有する鉄の酸化水酸化物を製造する方法、すなわちガンマ−配置を有する鉄(III)の酸化水酸化物の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
驚くべきことに多核鉄の製造工程中の専用の反応条件の使用により、先行技術のホスフェート吸着剤、特に先行文献に記載のホスフェート吸着剤より高いホスフェート結合能を有する多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を製造できることが判明した。
【0022】
さらに、医薬として使用できる良好なホスフェート結合能を有する酸化水酸化鉄含有化合物を製造するために、安定な鉄ベースの化合物を有する必要がある。酸化水酸化鉄、特に鉄(III)オキシドヒドロキシドは安定な化合物ではないことが知られている:時間と共に、最初は無作為に配置されていた分子の再グループ化および多かれ少なかれ規則的な結晶格子の形成にいたる風化が起こる。風化は通常結晶化だけでなく、粒子拡大にも関与する。このような風化は、酸化水酸化鉄ベースのホスフェート吸着剤のホスフェート結合を変え得る。
【0023】
このような風化はまた鉄を遊離する鉄ベースのホスフェート吸着剤に至り得る。鉄含有薬剤からの鉄の遊離の可能性は、鉄が身体臓器に毒であるため、安全上の懸念である。故に、生理学的条件下で鉄を遊離しないかわずかな量の、例えば20mg 鉄の鉄一日許容量より少ない量の鉄しか遊離しない、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を提供する必要がある。これは、低いバイオアベイラビリティを有する、好ましくは全く生物学的に利用可能ではない鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を提供する必要がある。
【0024】
故に、低いホスフェート結合能および/または高い鉄バイオアベイラビリティを有する酸化鉄への望まない変換を避ける必要がある。驚くべきことに、不溶性および可溶性炭水化物、例えばデンプンおよびスクロースのような専用の反応条件および助剤の使用により、酸化水酸化鉄の風化を防止することが可能であることが判明した。
【0025】
本発明によって、先行技術のホスフェート吸着剤よりも高いホスフェート結合能を有する、ここで、“本発明のホスフェート吸着剤”または“本発明の化合物”と定義する、ホスフェートの吸着のための新規鉄ベースのホスフェート吸着剤が提供される。
【0026】
高いホスフェート結合能は、当分野で既知のホスフェート吸着剤よりも、例えばUS6,174,442に記載の吸着剤よりも約15%高い、例えば少なくとも20%高い、例えば少なくとも25%高い、例えば少なくとも30%高いことを意味する。例えば、本発明の化合物は約12%m/mより多い、好ましくは約14%m/mより多い、好ましくは約20%m/mであるかまたは約20%m/mより多いホスフェートを吸着できる。ここで定義する%m/mは、質量対質量パーセント、すなわち1gのホスフェート吸着剤により吸着されている(gで)ホスフェート(PO3−として計算される)の量を意味する。
【0027】
本発明によって、i)吸着剤基材、好ましくは不溶性炭水化物、ii)多核鉄(III)酸化水酸化物、およびiii)可溶性炭水化物を含み、ここで、該可溶性炭水化物が多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに部分的に取りこまれている、鉄ベースのホスフェート吸着剤が提供される。ここで定義する“部分的に取りこまれている”は、ホスフェート吸着剤の総重量に基づいて、可溶性炭水化物の約10から20重量%が多核鉄(III)酸化水酸化物に取りこまれている、すなわちホスフェート吸着剤の洗浄により除去できないことを意味する。
【0028】
ここで定義する、“吸着剤基材”は、好ましくは有機または無機OH基を有する、多孔性物質、例えば不溶性炭水化物;有機ポリマーまたはコポリマー;天然、半合成または合成直鎖および/または分枝鎖;可溶性または不溶性ポリヒドロキシル化合物(例えばポリビニルアルコール);例えばグリセリル修飾ガラスのような二酸化ケイ素および/またはケイ酸に基づく無機支持体を意味する。好ましい吸着剤基材は不溶性炭水化物である。
【0029】
不溶性炭水化物の例はデンプン、アガロース、デキストラン、デキストリン、セルロースを含む。好ましい不溶性炭水化物はデンプンである。
【0030】
本発明によって、“可溶性炭水化物”はスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物のようなグルコース誘導体を意味する。好ましい可溶性炭水化物はスクロースである。
【0031】
好ましくは本発明の鉄ベースのホスフェート吸着剤は、グルコース誘導体(例えばスクロースまたはマルトデキストリン)のような可溶性炭水化物、およびデンプンを含む、鉄(III)オキシドヒドロキシド含有化合物である。
【0032】
本発明の一つの態様において、本ホスフェート吸着剤は、多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、デンプンおよびグルコース誘導体(例えばスクロースまたはマルトデキストリン、好ましくはスクロース)から形成された複合体として定義し得る。好ましい態様において、多核酸化水酸化鉄は吸着剤基材、例えばデンプンに結合している。
【0033】
本発明の一つの態様において、本発明の化合物は、鉄(III)オキシドヒドロキシドにより覆われ、所望によりスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物のようなグルコース誘導体で安定化されたデンプン粒子を含む。好ましくは、鉄は粒子表面上に均一に分散している。
【0034】
本発明のさらなる局面において、刺激された胃液でわずかな鉄しか遊離しない新規鉄ベースのホスフェート吸着剤を提供する(薬局方で定義の通り)。例えば、本発明のホスフェート吸着剤は2から10までのpH範囲で鉄を相当量遊離しない。一つの例において、10gの本発明のホスフェート吸着剤は2を超えるpHで約20mg未満の鉄を遊離し得る。
【0035】
本発明のさらなる局面において、本発明の化合物は、化合物の総重量に基づいて約10から約35wt%、例えば約20から約30wt%、好ましくは少なくとも約20重量%の不溶性炭水化物、例えばデンプン、例えば約10から30、例えば約30、例えば約28重量%のデンプンを含み得る。
【0036】
本発明のさらなる局面において、吸着剤の総重量に基づいて、約5〜約50重量%、例えば約10から約40重量%、例えば約12から約30重量%の可溶性炭水化物を含む、鉄(III)酸化水酸化物およびデンプンを含む新規ホスフェート吸着剤を提供する。例えば、本発明の吸着剤は、化合物の総重量に基づいて、少なくとも約10重量%のスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物(好ましくはスクロース)、例えば少なくとも約14重量%のスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物(好ましくはスクロース)、例えば約28wt%のスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物(好ましくはスクロース)を含む。
【0037】
本発明のさらなる局面において、化合物の総重量に基づいて、約5重量%を超える、例えば約5から約10重量%、例えば約5から約8重量%の水を含む、鉄(III)オキシドヒドロキシドを含む新規ホスフェート吸着剤を提供する。
【0038】
本発明のさらなる局面において、本発明のホスフェート吸着剤は、吸着剤の総重量に基づいて少なくとも約10重量%の鉄、例えば少なくとも約18重量%、例えば約30重量%の鉄、例えば鉄(III)を含む。本発明の他の局面において、本発明の化合物の鉄含量は、化合物の総重量に基づいて約10から約35重量%、例えば約15から約30重量%、例えば約25から約30重量%である。
【0039】
本発明のさらに別の局面において、吸着剤の総重量に基づいて、約5から約10重量%の水、約20から約30重量%の鉄を含む、デンプンおよびスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物のようなグルコース誘導体(好ましくはスクロース)を含む新規鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を提供する。
【0040】
好ましくは本発明のホスフェート吸着剤は鉄(III)、より好ましくはγ−鉄(III)オキシドヒドロキシドを、所望によりフェリハイドライトとの混合物で、含む。好ましい態様において、ホスフェート吸着剤の多核酸化水酸化鉄はガンマ−酸化水酸化鉄(好ましくはガンマ−鉄(III)オキシドヒドロキシド)またはガンマ−酸化水酸化鉄とフェリハイドライトの混合物から成る。
本発明の他の態様において、本発明の化合物はx線非晶質である。
【0041】
本発明のホスフェート吸着剤は、鉄塩、好ましくは鉄(III)塩の水性溶液と、水性塩基を反応させることにより得て、ここで、塩の沈殿が不溶性炭水化物、好ましくはデンプンの存在下で起こる。得られた酸化水酸化鉄は、鉄水酸化物が風化する前に沈殿に可溶性炭水化物を添加することにより、安定化する。
【0042】
ガンマ−鉄(III)製造方法
酸化水酸化ガンマ−鉄(III)(γ−鉄(III))、ならびに酸化水酸化γ−鉄(III)とフェリハイドライトの混合物を、鉄(III)源(塩化鉄(III))から、鉄(II)の使用およびその後の酸化工程なしに選択的に直接得ることが可能であるとは予測されていなかった。
【0043】
本発明はまた鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を、6から10の間のpHで、所望によりデンプンの存在下で反応させる工程を含む、ガンマ−鉄(III)オキシドヒドロキシドの新規製造方法を提供する。デンプンは工程a)の後に、すなわち鉄塩と塩基の完全な混合後に添加してよい。
【0044】
工程a)に存在しないならば、デンプンをさらなる工程(工程b)で、例えば鉄塩と塩基の完全な混合後に添加し得る。他の態様において、デンプンを工程a)で添加し、さらにデンプンを工程b)で添加する。
両方の態様において、塩基による塩の沈殿がデンプン存在下で起こる。
所望により得られた沈殿を、下記に定義の通り単離し、洗浄する。
【0045】
反応の他の態様において、水性塩基は塩基と澱粉の水性塩基性混合物から成り得る。反応は好ましくは環境温度で、または好ましくは低温で行い得る。
【0046】
鉄塩は塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)または硫酸鉄(III)であり得て、好ましくは鉄塩は塩化鉄である。
【0047】
この方法により得た鉄(III)オキシドヒドロキシドはガンマ配置を有する。小量の、例えば微量のフェリハイドライトも存在してよい。
【0048】
鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤製造方法。
驚くべきことに、鉄と塩基の反応中に炭水化物、例えばデンプンおよび/またはスクロースを存在させることによりおよび/またはその反応のpHを注意深く制御することにより、優れた品質の、すなわち均一で安定な酸化水酸化鉄含有ホスフェート吸着剤が得られることが判明した。炭水化物の存在は、酸化水酸化鉄の風化、すなわち最初に形成された酸化水酸化鉄から効力が低いホスフェート結合剤への変換を防止する。予期されないことに、反応のpHの注意深い制御により、予期しない高ホスフェート結合能の製品を合成できることが判明した。
【0049】
酸化水酸化鉄の製造は先行技術で既知であり、U. Schwertmann and M. R. Cornell “Iron oxides in the Laboratory”, Wiley-VCH, Second, completed revised and extended edition, 1991に記載されている。この文献は、β−鉄(III)水酸化物の製造が、すなわちβ−配置(ベータ−配置)の鉄(III)水酸化物を鉄(III)から得ることが、およびガンマ−鉄(II)酸化水酸化物の製造が、すなわちガンマ−配置(すなわちγ−配置)を有する酸化水酸化鉄を鉄(II)から得ることが可能であることを教示する。
【0050】
酸化水酸化鉄の製造に使用する、pH、塩基対鉄比、鉄濃度等のような反応条件のわずかな変化でさえ、所望の製品を得ることを妨げることが知られている(U. Schwertmann and M. R. Cornellの65頁参照)。特に、異なる量の、特に高用量の酸化水酸化鉄を産生するために、単純に量を増やすか減らすことが、異なる構造を有する製品の製造に帰着し得る。
【0051】
医薬として使用できる鉄ベースの化合物を得るために、常に高ホスフェート結合能を示す、例えば常に同じ構造を有する製品をもたらす製造方法が必要である。この要求は、大きなスケールアップの場合に特に満たされるべきである。驚くべきことに、大量の、例えば数gの均一な鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤が、適当な反応条件の使用により、すなわち、スクロースのような安定化剤を熱負荷中に使用することにより、および/または製品を噴霧乾燥または流動噴霧乾燥のような穏やかな方法により単離することにより、製造できることが判明した。
【0052】
本発明はまた鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物(例えばデンプン)および可溶性炭水化物(例えばグルコース誘導体)を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を、6から10、例えば6から8、6.5から7.5、好ましくは約7のpHで、反応させ、例えば同時に混合し、
工程i)を不溶性炭水化物、例えばデンプンの存在下で行い、そして所望によりさらなる不溶性炭水化物を混合完了後に添加するか:
または不溶性炭水化物を工程i)の完了後に、例えば混合の完了後に添加し、
ここで、両方の場合に不溶性炭水化物は塩沈殿の完了前に添加し;
ii) 形成した沈殿を単離し、そして所望により、例えば水で洗浄し;
iii) 沈殿を、例えば水に懸濁させ;そして
iv) 可溶性炭水化物を添加し;そして所望により
v) 防腐剤および結合剤から選択される少なくとも1種の賦形剤を添加する
工程を含む、方法も含む。
【0053】
工程i)において、鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基は、最初に酸化水酸化鉄の凝集を、次いで沈殿をもたらす。凝集は不溶性炭水化物、例えばデンプンの存在下で行ってもよく、または炭水化物を凝集後に、そして沈殿の前に添加してよい。本発明によって、塩の沈殿は不溶性炭水化物、好ましくはデンプンの存在下で行う。不溶性炭水化物を沈殿が起こる前に、または沈殿中に添加してよい。好ましくは不溶性炭水化物は沈殿が完了する前に添加する。
【0054】
好ましくは、鉄(III)塩の水性溶液を、不溶性炭水化物、例えばデンプンの存在下で水性塩基と混合する。所望によりさらなる不溶性炭水化物をその後添加する。本発明の他の態様において、不溶性炭水化物を水性塩基と鉄塩を混合した後にのみ、例えば塩の沈殿が開始した後に添加する。
【0055】
不溶性炭水化物は沈殿を安定化できると考えられる。予想外に、不溶性炭水化物、好ましくはデンプンの存在下で沈殿を行うことが、このようにして得られた鉄(III)ベースの化合物のホスフェート結合能を増加させることが判明した。得られた酸化水酸化鉄は、鉄水酸化物が風化する前に沈殿に可溶性炭水化物を添加することにより安定化し得る。
【0056】
鉄(III)塩は塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)または硫酸鉄(III)であってよく、好ましくは本鉄塩は塩化鉄(III)、例えば固体塩化鉄(III)六水和物である。鉄(III)塩の水性溶液は、特に水中の上記で定義の鉄(III)塩の溶液である。鉄塩の溶液は、鉄塩の総重量に基づいて、約3から約35wt/wt%、例えば20から約30wt/wt%の鉄塩、好ましくは約25wt/wt%の鉄塩を含み得る。好ましくは、鉄塩の総重量に基づいて、約20から30wt/wt%、好ましくは約25wt/wt%の塩化鉄(III)溶液を使用する。
【0057】
本発明によって、鉄ミョウバン(例えばKFe(SO)またはNHFe(SO))または鉄(III)の硫酸含有溶液、例えば硫酸鉄(III)の溶液のような他の水性鉄溶液を使用することも可能である。
【0058】
使用すべき塩基は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩であり得る。アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)が好ましい。特に、塩基はLiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)、Mg(OH)、LiCO、KCO、CaCO、MgCO、好ましくはNaCOから選択され得る。塩基溶液は、溶液の総容量に基づいて、約20から約30、例えば約22から約27、例えば約25.5vol%の塩基を含み得る。
【0059】
水性塩基は、上記で定義の塩基および不溶性炭水化物、例えばデンプンを含む水性溶液から成り得る。
【0060】
塩基の量は、所望のpHを得るために、例えば鉄(III)塩の水性溶液との混合によりもたらされる溶液のpHを、約6から10、好ましくは約6から8、より好ましくは約6.5から7.5、さらに好ましくは約7のpHに合わせるために選択する。
【0061】
デンプンはコーン、小麦、コメ、メイズまたはジャガイモデンプン、およびそれらの混合物から選択され得る。デンプンはまた可溶性デンプン(例えばマルトデキストリン)の一部を成し得る。例えば、デンプンは80wt%またはそれ以上のジャガイモデンプンと20wt%またはそれ以下の可溶性デンプン、例えば80wt%またはそれ以上のジャガイモデンプンと20wt%またはそれ以下のマルトデキストリンの混合物であり得る。本発明の他の態様において、デンプンを食物繊維、例えばBenefiber(登録商標)(Novartis AGにより製造)と置き換える。好ましくはデンプンはジャガイモデンプンである。
【0062】
好ましくは例えば1gの不溶性炭水化物、例えばデンプンを約0.5から約30gの鉄塩当たり、例えば約1.0から約20gの鉄塩あたり、例えば約1.5から約10gの鉄塩あたり、例えば約2.0から約15gの鉄塩あたりに添加する。
【0063】
本発明の好ましい態様において、工程i)において溶液のpHを、全混合中6から8の間、好ましくは約7の一定pHに維持する。鉄塩と塩基を同時に添加することにより、pHを所望の値に調節できる。
【0064】
本発明によって、反応、特に工程i)は、好ましくは約1から20、好ましくは2から10、好ましくは約5℃の温度で行う。他の態様において工程i)を環境温度で行う。
【0065】
工程ii)に続いて、懸濁液を短時間、例えば1時間を超えて、好ましくは1から5時間、より好ましくは一晩沈滞(stagnate)させる。その間、懸濁液を撹拌してよい。
【0066】
本発明によって、可溶性炭水化物はグルコース誘導体であり得る。グルコース誘導体はアガロース、デキストラン、デキストリン、デキストラン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトールおよびそれらの混合物から選択し得る。好ましいグルコース誘導体はスクロース、マルトデキストリンおよびそれらの混合物である。最も好ましいグルコース誘導体はスクロースである。
【0067】
本発明によって、工程iv)で添加する可溶性炭水化物、例えばグルコース誘導体の量は、ホスフェート吸着剤の重量に基づいて、約5から約15%wt、好ましくは約5から約10%wtである。好ましくは約5から約15重量%スクロースまたは約5から約10重量%スクロースを使用する。
本発明によって、工程i)で得た沈殿を、少なくとも1回洗浄してよい。
【0068】
本発明によって、工程ii)において得られた沈殿を、例えば傾捨、濾過、遠心により、好ましくは傾捨により単離し、次いで洗浄する。洗浄を水またはNaHCOの水性溶液、好ましくは水で行う。水洗浄液とNaHCO洗浄液の組み合わせを使用してよい。沈殿を1回または数回、好ましくは数回洗浄する。洗浄を、不純物のレベルが予め決めたレベルより低くなるまで、例えば数時間から数日間行い得る。好ましくは2から5回、より好ましくは3から5回の洗浄を行う。各洗浄操作後、水または洗浄溶液を傾捨、濾過、遠心により、好ましくは傾捨により除去する。好ましくは、製品を完全には乾燥させない。
【0069】
次いで、製品を水に再懸濁する。懸濁液が処理可能となるのに最小量の水が必要である。例えば水の量/最終ホスフェート吸着剤の比は、約0.8から約2、好ましくは1.1から1.5、より好ましくは約1であり得る。
得られたホスフェート吸着剤の水性懸濁液は、約6.5から7.5の範囲の、ほぼ中性pH値を有する。
【0070】
懸濁はまた上記で定義の可溶性炭水化物、例えばスクロースの存在下で行ってもよく、例えば懸濁を可溶性炭水化物の水性溶液で行う。または可溶性炭水化物をさらなる段階で、沈殿を再懸濁した後に添加する。
工程iv)において、好ましい可溶性炭水化物はスクロースである。
【0071】
工程iv)において、防腐剤は例えばクロルヘキシジンまたはp−ヒドロキシ−安息香酸エステル、または例えばエタノール、メタノール、2−プロパノールのようなアルコール、またはそれらの組み合わせのような可溶性防腐剤であり得る。好ましくは、防腐剤はアルコールである。好ましいアルコールはエタノールである。
本発明の一つの態様において、工程v)から得たホスフェート吸着剤を乾燥させない、例えば完全に乾燥させない。
【0072】
所望により、ホスフェート吸着剤を単離することから成るさらなる工程(すなわち工程vi)を追加できる。このような単離は濾過、傾捨、噴霧乾燥または流動噴霧乾燥により成し得る。好ましくは噴霧乾燥または流動噴霧乾燥、例えば流動床噴霧乾燥を行う。予想外に、このような技術が、賦形剤を使用する必要がなく直接小袋に入れるのに適した、十分に粒状の、自由に流動するおよび粉塵がない粉末の製造に至ることが判明した。その粉末は、例えば加工および包装中、容易に操作できる。
【0073】
本発明によって、噴霧乾燥または流動噴霧乾燥により製品を単離する工程をさらに含む、上記の通りの乾燥粉末形態の高ホスフェート結合能を有する鉄(III)ベースの吸着剤の製造方法が提供される。驚くべきことに、流動床噴霧乾が、直接小袋に入れるのに適した、または容易に造粒して顆粒を製造できる、十分に粒状の、自由に流動するおよび粉塵がない粉末に適することが判明した。
【0074】
本発明の他の好ましい態様において、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の表面積が、ホスフェート吸着剤の製造中に、例えば上記の工程vi)中に、例えば多孔性賦形剤、例えば二酸化ケイ素、例えばAerosilを添加することにより増加させる。
【0075】
さらなる製剤工程を行い得る。例えばホスフェート吸着剤の混合、造粒、カプセル封入および/または錠剤化の工程を、必要に応じて賦形剤を添加して行い得る。
【0076】
本発明の一つの態様において、本方法は、粉末を所望により結合剤および滑剤から選択される少なくとも1種の賦形剤の存在下で造粒して、顆粒として鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を製造する工程vii)をさらに含む。
本発明の他の態様において、本方法は、製品を錠剤かする、すなわち工程vi)で得た粉末または工程vii)で得た顆粒のいずれかを錠剤化するさらなる工程viii)を含む。本錠剤化工程は、所望により増量剤、結合剤、崩壊剤、流動剤(flow agent)、滑剤、およびそれらの混合物から選択される賦形剤の存在下で行う。
【0077】
製剤
酸化鉄は、そのほこりっぽさのために製造が困難であることが知られている。このようなほこりっぽさはまた、酸化鉄含有化合物の医薬組成物への製剤および/またはこのような化合物の包装についても問題であり得る。特に、酸化鉄を粉末として摂取しなければならないとき、細かいほこりが空気により舞い上がり得て、または吸入さえされ得て、酸化鉄の一部を失うか、またはその不正確な量の獲得に至り得る。故に、患者に安全に投与でき、特にその用量が患者が摂取するときに制御できる、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む医薬組成物を製造することが重要である。
【0078】
酸化鉄含有ホスフェート吸着剤を効率的に経口投与できる医薬として適するように得るために、経口医薬組成物に製剤できる化合物を得る必要がある。典型的経口製剤は、自動コンパクションまたは小袋充填を容易にするために存在する賦形剤を含む。しかしながらこのような賦形剤の添加は、吸着剤のホスフェート結合能に影響し得る。故に、本発明の好ましい態様において、ホスフェート吸着剤は粉末の形である。驚くべきことに、本発明により、製造方法中の専用の加工条件の使用により、そのような賦形剤の添加が避けられることが判明した。
【0079】
食事を通して毎日食べられるホスフェートの量およびホスフェート吸着剤の相対的に低いホスフェート結合能のために、例えば高リン血症を有するような、このような化合物の摂取が必要である患者は、毎日それらを高用量取ることが必要である。故に、患者の、例えば高齢または小児患者の場合の、コンプライアンスを改善するであろう製剤でのホスフェート吸着剤の提供が必要である。粉末の形の製剤は、粉末が水で希釈でき、故に小量の液体でホスフェート吸着剤の高用量を摂取することが可能であるため、市販のホスフェート吸着剤と比較してコンプライアンスを改善し得る。
【0080】
驚くべきことに本発明の発明者らは、酸化鉄含有ホスフェート吸着剤を、化合物の高ホスフェート結合能を維持しながら、賦形剤を使用する必要なく、ほこりっぽくなく、そして自由流動性の粉末の形で製造することができた。その粉末は、例えば加工および包装中、容易に操作できる。例えばその粉末は小袋またはスティックパックに容易に充填、例えば機械的に充填できる。
【0081】
本発明は、自由流動性で、ほとんど無塵であって、故に、小袋またはスティックパックに充填、例えば自動で充填できるホスフェート吸着剤を提供する。
【0082】
本発明によって、本発明の医薬組成物は、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤、例えば本発明のホスフェート吸着剤含有医薬組成物を意味する。
【0083】
本発明の医薬組成物は、何らかの慣用の形態、好ましくは経口投与形態、例えば粉末、顆粒、粒状、カプセル、小袋、スティックパック、ボトル(所望により適当な投与システム、例えば、計量スプーンと共に)、錠剤、分散錠、フィルムコーティング錠、または独自にコーティングされた錠剤に製剤できる。
【0084】
本発明の医薬組成物はまた以下に定義のような半固体製剤、例えば水性および非水性ゲル、嚥下可能なゲル、咀嚼する必要のあるバー(chewy bar)、急速分散投与形態(速く分散する投与形態)、クリームのボール型の嚥下可能な投与形態、咀嚼可能投与形態、または可食小袋として製剤できる。
好ましい製剤は粉末、顆粒、錠剤、例えば分散錠である。
【0085】
本発明の好ましい態様において、医薬組成物は粉末または粒状製品(すなわち粒状粉末または顆粒)の形に製造し、それを所望によりボトル、カプセル、小袋またはスティックパックのような粉末容器に入れる。所望によりこのような小袋またはスティックパックは、子供が簡単に開けられない特徴を備える。
【0086】
以下に定義の滑剤を、例えば上記に定義の製造方法に従い製造した、例えば本発明のホスフェート吸着剤をカプセルに入れる場合、添加してよい。
【0087】
粒状製品は、乾式造粒、例えばローラー圧縮により、または湿式造粒により、例えば流動床または高剪断ミキサー中で製造できる。造粒は、顆粒の機械的安定性を改善するために、結合剤、例えばMCCの存在下で行い得る。顆粒を、その後例えばボトル、カプセル、小袋またはスティックパックに充填し得る。本発明の一つの態様において、このような充填は自動作業システムにより行うことができる。
【0088】
小袋またはスティックパックは約0.5から10g、例えば約0.5から5gの粒状製品を含む。
【0089】
本発明の医薬組成物は結合剤、例えばスクロースまたは微晶性セルロース(MCC)のような乾燥結合剤を含み得る。
【0090】
本発明の他の態様において、本発明の医薬組成物は滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはPEG6000またはPEG4000のような親水性滑剤を含み得る。本発明は、例えば粉末または顆粒として鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含み、好ましくはさらに滑剤を含むカプセルを提供する。
【0091】
本発明の一つの態様によって、医薬組成物は錠剤の形である。良好な適用性または容易な区別のために、その後錠剤のコーティングを行い得る。
【0092】
錠剤は、純粋粉末として、すなわち賦形剤を含まないホスフェート吸着剤の錠剤化により、例えば直接圧縮により製造できる。
【0093】
本発明の他の態様において、錠剤を、純粋粉末、すなわち賦形剤を含まないホスフェート吸着剤の粉末を、増量剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤、およびそれらの混合物から選択される賦形剤のような適当な賦形剤と共に圧縮ことにより製造する。
【0094】
本発明のさらに別の態様において、錠剤を粒状粉末(すなわち“内相”)を、さらなる賦形剤(“外相”)と一緒に圧縮することにより得る。本発明の医薬組成物の内相はホスフェート吸着剤、および増量剤、結合剤、崩壊剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む。本発明の医薬組成物の外相は、流動剤、滑剤、増量剤、崩壊剤およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む。好ましくは外相は流動剤、滑剤、および所望により増量剤および/または崩壊剤を含む。
【0095】
本発明の医薬組成物は処理可能性を提供するために増量剤を含み得る。
【0096】
適当な増量剤は当分野で既知であり(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990), Mack Publishing Co., Easton, PA, pp. 1635-1636参照)、微晶性セルロース、ラクトースおよび他の炭水化物、デンプン、前ゼラチン化デンプン、例えば、デンプン1500R(Colorcon Corp.)、コーンデンプン、リン酸二カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、セルロース、カルシウムホスフェート二塩基性無水物、糖、塩化ナトリウム、およびそれらの混合物を含み、その中でラクトース、微晶性セルロース、前ゼラチン化デンプン、およびそれらの混合物が好ましい。その優れた崩壊および圧縮特性のために、微晶性セルロース(Avicelグレード、FMC Corp.)、および微晶性セルロースと1個以上のさらなる増量剤、例えば、コーンデンプンまたは前ゼラチン化デンプンを含む混合物が特に有用である。好ましくは増量剤は微晶性セルロースである。
【0097】
増量剤は、医薬組成物の総重量に基づいて、約10から40wt.%、好ましくは20から40wt%、より好ましくは約30wt%の量で存在する。
【0098】
本発明の医薬組成物は、以下のクラスの賦形剤を含み得る:
a)既知の錠剤化結合剤(例えば、カルボキシメチル−セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ポリビニル、ポリアクリレート、ゼラチン、天然および合成ゴムのようなヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、前ゼラチン化デンプン(デンプン1500)、ゼラチン、糖、天然および合成ゴム)、微晶性セルロース、および前記の混合物。好ましい態様において、結合剤は低置換ヒドロキシプロピルセルロースHPC(例えばHPセルロース−LH22)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC、例えば3または6cpsから成る。
錠剤化結合剤は、医薬組成物の総重量に基づいて、約1から約10wt.%、および好ましくは約1から約5wt.%を構成し得る。好ましい態様において、結合剤は、医薬組成物の総重量に基づいて約3wt%で使用する。
【0099】
b)崩壊剤、例えばカルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチル−セルロース(クロスカルメロースナトリウム)、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコラート。好ましい崩壊剤はクロスポビドンおよびクロスカルメロースナトリウムである。
崩壊剤は、医薬組成物の総重量に基づいて、約3から約15wt.%、好ましくは約5から約10wt%を構成し得る。例えば、崩壊剤はクロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムまたはそれらの混合物であり、医薬組成物の総重量に基づいて、約10wt%で含まれる。
【0100】
c)滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、水素化植物油、カルナウバ蝋など、PEG6000またはPEG4000のようなポリエチレンオキシド。好ましい態様において、滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムは、医薬組成物の総重量に基づいて、約0.5から約5wt%、例えば約3から約5wt%、好ましくは約2から約3%で存在し得る。
【0101】
d)流動剤、例えば二酸化ケイ素またはタルク、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素(例えばAerosil)。流動剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素は、医薬組成物の総重量に基づいて、約0.1−2wt%、例えば0.5wt%で存在し得る。
【0102】
e)抗付着剤または流動促進剤、例えば、タルク;
f)甘味剤;
g)乳白剤または着色剤、例えば二酸化チタン、酸化鉄またはアルミニウムレーキ;
h)香味剤;
i)抗酸化剤。
【0103】
本発明によって、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤、および滑剤、および所望により上記の増量剤、結合剤、崩壊剤、および流動剤から選択される少なくとも1種のさらなる賦形剤を含む、錠剤が提供される。本錠剤は、上記の抗付着剤、流動促進剤、甘味剤、乳白剤または着色剤、および香味剤から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含み得る。
【0104】
錠剤はコーティングしてよく、例えばフィルムコーティングを含み得る。本発明の医薬組成物に適用すべきフィルムコーティング組成物における適当なフィルム形成剤は、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、官能基としてジメチルアミノ−エチルメタクリレートを含むカチオン性ポリマーのような親水性ポリマー(例えばEudragit EおよびEPO)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを含み、その中でヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0105】
フィルムコーティング組成成分は可塑剤、例えば常用量のポリエチレングリコール(例えばポリエチレングリコール6000)、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール、グリセリンならびに上記の二酸化チタンのような乳白剤、および着色剤、例えば酸化鉄、アルミニウムレーキ、などを含む。好ましくはSepifilmまたはOpadry混合物(後者はColorcon Corp製である)のような乾燥混合物を使用する。これらの製品は、フィルム形成ポリマー、乳白剤、着色剤および可塑剤の個々に製造された乾燥前混合物であり、それを水性フィルムコーティング懸濁液にさらに加工する。
【0106】
フィルムコーティングは、一般に、医薬組成物の総重量に基づいて、約1から10wt.%、および好ましくは約2から6wt.%の錠剤重量増加を達成するように適用し得る。
【0107】
フィルムコーティングは、水および/または慣用の有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール)、ケトン(アセトン)などを使用して、適当なコーティングパンまたは流動床装置において慣用の技術で適用できる。
【0108】
本発明の他の態様において、本鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は、独自にコーティングされた錠剤として製剤される。
【0109】
本発明の錠剤は、鉄(III)ベースのホスフェート(医薬原体)の直接圧縮により、そして、高濃度のステアリン酸マグネシウム(例えば約3から約5%)の添加により製造できる。
錠剤は、例えばHPMC 3cPs、HP−セルロースLH−22のような結合剤をさらに含み得る。
【0110】
静電気乾燥粉末沈積方法は、大量の物質を添加せずに錠剤の完全性を高め得て、また投与形態の独特な見かけの機会を提供する。
【0111】
錠剤は、例えば、下記の通り静電気乾燥粉末沈積方法により被覆できる:
コーティング混合物を、ポリマー(好ましくはEudragit、例えばE、RS、L、RLタイプおよびさらにPVP/VA、HPMPC、HPMCAS)、着色剤(例えば二酸化チタン)および他の添加剤(例えばPEG3000)の混合物の溶融押出により製造する。製造した溶融押出物の微粉化のさらなる工程を、例えば約7から10ミクロンで、所望により行う。
【0112】
コーティング工程は、i)コア(例えば真空により)をホイールに固定し、荷電し、コーティングチャンバーを通して輸送し、逆荷電したコーティング粉末をコア表面に付着させ、ii)ホイール上の粉末層付加されたコアを、コート層を溶融させるIRランプ部に移し、iii)コアを隣接する第二のホイールに移し、錠剤コアの底面について本工程を繰り返すことから成り得る。典型的コート層の重量は、コア重量の3−4%であり、約20−50μm厚である。
【0113】
熱固定工程:溶融サイクルは製品毎に異なるが、典型的に一面あたり約80秒である。これは錠剤を室温から加熱し、錠剤表面温度が約100℃の、そして錠剤コアが約70℃のピークに約20秒達するようにすることを含む。
【0114】
本発明によって、本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤はまた半固体製剤として製剤できる。このような組成物は嚥下が、特に高齢者および小児にとって楽であり、そして薬ではなく補助食品と考えられ得る。さらにこのような半固体投与形態は、複数投与用または1回投与用容器に充填できるという利点を有する。
【0115】
本発明の一つの態様において、本発明の組成物は水性ゲル製剤の形である。このような水性ゲルは好ましくはぬれ性を有する増粘剤、または濃厚剤を含み得る。本増粘剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、およびグリセロールから選択され得る。濃厚剤はデンプン(例えばコーンデンプン、ジャガイモデンプン)(デンプンは好ましくは加熱されている)、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アルギン酸塩(例えばアルギン酸ナトリウム)、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、および他のペースト形成剤(例えばPVP、ポリアクリル酸、アラビアゴム、キサンタンゴムおよびそれらの混合物)から選択され得る。
【0116】
加えて、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルおよびその塩、p−ヒドロキシル安息香酸プロピルエステルおよびその塩、ソルビン酸およびその塩、安息香酸およびその塩またはクロルヘキシジンのような防腐剤を添加し得る。香味剤および甘味剤もまた添加してよい。水性ゲルは、防腐系の抗微生物作用を確実にするために緩衝系、例えばクエン酸または酢酸緩衝剤を含んでよい。
【0117】
水性ゲルは、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロースのような甘味剤、およびイチゴまたはパッションフルーツ(passion)のような香味剤から選択される少なくとも1種の薬剤をさらに含み得る。
【0118】
水性ゲルは、濃厚剤以外の全ての賦形剤を精製水に溶解し、ホスフェート吸着剤を激しく混合して分散させ、その後濃厚剤を添加することにより製造する。
【0119】
可能性のある半固体製剤は、嚥下可能なゲル、例えば水性または非水性ゲル(ホスフェート吸着剤は所望によりカプセル封入されているかまたは粒状である);咀嚼する必要のあるバー、例えばシリアル・バー;経口で分散するウェハー(orally dispersing wafer)のような急速分散投与形態(速く分散する投与形態);クリームのボール型の嚥下可能な投与形態;キャンディ、軟カプセルまたはヌガー(nugget)のような咀嚼可能投与形態;または可食小袋を含むが、これらに限定されない。このような半固体製剤において、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は不溶性炭水化物として食物繊維を含み得て、例えばデンプンを食物繊維と置き換え得る。
【0120】
半固体製剤は薬よりもむしろ補助食品として認知され得る利点を有し、これは、より大きな投与形態が患者に許容され得ることを意味する。好ましくは、これらの製剤は高齢および小児患者に与える。
【0121】
嚥下可能なゲルは嚥下が楽であり、薬よりもむしろ補助食品として認知される可能性がある。加えて、フレーバーの選択肢が広い。非水性ゲルが好ましい。鉄水酸化物のカプセル封入および/または造粒工程は、食感(mouth feeling)、例えばザラザラ感の問題に対処するために好ましくは包含される。
【0122】
本発明によって、咀嚼する必要のあるバーは、麦芽エキス、スキムミルク粉末、脱脂カカオ、グルコースシロップ、卵、硬化ヤシ油(例えばバーの総重量に基づいて約30重量%)、酵母、塩化ナトリウム(例えばバーの総重量に基づいて約0.1重量%)、ビタミン(例えばビタミンE)、フレーバー(例えばバニラフレーバー)、1種以上の安定化剤(例えばE339、E435、E472b、E475、大豆レシチン)、濃厚剤(例えばcarob flour、E460)から成る群から選択される成分を含み得る。本バーは、例えば糖、カカオ、カカオバター、全乳、スキムミルク粉末、ヘーゼルナッツ、バター脂肪、大豆レシチンを含む、ミルクチョコレート層でコーティングしてよい。このコーティングは、咀嚼する必要のあるバーの総重量の33重量%であり得る。製造方法は、全成分をミキサー中で高温で混合し、混合物を鋳型に入れることを含み得る。本バーは室温に冷却し、鋳型から除いた後包装し得る。
【0123】
咀嚼する必要のあるバー、例えばシリアル・バーの咀嚼は便利であり、患者に優しい投与であり、日常習慣の一部として、すなわち薬よりむしろ補助食品として見なされ得る。このような投与形態は、大きさに関してわずかな限定を有するのみである。加えて、広範なフレーバーの選択肢がある。
【0124】
経口で分散するウェハーは、多用途の急速分散投与形態である。本発明のホスフェート吸着剤、例えば鉄(III)ベースのホスフェートを含む経口で分散するウェハーは、それらが嚥下が楽であり、薬よりむしろ補助食品として見なされ得るため、特に小児および高齢集団に適する。
【0125】
本発明によって、急速に分散する投与形態は、その活性成分、すなわち鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を約90秒以内に遊離し得る。これらの投与形態は、三次元的形態を示し得て、それは適当な貯蔵で維持できるが、過剰の湿度の存在下で容易に分散し得る。
【0126】
本発明によって、急速に分散する投与形態、例えば経口で分散するウェハーは、目的物をパターン化された薄層の連続的添加、例えば3次元的プリンティング(3DP)を介した積層形態で構築する、固体の、自由形態制作技術により製造できる。
【0127】
本発明によって、半固体投与形態は、クリームのボール型の嚥下可能な投与形態であり得る。本発明の一つの態様において、ホスフェート吸着剤をクリームまたはゲルに懸濁させ、次いでコア上に重層する。種々の香味剤を使用できる。このような形態は、他の咀嚼可能投与形態よりも良好な咀嚼性(chewablility)および食感を提供し得る。この製剤は嚥下が楽であり、薬よりむしろ補助食品として見なされ得る。
【0128】
本発明によって、咀嚼可能投与形態は例えばキャンディ、軟カプセル、およびヌガーを含む。広範囲から選択されたフレーバーを使用できる。奇抜な形および色に設計できる。本咀嚼可能投与形態を錠剤ディスペンサーに包装するか、または個々に包んでよい。
【0129】
本発明によって、本咀嚼可能投与形態は:コーンシロップ、糖、部分的水素化大豆および綿実油、脱脂粉乳、大豆レシチン、天然または人工フレーバー、クエン酸、モノステアリン酸グリセリル、Carrageenan、Red 40、ビタミン(例えばビタミンD3またはK1)、三リン酸カルシウム、アルファ・トコフェリル、塩、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシンヒドロクロライド、リボフラビン、および硝酸チアミンから選択される成分を含み得る。
【0130】
これらの成分を水またはミルクに溶解してシロップを形成し得て、それを所望の濃度に達するまでまたは糖がカラメルになるまで煮沸してよい。次いで、この液体を鋳型に入れ、投与形態が固化するまで冷却する。
【0131】
本発明によって、本ホスフェート吸着剤は、可食小袋として製剤できる。小袋を食べるのは便利であり、患者に優しい投与であり、日常習慣の一部として、すなわち薬よりむしろ補助食品として見なされ得る。
【0132】
可食小袋の中身は、例えば、咀嚼する必要のあるバーについて記載の材料から製造され得る顆粒から成り得る。例えば、可食小袋の中身は、鋳型から除いた後バーを粉砕することにより製造できる。小袋の材料は、所望により脂質と共に、水可溶性ポリサッカライド、例えばデンプン、マッシュした野菜または果実から製造され得る。本小袋は、果実または野菜ピューレを、急速に回転しているテフロン加工ディスク上に噴霧し、そこで薄層が形成され、それを次工程で乾燥させることにより製造できる。
【0133】
本発明の他の態様において、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤に含まれる不溶性炭水化物は食物繊維、例えばBenefiber(登録商標)である。例えば、上記製造方法の工程i)および/または工程ii)において、デンプンを食物繊維、例えばBenefiber(登録商標)に置き換える。このような製剤は、一つの製品中にホスフェート結合と食物繊維の利点を併せ持つ。
【0134】
使用
本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は、価値ある薬理学的特性を示し、例えばインビトロおよびインビボ試験で示されるように、例えば、無機ホスフェートまたは食品と結びついたホスフェートを、体液または食事から吸着し、故に、治療に適応される。
【0135】
本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は、故に、高リン血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進低下、心血管罹病および死亡において、腎性骨異栄養症、カルシフィラキシーおよび軟部組織石灰化の処置および/または予防に有用である。特に本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤は、ヒトおよび温血動物、特にイヌおよび特にネコのようなコンパニオン・アニマルにおける高リン血症の処置および/または予防に適当である。
【0136】
本発明のホスフェート吸着剤、およびそれらを含む医薬組成物は、高リン血症の患者に、例えば透析、例えば血液透析依存患者に、または進行した慢性腎臓疾患(CKD)、慢性腎不全、慢性腎機能不全、末期腎臓疾患を有する患者に特に有用である。
【0137】
本発明のホスフェート吸着剤は、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤またはカプセルの形で投与できる。ある場合、本ホスフェート吸着剤を鼻腔胃管、例えば小児用鼻腔胃管を介して投与し得る。
【0138】
本発明の化合物を少なくとも1種の医薬的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、慣用の方法で、薬学的に許容される担体または希釈剤との混合により製造できる。
【0139】
経口投与用の単位投与形態は、例えば、約0.5gから約7g、例えば約0.5から約5g、例えば約1.0から約3g、好ましくは約1から約1.5、より好ましくは約1から約1.5g、さらに好ましくは約1から約1.25gのホスフェート吸着剤を含む。
【0140】
本発明のホスフェート吸着剤を、食品と結びついたホスフェートの吸収にも使用できる。それらを食品と混合できる。
【0141】
高リン血症の処置における鉄(III)ベースの本発明のホスフェート吸着剤の有用性は、動物試験法ならびに臨床において、例えば以下に記載の方法に従い証明できる。
【0142】
A − ホスフェート結合能を、例えばその内容を出典明示により本明細書に包含させるWO07/088343に記載の、公開された方法に従い、または以下の実施例3に従い行うアッセイにおいて決定できる。
【0143】
B − 臨床試験:血液透析をしているCKD(慢性腎臓疾患)の患者でのオープンラベル、遅動型(time-lugged)、複数投与、スイッチ試験。
患者は、2週間準備期間中、現行のセベラマー処置を続け、その後1〜2週間のウォッシュアウト期間に入り、その後に実施例1に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤に4週間変更する:3.75g/日、7.5g/日、11.25g/日、15g/日、22.5g/日。各コホートに10名患者の患者が参加する。患者を治験前セベラマー用量で層化する:層1は、3.75g/日および7.5g/日の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤のコホートにおける7.2g/日未満のセベラマー。層2は、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤処置の他のコホートにおける7.2g/日以上のセベラマーである。
【0144】
前記に従い、本発明は以下を提供する:
1.1 少なくとも1gのホスフェート吸着剤で約120mgの吸着されたホスフェート、好ましくは1gのホスフェート吸着剤で約140mgの吸着されたホスフェートのホスフェート結合能を特徴とする、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【0145】
1.2 i)吸着剤基材、好ましくは不溶性炭水化物、ii)多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、およびiii)可溶性炭水化物、例えばグルコース誘導体、およびiv)所望によりカーボネートを含み、ここで、該可溶性炭水化物が多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに部分的に取りこまれている、多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【0146】
1.3 i)デンプン、ii)多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、およびiii)スクロース、マルトデキストリンおよびそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体、例えばスクロースを含み、ここで、該グルコース誘導体が多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに部分的に取りこまれている、多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。所望により該多核酸化水酸化鉄は該グルコース誘導体により安定化されている。
【0147】
1.4 i)不溶性炭水化物、例えばデンプン、ii)多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、およびiii)スクロース、マルトデキストリンおよびそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体、例えばスクロースを含み、ここで該多核酸化水酸化鉄が多核ガンマ−酸化水酸化鉄、および所望によりフェリハイドライトを含む、多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。所望により本グルコース誘導体は多核鉄(III)酸化水酸化物に部分的に取りこまれている。
【0148】
1.5 吸着剤基材、好ましくは不溶性炭水化物(例えばデンプン)、多核鉄(III)酸化水酸化物、およびスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体(例えばスクロース)を含み、ここで、該多核酸化水酸化鉄が該グルコース誘導体により安定化されている、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【0149】
1.6 多核ガンマ−酸化水酸化鉄および所望によりフェリハイドライトを含む、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【0150】
前記に従い、本発明はさらに以下を提供する:
2.1 鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)およびグルコース誘導体を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
(i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、例えば、同時に混合し、所望により該不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)の存在下で行い;
(ii) 不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)を工程i)で存在しなかったならば添加するか、
または所望により該不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)をさらに添加し;
(iii) 形成した沈殿を単離し;そして所望により、例えば水で洗浄し;
(iv) 水性溶液に沈殿を懸濁し;そして
(v) 可溶性炭水化物(好ましくはスクロースまたはマルトデキストリンのようなグルコース誘導体)を添加して、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を得る
工程を含む、方法。
【0151】
2.2 鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)およびグルコース誘導体を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、例えば、同時に混合し、所望により該不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)の存在下で行い;
ii) 所望により該不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)を鉄(III)の沈殿が完了する前に、例えば開始する前に添加し;
ここで、工程iii)からv)は2.1の下に定義の通り行う、工程を含む方法。
【0152】
2.3. 鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)およびグルコース誘導体を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、例えば、同時に混合し;
ii) 該不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)鉄(III)の沈殿が完了する前に、例えば開始する前に添加し;
ここで、工程iii)からv)は2.1の下に定義の通り行う、工程を含む方法。
【0153】
2.4 鉄(III)オキシドヒドロキシド、デンプンおよびグルコース誘導体を含む、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を反応させ、例えば、同時に混合し、
ii) 工程i)を不溶性炭水化物、例えばデンプンの存在下で行い、そして所望によりさらなる不溶性炭水化物を混合完了後に添加するか:
または不溶性炭水化物を工程i)の反応の後に、例えば混合が完了した後に添加し、
ここで、工程iii)からv)は2.1の下に定義の通り行う、工程を含む方法。
【0154】
2.5 鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)およびグルコース誘導体を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって、
i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)の存在下で反応させ、例えば、同時に混合し、ここで、溶液のpHを約6から8の間の値に維持し;
ここで、工程iii)からv)は2.1の下に定義の通り行う、工程を含む方法。
【0155】
2.6 製品を、好ましくは噴霧乾燥または流動噴霧乾燥により単離して乾燥粉末として鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を得る工程vi)をさらに含む、2.1から2.5の下に定義の方法。
【0156】
2.7 粉末を、所望により結合剤および滑剤から選択される少なくとも1種の賦形剤の存在下で造粒して、顆粒として鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を得る工程vii)をさらに含む、2.1から2.6の下に定義の方法。
【0157】
2.8 工程vi)で得た粉末または工程vii)で得た顆粒のいずれかを錠剤化する工程viii)をさらに含み、ここで錠剤化工程を所望により上記の増量剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤、およびそれらの混合物から選択される賦形剤の存在下で行う、2.1から2.7の下に定義の方法。
【0158】
さらに本発明によって以下が提供される:
3. ガンマ−鉄(III)オキシドヒドロキシドの製造方法であって、
a) 鉄(III)塩(例えば塩化鉄(III))の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、ここで、本反応を所望によりデンプンの存在下で行い;
b) デンプンを工程a)で存在しなかったならば添加し、そして所望により
a) 固体を単離し、そして洗浄する
工程を含む、方法。
【0159】
前記に従い、本発明はさらに以下を提供する:
4.1 処置を必要とする対象、すなわちヒトまたは温血動物、特にイヌおよびネコのようなにコンパニオン・アニマルおける上に示したような障害または疾患を予防または処置する方法であって、該対象に有効量の本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【0160】
4.2 処置を必要とする対象、例えば慢性血液透析中の患者における、正常血清カルシウムレベルを維持しながら血清ホスフェートおよび血清カルシウム−ホスフェート産物レベルを制御する方法であって、該対象に有効量の本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【0161】
4.3 処置を必要とする対象、例えば、透析中、例えば、慢性血液透析中の患者における、例えば透析液、全血、血漿からを選択的に除去(removing)するか、または無機ホスフェートを排除(eliminating)する方法であって、該対象に有効量の本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【0162】
4.4 食品と結びついた無機ホスフェートを選択的に除去する方法。
【0163】
5.1 医薬として、例えば上記4.1から4.3の下に示す方法のいずれかにおいて使用するための、本発明のホスフェート吸着剤。
【0164】
6. 液体から無機ホスフェートを選択的に除去するための医薬製剤として使用するための組成物であって、ここで、該組成物は水に不溶性であり、前記に定義の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む。
【0165】
7.1 本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、故に、例えば防腐剤および結合剤から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む、例えば上記4.1から4.3の下に示す方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物。
【0166】
7.2 例えば液体、例えば透析液、全血または血漿から無機ホスフェートを選択的に除去するための医薬製剤として使用するための医薬組成物であって、本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む組成物。
【0167】
7.3 本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む、経口投与に適当な医薬組成物、例えば固体または半固体投与形態。
【0168】
7.4 本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む、固体または半固体投与形態。
【0169】
7.5 本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤およびさらなに防腐剤(例えばアルコール、好ましくはエタノール)および所望により結合剤(例えばスクロース、微晶性セルロースまたはそれらの混合物)を含む、医薬組成物、好ましくは粉末または顆粒。
【0170】
7.6 錠剤の形であり、そして滑剤、および所望により増量剤、結合剤、崩壊剤、および流動剤から選択される少なくとも1種のさらなる賦形剤をさらに含む、本発明の医薬組成物。
【0171】
8. 上記4.1から4.3の下に示す方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物の製造のための、本発明の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の使用。
【0172】
本発明によって、ホスフェート吸着剤は唯一の活性成分として、またはセベラマー;Fosrenol;酢酸カルシウム;または炭酸カルシウムのような他のホスフェート低下剤と共に投与し得る。それはまたシナカルセット;ビタミンD;またはカルシトリオールのようなカルシウム摸倣剤と組み合わせて投与し得る。
【0173】
前記に従い、本発明は以下のさらなる局面を提供する:
9. 治療的有効量の本発明のホスフェート吸着剤、および第二医薬物質の、例えば同時のまたは連続した共投与を含み、ここで、該第二の医薬物質が、例えば上記の通りの他のホスフェート低下剤、カルシウム摸倣剤、ビタミンD、またはカルシトリオールである、上記定義の方法。
【0174】
10. a)本発明のホスフェート吸着剤、およびb)他のホスフェート低下剤、カルシウム摸倣剤、ビタミンDおよびカルシトリオールから選択される少なくとも1種の第二剤を含む、治療用組み合わせ剤、例えばキット。成分a)および成分b)は同時にまたは連続して使用し得る。本キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0175】
本発明のホスフェート吸着剤を、例えば、高リン血症または上記に特記した他の疾患または障害の予防または処置のためにセベラマー、Fosrenol、酢酸カルシウムまたは炭酸カルシウムのような他のホスフェート低下剤;シナカルセットのようなカルシウム摸倣剤;またビタミンDまたはカルシトリオールと組み合わせて投与するとき、併用化合物の投与量は、もちろん、用いる併用剤のタイプ、処置する常態などに依存して変化する。
【実施例】
【0176】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0177】
実施例1:鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造
41kg ジャガイモデンプン、118kg 炭酸ナトリウムおよび480kg 水の混合物に、588kg 水に溶解した148kg 塩化鉄(III)六水和物溶液を、30分にわたり、20−35℃の温度で添加する。得られた褐色懸濁液を少なくとも60分、25℃で撹拌し、次いで濾過し、各968kg 水でデカンター型遠心分離機を使用して3回洗浄する。その後160kg 水、41kg スクロースおよび129kg エタノールを添加し、混合物を少なくとも60分撹拌する。172kgの最終製品を赤みがかった褐色粉末として単離し、適当な噴霧乾燥パラメータのNIRO SD42を使用して、または1.2バール、出口温度65℃および入口温度140℃の噴霧化圧を使用して、噴霧乾燥により得る。
本製品を何ら他に加工することなく、直接小袋またはスティックパックに入れることができる。
【0178】
実施例2:鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法
105g 水に溶解した21.1g 炭酸ナトリウムの水性溶液(溶液A)および55g 水に溶解した26.5g 塩化鉄(III)六水和物の水性溶液(溶液B)を製造する。溶液A(4.2g/分)およびB(2.7g/分)を、40g 水中の7.36g ジャガイモデンプンの懸濁液に、30分の時間にわたり溶液AとBの混合およびその後のジャガイモデンプン懸濁液の添加により、入れる。得られた褐色ないし赤みがかった懸濁液を少なくとも1時間、25℃で撹拌し、濾過し、各173.6g 水で3回洗浄する。得られた赤みがかった褐色固体に、14.6g 水、7.36g スクロースおよび24.2g エタノールを添加し、混合物を60分撹拌する。18.4gの最終製品を、適当なFSD条件を使用して流動噴霧乾燥により得る。
【0179】
実施例3:実施例1または実施例2に記載の物質のホスフェート結合能を、イオンクロマトグラフィー/電導度検出により決定する。
使用する分離機構はイオン交換である。
試薬:非常に純粋な水(例えばMilli-Q-System(Millipore)から);水酸化ナトリウム(50%(m/m)溶液、無カーボネート、例えばMerck 1.58793);0.1N 塩酸(HCl);塩酸37%;リン酸水素ナトリウム(NaHPO)。
装置:勾配ポンプ(gradient pump)を備えたイオンクロマトグラフ;アニオン交換カラム(例えばDionex IonPac AS11-HC 長さ250mm、内径4mm;または同等のもの);自己補給アニオンサプレッサー(例えばDionex ASRS-ULTRA II 4mm、アニオンサプレッサーシステム)、PVDFフィルター(例えばInfochroma:8817E-PV-4 ECO HPLC−フィルターPVDF 0.45μm)。
【0180】
クロマトグラフ条件
脱気水を溶離剤1としておよび80mM 水酸化ナトリウムの水溶液を溶離剤2として使用。
勾配プログラム
【表1】

流速 0.6mL/分
検出 抑制された電気伝導率
カラム温度 30℃
注入容量 25μL
【0181】
システム適性試験(SST)
システム適性試験は、クロライドおよびホスフェートが十分に分離されることを証明する。さらに、再現性が、計算のための比較溶液の繰り返し注入により示される。空のクロマトグラムは、妨害するピークが溶媒に存在しないことを示す。計算のための比較溶液の1/100希釈を、システムの感受性を示すために使用する。
【0182】
溶液の調製
【表2】

【0183】
評価/査定
試験溶液のクロマトグラムの検体ピークを、比較溶液のクロマトグラムのピークと保持時間を比較することにより同定する。
試験溶液のクロマトグラムにおいて各検体ピークのピーク面積を決定する。CS2溶液のクロマトグラムの各検体ピークのピーク面積も決定する。
【0184】
計算
ホスフェートの吸着パーセント(%)(m/m)
【数1】

EWTS 試験溶液中の実施例1または実施例2に記載の物質の重量[mg]
EWNaHPO CS1溶液中のリン酸水素ナトリウム重量[mg]
PATS 試験溶液中のホスフェートのピーク面積
PACS2 比較溶液2中のホスフェートのピーク面積
MWPO43− ホスフェート分子量:94.97g/mol
MWNaHPO リン酸水素ナトリウム分子量:141.96g/mol
【0185】
結果:
実施例1の化合物は14.2%m/m ホスフェートを吸着する。
実施例2の化合物は20%m/m ホスフェートを吸着する。
【0186】
実施例4:小袋
90%の実施例1に記載の製品をコーンデンプン(10%)と混合して、最終混合物を得る。次いで、最終混合物を小袋に入れる。
【0187】
実施例5:カプセル(滑剤と共に直接充填)。
90%の実施例1に記載の製品をミキサーに入れる。7−8%の同製品および2−3%ステアリン酸マグネシウムの予混合物を製造する。予混合物を本製品の残りと共にミキサーに篩い入れて(1000ミクロンメッシュサイズ)、最終混合物を得る。次いで、最終混合物を硬ゼラチンカプセルに入れる。
【0188】
実施例6:カプセル(滑剤およびさらなる賦形剤と共に直接充填)。
80%の実施例1に記載の製品をMCC(10%)または好ましくはコーンデンプン(10%)と混合する。7−8%の同製品および2−3%ステアリン酸マグネシウムの予混合物を製造する。予混合物を本製品の残りと共にミキサーに篩い入れて(1000ミクロンメッシュサイズ)、最終混合物を得る。次いで、最終混合物を硬ゼラチンカプセルに入れる。
【0189】
実施例7:小袋、スティックパックまたはカプセル(乾燥コンパクションにより造粒)
68%の実施例1に記載の製品をMCC(20−30%)と混合する。ステアリン酸マグネシウム(2%)を篩い(1000ミクロンメッシュサイズ)、この予混合物に添加する。最終混合物を製造し、次いで稠密化(compacted)および/または圧縮する。コンパクションを、大きなパンチの打錠機またはローラー圧縮機で行う。次いで圧縮物(comprimates)をメッシュサイズ 2mmの篩いを通して挽く。その後、篩った顆粒を小袋またはスティックパックに入れる。
顆粒はまた滑剤と共にカプセルに入れ得る。
【0190】
実施例8:小袋、スティックパックまたはカプセル(湿式造粒)
実施例1で製造した製品を約15%水と造粒し、高剪断ミキサー中の乾燥粉末とする。次いで顆粒を約6−7%のLOD(乾燥減量)に到達するまで乾燥させる。次いで乾燥させた顆粒をメッシュサイズ 2mmで篩う。最後に篩った顆粒をスティックパックに入れる。所望により、本顆粒もまた滑剤と共にカプセルに入れてよい。
【0191】
実施例9:小袋、スティックパックまたはカプセル(さらなる結合剤と共に湿式造粒により)
約97%の実施例1に記載の製品を結合剤としての約2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース−HPMC−3 cps、グレート2910と混合し、約10%水と造粒し、乾燥粉末とする。結合剤を、対応する量の水に溶解後に溶液として添加する。その後の工程は、上記の実施例に記載の通りである。
【0192】
実施例10:錠剤(滑剤と直接圧縮)
90%の実施例1に記載の製品をミキサーに入れる。7%の同製品および3%ステアリン酸マグネシウムの予混合物を製造する。予混合物を本製品の残りと共にミキサーに篩い入れて(1000ミクロンメッシュサイズ)、最終混合物を得る。最終混合物を次いで644mg重量の錠剤に打錠機で圧縮する(625mgの製品1)。
【0193】
実施例11:錠剤(滑剤およびさらなる賦形剤と直接圧縮)
50%の実施例1に記載の製品を30%微晶性セルロースおよび約10%クロスポビドンと共にミキサーに入れる。約7%の同製品および3%ステアリン酸マグネシウムの予混合物を製造する。予混合物を本製品の残りと共にミキサーに篩い入れて(1000ミクロンメッシュサイズ)、最終混合物を得る。次いで、最終混合物を、1100mg重量(625mgの製品に対応)のovaloid錠剤に打錠機で圧縮する。錠剤を、フィルム形成ポリマー(HPMC 3cps)、着色剤(複数もある)、二酸化チタン(白色色素)、タルク(流動促進剤)および可塑剤(複数もある)の水性懸濁液でコーティングする。
【0194】
実施例12:錠剤(乾燥コンパクションによる造粒)
崩壊剤をさらに顆粒に包含させる以外、実施例7に記載の通りである。また、増量剤、崩壊剤、流動促進剤および滑剤を含む外相を篩った顆粒に添加し、次いで最終混合物を錠剤に圧縮して、それをその後コーティングし得る。
【0195】
実施例13:錠剤(さらなる結合剤および他の賦形剤との湿式造粒)
50%の実施例1に記載の製品を、約20%微晶性セルロースおよび約5%クロスポビドンと共に造粒し、約18%水と、高剪断ミキサーで乾燥粉末とする。次いで顆粒を約6−7%のLOD(乾燥減量)に達するまで乾燥させる。次いで乾燥した顆粒を、10%微晶性セルロースおよび約5%クロスポビドンと共にメッシュサイズ 約1.25mmで篩い、ミキサーに入れる。約7%のこの混合物と約2%ステアリン酸マグネシウムの予混合物を製造する。予混合物を本製品の残りと共にミキサーに篩い入れて(1000ミクロンメッシュサイズ)、最終混合物を得る。次いで、最終混合物、1100mg重量(625mgの製品に対応)のovaloid錠剤に打錠機で圧縮する。錠剤を、HPMC 3cps、二酸化チタン、タルクおよび可塑剤(複数もある)または対応するOpadry混合物の水性懸濁液でコーティングする。
【0196】
実施例14:錠剤(さらなる結合剤と湿式造粒)
内相に約3%ヒドロキシプロピルメチルセルロース−HPMC−3 cps、グレート2910を添加しそれにより結合剤を乾燥常態で添加するか、または造粒液体に部分的にまたは完全に溶解させて添加する以外、上記の通りである;結合剤は、顆粒中の増量剤の量を補う。その後の工程は、上記の実施例に記載の通りである。
【0197】
実施例15:ゲル
(プレインの水性ゲル)80mLの水を約70°−75℃に加熱する。20gの実施例2で製造の製品を添加し、懸濁液をジェリー状の塊が形成されるまで70℃に維持する。ゲルを70℃で数分維持して、ゲル形成工程を安定化させる。室温に冷却後、水を、製造中の蒸発して失われた可能性のある水を補うために添加する。
【0198】
実施例16:ゲル
1.5mg/mLの安息香酸ナトリウムを精製水に溶解し、0.2mg/mLのサッカリンナトリウム、1.0mg/mLのイチゴ・フレーバーおよびクエン酸緩衝系を加える。溶解完了後、5mg/mLのポリソルベート20を添加し、次いでホスフェート吸着剤を混合しながら分散させる。均一懸濁液が形成される。最後に、30mg/mLのヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合しながらゆっくり添加する。
【0199】
実施例17−21:
以下の成分(mgで)をグリセロールに溶解または懸濁し、混合し、スティックパックに入れる。
【表3】

【0200】
実施例22−23:経口分散性ウェハー
以下の成分(mg)を混合する。
【表4】

【0201】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈から他の解釈が必要でない限り、用語“含む”または“含み”もしくは“含んで”などのその変形は、記載の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を含むことを意図するが、何らかの他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外するものではないことは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の一つの態様に従う鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の光学顕微鏡。
【図2】本発明の一つの態様に従う鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の走査電子顕微鏡法(SEM)+エネルギー分散型X線分析(EDX)(ブロック・フェーズ分析)。これは図1に示す粒子の1つのより詳細な画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1gのホスフェート吸着剤で少なくとも約120mgの吸着されたホスフェート、好ましくは1gのホスフェート吸着剤で約140mgの吸着されたホスフェートのホスフェート結合能を特徴とする、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項2】
i)吸着剤基材、好ましくは不溶性炭水化物、ii)多核鉄(III)オキシドヒドロキシド、およびiii)可溶性炭水化物を含み、ここで該可溶性炭水化物が多核鉄(III)オキシドヒドロキシドに部分的に取りこまれている、多核鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項3】
多核酸化水酸化鉄が可溶性炭水化物により安定化されている、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項4】
可溶性炭水化物がグルコース誘導体である、請求項2または3に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項5】
カーボネートをさらに含む、請求項2から4のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項6】
吸着剤基材が不溶性炭水化物、好ましくはデンプンである、請求項2から5のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項7】
多核酸化水酸化鉄が多核ガンマ−酸化水酸化鉄、および所望によりフェリハイドライトを含む、請求項2から6のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項8】
医薬として使用するための請求項1から7のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項9】
液体からの無機ホスフェートの選択的除去のための医薬製剤として使用される、医薬組成物であって、水に不溶性であり、請求項1から8のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む、組成物。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含み、そして防腐剤および結合剤から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項11】
防腐剤がアルコール、好ましくはエタノールである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が結合剤を含まない、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
粉末または粒状製品の形である、請求項10から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
錠剤の形であって、滑剤、および所望により増量剤、結合剤、崩壊剤、および流動剤(flow agent)から選択される少なくとも1種のさらなる賦形剤を含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項15】
鉄(III)オキシドヒドロキシド、不溶性炭水化物および可溶性炭水化物を含む鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の製造方法であって:
(i) 鉄(III)塩の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、ここで、該反応を所望により不溶性炭水化物の存在下で行い;
(ii) 不溶性炭水化物を工程i)で存在しなかったならば添加し;
(iii) 形成した沈殿を単離し;
(iv) 水性溶液に沈殿を懸濁し;そして
(v) 可溶性炭水化物を添加して、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤、および所望により防腐剤および結合剤から選択される少なくとも1種の賦形剤を得る
工程を含む、方法。
【請求項16】
少なくとも1回の洗浄を工程iii)とiv)の間に行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程i)において溶液のpHを6から8の間、好ましくは約7の一定値に維持する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
工程i)において溶液のpHを6から8の間の値に維持し、そしてデンプンを工程i)で添加する、請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
可溶性炭水化物がグルコース誘導体、好ましくはスクロース、マルトデキストリンまたはそれらの混合物である、請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
不溶性炭水化物がデンプンである、請求項15から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
製品を噴霧乾燥または流動噴霧乾燥により単離して、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を乾燥粉末として得る工程vi)をさらに含む、請求項15から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
粉末を、所望により結合剤および滑剤から選択される少なくとも1種の賦形剤の存在下で造粒して、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を顆粒として得る工程vii)をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程vi)で得た粉末または工程vii)で得た顆粒のいずれかを錠剤化する工程viii)をさらに含み、ここで錠剤化工程を所望により増量剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤、およびそれらの混合物から選択される賦形剤の存在下で行う、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
請求項15から23のいずれかに記載の方法により得られる、鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤。
【請求項25】
請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を含む、固体または半固体投与形態。
【請求項26】
粉末、顆粒または錠剤であって、ここで、粉末および顆粒が所望により小袋、スティックパックまたはカプセルに充填されている、請求項25に記載の固体投与形態。
【請求項27】
水性ゲル、非水性ゲル、嚥下可能なゲル、咀嚼する必要のあるバー(chewy bar)、急速分散投与形態(fast-dispersing dosage)、クリームのボール型の嚥下可能な投与形態、咀嚼可能投与形態、または可食小袋である、請求項25に記載の半固体投与形態。
【請求項28】
高リン血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進低下、心血管罹病および死亡において、腎性骨異栄養症、カルシフィラキシーおよび軟部組織石灰化、ならびにそれらに関連する疾患および障害の処置または予防約薬剤の製造のための、請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤の使用。
【請求項29】
処置を必要とする患者における高リン血症と関連する疾患および障害の処置方法であって、該対象に有効量の請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【請求項30】
処置を必要とする対象における、正常血清カルシウムレベルを維持しながら血清ホスフェートおよび血清カルシウム−ホスフェート産物レベルを制御する方法であって、該対象に有効量の請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【請求項31】
処置を必要とする対象における、透析液、全血または血漿のような液体から無機ホスフェートを選択的に除去(removing)するか、または無機ホスフェートを排除(eliminating)する方法であって、該対象に有効量の請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤を投与することを含む、方法。
【請求項32】
a)請求項1から7のいずれかまたは請求項24に記載の鉄(III)ベースのホスフェート吸着剤、およびb)他のホスフェート低下剤、カルシウム摸倣剤、ビタミンDおよびカルシトリオールから選択される少なくとも1種の第二剤を含む、治療用組み合わせ剤。
【請求項33】
ガンマ−鉄(III)オキシドヒドロキシドの製造方法であって、
a) 鉄(III)塩(例えば塩化鉄(III))の水性溶液と水性塩基を6から10のpHで反応させ、ここで、本反応を所望によりデンプンの存在下で行い;
b) デンプンを工程a)で存在しなかったならば添加し、そして所望により
c) 沈殿を単離する
工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−150375(P2008−150375A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322260(P2007−322260)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】