説明

複動シリンダの油圧制御回路

【課題】 従来の複動シリンダの油圧制御回路にあっては、ロッド3bを上下動作を行なわせるためには4個の電磁弁が必要となるためコスト的にも高価になると共に4個の電磁弁を収容するためにスペースも大きくなるといった問題があった。
【解決手段】 油タンク1よりの油を油圧回路に供給するモータポンプ2と、直列接続された第1、第2の電磁弁4,5と、前記第2の電磁弁の油入口側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁11と、前記第2の電磁弁に直列接続された逆止弁10と、前記第1の電磁弁の油流入側との接続点にロッド3bを吐出させる側のシリンダ3aが接続され、前記第2の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された複動シリンダ3とからなる複動シリンダの油圧制御回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、理美容用椅子や医療用椅子の座部をチルト動作させ、あるいは、産婦人科用分娩台における支脚器の開閉動作、分娩台全体の回転動作を行なわせるための複動シリンダの油圧制御回路において、該油圧制御回路で使用する電磁弁の数を1つの複動シリンダに対して2個の2ポート電磁弁とした複動シリンダの油圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における複動シリンダの油圧制御回路としては図6に示す油圧制御回路があった。1は油タンク、2はモータポンプ、3は前記した座部のチルト動作や支脚器の開閉動作、あるいは分娩台の回転動作を行なわせるための複動シリンダ、4〜7は2ポート電磁弁(以下、単に電磁弁という)である。なお、8はリリーフバルブ、9は絞り弁、10は逆止弁である。なお、複動シリンダ3において3aはシリンダ、3bはロッドである。
【0003】
そして、その油圧回路は、電磁弁4,5および6,7はそれぞれ直列接続され、この直列接続の電磁弁4,5と6,7およびリリーフバルブ8は、直列接続されたモータポンプ2と油タンク1に対して並列接続されている。また、複動シリンダ3のシリンダ3aの下側は電磁弁4,5との接続点に油パイプによって接続され、ロッド3b側は電磁弁6,7との接続点に油パイプによって接続されている。また、絞り弁9は各電磁弁4〜7と直列接続され、さらに、逆止弁10は電磁弁5,7と絞り弁9との間に接続されている。
【0004】
次に、前記した油圧制御回路の動作説明を行なうに、複動シリンダ3のロッドを伸長するには電磁弁5,6を開放状態に図示しない電気制御回路によって行なう。この状態においてモータポンプ2を駆動すると油タンク1より吸引され、モータポンプ2によって加圧された油が電磁弁5、逆止弁10および絞り弁9を介して複動シリンダ3のシリンダ3aの下側内に油が供給されてロッド3bは吐出方向に移動する。この移動によって座部のチルト動作や支脚器の開閉動作が行なわれる。
【0005】
この時、シリンダ3aのロッド3b側には油が溜まっているので、ロッド3bの移動に伴って油が排出されるが、電磁弁6が開放状態となっているため、該電磁弁6、絞り弁9を介して油タンク1内に戻される。そして、座部の上方へのチルト動作や支脚器の開脚動作を検出するセンサが予め設定された値を検出すると電気制御回路は電磁弁5,6への通電を遮断しロッド3bの吐出を停止させる。これにより、座部のチルトの上方への動作や支脚器の開脚動作は終了する。
【0006】
一方、吐出状態のロッド3bを下降させるには、電磁弁4,7を開放し、モータポンプ2を駆動することで、モータポンプ2よりの加圧油は電磁弁7、逆止弁10、絞り弁9を介して複動シリンダ3におけるシリンダ3aの上方ロッド3b側に供給されるので、ロッド3bは下降を開始すると共にシリンダ3aの下方に貯留されている油は電磁弁4、絞り弁9を介して油タンク1内に戻される。そして、座部の下方へのチルト動作や支脚器の閉脚動作を検出するセンサが予め設定された値を検出すると電気制御回路は電磁弁5,6への通電を遮断しロッド3bの吐出を停止させる。これにより、座部のチルトの上方への動作や支脚器の閉脚動作は終了する。
【0007】
前記した従来の複動シリンダの油圧制御回路にあっては、ロッド3bを上下動作を行なわせるためには4個の電磁弁が必要となるためコスト的にも高価になると共に4個の電磁弁を収容するためにスペースも大きくなるといった問題があった。
【0008】
そこで、電磁弁を少なくしたものとして特開平6−23003号公報に記載された発明がある。この発明には背凭れの寝起こしさせるための油圧回路が開示されており、電磁弁28,29を開にし、電磁弁30を閉状態としてモータポンプ27を駆動することで圧力油は駆動伝達用シリンダ(複動シリンダ)の区画5aに流入し、ピストンロッド6を右方向に移動させることで分配用シリンダ11のピストンロッド12が右方向に移動して作動シリンダ16の区画16bに油が流入し背凭れは伏倒方向に回動する。
【0009】
また、背凭れを起立方向に回動するには、電磁弁29,30を開、電磁弁28を閉状態としモータポンプを駆動することで、圧力油は駆動伝達用シリンダの区画5bに流入し、ピストンロッド6は左方向に移動しピストンロッド12も左方向に移動することで、作動シリンダ16の区画16aに油が流れて背凭れは起立方向に回動することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−23003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記した特許公報の技術思想にあっては、前記した図5の油圧回路における2ポート電磁弁4個に対して2ポート電磁弁として3個に減るものの、一般的な単動シリンダ用の2ポート電磁弁を2個からなる電磁弁ユニットを使用することができずコストも高くなり、かつ、スペースも大きくなってしまうといった問題があった。なお、4ポート電磁弁を利用した場合には2個の電磁弁で済むが、4ポート電磁弁はコストが2ポート電磁弁よりも非常にコスト高となってしまう。
【0012】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、複動シリンダの油圧制御回路において2ポート電磁弁を2個使用して複動シリンダの制御が行なえることにより、従来のような4個または3個の2ポート電磁弁を使用した油圧制御回路よりもコストの低減が図れると共に油圧装置のスペースを小さくできる複動シリンダの油圧制御回路を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複動シリンダの油圧制御回路は、前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、直列接続された第1、第2の電磁弁と、前記第2の電磁弁の油入口側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、前記第2の電磁弁に直列接続された逆止弁と、前記第1の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された複動シリンダとから構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2の手段は、油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、直列接続された第1、第2の電磁弁と、前記第2の電磁弁の油入口側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、前記第2の電磁弁に直列接続された逆止弁と、前記第1の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第1の複動シリンダと、直列接続された第3、第4の電磁弁と、前記第4の電磁弁の油流入側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、該逆止弁と前記第3の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第4の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第2の複動シリンダとから構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項3の手段は、油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、該モータポンプと排油パイプとの間に接続されたリリーフバルブと、直列接続された第1、第2の電磁弁および第3、第4の電磁弁と、前記油タンクと第1、第3の電磁弁に直列接続された絞り弁と、前記第2、第4の電磁弁の油流入側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、前記第2、第4の電磁弁に直列接続された逆止弁および絞り弁と、前記第1の電磁弁の油流入側にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2電磁弁の油を流入側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第1の複動シリンダと、前記第3の電磁弁の油流入側にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第4電磁弁の油を流入側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第2の複動シリンダとから構成し、第1、第2の複動シリンダにおけるロッドを収納する側のシリンダを含めた油の圧力が高まるように第2、第3の電磁弁に接続されている絞り弁9で流量を絞り圧力を高めてロッドを収納する側の圧力が低下しないようにすることで、各複動シリンダの動作時に他の複動シリンダのロッドが収納される側が不安定な状態となるのを防止したことを特徴とする。
【0016】
請求項4の手段は、請求項1乃至4の何れかにおいて、前記各電磁弁と各複動シリンダにおけるロッドを吐出させる側のシリンダに比例電磁弁を接続し、各複動シリンダにおけるロッドのスタートおよびストップ時の速度を緩やかに行なわれるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は前記したように、直列接続された電磁弁の接続部分を複動シリンダのロッドを吐出させるシリンダ側に接続し、該シリンダのロッドを収納する側をモータポンプに接続されている油電磁弁の流入側に接続すると共に該電磁弁の油流入側と前記モータポンプとの間にモータポンプよりの油は流れる方向に逆止弁を接続したことにより、2つの電磁弁によって複動シリンダのロッドの吐出と収納動作を行なわせることが可能であるので、従来と比較して電磁弁の数が半分になってコストの低減が図れると共に油圧装置のスペースを小さくできる。
【0018】
また、2個の複動シリンダをそれぞれ2個の電磁弁を用い、かつ、逆止弁を介して電磁弁を個別に接続することで個別に駆動しても、他の複動シリンダへの影響を与えることなく駆動できるので、2つの複動シリンダを駆動させても互いに干渉することなく制御することが可能である。
【0019】
さらに、従来より使用されている4連電磁弁を使用して2つの複動シリンダを各別に制御するために、2の複動シリンダにおけるロッドを収納する側のシリンダを含めた混合油の圧力が高まるように2の電磁弁に接続されている絞り弁で流量を絞り圧力を高めてロッドを収納する側の圧力が低下しないようにすることで、各複動シリンダの動作時に他の複動シリンダのロッドが収納される側が不安定な状態となるのを防止することが可能となる。
【0020】
また、前記各電磁弁と各複動シリンダにおけるロッドを吐出させる側のシリンダに比例電磁弁を接続することで、各複動シリンダにおけるロッドのスタートおよびストップ時の速度を緩やかに行なわれる等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1個の複動シリンダを制御する基本構成を示す油圧回路である。
【図2】2個の複動シリンダを制御する油圧回路である。
【図3】1個の単動シリンダと2個の複動シリンダを制御するための油圧回路である。
【図4】図3の油圧回路のタイミングチャートである。
【図5】図1の油圧回路に比例制御弁を組み込みスロースタートとスローストップを行なうようにした油圧回路である。
【図6】従来の1個の複動シリンダを制御する油圧回路である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の複動シリンダ油圧制御回路、例えば、座部をチルト動作させる基本構成を図1と共に説明する。なお、前記した図6の従来例と同一符号は同一部材を示し説明は省略する。
図6と相違する構成は、図6における電磁弁6,7および絞り弁9を削除し、複動シリンダ3のシリンダ3aにおけるロッド3b側の油の供給・排出側をモータポンプ2に逆止弁11を介して接続したことであり、また、逆止弁11は電磁弁5の油入口側とリリーフバルブ8とが接続されるモータポンプ2よりの油パイプに接続されている。
【0023】
なお、複動シリンダ3におけるシリンダ3aのピストン面積S1と、ロッド3b側のピストン面積からロッド側の断面積を引いたロッド側面積S2とはS1>S2の関係となっている。また、S1:S2=2:1の場合、ロッドの出と入り速さは同一になる。
【0024】
次に、電磁弁5を開放し、モータポンプ2を駆動すると、モータポンプ2よりの油は細線で示すように逆止弁11、電磁弁5、逆止弁10を介して複動シリンダ3におけるシリンダ3aの下側に供給される。この油の供給が行なわれた状態においてロッド3b側の容積S2は容積S1より小さいのでS1側の推力はS2側の推力に勝り、ロッド3b側に滞留していた油は排出され、モータポンプ2よりの油と混合され電磁弁5を介してシリンダ3aの下側に供給され、ロッド3bは上昇することとなる。
【0025】
なお、前記したモータポンプ2よりの油と複動シリンダ3の上側から戻される油とが複動シリンダ3におけるシリンダ3aの下側に供給されることで、油量が大きくなってロッド3bの上昇速度が速くなる。
【0026】
そして、図示しない電気制御回路はロッド3bの吐出量が予め設定した吐出量に達したか否かを監視しているので、達したと判断するとモータポンプ2および電磁弁5への通電を停止しロッド3bの上昇は停止し、座部は上方に変移しながら停止する。
【0027】
次に、電磁弁4を開放し、モータポンプ2を駆動すると、モータポンプ2よりの油は太線の示すように逆止弁11を介して複動シリンダ3のロッド3b側に供給される。この油の供給によってシリンダ3aの下側に滞留している油は電磁弁4を介して油タンク1に戻されるので、ロッド3bは下降を開始する。
【0028】
そして、電気制御回路はロッド3bの下降量が予め設定した下降量に達したか否かを監視しているので、達したと判断するとモータポンプ2および電磁弁4への通電を停止しロッド3bの下降は停止し、座部は下降して停止する。
【0029】
次に、例えば、産婦人科用分娩台における座部のチルト動作と背凭れの起伏動作を行なわせるための油圧制御回路を図2と共に説明する。
この油圧回路は前記した座部のチルト動作を行なわせるための1個の複動シリンダ3と2個の電磁弁4,5との油圧回路に対して背凭れの起伏動作を行なわせるための複動シリンダ31を追加すると共に2個の電磁弁41,51を、該電磁弁41の油排出側が油タンク1側に接続し、また、電磁弁51の油流入側を逆止弁12を介してモータポンプ2側に接続したものである。
【0030】
次に、この油圧回路の動作について説明するに、複動シリンダ3の動作は前記した図1の動作と同じなので説明は省略する。複動シリンダ31のロッド31bを吐出させるにはモータポンプ2と電磁弁51に通電を行なうと、モータポンプ2よりの油は逆止弁12、電磁弁51、逆止弁10を介してシリンダ31aの下側に油が供給されるので、ロッド31bは吐出を開始する。
【0031】
一方、ロッド31bが吐出することでシリンダ31aの上側に滞留している油は電磁弁51、逆止弁10を介してシリンダ31aの下側に油が供給されるのでロッド31bは吐出することで背凭れは起立方向に変移し、電気制御回路はロッド31bの吐出量が予め設定した吐出量に達したか否かを監視しているので、達したと判断するとモータポンプ2および電磁弁51への通電を停止しロッド31bの上昇は停止し、背凭れは起立状態で停止する。
【0032】
次に、背凭れを伏倒方向に戻すには、モータポンプ2と電磁弁41に通電することでモータポンプ2よりの油は逆止弁12を介して複動シリンダ31におけるシリンダ31aの上側に油が流れ込むので、ロッド31bは下降を開始し、背凭れは伏倒方向に変移を開始する。
【0033】
一方、シリンダ31aの下側に滞留している油は押し出されて電磁弁41、絞り弁9を介して油タンク1に戻される。そして、電気制御回路はロッド31bの下降量が予め設定した下降量に達したか否かを監視しているので、達したと判断するとモータポンプ2および電磁弁41への通電を停止しロッド31bの下降は停止し、背凭れは水平状態となって停止する。
【0034】
前記した図2の実施例にあっては、逆止弁11を介して電磁弁4,5を接続して、また、逆止弁12を介して電磁弁41,51を接続したことにより、複動シリンダ3,31は個別に油の流入、排出が行なわれることとなり、従って、油の流れが互いに干渉することはない。
【0035】
次に、図3に示す複動シリンダ3,31と単動シリンダ32とを接続した第3の実施例について説明する。複動シリンダ3を、例えば分娩台の背凭れ伏倒動作用とし、複動シリンダ31を分娩台の支脚器の開閉動作用とし、単動シリンダ32を座部昇降用のシリンダとして説明する。また、複動シリンダ3に電磁弁4,5を、複動シリンダ31に電磁弁41,51を、単動シリンダ32に電磁弁42,52を接続し、電磁弁5,51の油流入側を1つの逆止弁11を介してモータポンプ2に接続したものである。
【0036】
この実施例に使用する電磁弁4,5,41,51は従来より使用されている4連電磁弁で一体化されたものであり、かつ、コストも安価である。そして、この4連電磁弁を使用して前記した図2の回路を構成するには逆止弁12を接続することが必要であるが、従来より使用されている4連電磁弁に逆止弁12を接続することは、追加工が必要であったり、追加部品を必要とした。
【0037】
そして、前記したように逆止弁12の使用が困難であり、かつ、追加工や追加部品を使用しないようにした油圧回路としては図3に示すものとなる。このような油圧回路とすることで、1つの複動シリンダ、例えば、複動シリンダ31のロッド31bの出入時に、他の複動シリンダ3に対して殆ど影響を与えることなくロッド31bの出入させることが可能となる。
【0038】
以下、動作を図4のチャート図と共に説明するに、複動シリンダ31のロッド31bを吐出させる動作にあっては、図示しない操作スイッチaを操作すると、モータポンプ2に通電すると共に僅かなタイムラグの後に電磁弁51に通電される。この通電によって前記した図2の動作によって複動シリンダ31のロッド31bは吐出し、かつ、シリンダ31aの上方に滞留している油が再度電磁弁51を介してシリンダ31aの下側に供給されるので、ロッド31bは吐出方向に動作することになる。
【0039】
しかし、図3の実施例にあっては、複動シリンダ31のシリンダ31aの上側に滞留した油は電磁弁51に戻されると共に他の複動シリンダ3におけるシリンダ3aの上側にも油パイプを介して接続されているので、シリンダ3aの上側に油が流れようとする。
【0040】
ところで、複動シリンダ31は支脚器の開閉動作用であることから、ロッド31bには座部の昇降用の如く外力が加わらないことでシリンダ31aの上側の圧力は低く、従って、A部の圧力は低い状態となっている。また、複動シリンダ3は分娩台の背凭れ伏倒動作用であって背凭れに患者の背部荷重が加わった状態となっている場合、ロッド3bには患者の背部荷重が加わっているのでロッド31bが動かないためにはB部の圧力は高い状態が必要となっている。
【0041】
このように、複動シリンダ3におけるシリンダ3aの上側圧力が複動シリンダ31におけるシリンダ31aの上側圧力より高いと、シリンダ3aの上側圧力が低下することでロッド3bは吐出方向に動こうとする力が生まれ安定しない状態となる。
【0042】
このような不安定な状態が生じないように、常にシリンダ3aの上側を含めた混合油の圧力が高まるように電磁弁51の油出口側の絞り弁9で流量を絞り圧力を高めることでシリンダ3aの上側の圧力が低下しないようにする。リリーフバルブは、回路内を一定圧力以下に保ち、それ以上の圧力を逃がす役目をするものであり、このリリーフバルブが常に働く圧力とすることで、シリンダ3aの上側とシリンダ31aの上側が共に圧力変化が生じることがなくなり、シリンダ3bが不安定な状態となるのを防止することできる。
【0043】
また、モータポンプ2と電磁弁41に通電し複動シリンダ31のロッド31bをシリンダ31a側に収納する動作においても、電磁弁41の油出口側の絞り弁9を調整してA部の圧力を高めることで、前記した動作と同じようにロッド3bが動くことを防止できる。
【0044】
なお、複動シリンダ3におけるロッド3bの出入動作時も前記した複動シリンダ31の動作と同じように、該複動シリンダ31のロッド31bが動かないように電磁弁4,5の油出口側の絞り弁を調整することで行なえる。
【0045】
なお、図3においては単動シリンダ32を複動シリンダ3,31に並列に接続したが、該単動シリンダ32の動作において複動シリンダ3,31に対しては何らの影響を与えることない。
【0046】
図5は前記した図1の油圧回路における複動シリンダ3のシリンダ3aと電磁弁4,5との接続部分に比例電磁弁13を接続したものである。このような構成とすることで、油を複動シリンダ3におけるシリンダ3aの下側あるいは上側から注入した時に、ロッド3bのスタートおよびストップ時の速度が緩やかに行なうことができるものである。
【0047】
なお、図5の実施例では、図1に示す油圧回路に比例電磁弁を接続した場合について説明したが、図2、図3の実施例における複動シリンダ3,31におけるシリンダ3a,31aと電磁弁4,5および電磁弁41,51との接続部分に比例電磁弁を接続しても、ロッド3b,31bのスタートおよびストップ時の速度が緩やかに行なうことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 油タンク
2 モータポンプ
3 複動シリンダ
3a シリンダ
3b ロッド
4,5 電磁弁
8 リリーフ弁
9 絞り弁
10,11 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、
直列接続された第1、第2の電磁弁と、
前記第2の電磁弁の油入口側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、
前記第2の電磁弁に直列接続された逆止弁と、
前記第1の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された複動シリンダと、
から構成したことを特徴とする複動シリンダの油圧制御回路。
【請求項2】
油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、
直列接続された第1、第2の電磁弁と、
前記第2の電磁弁の油入口側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、
前記第2の電磁弁に直列接続された逆止弁と、
前記第1の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第1の複動シリンダと、
直列接続された第3、第4の電磁弁と、
前記第4の電磁弁の油流入側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、
該絞り弁と前記第3の電磁弁の油流入側との接続点にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第4の電磁弁の油を流入させる側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第2の複動シリンダと、
から構成したことを特徴とする複動シリンダの油圧制御回路。
【請求項3】
油タンクよりの油を油圧回路に供給するモータポンプと、
該モータポンプと排油パイプとの間に接続されたリリーフバルブと、
直列接続された第1、第2の電磁弁および第3、第4の電磁弁と、
前記油タンクと第1、第3の電磁弁に直列接続された絞り弁と、
前記第2、第4の電磁弁の油流入側と前記モータポンプとの間に接続されモータポンプよりの油は通過可能な逆止弁と、
前記第2、第4の電磁弁に直列接続された逆止弁および絞り弁と、
前記第1の電磁弁の油流入側にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第2電磁弁の油を流入側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第1の複動シリンダと、
前記第3の電磁弁の油流入側にロッドを吐出させる側のシリンダが接続され、前記第4電磁弁の油を流入側にロッドを収納する側のシリンダが接続された第2の複動シリンダと、
から構成し、第1、第2の複動シリンダにおけるロッドを収納する側のシリンダを含めた油の圧力が高まるように第2、第3の電磁弁に接続されている絞り弁9で流量を絞り圧力を高めてロッドを収納する側の圧力が低下しないようにすることで、各複動シリンダの動作時に他の複動シリンダのロッドが収納される側が不安定な状態となるのを防止したことを特徴とする複動シリンダの油圧制御回路。
【請求項4】
前記各電磁弁と各複動シリンダにおけるロッドを吐出させる側のシリンダに比例電磁弁を接続し、各複動シリンダにおけるロッドのスタートおよびストップ時の速度を緩やかに行なわれるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の複動シリンダの油圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214598(P2011−214598A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80591(P2010−80591)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】