説明

複合体およびその製造方法

【課題】本発明は、接合強度に極めて優れた(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体およびその製造方法の取得を課題とする。
【解決手段】(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体であって、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の塩素含有量が1000ppm以下であることを特徴とする複合体。(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に含まれるポリフェニレンサルファイドの塩素含有量は1500ppm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合強度に極めて優れた(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と合成樹脂を一体化する技術は、自動車、航空機、家庭電化製品、産業機器等の部品製造、更にはモバイル電子機器等のケース、外部環境に曝される移動用機器等の広い産業分野から求められており、このために多くの接着剤が開発されている。この中には非常に優れた接着剤が提案されている。常温、又は加熱により機能を発揮する接着剤は、金属と金属、金属と合成樹脂を一体化する接合等に使われ、今日では一般的な固着技術である。
【0003】
しかしながら、(イ)ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略す場合もある)樹脂組成物と(ロ)金属を接着剤によって接合するに場合、ポリフェニレンサルファイド樹脂は耐薬品性が非常に高いため、適用可能な接着剤種が限定されるとの問題があった。
【0004】
そこで接着剤を使用しないで接合させる方法も従来から種々研究されてきた。特にマグネシウム、アルミニウムやその合金の表面を薬液処理し、かかる金属側に樹脂成分を射出する等の成形と同時に接着する方法が種々提案されている(特許文献1〜7)。
【0005】
本発明者らもこれらの方法について検討を進めてきたが、公知の方法のみでは接合強度の点で十分では無い場合があり、その適用範囲が限定されてしまうのが現状であった。
【0006】
そこで本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の塩素含有量を1000ppm以下に低減することで、金属との優れた接合強度を有する複合体が得られることを見出し本発明に到達した。
【特許文献1】特開2005−342895号公報
【特許文献2】特開2007−50630号公報
【特許文献3】特開2007−144795号公報
【特許文献4】特開2007−175873号公報
【特許文献5】特開2007−203585号公報
【特許文献6】特開2007−313750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接合強度に極めて優れた(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記を提供するものである。
1.(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体であって、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の塩素含有量が1000ppm以下であることを特徴とする複合体。
2.(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に含まれる(A)ポリフェニレンサルファイドの塩素含有量が1500ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
3.(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に含まれる(A)ポリフェニレンサルファイドのクロロホルム抽出量が1.8重量%以下であることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載の複合体。
4.(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物が、(B)ポリオレフィン系樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の複合体。
5. (ロ)金属が、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の複合体。
6.(ロ)金属が、アンモニア、ヒドラジン、および水溶性アミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する溶液で処理されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の複合体。
7.(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、当該射出成形金型に、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出することにより得られる請求項1〜6いずれか記載の複合体。
8.(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、当該射出成形金型に、塩素含有量が1000ppm以下である(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接合強度に極めて優れた(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(イ)PPS樹脂組成物
本発明で用いられる(イ)PPS樹脂組成物の必須構成成分である(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0011】
【化1】

【0012】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
【0013】
【化2】

【0014】
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
【0015】
本発明で用いられる(イ)PPS樹脂組成物は、その塩素含有量が1000ppm以下である必要があり、900ppm以下であることが好ましく、800ppm以下がより好ましく、50ppm以上700ppm以下の範囲が更に好ましい。
【0016】
(イ)PPS樹脂組成物の塩素含有量が1000ppmを越える範囲では、本発明が目的とする極めて優れた接合強度を得ることが困難となる。
【0017】
(イ)PPS樹脂組成物の塩素含有量を下げることにより何故金属との接合強度が向上するかは明瞭ではないが、以下の様に推察する。(イ)PPS樹脂組成物の必須構成成分である(A)PPS樹脂は、工業的にはポリクロロ芳香族化合物をモノマーとして製造される。従い、(A)PPS樹脂の分子鎖末端の少なくとも一部には塩素が存在する。この塩素が接合対象となる(ロ)金属の活性サイトを不活性化し、接合強度が低下するものと考える。
【0018】
(イ)PPS樹脂組成物の塩素含有量を1000ppm以下にするためには、(イ)PPS樹脂組成物に含まれる(A)ポリフェニレンサルファイドの塩素含有量を1500ppm以下にすることが有効であり、1200ppmとすることがより有効である。なお、ここで言う塩素の含有量は、SGSファーイーストリミテッドグリーンテスティングセンターに依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾(高雄)で測定した値である。
【0019】
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、優れた接合強度を得る観点から、そのクロロホルム抽出量が1.8重量%以下であることが望ましく、さらには1.0重量%以下であることが好ましい。
【0020】
クロロホルム抽出量は(A)PPS樹脂の低分子量成分量の目安となる。低分子量成分は末端数が多く、そのため(A)PPS樹脂のクロロホルム抽出量が多いと、塩素含有量が多くなる傾向にあり、そのため接合強度が低下するものと考える。
【0021】
なお本発明におけるクロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
【0022】
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた機械強度と良流動性を両立させる観点および低塩素化を図る観点からその溶融粘度は、400〜2000Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)の範囲が好ましく、400〜1300Pa・s以下の範囲がより好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイド樹脂を併用して用いてもよい。
【0023】
なお、本発明における溶融粘度は、320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
【0024】
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造のPPSが得られれば下記方法に限定されるものではもちろんない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
【0025】
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0026】
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
【0027】
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
【0028】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0029】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0030】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0031】
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0032】
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
【0033】
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0034】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
【0035】
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
【0036】
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
【0037】
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
【0038】
[重合助剤]
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
【0039】
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
【0040】
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
【0041】
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
【0042】
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
【0043】
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
【0044】
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
【0045】
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
【0046】
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
【0047】
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
【0048】
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
【0049】
[前工程]
本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
【0050】
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
【0051】
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
【0052】
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
【0053】
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
【0054】
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
【0055】
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
【0056】
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
【0057】
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
【0058】
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
【0059】
[回収工程]
本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
【0060】
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
【0061】
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
【0062】
[後処理工程]
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
【0063】
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0064】
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0065】
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
【0066】
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0067】
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
【0068】
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0069】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
【0070】
かかる有機溶媒による洗浄を施すことにより、(A)PPS樹脂中の低分子量成分を低減できる。従い、有機溶媒による洗浄を施すことは、(A)PPS樹脂中の塩素含有量を低減する有効な手段の一つである。 本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施しても良い。
【0071】
ポリフェニレンスルフィド樹脂をアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
【0072】
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
【0073】
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0074】
しかしながら、高機械強度と優れた溶融流動性を両立する観点からは、架橋構造の導入はあまり好ましくなく、直鎖状PPSであることが好ましい。
【0075】
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0076】
かかる好適なPPS樹脂の製品例としては、東レ株式会社製、M3088、M2888、M2588、M2088、T1881、E2280、E2180、E2080、GR01などが挙げられる。 本発明において、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に(B)ポリオレフィン系樹脂を配合することは、優れた接合強度を得る上で好ましい方法である。
【0077】
かかる(B)ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体、及びエチレンアルキルアクリレート共重合体が例示できる。
【0078】
無水マレイン酸変性エチレン系共重合体としては、例えば無水マレイン酸グラフト変性エチレン重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体等をあげることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることが好ましく、このエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体の具体的な例示としては、「ボンダイン(仏国、アルケマ社製)」等が挙げられる。
【0079】
グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン重合体、グリシジルメタクリレート−エチレン共重合体を挙げることができ、その中でも特に優れた複合体が得られることからグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体であることが好ましく、このグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体の具体例としては、「ボンドファーストE、ボンドファースト7Mなどのボンドファーストシリーズ(日本国、住友化学社製)」等が挙げられる。
【0080】
グリシジルエーテル変性エチレン共重合体としては、例えばグリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル−エチレン共重合体を挙げることができ、このエチレンアルキルアクリレート共重合体の具体例としては、「ロトリル(アルケマ社製)」等が挙げられる。
【0081】
かかる(B)ポリオレフィン系樹脂の配合量は、(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し、(B)ポリオレフィン系樹脂0.5〜100重量部の範囲が好適であり、1〜50の範囲がより好適であり、2〜20の範囲が更に好適である。
【0082】
本発明において、高い機械的強度や高寸法安定性を発現させるため、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に充填材を含有させることも好ましい態様の一つである。
【0083】
繊維状充填材として、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、酸化亜鉛ウィスカ、セラミック繊維、硫酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、金属繊維などが用いられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0084】
また非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭化珪素、カーボンブラック、シリカ、黒鉛、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、ドロマイト、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、セラミックビーズ、窒化ホウ素、酸化亜鉛などが用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
【0085】
かかる充填材の配合量は、機械的強度と溶融流動性のバランスの観点から、(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し、1〜250重量部の範囲が好ましく選択される。
【0086】
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物を添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れたウェルド強度を得る上で特に好適である。
【0087】
かかるシラン化合物の好適な添加量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部の範囲が選択される。
【0088】
また、金属部品と樹脂組成物部品とのより優れた接合性を得る観点から(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に、更に多官能性イソシアネート化合物部及び/又はエポキシ樹脂を配合することも好ましい態様に一つである。この多官能性イソシアネート化合物は、市販の非ブロック型、ブロック型のものが使用できる。該多官能性非ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン等が例示される。
【0089】
また、この多官能性ブロック型イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、そのイソシアネート基を揮発性の活性水素化合物と反応させて、常温では不活性としたものであり、この多官能性ブロック型イソシアネート化合物の種類は特に規定したものではなく、一般的には、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等のブロック剤によりイソシアネート基がマスクされた構造を有する。この多官能性ブロック型イソシアネートとしては、例えば「タケネート(三井竹田ケミカル社製)」等が挙げられる。
【0090】
この用途のエポキシ樹脂としては、一般にビスフェノールA型、クレゾールノボラック型等として知られているエポキシ樹脂を用いることができ、該ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば「エピコート(ジャパンエポキシレジン社製)」等が挙げられ、該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、「エピクロン(大日本インキ化学工業社製)」等が挙げられる。
【0091】
本発明の(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。
【0092】
なお、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0093】
本発明の(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0094】
本発明における、 (ロ)金属としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、およびそれらの合金が挙げられ、中でもアルミニウムまたはアルミニウム合金が、より優れた接合強度が得られる理由から特に好適に用いられる。
【0095】
かかる(ロ)金属は、より優れた接合強度を得る観点から、アンモニア、ヒドラジン、および水溶性アミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する溶液で前処理されていることが好ましい。
【0096】
次に、(ロ)金属としては、アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金を例として、その詳細および、好適な前処理方法について詳述する。
【0097】
本発明で使用するアルミニウム合金としては、日本工業規格JISの展伸用合金A1000〜7000番系のもの、又鋳造用合金のADC1〜12等が挙げられる。射出成形により樹脂との接合を行う場合、アルミニウム合金は、この素材から、鋸加工、フライス加工、放電加工、ドリル加工、鍛造、プレス加工、研削加工、研磨加工、等の機械加工により、所望の形状に加工され、射出成形金型へのインサート部品として必要な形状に仕上げられる。必要な形状に仕上げられた物の多くは、一般に機械加工のときに用いた油材が表面に付着している。そのような場合、下記の工程送る前に、トリクレン、メチレンクロライド、灯油、パラフィン系油剤等の溶剤を使用した溶剤脱脂装置を使用して加工油剤を除去しておくのが好ましい。
【0098】
〔液処理/脱脂洗浄工程〕
この液処理/脱脂洗浄工程は、液処理工程の中で最初に行う工程である。アルミニウム合金の表面に付着した機械加工のための切削、研削等の加工油、指脂による汚れ等を除去するのが目的であるが、機械加工油が大量付着している場合は、脱脂槽1基では除去し切れないので前述した溶剤脱脂装置に一旦通してからこの工程へ投入するのが好ましい。脱脂材には市販のアルミニウム合金用脱脂剤が使用できる。市販のアルミニウム合金用脱脂剤を使う場合、これを水に投入溶解し指定の温度と時間、即ち多くは50〜80℃、5分前後で、アルミニウム合金形状物をこの脱脂剤水溶液に浸漬するのが好ましい。この浸漬後これを水洗する。
【0099】
〔液処理/前処理〕
この前処理は、酸塩基性液に数分浸漬しておおまかにエッチングして表層被膜を化学的に除去し、以降の本処理に適するようにするものである。アルミニウム合金形状物を液処理して射出接合に適した処理をする場合、これを2段に分け、前処理、本処理と称することにする。本発明者らが好ましいと考えている前処理には前処理Iと前処理IIの2種類があり、前処理Iで使用する浸漬用の液は単純な酸と塩基の水溶液である。塩基性液としては、0.5〜3.0%濃度の苛性ソーダ水溶液を35〜40℃に加温し、酸性液としては、0.5〜5.0%濃度の塩酸、硝酸水溶液を35〜40℃に加温するように温度制御して使用する。前処理Iは銅や珪素分の少ないA1000番台、A5000番台合金に使用する。
【0100】
一方、前処理IIでは酸性水溶液を主に使用するが、酸性液として弗化水素酸を含む水溶液や弗化水素酸の誘導体を使用する。前処理IIは、銅や珪素を含む合金、即ち、A2000番台、A6000番台、A7000番台、及びADC12等の鋳造用合金に使用する。何れにせよ、酸塩基性液に数分浸漬しておおまかにエッチングして表層被膜を化学的に除去し、以降の本処理に適するようにするのが前述した前処理の目的である。水洗してアルミニウム合金形状物を次工程に送る。
【0101】
〔液処理/本処理〕
前処理を終了したアルミニウム合金形状物を、アンモニア、ヒドラジン、又は水溶性アミン化合物の水溶液に浸漬する。これが本発明でいう本処理である。本処理は、前処理工程で得たアルミニウム合金形状物の表面を超微細エッチングし、同時にこれらアミン系化合物を吸着させるのがこの工程の目的である。使用するのは広い意味のアミン化合物であり、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、アリルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、その他のアミン類が含まれる。これらの内、特にヒドラジンが好ましい。
【0102】
理由は臭気が小さいこと、低濃度で有効なこと、安価なこと、等による。浸漬は、40〜80℃、特に好ましくは50〜70℃で行い、濃度と浸漬時間は使用する化合物によって異なるが、ヒドラジンの場合は1水和ヒドラジンとして2〜10%濃度、特に3〜5%の水溶液が好ましく、浸漬時間は30〜90秒が好ましい。浸漬条件がこれより緩いとエッチングが十分とならず後の射出接合での接合力が低くなる。又、浸漬条件がこれより厳しいとエッチングが複層して表面の凹部径が大きくなり且つ凹部の中にまた凹部が出来てスポンジ状の複雑表面層となる。この場合も後の射出接合で得られる一体化品の接合力は弱くなる。この浸漬後、水洗し、40〜90℃で熱風乾燥する。
【0103】
本発明において、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属を接合させる方法に特に制限はなく、例えば(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、前記射出成形金型に、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出する方法、(ロ)金属と(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を熱板溶着する方法、(ロ)金属と(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物をホットプレスする方法などが例示できる。中でも、(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、前記射出成形金型に、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出する方法が、高い生産性の観点から好ましく用いられる。
【0104】
具体的には、射出成形金型に(ロ)金属をインサートした後、この射出成形金型に(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出してこの(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属を接合することをいう。具体的な射出接合の手順は、最初に前記した(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を乾燥機にまず投入して乾燥し射出成形に備える。射出成形金型を準備し、金型を開いてその一方の金型に(ロ)金属をインサートする。インサート後金型を閉め、前述した(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出する。
【0105】
射出成形された構造物が固まったら、射出成形金型を開き離型する。大量生産では、部品を射出成形金型内にインサート用のロボットを使用すると能率的である。ロボットは、作業を早くすると同時に作業の安定化に寄与し、製品を均一化させるのに効果がある。
【0106】
射出成形金型温度はやや高い方、具体的には130℃以上、にすることで接合に関し良い結果が得られるが、その他の成形条件は通常の射出成形に比較して特に変更する必要はない。接合力を上げるためには、ガスを十分逃がして障害をなくした上で、高温高圧の溶融樹脂が(ロ)金属の表面に充分に接触することである。そのためにガス抜きが十分に行われるように金型製作上で対策が施されていなければならない。
【0107】
本発明の複合体には以下に示す電解酸化処理を施すことも可能である。アルミニウム合金に対して最も広く工業的量産法として使われて来た電解酸化は染色アルマイト化である。従ってここでは染色アルマイト化について述べる。即ち、染色アルマイト化は、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程を踏む。実施方法については多くの成書があり、数十年実施されているアルミニウム合金の防食、加飾の方法であって、アルマイト会社として多社あり各社毎の多くのノウハウが蓄積されている。本発明で得られるアルミニウム合金と樹脂の一体化物は、多くのアルマイト会社が現実に実施している方法でアルマイト化できる。アルマイト化で接合力が低下して問題を生じることはない。
【0108】
染色アルマイト化の標準的な実施工程は、ブラスト又はバフ掛け、アルカリエッチング、化学研磨、陽極酸化、染色、封孔の諸工程である。外観部品として使用する場合、ブラスト又はバフ掛けをして前工程の射出接合時に付いた金型との擦り傷、押し傷等を消す必要があると思われる。単に防食のためであり、且つ、アルマイト化の後で更に塗装を行う場合は不要かもしれない。アルカリエッチング工程以降は通常のアルマイト化と同様に行うことができる。
【0109】
強いて言えば、樹脂成形部とアルミニウム合金が為す境界線部分近傍のアルミニウム合金表面はポリオレフィン系樹脂の分解ガスで保護されているのみであるので、通常通りか又は通常よりやや緩い条件でアルカリエッチング及び化学研磨をするのが好ましい。具体的に言えば、現行の当業者のアルマイト化はブラストやバフ掛け工程の多少のムラ(十分にアルミ上のキズを取り切っていないこと)を、アルカリエッチングと化学研磨で取り返すべくきつくなっていることが多いので、前工程に手を掛けることで、アルカリエッチングでの液温度を常時より10〜20℃下げ、化学研磨では浸漬時間を半分にするなどである。
【0110】
アルマイト化にて接合に支障がなかったか否かを見る最も簡単な手法は、アルマイト化し水洗乾燥した後の製品に於いて、樹脂とアルミ材が為す境界線部分に全く白粉らしき物が付着してなければほぼ成功であり、白粉が確認されれば殆ど不成功とみる方法である。実際には数十〜数百個をアルマイト化し、その破断試験を行って確認するが、前記した簡便法での結果と殆ど一致する。アルマイト化工程の具体的内容は多くの成書がある上、国内に数百の業者が実践をしているので記述を省略する。本発明者らの実施方法は実施例に示した。
【0111】
アルマイト化以外の電解酸化法についても、酸化以前の下化粧である前処理工程は殆ど同じである。そして、通電法が高圧になったり交流になったりしても境界線からの侵食は浸漬液の酸塩基性によって生じる方が大きいので本発明はそのまま使用できる。
【0112】
以上のようにして得られた、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と金属複合体は、その高い接合強度を活用し、自動車、航空機、家庭電化製品、産業機器等の部品製造、特にはモバイル電子機器等のケース、外部環境に曝される移動用機器用途に好適に用いられる。
【0113】
また、昨今、優れた耐腐食性や環境等への配慮から、塩素、臭素含有量を少なくすることが、電気電子部品なかでも特に、コネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品、モバイル電子機器等のケース、外部環境に曝される移動用機器用途において求められている。本発明の樹脂組成物はこの観点に置いても優れた低塩素ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物複合体を提供できる。
【0114】
その他本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物複合体の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
【実施例】
【0115】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0116】
[測定方法]
(1)PPS樹脂のクロロホルム抽出量
ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパセンテージ表記としたものである。
【0117】
(2)PPS樹脂の溶融粘度
320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
【0118】
(3)塩素、臭素含有量
SGSファーイーストリミテッドグリーンテスティングセンターに依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾(高雄)で測定した。
【0119】
(4)複合体の接合強度の測定
引っ張り試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分でせん断破断力を測定した。
【0120】
接合強度評価試験片は図1に示す金型を用い作成した。図1は、所定形状に加工された金属部品1を射出成形金型2、3にインサートし、PPS組成物4を、ピンゲート5を通して射出し、接合面6により金属部品1と一体化された複合体を製造する過程を模式的に示した金型構造図である。図2は、接合後の複合体7を示す外観図である。
【0121】
[使用原材料]
[参考例1]PPSの重合(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0122】
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
【0123】
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が180Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量0.27%、塩素含有量1100ppmであった。
【0124】
[参考例2]PPSの重合(PPS−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0125】
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
【0126】
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が200Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量1.90%、塩素含有量2100ppmであった。
【0127】
[参考例3]PPSの重合(PPS−3)
攪拌機を装備する70リットルオートクレーブに、NaS・2.9HOを8699.6g、及びN−メチル−2−ピロリドンを23800gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1897gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン10024gとN−メチル−2−ピロリドン7000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥した。このPPSを、さらに窒素雰囲気下250℃で3時間硬化を行った。得られたPPSの溶融粘度は、クロロホルム抽出量2.20%、塩素含有量2300ppmであった。
【0128】
[参考例4]PPS樹脂組成物の調整(PPS樹脂組成物−1)
PPS−1を6.7kg、エチレン−メタクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート三元共重合体を0.4kg「ボンドファースト7M(住友化学社製)」、エチレン−アクリル酸エステルを0.9kg「A709(三井デュポンケミカル社製)」を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」を、サイドフィーダーから添加量が35重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を140℃で5時間乾燥し、PPS樹脂組成物−1とした。塩素含有量は600ppmであった。
【0129】
[参考例5]PPS樹脂組成物の調整(PPS樹脂組成物−2)
PPS−2を6.7kg、エチレン−メタクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート三元共重合体を0.4kg「ボンドファースト7M(住友化学社製)」、エチレン−アクリル酸エステルを0.9kg「A709(三井デュポンケミカル社製)」を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」を、サイドフィーダーから添加量が35重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を140℃で5時間乾燥し、PPS樹脂組成物−2とした。塩素含有量は1200ppmであった。
【0130】
[参考例6]PPS樹脂組成物の調整(PPS樹脂組成物−3)
PPS−1を6.5kg、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を1.5kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」、を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」を、サイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を140℃で5時間乾燥し、PPS樹脂組成物−3とした。塩素含有量は715ppmであった。
【0131】
[参考例7]PPS樹脂組成物の調整(PPS樹脂組成物−4)
PPS−3を6.5kg、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体を1.5kg「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」、を、予めタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」を、サイドフィーダーから添加量が20重量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物を得た。得られたPPS組成物を140℃で5時間乾燥し、PPS樹脂組成物−4とした。塩素含有量は1500ppmであった。
【0132】
[実施例1]
市販の3mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。100mm×25mmの長方形片200個に切断した。浸漬治具に全て充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を、7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて40℃の3%苛性ソーダ水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の3%硝酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて60℃の3.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分、60℃で5分間、温風乾燥した。治具より直接指で触れないようにしてアルミニウム合金板を取り出し、各々をアルミ箔で包み、更にこれらをポリエチ袋に入れて封じ保管した。
【0133】
熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS樹脂組成物−1を用いた。140℃の射出成形金型の固定型板2及び可動型板2内に、前述したアルミニウム合金片1をインサートし、PPS樹脂組成物を300℃の射出温度でゲート5から射出した。射出成形金型を開き、図2に示す形のアルミニウム合金と樹脂の複合体3を100個作成した。アルミニウム合金片1とPPS樹脂組成物4は、接合面(接合面積は1.8cm)6で一体に接合している。これを同日、170℃とした熱風乾燥機内に1時間置いてアニールした。
【0134】
翌日、10個について引っ張り試験機にかけてせん断破断試験を行った結果、破断時の平均の引っ張り力は4.2kNであった。
【0135】
[比較例1]
熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS樹脂組成物−2を用いた以外は、実施例1と同様に試験片を作成し、せん断破断試験を行った。平均の破断時の引っ張り力は2.2kNであった。
【0136】
[実施例2]
市販の3mm厚のA5052アルミ合金板(住友軽金属工業社製)を購入した。100mm×25mmの長方形片200個に切断した。浸漬治具に全て充填し、市販のアルミ脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を、7.5%濃度で湯に溶かし75℃とした槽(脱脂槽)に5分間浸漬し、水洗した。続いて、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて40℃の3%苛性ソーダ水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の3%硝酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。続いて60℃の3.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分、60℃で5分間、温風乾燥した。治具より直接指で触れないようにしてアルミニウム合金板を取り出し、各々をアルミ箔で包み、更にこれらをポリエチ袋に入れて封じ保管した。
【0137】
熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS樹脂組成物−3を用いた。140℃の射出成形金型の固定型板2及び可動型板2内に、前述したアルミニウム合金片1をインサートし、PPS樹脂組成物を300℃の射出温度でゲート5から射出した。射出成形金型を開き、図2に示す形のアルミニウム合金と樹脂の複合体3を100個作成した。アルミニウム合金片1とPPS樹脂組成物4は、接合面(接合面積は1.8cm)6で一体に接合している。これを同日、170℃とした熱風乾燥機内に1時間置いてアニールした。
【0138】
翌日、10個について引っ張り試験機にかけてせん断破断試験を行った。破断時の平均の引っ張り力は3.3kNであった。
【0139】
[比較例2]
熱可塑性合成樹脂組成物として、PPS樹脂組成物−4を用いた以外は、実施例2と同様に試験片を作成し、せん断破断試験を行った。破断時の平均の引っ張り力は2.1kNであった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、接合強度に極めて優れた(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体およびその製造方法に関し、自動車、航空機、家庭電化製品、産業機器等の部品製造、特にはモバイル電子機器等のケース、外部環境に曝される移動用機器用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施例で使用した接合強度評価か試験片を作成した金型を示す図である。
【図2】実施例で接合強度評価を行った試験片(複合体)を示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1、金属部品
2、金型
3、金型
4、ポリフェニレンサルファイド組成物
5、ピンゲート
6、接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物と(ロ)金属とを接合させた複合体であって、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物の塩素含有量が1000ppm以下であることを特徴とする複合体。
【請求項2】
(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に含まれる(A)ポリフェニレンサルファイドの塩素含有量が1500ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項3】
(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物に含まれる(A)ポリフェニレンサルファイドのクロロホルム抽出量が1.8重量%以下であることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載の複合体。
【請求項4】
(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物が、(B)ポリオレフィン系樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の複合体。
【請求項5】
(ロ)金属が、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の複合体。
【請求項6】
(ロ)金属が、アンモニア、ヒドラジン、および水溶性アミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する溶液で処理されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の複合体。
【請求項7】
(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、当該射出成形金型に、(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出することにより得られる請求項1〜6いずれか記載の複合体。
【請求項8】
(ロ)金属を射出成形金型にインサートし、当該射出成形金型に、塩素含有量が1000ppm以下である(イ)ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を射出することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30177(P2010−30177A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195678(P2008−195678)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】