説明

複合化粧板

【課題】面材その他の建材としての十分な厚さ、強度、剛性(耐撓み性)等を備え、しかも、軽量で持ち運びし易く施工性が良好であり、濃色に着色しても照明装飾効果が発揮される複合化粧板を提供する。
【解決手段】表面シート層1aと裏面シート層1bを互いに平行な多数のリブ1cを介して連結し、表面シート層1aと裏面シート層1bとリブ1cとで囲まれる多数の中空部1dを形成してなる、透光性を備えた合成樹脂製の複層中空板1の少なくとも片面に、木材の単板3を接着剤2で接着一体化した構成の複合化粧板とする。芯板として上記複層中空板1を使用することで、強度、剛性を確保しながら軽量化し、持ち運び性、取り扱い性、施工性を向上させると共に、単板3を染料で染色することで濃色の照明装飾効果を発揮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り戸やパーティションの面材、天井や壁の面材、戸棚の面材などの用途に適した複合化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材の単板を合成樹脂板に貼り合わせた複合板が知られている。斯かる複合板は、これを面材その他の建材として使用する場合、大判サイズ(例えば900×1800mm、900×2400mm)のものを用いるが、このような大判サイズの複合板は、強度確保、たわみ防止の観点から、通常、4mm以上の厚さを有する合成樹脂板を用いて単板と貼り合わせる必要がある。
【0003】
一方、木材とプラスチックとの複合材として、薄いつき板の片面又は両面に透明なプラスチックフィルムを貼り付け、その面部に繊細な模様又は図柄を切り抜くか打ち抜くかしたものが知られており、このものは照明器具の側板として使用されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭57−180002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の大判サイズの複合板のように4mm以上の厚さを有する合成樹脂板に単板を貼り合わせたものは、重量が大きいため持ち運びし辛く、施工性があまり良くないという問題があり、しかも、このような重量の大きい複合板を面材として躯体に取付ける場合は、躯体に大きい強度が要求されるため、コストアップを招くという問題があった。また、この複合板の背後に光源を設置して光を透過させることにより照明装飾効果を発揮させる場合は、淡色に着色する必要があり、濃色に着色すると光が透過し難くなって満足な照明装飾効果が得られないという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1の複合材のように、つき板にプラスチックフィルムを貼り付けたものは、繊細な模様、図柄を形成できるので美術工芸的な効果を与えることはできるが、面材その他の建材用途には使用することができない。
【0006】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、面材その他の建材としての十分な厚さ、強度、剛性(耐撓み性)などを備え、しかも軽量で持ち運びし易く施工性が良好であり、濃色に着色しても照明装飾効果が発揮される複合化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る複合化粧板は、表面シート層と裏面シート層を互いに平行な多数のリブを介して連結し、表面シート層と裏面シート層とリブとで囲まれる多数の中空部を形成してなる合成樹脂製の複層中空板の少なくとも片面に、木材の単板を接着一体化したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の複合化粧板においては、複層中空板が透光性であることが望ましく、複層中空板の全体の厚さが4〜10mm、表面シート層と裏面シート層とリブの厚さがいずれも0.1〜1.5mm、リブの相互間隔が3〜12mmであることが望ましい。そして、複層中空板がポリカーボネート製であって、その両面に木材の単板を反応性のウレタン系ホットメルト接着剤で接着一体化することが望ましい。
【0009】
一方、単板の厚さは0.1〜0.3mmであることが望ましく、この単板が染料で染色されていることが望ましい。また、単板が縦に通った木目を有するものであって、その木目が複層中空板のリブに沿うように該単板が複層中空板に接着一体化されていることも望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合化粧板は、単板を接着一体化する芯板が、表面シート層と裏面シート層を互いに平行な多数のリブを介して連結し、表面シート層と裏面シート層とリブとで囲まれる多数の中空部を形成してなる合成樹脂製の複層中空板であるため、同じ厚さの中実の合成樹脂板の両面に単板を接着一体化した従来品に比べると、遥かに軽量で、持ち運びし易く、作業性が良好であり、しかも、従来品と遜色のない強度、剛性(耐撓み性)を備えている。従って、複層中空板の少なくとも片面に接着一体化された単板が水分を吸収しても、複合化粧板に反りが生じるようなことはない。本発明の複合化粧板は、上記のように軽量であるため、これを取付ける躯体に大きい強度が要求されなくなり、その分コストダウンを図ることが可能となる。
【0011】
特に、複層中空板の全体の厚さが4〜10mm、表面シート層と裏面シート層とリブの厚さがいずれも0.1〜1.5mm、リブの相互間隔が3〜12mmである本発明の複合化粧板は、軽量であるにも拘わらず強度や剛性に優れており、前記の大判サイズに形成すると、面材その他の建材として十分な強度と剛性(耐撓み性)を備えた、取扱い性及び作業性に優れた複合化粧板となる。
【0012】
また、複層中空板が透光性である本発明の複合化粧板は、その背後に光源を配置して光を透過させると照明装飾効果が発揮され、特に、単板の厚さが0.1〜0.3mmである場合は透光性が良好であり、該単板を染料で濃色に染色しても満足な照明装飾効果を得ることができる。
【0013】
複層中空板の材質はポリカーボネートであることが好ましく、このようなポリカーボネート製の複層中空板は耐衝撃性や曲げ強度に優れており、しかも、反応性のウレタン系ホットメルト接着剤を用いて単板を強固に接着一体化できる利点がある。
【0014】
また、単板が縦に通った木目を有するものであって、その木目が複層中空板のリブに沿うように該単板が複層中空板に接着一体化されている本発明の複合化粧板は、例えば背後から光を照射した場合でも、複層中空板のリブが単板の木目によって目立たなくなるので、美観が一層向上する利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る複合化粧板の部分斜視図、図2は同複合化粧板の端部拡大横断面図、図3は同複合化粧板に用いる複層中空板の部分断面図である。
【0017】
この複合化粧板は、図1,図2に示すように、透光性を有する合成樹脂製の複層中空板1の両面に、木材の単板3を接着剤2で接着一体化したものである。木材の単板3は、必ずしも複層中空板1の両面に接着一体化する必要はなく、複層中空板1の少なくとも片面に接着一体化すればよい。
【0018】
この複合化粧板に用いる複層中空板1は、図2,図3に示すように、表面シート層1aと裏面シート層1bを、互いに平行な多数のリブ1cを介して連結し、表面シート層1aと裏面シート層1bとリブ1cとで囲まれる互いに平行な多数の中空部1dを形成した透光性を有する合成樹脂製の複層中空板である。
【0019】
この複合化粧板は、面材その他の建材としての十分な強度と剛性(耐撓み性)を付与すると共に、軽量化して持ち運びや取り扱いを容易にするために、複層中空板1の全体の厚さTを4〜10mm、表面シート層1aと裏面シート層1bとリブ1cの厚さtを0.1〜1.5mm、リブ1cの相互間隔Pを3〜12mmに設定している。
【0020】
複層中空板1の材料樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートその他のエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニルその他のビニル系樹脂や、ポリメチルメタクリレートその他のアクリル系樹脂など、透光性を有する種々の熱可塑性合成樹脂を使用することができるが、その中でも、耐衝撃性、曲げ強度、透光性、耐候性、熱変形性(加工性)などに優れたポリカーボネートが特に好ましく使用される。
【0021】
尚、複合化粧板の背後に光源を設けて光を透過させることにより照明装飾効果を発揮させる必要がない場合は、透光性を有する熱可塑性合成樹脂を使用して複層中空板1を成形する必要はなく、着色剤や充填剤を含有させた不透明な熱可塑性合成樹脂を使用して不透明な複層中空板1を成形してもよい。
【0022】
複層中空板1の両面に接着一体化される木材の単板3としては、例えば、檜、杉、楓、アッシュ(トネリコの木)等をスライスした単板が好ましく使用され、また、合わせ木の単板(単板を重ねてからスライスしたもの)も使用される。この単板3の厚さは、透光性、反り、加工性などの観点から0.1〜0.3mm程度とすることが好ましく、最適な厚さは0.2mm程度である。
【0023】
複合化粧板の背後に光源を配置して照明装飾効果を発揮させる場合には、この単板3を染料で染色することが好ましく、このように染料で染色する場合は、単板3を濃色に染色しても、光がよく透過し、十分な照明装飾効果を得ることができる。
【0024】
また、単板3として、例えば、図1に示すように木目が縦に通った杉の単板3を複層中空板1の両面に接着一体化する場合は、その縦の木目が複層中空板1のリブ1cに沿うように単板3を重ねて接着することが好ましく、このようにすると、背後から光を照射した場合でも、複層中空板1のリブ1cが単板3の木目によって目立たなくなるので、美観が一層向上する利点がある。
【0025】
単板3を接着する接着剤2は特に限定されるものではなく、(a)反応性のホットメルト接着剤(例えば水分と反応して硬化する反応性のウレタン系ホットメルト接着剤など)、(b)非反応性のホットメルト接着剤(例えばEVA系ホットメルト接着剤など)、(c)硬化性接着剤(例えば二液混合型のエポキシ系やウレタン系の硬化性接着剤)、(d)エマルジョンタイプの接着剤など、従来公知の各種接着剤を使用することができ、場合によっては粘着剤も使用できる。
【0026】
これらの接着剤の中では、(a)の反応性のウレタン系ホットメルト接着剤が最適であり、斯かるウレタン系ホットメルト接着剤を用いて単板3を複層中空板1に接着すると、強固な接着力が得られるうえに、該接着剤層が良好な耐候性、耐熱性を有するため、複層中空板1を透過した紫外線によって該接着剤層が劣化し難く、また、建材として複合化粧板を使用したときに水や熱による劣化も防止できる利点がある。
【0027】
上記のウレタン系ホットメルト接着剤で複層中空板1と単板3を接着する場合は、スプレー又はロール転写により、複層中空板1又は単板3の接着すべき面にウレタン系ホットメルト接着剤を加熱溶融して塗布した後、両者を重ね合わせて圧着すればよい。尚、接着剤2の層厚は特に限定されるものではなく、0.1mm程度あれば十分である。
【0028】
以上のような構成の複合化粧板は、面材その他の建材として使用されるが、その芯板となる合成樹脂製の複層中空板1が中実の合成樹脂板に比べると遥かに軽量であり、しかも、遜色のない強度、剛性(耐撓み性)、耐衝撃性を備えたものであるため、従来の複合板に比べると、持ち運びや取り扱いが容易で施工性に優れており、かつ、大きい荷重や衝撃力等の外力を受けても、大きく撓んだり破損したりすることは殆どない。この複合化粧板は、上記のように強度が大きいにも拘わらず軽量であるため、これを取付ける躯体に大きい強度が要求されなくなり、その分コストダウンを図ることが可能となる。そして、この複合化粧板の背後に光源を配置すると、光が透過して単板3の木目が浮き上がり、良好な照明装飾効果が発揮される。特に、単板3を染料で濃色に染色した場合は、従来困難であった濃色の照明装飾効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合化粧板の部分斜視図である。
【図2】同複合化粧板の端部拡大横断面図である。
【図3】同複合化粧板に用いる複層中空板の部分断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 複層中空板
1a 表面シート層
1b 裏面シート層
1c リブ
1d 中空部
2 接着剤
3 木材の単板
T 複層中空板の全体の厚さ
t 表面シート層と裏面シート層とリブのそれぞれの厚さ
P リブの相互間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート層と裏面シート層を互いに平行な多数のリブを介して連結し、表面シート層と裏面シート層とリブとで囲まれる多数の中空部を形成してなる合成樹脂製の複層中空板の少なくとも片面に、木材の単板を接着一体化したことを特徴とする複合化粧板。
【請求項2】
複層中空板が透光性であることを特徴とする請求項1に記載の複合化粧板。
【請求項3】
複層中空板の全体の厚さが4〜10mm、表面シート層と裏面シート層とリブの厚さがいずれも0.1〜1.5mm、リブの相互間隔が3〜12mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合化粧板。
【請求項4】
複層中空板がポリカーボネート製であって、その両面に木材の単板を反応性のウレタン系ホットメルト接着剤で接着一体化したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合化粧板。
【請求項5】
単板の厚さが0.1〜0.3mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の複合化粧板。
【請求項6】
単板が染料で染色されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の複合化粧板。
【請求項7】
単板が縦に通った木目を有するもので、その木目が複層中空板のリブに沿うように該単板を複層中空板に接着一体化したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の複合化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−113309(P2009−113309A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288079(P2007−288079)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【出願人】(507366544)
【Fターム(参考)】