説明

複合型ICカード

【課題】裏面同士又は表面同士が向かい合う状態で複数枚重ねてリーダライタにかざしたときにも、アンテナコイルに効率よく電流を発生させ非接触ICチップに十分な電力を供給でき、リーダライタとの良好な通信を確保できる複合型ICカードを提供する
【解決手段】接触ICモジュール21をISO/JISに従ってカード基材2の左上の範囲に配置し、また、非接触ICチップ22(32,42)をカード基材2の右上の範囲に、カード基材2の長辺の中心線Eに対して、接触ICモジュール21と略線対称の範囲に配置し、さらに、アンテナコイル24(31,42)を接触ICモジュール21、非接触IC22チップよりも外側に配置し、そして、アンテナコイル24(31,42)の平面形状を、カード基材2の短辺の中心線D及び長辺の中心線Eに対して非線対称とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触ICモジュールと非接触ICチップとを備えた複合型ICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カード基材に各種の情報記録部、例えば、磁気ストライプ、接触ICモジュール、非接触ICチップを備えた複合型ICカードが知られている(例えば、特許文献1)。特に、非接触ICチップを用いたICカード(以下、非接触ICカードという。)は、カードケース等に収容した状態で、外部のリーダライタにかざすことにより、情報の送受信をすることができるので、駅の改札や、スキー場のリフト改札等において用いられるケースが増えてきている。
このような、非接触ICカードは、アンテナコイルを内蔵しており、リーダライタが形成する磁界によりアンテナコイルに電流が流れ、その非接触ICチップに電力が供給される。そして、非接触ICカードとリーダライタとは、情報を磁界に乗せて送受信し、非接触ICチップの情報の読み出し、書き込みが行われる。アンテナコイルは、効率よく電流を発生できるように、その共振周波数が交信周波数(例えば、13.56MHz)と、同等になるように設定される。
【0003】
しかし、従来の非接触ICカードは、アンテナコイルの形状が同一のカードを複数枚重ねた場合、同じ向きに重ねた状態では、問題がないが、お互いの表面と表面、又は、裏面と裏面とが向かい合う状態(いわゆる1枚が裏返しの状態)では、相互のアンテナコイルが影響しあい、アンテナコイルの共振周波数が大幅に低下していた。このため、この状態で、非接触ICカードをリーダライタにかざすと、アンテナコイルに発生する電流が減少して、非接触ICチップに十分に電力が供給できず、非接触ICカードとリーダライタ間の通信の効率が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2000−231620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、裏面同士又は表面同士が向かい合う状態で複数枚重ねてリーダライタにかざしたときにも、アンテナコイルに効率よく電流を発生させ非接触ICチップに十分な電力を供給でき、リーダライタとの良好な通信を確保できる複合型ICカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、カード基材と、前記カード基材の表面に配置された外部端子及び前記外部端子に電気的に接続された接触ICチップを備えた接触ICモジュールと、前記カード基材の内部に配置されたアンテナコイルと、前記カード基材の内部に配置され、前記アンテナコイルに電気的に接続された非接触ICチップとを備えた複合型ICカードにおいて、前記接触ICモジュールは、前記カード基材にISO/JISに従って配置されること、前記非接触ICチップは、前記カード基材の長辺の中心線に対して、前記接触ICモジュールと略線対称の範囲に配置されること、前記アンテナコイルは、その全てが、前記接触ICモジュール及び前記非接触ICチップよりも外側に配置されること、前記アンテナコイルの平面形状は、前記カード基材の長辺の中心線及び短辺の中心線に対して非線対称であること、を特徴とする複合型ICカードである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の複合型ICカードにおいて、前記アンテナコイルの平面形状は、前記非接触ICチップ側の第1のコーナ部と、前記第1のコーナ部と前記カード基材の中心を挟んで対向する第2のコーナ部とが、略直角であること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の複合型ICカードにおいて、前記アンテナコイルの平面形状は、前記接触ICモジュール側の第3のコーナ部、及び/又は、前記第3のコーナ部と前記カード基材の中心を挟んで対向する第4のコーナ部が、曲線であること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の複合型ICカードにおいて、前記アンテナコイルの平面形状は、前記第3のコーナ部と前記第4のコーナ部とが、前記カード基材の中心に対して、点対称であること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の複合型ICカードにおいて、前記第3のコーナ部又は前記第4のコーナ部に設けられ、前記アンテナコイルの外周と前記アンテナコイルよりも内側とを電気的に接続するブリッジ部を備えること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、前記カード基材の表面及び/又は裏面に長辺方向に、前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた磁気ストライプを備えること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた可視情報記録部を備えること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、前記カード基材の表面であって、前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた光学的偽造防止手段を備えること、を特徴とする複合型ICカードである。
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、前記カード基材の裏面に設けられたサインパネルと、前記カード基材の内部であって、前記サインパネルの平面における内側の範囲に設けられ、前記アンテナコイルと電気的に接続された電荷蓄積部と、を備えることを特徴とする複合型ICカードである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、接触ICモジュールと、アンテナコイルと、非接触ICチップとを備えた複合型ICカードにおいて、接触ICモジュールは、カード基材にISO/JISに従って配置される。また、非接触ICチップは、カード基材の長辺の中心線に対して、接触ICモジュールと略線対称の範囲に配置される。そして、アンテナコイルは、その全てが、接触ICモジュール及び非接触ICチップよりも外側に配置され、また、その平面形状は、カード基材の長辺の中心線及び短辺の中心線に対して非線対称である。
これにより、複合型ICカードは、裏面同士又は表面同士が向かい合う状態で複数枚重ねてもアンテナコイルが重複しない範囲を確保することができる。そして、この状態でリーダライタにかざしても、効率よく電流を発生させて非接触ICチップに十分な電力を供給し、リーダライタとの良好な通信を確保することができる。
【0008】
(2)本発明は、アンテナコイルの平面形状が、カード基材の外縁部に配置された略矩形であり非接触ICチップ側の第1のコーナ部と、第1のコーナ部とカード基材の中心を挟んで対向する第2のコーナ部とが略直角である。
これにより、複合型ICカードは、アンテナコイルの径を大きくすることができるので、リーダライタとの良好な通信と、非接触ICチップへの十分な電力供給を行うことができる。
【0009】
(3)本発明は、アンテナコイルの平面形状が、接触ICモジュール側の第3のコーナ部、及び/又は、第3のコーナ部とカード基材の中心を挟んで対向する第4のコーナ部が、曲線である。
これにより、例えば、第1のコーナ部と第2のコーナ部とが略直角であるときに、裏面同士又は表面同士が向かい合う状態で複数枚重ねてもアンテナコイルが重複しない範囲を確保することができる。そして、この状態でリーダライタにかざしても、効率よく電流を発生させて非接触ICチップに十分な電力を供給し、リーダライタとの良好な通信を確保することができる。
【0010】
(4)本発明は、アンテナコイルの外周とアンテナコイルよりも内側とを電気的に接続するブリッジ部が、第3のコーナ部又は第4のコーナ部に設けられているので、アンテナコイルの長辺方向のラインをより外側に設けることができ、アンテナコイルの径をより大きくすることができる。
【0011】
(5)本発明は、カード基材の表面及び/又は裏面の非接触ICチップと重複しない位置に、磁気ストライプを備えているので、非接触ICチップをカード基材の内側に内蔵したことにより、表面に歪みが発生した場合にも、リーダライタによる磁気ストライプのデータの読み込みを阻害することがない。
【0012】
(6)本発明は、非接触ICチップと重複しない範囲に、可視情報記録部を備えているので、可視情報記録部を形成するときに、カード基材を凹凸状に加工する、いわゆるエンボス加工による非接触ICチップの破損を防止することができる。
【0013】
(7)本発明は、カード基材の表面の非接触ICチップと重複しない位置に光学的偽造防止手段(例えば、ホログラム)を備えているので、非接触ICチップをカード基材の内側に内蔵したことにより、表面に歪みが発生した場合にも、光学的偽造防止手段の機能を阻害することを防止できる。
【0014】
(8)本発明は、サインパネルがカード基材の裏面に設けられている。そして、電荷蓄積部がカード基材の内部であって、サインパネルの平面における内側の範囲に設けられている。すなわち、サインパネルを転写するとき、及び、サインパネルに文字等を転写するときの熱や衝撃に対して強い電荷蓄積部を、サインパネルと重複する位置に配置している。
これにより、複合型ICカードは、その内部のサインパネルと重複しない範囲に、他の部品を配置できるので、内部スペースを有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、裏面同士又は表面同士が向かい合う状態で複数枚重ねてリーダライタにかざしたときにも、アンテナコイルに効率よく電流を発生させ非接触ICチップに十分な電力を供給でき、リーダライタとの良好な通信を確保できる複合型ICカードを提供するという目的を、接触ICモジュールをISO/JISに従ってカード基材の左上の範囲に配置し、また、非接触ICチップをカード基材の長辺の中心線に対して、接触ICモジュールと略線対称の範囲に配置し、さらに、アンテナコイルを接触ICモジュール、非接触ICチップよりも外側に配置し、そして、アンテナコイルの平面形状を、カード基材の長辺の中心線及び短辺の中心線に対して非線対称としたことによって実現した。
【実施例】
【0016】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明を適用した実施例の複合型ICカード1を示す正面図である。図1においては、内部に収容された電気部品等は、透視して実線で示す。
図2は、複合型ICカード1の断面を示す図であり、図2(a)は、図1のA−A部断面図であり(センタコアシート部分のみ示す。)、図2(b)は、図1のB−B部断面図であり、図2(c)は、図1のC−C部断面図である。
なお、以下の説明において、複合型ICカード1の表面を正面にして、エンボスにより形成された文字、カード基材に印刷、形成された文字、模様等から判断して正位置に配置したときの配置を基準に、左右方向(すなわち、長辺方向)、上下方向(すなわち、短辺方向)を規定する。
【0017】
本実施例の複合型ICカード1は、情報を記録するために、接触型ICチップ、非接触型ICチップ、3つの磁気ストライプと、エンボス情報部とを備えた複合型ICカードである。
図2に示すように、複合型ICカード1は、そのカード基材2が、センタコアシート3と、これを表面及び裏面から覆う表シート4、裏シート5とから構成される。これらのシートは、例えば、それぞれが複数のPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂シート層から形成される。
【0018】
図1、図2に示すように、複合型ICカード1は、カード基材2の表面に、外部端子11と、ホログラム12(光学的偽造防止手段)と、磁気ストライプ13a,13bと、エンボス情報部14(可視情報部)とを有し、また、カード基材2の裏面に、サインパネル15(図1には、破線で示す)と、磁気ストライプ16とを有している。
外部端子11は、後述する接触ICチップ21aと電気的に接続され、カード基材2の表面に露出した8個の端子である。外部端子11は、図1に示すように、ISO(国際標準化機構)/JIS(日本工業規格)に従ってカード基材2の左上の範囲に配置され、また、図2(b)に示すように、カード基材2の表面を窪ませた凹部に収容されている。また、外部端子11は、その形状についても同様に、ISO/JISに従って設けられている。
【0019】
ホログラム12は、カードの偽造防止を図るために、例えば、ホットスタンプ等を用いて形成される。ホログラム12は、角度を変えて見ると絵柄やマーク等の色や模様が変化し、また、立体的に見え、この特性がカードの偽造防止に利用される。ホログラム12の配置は、カード券面のデザイン毎に異なるが、一般にカード基材2の表面右側の範囲に配置される。
磁気ストライプ13a,13bは、例えば、それぞれ国内クレジットの磁気情報、銀行口座の磁気情報が記録された磁気情報記録部である。磁気ストライプ13a,13bは、図1に示すように、カード基材2の表面の上側、下側の範囲に、長辺方向(左右方向)にストライプ状に設けられている。磁気ストライプ13a,13bは、例えば、クレジットカードにおける共通の規格としては、磁気ストライプの中央位置をカードの上辺(底辺)から9.0mmとし、また、磁気ストライプの幅を6.3mmとすることが定められている。なお、磁気ストライプ13a,13bは、その表面に絵柄模様等の印刷層を設けて、外部から磁気ストライプ13a,13bが見えないようにしてもよい。
【0020】
エンボス情報部14は、外部から視認できるように、カード基材2に凹凸加工を施して示された文字や数字であり、カードの所有者、有効期限等の情報を示している。エンボス情報部14は、例えば、カード基材2の長辺方向に3列に配置するように規格で定められ、また、その範囲(図1に2点鎖線で示す。)もそれぞれ定められている。例えば、規格では、エンボス情報部14の最下部の位置は、カード基材2の底辺から2.489mm離した位置に、また、エンボス情報部14の1字目の文字又は数字は、その中央部がカード基材2の左端から10.185mm離した位置に形成するように定めている。
しかし、近年、カードの高機能化、多様化にともない複数の記憶部を有する複合型カードが多くなってきている。本実施例の複合型ICカード1は、3つの磁気ストライプを備えるために、そのうちの1つの磁気ストライプ13bが、カード基材2の下側の範囲に設けられている。このため、エンボス情報部14は、磁気ストライプ13bと干渉しないように、磁気ストライプ13bよりも上側の範囲(すなわち、底辺よりも12.15mm以上上側の範囲)に配置されている。磁気ストライプ13bに凹凸が形成されると、リーダライタが、磁気情報を読み取りにくくなるため、これを防止するためである。
【0021】
サインパネル15(図1に破線で示す。)は、カードの所有者が署名するために設けられた署名欄である。サインパネル15は、一般にカード基材2の裏面における略中央の範囲に、長辺方向に長い矩形状に設けられている。サインパネル15は、ホットスタンプによる転写方式等で形成される。
磁気ストライプ16は、例えば、海外クレジットの磁気情報が記録された、前述した磁気ストライプ13a,13bと同様な磁気情報記録部である。磁気ストライプ16は、図2(b)に示すように、カード基材2の裏面における上側の範囲に設けられている。
【0022】
次に、複合型ICカード1の内部構造等について説明する。
図2に示すように、複合型ICカード1は、接触ICモジュール21と、非接触ICモジュール22と、コンデンサ回路23(電荷蓄積部)と、アンテナコイル24と、ブリッジ部25とを備えている。
接触ICモジュール21は、前述した外部端子11と、これに電気的に接続された接触ICチップ21aとから構成される。この接触ICチップ21aは、制御部であるCPU(中央処理装置、図示せず)と、電力が供給されなくても情報の記憶が維持される不揮発性メモリ(例えば、EEPROM、図示せず)とを備えた半導体集積回路素子である。接触ICモジュール21は、ISO/JISに従って、図1に示すように正面から見てカード基材2の左上の範囲に配置され、カード基材2の内部に設けられた凹部に収容される(図2(b)参照)。接触ICモジュール21は、例えば、国内及び海外のクレジット会員情報、銀行口座情報等を記録し、外部のリーダライタと通信して、これらの情報の認証や書き換えを行なうことができる。接触ICモジュール21は、その外部端子11を介してリーダライタと電気的に接続されることにより、電力が供給され、また、必要な通信を行なう。
【0023】
非接触ICチップ22は、接触ICチップ21aと同様な内部構造を有する半導体集積回路素子であり、例えば、交通機関での定期券等の情報が記憶されている。非接触ICチップ22は、図1に示すように正面から見てカード基材2の右上の範囲であって、カード基材2の長辺の中心線Eに対して、接触ICモジュール21と略線対称の範囲に配置される。(なお、本実施例では、非接触ICチップ22は、中心線D,Eに対して、第1象限に規定される範囲に配置されている。)。また、非接触ICチップ22は、図2に示すように、カード基材2の内側であるセンタコアシート3の裏面に、金バンプ22aを用いて実装される。また、非接触ICチップ22は、ホログラム12、磁気ストライプ13a,13b,16と重複しない位置に設けられている。これは、カード基材2に非接触ICチップ22を設けたことにより、カード基材2の表面に歪みが発生した場合にも、ホログラム12、磁気ストライプ13a,13b,16の機能を阻害しないためである。また、非接触ICチップ22は、エンボス情報部14形成時に破損されないように、エンボス情報部14と重複しない範囲に設けられている。非接触ICチップ22は、後述するアンテナコイル24と電気的に接続され、これから必要な電力が供給される。そして、外部のリーダライタと無線を用いて通信して、内部情報の認証や書き換え等を行う。
【0024】
コンデンサ回路23は、後述するアンテナコイル24の共振周波数を調整するための電気回路であり、アンテナコイル24と電気的に接続されたコンデンサから構成される。コンデンサ回路23は、サインパネル15の平面における内側の範囲に、カード基材2の内側であるセンタコアシート3の裏面に設けられている(図2(c)参照)。コンデンサ回路23は、サインパネル15をホットスタンプにより形成するときの熱や衝撃に対して比較的、抵抗力がある。そして、この領域に、コンデンサ回路23を配置することで、複合型ICカード1は、センタコアシート3の他の領域に他の部品を配置することができる。すなわち、カード基材2の内部スペースを有効に利用することができる。
【0025】
アンテナコイル24は、非接触ICチップ22が外部のリーダライタと通信を行なうためのアンテナである。アンテナコイル24は、リーダライタに複合型ICカード1をかざしたときに、リーダライタが形成する磁界により電流が発生して、非接触ICチップ22に電力を供給する。これにより、非接触ICチップ22は、リーダライタと情報の送受信、情報の書き換え等を行なう。また、このとき必要な情報は、この磁界に乗せられる。
【0026】
アンテナコイル24は、カード基材2の内側であるセンタコアシート3の裏面に、例えば、エッチング等の方法により形成された導体である。アンテナコイル24は、その全てのコイルが、図1に示すように、接触ICモジュール21、非接触ICチップ22よりも外側のカード基材2の外縁に配置され、また、その平面形状は、カード基材2の短辺の中心線D及び長辺の中心線Eに対して非線対称である。アンテナコイル24は、リーダライタとの通信や、非接触ICチップ22が必要な電力を発生するために必要な巻数形成される(なお、図1には、簡略して2巻として示した。)。アンテナコイル24は、非接触ICチップ22側のコーナ24a(第1のコーナ部)と、これとカード基材2の中心を挟んで対向するコーナ24b(第2のコーナ部)とが略直角である。これは、アンテナコイル24のコイル径をより大きくして、リーダライタが形成する磁界を効率よく取り込むためである。アンテナコイル24は、接触ICモジュール21側のコーナ24c(第3のコーナ部)と、これとカード基材2の中心を挟んで対向するコーナ24d(第4のコーナ部)とが、外側に膨らむような曲線であるので、中心線D及びEに対して非対称であるとともに、コイル径を大きくすることができる。なお、本実施例では、コーナ24c、コーナ24dの曲率が、異なっている例を示した。
【0027】
ブリッジ部25は、アンテナコイル24の外周端と、アンテナコイル24よりも内側の電気回路とを接続するために、アンテナコイル24をまたぐようにして設けられた導体である。ブリッジ部25は、図2(a)に示すように、センタコアシート3の表面に形成され、その裏面に形成されたアンテナコイル24、電気回路と、スルーホール24e,24fを用いて、それぞれ電気的に接続されている。ブリッジ部25は、図1に示すように、アンテナコイル24のコーナ24cの部分に形成されている。これは、センタコアシート3のコーナ24cよりも外側の部分にスルーホール24eを配置して、アンテナコイル24の上側のラインを、カード基材2のより外側に配置し、コイル径をより大きくするためである。なお、ブリッジ部25は、コーナ24dの部分に設けても、同様な効果が得られる。
【0028】
次に、複合型ICカード1の重ねた状態における動作を説明する。
図3は、上述した構成を有する複合型ICカード30,40を重ねた状態を示す図である。図3(a)は、複合型ICカード40を左右反転して裏返し、複合型ICカード30,40の裏面同士が向き合うようにして重ねた状態における正面図、右側面図を示す。図3(b)は、同様に複合型ICカード40を上下反転して裏返した状態における正面図、右側面図を示す。なお、図3においては、アンテナコイル31,41と非接触ICチップ32,42のみを模式的に示し、正面図においては、複合型ICカード40を破線で示す。また、側面図において、複合型ICカード30,40の間に隙間を設けてある状態を示すが、実際には接触していてもよい。
【0029】
一般に、同種類の非接触型のICカードをこの状態で重ねると、お互いのアンテナコイルが形成する磁界が影響しあい、共振周波数が大幅に低下する。これは、アンテナ特性の低下につながり、リーダライタとの通信に悪影響であり、また、アンテナコイルに発生する電流量が低下するため好ましくない。本実施例の複合型ICカード30,40は、以下の作用によりこれを防止している。
【0030】
アンテナコイル31,41の形状は、前述したように、カード基材の短辺の中心線D及び長辺の中心線Eに対して非線対称に設けられている。このため、図3(a)に示すように、複合型ICカード40を左右反転して、複合型ICカード30,40を重ねた状態において、アンテナコイル31,41は、お互いが重ならない領域31a,31bと領域41a,41bとを有している。また、複合型ICカード40を上下反転して重ねた状態(図3(b)の状態)においても、アンテナコイル31,41は、お互いが重ならない領域31c,31dと領域41c,41dとを有している。これらの領域を有することで、アンテナコイル31,41は、お互いのアンテナコイルに与える影響をより低減し、リーダライタとの良好な通信を確保し、また、十分な電流を発生して非接触ICチップ32,42に十分な電力を供給することができる。
なお、複合型ICカード30,40を裏面同士ではなく、表面同士を向き合うようにして重ねたときにも、同様な作用により、良好な通信と、十分な電力の供給を行うことができる。
【0031】
以上説明したように、本実施例の複合型ICカード1(30,40)は、接触ICモジュール21がISO/JISに従ってカード基材2の左上の範囲に配置される。また、非接触ICチップ22(32,42)は、カード基材2の右上の範囲であって、カード基材の長辺の中心線Eに対して、接触ICモジュール21と略線対称の範囲に配置される。そして、アンテナコイル24(31,41)は、接触ICモジュール21、非接触ICチップ22よりも外側に配置され、また、その平面形状は、カード基材2の短辺の中心線D及び長辺の中心線Eに対して非線対称である。
これにより、複合型ICカード30,40は、裏面同士(又は表面同士)が向かい合う状態で複数枚重ねても、アンテナコイル31,41が重複しない領域31a〜31d,41a〜41dを確保することができる。これにより、この状態でリーダライタにかざしても、アンテナコイル31,41は、効率よく電流を発生させて非接触ICチップ22に十分な電力を供給し、そして、複合型ICカード1は、リーダライタとの良好な通信を確保することができる。
【0032】
また、複合型ICカード1は、アンテナコイル24の外周と、アンテナコイル24よりも内側に配置された電気回路とを電気的に接続するブリッジ部25が、コーナ24c(第3のコーナ部)に設けられている。これにより、アンテナコイル24の上側のラインをより外側に設けることができるため、アンテナコイル24の径をより大きくすることができ、複合型ICカード1は、リーダライタとの良好な通信を確保することができる。
【0033】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施例において、アンテナコイル24は、コーナ24c(第3のコーナ部)、コーナ24d(第4のコーナ部)が異なる曲率の曲線である例を示したが、これに限定されず、コーナ24c,24dは、同一の曲率でもよい。すなわち、コーナ24c,24dは、カード基材2の中心に対して点対称であってもよい。これによっても、複合型ICカードを複数枚重ねたときに、それぞれのアンテナコイルは、重複しない領域を有するので、効率よく電流を発生させて、リーダライタとの良好な通信を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した実施例の複合型ICカードの正面図である。
【図2】本発明を適用した実施例の複合型ICカードの断面図である。
【図3】本発明を適用した実施例の複合型ICカードを重ねた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1,30,40 複合型ICカード
2 カード基材
11 外部端子
12 ホログラム
13a,13b 磁気ストライプ
14 エンボス情報部
15 サインパネル
16 磁気ストライプ
21 接触ICモジュール
21a 接触ICチップ
22,32,42 非接触ICチップ
23 コンデンサ回路
24,31,41 アンテナコイル
25 ブリッジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、
前記カード基材の表面に配置された外部端子及び前記外部端子に電気的に接続された接触ICチップを備えた接触ICモジュールと、
前記カード基材の内部に配置されたアンテナコイルと、
前記カード基材の内部に配置され、前記アンテナコイルに電気的に接続された非接触ICチップとを備えた複合型ICカードにおいて、
前記接触ICモジュールは、前記カード基材にISO/JISに従って配置されること、
前記非接触ICチップは、前記カード基材の長辺の中心線に対して、前記接触ICモジュールと略線対称の範囲に配置されること、
前記アンテナコイルは、その全てが、前記接触ICモジュール及び前記非接触ICチップよりも外側に配置されること、
前記アンテナコイルの平面形状は、前記カード基材の長辺の中心線及び短辺の中心線に対して非線対称であること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項2】
請求項1に記載の複合型ICカードにおいて、
前記アンテナコイルの平面形状は、前記非接触ICチップ側の第1のコーナ部と、前記第1のコーナ部と前記カード基材の中心を挟んで対向する第2のコーナ部とが、略直角であること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複合型ICカードにおいて、
前記アンテナコイルの平面形状は、前記接触ICモジュール側の第3のコーナ部、及び/又は、前記第3のコーナ部と前記カード基材の中心を挟んで対向する第4のコーナ部が、曲線であること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項4】
請求項3に記載の複合型ICカードにおいて、
前記アンテナコイルの平面形状は、前記第3のコーナ部と前記第4のコーナ部とが、前記カード基材の中心に対して、点対称であること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の複合型ICカードにおいて、
前記第3のコーナ部又は前記第4のコーナ部に設けられ、前記アンテナコイルの外周と前記アンテナコイルよりも内側とを電気的に接続するブリッジ部を備えること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、
前記カード基材の表面及び/又は裏面に長辺方向に、前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた磁気ストライプを備えること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、
前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた可視情報記録部を備えること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、
前記カード基材の表面であって、前記非接触ICチップと重複しない範囲に設けられた光学的偽造防止手段を備えること、
を特徴とする複合型ICカード。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の複合型ICカードにおいて、
前記カード基材の裏面に設けられたサインパネルと、
前記カード基材の内部であって、前記サインパネルの平面における内側の範囲に設けられ、前記アンテナコイルと電気的に接続された電荷蓄積部と、
を備えることを特徴とする複合型ICカード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−213357(P2007−213357A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33205(P2006−33205)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】