説明

複合基板の製造方法

【課題】生産性を向上させることが可能な複合基板の製造方法、及び複合基板の製造装置の提供。
【解決手段】複合基板1の製造方法は、シリコン基板10の第1主面11に少なくとも1つの第1凹部12を形成する工程と、シリコン基板10の第1主面11にガラス基板20を接合する工程と、シリコン基板10の第1主面11とは反対側の第2主面13に、少なくとも一部が第1凹部12と連通する複数の第2凹部14を形成する工程と、ガラス基板20を加熱して粘性流動状態にすると共に、シリコン基板10の第2主面13側から吸引し、ガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14に充填する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合基板としては、相互に対向する一対の主面を有するガラス基板本体と、一対の主面の両方で少なくとも一部が露出するようにガラス基板本体に埋設されたシリコン島状体と、を具備したガラス基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1によれば、このガラス基板は、ガラス基板本体と島状体との界面で高い密着性が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−47279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、上記ガラス基板の製造方法は、シリコン基板にエッチングで突起状の島状体を設ける工程と、シリコン基板上にガラス基板を載置する工程と、両者を加熱し、シリコン基板の島状体をガラス基板に押し込む工程と、ガラス基板とシリコン基板とを研磨して、島状体をガラス基板の一対の主面の両方に露出させる工程と、を有している。
上記ガラス基板の製造方法によれば、シリコン基板の島状体を支える平板状のベース部分は、島状体をガラス基板に押し込む工程において、破損などがないように十分な強度を確保すべく相当程度厚く形成しておく必要がある。
また、ガラス基板においても、島状体の先端部が押し込まれる部分は、島状体をガラス基板に押し込む工程において、亀裂やクラックの発生などがないように相当程度厚く形成しておく必要がある。
【0005】
これらにより、上記ガラス基板の製造方法は、相当程度厚く残ったガラス基板及びシリコン基板を研磨して、島状体をガラス基板の一対の主面の両方に露出させる工程に掛かる工数(加工時間)が膨大なものとなる。
この結果、上記ガラス基板の製造方法は、ガラス基板の生産性を劣化させる虞がある。
【0006】
また、上記ガラス基板の製造方法は、島状体をガラス基板に押し込む工程において、ガラス基板の軟化の度合いによっては、ガラス基板における島状体を取り巻く部分に亀裂やクラックが発生する虞がある。
この結果、上記ガラス基板の製造方法は、押し込み時の残留応力、ガラスとシリコンとの熱膨張係数の違いなどにより、上記亀裂やクラックが徐々に拡大し、ガラス基板本体と島状体との密着性(気密性)が経時的に劣化していく虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる複合基板の製造方法は、導電性基板の第1主面に複数の第1凹部を形成する工程と、前記導電性基板の前記第1主面側に絶縁性部材を接合する工程と、前記導電性基板の前記第1主面とは反対側の第2主面に、少なくとも一部が前記第1凹部に連通する複数の第2凹部を形成する工程と、前記絶縁性部材を加熱して粘性流動状態にし、前記導電性基板の前記第2主面側から吸引し、前記絶縁性部材を前記第1凹部及び前記第2凹部に充填する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、複合基板の製造方法は、絶縁性部材を加熱して粘性流動状態にすると共に、導電性基板の第2主面側から吸引し、絶縁性部材を第1凹部及び第2凹部に充填することから、導電性基板の第1主面に接合された絶縁性部材が導電性基板の第1凹部及び第2凹部に収まる。
これにより、複合基板の製造方法は、導電性基板の第1主面及び第2主面が絶縁性部材によって覆われる程度が、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に改善される。特に導電性基板の第2主面は、基本的に絶縁性部材に覆われることがない。
この結果、複合基板の製造方法は、導電性基板の第1主面及び第2主面を露出させるための工数を、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に低減することができる。
したがって、複合基板の製造方法は、複合基板の生産性を大幅に向上させることができる。
【0010】
また、複合基板の製造方法は、絶縁性部材を加熱して粘性流動状態(所定の粘度を維持しつつ流動可能な状態)にすると共に、導電性基板の第2主面側から吸引し、絶縁性部材を第1凹部及び第2凹部に充填することから、例えば、吸引を真空状態(減圧状態)で行う(真空引きする)ことにより、絶縁性部材を第1凹部及び第2凹部の各構成面に密着させて充填することができる。
これにより、複合基板の製造方法は、導電性基板と絶縁性部材との密着性(気密性)を向上させることができる。
【0011】
また、複合基板の製造方法は、絶縁性部材を加熱して粘性流動状態にすると共に、導電性基板の第2主面側から吸引し、絶縁性部材を第1凹部及び第2凹部に充填することから、絶縁性部材における残留応力の発生を、特許文献1の製造方法(シリコン基板の島状体をガラス基板に押し込む)と比較して、大幅に低減することができる。
これにより、複合基板の製造方法は、導電性基板と絶縁性部材との界面に亀裂、クラックなどが発生することを回避できる。
この結果、複合基板の製造方法は、導電性基板と絶縁性部材との密着性(気密性)の経時的な劣化を抑制することができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例にかかる複合基板の製造方法において、前記導電性基板と前記絶縁性部材との接合方法は、陽極接合であることが好ましい。
【0013】
これによれば、複合基板の製造方法は、導電性基板と絶縁性部材との接合方法が陽極接合であることから、接合部材を別途用意しなくても導電性基板と絶縁性部材との接合が可能となり、導電性基板の第1凹部及び第2凹部への絶縁性部材の充填を、接合部材を混入させることなく確実に行うことができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例にかかる複合基板の製造方法において、前記導電性基板は、シリコンを含むことが好ましい。
【0015】
これによれば、複合基板の製造方法は、導電性基板がシリコンを含むことから、その物性により加工精度の高い複合基板を提供することができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例にかかる複合基板の製造方法において、前記絶縁性部材がガラスであり、前記絶縁性部材の加熱温度は、前記絶縁性部材の粘度η(dPa・s)の対数Logηが7.5〜14.0の範囲内となるように設定されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、複合基板の製造方法は、絶縁性部材がガラスであり、絶縁性部材の加熱温度が、絶縁性部材の粘度η(dPa・s)の対数Logηが7.5〜14.0の範囲内となるように設定されていることから、導電性基板の第1凹部及び第2凹部への絶縁性部材の充填性を向上させることができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例にかかる複合基板の製造方法において、前記充填する工程は、表面に多孔が設けられた載置面に前記導電性基板を載置し、前記多孔を通して吸引することが好ましい。
【0019】
これによれば、複合基板の製造方法は、絶縁性部材を充填する工程において表面に多孔が設けられた載置面に導電性基板を載置し、多孔を通して吸引することから、導電性基板と絶縁性部材との密着性を高めることが可能となり、第1主面側及び第2主面側間の気密性が向上した複合基板を製造することができる。
【0020】
[適用例6]上記適用例にかかる複合基板の製造方法において、前記充填する工程の後に、前記導電性基板および前記絶縁性部材の表面を研磨することが好ましい。
【0021】
これによれば、複合基板の製造方法は、絶縁性部材を充填する工程の後に、導電性基板および絶縁性部材の表面を研磨することから、複合基板の両主面を平滑化することができる。
なお、上述したように、この研磨の工数(両主面を露出させるための工数)は、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】複合基板の一例の概略構成を示す模式図であり、(a)は要部斜視図、(b)は(a)のA−A線での断面図。
【図2】複合基板の用途の一例を示す物理量センサーの模式部分展開斜視図。
【図3】複合基板の製造工程の一例を示すフローチャート。
【図4】(a)〜(d)は、各主要製造工程を説明する模式断面図。
【図5】(e)〜(g)は、各主要製造工程を説明する模式断面図。
【図6】ホウケイ酸ガラスの加熱温度と粘度との関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(実施形態)
最初に、複合基板の概略構成及び用途の一例について説明する。
図1は、ウエハー状に複数個取りされた複合基板の一例の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、要部斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。図2は、複合基板の用途の一例を示す物理量センサーの模式部分展開斜視図である。
なお、以降の図を含め、説明の便宜上、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。また、図1(a)の2点鎖線は、個片に分割する際の分割線を表す。
【0025】
図1に示すように、複合基板1は、導電性基板の一例としてのシリコン基板10と、絶縁性部材の一例としてのガラス基板20と、を含んで構成されている。
シリコン基板10には、例えば、リン、ボロンなどの不純物がドープされた単結晶シリコン、ポリシリコンなどの低抵抗シリコン基板が用いられている。そして、ガラス基板20には、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属イオン(可動イオン)を含んだホウケイ酸ガラス基板が用いられている。
【0026】
シリコン基板10の第1主面11には、少なくとも1つの第1凹部12が形成されている。
一方、シリコン基板10の第1主面11とは反対側の第2主面13には、少なくとも一部が第1凹部12と連通する(第1凹部12との間が少なくとも一部で開口している)複数の第2凹部14が形成されている。
つまり、第1凹部12の第1主面11からの深さ寸法D1と、第2凹部14の第2主面13からの深さ寸法D2との和(D1+D2)は、シリコン基板10の厚さ寸法Tよりも大きくなるように設定されている(T<(D1+D2))。
シリコン基板10は、この差分((D1+D2)−T)が厚さ方向の開口寸法となっている。なお、第1主面11に沿った方向(例えば、分割線に沿った方向)の開口寸法は、平面視における第1凹部12と第2凹部14との重なり形状により決定される。
【0027】
ガラス基板20は、ウエハー状のシリコン基板10の第1主面11に、ウエハー状の形態で接合された後、粘性流動状態(所定の粘度(後述)を維持しつつ流動可能な状態)に加熱されると共に、シリコン基板10の第2主面13側から真空状態で吸引されて、第1凹部12及び、第1凹部12と第2凹部14との連通部分(開口部分)から第2凹部14に充填される。
なお、ガラス基板20の加熱前(シリコン基板10への接合時)の厚さは、粘性流動状態になったガラス基板20の、シリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14への必要充填容量に基づき設定される。
【0028】
第1凹部12及び第2凹部14へのガラス基板20の充填により、シリコン基板10には、第1主面11と第2主面13とを繋ぎ、且つ、周囲(外周枠状部分)から島状に分離された分離部15、及び周囲から半島状に引き出された引き出し部16が形成される。
分離部15及び引き出し部16の少なくとも一部には、第1主面11及び第2主面13に電極パッド17が設けられている。電極パッド17の材料としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このように形成された分離部15及び引き出し部16は、例えば、第1主面11側の外部部材(外部素子、外部機器)と、第2主面13側の外部部材とを、第1主面11側及び第2主面13側間の気密性を有した状態で電気的に接続する貫通電極として機能する。
【0029】
ウエハー状に複数個取りされた複合基板1は、図示しないダイシングソーなどの分割装置により図1(a)に示す分割線(2点鎖線)に沿って個片に分割される。
【0030】
複合基板1の用途としては、例えば、電子デバイスのパッケージ機能を兼ね備えた基板として用いることが可能である。ここでは、電子デバイスの一例としての物理量センサーに用いられている複合基板1について説明する。
図2に示すように、物理量センサー2は、パッケージベースを兼ねた複合基板1と、複合基板1に搭載されたセンサー素子30と、センサー素子30を覆い複合基板1に接合されたキャップ40(蓋体)と、を備えている。
これにより、物理量センサー2は、複合基板1とキャップ40とで、センサー素子30を収容するパッケージ60が構成されていることになる。
【0031】
センサー素子30は、例えば、複合基板1の引き出し部16に取り付けられ、センサー素子30の図示しない複数の端子は、例えば、Au、Alなどの金属ワイヤー31を用いたワイヤーボンディングにより、複合基板1の分離部15(引き出し部16)にそれぞれ接続されている(電気的に接続されている)。
なお、センサー素子30は、表裏を反転し、複数の端子が直接またはAu、Al、ハンダなどのバンプを介して、分離部15(引き出し部16)にフリップチップ実装される構成とすることも可能である。
【0032】
キャップ40は、一面が開口した箱状に形成されており、内部空間41を介してセンサー素子30、金属ワイヤー31を覆い、開口側が複合基板1のシリコン基板10からなる外周枠状部分に接合されている。なお、キャップ40は、ナトリウムなどのアルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス)を用いることにより、複合基板1のシリコン基板10からなる外周枠状部分との陽極接合が可能となる。
【0033】
物理量センサー2の内部空間41は、気密に封止されており、センサー素子30の種類(例えば、圧力センサー、加速度センサー、角速度センサーなど)や物理量の検出方法によって、真空状態(減圧状態)または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填された状態となっている。
このような構成により、物理量センサー2は、センサー素子30を複合基板1の貫通電極として機能する分離部15(引き出し部16)を介して、内部空間41の気密性を維持しつつ、外部部材と電気的に接続させることが可能となる。
【0034】
次に、複合基板1の製造方法について説明する。
図3は、複合基板の製造工程の一例を示すフローチャートであり、図4(a)〜(d)、図5(e)〜(g)は、各主要製造工程を説明する模式断面図である。なお、これらの断面図は、図1(a)のB−B線での断面に相当する。
図3に示すように、複合基板1の製造方法は、第1凹部形成工程S1と、ガラス基板接合工程S2と、第2凹部形成工程S3と、加熱・吸引工程S4と、研磨工程S5と、電極パッド形成工程S6と、分割工程S7と、を有している。
【0035】
[第1凹部形成工程S1]
まず、図4(a)に示すように、例えば、厚さ約300μmのシリコン基板10の第1主面11に、SiO2(二酸化ケイ素)を含んでなるマスクパターン101をフォトリソグラフィー法により形成する。
ついで、SF6(六フッ化硫黄)をエッチングガスとして第1主面11を、例えば、約200μmの深さ(図1(b)のD1に相当)までドライエッチングし、第1凹部12を形成する。
【0036】
[ガラス基板接合工程S2]
ついで、図4(b)に示すように、シリコン基板10の第1主面11に、例えば、厚さ約400μmのガラス基板20を陽極接合法により接合する。
詳述すると、低抵抗シリコンであるシリコン基板10と、ナトリウムなどのアルカリ金属イオン(可動イオン)を含むホウケイ酸ガラスであるガラス基板20とを、320℃の窒素雰囲気中で800Vの電圧印加により陽極接合する。これにより、シリコン基板10とガラス基板20とは、静電引力により界面に共有結合が生じ強固に接合される。
【0037】
[第2凹部形成工程S3]
ついで、図4(c)に示すように、シリコン基板10の第2主面13に、SiO2からなるマスクパターン102をフォトリソグラフィー法により形成する。
ついで、SF6をエッチングガスとして第2主面13を、例えば、約200μmの深さ(図1(b)のD2に相当)までドライエッチングし、少なくとも一部が第1凹部12と連通する複数の第2凹部14を形成する。
【0038】
[加熱・吸引工程S4]
ついで、図4(d)に示すように、製造装置50を用いて、シリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14にガラス基板20を充填する。
複合基板1の製造装置50は、シリコン基板10の第2主面13を載置面51に載置し、シリコン基板10を介してガラス基板20を加熱して粘性流動状態にする加熱部52と、加熱部52の平滑な載置面51に設けられた多孔としての複数の微細な貫通孔53を介してシリコン基板10の第2主面13側から吸引し、粘性流動状態のガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14に充填する吸引部54と、シリコン基板10、ガラス基板20、加熱部52、吸引部54の吸引口部分を収容する気密チャンバー55と、を備えた構成となっている。
【0039】
詳述すると、まず、気密チャンバー55内において、シリコン基板10の第2主面13を、ヒーターなどを備えた加熱部52の載置面51に載置し、加熱部52によりシリコン基板10を介してガラス基板20を加熱して粘性流動状態にする。
この際、加熱温度は、図6のホウケイ酸ガラスの加熱温度と粘度との関係を表すグラフに示すように、ガラス基板20の粘度η(dPa・s)の対数Logηが7.5〜14.0(dPa・s)の範囲内となるように設定されていることが好ましい。
加熱温度の一例としては、例えば、ホウケイ酸ガラスのガラス転移点以上で、且つ、ガラス軟化点以下の温度である約525℃〜約820℃の温度範囲が挙げられる。なお、後述するように、本製造方法は、真空状態で加熱することから、大気圧下で加熱する場合よりも加熱時間を短くすることが可能となる。
【0040】
上記加熱と共に、ガラス基板20を、吸引部54により加熱部52の載置面51に設けられた複数の微細な貫通孔53を介して、シリコン基板10の第2主面13側から真空状態(10-2Pa程度の減圧状態)で吸引(真空引き)する。これにより、粘性流動状態のガラス基板20を、シリコン基板10の第1凹部12及び、第1凹部12と第2凹部14との連通部分(開口部分)から第2凹部14に充填する。
このとき、シリコン基板10の第2主面13は、吸引により加熱部52の載置面51に密着している(吸着されている)ことから、第2主面13側への粘性流動状態のガラス基板20の侵入や、分離部15の移動(位置ずれ)が回避される。
【0041】
[研磨工程S5]
ついで、図5(e)に示すように、ウエハー状態の複合基板1の第1主面11側及び第2主面13側を研磨し、吸引時にシリコン基板10の第1主面11に僅かに残ったガラス基板20の残渣や、吸引時に貫通孔53内に引き込まれ、シリコン基板10の第2主面13から外側(貫通孔53側)に僅かに突出したガラス基板20の突出部を平滑化する。
【0042】
[電極パッド形成工程S6]
ついで、図5(f)に示すように、分離部15及び引き出し部16の第1主面11側及び第2主面13側に、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金などの電極材料を用いて、蒸着またはスパッタリングにより電極パッド17を形成する。
これにより、分離部15及び引き出し部16は、貫通電極としての機能を有することとなる。
【0043】
[分割工程S7]
ついで、図5(g)に示すように、ウエハー状態の複合基板1を図示しないダイシングソーなどの分割装置により、分割線18に沿って個片に分割する。これにより、例えば、図2に示す物理量センサー2に用いられるような複合基板1を得る。
なお、上記第1凹部形成工程S1及び第2凹部形成工程S3におけるドライエッチングに代えて、ウエットエッチングとしてもよい。
【0044】
上述したように、本実施形態の複合基板1の製造方法は、ガラス基板20を加熱して粘性流動状態にすると共に、シリコン基板10の第2主面13側から吸引し、ガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14に充填することから、シリコン基板10の第1主面11に接合されたガラス基板20がシリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14に収まる(移動する)。
これにより、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10の第1主面11及び第2主面13における粘性流動状態のガラス基板20によって覆われる程度が、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に改善される。特にシリコン基板10の第2主面13については、吸引時に加熱部52の載置面51に密着している(吸着されている)ことから、基本的に粘性流動状態のガラス基板20に覆われることがない。
【0045】
この結果、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10の第1主面11及び第2主面13を露出させるための工数(研磨工程S5の工数に相当)を、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に低減することができる。
したがって、複合基板1の製造方法は、複合基板1の生産性を大幅に向上させることができる。
【0046】
また、複合基板1の製造方法は、ガラス基板20を加熱して粘性流動状態にすると共に、シリコン基板10の第2主面13側から吸引し、ガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14に充填する。この際、複合基板1の製造方法は、吸引を真空状態(減圧状態)で行う(真空引き)ことにより、ガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14の各構成面に、気泡を生じさせることなく密着させて充填することができる。
これにより、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10とガラス基板20との密着性(気密性)を向上させることができる。
【0047】
また、複合基板1の製造方法は、ガラス基板20を加熱して粘性流動状態にすると共に、シリコン基板10の第2主面13側から吸引し、ガラス基板20を第1凹部12及び第2凹部14に充填することから、ガラス基板20における残留応力の発生を、特許文献1の製造方法と比較して、大幅に低減することができる。
これにより、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10とガラス基板20との界面に亀裂、クラックなどが発生することを回避できる。
この結果、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10とガラス基板20との密着性(気密性)の経時的な劣化を抑制することができる。
【0048】
また、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10とガラス基板20との接合方法が陽極接合であることから、接合部材を別途用意しなくてもシリコン基板10とガラス基板20との接合が可能となる。
この結果、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14への粘性流動状態のガラス基板20の充填を、接合部材を混入させることなく確実に行うことができる。
【0049】
また、複合基板1の製造方法は、導電性基板がシリコンを含んでなるシリコン基板10であることから、シリコンの物性により加工精度の高い複合基板1を提供することができる。
【0050】
また、複合基板1の製造方法は、絶縁性部材がホウケイ酸ガラスを含んでなるガラス基板20であって、ガラス基板20の加熱温度が、ガラス基板20の粘度η(dPa・s)の対数Logηが7.5〜14.0(dPa・s)の範囲内となるように設定されていることから、ガラス基板20の粘性流動状態が良好となる。
この結果、複合基板1の製造方法は、シリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14への、粘性流動状態のガラス基板20の充填性を向上させることができる。
【0051】
また、複合基板1の製造方法は、第2凹部形成工程S3において、シリコン基板10に、第1主面11と第2主面13とを繋ぎ、且つ、周囲(外周枠状部分)から島状に分離された分離部15及び周囲から引き出された引き出し部16を形成する。
これにより、複合基板1の製造方法は、形成した分離部15及び引き出し部16を、例えば、第1主面11側の外部部材(ここでは、センサー素子30)と第2主面13側の外部部材(例えば、物理量センサー2が実装される外部機器の基板)とを気密性を有した状態で電気的に接続する貫通電極として用いる複合基板1を提供することができる。
【0052】
また、複合基板1の製造装置50は、加熱部52と吸引部54とにより、粘性流動状態のガラス基板20を、シリコン基板10の第1凹部12及び第2凹部14に吸引(真空引き)して充填する。
この結果、複合基板1の製造装置50は、シリコン基板10とガラス基板20との密着性を、吸引部54がない場合と比較して高めることが可能となり、第1主面11側及び第2主面13側間の気密性が向上した複合基板1を製造することができる。
【0053】
また、複合基板1の製造装置50は、吸引部54によってシリコン基板10の第2主面13を加熱部52の載置面51に吸着することから、粘性流動状態のガラス基板20の充填時における、シリコン基板10の第2主面13側へのガラス基板20の侵入や、シリコン基板10の分離部15の位置ずれを回避することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…複合基板、2…物理量センサー、10…導電性基板としてのシリコン基板、11…第1主面、12…第1凹部、13…第2主面、14…第2凹部、15…分離部、16…引き出し部、17…電極パッド、18…分割線、20…絶縁性部材としてのガラス基板、50…製造装置、51…載置面、52…加熱部、53…貫通孔、54…吸引部、55…気密チャンバー、60…パッケージ、101,102…マスクパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板の第1主面に複数の第1凹部を形成する工程と、
前記導電性基板の前記第1主面側に絶縁性部材を接合する工程と、
前記導電性基板の前記第1主面とは反対側の第2主面に、少なくとも一部が前記第1凹部に連通する複数の第2凹部を形成する工程と、
前記絶縁性部材を加熱して粘性流動状態にし、前記導電性基板の前記第2主面側から吸引し、前記絶縁性部材を前記第1凹部及び前記第2凹部に充填する工程と、
を備えることを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の複合基板の製造方法において、前記導電性基板と前記絶縁性部材との接合方法は、陽極接合であることを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合基板の製造方法において、前記導電性基板は、シリコンを含むことを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法において、前記絶縁性部材がガラスであり、前記絶縁性部材の加熱温度は、前記絶縁性部材の粘度η(dPa・s)の対数Logηが7.5〜14.0の範囲内となるように設定されていることを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法において、前記充填する工程は、表面に多孔が設けられた載置面に前記導電性基板を載置し、前記多孔を通して吸引することを特徴とする複合基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の複合基板の製造方法において、前記充填する工程の後に、前記導電性基板および前記絶縁性部材の表面を研磨することを特徴とする複合基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62373(P2013−62373A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199736(P2011−199736)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】