説明

複合多孔体及びその製造方法

【課題】高い分子選択性を有する複合多孔体及びその製造方法を実現する。
【解決手段】本発明に係る複合多孔体の製造方法は、界面活性剤水溶液中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法であり、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中に固体微粒子を混合分散させる工程と、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる工程と、固体微粒子が分散した該水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合多孔体、特に環境浄化や水中の有害物質除去に有用な複合多孔体、及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題への関心が高まり、地球規模での環境保全が叫ばれる中、産業活動に伴い廃棄される種々の有害化学物質が問題となっている。上記有害化学物質としては、例えば、内分泌攪乱物質(以下、環境ホルモンという。)や有機塩素化合物等の難分解性物質が挙げられ、これらは河川等の水環境から検出されている。特に、環境ホルモンであるノニルフェノール等のアルキルフェノール群は、微量でも内分泌攪乱性を有するため、生態系に対する影響が懸念されている。このような状況を鑑み、廃水処理、浄化プロセスにおいて高性能な浄化を行い、これらの物質を除去することが求められている。
【0003】
このような流れの中で、多孔体形成後に固体微粒子を付与するのでなく、多孔体の骨格が形成される前に、多孔体の原料もしくは多孔体が生成する溶液、ゾル、ゲル等の合成媒体に固体微粒子を混ぜ込んで、固体微粒子を含んだ多孔体を形成することで、良好な有機物質の吸着及び分解機能を有する複合多孔体が製造できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−314208号公報(2005年11月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法で得られる複合多孔体は、酸化チタンに通じていない細孔が多数あり、選択性が十分でないという問題点があった。従って、より高い分子選択性を有する複合多孔体が要望されている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い分子選択性を有する複合多孔体及びその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合多孔体の製造方法は、上記課題を解決するために、界面活性剤水溶液中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法において、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中に固体微粒子を混合分散させる工程と、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる工程と、固体微粒子が分散した該水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程とを含むことを特徴としている。
【0007】
上記方法によれば、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させ、また、固体微粒子を混合分散させることにより、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる。このため、3次元細孔を持つ、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を製造することができる。よって、高い分子選択性を有する複合多孔体を製造することができるという効果を奏する。
【0008】
本発明に係る複合多孔体の製造方法では、複合多孔体を形成させる工程を上記界面活性剤のクラフト点以下の温度で行うことが好ましい。
【0009】
上記方法によれば、界面活性剤のミセルからの遊離や、ミセルの再構築を抑制することができ、界面活性剤水溶液中で形成されるミセルをより規則正しく配列させることができる。また、界面活性剤水溶液中で形成した複合多孔体の劣化が起こり難い。これにより、より均一な構造を有する複合多孔体を製造することができる。よって、有機物質に対してより高い分子選択性及び分解速度を有する複合多孔体を製造することができるという更なる効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記固体微粒子が、二酸化チタンであることが好ましい。
【0011】
上記方法によれば、より高い分解速度を有する複合多孔体を製造することができる。
【0012】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記エタノールを、体積比で水1に対して0.05以上0.5以下の範囲内で上記水溶液中に混合することが好ましい。
【0013】
上記方法によれば、より高い比率で3次元細孔を持つ、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を製造することができる。
【0014】
本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記カチオン性界面活性剤は、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記多孔体が、多孔質シリカ、ゼオライト、多孔質アルミナ、多孔質シリカアルミナから選ばれる少なくとも1つの多孔体であることが好ましい。
【0017】
上記方法によれば、環境浄化や水中の有害物質除去に対する、更に高い分子選択性及び分解速度を有する複合多孔体を製造することができる。
【0018】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記多孔体が、メソポーラスシリカであることが好ましい。
【0019】
上記方法によれば、環境浄化や水中の有害物質除去に対する、更に高い分子選択性及び分解速度を有する複合多孔体を製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記多孔体が、MCM−48タイプのメソポーラスシリカであることが好ましい。
【0021】
上記方法によれば、環境浄化や水中の有害物質除去に対する、更に高い分子選択性及び分解速度を有する複合多孔体を製造することができる。
【0022】
また、本発明に係る複合多孔体の製造方法では、上記固体微粒子は、有機化合物により修飾されていることが好ましい。
【0023】
上記方法によれば、固体微粒子は多孔体により均一に含有されるため、より高い比率で3次元細孔を持つ、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を製造することができる。
【0024】
本発明に係る複合多孔体は、上記課題を解決するために、上記本発明に係る複合多孔体の製造方法により製造されたことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、多孔体の骨格が生成する前に界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させ、また、固体微粒子を混合分散させることにより、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる。このため、3次元細孔を持つ、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体となる。よって、高い分子選択性を有する複合多孔体を提供することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る複合多孔体の製造方法は、以上のように、界面活性剤水溶液中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法において、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中に固体微粒子を混合分散させる工程と、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる工程と、固体微粒子が分散した該水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程とを含むことを特徴としている。
【0027】
このため、高い分子選択性を有する複合多孔体を製造することができるという効果を奏する。
【0028】
本発明に係る複合多孔体は、上記課題を解決するために、上記本発明に係る複合多孔体の製造方法により製造されたことを特徴としている。
【0029】
このため、高い分子選択性を有する複合多孔体を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本明細書では、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0031】
本実施の形態に係る複合多孔体の製造方法は、界面活性剤水溶液中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法であり、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中に固体微粒子を混合分散させる工程(以下、単に「混合分散工程」と記する場合がある)と、多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる工程(以下、単に「エタノール混合工程」と記する場合がある)と、固体微粒子が分散した該水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程(以下、単に「形成工程」と記する場合がある)とを含む。
【0032】
(1)混合分散工程
上記混合分散工程では、界面活性剤水溶液中に、固体微粒子を混合分散する。上記多孔体と複合多孔体を形成する固体微粒子としては、マグネシア、アルミナ、シリカ、リン酸アルミニウム、ホウ素、炭素、窒化シリコン、窒化アルミニウム等無機の酸化物、塩化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、硫化物等のほか、ポリエチレン等の樹脂の粒子等、有機物等が挙げられ、特に光触媒機能を有する微粒子が好ましい。
【0033】
光触媒機能を有する微粒子(以下、「光触媒微粒子」と記する場合がある)としては、半導体としての特性を有し光触媒特性を持つ物質であれば、あらゆる物質が使用可能である。中でも、金属硫化物や金属酸化物が好ましく、チタニア、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化タングステン等の金属酸化物が最も好ましい。具体的には、TiO、SrTiO、WO、Fe、Bi、MoS、CdS、CdSe、GaP、GaAs、MoSe、CdTe、Nb、Ta、NbとTaの複合酸化物の他、HPW1240やHPMo1240等のヘテロポリ酸及びこれらの塩等が挙げられる。中でも、光触媒活性が高いことが知られているTiO(二酸化チタン)がより好ましい。尚、光触媒粒子としては、凝集していない細かい粒子状のTiO(例えば、独デグサ社製のP−25)を用いることがより好ましい。
【0034】
固体微粒子としては、平均粒径が2nm以上50,000nm以下の細孔を形成するものであることが好ましい。下限としては、5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。上限としては、5,000nm以下がより好ましく、1,000nm以下が更に好ましい。
【0035】
固体微粒子の平均直径が上記範囲より小さいと微粒子の結晶性が悪くなり、光触媒活性が低くなる。固体微粒子の平均直径が上記範囲より大きいと微粒子の表面積が小さくなるため、触媒活性が低くなる。
【0036】
固体微粒子の添加割合は、多孔体の原料と固体微粒子との合計量に対して、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましく、50重量%以上とすることが更に好ましい。上限としては98重量%以下にすることがより好ましく、95重量%以下にすることが更に好ましい。固体微粒子の添加割合を上記範囲内とすることにより、固体微粒子が良好かつ効果的に機能を発揮する。
【0037】
固体微粒子が光触媒粒子である場合、含有量が10重量%以下であると、複合多孔体の有機物質を変換する能力が十分でなく、有害な有機物質の除去や有用物質の合成が十分に行えない。また、光触媒粒子は上記範囲より多く含ませても、効果をそれ以上に向上させることはできないので、コストの面から上記上限より小さくすることがより好ましい。
【0038】
また、上記固体微粒子は、有機化合物により修飾されていることがより好ましい。本明細書中において、「有機化合物」は、触媒活性を有する化合物であっても、触媒活性を有さない化合物であってもよい。また、本実施形態において、有機化合物は、無機触媒成分と協同して作用し得る官能基を有することが好ましく、固体微粒子上に共有結合していることがより好ましい。
【0039】
有機化合物を固体微粒子上に共有結合させる方法としては、特には限定されないが、例えば、シランカップリングが挙げられる。シランカップリングには、特開2006−198503号公報に記載されているような公知のシランカップリング剤を用いればよい。
【0040】
上記シランカップリング剤としては、例えば、n−ドデシルトリエトキシシラン(CH(CH11Si(OC)、n−オクタデシルトリエトキシシラン(CH(CH17Si(OC)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(NH(CHSi(OC)、3−クロロプロピルトリエトキシシラン(Cl(CHSi(OC)、3−ブロモブチルトリエトキシシラン(Br(CHSi(OC)等が挙げられる。
【0041】
上記シランカップリング剤の中で、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン等のように長鎖アルキル基を有する化合物は、疎水基を有する反応分子を分子認識的に吸着し、その吸着配向性と反応選択性を変化させる。クロル又はアミノ基を有する有機基の場合、固体微粒子に電子供与的又は電子吸引的に作用して、固体微粒子の触媒活性等の活性及び/又は選択性を変化させる。フェノール性水酸基又はアミノ基を有する有機基の場合、反応分子中のカルボニル基と相互作用してその反応性を変化させる。
【0042】
上記界面活性剤の種類としては、特には限定されず、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の何れの種類の界面活性剤を用いてもかまわず、メソポーラスシリカの合成に用いられている種々の界面活性剤を用いることができる。これには、アルキルベンゼンスルホン酸塩のようなアニオン性界面活性剤や、ブロックコポリマー系の界面活性剤(例えば、SBA−15とよばれるメソポーラスシリカの合成に頻用されるBASF社製P123)等も含まれるが、カチオン界面活性剤を用いることがより好ましい。カチオン界面活性剤としては、直鎖アルキル基の炭素数を変えると細孔径を変化させることができるので,目的の細孔径によって直鎖アルキル基の炭素数を選ぶことができ、特に限定されないが、より規則的な細孔構造を得るためには、直鎖アルキル基の炭素数が概ね2〜24であるカチオン界面活性剤がより好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が8〜18であるカチオン界面活性剤が更に好ましく、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)が特に好ましい。
【0043】
上記界面活性剤水溶液中における界面活性剤の濃度は、特には限定されず、好ましくは0.5〜30重量%の範囲内であり、より好ましくは2〜10重量%の範囲内である。
【0044】
多孔体の原料は、固体微粒子を混合する前に界面活性剤水溶液に添加してもよく、固体微粒子混合後に添加していても構わない。
【0045】
上記多孔体の原料としては、多孔体を形成するものであれば特に限定はされず、テトラエトキシシランのような金属アルコキシドやケイ酸ナトリウムのような金属塩、その他金属酢酸塩やアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物や、これらを含むゾルやゲルが挙げられる。
【0046】
また、金属酸化物等の固体微粒子を多孔体原料として用いることもできる。この微粒子は、複合化する微粒子とは異なり、界面活性剤水溶液中でいったん溶解し、多孔体の骨格を形成する原料となる。
【0047】
また、この多孔体の原料としては、金属酸化物からなる多孔体、多孔質シリカ、ゼオライト、多孔質アルミナ、シリカアルミナ等からなる多孔体、あるいは、これらの混合物からなる、多孔体を形成できる材料が挙げられ、特にシリカアルミナの多孔体を形成するものが好ましい。中でも、メソ多孔体が、特に好ましい。その理由は、細孔径が均質となり、特定の分子を吸着する分子選択性が発現し易いからである。
【0048】
尚、混合工程では、この他に他の溶媒や、pHを調節するための酸及び塩基等を加えてもよい。
【0049】
界面活性剤水溶液中に上記固体微粒子を混合分散する方法としては、特には限定されないが、例えば、固体微粒子を界面活性剤水溶液に添加した後に、十分攪拌するか、該界面活性剤水溶液に超音波をかけて混合分散する方法等が挙げられる。
【0050】
(2)エタノール混合工程
本実施の形態におけうエタノール混合工程では、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる。この場合、エタノールに加えて、メタノールやプロパノール等の他のアルコール類を含んでいてもかまわない。但し、実施例にて後述するように、プロパノールのように疎水性が大きいアルコールの場合、アルコール分子がミセルの構造を破壊してしまうと考えられ、プロパノールを加えた場合の生成物は、エタノールのみの生成物と比べてラメラ構造の割合が多くなる。
【0051】
メタノールを加えた場合には、メタノールはエタノールと比べて疎水性が小さいため、界面活性剤の疎水部と親水部との間にアルコール分子が効率良く入ることができないが、ラメラ構造の形成は抑制される。
【0052】
従って、上記界面活性剤水溶液に混合するアルコールとしては、エタノール及びメタノール、又はエタノールのみがより好ましい。但し、メタノールはエタノールと比べて毒性が高いため、合成操作の安全性の観点から、エタノールのみを用いることが更に好ましい。
【0053】
上記界面活性剤水溶液中に混合するエタノールの割合は、特には限定されないが、体積比で水1に対して0.05以上0.5以下の範囲内であることがより好ましく、0.149以上0.189以下の範囲内であることが更に好ましい。これにより、より高い比率で3次元細孔を持つ、多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を製造することができる。
【0054】
尚、上記エタノール混合工程は、上述した混合分散工程の前に行ってもよいし、後に行ってもよいし、また同時に行ってもよい。
【0055】
(3)形成工程
形成工程は、固体微粒子が分散した界面活性剤水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程である。
【0056】
複合多孔体の形成方法としては、特には限定されないが、例えば、(i)多孔体原料を界面活性剤水溶液に添加混合する方法、(ii)多孔体原料を界面活性剤水溶液に添加混合した後、オートクレーブ等を用い水熱処理を行う方法、(iii)多孔体原料を界面活性剤水溶液に添加混合する方法により、TiOの周囲を多孔体が球状に包み込むように複合多孔体を形成(第一段階)させた後、更に多孔体原料を該界面活性剤水溶液に添加混合後、オートクレーブ等を用い水熱処理を行う方法、等が挙げられる。これらの中でも、(i)の方法が、均一な構造を有する複合多孔体を製造することができるためより好ましい。
【0057】
上記(i)の方法、及び(iii)の方法における第一段階における溶液温度は、特には限定されないが、好ましくは、用いる界面活性剤のクラフト点以下の温度である。これにより、界面活性剤のミセルからの遊離や、ミセルの再構築を抑制することができ、界面活性剤水溶液中で形成されるミセルをより規則正しく配列させることができると考えられる。よって、より均一な構造を有する複合多孔体が得られる。上記溶液温度の下限については、溶解物の析出等が生じなければ特には限定されないが、より好ましくは、クラフト点より10℃低い温度以上である。
【0058】
上記(ii)の方法、及び(iii)の方法における第二段階の水熱処理における処理温度は、溶液温度が60℃以上であり、より好ましくは、80〜150℃の範囲内である。
【0059】
得られた複合多孔体は、有機物や鋳型剤を取り除くために焼成することがより好ましい。このとき、加熱焼成の時間や温度は、多孔体が良好に形成できるように適宜設定すればよい。例えば、温度は、多孔体材料が150℃以上、より好ましくは250℃以上となるようにすればよい。また、上限としては1,000℃以下、より好ましくは800℃以下とすればよい。焼成の時間としては、1時間から10時間程度が好ましい。
【0060】
(4)複合多孔体
上述した製造方法により製造された複合多孔体は、3次元化された細孔を含んでいる。また、固体微粒子の含有割合が多くても、多孔体の細孔が保たれており、固体微粒子の結晶も崩れていない。従って、効果的に有機物質の変換等の機能を発揮するのみならず、高い分子選択性を有する複合多孔体となる。しかも、多孔体の細孔構造が崩れていないので、有機物質を良好に吸着する機能を有する。
【0061】
上記複合多孔体としては、平均細孔直径が0.5nm以上100nm以下であることが好ましい。下限としては、1nm以上がより好ましく、1.5nm以上が更に好ましい。上限としては、50nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。多孔体の細孔の平均直径が上記範囲より小さくても、大きくても、有機物質の吸着を良好に行うことができない。
【0062】
尚、後述する実施例で用いられているような比較的小さい分子が吸着対象であれば、直径0.5nm〜500nm、更に好ましくは1nm〜50nmの範囲にある細孔を有する多孔体が通常用いられる。また、溶液の拡散を促進したり流路を確保する観点からは、上記より大きな細孔を含んでいた方が有利であり、上記のような細孔に加えて直径1μm以上の大きな細孔を含む多孔体を用いることもできる。
【0063】
また、上記製造方法により製造された複合多孔体は、通常、多孔体と、多孔体の細孔径よりも大きい固体微粒子と、を含んでいるため、固体微粒子の多孔体との接触面積が小さくても、より多くの固体微粒子を多孔体に担持できる。また、固体微粒子が多孔体の細孔径よりも大きい場合、従来の、多孔体の細孔より小さい粒径の固体微粒子が、多孔体細孔内にコーティングされている場合と比べ、固体微粒子の結晶構造に与える影響が少ないので、固体微粒子の機能が良好に発揮することができる。
【0064】
この場合、多孔体細孔の直径が平均直径0.5nm以上100nm以下であり、かつ、固体微粒子の平均粒径が2nm以上50,000nm以下であることが好ましく、多孔体細孔の直径が平均直径1nm以上100nm以下であり、かつ、固体微粒子の平均粒径が10nm以上500nm以下であることがより好ましい。これにより、固体微粒子を良好に担持できる。
【0065】
そして、上記複合多孔体は、試料液に接触させながら、固体微粒子を活性化する波長領域の光を照射されることで、試料液中の有機物質を変換できる。これにより、試料液中に含まれる有害な有機物質を除去することや、試料液中に含まれる有機物質から有用物質を合成することができる。
【0066】
更に、多孔体表面に、特定の有機物質と選択的に結合したり、親和性の高い有機基を付与することで、多孔体の選択的吸着能力を高めてもよい。
【0067】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例で使用したアンモニア水の濃度は28体積%であり、エタノールは99.5体積%である。
【0069】
また、本実施例では、便宜上、下記略称を用いて説明する場合がある。
TEOS:テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate Si(OC2H5)4
CTAB:セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Cetyl trimethyl ammonium bromide)
PH :フェノール
NPP :n−プロピルフェノール
NHP :n−ヘキシルフェノール
NP :ノニルフェノール
PT :パラトルイジン
NBA :n−ブチルアニリン
NHA :n−ヘプチルアニリン
<複合多孔体による分解実験>
複合多孔体についてフェノール系、アニリン系、色素系での分解実験を行い、各試料の触媒機能を検討した。
【0070】
(1)フェノール系分解実験
PH、NPP、NHP、NPをそれぞれ1.5×10-5mol/L含む水溶液を調整し、300mLをメスシリンダーで量りとってビーカー(300mL)に注いだ。30分ごとに液体クロマトグラフィー(LC)により分析を行い、測定値がほぼ一定になることを確認した。複合多孔体を30mgとり、溶液の入ったビーカーに加えた。30分ごとにLCによる分析を行い、複合多孔体への有機物の吸着が一定となることを確認した。紫外線を照射(キセノンランプ)し、一定時間毎に溶液をサンプリングし、LCにより分析を行い、溶液中の有機物濃度の経時変化をトレースした。
【0071】
(2)アニリン系分解実験
PT、NBA、NHAをそれぞれ2.5×10-5mol/L含む水溶液を調整し、上記「フェノール系分解実験」と同様の実験を行った。
【0072】
(3)色素系分解実験
ローダミンB、メチレンブルーをそれぞれ2.6×10-6mol/L含む水溶液を調整し、300mLをメスシリンダーで量りとってビーカー(300mL)に注いだ。複合多孔体を30mgとり、溶液の入ったビーカーに加えた。紫外線を照射(キセノンランプ)し、一定時間毎に溶液をサンプリングし、UV/Vis分光光度計により最大吸収波長のピークをトレースすることで経時変化を調べた。尚、分解速度は反応開始時及び反応開始後10分後の分析値の差から算出した。
【0073】
〔粉末エックス線回折測定(XRD)〕
粉末状の複合多孔体をガラスキャビティーにのせて下記条件で測定した。
<使用機器>
株式会社マックサイエンス製 粉末エックス線回折測定装置 M18XHF−SRA
<測定条件>
測定方法 :連続スキャン法
回転陰極 :Cu Kα1 λ=1.5405Å
測定範囲 :2θ 1.5〜10
サンプリング間隔 :0.0060degree
スキャン速度 :1.5000deg/min
エックス線管球電圧 :40kV
エックス線管球電圧 :150mA
発散スリット :0.50deg
散乱スリット :0.50deg
受光スリット :0.15mm
グラファイトモノクロメーター
〔窒素吸着測定〕
複合多孔体を約30mgとり、真空加熱(200℃)排気を行った後、窒素吸着測定装置(日本ベル株式会社 高精度ガス吸着装置BELSORP−mini)により、複合多孔体の比表面積、細孔容積、及び細孔径を求めた。
<測定条件>
測定方式 :定容量型ガス吸着法
吸着ガス :窒素
前処理条件 :200℃で2時間真空排気
測定プログラム :吸脱着等温線測定
解析プログラム :吸脱着等温線測定
BET法による比表面積
DH,BJH法による細孔径分布
初期導入量 :1.5cm・g−1
測定相耐圧範囲 :0〜1.0
サンプル量 :約30mg
〔液体クロマトグラフ測定〕
液体クロマトグラフ測定は、下記条件で行った。
<使用機器>
島津製作所 液体クロマトグラフ LC−10AD
<測定条件>
移動相 :アセトニトリル/水混合溶液
移動相流量 :1cc/min
吸収検出波長 :220nm
カラム温度 :40℃
〔UV/Vis吸収スペクトル分析〕
UV/Vis吸収スペクトルは、下記条件で測定を行った。
<使用機器>
PERKIN ELMER製 Lambda 900
<測定条件>
スリット :2nm
Integration Time :0.20sec
Scanspeed :500nm/min
Gain :1
測定範囲 :800〜270nm
〔SEM像観察〕
複合多孔体の外表面の観察を行うため走査型電子顕微鏡(PERKIN ELMER製 Lambda 900)を用いた。下準備として複合多孔体を、試料台に貼り付けたカーボンテープ上に付着させ、白金蒸着後観察を行った。
【0074】
〔TEM像観察〕
複合多孔体の内部の観察を行うため、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社 ELECTRON MICROSCOPE JEM−2010)を用いた。下準備として複合多孔体をアセトンに分散させ、グリッドメッシュ上に滴下した。
【0075】
〔参考例1〜43〕
MCM48タイプのメソポーラスシリカ(以下、単に「MCM48」と略する場合がある)とTiOとの複合多孔体を合成するためには、TiOとの複合化が可能な方法でMCM48を合成することが必要である。
【0076】
MCM48の常温合成法は文献(D.Kumar et al,Coll. Surf. A, 187-188, 109-116 (2001))に記載されており、この方法で複合多孔体を合成することができる。しかし、該文献に記載の実験条件では、MCM48を得ることができなかった。そこで、MCM48の合成条件の最適化を行った。
【0077】
上記文献には、MCM48は以下のような手順で合成が可能であると報告されている。
【0078】
CTAB2.4g(6.6mmol)を脱イオン水50mLに溶かし、エタノール50mL(0.87mol)を加える。その後12mLのアンモニア水(32重量%,0.2molNH)を加えた後10分間攪拌を行い、TEOSを3.4g(16mmol)加える。2時間の攪拌後、得られた固形物をろ過、洗浄する。風乾した後823Kで6時間焼成する(HO:EtOH:NHOH:CTAB:TEOS=174:54:12.5:0.4:1)。
【0079】
(1)エタノール−水の混合比の影響(参考例1〜5)
MCM41タイプのメソポーラスシリカ(以下、単に「MCM41」と略する場合がある)の合成法とMCM48の合成法との大きな違いは、後者の合成法では反応溶液にエタノールを加える点である。エタノールはミセルを形成する界面活性剤の親水基の部分に配位し、曲率を増加させることでMCM48生成に有利となるとされる。
【0080】
このようにエタノールの働きはMCM48の常温合成法にとって重要な役割を果たしている。このため、下記表1、2に示すようにエタノールと水との混合比を変えてMCM48の合成を行った(室温)。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
各条件で得られた生成物のXRD測定の結果、エタノールが水1に対して0.18のときMCM48のパターンが現れた。しかし、そのパターンは完全にはMCM48のパターンとは一致せず、MCM41のパターンを含んでいた。この比よりもエタノールが少ないとMCM41のパターン、多いとメインピークが幅広く、サブピークがはっきりとしない規則性の悪い構造を示すパターンが生じた。
【0084】
エタノールが界面活性剤の親水基と疎水基との境界部分に入り込んだ場合はMCM48のミセルが形成されるが、そうでない場合は曲率の変化はなく、MCM41のミセルが形成されると考えられる。
【0085】
(2)アルコールの種類による影響(参考例6〜11)
界面活性剤が形成するミセルの形状を決定する要素の1つとして曲率が挙げられる。アルコールは界面活性剤の親水基と疎水基との間に入り、曲率を増加させることでMCM48のミセル形成に有利となると考えられる。
【0086】
異なる疎水性のアルコールによる生成物への影響をみるため、エタノールより炭素数が1つ少ないメタノール(表3、4)と、炭素数が1つ多いプロパノール(表5、6)について、それぞれを含む溶液において多孔体の合成を行った(室温)。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
メタノールを用いた合成ではMCM41を示すXRDパターン、プロパノールでは不規則な構造を示すXRDパターンが現れた。このことから溶媒に加えるアルコールとしてはエタノールが最も適していると考えられる。
【0092】
メタノールのように疎水性が小さいアルコールの場合、界面活性剤の疎水部と親水部との間にアルコール分子が入ることができず、また、プロパノールのように疎水性が大きいアルコールの場合、アルコール分子がミセルの構造を破壊してしまうと考えられる。
【0093】
(3)pHの影響(参考例12〜14)
pHはTEOSの加水分解速度に関与している。通常の合成ではpHを約11.8に調整しているが、pHを約11.0に下げて合成を行い(室温)、生成物への影響を確認した(表7,8)。
【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
XRD測定の結果より、アルコールとしてメタノール、エタノール、プロパノールのどのアルコールを用いても不規則構造を示すXRDパターンが現れた。
【0097】
このことより加水分解速度が遅すぎると、構造が崩れる時間的な余裕が生じるせいか規則性のよい構造の形成には不利となると考えられる。
【0098】
(4)エタノール−水混合比の影響(詳細)(参考例15〜22)
参考例1〜5の結果により、エタノールと水との比が0.18:1のときにMCM48が得られることがわかった。更に詳細な混合比の影響を確認するため、表9、10の条件で同様の合成を行った(室温)。
【0099】
【表9】

【0100】
【表10】

【0101】
XRD測定の結果より、エタノールと水との混合比が0.183〜0.158:1の範囲でMCM48のパターンが認められた。しかし、ピークはブロードであり、ピークの現れ方にはむらがあった。尚、このむらは合成温度による影響であると考えられる。
【0102】
(5)合成温度の影響(参考例23〜25)
界面活性剤はクラフト点を有し、そのミセル形成は温度により影響を受けると考えられる。そこで形成工程における温度を変化させて、表11,12の条件で合成を行った。
【0103】
【表11】

【0104】
【表12】

【0105】
各温度において得られた多孔体のXRD測定の結果、15℃の条件において、MCM48を示すXRDパターンを確認することができた。常温(25℃)ではラメラ構造を示すパターンが確認され、40℃になると不規則構造を示すパターンが確認された。
【0106】
溶液温度が高くなると界面活性剤のミセルからの遊離、再構築が頻繁になり、溶液の攪拌とあいまって規則正しく配列したミセルの形成に不利となると考えられる。
【0107】
15℃という温度は本実験で界面活性剤として用いたCTABのクラフト点(25℃)よりも低い温度である。ミセルが形成されるのはクラフト点以上のはずであるが、本合成ではクラフト点以下の温度でも多孔体が生成した。これは界面活性剤とTEOSとが協奏的にミセルを形成しているため、界面活性剤の性質だけでは一概に状態は決まらないと考えられる。また、溶液温度を15℃未満に下げるとCTABの析出が起こってしまう。従って、界面活性剤としてCTABを用いる場合には、上記溶液温度を15℃以上25℃以下の範囲内とすることが好ましい。
【0108】
(6)CTAB濃度の影響(参考例26〜28)
CTABは溶液中でTEOSと協奏的にミセルを形成し、シリカ多孔体の鋳型となる。界面活性剤の溶液において形成されるミセルの形状はCTAB濃度と温度とに依存する。また他成分(Si等)と協奏的にミセルを形成する場合、その比も重要である。このような背景より、CTAB濃度を変えて合成を行い(表13,14)、その影響を検討した。
【0109】
【表13】

【0110】
【表14】

【0111】
各CTAB濃度において得られた多孔体のXRD測定の結果、それぞれの多孔体のXRDパターンには大きな違いはなかった。
【0112】
界面活性剤の濃度がcmcを下回る程低くても多孔体は形成されるという報告もある。協奏的にミセルを形成するがゆえに、必要とされる界面活性剤の量が少なく、そのため界面活性剤量の変化が多孔体の生成に対して大きく影響しなかったと考えられる。
【0113】
(7)攪拌時間の影響(参考例29〜32)
参考例1〜5に示す実験操作においてTEOSを加えると数分後に溶液が白く濁り、シリカの形成が確認できる。この状態のシリカはまだ完全に構造が固定しておらず、他の処理(水熱処理,焼成等)により変化する柔軟な構造である。攪拌中に構造が変化している可能性も考えられるため、攪拌時間の違いによる生成物への影響を確認した。
【0114】
【表15】

【0115】
【表16】

【0116】
XRD測定の結果、各多孔体のXRDパターンには大きな違いは見られなかった。柔軟な構造の多孔体は後の処理によりその構造を変え得るが、常温における攪拌程度ではその構造を大きく変えないことが確認された。
【0117】
(8)エタノールと水との混合比の影響(15℃)(参考例33〜40)
参考例23〜25の結果を受け、15℃の条件において再度エタノールと水との混合比が与える影響について検討を行った。
【0118】
【表17】

【0119】
【表18】

【0120】
15℃の条件で各混合比において得られた多孔体のXRD測定の結果、エタノールと水との混合比が0.189〜0.149:1の範囲でMCM48のパターンが認められた。
【0121】
今後のRT合成ではMCM48の生成が確認できた混合比のうち、中間的な値である0.17を選ぶことにした。
【0122】
(9)アルコールの混合による影響(参考例41〜43)
エタノールをべースとしてメタノール又はプロパノールを加えることで、曲率をよりMCM48形成に適した値へと調節することを試みた。
【0123】
【表19】

【0124】
【表20】

【0125】
各混合割合において得られた生成物のXRD測定の結果、プロパノールを加えた場合の生成物は、エタノールのみの生成物と比べてラメラ構造の割合が多くなってる。メタノールを加えて得られた生成物はラメラ構造の形成が少ない。メタノールを加えることによりラメラ構造の形成を抑制できることがわかったが、大きな改善とはならず、またメタノールの使用に特別な注意(毒性等)が必要であるため、アルコールとしてエタノールのみを使用することがより好ましい。
【0126】
上述した参考例1〜43の結果より、合成法を以下のように見直した。
【0127】
CTAB2.4g(6.6mmol)を脱イオン水60mLに溶かし、エタノール40mL(0.70mol)を加える。その後15mLのアンモニア水(28重量%,0.2molNH)を加え、pHを約11.8にする。溶液の温度を15℃に調節し、攪拌しながらTEOS3.4g(16mmol)を一度に加える。2時間の攪拌後、得られた固形物をろ過、洗浄する。風乾した後約3時間かけて電気炉を813Kにし、6時間焼成する(HO:EtOH:NH:CTAB:TEOS=240:42:14:0.4:1、HO/EtOH=5.3〜6.7)。尚、この合成法で得られた生成物を「RT」、上記合成方法を「RT法」と呼ぶ。
【0128】
〔参考例44〜54〕<水熱処理によるMCM48−TiO複合多孔体の合成>
MCM41を合成した後、オートクレーブを用いて水熱処理を行うことでMCM48へと相変化させることができるという報告がある(例えば、Karl W. Gallis and Christopher C. Landry Chem. Mater. 9, 2035-2038 (1997)参照)。そこでMCM41複合多孔体を合成し、その後水熱処理を行い、多孔体部をMCM48とすることでMCM48−TiO複合多孔体を合成することを試みた。上記報告では、以下のような方法でMCM41をMCM48へと相変化させることができると報告されている。
【0129】
CTABを2mol/LのNaOH水溶液に入れ、35〜40℃に加熱して界面活性剤を溶かす。TEOSを加えると約5分後に析出が起こる。攪拌を行いながら室温に戻した後、オートクレーブを用い150℃で水熱処理を行う。析出が起こってからの攪拌は2時間、水熱処理は4時間が適当である(SiO:NaO:CTAB:HO=8.4:2.1:1.0:1108.9、HO:NaOH:CTAB:TEOS=132:0.5:0.12:1)。
【0130】
上記方法ではMCM48への転移は見られなかった。そこで水熱時間を変えて条件の検討を行った(表21、22参照)。
【0131】
【表21】

【0132】
【表22】

【0133】
その結果、水熱時間が16〜20時間のときMCM−48を示すXRDパターンが確認できた。よって、合成法を以下のように見直した。
【0134】
CTAB0.73gを0.2mol/LのNaOH水溶液40mLに入れ、35〜40℃に加熱して界面活性剤を溶かす。強く攪拌しつつTEOSを加え、析出が起きた後約2時間攪拌を続ける(この時点ではMCM41)。オートクレーブに反応溶液を移し、150℃で水熱処理を16〜20時間行う。尚、この条件によって合成した生成物を「HT」、上記合成方法を「HT法」と呼ぶ。
【0135】
〔参考例55〜57〕<ジェミニ型界面活性剤を用いたMCM48の合成>
下記合成により得たジェミニ型界面活性剤を用いて以下の表23、24に示す条件で多孔体の合成を行った。
【0136】
<ジェミニ型界面活性剤の合成>
末端ジブロモアルカン(CBr)と当量で5〜10%過剰のアルキルジメチルアミン(CsN(CH)とを脱水エタノール中で48時間環流する。MCM48に適するとされるジェミニ型界面活性剤(Cm−s−m)はC22−12−22である。
【0137】
文献(R. Zana, M. Benrraou, and R. Rueff Languir. 7, 1072-1075 (1991))の合成法を参考に以下の方法でジェミニ型界面活性剤を合成した。
【0138】
三角フラスコにエタノールとモレキュラーシーブを入れ、蓋をした後ドライボックスに移した。ドライボックス中で1,6−ジブロモヘキサン4.3g(0.02mol)とN,N−ジメチル−n−ドデシルアミン10g(0.041mol)とをエタノール50mLの入った反応容器に入れ、環流装置を組み立てた。装置をドライボックスから出して48時間環流を行った(オイルバス温度約100℃)。反応後、エタノールを蒸発させ、冷却することでジェミニ型界面活性剤(GS)を得た。
【0139】
【表23】

【0140】
【表24】

【0141】
多孔体の合成を行った結果、ジェミニ型界面活性剤/TEOS=0.4,1.2での合成では何れの場合もMCM41が生成していた。また、エタノールを加えた溶液での合成(EtOH/HO=0.17)においては規則性の悪い多孔体が生じた。
【0142】
今回合成したジェミニ型界面活性剤は、文献に記載の化合物とは架橋部、疎水部共に炭素数が異なり、そのためMCM48の生成には適さなかったと考えられる。
【0143】
〔実施例1〕<MCM48−TiO複合複合多孔体体の合成>
上記最適化後の合成法(RT法)でMCM48−TiO複合多孔体を以下の方法により合成した。
【0144】
CTAB2.4g(6.6mmol)を脱イオン水60mLに溶かし、エタノール40mL(0.70mol)を加えた。その後15mLのアンモニア水(28重量%,0.2molNH)を入れ、TiO(独デグサ社製、P−25)を1.48gを加えた。20分ソニケイションを行い、TiOを分散させた。pHが約11.8であることを確認した後、溶液の温度を15℃に調節し、強く攪拌しながらTEOS3.4g(16mmol)を一度に加えた。2時間の攪拌後、得られた固形物をろ過、洗浄した。風乾した後、約3時間かけて電気炉を813Kにし、6時間焼成した(HO:EtOH:NHOH:CTAB:TEOS=240:42:14:0.4:1、EtOH:HO=0.175:1、TiO:(SiO+TiO)=0.6:1)。尚、上記合成法により得た複合多孔体を「RT−P25−60」と呼ぶ。
【0145】
また、同様の操作により、TiOの割合(重量換算)を30%(「RT−P25−30」)、15%(「RT−P25−15」)に変更した複合多孔体の合成を行った。
【0146】
RT−P25−15のXRD測定結果を図1に、窒素吸着測定結果を表25にそれぞれ示す。XRD測定の結果では、焼成前後共にMCM48を示すパターンが見られなかった。窒素吸着測定結果については、MCM48多孔体と比べ、RT−P25−15複合多孔体ではやや大きい細孔直径を形成していることが確認された。しかし、RT−P25−15複合多孔体においても大きな表面積と細孔容積は保っており、複合化は問題なく起こっていると考えられる。
【0147】
また、SEM像及びTEM像の観察結果を図2,3に示す。図2,3より、TiO粒子は球状に多孔体に包まれていることがわかった。
【0148】
また、RT−P25−30、RT−P25−15のXRD測定結果を図4、5に、窒素吸着測定結果を表25に示す。
【0149】
図4、5に示すように、RT−P25−15、RT−P25−30共に焼成前の複合多孔体ではMCM48のパターンが確認されたが、焼成後そのパターンは消失していた。焼成前に存在した構造が焼成によって失われることは考えにくい。TiOを含有させることによるピーク強度の減少によってXRDパターンの確認が難しくなっただけであり、MCM48の構造は焼成後も残っていると考えられる。
【0150】
細孔特性に注目すると細孔直径はRT−P25−15、RT−P25−30複合多孔体共にMCM48多孔体の直径に近く、およそ1.9nmであった。このことからMCM48の生成が強く示唆される。また、RT−P25−60、RT−P25−15、及びRT−P25−30の合成上の違いはTiOの割合だけであり、他の条件は同一であるため、RT−P25−60においてもMCM48が生成していると考えられる。
【0151】
〔実施例2〕<水熱処理によるMCM48−TiO複合多孔体の合成>
参考例44〜54の結果に基づいて、以下のように複合多孔体の合成を行った。
【0152】
CTAB0.73gを0.2mol/LのNaOH水溶液40mLに入れ、35〜40℃に加熱して界面活性剤を溶かした。TiO(独デグサ社製、P−25)を1.5g加えて20分間ソニケイションを行った。強く攪拌しつつTEOS3.4g(16mmol)を加え、析出が起きた後約2時間攪拌を続けた(この時点ではMCM41複合多孔体)。オートクレーブに反応溶液を移し、150℃で水熱処理を18時間行った。尚、上記の方法で得た複合多孔体を「HT−P25−60」と呼ぶ。
【0153】
また、同様の操作により、TiOの割合(重量)を30%(「HT−P25−30」)、15%(「HT−P25−15」)に変更した複合多孔体の合成を行った。
【0154】
XRD測定結果を図6に、窒素吸着測定結果を表25に示す。図6は、HT−P25−60の(a)焼成前、(b)水熱処理18h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【0155】
図6に示すように、焼成前後共にはっきりとしたXRDパターンは見られず、MCM48の生成は確認できなかった。細孔特性についてみると、細孔直径が2.7nmとなっており、水熱合成によって得られたMCM48多孔体の直径2.1nmと比べて大きく、MCM41と同じ値であった。以上のように本実施例の複合多孔体についてはMCM48の生成を示す分析結果が得られなかった。
【0156】
上記複合多孔体についてのSEM像及びTEM像を図7、8に示す。SEM像からはTiO粒子(直径約25nm)の一部が複合多孔体の外へ漏れ出てしまっている様子が観察できた。TEM像にはTiO粒子が多孔体に包まれている様子が確認できた。一部多孔体の外に出てしまっている粒子が存在するが、大部分のTiOは多孔体に包まれていることが確認できた。
【0157】
〔実施例3〕<二段階合成法によるMCM48−TiO複合多孔体の合成>
HT法により、多孔体のみの場合では、完全なMCM48を生成させることができた。しかしながら、実施例2に示すように、複合多孔体においてはMCM48の生成を示すはっきりとしたXRDパターンは認められなかった。両者の合成の違いはTiOの添加の有無であり、TiO粒子がMCM48の生成を阻害している可能性がある。RT合成ではTiOの周囲を多孔体が球状に包み込むように複合多孔体を形成する。そのため一段階目にRT法でTiO粒子を多孔体で覆い、二段階目にHT法を用いることによりMCM48複合多孔体の合成を試みた。
【0158】
<第一段階>
CTAB2.4g(6.6mmol)を脱イオン水60mLに溶かし、エタノール40mL(0.70mol)を加えた。その後15mLのアンモニア水(28重量%,0.2molNH)を入れ、TiO(独デグサ社製、P−25)を1.48gを加えた。20分ソニケイションを行い、TiOを分散させた。pHが約11.8であることを確認した後、溶液の温度を15℃に調節し、強く攪拌しながらTEOS Xgを一度に加えた。2時間の攪拌後、得られた固形物をろ過、洗浄した。風乾した後約3時間かけて電気炉を813Kにし、6時間焼成した。
【0159】
<第二段階>
CTAB0.73gを0.2mol/LのNaOH水溶液40mLに入れ、35〜40℃に加熱して界面活性剤を溶かした。第一段階で合成した多孔体で被覆後のTiOを加えて20分間ソニケイションを行った。強く攪拌しつつTEOS Ygを加え、析出が起きた後約2時間攪拌を続けた(この時点ではMCM41複合多孔体)。オートクレーブに反応溶液を移し、150℃で水熱処理を16時間行った。尚、X+Y=3.5g、TiO/(TiO+SiO)=0.6となるように合成を行った。
【0160】
上記の方法で得た複合多孔体を「RTxHTy−P25−60」と呼ぶ(例えば、第一段階にTEOS1.0g、第二段階目にTEOS2.5gを用いたTiO60%複合多孔体の場合、RT1.0HT2.5−P25−60と呼ぶ。
【0161】
XRD測定結果を図9〜11に、RT1.5HT2.0−P25−60の窒素吸着測定結果を表25に示す。図9は、RT0.5HT3.0−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフであり、図10は、RT1.0HT2.5−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフであり、図11は、RT1.5HT2.0−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【0162】
図9〜11に示すように、何れも幅広いピークが2.5°付近に観察されるのみであり、MCM41やMCM48の生成を示す特有のパターンは得られなかった。窒素吸着測定の結果では、通常のHT合成における生成物と同じく、細孔直径は2.7nmであり、MCM41の値と等しかった。
【0163】
60%複合多孔体においてMCM48が生成しているかどうかを検討するため、TiOの含有量が15%、30%の複合多孔体を合成し、比較を行った。XRD測定結果を図12に示す。図12は、(a)X=15%、(b)X=30%、(c)X=60%、におけるRT0.5HT−P25−XのXRD測定結果を示すグラフである。
【0164】
図12に示すように、15%の複合多孔体についてMCM48のピークパターンが認められた。それ以上のTiOを含む場合は生成を示すパターンは見られなかったが同様の処理を行った複合多孔体であるためMCM48の生成が起こっていると考えられる。
【0165】
〔実施例4〕<有機化合物で修飾したTiOを用いた複合多孔体の合成>
有機化合物で修飾されたTiOを用いれば、TiO粒子(独デグサ社製、P−25)が多孔体にうまく包括され、より高活性の複合多孔体が得られることがわかっている。これを受け、有機化合物で修飾したTiOを用いて複合多孔体を合成した。
【0166】
<有機化合物で修飾したTiOの合成>
TiO(独デグサ社製、P−25)を真空中200℃で2時間乾燥させ、水分を取り除いた。ドライボックス中で脱水トルエン60mLにTiOを3gとシランカップリング剤15gとを入れた。反応容器内をArガスで満たした状態でドライボックスから取り出し、24時間環流を行い、TiOを有機修飾した。尚、シランカップリング剤としてn−オクタデシルトリエトキシシラン(CH(CH)17Si(OC))を用いた。
【0167】
反応終了後、ドライボックス中でトルエンにより洗浄を行った。試料を取り出し、メタノール洗浄後、約50℃で5時間真空乾燥を行うことにより、有機化合物で修飾したTiOを合成した。
【0168】
<有機化合物で修飾したTiOを用いた複合多孔体の合成>
TiO粒子(独デグサ社製、P−25)を用いる替わりに、有機修飾を行った上記TiOを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、複合多孔体(RT−C18P25−60)を合成した。
【0169】
XRD測定結果を図13に、窒素吸着測定結果を表25に示す。XRD測定についてはこれまでの複合多孔体と同じく、はっきりとしたパターンは見られなかった。しかし、窒素吸着測定の結果、その細孔直径はMCM48多孔体の直径に近いことがわかった。このことからC−18P25を用いた複合多孔体は、MCM48をより高い割合で含んでいると考えられる。
【0170】
〔実施例5〕
TiO粒子(独デグサ社製、P−25)を用いる替わりに、実施例4の有機修飾を行ったTiOを用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行い、複合多孔体(HT−C18P25−60)を合成した。
【0171】
XRD測定結果を図14に、窒素吸着測定結果を表25に示す。XRDパターンは低角から強度が落ちる形で崩れてしまっている。また窒素吸着測定結果には毛管凝縮がほとんど見られなくなっており、また、外表面積が大きくなっている。これらのことから、有機修飾を行ったTiOを用いたHT法による複合多孔体の合成では複合多孔体の構造はかなり崩れてしまっていると考えられる。
【0172】
〔比較例1〕<MCM41−P25−60の合成>
界面活性剤のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.86gをイオン交換水46gに加温しながら溶かした。アンモニア水を加え、pHを11.8に調整した。その溶液に、TiO粒子(独デグサ社製、P−25)を1.46g加え、超音波を20分間かけてよく分散させた。次に、激しく撹拌させながら、テトラエトキシシラン3.38gを一気に加え1時間撹拌した。生成物をろ過し、イオン交換水で洗浄した後、一晩80で乾燥させ、最後に540℃で6時間焼成し、界面活性剤を除去することにより、MCM41−P25−60を合成した。
【0173】
【表25】

【0174】
<分解実験結果について>
上記実施例及び比較例にて合成した各複合多孔体について各分解実験を行った結果を表26に示す。また、RT−P25−60、HT−P25−60、MCM41−P25−60の各フェノール系分解実験の経時変化を示すグラフを図15〜17に示す。尚、図15〜17中、Y軸と平行な破線は、分解開始時間を表す。
【0175】
【表26】

【0176】
*1)活性比=(NP分解速度)/(酸化チタン(P−25)のNP分解速度)
*2)速度比=(分解速度)/(NP分解速度)
RT−P25−60のフェノール系の分解実験では、MCM41−P25−60と比べてノニルフェノールの分解速度が高かった。またMCM41−P25−60には見られなかったn−ヘプチルフェノールとノニルフェノールとの分解選択性が生じていた。
【0177】
HT−P25−60のフェノール系の分解実験では、MCM41−P25−60と比べ全体的に分解速度が低かった。しかし、RT−P25−60にも見られたようにn−ヘプチルフェノールとノニルフェノールとの分解選択性が生じていた。アニリン系の分解実験では、全体的に分解速度が低くなっていた。
【0178】
RT1.5HT2.0−P25−60を用いて各分解実験を行った結果では、フェノール系、アニリン系の分解実験共にHT−P25−60とほぼ同一の結果となった。HT−P25−60とRT1.5HT2.0−P25−60とに共通する点は水熱処理を行っていることであり、水熱処理中に複合多孔体表面へのシリカの析出や腐食が起こり、活性が低くなると考えられる。
【0179】
RT−C18P25−60のフェノール系の分解実験では、活性はRT−P25−60と比べてやや劣るが、フェノール、n−プロピルフェノールの分解が少なくなり、選択性は向上していた。この選択性の向上は有機修飾によりTiO粒子が多孔体に完全に包括されたことに起因すると考えられる。
【0180】
HT−C18P25−60のフェノール系の分解実験では、活性はHT−P25−60よりも低かった。HT−P25−60の活性が低い理由の一つとして、TiO粒子の表面へのシリカの析出が考えられる。有機修飾を行うことで粒子表面に層状に界面活性剤が並びやすくなり、水熱処理のような攪拌のない状況ではそのままシリカの析出が起こると考えられる。
【0181】
大きな分子構造を有する有機化合物であるローダミンBとメチレンブルーとをモデルに選び、その混合溶液の分解実験をP−25、MCM41−P25−60、RT−P25−60、RT−C18P25−60、RT−C18P25−60について行った結果では、P−25はローダミンB及びメチレンブルーの分解速度はほぼ同程度で、選択性が無いのに対して、複合多孔体ではローダミンBの分解よりもメチレンブルーの分解が速く、選択性が生じることがわかった。全体的に複合多孔体への吸着はローダミンBの方が多いが分解速度はメチレンブルーの方が大きい。
【0182】
また、MCM41−P25−60、RT−P25−60については分解速度がP−25よりも速くなっていた。有機修飾を行ったTiOを用いて合成した複合多孔体についてはその活性は対応する非有機修飾TiOの複合多孔体よりも低くなっていた。
【0183】
有機修飾したTiOでは表面に本合成で用いたエタノールが配位すると考えられる。エタノールは界面活性剤の曲率を増加させる効果があり、ミセルはその曲率の増加と共にヘキサゴナル、キュービック、ラメラへと相を変化させる。このためエタノールを含む溶媒中で有機修飾TiOを用いた複合多孔体合成を行うと、表面にラメラ相から生じたシリカ膜が生成し、活性を下げると考えられる。
【0184】
また、図18に、複合多孔体への吸着量と分解速度との関係を示すグラフを示す。尚、各プロットは、複合多孔体への吸着量が低い化合物から順に、フェノール、プロピルフェノール、ヘプチルフェノール、ノニルフェノールを示す。
【0185】
図18に示すように、RT−P25−60では、複合多孔体への吸着量と分解速度とは正の相関を示しており、分解の選択性は、分子吸着の選択性に起因していると考えられる。また、RT−P25−60は、MCM−41−P25−60と比較して、複合多孔体への吸着量に対する分解速度が速く、効率よく分解をしていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明の複合多孔体は、高い分子選択性を有する。よって、有害な有機物質の選択的分解ができ、水や空気から極低濃度の有害物質を選択的に除去することができる。この技術は、あらゆる分野での浄化、有害物質除去に利用することができる。特に上水浄化や下水処理等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】RT−P25−60のXRD測定結果を示すグラフである。
【図2】RT−P25−60のSEM像を示す図面である。
【図3】RT−P25−60のTEM像を示す図面である。
【図4】RT−P25−15のXRD測定結果を示すグラフである。
【図5】RT−P25−30のXRD測定結果を示すグラフである。
【図6】HT−P25−60の(a)焼成前、(b)水熱処理18h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【図7】HT−P25−60のSEM像を示す図面である。
【図8】HT−P25−60のTEM像を示す図面である。
【図9】RT0.5HT3.0−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【図10】RT1.0HT2.5−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【図11】RT1.5HT2.0−P25−60の(a)RT法による被覆後、(b)HT法水熱処理16h後、(c)焼成後、におけるXRD測定結果を示すグラフである。
【図12】(a)X=15、(b)X=30、(c)X=60、におけるRT0.5HT−P25−XのXRD測定結果を示すグラフである。
【図13】RT−C18P25−60のXRD測定結果を示すグラフである。
【図14】HT−C18P25−60のXRD測定結果を示すグラフである。
【図15】RT−P25−60のフェノール系分解実験の経時変化を示すグラフである。
【図16】HT−P25−60のフェノール系分解実験の経時変化を示すグラフである。
【図17】MCM41−P25−60のフェノール系分解実験の経時変化を示すグラフである。
【図18】複合多孔体への吸着量と分解速度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤水溶液中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法において、
多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中に固体微粒子を混合分散させる工程と、
多孔体の骨格が生成する前に、界面活性剤水溶液中にエタノールを混合させる工程と、
固体微粒子が分散した該水溶液中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程とを含むことを特徴とする複合多孔体の製造方法。
【請求項2】
複合多孔体を形成させる工程を上記界面活性剤のクラフト点以下の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項3】
上記固体微粒子が、二酸化チタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項4】
上記エタノールを、体積比で水1に対して0.05以上0.5以下の範囲内で上記水溶液中に混合することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項5】
上記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項6】
上記カチオン性界面活性剤は、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)であることを特徴とする請求項5に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項7】
上記多孔体は、多孔質シリカ、ゼオライト、多孔質アルミナ、多孔質シリカアルミナから選ばれる少なくとも1つの多孔体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項8】
上記多孔体が、メソポーラスシリカであることを特徴とする請求項7に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項9】
上記多孔体が、MCM−48タイプのメソポーラスシリカであることを特徴とする請求項8に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項10】
上記固体微粒子は、有機化合物により修飾されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の複合多孔体の製造方法により製造されたことを特徴とする複合多孔体。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230916(P2008−230916A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73602(P2007−73602)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年1月12日 特定領域研究「光機能界面の学理と技術」事務局発行の「平成13〜18年度 文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究 光機能界面の学理と技術 平成18年度第2回全体会議 平成19年1月12日(金)〜13日(土) パピヨン24内 ガスホール」に発表
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】