説明

複合導電性粒子粉末、該複合導電性粒子粉末を含む導電性塗料並びに積層セラミックコンデンサ

【課題】 本発明は、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ熱収縮特性及び耐酸化性に優れると共に、導電性塗料中における分散性に優れた複合導電性粒子粉末、該複合導電性粒子粉末を含有する導電性塗料並びに積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】 ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が均一に被覆されている複合粒子粉末からなる複合導電性粒子粉末は、ニッケル粒子粉末を有機溶剤に分散した懸濁液中に金属アルコキシドの溶液を加えた後、風乾後、60〜120℃で乾燥させて得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ熱収縮特性及び耐酸化性に優れると共に、導電性塗料中における分散性に優れた複合導電性粒子粉末、該複合導電性粒子粉末を含有する導電性塗料並びに積層セラミックコンデンサを提供する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に複数層積層し、高温で焼成して一体化させた物であり、一般的には、内部電極材料である金属微粉末をバインダー中に分散させてペースト化し、該ペーストをセラミックスグリーンシート上に印刷し、該印刷した基材を複数層積層させて加熱圧着した後、還元雰囲気中で加熱焼成を行うことによって作製されている。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサの内部電極としては、従来、金、パラジウム、銀−パラジウム等の貴金属が用いられていたが、コスト低減等の観点から、近年では、ニッケル等の卑金属が用いられている。
【0004】
しかしながら、ニッケル粉末を用いた場合には、貴金属を用いた場合と比べて、焼成時の熱収縮率が大きく、また、耐酸化性が劣るため、焼成時にニッケル粉末の一部が酸化されてしまい、セラミック誘電体層へ拡散するという欠点を有している。
【0005】
即ち、積層セラミックコンデンサを作製する際の焼成温度は、セラミック誘電体の種類にもよるが、一般的に用いられているBaTiOやSrTiO等のセラミック誘電体を用いる場合には、1200℃以上が必要である。一方、ニッケル粉末は、400〜500℃より熱収縮を開始するため、セラッミック誘電体層と同時焼成した場合、積層したセラッミック誘電体層とニッケル層との間に歪みが生じ、デラミネーション、クラックが生じて積層セラミックコンデンサの性能が低下することになる。
【0006】
また、近年、積層セラミックコンデンサの大容量化に伴い、より積層数を増加させる傾向にあり、一方、積層セラミックコンデンサの小型化の要求に対して、セラミック層の薄層化と共に内部電極をより薄くすることが望まれており、現在、1〜2μmである一層の厚みに対し、更なる薄層化が要求されている。
【0007】
これまでに、ニッケル粉末の熱収縮特性改善のために、ニッケル粒子表面もしくはニッケル粒子内部にチタン酸バリウム等の複合酸化物もしくは酸化物が存在するニッケル粉末が開示されている(特許文献1乃至3)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−124602号公報
【特許文献2】特開平11−343501号公報
【特許文献3】特開2000−282102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
積層セラミック部品及び積層セラミックコンデンサの小型化且つ高性能化のために、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ、内部電極材料であるニッケル粉末の熱収縮特性をセラミック誘電体層に近づけると共に、耐酸化性及び導電性塗料中における分散性に優れた導電性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0010】
即ち、特許文献1乃至3には、積層セラミックコンデンサの内部電極材として、粒子表面にチタン酸バリウム等の複合酸化物もしくは酸化物が存在するニッケル粉末が記載されているが、いずれの処理方法においても、ニッケル粒子表面へのチタン酸バリウム等の複合酸化物もしくは酸化物の被覆が均一ではないため、耐酸化性及び加熱焼成時の熱収縮特性の改善は不十分である。殊に、特許文献2及び3に記載の方法では、中和反応時に加熱するため増粘し、均一な被覆が困難となる。また、粒子内部にチタン酸バリウム等の複合酸化物もしくは酸化物が存在する場合には、電極材としての機能を複合酸化物もしくは酸化物が阻害するために好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ、内部電極材料であるニッケル粉末の熱収縮特性をセラミック誘電体層に近づけると共に、耐酸化性及び導電性塗料中における分散性に優れた導電性粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明の方法によってニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が被覆されている複合導電性粒子粉末は、ニッケル粒子表面への誘電体物質の被覆が薄く、且つ、均一であることにより、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ、熱収縮特性をセラミック誘電体層に近づけると共に、耐酸化性及び導電性塗料中における分散性に優れた導電性粒子粉末が得られることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0013】
即ち、本発明は、ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が被覆されている複合粒子粉末からなることを特徴とする複合導電性粒子粉末である(本発明1)。
【0014】
また、本発明は、誘電体物質が強誘電体であることを特徴とする前記複合導電性粒子粉末である(本発明2)。
【0015】
また、本発明は、ニッケル粒子粉末を有機溶剤に分散した懸濁液中に金属アルコキシドの溶液を加えた後、風乾後、60〜120℃で乾燥させることを特徴とする本発明1又は本発明2記載の複合導電性粒子粉末の製造法である(本発明3)。
【0016】
また、本発明は、Ti、Zr、Ba、Sr、Mg、及びCaから選ばれる少なくとも1種以上を含む金属アルコキシドを用いることを特徴とする本発明1又は本発明2記載の複合導電性粒子粉末の製造法である(本発明4)。
【0017】
また、本発明は、少なくとも導電性粒子粉末と樹脂とを含有する導電性塗料において、前記導電性粒子粉末が前記複合導電性粒子粉末であることを特徴とする導電性塗料である(本発明5)。
【0018】
また、本発明は、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層された構造を有する積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層に前記複合導電性粒子粉末を含有することを特徴とする積層セラミックコンデンサである(本発明6)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る複合導電性粒子粉末は、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ、熱収縮特性及び耐酸化性に優れると共に、導電性塗料中における分散性に優れているので積層セラミックコンデンサ用電極材料として好適である。
【0020】
本発明に係る導電性塗料は、前記複合導電性粒子粉末を用いたことにより、電極材料が塗料中で均一に分散しているので、積層セラミックコンデンサ用導電性塗料として好適である。
【0021】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、内部電極層を形成するための電極塗料として前記用導電性塗料を用いたことにより、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が抑制されているので、高性能積層セラミックコンデンサとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0023】
先ず、本発明に係る複合導電性粒子粉末について述べる。
【0024】
本発明に係る複合導電性粒子粉末は、被処理粒子であるニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が均一に被覆されている複合粒子粉末からなる。
【0025】
本発明におけるニッケル粒子粉末としては、ニッケル塩蒸気と還元性ガスと気相中で反応させる乾式法で得られたもの、熱分解性のニッケル化合物溶液を噴霧して熱分解する噴霧熱分解法で得られたもの、ニッケル塩を含む水溶液を特定の条件下、還元剤で還元析出させる湿式法で得られたもののいずれでもよく、また、ニッケル粒子表面が酸化されていてもよい。
【0026】
本発明におけるニッケル粒子粉末の平均粒子径は、0.009〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.025〜3.0μm、更により好ましくは0.045〜1.0μmである。
【0027】
本発明におけるニッケル粒子粉末のBET比表面積値は0.01〜50m/gが好ましく、より好ましくは0.05〜40m/gである。
【0028】
本発明におけるニッケル粒子粉末の熱収縮開始温度は、粒子サイズによっても異なるが、通常、300℃程度である。
【0029】
本発明におけるニッケル粒子粉末の酸化開始温度は、通常300℃程度である。
【0030】
本発明におけるニッケル粒子粉末の流動性は、粒子サイズによっても異なるが、通常、後述する流動性指数が40程度である。
【0031】
本発明における誘電体物質としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti及びZrから選ばれる1種又は2種以上の酸化物もしくは複合酸化物を用いることができ、例えば、酸化マグネシウム、又は、Ca、Sr若しくはBaのチタン酸塩又はジルコン酸塩等であり、好ましくはBaTiO、SrTiO及びその固溶体で代表される強誘電体である。熱収縮特性を考慮すれば、できるかぎり誘電体粒子として積層セラミックコンデンサの誘電体層に用いるものと同じ誘電体物質を選ぶことが好ましい。殊に、近年では、積層セラミックコンデンサの高性能化を図るため、セラミック誘電体層にはチタン酸バリウム系の強誘電体が主流となっていることから、チタン酸バリウム等の複合酸化物からなるチタン酸バリウム系強誘電体を用いることが好ましい。
【0032】
誘電体物質の被覆量は、複合導電性粒子粉末に対して0.01〜30重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、誘電体物質の付着量が少なすぎるため、熱収縮特性等を改善することができない。また、30重量%を超える場合には、粒子表面から脱離する誘電体物質が多くなり、導電性塗料中における分散性が低下すると共に、粒子表面に付着する誘電体物質が多すぎて導通が悪くなるため、電極材として不利となる。より好ましくは0.05〜25重量%、更により好ましくは0.10〜20重量%である。
【0033】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の平均粒子径は、0.01〜5.0μmが好ましい。平均粒子径が5.0μmを超える場合には、積層セラミックコンデンサを構成する内部電極の1層の厚みが厚くなり過ぎるため、小型化及び大容量化が困難となる。得られる積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化を考慮すれば、より好ましくは0.03〜3.0μm、更により好ましくは0.05〜1.0μmである。
【0034】
本発明に係る複合導電性粒子粉末のBET比表面積値は、0.01〜50m/gが好ましく、より好ましくは0.05〜40m/gである。
【0035】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の熱収縮開始温度は、700℃以上が好ましい。熱収縮開始温度が700℃未満の場合には、これを用いて得られた内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートの積層体を焼成する際に、セラミック誘電体層との熱収縮率の差から、クラックが発生しやすくなり好ましくない。より好ましくは750℃以上、更により好ましくは800℃以上、最も好ましくは850℃以上である。
【0036】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の酸化開始温度は、500℃以上であり、好ましくは550℃以上、より好ましくは600℃である。酸化開始温度が500℃未満の場合には、これを用いて得られた内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートの積層体を焼成する際に、ニッケル粒子が酸化されてセラミック誘電体層中へ拡散し易くなるため好ましくない。
【0037】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の流動性は、流動性指数55以上が好ましく、より好ましくは60以上、最も好ましくは65〜90である。流動性指数が55未満の場合には流動性が優れたものとは言い難く、導電性塗料中に分散する際に、均一に分散することが困難である。
【0038】
次に、本発明に係る導電性塗料を用いた積層セラミックコンデンサについて述べる。
【0039】
本発明に係る導電性塗料は、本発明に係る複合導電性粒子粉末、樹脂及び溶剤から構成される。必要により、可塑剤等の添加剤などを添加してもよい。以下に、本発明に係る導電性塗料について説明する。
【0040】
本発明における溶剤としては、ターピネオール、デシルアルコール、エタノール等を用いることができる。
【0041】
本発明における樹脂としては、エチルセルロース等のセルロース系樹脂及びポリビニルブチラール系樹脂を用いることができる。好ましくは、エチルセルロース等のセルロース系樹脂である。
【0042】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体に外部電極を備えた構造を有する。
【0043】
本発明におけるセラミック誘電体層に用いられるセラミック材料としては、積層セラミックコンデンサの高性能化を図るため、BaTiO、SrTiO、酸化イットリウム及びこれらの固溶体で代表される強誘電体を用いることが好ましく、より好ましくはチタン酸バリウム等のチタン酸バリウム系強誘電体である。
【0044】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、クラック発生率が3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
【0045】
次に、本発明に係る複合導電性粒子粉末の製造法について述べる。
【0046】
本発明に係る複合導電性粒子粉末は、被処理粒子粉末であるニッケル粒子粉末を水溶性の有機溶剤に分散させた懸濁液中に金属アルコキシド溶液を加え、攪拌、風乾後、60〜120℃で乾燥させることにより得ることができ、前記製造法によって、ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が均一に被覆された複合導電性粒子粉末を得ることができる。
【0047】
本発明に用いる有機溶剤としては、一般的に用いられているものであれば何を用いてもよいが、好ましくは水溶性の有機溶剤である。具体的には、エチルアルコール、プロピルアルコール又はブチルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン又はメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ又はブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール又はトリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン、オキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール又は1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等を好適に用いることができるが、より好ましくは、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤である。
【0048】
本発明に用いる金属アルコキシドを構成する金属元素としては、誘電体を形成できるものであれば何を用いてもよいが、好ましくはバリウム、チタニウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウム等である。また、アルコキシドの種類としては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、オキシイソプロポキシド、ブトキシド等を用いることができる。
【0049】
また、上記金属アルコキシドは、より均一な処理を行うために、前述の有機溶剤に予め分散又は溶解させて用いることが好ましい。
【0050】
また、上記金属アルコキシドの加水分解は、より均一に無機化合物をニッケル粒子の粒子表面に付着もしくは被覆させるために、特に水分を添加する必要はなく、有機溶剤中の水分及びニッケル粒子が有する水分により加水分解を行うことが好ましい。
【0051】
次に、本発明に係る導電性塗料の製造法について述べる。
【0052】
本発明に係る導電性塗料は、本発明に係る複合導電性粒子粉末を有機溶剤と樹脂に添加し、混練させることによって得ることができる。
【0053】
本発明における分散は、三本ロールミル、ボールミル、ニーダー等を用いることができる。
【0054】
次に、本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を詳述する。
【0055】
セラミック誘電体に樹脂及び有機溶剤を加えてボールミル等により混練したセラミックスラリーをシート状に形成し、セラミックグリーンシートを得る。次いで、セラミックグリーンシート上に導電性塗料をスクリーン印刷等によって印刷し、内部電極層を形成する。次いで、内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、熱プレスして一体化したものを焼成した後、外部電極を焼き付けることによって得ることができる。
【0056】
<作用>
本発明において最も重要な点は、ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が付着もしくは被覆しているしている複合導電性粒子粉末は、内部電極材料としての電気特性を維持しつつ、熱収縮特性及び耐酸化性に優れると共に、導電性塗料中における分散性に優れているという事実である。
【0057】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の熱収縮特性が優れている理由として、本発明者は、ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質をより均一に被覆させることができたことによるものと考えている。
【0058】
本発明に係る複合導電性粒子粉末の耐酸化性が優れている理由として、本発明者は、ニッケル粒子の粒子表面を均一に誘電体物質で被覆することにより、酸素との接触を低減できたことによるものと考えている。
【0059】
また、本発明に係る複合導電性粒子粉末を用いて得られた積層セラミックコンデンサは、クラックの発生率が低いという事実である。
【0060】
本発明に係る積層セラミックコンデンサのクラック発生率が低い理由として、本発明者は、本発明に係る複合導電性粒子粉末を内部電極物質として用いたことにより、熱収縮の開始温度がよりセラミック誘電体層に近づいたこと及び内部電極物質とセラミック誘電体層との熱収縮率の差が少なくなったことによるものと考えている。
【実施例】
【0061】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0062】
ニッケル粒子粉末及び複合導電性粒子粉末の平均粒子径は、いずれも電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0063】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0064】
複合導電性粒子に付着している誘電体物質の被覆量は、誘電体物質を構成する金属の量を、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0065】
ニッケル粒子粉末及び複合導電性粒子粉末の熱収縮開始温度は、「熱分析装置EXSTAR6000 TMA/SS(熱・応用・歪測定装置)」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定を行った。
【0066】
ニッケル粒子粉末及び複合導電性粒子粉末の酸化開始温度は、「熱分析装置EXSTAR6000 TG/DTA(示差熱重量同時測定装置)」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定を行った。
【0067】
ニッケル粒子粉末及び複合導電性粒子粉末の流動性は、パウダテスタ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、安息角(度)、圧縮度(%)、スパチュラ角(度)、凝集度の各粉体特性値を測定し、該各測定値を同一基準の数値に置き換えた各々の指数を求め、各々の指数を合計した流動性指数で示した。流動性指数が100に近いほど、流動性が優れていることを意味する。
【0068】
積層セラミックコンデンサのクラック発生率は、後述する方法によって作製した積層セラミックコンデンサを切断し、デラミネーション及び/又はクラックの発生の有無を、各試料100個ずつ金属顕微鏡を用いて目視で検査し、その発生率を求めた。
【0069】
<実施例1−1:複合導電性粒子粉末の製造>
ニッケル粒子粉末(被処理粒子1 粒子形状:球状、平均粒子径:0.22μm、BET比表面積値:3.3m/g、熱収縮開始温度:405℃、酸化開始温度:360℃、流動性指数:40)500gを、アセトン500mlに攪拌機を用いて邂逅し、ニッケル粒子粉末を含むアセトンのスラリーを得た。
【0070】
次に、前記ニッケル粒子粉末を含むアセトンのスラリー中に、チタニウムテトライソプロポキシド60.85gを分散させたアセトン溶液200ml及びバリウムイソプロポキシド54.80gを分散させたアセトン溶液200mlを加え、60分間攪拌・混合させた。
【0071】
得られた混合溶液をドラフト中で3時間風乾させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性粒子粉末を得た。
【0072】
得られた複合導電性粒子粉末は、平均粒子径が0.26μmの球状粒子であった。BET比表面積値は4.7m/g、熱収縮開始温度は950℃、酸化開始温度は620℃、流動性は68であった。付着している誘電体物質量は9.08重量%(ニッケル粒子粉末100重量部に対してBaTiO換算で10重量部に相当する)であった。
【0073】
<実施例2:導電性塗料の製造>
前記複合導電性粒子粉末100重量部、ターピネオール115重量部及びエチルセルロースのターピネオール溶液(エチルセルロースの含有量:20重量%)100重量部とを混合し、3本ロールミルを用いて混合分散させ、導電性塗料を得た。
【0074】
<実施例3−1:積層セラミックコンデンサの製造>
誘電体(種類:BaTiO、粒子形状:粒状、平均粒子径:30nm、BET比表面積値:31.5m/g)を用いて従来法で作製したセラミックスラリーをシート状に形成し、厚さ約2.8μmのセラミックグリーンシートを得た。次いで、セラミックグリーンシート上に前記導電性塗料をスクリーン印刷によって印刷し、内部電極層を形成した。次いで、該内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、熱プレスして一体化したものを還元雰囲気下、1300℃で2時間焼成した後、外部電極を焼付けることによって積層セラミックコンデンサを得た。
【0075】
得られた積層セラミックコンデンサのクラック発生率は0%であった。
【0076】
前記実施例1−1〜3−1に従って複合導電性粒子粉末、導電性塗料及び積層セラミックコンデンサを作製した。各製造条件及び得られた複合導電性粒子粉末及び積層セラミックコンデンサの諸特性を示す。
【0077】
被処理粒子1〜3:
被処理粒子粉末として表1に示す特性を有するニッケル粒子粉末を用意した。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1−2〜1−6、比較例1:
被処理粒子粉末の種類、表面処理工程における有機溶剤の種類、表面処理剤の種類及び添加量を種々変化させた以外は、前記実施例1−1と同様にして複合導電性粒子粉末を得た。
【0080】
このときの製造条件を表2に、得られた複合導電性粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0081】
比較例2(特開平11−343501号公報 実施例6の追試実験)
ニッケル粒子粉末(粒子形状:球状、平均粒子径:0.22μm、BET比表面積値:3.3m/g、熱収縮開始温度:405℃、酸化開始温度:360℃、流動性指数:40)100gを純水1L中に加えて攪拌し、スラリー化した。30分攪拌した後、過酸化水素水100gを一括添加し、反応が終了し泡が出なくなった時点で攪拌を停止し、濾過、乾燥し、表面酸化処理ニッケル微粉末を得た。
【0082】
表面酸化処理ニッケル微粉末100gを純水1L中に加えて攪拌してスラリー化し、これを60℃に加熱した後、硫酸チタン溶液(Ti:5wt%)3.9gを一括添加した。さらに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:1N)を加えてpHを8に調整し、1時間攪拌した。次いで、これを濾過し、リパルプを1回行った後、また濾過した。こうして得られたケーキを純水1L中に加えてスラリー化した。そして塩化バリウム2.62gを湯に溶かした溶液を一括添加した。さらに水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:1N)を加えてpHを12以上に調整し、そのまま1時間程度攪拌した後、濾過、乾燥してBaTiO酸化物が存在する複合ニッケル微粉末を得た。
【0083】
得られた複合ニッケル微粉末の諸特性を表3に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
<積層セラミックコンデンサ>
実施例3−2〜3−6、比較例3〜7:
導電性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例3−1の積層セラミックコンデンサの製造と同様にして積層を得た。
【0087】
このときの製造条件及び得られた積層セラミックコンデンサの諸特性を表4に示す。
【0088】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る複合導電性粒子粉末は、熱収縮特性及び耐酸化性に優れると共に、導電性塗料中における分散性に優れているので積層セラミックコンデンサ用電極材料として好適である。
【0090】
本発明に係る導電性塗料は、前記複合導電性粒子粉末を用いたことにより、電極材料が塗料中で均一に分散しているので、積層セラミックコンデンサ用導電性塗料として好適である
【0091】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、内部電極層を形成するための電極塗料として前記用導電性塗料を用いたことにより、クラックやデラミネーション等の構造欠陥が抑制されているので、高性能積層セラミックコンデンサとして好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル粒子の粒子表面に誘電体物質が被覆されている複合粒子粉末からなることを特徴とする複合導電性粒子粉末。
【請求項2】
誘電体物質が強誘電体であることを特徴とする請求項1記載の複合導電性粒子粉末。
【請求項3】
ニッケル粒子粉末を有機溶剤に分散した懸濁液中に金属アルコキシドの溶液を加えた後、風乾後、60〜120℃で乾燥させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合導電性粒子粉末の製造法。
【請求項4】
Ti、Zr、Ba、Sr、Mg、及びCaから選ばれる少なくとも1種以上を含む金属アルコキシドを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合導電性粒子粉末の製造法。
【請求項5】
少なくとも導電性粒子粉末と樹脂とを含有する導電性塗料において、前記導電性粒子粉末が請求項1又は請求項2記載の複合導電性粒子粉末であることを特徴とする導電性塗料。
【請求項6】
セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層された構造を有する積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層に請求項1又は請求項2記載の複合導電性粒子粉末を含有することを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【公開番号】特開2006−4675(P2006−4675A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177485(P2004−177485)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】