説明

複合微粒子の製造装置及び製造方法

【課題】回転体内の微粒子に遠心力を付与して、容易に微粒子の表面に略均一に付着材料を付着することができるようにすると共に、付着材料が付着された複合微粒子の回収率を高め、生産効率を向上させることができる複合微粒子の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】複合微粒子の製造装置10は、付着材料を付着させる微粒子2を収容する底面1aと側壁1bとを有する回転体1と、上記回転体1を回転させて上記回転体1内の微粒子2に遠心力を付与する遠心機3と、上記回転体1の底面1aが重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行となる鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、該傾斜角度で回転体を支持する傾斜可動手段(傾斜可動装置)4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子に付着材料を付着させて複合微粒子を形成する複合微粒子の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被付着物に付着材料を付着させる方法として、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition;PVD)や化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD)が知られている。CVD法は、気相における化学反応により被付着物に付着材料を付着させる方法である。また、PVD法は、加熱蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等により被付着物に付着材料を付着させる方法である。
【0003】
CVD法やPVD法は、被付着物を構成する材料や付着材料によって、適する方法が選択して用いられる。被付着物が微粒子である場合、比較的付着材料の選択幅が広いPVD法が多く用いられており、中でも、スパッタリング法が多く用いられている。
スパッタリング法は、He、Arガス雰囲気中に陽極と、陰極と、この陽極と陰極との間に被付着物及び付着材料(ターゲット)を設置し、両極間に電圧を印加することによって、ターゲットから叩きだされた付着材を被付着物に付着する方法である。
【0004】
被付着物が微粒子である場合、この微粒子全体に均一に付着材料を付着するために、様々な形態のスパッタリング装置が提案されている。
例えば、2つの円筒状の電極が同軸関係で内部と外部に配置され、外部の電極の内部に羽を有するスパッタリング装置(引用文献1)や、粉末を収容する回転ドラムの内部に軸方向に配置されたスパッタリング装置(引用文献2)等が提案されている。
その他、鉛直方向の断面形状が多角形である真空容器と、この真空容器を回転させる回転機構と、真空容器内に配置されたスパッタリングターゲットを備えた多角バレルスパッタ装置(引用文献3)が提案されている。このスパッタ装置は、真空容器を回転させながら真空容器に収容された微粒子の表面に付着物を付着させる。
また、筒型の回転ステージと、該回転ステージに内包される位置に付着材料の供給源とを備え、回転ステージを回転させて生じる遠心力により、粉体を回転ステージの内面に押し付けて複合粉体を製造する方法が提案されている(引用文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開昭56−41375号公報
【特許文献2】特開平5−271921号公報
【特許文献3】特開2004−250771号公報
【特許文献4】特開2008−45197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スパッタリングによる付着方法は、成膜速度(成膜レート)が低いため、長い処理時間を要し、用途によっては生産性を十分に高められないことが知られている。
一方、加熱蒸着による方法は、成膜速度が高く、生産性に優れていることが知られている。ところが、加熱蒸着による方法は、スパッタリングによる方法のように、付着材料(スパッタリングターゲット)を上方に設置し、この付着材料を下方に設置した被付着物に向けてダウンスパッタリングすることができない。
即ち、加熱蒸着による方法は、付着材料を加熱蒸発させて、被付着物に付着させるため、蒸着源(付着材料)の上方に、蒸着源(付着材料)に対向するように被付着物を設置することが必要になる。
被付着物が基板等の比較的大きいものである場合は、蒸着源(付着材料)の上方の放出域に、この蒸着源(付着材料)に対向するように、例えば、被付着物である基板を吸引固定して設置することは可能である。
【0007】
しかし、被付着物が微粒子である場合は、蒸着源(付着材料)の上方に、この蒸着源(付着材料)に対向するように複数の微粒子を設置することは容易ではない。しかも蒸着源の上方に対向して堆積された複数の微粒子の個々の微粒子に、均一に付着材料を蒸着させることは困難である。
例えば、先行文献4に提案されているように、蒸着源(付着材料)を内包した回転ステージの内面に、微粒子が遠心力によって押し付けられていれば、微粒子が蒸着源(付着材料)の放出域である蒸着源(付着材料)の上方を通過するので、微粒子に付着材料を容易に蒸着することができる。
しかし、円筒状の回転ステージの内面から製造された複合微粒子を回収することは困難であり、回収率が低下する場合がある。
【0008】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたものであり、回転体内の微粒子に遠心力を付与して、容易に微粒子の表面に略均一に付着材料を付着することができるようにすると共に、付着材料が付着された複合微粒子の回収率を高め、生産効率を向上させることができる複合微粒子の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、底面と側壁とを有する回転体内に収容された微粒子に遠心力を付与する手段と、該回転体を任意の角度に傾斜させて支持する傾斜可動手段を備えたことによって、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の複合微粒子の製造装置は、付着材料を付着させる微粒子を収容する底面と側壁とを有する回転体と、上記回転体を回転させて上記回転体内の微粒子に遠心力を付与する遠心機と、上記回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行を成す鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、該傾斜角度で回転体を支持する傾斜可動手段とを備えたものである。
【0011】
本発明の複合微粒子の製造方法は、底面と側壁とを有する回転体内に、付着材料を付着させる微粒子を収容する工程と、上記回転体を回転させて上記回転体内の微粒子に遠心力を付与する工程と、上記回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行を成す鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、任意の傾斜角度で上記回転体を支持する工程を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転体内の微粒子に遠心力を付与して、容易に微粒子の表面に略均一に付着材料を付着することができるようにすると共に、付着材料が付着された複合微粒子の回収率を高め、生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。
図1〜5は、本発明の複合微粒子の製造装置の好ましい実施形態の一例を示す説明図である。図1に示すように、本例の複合微粒子の製造装置10は、付着材料を付着させる微粒子2を収容する回転体1と、この回転体1を回転させて、回転体1内の微粒子2に遠心力を付与する遠心機3と、回転体1を任意の傾斜角度に可動し、任意の傾斜角度で回転体1を支持する傾斜可動手段4とを備える。なお、フランジ部1cの中央域は、微粒子を投入するために開口を備える。
回転体1は、底面1aと、側壁1bと、この側壁1bの一端部に底面1aと対向するように設けたフランジ部1cとを備えている。
傾斜可動手段としては、回転体1と遠心機3を支持する回動支持部材4aと、回動支持部材4aを回動させるアクチュエータ4bとを備えた傾斜可動装置4を用いることができる。なお、アクチュエータ4bとしては、例えばモータ等を使用することができる。
また、本例の複合微粒子の製造装置10は、真空雰囲気中で回転体1内の微粒子2に付着材料を付着させることができるように、真空装置(図示略)を備える。
【0014】
図1に示すように、複合微粒子の製造装置10の始動前には、回転体1は、底面1aが重力方向と直角を成す水平面となるように静止している。この回転体1内に付着材料を付着させる微粒子2を投入する。
回転体1は、微粒子の投入時に、底面1aが重力方向と直角を成す水平面となるように静止しているため、回転体1内に微粒子を投入し易くなる。
微粒子2は、直径が数μm〜数百μmのものであり、微粒子2としては、例えば鉄等の高融点の金属微粒子やカーボン微粒子等が挙げられる。
【0015】
次に、図2に示すように、回転体1を遠心機3で回転させて、回転体1内の微粒子に遠心力を加え、微粒子を回転体1の側壁1bに押し付ける。
回転体1の回転速度としては、回転体1の底面1aが鉛直方向と平行となるまで、回転体1を可動した場合であっても、微粒子が落下せず重力加速度と同じ押し付け力が作用するように、2G以上の力がかかる速度とすることが好ましい。
具体的には、回転体1の回転速が、直径約40cmの底面1aと、高さ約10cmの側壁1bとを備えた回転体1を約100回転/分で回転させる速度であることが好ましい。なお、フランジ部1cの幅は、約10cm程度であることが好ましい。
回転体1には、底面1aと対向するフランジ部1cを備えるため、回転体1を回転させて、回転体1内の微粒子2に遠心力を付与した場合であっても、微粒子2が飛び散ることなく、微粒子1を側壁1bに押し付けることができる。
【0016】
次に、図3に示すように、回転体1内の微粒子2に遠心力を付与したまま、傾斜可動手段4により回動支持部材4aを回動させて、回転体1の底面1aが重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行を成す鉛直面となるまで、任意の傾斜角度θに回転体1を可動する。
回転体1の傾斜角度(水平面に対する回動支持部材4aの角度)θは、遠心力を付与された微粒子が重力方向に落下しない角度であることが好ましい。
即ち、回転体1の傾斜角度(水平面に対する回動支持部材4aの角度)θは、回転体1の側面1bに押し付けられた微粒子2に付着材料を蒸着させ易いように、重力方向と直角を成す水平面に対して、好ましくは45°〜135°、より好ましくは80°〜100°、特に好ましくは90°である。
【0017】
複合微粒子の製造装置は、付着材料を収容した蒸着装置を備えることが好ましい。
本例の複合微粒子の製造装置10は、底面1aが鉛直方向と平行を成す角度(水平面に対して90°)となるように支持した回転体1内に蒸着装置5が設けられる。
図4(a)に示すように、底面1aが鉛直方向と平行を成す角度(水平面に対して90°)となるように支持した回転体1内に蒸着装置5を設け、蒸着装置5内に収容した付着材料5aを加熱し蒸発させて蒸着を開始する。
図4(b)に示すように、回転体1内の側壁1bに遠心力で押し付けられた微粒子2は、加熱された付着材料5aが蒸発する方向(付着材料5aの放出域)を通過するので、側壁1bに遠心力で押し付けられた複数の微粒子2のうち、表面に並ぶ微粒子2上に蒸発した付着材料が付着する。
本発明によれば、複合微粒子の製造時に、加熱蒸発された付着材料が付着し易くなる位置に、回転体を可動させて、回転体内の微粒子に付着材料を付着することができるので、製造効率を向上させることができる。
微粒子に付着させる付着材料としては、銅やビスマス等の低融点の金属単体、合金、又はパラフィンや高級脂肪酸等の有機物が挙げられる。
【0018】
本例の複合微粒子の製造装置10は、回転体1の側壁1bに遠心力で押し付けられた微粒子2を撹拌する撹拌手段を備える。
撹拌手段としては、図4(a)〜(d)に示すように、回転体1の側壁1bと平行を成す支持部材6aに、複数の棒状部材6bを同一方向に突出するように設けた櫛歯状の撹拌部材6を用いることができる。
図4(c)に示すように、撹拌部材6は、回転体1の側壁1bに押し付けられた複数の微粒子2の間に櫛歯状の棒状部材6bを挿入して、この棒状部材6bが複数の微粒子2と線接触することによって、表面側の微粒子2と側壁2b近傍側の微粒子2とを撹拌する。
撹拌部材6で微粒子2を十分に撹拌することによって、表面側の微粒子と側壁近傍側の微粒子を置換させて、微粒子の表面に略均一に付着物を付着させて複合微粒子を製造することができる。
【0019】
図4(a)〜(d)に示すように、本例の複合微粒子の製造装置10には、微粒子2に付着された付着材料の膜厚を測定する膜厚モニター7を設けることが好ましい。
図4(d)に示すように、この膜厚モニター7で、微粒子2に付着された付着材料の膜厚を測定して、任意且つ略均一な膜厚の付着材料を付着させた複合微粒子20を製造する。
なお、膜厚モニター7で測定される付着材料の膜厚の測定値と、微粒子2に実際に付着する付着材料の膜厚の実測値とは蒸着の条件等に応じて異なるため、膜厚モニターで測定した測定値と実測値との比を予め算出しておき、比例計算によって微粒子2に最適な膜厚の付着材料を蒸着させる。
【0020】
その後、図5に示すように、傾斜可動手段4により回動支持部材4aを回動させて、回転体1の底面1aを重力方向と平行を成す鉛直面から重力方向と直角を成す水平面まで回転体1を可動し、遠心機3を停止させる。
遠心機3を停止させると、回転体1の側壁1bに遠心力によって押し付けられていた複合微粒子20が重力方向に落下し、この落下した複合微粒子20を回収する。
本発明によれば、複合微粒子の回収時には、再び回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面となるように回転体を可動することができるので、製造された複合微粒子を効率よく回収することができる。
【0021】
回転体1内に収容した微粒子2を撹拌する強度が適切でないと、付着材料を略均一な膜厚で微粒子2の表面に付着させることが難しい。
即ち、回転体1内に収容した微粒子2の量が少ない場合は、撹拌手段で撹拌する強度が強いと、回転体1の側壁1bに遠心力で押し付けられている微粒子2が脱落し易いので、複合微粒子20を製造することが難しい。一方、回転体1内に収容した微粒子2の量が多い場合は、撹拌手段で撹拌する強度が弱いと、側壁1bから任意の厚さに堆積した複数の微粒子2のうち、表面側に存在する微粒子2のみ付着材料が付着し、複数の微粒子2に略均一に付着材料を付着させて複合微粒子20を製造することが難しくなる。
回転体1内に収容する微粒子2の量にかかわらず、回転体1の側壁1bに微粒子2を押し付ける遠心力を働かせる回転速度はほぼ一定であるから、回転体1内に収容する微粒子2の量、粒子径、粒子の流動性等によって撹拌手段の形態を変えることが好ましい。
【0022】
図6(a)〜(c)は、各形態の撹拌手段の概略構成を示す説明図である。
図6(a)に示すように、回転体1内に収容する微粒子2の量が多い場合、即ち、回転体1の側壁1bに遠心力によって押し付けられる微粒子2の層が厚い場合は、複数の微粒子2と面接触する面部材8aを支持部材8bに設けた撹拌部材8を用いることが好ましい。回転体1は、微粒子2に遠心力を付与する速度で回転しているので、回転している微粒子2と面部材8aが面接触することによって、各々の微粒子2自体が回転しつつ、表面側の微粒子2と回転体1の側壁1b側の微粒子2とが撹拌される。
なお、微粒子2の量が多い場合とは、直径約40cmの底面1aと、高さ約10cmの側壁1bと、幅約10cmのフランジ部1cを備えた回転体1に、遠心力によって押し付けられた微粒子2の層が約5〜8cmの厚さに堆積する量をいう。
【0023】
図6(b)に示すように、回転体1内に収容する微粒子2の量がやや少ない場合、即ち、回転体1の側壁1bに遠心力によって押し付けられる微粒子2の層がやや薄い場合は、複数の微粒子2と線接触する複数の棒状部材9aを支持部材9bに櫛歯状に設けた撹拌部材9を用いることが好ましい。この棒状部材9aを複数の微粒子2の間に挿入し、支持部材9bを回転体1の回転軸と同軸方向に往復移動させることによって、複数の微粒子2全体が均一に撹拌される。
なお、微粒子2の量がやや少ない場合とは、直径約40cmの底面1aと、高さ約10cmの側壁1bと、幅約10cmのフランジ部1cを備えた回転体1に、遠心力によって押し付けられた微粒子2の層が約3〜4cmの厚さに堆積する量をいう。
【0024】
図6(c)に示すように、回転体1内に収容する微粒子2の量が少ない場合、即ち、回転体1の側壁1bに遠心力によって押し付けられる微粒子2の層が薄い場合は、複数の微粒子2と点接触する複数の棒状部材11aを支持部材11bから放射状に突出させた撹拌部材11を用いることが好ましい。この棒状部材11aの先端を、回転体1の回転によって、量が少なく慣性モーメントが小さくなっている微粒子2と点接触させることによって、複数の微粒子2全体が均一に撹拌される。
なお、微粒子2の量がやや少ない場合とは、直径約40cmの底面1aと、高さ約10cmの側壁1bと、幅約10cmのフランジ部1cを備えた回転体1に、遠心力によって押し付けられた微粒子2の層が約1〜2cmの厚さに堆積する量をいう。
【0025】
本例の複合微粒子の製造方法は、底面と側壁とを有する回転体内に、付着材料を付着させる微粒子を収容する工程と、上記回転体を回転させて上記回転体内の微粒子に遠心力を付与する工程と、上記回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行となる鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、任意の傾斜角度で上記回転体を支持する工程を備える。
本例の複合微粒子の製造方法は、上記遠心力が付与された微粒子に、付着材料を蒸着させる工程を備えることが好ましい。また、上記遠心力が付与された微粒子を撹拌する工程を備えることが好ましい。
本発明によれば、微粒子の投入、付着、回収の各工程において、各々の工程を行い易い位置に微粒子を収容する回転体を可動することができるので、各々の微粒子の表面に略均一に付着材料を付着させ、複合微粒子の回収率を高めることができ、生産効率を向上させることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
図1〜5に示す複合微粒子の製造装置10を用いて、比重約2、平均粒子直径5μmの鉄微粒子に付着材料(ビスマス)を蒸着させた。
先ず、複合微粒子の製造装置10の回転体1の底面1a面が、重力方向と直角を成す水平面となる状態で、直径約40cmの底面1aと、高さ約10cmの側壁1bと、幅約10cmのフランジ部1cを備えた回転体1に、遠心力によって押し付けられた微粒子2の層が約3〜4cmの厚さに堆積する量の鉄微粒子を投入した。
次に、回転体1を100回転/分で回転させて、鉄微粒子に遠心力を付与して、鉄微粒子を回転体1の側壁1bに押し付けた。この状態で、回転体1の底面1aが重力方向と平行を成す鉛直面となるまで位置(傾斜角度90°)まで回転体1を傾斜可動装置4で可動した。この状態で、撹拌部材6で回転体1内の鉄微粒子を撹拌し、膜厚モニター7で膜厚を測定しつつ、ビスマスを鉄微粒子に蒸着させて複合微粒子を製造した。
その後、再び傾斜可動装置4により、回転体1の底面1aが重力方向と平行を成す鉛直面から重力方向と直角を成す水平面まで回転体1を可動し、遠心機3を停止させて、複合微粒子20を回収した。回収率は98%であった。
【0027】
(比較例)
回転体の底面が重力方向と平行を成す鉛直面となるように支持された回転体を用い、該回転体の傾斜角度を変動させないこと以外は、実施例と同様にして、複合微粒子を製造した。複合微粒子の回収率は70〜90%であった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の複合微粒子の製造装置の好ましい実施形態の一例を示す説明図である。
【図2】図1に示す複合微粒子の製造装置において、微粒子に遠心力を付与した状態を示す説明図である。
【図3】図1に示す複合微粒子の製造装置において、回転体を可動する状態を示す説明図である。
【図4】図1に示す複合微粒子の製造装置において、複合微粒子の製造工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す複合微粒子の製造装置において、製造された複合微粒子の回収時の状態を示す説明図である。
【図6】本例の複合微粒子の製造装置に用いる撹拌手段の好ましい実施形態の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1…回転体、1a…底面、1b…側壁、1c…フランジ部、2…微粒子、3…遠心機、4…傾斜可動装置、4a…回動支持部材、4b…アクチュエータ、5…蒸着装置,5a…付着物、6…撹拌部材、6a…支持部材、6b…棒状部材、7…膜厚モニター、8…撹拌部材、8a…面部材、8b…支持部材、9…撹拌部材、9a…棒状部材、9b…支持部材、10…複合微粒子の製造装置、11…撹拌部材、11a…棒状部材、11b…支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着材料を付着させる微粒子を収容する底面と側壁とを有する回転体と、
上記回転体を回転させて上記回転体内の微粒子に遠心力を付与する遠心機と、
上記回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行を成す鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、該傾斜角度で回転体を支持する傾斜可動手段とを備えた複合微粒子の製造装置。
【請求項2】
上記回転体の傾斜角度が、遠心力を付与された微粒子が重力方向に落下しない角度である請求項1に記載の複合微粒子の製造装置。
【請求項3】
上記回転体は、上記側壁の一端部に設けた上記底面に対向するフランジ部を有する請求項1に記載の複合微粒子の製造装置。
【請求項4】
上記回転体内の複数の微粒子と面接触する撹拌手段、複数の微粒子と線接触する撹拌手段、又は複数の微粒子と点接触する撹拌手段のいずれか1つを備えた請求項1に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項5】
底面と側壁とを有する回転体内に、付着材料を付着させる微粒子を収容する工程と、
上記回転体を回転させて上記回転体内の微粒子に遠心力を付与する工程と、
上記回転体の底面が重力方向と直角を成す水平面から重力方向と平行を成す鉛直面となるまで、任意の傾斜角度に上記回転体を可動し、任意の傾斜角度で上記回転体を支持する工程を備える複合微粒子の製造方法。
【請求項6】
上記遠心力が付与された微粒子に、付着材料を付着させる工程を備える請求項5に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項7】
上記遠心力が付与された微粒子を撹拌する工程を備える請求項5又は6に記載の複合微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228082(P2009−228082A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76964(P2008−76964)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】