説明

複合材料本体、それらの製造方法およびそれらの使用

ポリアセタールと、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルエラストマーとを含む複合材料であって、ポリアセタール成形品が熱可塑性ポリエステルエラストマーで一部または完全に被覆されるかまたはポリアセタール成形品上に熱可塑性ポリエステルエラストマーによって構成される1つ以上の成形品が直接成形されることにより形成されている上記複合材料が記載されている。本複合材料は、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとが熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリアセタール成形品上への射出により互いに接着または凝集により結合され、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとの間の引張接着強さが少なくとも0.5N/mm2であることを特徴とする。
本複合材料は、コネクタとして;一体となった封止特性および/または一体となった制動特性を有する機能性部材として;あるいは、滑り止めおよび握りやすい(easy-grip)
機素として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工学材料ポリオキシメチレンと、1つ以上の熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が、工学材料ポリオキシメチレン上に直接成形され、それらによって構成される機能性素子との組み合わせによって構成される複合材料;それらの製造;および、また、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
工学材料ポリアセタール、すなわち、ポリオキシメチレン(以降、POMまたはポリアセタールとも称す)は、優れた機械的特性を有し、その上、慨して、また、通常の溶剤および燃料の全てに対して抵抗性である。ポリオキシメチレンによって構成される成形品は、したがって、とりわけ、自動車の組み立てに使用され、特に、燃料搬送システムにてさえ使用される。
【0003】
ポリアセタールによって構成される成形品は、優れた弾性反撥レジリエンスと合わさった良好な強さと硬度とにより、スナップコネクター用の日常生活のあらゆる部門にて、特に、クリップにて使用されることが非常に多い。
【0004】
優れた滑り摩擦特性が、多くの可動性部品、例えば、歯車箱部品、ディフレクターロール、歯車またはシフトレバー用のポリオキシメチレンの使用の理由である。ハウジングおよびキーボードも、また、ポリオキシメチレンから製造されるが、その理由は、非常に良好な機械的抵抗性および薬品抵抗性である。
【0005】
しかし、POMは、室温で低い機械的制動因子を有し、幾つかの用途にては、これは、柔軟な制動素子の使用を必要とする。ポリオキシメチレンによって構成される成形品を設置する時、接続部位も、また、封止を必要とすることが多い。POMによって構成される成形品の表面硬度が高いほど、POMの滑り摩擦係数は、低く、重ね合わせた物品の滑りを招きやすく、POMによって構成される切換ユニットおよび制御ユニットの動作にて危険性を生じかねない。
【0006】
他方、硬質および軟質材料によって構成される組み合わせは、これら材料の個々の特性の相互組み合わせを達成するために使用され、その頻度が増加しつつあるのは事実である。硬質材料は、ここで、部材にそれらの強度を付与することを意図し、軟質材料は、弾性特性を有するので、作用が封止または振動制動および防音に関係づけられると推定されるか、または、表面の感触の変化を生じさせる。
【0007】
これらの用途にて、硬質部材と軟質部材との間に十分な接着が存在することが重要である。
これまでに使用されている方法の1つは、ガスケットと制動素子とを別個に用意し、通常、それらの機械的固定または接着剤結合のためのさらなる操作を使用するが、それゆえに、さらなる労力と、場合によっては、かなりのさらなるコストとを生ずる。さらに最新の経済的な方法は、多成分射出成形法である。この方法においては、例えば、第2の部材が先に成形された第1の部材上に成形される。2つの部材間で達成可能な接着がこの方法について非常に重要である。多成分射出成形法のこの接着は、インターロック接続内へのアンダーカットの導入によりさらに改良されうることが多いが、選択された部材間の化学的親和性による良好な基礎をなす接着がそれらの使用のための前提条件であることが多い。
【0008】
多成分射出成形法によって製造される周知の組み合わせの例は、ポリプロピレン(PP)により、および、ポリオレフィンエラストマーによるかまたはスチレン/オレフィンエラストマーによるか、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエステルエラストマーとによるかまたはスチレン/オレフィンエラストマーとにより構成される。ポリアミドも、また、多くの柔軟な部材に接着する。
【0009】
熱可塑性エラストマーは、原則的に、オーバーモールドにおける熱可塑性樹脂、例えば、POMに接着するポリウレタンエラストマー(TPEU)と組み合わせることができると言われている(Kunststoffe 84(1994) p.709およびKunststoffe 86,(1996),p.319)。これらの刊行物は、POMのTPEE(ポリエステルエラストマー)との組み合わせについての接着を記載していない。概説論文に従えば、したがって、POMとTPEEとから誘導される接着結合は、これまでに知られていない。
【0010】
EP-A-818,294は、固有のデザインを有し、第1および第2の熱可塑性材料によって構成される結合組み合わせを含む車軸またはローラを記載している。列挙されている可能な材料は、とりわけ、POMと、ポリエーテルブロックエステルを基体とする熱可塑性エラストマーとである。結合は、接着、凝集または機械的結合により生じさせることができる。接着剤または凝集POM/TPEE結合について挙げた固有の例は存在しない。このタイプの結合の生成は、問題をはらむので、その幾つかの固有の例が存在しないことは、その明細書が接着または凝集POM/TPEE結合を開示していないと解釈する必要がある。
【0011】
EP-A-816,043は、硬質熱可塑性樹脂、例えば、POMにより;および、軟質熱可塑性樹脂により構成される材料組み合わせを開示している。この文献は、POMと熱可塑性ポリアミドエラストマー類との間の接着結合の存在を示していない。
【0012】
WO-A-99/16,605に記載されている材料の組み合わせは、POM/熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む。これもまた、熱可塑性ポリエステルエラストマー類についての記載がない。
【0013】
US-A-6,082,780は、その周りに熱可塑性樹脂またはエラストマーが射出されているパイプを開示している。パイプについても、それぞれ、鞘についても、非常に多種多様なポリマーが開示されている。POMおよび熱可塑性ポリエステルエラストマー類が、とりわけ、パイプおよび/またはスリーブについての材料として列挙されている。材料間の接着剤結合システムを生じうる多数のポリマー組み合わせとともに、その文献は、また、接着を生じない多数の組み合わせも開示している。POMと熱可塑性エラストマー類との間の結合の生成は、問題をはらむので、その幾つかの固有の例が存在しないことは、その明細書が接着剤POM/TPEE結合を開示していないと解釈する必要がある。
【0014】
WO99/30,913は、回転可能なプラスチックローラを記載している。この文献は、熱可塑性ポリエステルエラストマーを開示しているが、これらのポリオキシメチレンとの組み合わせは開示していない。
【0015】
DE-A-4,109,936は、室内のドア取っ手を記載している。この文献は、“硬質プラスチック”として、とりわけ、ポリオキシメチレンを、“軟質プラスチック”として、とりわけ、熱可塑性ポリエステルエラストマー類を挙げている。この文献は、列挙した“硬質プラスチック”との接着結合に入らない列挙したその他のエラストマータイプが存在するので、ポリオキシメチレンのポリアミドエラストマー類との組み合わせ;または、それらの接着もしくは凝集結合をも示唆しているようには思われない。
【0016】
従来技術は、非常に多種多様な硬質および軟質成分の組み合わせを記載している(cf.WO01/16232 A1;DE 100 17 486 A1;JP 08/065,785;および、DE 41 09 936)。これらの文献は、多種多様な可能な硬質および軟質成分のリスト内に、それぞれ、ポリアセタールとポリエステルエラストマーとを列挙しているが、それぞれ列挙された硬質および軟質成分がランダムに組み合わせられる場合、個々のプロセステクノロジーの尺度が存在しない限り、または、かなり多くの場合、一般的な結果は、硬質成分と軟質成分との間で絶対的に接着結合をしないであろう。
【発明の開示】
【0017】
本発明の目的は、高い結合強さを特徴とし;多成分射出成形法により、ポリエステルエラストマー類によって構成される機能性素子が直接成形されたポリアセタールによって構成される新規な複合材料を提供することである。
【0018】
本発明のもう1つの目的は、高い結合強さを有し;ポリエステルエラストマー類によって構成される機能性素子が直接成形されたポリアセタールによって構成される複合材料を製造することのできる方法を提供することにある。
【0019】
本発明は、ポリアセタールと、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルエラストマーとを含む複合材料であって、ポリアセタール成形品が熱可塑性ポリエステルエラストマーで一部または完全に被覆されるかまたはポリアセタール成形品上に熱可塑性ポリエステルエラストマーによって構成される1つ以上の成形品が直接成形されることにより形成されており、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとが熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリアセタール成形品上への射出により互いに接着または凝集により結合され、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとの間の引張接着強さが少なくとも0.5N/mm2である上記複合材料を提供する。
【0020】
本発明の複合材料にて存在するか;または、それぞれ、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとの間の本発明の方法によって達成される引張接着強さは、少なくとも0.5N/mm2、好ましくは、少なくとも1.0N/mm2である。これは、十分に満足する取扱いを提供する。機能性部品については、応力にさらされる目的の為、接着が強いほど望ましい。
【0021】
いずれの所望されるポリアセタール、事実、例えば、DE-A 29 47 490に記載されている公知のポリオキシメチレン群から選択されるいずれのポリアセタールも、本発明の複合材料にて使用されるポリアセタールとして使用することができる。材料は、ここで、概して、少なくとも80mol%、好ましくは、少なくとも90mol%のオキシメチレン単位(-CH2-O-)を含有する、概して、未分岐の直鎖ポリマーである。ポリオキシメチレンという用語は、ここで、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー、例えば、トリオキサンまたはテトロキサンのホモポリマーのみならず、対応するコポリマー類をも包含する。
【0022】
ホルムアルデヒドのまたはトリオキサンのホモポリマーは、そのヒドロキシ末端が分解に関して公知のように、例えば、エステル化またはエーテル化により、化学的に安定化されているポリマー類である。
【0023】
コポリマー類は、ホルムアルデヒドによりまたはその環状オリゴマー、特に、トリオキサンによるか、環状エーテルによるか、環状アセタールによるか、および/または、直鎖ポリアセタールによって構成されるポリマー類である。
【0024】
使用することのできるコモノマー類は、 i) 3、4または5環員、好ましくは、3環員を有する環状エーテル類; ii) 5〜11環員、好ましくは、5、6、7または8環員を有するトリオキサン以外の環状アセタール;および、 iii) 直鎖ポリアセタール類であり、各場合に使用される量は、0.1〜20mol%、好ましくは、0.5〜10mol%である。
【0025】
使用されるポリアセタールポリマー類のメルトインデックス(MFR値,190/2.16)は、概して、0.5〜75g/10分(ISO 1133)である。例えば、耐衝撃性改良剤;強化性材料、例えば、グラスファイバー;または、その他の添加剤が存在するPOMの改質された等級を使用することも可能である。
【0026】
これらのうち、改質されたPOM等級は、例えば、POMと、TPEU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)とにより、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン コアーシエル エラストマー)とにより、メチルメタクリレート-アクリレート コアーシエル エラストマーとにより、PC(ポリカーボネート)とにより、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)とにより、または、ASA(アクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー配合させた材料)とにより構成されるブレンドである。
【0027】
使用される熱可塑性ポリエステルエラストマー類は、剛性ポリアミドセグメントにより、および、可撓性長鎖ポリエーテルまたはポリエステルセグメントにより構成されるマルチブロックコポリマー類を含む。
【0028】
TPEEは、それ自体公知である。これらの例は、Handbook of Thermoplastic Polyesters,Vol.1,pp.581-3,Wiley-VCH,Weinhem,2002に記載されている。
好ましい熱可塑性ポリエステルエラストマー類は、式IおよびIIで表される繰り返し構造単位を含有するコポリエステル類であり、これらは、エステル結合により互いに結合されていて、式IおよびIIが、それぞれ、
【0029】
【化1】

【0030】
[式中、Gは、ヒドロキシ基の除去後の長鎖グリコールの2価の基であり;
Dは、その分子量がヒドロキシ基の除去後に250未満である脂肪族グリコールの2価の基であり;
R1およびR2は、互いに独立に、カルボキシ基の除去後にジカルボン酸の2価の基であるが、ただし、基R2の少なくとも70mol%は、2価の芳香族基であり、コポリエステルを基体として15〜95重量%の繰り返し構造単位は、式(II)を有する。]
で表される。
【0031】
好ましい熱可塑性コポリエステルエラストマー類は、本質的に、式Iで表される上記した繰り返し長鎖エステル単位により、および、式IIで表される繰り返し短鎖エステル単位によって構成される。
【0032】
“長鎖エステル単位”という表現は、長鎖グリコールとジカルボン酸との反応生成物を示す。コポリエステル類の製造のための適した長鎖グリコール類の数平均分子量は、400〜4000であり、それらの融点は(DSC)は、55℃より低い。これらのコポリエステルエラストマー類の製造のための好ましい長鎖グリコール類は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール類であり、ここで、アルキレン部位は、2〜8個の炭素原子を有し、例は、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレン1,2-および1,3-オキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ペンタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(オクタメチレンオキシド)グリコールおよびポリ(ブチレン1,2-オキシド)グリコール;エチレンオキシドとプロピレン1,2-オキシドとのランダムまたはブロックコポリマー類であり;および、また、ホルムアルデヒドのグリコール類、例えば、ペンタメチレングリコールとの反応により得られうるポリホルマール;または、グリコール類の混合物、例えば、テトラメチレングリコールとペンタメチレングリコールとによって構成される混合物から誘導される。その他の好ましい長鎖グリコール類は、脂肪族ポリエステル類、例えば、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンスクシネートまたはポリカプロラクトンである。その他の適した長鎖高分子グリコール類は、ポリブタジエングリコールから、または、ポリイソプレングリコール類から、あるいは、これらの単位とこれらのグリコール類の対応する水素化された誘導体とによって構成されるコポリマー類から誘導される。
【0033】
使用される特に好ましい長鎖グリコール類は、その数平均分子量が600〜2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール;および、その数平均分子量が1500〜2800であり、それが15〜35%のエチレンオキシドを含有するエチレン-オキシド-キャップされたポリ(プロピレンオキシド)グリコールである。
【0034】
短鎖エステル単位は、低分子量を有するジオール類と、ジカルボン酸とのまたはジカルボン酸類の混合物との反応生成物である。
これら短鎖エステル単位の少なくとも70mol%は、芳香族ジカルボン酸類、例えば、イフタル酸、または、特に、テレフタル酸から誘導される基R2を有する。
【0035】
短鎖エステル単位を与える反応についての低分子量を有するジオール類は、その分子量が250未満である脂肪族ジオール類である。“脂肪族ジオール”という表現は、また、脂環式ジオールをも包含する。
【0036】
2〜15個の炭素原子を有するジオール類を使用することが好ましい。好ましいジオール類の例は、エチレンビスグリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシ-シクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノールならびにこれらの混合物である。
【0037】
ジオール類の代わりに、それらのエステル形成誘導体、例えば、エチレンオキシドまたはエチレンカーボネートを使用することも可能である。
記載した長鎖および短鎖エステル単位を製造するために使用することのできるジカルボン酸類は、通常、300より低分子量の脂肪族、脂環式、芳香族および/またはジカルボン酸である。
【0038】
“ジカルボン酸類”という表現は、また、それらのポリエステル形成誘導体、例えば、ジカルボン酸のハライド、エステル類または無水物も包含する。
本発明の目的に対し、“脂肪族ジカルボン酸類”とは、脂肪族または脂環式炭化水素の異なる炭素原子に結合した2つのカルボキシ基を有するカルボン酸類である。エチレン性不飽和ジカルボン酸類、例えば、マレイン酸とともに、飽和ジカルボン酸類も、特に、使用される。
【0039】
本発明の目的に対し、“芳香族ジカルボン酸類”は、ベンゼン環の異なる炭素原子に結合し、環システムの一部となりうる2つのカルボキシ基を有するカルボン酸類である。カルボキシ基は、また、異なる環の炭素原子に結合されていてもよい。複数の環は、互いに縮合していてもよく、または、架橋基、例えば、直接炭素-炭素結合、-O-、-CH2-または-SO2-によって互いに結合していてもよい。
【0040】
本発明に従い使用されるポリアミドエラストマー類の製造のために使用することのできる脂肪族または脂環式ジカルボン酸類の例は、セバチン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、炭酸、蓚酸、アゼライン酸、ジエチルジカルボン酸、2-エチルスベリン酸、2,2,3,3-テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ-1,5-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビシクロヘキシルジカルボン酸、デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-メチレンビス(シクロヘキサンカルボン酸)、3,4-フランジカルボン酸および1,1-シクロブタンジカルボン酸である。
【0041】
好ましい脂肪族カルボン酸類は、シクロヘキサンジカルボン酸およびアジピン酸である。
これらの脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、イソフタル酸、特に非常に好ましくは、テレフタル酸とともに使用される。
【0042】
本発明に従い使用されるポリエステルエラストマー類の製造のために使用することのできる芳香族ジカルボン酸類の例は、C1-12-アルキルまたはその他の置換、ハロゲン-、アルコキシ-およびアリール置換された誘導体を有する、フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;ジ安息香酸;2つのベンゼン環を有する置換されたジカルボキシ化合物、例えば、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、p-オキシ-(p-カルボキシフェニル)安息香酸、エチレンビス(p-オキシ安息香酸)、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、フェナンスレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4'-スルホニル安息香酸およびそれらの誘導体である。ヒドロキシカルボン酸、例えば、p-(ベータ-ヒドロキシエトキシ)安息香酸を使用することも可能である。
【0043】
テレフタル酸が、好ましくは、芳香族ジカルボン酸として使用される。
本発明に従い使用されるポリエステルエラストマーの短鎖エステル単位は、好ましくは、エチレンテレフタリック単位からおよび/または1,4-ブチレンテレフタリック単位から誘導する繰り返し構造単位少なくとも70mol%を有する。
【0044】
使用される特に非常に好ましいポリエステルエラストマー類は、剛性セグメントとして、ポリブチレンテレフタレート基を、可撓性セグメントとして、ポリテトラメチレンオキシドを基体とするポリエーテルエステル類である。
【0045】
本発明に従い使用されるポリエステルエラストマー類の硬度の範囲は、好ましくは、ほぼショアA 65〜ほぼショアD 75である。硬度とは、ここで、また、可撓性長鎖ポリエステルセグメントに関する剛性ポリエステルセグメントの比率の尺度である。
【0046】
ポリエステルエラストマー類のメルトインデックスは、剛性ポリエステルセグメントの溶融挙動の関数として、種々の温度で測定される。それは、また、添加の度合いの尺度(鎖全体のモル比)である。
【0047】
慣用的な添加剤も、また、本発明に従い使用されるポリアセタールおよび/またはポリエステルエラストマー中に存在してもよく、それらの例は、安定剤、核剤、離型剤、滑剤、充填剤、強化性材料、顔料、カーボンブラック、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤および蛍光増白剤である。添加剤の存在量は、慣用的な量である。
【0048】
本発明は、したがって、ポリアセタールよりおよび少なくとも1つのポリエステルエラストマーより構成される複合材料およびまたその製造方法を提供し、ここで、ポリアセタールによって構成される成形品が最初に成形され、その上に、ポリエステルエラストマーによって構成される被覆または少なくとも1つの成形品が射出され、ポリアセタールが凝集または接着によりポリエステルエラストマーに結合される。
【0049】
本発明の複合材料は、ここで、ポリアセタール成形品がポリエステルエラストマーで一部または完全に被覆されるか、または、ポリアセタール成形品上に、ポリエステルエラストマーによって構成され、機能性部品とも称される1つ以上の成形品が直接成形されることにより形成される。例えば、これは、ポリエステルエラストマーによって構成される層を1つの側に有する平坦なポリアセタール成形品であってもよい。この例は、滑り防止基板;握り用のくぼみ;操作ユニットおよび切換ユニット;ガスケットを備えるかまたは制動素子を備えた機能性部材;また、二輪車両上、その他の自動車車両上、飛行機上、鉄道車両上および水上クラフト上の内装および外装クラッドであり、ここで、ポリアセタールにより、これらは、要求される寸法安定性を有し、ポリアミドエラストマー層により、これらは、所望される摩擦特性、封止機能、感触または外観を有する。
【0050】
しかし、複合材料は、また、いずれかの所望される形状の1つ以上のポリアセタール成形品によって構成することができ、その上には、ポリエステルエラストマーによって構成されるいずれかの所望される形状を有する1つ以上の成形品が直接成形された。本発明の目的に対し、“〜上に直接成形された”という表現は、機能性素子が、それにより、多成分射出成形プロセスにて、安定した接着結合に入ることを意図するポリアセタールによって構成される成形品上に直接射出されたことを意味している。
【0051】
ポリエステルエラストマー類の使用により、例えば、エラストマーによって構成される封止素子または制動素子をポリアセタールによって構成される成形品上に直接成形することが可能であり、いずれかその他の組み立て工程を必要としない。
【0052】
本発明の複合材料の製造にてのかなりのコスト節減は、機能性素子の組み立てに従来必要とされた加工工程の省略により達成することができる。
本発明の複合材料は、周知の多成分射出成形法によって製造することができ、ここで、最初に、ポリアセタールを射出成形にて成形し、すなわち、最初に、射出させ、ついで、ポリエステルエラストマーによって構成される被覆または成形品をポリアセタール成形品上に射出する。
【0053】
本発明は、また、上記した複合材料を製造するための方法を提供し、ここで、多成分射出成形法は、少なくとも1つのポリアセタール成形品と、ポリエステルエラストマーによって構成される少なくとも1つのその他の成形品とを成形するために使用され、ポリエステルエラストマーは、ポリアセタール成形品上に射出される。
【0054】
成形品が製造される時、溶融温度は、ここで、慣用的な範囲内であり、すなわち、上記したポリアセタール類について、約180〜240℃、好ましくは、190〜230℃の範囲内である。型それ自体は、好ましくは、20〜140℃の範囲内の温度に温度制御される。上記温度範囲内の型温度は、ポリアセタールによって構成される硬質成分の成形の精度および寸法安定性について有益であり、これは、半結晶材料である。
【0055】
型内のキャビティが完全に満たされ、保持圧がさらなる効果を有しなくなったら(ゲート封止点(gate-sealing point))、直ちに、ポリアセタール成形品は、充填と最終冷却とに賦され、複合材料の最初の部分(予備成形品)として型から取出すことができる。第2の続く別個の射出成形工程にて、例えば、この予備成形品は、ついで、そのキャビティがさらなる空間を有するもう1つの型に挿入されるかまたは移され、低い硬度を有する材料、すなわち、ポリエステルエラストマーが型に射出され、かくして、ポリアセタール成形品上に射出される。このプロセスは、挿入プロセスまたはトランスファープロセスとして公知である。続いて達成されうる接着に関しては、最初に射出成形されたポリアセタール成形品を80℃〜融点直下までの範囲内の温度に予熱するのが特に有益である。これは、その材料上に射出されたポリエステルエラストマーによる表面の初期溶融およびこのエラストマーの界面層への浸透を促進する。
【0056】
しかし、もう1つの可能な方法にて、最初に射出成形されたポリアセタール成形品は、一部のみ型から取出され、本来の型(例えば、供給プレート、エジェクターハーフまたはジャストワン割出プレート)の一部とともに、もう1つのより大きなキャビティに移動させられる。
【0057】
もう1つの可能な方法は、機械を中間で開放しポリアセタールによって構成される予備成形品を前方へ移すことなく、ポリエステルエラストマーを同型に射出することからなる。ここで、ポリエステルエラストマー成分用に意図した成形キャビティは、ポリアセタール成分の射出の間に、最初に、置換可能なインサートまたは心により封止され、ポリエステルエラストマー成分が射出されるまで開放されない(スプリット技術)。本プロセスのこのバージョンは、ポリエステルエラストマーの溶融物が短い冷却時間後のみなお高温の予備成形品と遭遇するので、また、良好な接着を達成するのに特に有益である。
【0058】
それは、ポリアセタールによりおよびポリエステルエラストマーにより構成されるさらなる成形品に充てられ、多成分射出成形法によって同時または逐次工程の射出成形によって適用されうる。
【0059】
ポリエステルエラストマーが射出成形法によって適用される時、良好な接着のために、溶融温度について最高可能な設定を選択することが有益である。ポリエステルエラストマーの溶融温度は、概して、その分解温度を上限とする200〜320℃の範囲内である。射出速度についておよびまた射出圧力および保持圧力についての値は、機械依存性および成形依存性であり、個々の事情に符合するようにする。
【0060】
予備成形品の型からの取出しのあるなしにかかわらず、本プロセスの全てのバージョンにて、型は、第2の工程で温度制御されて、好ましくは、20℃〜140℃の範囲内の温度とする。部品の構造の関数として、型からの取出しおよびサイクル時間を最適化するために、型温度を幾分低くするのがよい。部品が一度冷却されたら、複合材料は、型から取出される。重要な因子は、ここで、材料の結合されたジョイントへの負荷を最小とする適当な部位にて突出装置に取付けられる型のデザインに係る。ジョイント領域内でのキャビティの十分なガス抜きは、含まれる空気による2つの成分間の結合の抑制を最小とするために、また、型のデザインにて提供される。同様な効果は、型壁の荒さにより生ずる。良好な接着の発現のために、結合されたジョイントの部位での表面は、表面に含まれる空気を少なくするので、平滑であるのが有益である。
【0061】
本プロセスの成分は、異なる硬度を有する。本発明の複合材料は、取付け部品、カップリング、ローラ、軸受けの形での結合素子として、または、一体となった封止特性および/または一体となった制動特性を有する機能性部品として、あるいは、滑り止めおよび握りやすい機素として使用される。とりわけ、これらは、自動車の組み立てにて使用されるハウジング、例えば、ドア閉鎖ハウジング、ウィンドーリフターハウジングまたはスライド封止機素;および、また、一体となったシールを有する固着機素、例えば、封止リングを有するかまたは封止ディスクを有するクリップ;一体となった封止リップを有する化粧ストリップ;伸縮継手における補償用の封止機素;良好な制動特性を有する固着機素、例えば、振動またはノイズを制動するための心を有するクリップ;電車車両部品、例えば、制動素子を有する歯車;一体となった可撓性カップリングを有する歯車箱;滑り止め握りやすい機素、例えば、コントロールレベルまたはコントロールノブ;または、電気装置上または筆記用具上の握り表面;および、弾性表面を有するチェーンリンクである。
【0062】
硬質ポリアセタール成分と軟質熱可塑性ポリアミドエラストマー成分との間の接着は、WO-A-99/16,605に記載されている試験法によって決定することができる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明を何等限定するものではない。
実施例1-24
射出成形実験は、型締力2000 kNを有する3成分射出成形機を使用した(FM 175/200、
Klockner Ferromatik,Malterdingen,Federal Republic of Germany製造)。利用可能な三軸から、その径が45mmであるアセンブリーを使用のために選択した。1つの側で閉じたキャビティにて、改質したISO引張標品を最初に材料1によって構成される1つのショルダーで予備成形した。使用されるポリアセタール等級について、溶融温度は、200℃であり、型の温度は、80℃であった。
【0064】
空気を温度Tins155℃で循環させつつ、加熱キャビネット内で、ポリアセタールによって構成された生ずる半分の引張標品を予熱し、約20秒内でなお高温のまま、十分に開放された引張標品型に入れた。第2の射出成形操作にて、材料2を種々の溶融温度Tmeと型温度
Tmoにて、種々の射出速度viで引張標品型に射出した。種々の保持圧paおよび保持時間tpaを使用した。分離速度50mm/分を使用して、生ずる2つの成分によって構成された引張標品を、ISO 527引張試験によって試験した。引張試験の結果を使用して、接続継目での破断時の標品の引張強さ(結合強さ)と付随する破断時の引張歪とを決定した。各試験にて、10個の引張標品を試験した。10個の試験標品について得られる値を平均した。以下の表は、試験実施の詳細およびかくして得られた結果を列挙する。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
1) Hostaform R C 9021(上付き文字Rは、登録商標を表す):トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドとによって構成されるポリオキシメチレンコポリマー、MFメルトインデックス190/2.16(ISO 1133):9g/10分、非改質(Ticona GmbH)
2) Hostaform R 9064:トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドとによって構成されるポリオキシメチレンコポリマー、MFメルトインデックス190/2.16(ISO 1133):9g/10分、改質:20重量%の熱可塑性ポリウレタン(Ticona GmbH)
3) Hostaform R 9244:トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドとによって構成されるポリオキシメチレンコポリマー、MFメルトインデックス190/2.16(ISO 1133):9g/10分、改質:粒子寸法約100nmを有する約80重量%の弾性ポリブタジエンコアーと約20重量%のMMA/スチレンシエルとによって構成される25重量%のMBSコアーシエル改質剤(Ticona GmbH)
4) Arnitel R EM 400:ポリテトラメチレンオキシドとポリブチレンテレフタレートとによって構成される熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(DSM)
5) Tins=100℃
6) Tins=23℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタールと、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルエラストマーとを含む複合材料であって、ポリアセタール成形品が熱可塑性ポリエステルエラストマーで一部または完全に被覆されるかまたはポリアセタール成形品上に熱可塑性ポリエステルエラストマーによって構成される1つ以上の成形品が直接成形されることにより形成されており、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとが熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリアセタール成形品上への射出により互いに接着または凝集により結合され、ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとの間の引張接着強さが少なくとも0.5N/mm2である上記複合材料。
【請求項2】
ポリアセタールと熱可塑性ポリエステルエラストマーとの間の引張接着強さが少なくとも1.0N/mm2である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
使用されるポリアセタールが、ポリオキシメチレンコポリマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
ポリアセタール成形品および/またはポリエステルエラストマー成形品が、安定剤、核剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、滑剤、充填剤、強化性材料、顔料、カーボンブラック、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤および蛍光増白剤からなる群より選択される添加剤を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステルエラストマーの硬度が、ショアA 65〜ショアD 75の範囲内である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
使用される熱可塑性ポリエステルエラストマーが、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーが、剛性セグメントとしてポリブチレンテレフタレートを、可撓性セグメントとしてポリテトラメチレンオキシドを有するポリエーテルエステルである、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
ポリアセタール成形品が、熱可塑性ポリエステルエラストマーで完全にまたは一部被覆されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
熱可塑性ポリエステルエラストマーによって構成される少なくとも1つの成形品が、ポリアセタール成形品上に成形されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項1に記載の複合材料を製造するための方法であって、多成分射出成形法を使用して、互いの上に少なくとも1つのポリアセタール成形品と熱可塑性ポリエステルエラストマーによって構成される少なくとも1つのその他の成形品とを成形する工程を含み、ポリエステルエラストマーがポリアセタール成形品上に射出成形される方法。
【請求項11】
熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリアセタール成形品上への成形に先立ち、ポリアセタール成形品が、80℃〜その融点の直下の範囲内の温度に予熱され、ポリアセタール成形品上への成形プロセスの間の熱可塑性ポリエステルエラストマーの溶融温度が、200〜
300℃であり、型が、20〜140℃の範囲内の温度に温度制御される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
熱可塑性ポリアミドエラストマーのポリアセタール成形品上への成形に先立ち、ポリアセタール成形品が、100〜160℃の範囲内の温度に予熱され、ポリアセタール成形品上への成形プロセスの間の熱可塑性ポリエステルエラストマーの溶融温度が、220〜260℃であり、型が、30〜80℃の範囲内の温度に温度制御される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コネクタとして;一体となった封止特性および/または一体となった制動特性を有する機能性部材として;あるいは、その他滑り止めおよび握りやすい(easy-grip)機素としての、請求項1に記載の複合材料の使用。

【公表番号】特表2007−534515(P2007−534515A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546045(P2006−546045)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014562
【国際公開番号】WO2005/065913
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(598029656)ティコナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Ticona GmbH
【Fターム(参考)】