説明

複合構造物形成方法、調製粒子、および複合構造物形成システム

【課題】本発明の態様は、エアロゾル中の微粒子濃度をより安定させることができ、かつ安定した状態を長時間にわたり維持することができる複合構造物形成方法、調製粒子、および複合構造物形成システムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法による複合構造物形成方法であって、前記脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体である調製粒子を複数、収容機構に収容し、前記収容機構から前記調製粒子をエアロゾル化機構に供給し、前記エアロゾル化機構において前記供給された前記調製粒子を解砕してエアロゾルを形成し、前記エアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記構造物と前記基材との複合構造物を形成すること、を特徴とする複合構造物形成方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、脆性材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に吹き付け、微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法による複合構造物形成方法、これに用いる調製粒子、および複合構造物形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に脆性材料からなる構造物を形成させる方法として、「エアロゾルデポジション法」がある(例えば、特許文献1(特許第3348154号公報)、特許文献2(特開2006−200013号公報)、特許文献3(特開2006−233334号公報)を参照)。これは、脆性材料を含む微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを吐出口から基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子に変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料からなる膜状構造物をダイレクトに形成させる方法である。この方法によれば、特に加熱手段などを必要とせず、常温で膜状構造物の形成が可能であり、焼成体と比較して同等以上の機械的強度を有する膜状構造物を得ることができる。また、微粒子を衝突させる条件や微粒子の形状、組成などを制御することにより、構造物の密度や機械強度、電気特性などを多様に変化させることが可能である。
【0003】
このエアロゾルデポジション法において大面積の膜状構造物の形成を実施する場合、微粒子を所定時間供給し続けることが必要となる。特に、高い膜厚精度が要求される場合においては、微粒子の供給量が常に安定していることが望まれる。
【0004】
しかし、特許文献1(特許第3348154号公報)のように、原料となる微粒子が収容される収容機構内でエアロゾル化をさせるようにすると、収容機構内に収容された微粒子が時間の経過とともに状態変化を起こす場合があり、エアロゾルの安定供給に課題を残していた。また、エアロゾル化させるための容積を稼ぐために収容機構の容積を微粒子の体積よりはるかに大きくする必要があり、大規模な装置が必要となるおそれもある。
【0005】
そこで、微粒子を収容する収容機構と、微粒子をガスと混合してエアロゾル化させるエアロゾル化機構とを分離し、収容機構からエアロゾル化機構に微粒子を必要量ずつ供給する技術が提案されている(特許文献2(特開2006−200013号公報)を参照)。
【0006】
しかし、一次粒子としてサブミクロン以下の微粒子を用いる場合には、その粘性、付着性が強いため、収容機構内部や収容機構からエアロゾル化機構へ供給する過程において壁面への付着やスタックなどの問題が発生しやすく、確実な供給を実現することが困難となるおそれがある。例えば、収容機構内部での微粒子の攪拌や移動によって微粒子が凝集しやすくなり、その流動性が変化する。そして、ついには収容機構内部でスタックが生じ、このスタックが生じることでエアロゾル化機構への粉体の移動が妨げられ、供給量の定量性が失われるおそれがある。また、収容機構内部で付着が発生すると、計画通りの粉体使用量が達成できないといった弊害が生ずるおそれもある。
【0007】
そのため、収容機構からエアロゾル化機構に微粒子を供給する分割供給機構を設け、分割供給機構により収容機構に収容されている微粒子を複数の群に分割して供給する技術が提案されている(特許文献3(特開2006−233334号公報)を参照)。
【0008】
しかしながら、収容機構に収容されている一群の脆性材料微粒子粉体を分割供給機構において複数の群に分割して供給する場合には以下の問題が生ずるおそれがある。すなわち、もともと収容機構に収容されている脆性材料微粒子粉体は密度が制御されていないことや、流動性に均一さがないことを受けて、収容機構から供給される際に、所定の大きさや形状に分割される微粒子の集団の形状や密度が不均一となるおそれがある。場合によっては収容機構内で脆性材料微粒子粉体がスタックする不具合も生じる。このような場合には、所定の解砕能力を有するエアロゾル化機構を用いたとしても終始安定した微粒子濃度のエアロゾルを発生させることが困難となる。また、供給の過程において、所定の大きさや形状に分割された微粒子の集団の形状や密度が変化した場合にも、エアロゾルの微粒子濃度を正確に制御することが困難となるおそれがある。また、密度が低い場合は供給途中で形状が崩れ、装置内壁に微粒子が付着して定量性を損なうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3348154号公報
【特許文献2】特開2006−200013号公報
【特許文献3】特開2006−233334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の態様は、エアロゾル中の微粒子濃度をより安定させることができ、かつ安定した状態を長時間にわたり維持することができる複合構造物形成方法、調製粒子、および複合構造物形成システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法による複合構造物形成方法であって、前記脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体である調製粒子を複数、収容機構に収容し、前記収容機構から前記調製粒子をエアロゾル化機構に供給し、前記エアロゾル化機構において前記供給された前記調製粒子を解砕してエアロゾルを形成し、前記エアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記構造物と前記基材との複合構造物を形成すること、を特徴とする複合構造物形成方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法に用いられる調製粒子であって、前記調製粒子は、平均一次粒子径が0.1μm以上、5μm以下の前記脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体であること、を特徴とする調製粒子が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成するエアロゾルデポジション法に用いる複合構造物形成システムであって、上記の調製粒子を収容する収容機構と、前記収容機構から前記調製粒子を供給する供給機構と、前記供給された調製粒子に向けてガスを導入するガス供給機構と、前記ガスを混流した前記調製粒子に対して衝撃を加えることで解砕してエアロゾルを形成させるエアロゾル化機構と、前記エアロゾルを基板上に噴射する吐出口と、を備えることを特徴とする複合構造物形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、エアロゾル中の微粒子濃度をより安定させることができ、かつ安定した状態を長時間にわたり維持することができる複合構造物形成方法、調製粒子、および複合構造物形成システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。
【図2】圧壊強度の測定を例示するためのグラフ図である。
【図3】平均圧壊強度と複合構造物の形成との関係を例示するためのグラフ図である。
【図4】調製粒子の分布におけるヒストグラムを例示するためのグラフ図である。
【図5】平均円相当径と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図6】平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図7】供給速度0.5g/minの場合における平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図8】供給速度5g/minの場合における平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図9】D10値と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図10】粒度分布偏差割合と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図11】安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図12】供給速度0.5g/minの場合における安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図13】供給速度5g/minの場合における安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システムの第1の具体例を例示するための模式図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システムの第2の具体例を例示するための模式図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システムの第3の具体例を例示するための模式図である。
【図19】本実施の形態において用いることができる計量機構を例示するための模式図である。
【図20】本実施の形態において用いることができる計量機構を例示するための模式図である。
【図21】本実施の形態において用いることができる計量機構を例示するための模式図である。
【図22】定量供給機構の第1の具体例を例示するための模式図である。
【図23】定量供給機構の第2の具体例を例示するための模式図である。
【図24】定量供給機構の第3の具体例を例示するための模式図である。
【図25】定量供給機構の第4の具体例を例示するための模式図である。
【図26】定量供給機構の第5の具体例を例示するための模式図である。
【図27】定量供給機構の第6の具体例を例示するための模式図である。
【図28】定量供給機構の第7の具体例を例示するための模式図である。
【図29】定量供給機構の第8の具体例を例示するための模式図である。
【図30】定量供給機構の第9の具体例を例示するための模式図である。
【図31】エアロゾル化機構の第1の具体例を例示するための模式図である。
【図32】エアロゾル化機構の第2の具体例を例示するための模式図である。
【図33】エアロゾル化機構の第3の具体例を例示するための模式図である。
【図34】エアロゾル化機構の第4の具体例を例示するための模式図である。
【図35】エアロゾル化機構の第5の具体例を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について説明をする前に、まず、本明細書において用いる用語について説明をする。
本明細書において「微粒子」とは、脆性材料の結晶が化学的に結合して形成された粒子を指し、エアロゾルデポジション法で使用されるこの微粒子は、例えば、特許文献1(特許第3348154号公報)に記載されているように平均一次粒子径が0.1μm以上5μm以下のものをいう。尚、平均一次粒子径の同定には、電子顕微鏡観察による複数(50個以上を目処とする)の脆性材料微粒子の画像から円相当径として算出する方法を採用することができる。
また、「一次粒子」とは、微粒子の最小単位(一粒)のことをいう。
【0017】
また、「調製粒子」とは、平均一次粒子径が0.1μm以上、5μm以下の脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体をいう。すなわち調製粒子は人為的に固める工程を経て形成される。
調製粒子においては、粒子が物理的引力(静電気、ファンデルワールス力、水の架橋引力)を結合の主体として形状を保った状態にあり、その結合強度、形状、の少なくともいずれかが意図的に制御されている。あるいは、水中に投入して超音波を照射した場合に崩れる程度の引力を結合の主体として形状を保った状態にあり、その結合強度、形状、の少なくともいずれかが意図的に制御されている。
【0018】
調製粒子の結合強度は、その圧壊強度(圧縮破壊強度)を指標とすることができる。
また、調製粒子の形状は、円形度を指標とすることができる。
また、調製粒子においては、その径が意図的に制御されていることが望ましい。調製粒子の径は、その平均円相当径を指標とすることができる。
また、調製粒子においては、その粒径分布を意図的に制御されていることが望ましい。調製粒子の粒径分布は、D10あるいは粒度分布偏差割合を指標とすることができる。
【0019】
調製粒子においては、含有される脆性材料の微粒子同士が化学的結合により一次粒子の径より著しく大きく接合固化をしていないことが望ましい。脆性材料の微粒子同士が化学的結合をしているとは、微粒子が熱処理などの影響を受けて微粒子の表面同士で融着することでネック形成を起こして、あたかも多孔質の一次粒子のようになったものを指す。電子顕微鏡観察によりこれを同定することができるが、例えば水やアルコール溶媒に複数の微粒子の集合体を投入して脆性材料微粒子に分散、あるいは容易に崩壊しなければ、化学的結合が存在していると判断できる。なお、一次粒子が数個単位で接合固化している場合は、その微粒子の径はエアロゾルデポジション法における構造物形成に対して許容されることが有り得、このような状態のものが実質的に含まれていても大きな問題とはならない。この状態もよく分散させて観察台に固定した脆性材料の微粒子を電子顕微鏡観察によって観察することで知ることができる。
【0020】
また、「凝集粒子」とは、複数の微粒子の集合体であって、自然発生的に形成され、微粒子が互いに結合した状態をいい、その結合強度、形状についても、制御されていない状態のものをいう。
【0021】
また、「解砕」とは、脆性材料微粒子を主体とする粒子が物理的引力により固められている調製粒子に対して、衝撃・摩擦・振動・電荷付与などの外力を与えることで脆性材料微粒子を個々に分離させる目的の行為のことをいう。なお全ての一次粒子を単分散状態までに分離させる必要はなく、後述するように、解砕により工業的利用が可能な程度に構造物形成がなされるような分離状態が確保されればよい。
【0022】
調製粒子が収容容器から供給される際に解砕されていないことは、調製粒子の供給量の経時的安定度計測や、収容容器中とエアロゾル化直前の調製粒子の形状比較などにより判別することができる。
この場合、調製粒子が収容容器から供給される際に解砕されると、収容容器やエアロゾル化機構の調製粒子が接触する部位に調製粒子から脱落した脆性材料微粒子が付着して閉塞が生じる。その結果、調製粒子の移動が阻害され、供給量が経時的に変化してしまう傾向が生じる。
また、エアロゾル化機構において調製粒子が解砕されることは、エアロゾル化直前の調製粒子とエアロゾル化直後の調製粒子との形状や状態を観察により比較することで判別することができる。
この場合、明らかに調製粒子の数が減り、調製粒子中の一次粒子が多く存在する状態変化が起きていることが確認できれば解砕されているとすることができる。例えば、解砕行為前のある調製粒子重量中の調製粒子個数に対して、解砕行為後の同じ重量中の調製粒子個数との比が5分の1以下、望ましくは10分の1以下、さらに望ましくは100分の1以下になっていると解砕されているとすることができる。これらは光学顕微鏡観察などで確認することができる。
【0023】
また、「エアロゾル」とは、ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、乾燥空気、これらを含む混合ガスなどのガス中に微粒子を分散させた固気混相体を指し、一部凝集粒子を含む場合もあるが、実質的には微粒子の多くがほぼ単独で分散している状態のものをいう。エアロゾルのガス圧力と温度は任意であるが、ガス中の微粒子の濃度は、ガス圧を1気圧、温度を摂氏20度に換算した場合に、吐出口から噴射される時点において0.0003mL/L〜10mL/Lの範囲内であることが膜状構造物の形成にとって好ましい。
【0024】
また、「固気混相流」とは、所定の結合強度あるいは形状に制御された調製粒子が、ガス流にのって移動している状態をいう。固気混相流においては、調製粒子は実質的に単独でガス流中に存在している。
また、「固相」とは、調製粒子がほぼガス流の影響を受けずに存在している状態をいう。
【0025】
また、「スタック」とは、容器内や粒子が通過する通路などにおいて、粒子の付着や粒子自体の凝集により粒子の移動が妨げられること、または、そのようになる状態をいう。スタックは、粒子が通過する通路の断面形状が小さくなった場所で発生しやすく、例えば、後述する収容機構の出口、供給機構の入口、供給路などで発生しやすい。
【0026】
次に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。すなわち、図1(a)は複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の基本構成を例示するためのブロック図である。また、図1(b)は調製粒子の収容からエアロゾル化されるまでの流れを模式的に表した図である。また、図1(c)は調製粒子の収容からエアロゾル化されるまでの間の状態変化を表した図である。尚、図1(a)に示した各構成要素に対応するようにして、図1(b)、図1(c)を描いている。
【0027】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)100は、収容機構1と、定量供給機構2と、ガス供給機構3と、エアロゾル化機構4と、吐出口5と、を備えている。
【0028】
収容機構1の後段には、定量供給機構2が設置されている。また、定量供給機構2の後段には、エアロゾル化機構4が設置され、さらにエアロゾル化機構4の後段には、吐出口5が設置されている。そして、ガス供給機構3が、定量供給機構2の出口近傍に接続されている。
【0029】
収容機構1には、予め形成された調製粒子31が収容される。そして、定量供給機構2は、収容機構1に収容された調製粒子31を、後段のエアロゾル化機構4に対して調製粒子31の形状、状態を損なうことなく所定の量供給する。尚、定量供給機構2は、後述するようなフィードバック制御により供給量を経時的に安定化あるいは変化させることができるものであってもよい。また、調製粒子31の詳細については後述する。
【0030】
定量供給機構2により供給された調製粒子31はガス供給機構3により供給されたガスGと共に固気混相流33を形成し、供給路16を通じてエアロゾル化機構4へ供給される。供給された調製粒子31は、エアロゾル化機構4内で解砕され、微粒子30PがガスG中に分散することでエアロゾル32が形成される。このエアロゾル32は吐出口5より図示しない基材に向けて噴射され、基材上には膜状構造物(図16を参照)が形成される。
【0031】
また、後述するように調製粒子31をエアロゾル化機構4へ供給し、供給された調製粒子31をエアロゾル化機構4内で解砕し、ガス供給機構3からエアロゾル化機構4に供給されたガスGを用いて、微粒子30PがガスG中に分散したエアロゾル32を形成させるようにすることもできる(図15を参照)。
【0032】
ただし、固気混相流33を形成させるものとすれば、調製粒子31を単に供給するのみならず、エアロゾル化機構4に向けて調製粒子31を加速させることができるので、加速された調製粒子31の運動エネルギーを利用した機械的衝撃により解砕するならば、エアロゾル化が円滑に行われることになる。
【0033】
また、ガス供給機構3は、調製粒子31を確実にエアロゾル化機構4へ供給させるために、収容機構1や定量供給機構2と接続してもよく、エアロゾル中の微粒子濃度を調節するためにエアロゾル化機構4やエアロゾル化機構4と吐出口5の間の供給路などと接続してもよい。尚、ガス供給機構3の接続先や接続の組み合わせは適宜変更することができる。
【0034】
ここで、エアロゾルデポジション法の原理について説明をする。
エアロゾルデポジション法において利用される微粒子は、脆性材料を主体とし、同一材質の微粒子を単独であるいは粒径の異なる微粒子を混合させて用いることができる。
微粒子の材料としては、例えば、などの脆性材料酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化クロム、酸化ハフニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化ランタン、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化バリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化ガドリニウム、酸化インジウム、酸化リチウム、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化オスミウム、酸化鉛、酸化パラジウム、酸化プラセオジム、酸化ルテニウム、酸化アンチモン、酸化スカンジウム、酸化テルビウム、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化イッテルビウムなどを主成分とする酸化物やこれらの複合酸化物、ダイヤモンド、炭化硼素、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化クロム、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化タンタルなどの炭化物、窒化硼素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ニオブ、窒化タンタルなどの窒化物、硼素、硼化アルミニウム、硼化珪素、硼化チタン、硼化ジルコニウム、硼化バナジウム、硼化ニオブ、硼化タンタル、硼化クロム、硼化モリブデン、硼化タングステンなどの硼化物、あるいはこれらの混合物や多元系の固溶体や化合物、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸リチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸アルミニウム、PZT、PLZTなどの複合酸化物系の圧電性・焦電性セラミックス、サイアロン、サーメットなどの高靭性セラミックス、水酸アパタイト、燐酸カルシウムなどの生体適合性セラミックス、シリコン、ゲルマニウム、あるいはこれらに燐などの各種ドープ物質を添加した半導体物質、ガリウム砒素、インジウム砒素、硫化カドミウム、硫化亜鉛などの化合物、これら材料を主成分とした金属や樹脂との複合材料を例示することができる。
また、異種の脆性材料微粒子を混合させたり、複合させて用いることも可能である。また、金属材料や有機物材料などの微粒子を脆性材料微粒子に混合させたり、脆性材料微粒子の表面にコーティングさせて用いることも可能である。ただし、これらの場合でも、膜状構造物を形成させる際に主となるものは、脆性材料である。
【0035】
また、ガスGとしては、例えば、空気、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの他、メタンガス、エタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどの有機ガス、また、フッ素ガスなどの腐食性のあるガス等を例示することができる。また、必要に応じてこれらの混合ガスを使用してもよい。
【0036】
エアロゾルデポジション法のプロセスは、通常は常温で実施され、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち摂氏数100度以下で膜状構造物の形成が可能であるところにひとつの特徴がある。
【0037】
結晶性の脆性材料微粒子を原料として用いる場合、エアロゾルデポジション法によって形成される複合構造物のうち膜状構造物の部分において、その結晶粒子サイズは原料微粒子のそれに比べて小さい多結晶体となっており、その結晶は実質的に結晶配向性がない場合が多い。また、脆性材料結晶同士の界面には、ガラス層からなる粒界層が実質的に存在しない。また多くの場合、膜状構造物の部分において、基材の表面に食い込む「アンカー層」が形成されている。膜状構造物は、このアンカー層が形成されているため基材に対して極めて高い強度で強固に付着して形成される。
【0038】
エアロゾルデポジション法により形成される膜状構造物は、微粒子同士が圧力によりパッキングされ物理的な付着で形態を保っている状態のいわゆる「圧粉体」とは明らかに異なり、十分な強度を有している。
【0039】
この場合、エアロゾルデポジション法において、飛来してきた脆性材料微粒子が基材の上で破砕・変形を起していることは、原料として用いる脆性材料微粒子と、形成された脆性材料構造物の結晶子サイズとをX線回折法などで測定することにより確認することができる。
【0040】
エアロゾルデポジション法で形成された膜状構造物の結晶子サイズは、原料微粒子の結晶子サイズよりも小さい。また、微粒子が破砕や変形をすることで形成される「ずれ面」や「破面」には、もともとの微粒子の内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった「新生面」が形成される。そして、表面エネルギーが高く活性なこの新生面が、隣接した脆性材料微粒子の表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基材の表面と接合することにより膜状構造物が形成されるものと考えられる。
【0041】
また、エアロゾル中の微粒子の表面に水酸基がほどよく存在する場合には、微粒子の衝突時に微粒子同士や微粒子と構造物との間に生じる局部のずれ応力などにより、メカノケミカルな酸塩基脱水反応が起き、これら同士が接合するということも考えられる。外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、これらの現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料からなる膜状構造物が成長するものと考えられる。
【0042】
エアロゾル化機構4において調製粒子31を解砕する手法としては、調製粒子31を壁、突起、回転体などに衝突させることによる機械的衝撃力を利用することが有効である。特に、調製粒子31をガスGと混合させた固気混相流33の状態で加速させれば、質量をもった調製粒子31を慣性力によって壁などに衝突させることが容易となる。この際、解砕エネルギーは、調製粒子31の質量と速度によって決定されるが、解砕に必要な速度を得るためにはエアロゾル化機構4の前後(入口側と出口側)に圧力差が必要となる。
【0043】
また、本発明者の得た知見によれば、ガスの種類として、例えば、空気、窒素、酸素のいずれか、或いは前記ガスを主成分とした混合ガスを用い、1気圧25℃換算の場合において、ガスの供給量を供給路の最小断面積に対して、0.05L/(分・mm2)以上、
50.0L/(分・mm2)以下の体積流量とすれば、固気混相流中の調製粒子31を効
率よく加速させることができ、エアロゾル化を確実且つ容易に実施することができる。
【0044】
ここで、エアロゾルデポジション法において、得られる膜状構造物が大面積にわたって均質で、均一な厚みを持たせるためには、吹き付けるエアロゾル中の微粒子濃度が常に安定していることが必要となる。すなわち、膜の品質・品位を安定させるためには、如何にして安定した微粒子濃度のエアロゾルを形成させるかが、本手法の重要な技術要素となる。
【0045】
この場合、特許文献1(特許第3348154号公報)に開示されているような技術では、収容機構に収容された微粒子の状態が時間の経過とともに変化するなどして、安定した微粒子濃度のエアロゾルの発生が困難となるおそれがある。
【0046】
また、特許文献2(特開2006−200013号公報)に開示されているような技術でも、一次粒子としてサブミクロン以下の微粒子を用いる場合、粘性、付着性が強いため、収容機構内部や収容機構からエアロゾル化機構に供給する過程において壁面への付着やスタックなどの問題が発生しやすく、安定した微粒子濃度のエアロゾルの発生が困難となるおそれがある。
【0047】
そして、最も安定した微粒子濃度のエアロゾルを形成させることができる特許文献3(特開2006−233334号公報)に開示されている技術でも、収容機構から供給される際、あるいはエアロゾル化機構への供給の過程において、微粒子または所定の大きさや形状に分割される微粒子の集団の形状や密度が不均一となる場合が生じ、瞬間的ではあるが安定した微粒子濃度のエアロゾルを形成させることが困難となるおそれがある。例えば、収容機構から供給される際、あるいはエアロゾル化機構への供給の過程において、微粒子の集団の一部が解砕されて壁面へ付着し、瞬間的ではあるが安定した微粒子濃度のエアロゾルを形成させることが困難となるおそれがある。
【0048】
本発明者は検討の結果、平均一次粒子径が0.1μm以上、5μm以下の脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体である調製粒子を予め作製し、これを収容機構からエアロゾル化機構に供給するようにすれば、供給の均一化、安定化を図ることができるとの知見を得た。また、調製粒子の結合強度、形状の少なくともいずれかを意図的に制御することで定量供給性を高めることができるとの知見をも得た。
【0049】
前述したように、粒径が0.1μm以上、5μm以下の脆性材料微粒子は、凝集性が強く、そのままの状態ではハンドリング性が非常に悪い。また往々にして凝集粒子を形成する。このような脆性材料微粒子は、機械的手段によって供給しようとしても定量性を確保することが非常に困難である。そのため、エアロゾルデポジション法においてエアロゾルを形成する場合、エアロゾル濃度の経時的均一性、安定性が確保しにくいという問題がある。
【0050】
そこで、平均一次粒子径が0.1μm以上、5μm以下の脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体である調製粒子を予め作製し、これにより粘性・付着性の強い微粒子を供給するようにすれば、供給過程における解砕、それに伴う付着やスタックなどを抑制することができるので定量供給性を高めることができる。また、収容機構1から定量供給機構2により供給される際にも実質的に解砕されることを抑制することができるので、定量供給性を高めることができる。
また、調製粒子の結合強度、形状の少なくともいずれかを意図的に制御することで定量供給性をさらに高めることができる。
そのため、後段に設置されているエアロゾル化機構4において、短期的に見ても微粒子濃度が大きく変動することがなく、経時的に均一かつ長期間安定した微粒子濃度のエアロゾルを形成させることができる。その結果、吐出口から噴射されるエアロゾル中の微粒子の量の制御を正確に行うことができるので、基材上に形成される膜状構造物の膜厚や膜質の制御を精度良く行うことができる。
【0051】
次に、調製粒子31に関して本発明者の得た知見について説明をする。
定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31の平均圧壊強度を指標とすることができる。
例えば、平均圧壊強度が低すぎると、収容機構1から供給される際、あるいはエアロゾル化機構4への供給の過程において、調製粒子31が解砕されて壁面に付着するため定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが低下するおそれがある。また、平均圧壊強度が高すぎると、定量供給性は確保することができるが、エアロゾル化機構4における解砕が阻害されるのでエアロゾル濃度の均一性などが低下するおそれがある。そのため、調製粒子31の平均圧壊強度が所定の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0052】
すなわち、調製粒子31は、収容機構1から供給される際に実質的に解砕されないようにするために必要な平均圧壊強度を有するものとされる。また、調製粒子31は、エアロゾル化機構4へ供給される途中では実質的に解砕されず、エアロゾル化機構4において実質的に解砕されるのに必要な平均圧壊強度を有するものとされる。
【0053】
尚、平均圧壊強度(平均圧縮破壊強度)は、複数(例えば、10個以上)の調製粒子31を任意に選び、これらの圧壊強度(圧縮破壊強度)を測ってその平均値を算出したものである。
ここで、本発明者の行った圧壊強度(圧縮破壊強度)の測定と、平均圧壊強度(平均圧縮破壊強度)と複合構造物の形成との関係を説明する。
まず、圧壊強度(圧縮破壊強度)の測定について説明をする。
平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み、円相当径が100〜400μmの範囲内にある調製粒子を準備し、これらの調製粒子の圧壊強度を測定した。尚、円相当径については後述する。
【0054】
圧壊強度の測定には、島津製作所製島津微小圧縮試験機MCT-W201を用いた。測
定に用いた圧縮用圧子はFLAT500とした。また、対物レンズの倍率を10倍、測長モードを単体、参考強度計算圧縮率10%を初期条件とした。また、試験モードを圧縮試験、試験力を196.1mN、負荷速度を0.9mN/secとし、任意に選択した10個の調製粒子31に対して圧壊強度の測定を行った。
【0055】
圧壊強度は、調製粒子が圧縮用圧子に押し付けられて破壊した時の試験力と粒子径から次式にて計算した。
St=2.8P/(π×d×d)
ここで、Stは圧壊強度(Pa)、Pは圧壊時の試験力(N)、dは調製粒子径(mm)である。
【0056】
図2は、圧壊強度の測定を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は変位を表し、縦軸は試験力を表している。
この圧壊強度の測定においては、図2に示すように試験力の変化がほぼ一定となり変位のみが増加する点を圧壊時の試験力Pとした。尚、調製粒子径dは、圧縮試験機に備えられている光学機器を用いて測定した。
【0057】
次に、平均圧壊強度(平均圧縮破壊強度)と複合構造物の形成との関係を説明する。
円相当径が100〜400μmの範囲内にある様々な圧壊強度を持つ調製粒子を準備し、これらの調製粒子を用いてエアロゾルデポジション法により複合構造物の形成を行った。エアロゾルデポジション法に用いる装置としては、定量供給機構として振動型供給装置、エアロゾル化機構としてセラミックスの板へ固気混相流を衝突させる方式のものを備え、ガスとして窒素を用いるものとした。
【0058】
また、吐出口であるノズルの開口は10mm×0.4mmとし、開口から噴出するエアロゾルのガス流量を5L/minとした。複合構造物の形成を行うための基材にはSUS304ステンレス鋼の板を用いた。また、基材を往復運動させるストロークを10mm、10mm×10mmの面に複合構造物を形成させる時間(エアロゾルの噴射時間)を10分とした。
図3は、平均圧壊強度と複合構造物の形成との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は平均圧壊強度を表し、縦軸は膜状構造物の膜厚を表している。
図3から分かるように、平均圧壊強度を0.47MPaを超えるものとすれば、薄い膜しか形成することができず生産性に問題が生じる。これは、調製粒子の圧壊強度が高すぎるためエアロゾル化機構における調製粒子の解砕が阻害されたためであると考えられる。本発明者の得た知見によれば、平均圧壊強度を0.47MPa以下とすれば、生産性の観点から好ましい複合構造物の形成を行うことができる。また、平均圧壊強度を0.34MPa以下とすれば生産性の観点からより好ましい複合構造物の形成を行うことができる。
【0059】
以上は、平均圧壊強度の上限値の場合である。ここで、図3から分かるように平均圧壊強度が低いほど短時間で厚い膜を形成させることができるので、生産性の観点からは下限値を決めることはできない。
前述したように平均圧壊強度の下限値は主に定量供給性の観点から決定される。すなわち、平均圧壊強度が低すぎると、収容機構から供給される際、あるいはエアロゾル化機構4への供給の過程において、緩やかに送る操作の条件下においても調製粒子同士の摩擦やお互いの接触応力、壁面との摩擦などの、粒子の移動の際に発生する様々な力を受けて調製粒子が解砕されたり、調製粒子を構成する脆性材料微粒子の一部が表面から脱落してしまうおそれがある。そして、解砕や脱落により生じた脆性材料微粒子が壁面へ付着すると調製粒子の移動が阻害され定量供給性が損なわれる。そのため、平均圧壊強度は所定の値以上であることが好ましい。
【0060】
本発明者は、定量供給機構2の方式(例えば、ふるい振とう方式、回転盤による供給方式、超音波振動や電磁振動による供給方式、スクリューフィーダ、静電供給方式など)や供給路16などにおける供給条件などを詳細に検討した結果、定量供給性の観点からは平均圧壊強度を0.015MPa以上とすることが好ましいとの知見を得た。
そのため、平均圧壊強度は0.46MPa以下とすることが好ましく、また、0.34MPa以下とすることがより好ましい。また、平均圧壊強度を0.015MPa以上とすることが好ましい。
【0061】
また、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31の平均円相当径を指標とすることができる。
例えば、平均円相当径が小さくなりすぎると凝集が起こりやすくなるので定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが損なわれるおそれがある。また、平均円相当径が大きくなりすぎると供給路16などにおける詰まりやエアロゾル化機構4における解砕不良が発生するおそれがある。そのため、調製粒子31の平均円相当径が所定の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0062】
尚、円相当径とは、調製粒子31の画像解析による面積と同じ面積を有する等価円の直径をいう。円相当径は、市販の形状解析ソフトウェアを用いて調製粒子31の光学顕微鏡写真などを解析することで算出することができる。そのようなものとしては、例えば、偏光光学顕微鏡(ニコン社製LV−IMA)に組み込まれた解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を例示することができる。
また、平均円相当径は、複数の調製粒子を任意に選び、これらの円相当径を測ってその平均値を算出したものである。算出に際しては、まず、シリコンウェーハなどのように鏡面を持ち、ノイズとなるような傷を持たないものを調製粒子を展開する基材として準備する。次に、この上に写真判定画面上で測定の対象となる調製微粒子を分散させる。この際、写真判定画面に占める面積割合が40%以下となるように分散させる。その上で調製粒子としての性格を有していない凝集粒や一次粒子、あるいは一次粒子が複数個重なった状態で観察されるような粒子の群は極力除外する。特に中心粒径付近の微粒子はお互いに重なりあわないような分散状態を確保するようにする。また、写真判定に際して、定量供給性が優れず、調製粒子としてはもとより不十分と判断される平均円相当径が5μm以下で計測されたデータ群は削除する。また写真判定画像において、画像の外縁部境界に接する、すなわち粒子が完全に画像内に捉えられていないデータについても削除することで、値の信頼性を確保させる。
【0063】
さらにここで、例えば、図4に示すように、観察される平均円相当径が5μm以上の調製粒子の分布において、最小径と最大径の間を10〜20のデータ区分で均等に区切ってヒストグラムを作成する。この場合、100μm以上の値にピークを持ち、かつ30μm以下にも別のピークを持つ場合において、この30μm以下の粒子は、個数頻度で80%程度まで占めたとしても、供給量標準偏差に影響をほとんど与えないことが分かっている。これは体積的には大きな割合を占めることになる比較的大きな調製粒子が、定量供給性を支配するためであると考えられる。
このような微小な粒子には、調製粒子から一部脱落して形成された断片や調製粒子形成が不十分であったものが含まれると考えられる。このように、算出目的となる大粒径の調製粒子のピークと、算出目的外の微小な粒子のピークとを併せてもつ分布であると明快に判断できる場合には、平均円相当径の判定において微小な粒子のピークを構成する粒子群を除いて平均円相当径を算出するようにする。
このような慎重な調製粒子の選択操作を行い、カウントする調製粒子数を150〜200個選び、これらの数値から平均円相当径を求めるようにすることが好ましい。
【0064】
写真判定において例えば前述した解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を用いる場合には、基材と観察対象の粒子とのコントラストが十分確保できるように光を当てる。そして、十分なコントラストを得て、焦点を合わせたのち、写真撮影を行う。撮影された写真は、モノクロ画像化し、2値化処理を施す。
2値化処理においては、その閾値を適切に設定しないと誤った数値を得ることになるため注意が必要である。特に、真の円相当径が20μm程度以下の値を持つ粒子の測定に対する取捨選択に大きな影響を与えることになり、これが平均円相当径や後述するD10値、粒度分布偏差割合の値が大きく変動してしまう要因ともなる。
そのため、2値化処理の際には、モノクロ画像の基材側(一般的に白色側)のピークと、粒子側(一般的に黒色側)のピークとの中間付近を閾値として選択するようにすることが好適である。
このような閾値の選択を行ってもなお往々にして、前述した平均円相当径の算出値に複数のピークが生じ得る。そのため、前述したような粒子群のカウントに対する選択操作を実施する必要性が生ずることになる。
【0065】
定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み前述の平均圧壊強度の範囲内にある調製粒子を準備し、これらを平均円相当径毎の調製粒子に分別した。そして、以下の方法により平均円相当径毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
【0066】
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を5g/min、供給時間を30分とし、振動型供給装置から供給される調製粒子の重量を電子天秤を用いて測定した。また、電子天秤の計量分解能を0.01gとし、経時的供給量を5秒ごとに測定し、2分後から30分後までの供給量データを用いて供給量と供給量の標準偏差を求めた。この際、供給の様子などを詳細に観察した結果から供給量標準偏差が0.01以下の場合は定量供給性が良好であると判断することができた。そのため、供給量標準偏差0.01を良否判断の基準とすることにした。
【0067】
図5は、平均円相当径と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は平均円相当径を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
図5からは、平均円相当径が20μm以上の場合には、供給量標準偏差が0.01以下
となり定量供給性が良好となることが分かる。一方、平均円相当径が20μm未満となる
場合には、供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれることが分かる。
【0068】
以上は、平均円相当径の下限値の場合である。ここで、図5から分かるように平均円相当径が大きくなっても定量供給性が損なわれることがないので、振動型供給装置を用いた評価では上限値を決めることはできない。
【0069】
前述したように平均円相当径の上限値は主に供給路16などにおける詰まりやエアロゾル化機構4における解砕不良の発生などの観点から決定することができる。すなわち、平均円相当径が大きすぎると収容機構から供給される際、あるいはエアロゾル化機構4への供給の過程において詰まりなどが生じて定量供給性が損なわれる。また、エアロゾル化機構4における解砕においても一次粒子にまで解砕されない断片が生じるようになる。このような断片は膜状構造物の形成に寄与しないので、結果的にエアロゾル濃度の均一性が損なわれることになる。
【0070】
本発明者は、供給路16などにおける供給条件やエアロゾル化機構4における解砕条件などを詳細に検討した結果、平均円相当径を500μm以下とすることが好ましいとの知
見を得た。
そのため、平均円相当径は、20μm以上、500μm以下とすることが好ましい。
【0071】
また、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31の平均の円形度を指標とすることができる。
例えば、平均の円形度が小さくなりすぎると転がりにくくなるので円滑な供給が困難となる。その結果、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが損なわれるおそれがある。そのため、調製粒子31の平均の円形度が所定の値以上になるようにすることが好ましい。
【0072】
尚、円形度とは次式により求められる値であり、市販の形状解析ソフトウェアを用いて調製粒子31の光学顕微鏡写真などを解析することで算出することができる。そのようなものとしては、例えば、偏光光学顕微鏡(ニコン社製LV−IMA)に組み込まれた解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を例示することができる。

円形度=4π×(画像における調製粒子の面積)/(画像における調製粒子の周囲長)

ここで、円形度は真円の場合1となる。すなわち、円形度の最大値は1となる。
【0073】
また、平均の円形度は、複数の調製粒子を任意に選び、これらの円形度を測ってその平均値を算出したものである。算出に際しては、調製粒子としての性格を有していない凝集粒や一次粒子、あるいは一次粒子が複数個重なった状態で観察されるような粒子の群は除外する。具体的には写真判定に際して、平均円相当径が5μm以下で計測されたデータ群は削除する。また写真判定画像において、画像の外縁部境界に接する、すなわち粒子が完全に画像内に捉えられていないデータについても削除することで、値の信頼性を確保させる。
この場合、算出に用いる調製粒子のカウント数は150〜200個とするとよい。また、粒度分布において30μm以下に多くの頻度を持つ場合には、前述した平均円相当径の算出の場合と同様にして取り扱うようにすることが好ましい。なお、解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を用いる場合には、平均円相当径と円形度とのデータを同時に収集することができる。
【0074】
定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み前述の平均圧壊強度の範囲内にある調製粒子を準備し、これらを平均の円形度毎の調製粒子に分別した。そして、以下の方法により平均の円形度毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を5g/min、供給時間を30分とし、振動型供給装置から供給される調製粒子の重量を電子天秤を用いて測定した。また、電子天秤の計量分解能を0.01gとし、経時的供給量を5秒ごとに測定し、2分後から30分後までの供給量データを用いて供給量と供給量の標準偏差を求めた。この際、供給の様子などを詳細に観察した結果から供給量標準偏差が0.01以下の場合は定量供給性が良好であると判断することができた。そのため、供給量標準偏差0.01を良否判断の基準とすることにした。
【0075】
図6は、平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は平均の円形度を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
図6からは、平均の円形度が0.79以上の場合には、供給量標準偏差が0.01以下となり定量供給性が良好となることが分かる。一方、平均の円形度が0.79未満となる場合には、供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれるおそれがあることが分かる。
【0076】
以上は、平均の円形度の下限値の場合である。ここで、図6から分かるように平均の円形度が大きくなっても定量供給性が損なわれることがない。そのため、平均の円形度の上限値は1(真円)とすることができる。
そのため、平均の円形度は、0.79以上とすることが好ましい。
【0077】
次に、さらに短い時間に対する定量供給性の評価について例示をする。
この場合の定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径がサブミクロンの脆性材料微粒子を含む複数の調製粒子を準備し、円形度を測定し、以下の方法により円形度毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を0.5g/minおよび5g/min、供給時間を最大3分とし、0.5g/minでは0.1秒毎に、5g/minでは1秒毎に振動型供給装置から供給される調製粒子の前後0.1秒間の重量変化から求まる流量を測定した。この流量の平均値を算出し、その標準偏差を求めた。
【0078】
図7は、供給速度0.5g/minの場合における平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
図8は、供給速度5g/minの場合における平均の円形度と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図7、図8における横軸は平均の円形度を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
この場合、図7においては供給量標準偏差が0.122以下のときに、また図8においては供給量標準偏差が0.178以下のときに、格段に定量供給性に優れていると判断された。
そのため、図7、図8より平均の円形度が0.65以上の場合には供給量が安定することがわかる。一方、平均の円形度が0.59以下の場合には供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれることがわかる。なお、供給速度が5g/minを超えるような場合においても、供給量の安定性は同じ傾向を示した。
【0079】
また、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31のD10値を指標とすることができる。
例えば、D10値が小さくなりすぎると(調製粒子の粒度分布において、一番小さい粒子から10%のところに位置するものの粒径が小さくなりすぎると)、付着などが生じやすくなるので円滑な供給が困難となる。その結果、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが損なわれるおそれがある。そのため、調製粒子31のD10値が所定の値以上になるようにすることが好ましい。
【0080】
また、D10値とは、調製粒子の粒度分布において、一番小さい粒子から10%(下から10%)のところに位置するものの粒径をいう。D10値は、複数の調製粒子を任意に選び、それぞれの円相当径を小さいものから順番に並べ、一番小さい粒子から10%のところに最も近く位置する粒子の粒径により定める。なお、算出に用いる調製粒子のカウント数は150〜200個とするとよい。この場合、脆性材料微粒子の一次粒子径を0.1μm〜5μmとし、脆性材料の一次粒子径に応じて、調製粒子としての性格を有していない凝集粒や一次粒子、あるいは一次粒子が複数個重なった状態で観察されるような粒子の群は除外する。具体的には写真判定に際して、平均円相当径が5μm以下で計測されたデータ群は削除する。また写真判定画像において、画像の外縁部境界に接する、すなわち粒子が完全に画像内に捉えられていないデータについても削除することで、値の信頼性を確保させる。
また、粒度分布において30μm以下に多くの頻度を持つ場合には、前述した平均円相当径の算出の場合と同様にして取り扱うようにすることが好ましい。なお、解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を用いる場合には、平均円相当径とD10値とのデータを同時に収集することができる。
【0081】
尚、D10値は、市販の形状解析ソフトウェアを用いて調製粒子31の光学顕微鏡写真などを解析することで算出することができる。そのようなものとしては、例えば、偏光光学顕微鏡(ニコン社製LV−IMA)に組み込まれた解析ソフト(mitani corporation製
Win Roof)を例示することができる。
【0082】
定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み前述の平均圧壊強度の範囲内にある調製粒子を準備し、これらをD10値毎の調製粒子に分別した。そして、以下の方法によりD10値毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を5g/min、供給時間を30分とし、振動型供給装置から供給される調製粒子の重量を電子天秤を用いて測定した。また、電子天秤の計量分解能を0.01gとし、経時的供給量を5秒ごとに測定し、2分後から30分後までの供給量データを用いて供給量と供給量の標準偏差を求めた。この際、供給の様子などを詳細に観察した結果から供給量標準偏差が0.01以下の場合は定量供給性が良好であると判断することができた。そのため、供給量標準偏差0.01を良否判断の基準とすることにした。
【0083】
図9は、D10値と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸はD10値を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
図9からは、D10値が6.6μm以上の場合には、供給量標準偏差が0.01以下となり定量供給性が良好となることが分かる。一方、D10値が6.6μm未満となる場合には、供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれることが分かる。
【0084】
以上は、D10値の下限値の場合である。ここで、図9から分かるようにD10値が大きくなっても定量供給性が損なわれることがない。そのため、D10値の上限値には特に限定はないが、実質的には調製粒子の平均円相当径以下となるため、500μm以下となる。
そのため、D10値は6.6μm以上とすることが好ましい。
【0085】
また、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31の粒度分布偏差割合を指標とすることができる。
例えば、粒度分布偏差割合が大きくなりすぎる、すなわち、粒度分布が広くなりすぎると円滑な供給が困難となる。その結果、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが損なわれるおそれがある。そのため、調製粒子31の粒度分布偏差割合が所定の値以下になるようにすることが好ましい。
粒度分布偏差割合とは、(円相当径の標準偏差σ)/(平均円相当径)により算出された値である。粒度分布偏差割合は、複数の調製粒子を任意に選び、その円相当径を計測し、円相当径の平均値と標準偏差σとを求め、(円相当径の標準偏差σ)/(平均円相当径)を算出することで求めることができる。なお、算出に用いる調製粒子のカウント数は150〜200個とするとよい。粒度分布偏差割合の値は0から1の範囲となり、0に近いほど、粒度分布の狭い、粒径の揃った調製粒子といえる。
【0086】
また、粒度分布偏差割合は、市販の形状解析ソフトウェアを用いて調製粒子31の光学顕微鏡写真などを解析することで算出することができる。そのようなものとしては、例えば、偏光光学顕微鏡(ニコン社製LV−IMA)に組み込まれた解析ソフト(mitani corporation製 Win Roof)を例示することができる。算出に際しては、調製粒子としての
性格を有していない凝集粒や一次粒子、あるいは一次粒子が複数個重なった状態で観察されるような粒子の群は除外する。具体的には写真判定に際して、平均円相当径が5μm以
下で計測されたデータ群は削除する。また写真判定画像において、画像の外縁部境界に接する、すなわち粒子が完全に画像内に捉えられていないデータについても削除することで、値の信頼性を確保させる。
また、粒度分布において30μm以下に多くの頻度を持つ場合には、前述した平均円相当径の算出の場合と同様にして取り扱うようにすることが好ましい。
【0087】
定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み前述の平均圧壊強度の範囲内にある調製粒子を準備し、これらを粒度分布偏差割合毎の調製粒子に分別した。そして、以下の方法により粒度分布偏差割合毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を5g/min、供給時間を30分とし、振動型供給装置から供給される調製粒子の重量を電子天秤を用いて測定した。また、電子天秤の計量分解能を0.01gとし、経時的供給量を5秒ごとに測定し、2分後から30分後までの供給量データを用いて供給量と供給量の標準偏差を求めた。この際、供給の様子などを詳細に観察した結果から供給量標準偏差が0.01以下の場合は定量供給性が良好であると判断することができた。そのため、供給量標準偏差0.01を良否判断の基準とすることにした。
【0088】
図10は、粒度分布偏差割合と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は粒度分布偏差割合を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
図10からは、粒度分布偏差割合が0.59以下の場合には、供給量標準偏差が0.01以下となり定量供給性が良好となることが分かる。一方、粒度分布偏差割合が0.59を超える場合には、供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれることが分かる。
【0089】
以上は、粒度分布偏差割合の上限値の場合である。ここで、図10から分かるように粒度分布偏差割合が小さくなっても定量供給性が損なわれることがない。そのため、粒度分布偏差割合の下限値には特に限定がない。
そのため、粒度分布偏差割合は、0.59以下とすることが好ましい。
【0090】
また、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などを向上させるためには調製粒子31の安息角を指標とすることができる。
例えば、安息角が大きくなりすぎる、すなわち、流動が起こりにくくなると円滑な供給が困難となる。その結果、定量供給性、エアロゾル濃度の均一性などが損なわれるおそれがある。そのため、調製粒子31の安息角が所定の値以下になるようにすることが好ましい。
安息角は、以下のようにして求めた。まず、直径が30mmの円盤の中心を狙って、調製粒子を5g/min以下の速度で少量ずつ落下させて、円盤から調製粒子がもれ始めるまで堆積させる。そして、例えば、側面から写真撮影を行い、画像解析により調製粒子の堆積した三角錐の左右の斜面と底辺との間の角度を計測し、その平均値を算出することで安息角を求めるようにした。
【0091】
定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径が0.3μm程度の脆性材料微粒子を含み前述の平均圧壊強度の範囲内にある調製粒子を準備し、これらを安息角毎の調製粒子に分別した。そして、以下の方法により安息角毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を5g/min、供給時間を30分とし、振動型供給装置から供給される調製粒子の重量を電子天秤を用いて測定した。また、電子天秤の計量分解能を0.01gとし、経時的供給量を5秒ごとに測定し、2分後から30分後までの供給量データを用いて供給量と供給量の標準偏差を求めた。この際、供給の様子などを詳細に観察した結果から供給量標準偏差が0.01以下の場合は定量供給性が良好であると判断することができた。そのため、供給量標準偏差0.01を良否判断の基準とすることにした。
【0092】
図11は、安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。尚、横軸は安息角を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
図11からは、安息角が42.5度以下の場合には、供給量標準偏差が0.01以下となり定量供給性が良好となることが分かる。一方、安息角が42.5度を超える場合には、供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれるおそれがあることが分かる。
【0093】
以上は、安息角の上限値の場合である。ここで、図11からも分かるように安息角が小さくなっても定量供給性が損なわれることがない。そのため、安息角の下限値には特に限定がない。すなわち、安息角は0度を超えていればよい。
そのため、安息角は42.5度以下とすることが好ましい。
【0094】
次に、さらに短い時間に対する定量供給性の評価について例示をする。
この場合の定量供給性の評価においては、まず、平均一次粒子径がサブミクロンの脆性材料微粒子を含む複数の調製粒子を準備し、安息角を測定し、以下の方法により安息角毎の調製粒子の定量供給性を評価した。
定量供給性の評価には、振動型供給装置を用いた。そして、供給速度を0.5g/minおよび5g/min、供給時間を最大3分とし、0.5g/minでは0.1秒毎に、5g/minでは1秒毎に、振動型供給装置から供給される調製粒子の前後0.1秒間の重量変化から求まる流量を測定した。この流量の平均値を算出し、標準偏差を求めた。
【0095】
図12は、供給速度0.5g/minの場合における安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
図13は、供給速度5g/minの場合における安息角と供給量標準偏差との関係を例示するためのグラフ図である。
なお、図12、図13における横軸は安息角を表し、縦軸は供給量標準偏差を表している。
この場合、図12においては供給量標準偏差が0.192以下のときに、また図13においては供給量標準偏差が1.018以下のときに、定量供給性に優れていると判断された。さらには図12において供給量標準偏差が0.122以下のとき、また図13において供給量標準偏差が0.178以下のときに、定量供給性が格段に優れていると判断された。
そのため、図12、図13より安息角が48°以下の場合には定量供給性が高く、さらに44°以下の場合には供給量標準偏差が格段に小さくなるためさらに定量供給性が優れていることがわかる。一方、安息角が48°を超えた場合には供給量が経時的に不安定となり、定量供給性が損なわれることが分かる。なお、供給速度が5g/minを超えるような場合においても、供給量の安定性は同じ傾向を示した。
【0096】
また、安息角が48°以下の調製粒子を用いた場合には、脆性材料微粒子のノズルからの噴射量の安定化が図れた。
そのため、安息角が48°以下の調製粒子は、形成される構造物の厚みの精度が比較的必要ではない大面積の膜状構造物を形成する場合にも好適に用いることができる。また、後工程で研磨処理を行うような複合構造物を形成する場合にも好適に用いることができる。また、ノズルと基板との相対移動を繰り返し往復運動をさせることで形成される構造物の厚みを稼ぎ、厚みの平均化を図るような場合にも好適に用いることができる。
さらに、安息角が44°以下の調製粒子は、脆性材料微粒子のノズルからの噴射量の安定性が非常に優れている。
そのため、高い厚みの精度が要求される構造物を形成する場合や、構造物の厚みが数μm以下の薄い膜状構造物を形成する場合などにおいても高い製造能力を発揮することができる。そして、安息角が44°以下の調製粒子をこの様な用途に用いれば、より好適な構造物を形成することができる。
【0097】
また、複合構造物を良好に形成させるためには、調製粒子の水分量を考慮することが好ましい。本発明者の得た知見によれば、調製粒子31の水分量を0.45重量%以下とすると複合構造物形成を良好に行うことができる。尚、水分量の同定は調製粒子31を300℃程度まで加熱したときの重量減少を測定することなどで行うことができる。
【0098】
また、形成される複合構造物への不純物混入抑制の観点からは、調製粒子31の炭素含有量を1重量%以下とすることが好ましい。調製粒子31を生成する際に、樹脂バインダーを用いる場合がある。常温で成膜を行うエアロゾルデポジション法を用いて複合構造物形成を行う場合、樹脂バインダーが調製粒子31に混在していると、エアロゾル化の阻害要因となったり、複合構造物中に樹脂が混在する不具合を生じるおそれがある。そのため、樹脂バインダーを含んだ調製粒子を数百度の熱処理に供し、樹脂バインダーを焼き飛ばす必要がある。この場合、不十分な熱処理をすれば調製粒子中に炭素が残存し、形成される複合構造物へ不純物(炭素)が混入するおそれがある。そのため、樹脂バインダーの種類などに応じて熱処理温度を適宜設定することで残留炭素量を極力少なくすることが好ましい。本発明者の得た知見によれば、炭素含有量を1重量%以下とすれば、複合構造物の形成を良好に行えるとともに、不純物が複合構造物に混入した場合でもその影響を抑制することができる。
【0099】
以上に説明をしたような調製粒子31は、例えば、スプレードライヤー法、パン型造粒機、ポット型造粒機などを用いて製造することができる。この場合、前述したように、調製粒子31の製造にあたりバインダーを加えても良いし、水などを加えても良い。尚、スプレードライヤー法、パン型造粒機、ポット型造粒機などについては既知の技術を用いることができるのでその説明は省略する。調製粒子の形状、大きさ、硬度は、これらの方法の様々な制御因子、例えばスプレードライヤーの噴霧量や噴霧状態、温度など、また造粒機の回転数や回転時間などの通常の諸因子、造粒機の構造、大きさ、これらに加える水分量などを適宜設定することで変化させることができる。
【0100】
図14は、本発明の第2の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。すなわち、図14(a)は複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の基本構成を例示するためのブロック図である。また、図14(b)は調製粒子の収納からエアロゾル化されるまでの流れを模式的に表した図である。また、図14(c)は調製粒子の収納からエアロゾル化されるまでの間の状態変化を表した図である。尚、図14(a)に示した各構成要素に対応するようにして、図14(b)、図14(c)を描いている。
【0101】
図14(a)に示すように、本実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)100aは、図1(a)において例示をした複合構造物形成システム100と同様に、収容機構1と、定量供給機構2と、ガス供給機構3と、エアロゾル化機構4と、吐出口5と、を備えている。
【0102】
また、本実施の形態においては、定量供給機構2とエアロゾル化機構4との間に固気混相流形成機構6がさらに設けられている。
固気混相流形成機構6は、定量供給機構2により供給された調製粒子31と、ガス供給機構3により供給されたガスGとにより固気混相流33を形成させるためのものである。そして、固気混相流形成機構6により形成された固気混相流33は供給路16を通じてエアロゾル化機構4へと供給される。
【0103】
固気混相流形成機構6を設けるものとすれば、均質かつ安定した固気混相流33を形成させることができる。また、固気混相流33を形成させるものとすれば、調製粒子31を単に供給するのみならず、エアロゾル化機構4に向けて調製粒子31を加速させることができる。そのため、加速された調製粒子31の運動エネルギーを利用した機械的衝撃により解砕することができるので、エアロゾル化が円滑に行われることになる。
尚、その他の構成やその作用については、図1において説明をしたものと同様のためその説明は省略する。
【0104】
図15は、本発明の第3の実施の形態にかかる複合構造物形成システムの基本構成を例示するための模式図である。すなわち、図15(a)は複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の基本構成を例示するためのブロック図である。また、図15(b)は調製粒子の収納からエアロゾル化されるまでの流れを模式的に表した図である。また、図15(c)は調製粒子の収納からエアロゾル化されるまでの間の状態変化を表した図である。尚、図15(a)に示した各構成要素に対応するようにして、図15(b)、図15(c)を描いている。
【0105】
図15(a)に示すように、本実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)100bは、収容機構1と、定量供給機構2と、ガス供給機構3と、エアロゾル化機構4と、吐出口5と、を備えている。
【0106】
本実施の形態においては、前述した固気混相流33を形成させることなく、定量供給機構2から調製粒子31をエアロゾル化機構4へ供給するようにしている。また、エアロゾル化機構4にはガス供給機構3からガスGを供給するようにしている。そして、エアロゾル化機構4において供給された調製粒子31を解砕して、微粒子30PがガスG中に分散したエアロゾル32を形成するようにしている。
【0107】
調製粒子31の解砕は、例えば、図示しない「すり潰し機構」をエアロゾル化機構4に設けて、供給された調製粒子31をすり潰すようにして解砕することができる。
また、供給された調製粒子31を静電引力や重力で加速し、加速された調製粒子31の運動エネルギーを利用した機械的衝撃により解砕するようにすることもできる。
尚、その他の構成やその作用については、図1において説明をしたものと同様のためその説明は省略する。
【0108】
図16は、本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の第1の具体例を例示するための模式図である。
尚、図1で説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付しその説明は省略する。
【0109】
本具体例においては、構造物形成室8が設けられ、吐出口5の少なくとも先端部分と基材7を支持する支持走査機構10とが、構造物形成室8の中に配置されている。構造物形成室8の中に搬入された基材7は、支持走査機構13に内蔵されている、例えば、静電チャックなどで支持される。
【0110】
構造物形成室8の内部空間は、排気機構9によって減圧状態が維持可能とされている。排気機構9としては、例えば、ロータリーポンプなどを用いることができ、構造物形成室8の内部を大気圧よりも低い減圧雰囲気に維持することができる。
【0111】
エアロゾル化機構4において生成されたエアロゾルは、吐出口5から基材7に向けて噴射され、基材7上には原料微粒子からなる膜状構造物26が形成される。この時、構造物形成室8内が減圧環境にあるために、エアロゾルは圧力差により加速されて基材7に衝突する。その結果、前述したように強固な膜状構造物を基材7上に形成することができる。
【0112】
また、構造物形成室8を減圧状態に維持することにより、エアロゾルが基材7に衝突して形成される「新生面」がより長い時間、活性状態を維持することができ、膜状構造物の緻密性や強度を上げることが可能となる。
【0113】
また、基材7は、支持走査機構10の上に支持され、XYZθ方向の少なくともいずれかの方向にその位置を適宜移動させながら膜状構造物26を形成させることができる。すなわち、支持走査機構10により基材7を適宜走査しつつエアロゾルを吹き付けることで、吐出口5から噴射されるエアロゾルのビームサイズよりも大面積の基材7の表面に膜状構造物26を形成させることができる。
【0114】
本具体例によれば、前述した調製粒子31を収容機構1に収納し、その調製粒子31を定量供給機構2により確実に供給することで、供給量を容易に定量化することができる。また、前述したように、エアロゾル化機構4への供給過程における解砕、それに伴う付着やスタックなどを抑制することができるので定量供給性を格段に高めることができる。そのため、エアロゾル中の微粒子濃度を一定にすることができる。その結果、吐出口5と基材7とを相対的に走査させることにより大面積の基材7の表面に膜状構造物26を形成させる場合において、エアロゾル中の微粒子濃度を一定に維持することができるので、大面積に亘り膜厚や膜質を均一にすることができる。
【0115】
図17は、本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の第2の具体例を例示するための模式図である。
尚、図14、図16で説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付しその説明は省略する。
【0116】
本具体例においては、収容機構1の内部に収容された調製粒子31が定量供給機構2によって固気混相流形成機構6に供給される。そして、固気混相流形成機構6において、定量供給機構2により供給された調製粒子31と、ガス供給機構3により供給されたガスとにより固気混相流が形成され、形成された固気混相流は供給路16を通じてエアロゾル化機構4へと供給される。
【0117】
また、さらに本具体例においては、加速手段及び、整流手段を有する吐出口11を具備し、吐出口11には支持走査機構12が接続されている。エアロゾル化機構4において生成されたエアロゾルは、配管13を介して吐出口11から基材7aに向けて噴射される。吐出口11の加速手段や流路径に差を設けることにより得られるジェット気流、圧縮効果などを利用すればエアロゾルを加速させることができる。
【0118】
本具体例においては、吐出口11が支持走査機構12により支持され、XYZθの少なくともいずれかの方向に移動可能とされている。基材7aが立体形状を有している、あるいは膜状構造物26aを形成させる場所が点在するなどの場合に応じて、吐出口11と基材7a表面との直線距離を保った状態で、吐出口11を移動させつつエアロゾルを噴射させ、基材7a上に大面積に亘り均一な膜状構造物26aを形成させることができる。尚、この場合、可撓性を有する配管13を設けるものとすれば、吐出口11の移動による変位を吸収させることができる。可撓性を有する配管13としては、例えば、ゴムなどの弾性材料からなる配管や、ベローズ(じゃばら)などの配管を例示することができる。尚、吐出口11と基材7aは相対的に移動すればよく、支持走査機構10をXYZθの少なくともいずれかの方向に移動可能としてもよい。
【0119】
本具体例においても、前述した調製粒子31を収容機構1に収納し、その調製粒子31を定量供給機構2により確実に供給することで、供給量を容易に定量化することができる。また、前述したように、エアロゾル化機構4への供給過程における解砕、それに伴う付着やスタックなどを抑制することができるので定量供給性を格段に高めることができる。そのため、エアロゾル中の微粒子濃度を一定にすることができる。その結果、吐出口11と基材7aとを相対的に走査させることにより、立体形状あるいは膜状構造物26aを形成させる場所が点在する基材7aの表面に膜状構造物26aを形成させる場合においても、エアロゾル中の微粒子濃度を一定に維持することができるので、大面積に亘り膜厚や膜質を均一にすることができる。
【0120】
図18は、本発明の実施の形態に係る複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)の第3の具体例を例示するための模式図である。
尚、図1、図16などにおいて説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付しその説明は省略する。
【0121】
本具体例においては、吐出口5と基材7との間で、エアロゾル中の微粒子濃度を計量する計量機構14が設けられている。計量機構14は、制御機構15と電気的に接続されている。また、制御機構15は、後述するフィードバック制御のために、定量供給機構2、ガス供給機構3、排気機構9とも電気的に接続されている。尚、後述するフィードバック制御のための接続においては、少なくとも定量供給機構2と電気的に接続されていればよい。
【0122】
また、計量機構14はエアロゾルに含まれる微粒子の濃度を計量可能な場所に設けるようにすることができる。その場合、例えば、図18に示すように、計量機構14を構造物形成室8の外側または内側に設けるようにしてもよいし、構造物形成室8の内外に設けるようにしてもよい。また、設ける個数についても適宜変更することができる。
【0123】
本具体例においては、吐出口5から噴射されるエアロゾルに含まれる微粒子の濃度が計量機構14で計量され、計量された情報が計量機構14から制御機構15へと送信される。制御機構15は、送信されてきた情報に基づいて定量供給機構2、ガス供給機構3、排気機構9へのフィードバック制御を行う。尚、フィードバック制御は、少なくとも定量供給機構2に対して行うようにすればよい。
【0124】
図19〜図21は、本実施の形態において用いることができる計量機構を例示するための模式図である。
図19に示すように、計量機構14は、例えば、レーザなどの投光手段1402と、その光をモニタする受光手段1404などを備えたものとすることができる。この場合、エアロゾルに投光手段1402からのレーザを照射し、その透過量をモニタすることにより、エアロゾルに含まれる微粒子の濃度を計量することができる。
【0125】
また、図20に例示するように、レーザなどの投光手段1402からエアロゾルにレーザを照射し、その反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサなどの受光手段140
4aによりモニタしてもよい。
【0126】
また、図21に例示するように、定量供給機構2にロードセルを設け、定量供給機構2の重量変化を計量することで、供給量を計量することもできる。そして、重量の変化によって振動子の振幅などを変化させるようにすれば、常に一定の重量の調製粒子31を供給することができる。この場合、重量変化を読み取り易くするために、多段式の定量供給機構を設けるようにすれば、より精度の高い供給量の計量とその制御をすることができる。
【0127】
本具体例においても、前述した調製粒子31を収容機構1に収納し、その調製粒子31を定量供給機構2により確実に供給することで、供給量を容易に定量化することができる。また、前述したように、エアロゾル化機構4への供給過程における解砕、それに伴う付着やスタックなどを抑制することができるので定量供給性を格段に高めることができる。そのため、エアロゾル中の微粒子濃度を一定にすることができる。
【0128】
また、計量機構14を設け、制御機構15により少なくとも定量供給機構2に対してフィードバック制御をすることで、吐出後のエアロゾルに含まれる微粒子の濃度に揺らぎや経時変化があった場合でも、エアロゾルに含まれる微粒子の濃度を精密に制御することができる。その結果、エアロゾル中の微粒子濃度を一定に維持することができるので、大面積に亘り膜厚や膜質を均一にすることができる。
供給性に優れ、定量的に供給されやすい状態となっている調製粒子を用いるために、前述したフィードバック制御の正確性は高く、好適である。
【0129】
次に、定量供給機構2の具体例について例示をする。
図22は、定量供給機構2の第1の具体例を例示するための模式図である。
すなわち、図22は、定量供給機構2の要部の模式斜視図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の鉛直下方に開口が設けられ、この開口を塞ぐようにローラ210が設けられている。ローラ210は、その表面に複数の凹部212が設けられ、矢印Aの方向あるいはその反対の方向に回転する。凹部212は調製粒子31よりも十分に大きな容積を有している。収容機構1の内部側壁と、ローラ210の表面と、の間の隙間はローラ210の回転を妨げない範囲で十分に狭くされ、この隙間から調製粒子31がこぼれ落ちないようにされている。尚、収容機構1の内部側壁あるいは開口端に、ゴムなどの弾力性を有するシールを設けてローラ210の表面に接触させるようにしてもよい。
【0130】
収容機構1の中で、調製粒子31はその自重により、ローラ210の凹部212に充填され、ローラ210が回転することにより、収容機構1の外側(下側)に供給され、凹部212が鉛直下方を向くと、調製粒子31は、自重によって落下する。この落下先に固気混相流形成機構6またはエアロゾル化機構4を設けることにより、微粒子の濃度が一定なエアロゾルを形成させることが可能となる。
【0131】
本具体例においては、凹部212に充填された所定量の調製粒子31がローラ210の回転に伴って、収容機構1から供給され、固気混相流形成機構6またはエアロゾル化機構4に向けて落下する。つまり、所定量の調製粒子31を次々に供給することができる。
【0132】
また、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりローラ210の凹部212に充填されるので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。
またさらに、調製粒子31が凹部212の中に過度に押し固められないので、ローラ210の回転により凹部212が鉛直下方を向いた時に、その中の調製粒子31は、自重により円滑に落下できる。つまり、調製粒子31が凹部212の中から落ちにくくなるという問題も抑制することができ、調製粒子31を安定的に供給することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状が調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0133】
図23は、定量供給機構2の第2の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においても、調製粒子31が収容された収容機構1の鉛直下方に開口が設けられている。そして、この開口を塞ぐようにローラ222が設けられている。ローラ222の表面には複数の凸部224が設けられ、矢印Aの方向あるいはその反対の方向に回転する。
【0134】
本具体例においては、ローラ222の表面には凸部224が設けられているので、ローラ222の表面と、収容機構1の内部側壁と、の間には、凸部224の高さに対応した隙間が生ずる。ただし、凸部224をローラ222の表面にある程度、密に設けたり、凸部224の形状や配列を適宜調節することにより、収容機構1の下端の開口とローラ222の表面との隙間から調製粒子31が連続的にこぼれ落ちることを防止することができる。
【0135】
そして、ローラ222の回転に伴い、収容機構1の中に収容されている調製粒子31が凸部224により押し出され、自重により落下して固気混相流形成機構6またはエアロゾル化機構4に供給される。収容機構1に収容されている調製粒子31は、それぞれの凸部224により外部に掻き出されるようにして取り出されるので、凸部224の形状や数、回転数によって調製粒子31の量を制御することができる。
【0136】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりローラ222の表面に接触し、凸部224により外部に押し出されるので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0137】
図24は、定量供給機構2の第3の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の鉛直下方に略円形の開口が設けられている。そして、この開口にはメッシュ230が設けられている。メッシュ230は収容機構1の底面に接触しながら、矢印Aの方向あるいはその反対の方向に回転する。
【0138】
本具体例においては、メッシュ230が回転することにより、調製粒子31がメッシュ230の開口を通過して落下する。調製粒子31の落下の量は、メッシュ230の開口サイズや回転速度などに応じて変化する。このとき、メッシュの開口サイズの大きさを、調製粒子31の平均粒子径の2倍から7倍の範囲としておけば、メッシュ230の静止時に調製粒子31同士をブリッジさせることができるため、不必要な落下を抑制することができる。その結果、メッシュ230の回転による調製粒子31の供給量の制御が容易となる。
【0139】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりメッシュ230の表面に接触し、開口を通過して外部に落下するので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0140】
またさらに、メッシュ230の複数の開口を介して複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、固気混相流形成機構6またはエアロゾル化機構4に常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、常に一定量の調製粒子31が安定して供給されるので、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0141】
図25は、定量供給機構2の第4の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においても、第3の具体例に関して前述したものと同様に、調製粒子31が収容された収容機構1の鉛直下方に円形の開口が設けられている。そして、この開口にはメッシュ230が設けられている。メッシュ230の上にはブラシ232が設置され、メッシュ230に接触しながら、矢印Aの方向あるいはその反対の方向に回転する。そしてさらに、収容機構1には振動子234が付設されている。振動子234は、収容機構1の壁面などを振動させ、収容機構1に収容されている調製粒子31を円滑にブラシ232及びメッシュ230に向けて落下供給させる作用を奏する。また、収容機構1の中の調製粒子31に振動を与えることにより、流動性を向上させる効果も得られる。
尚、振動子234は、第1〜第3の各具体例についても同様に設けて同様の作用効果を得ることができる。
【0142】
本具体例においては、ブラシ232の回転に伴い、調製粒子31がメッシュ230の開口を通過して落下する。調製粒子31の落下の量は、メッシュ230の開口サイズと、ブラシ232の刷毛の密度や回転速度と、に応じて変化する。このとき、メッシュの開口サイズの大きさを、調製粒子31の平均粒子径の2倍から7倍の範囲としておけば、メッシュ230の静止時に調製粒子31同士をブリッジさせることができるため、不必要な落下を抑制することができる。その結果、メッシュ230の回転による調製粒子31の供給量の制御が容易となる。
【0143】
そして、ブラシ232のそれぞれの刷毛の先がメッシュ230の開口を通過する動作に応じて調製粒子31が開口から押し出される。つまり、微視的にみると、調製粒子31は軽くメッシュから押し出され、落下して固気混相流形成機構6またはエアロゾル機構4に供給される。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0144】
またさらに、メッシュ230の複数の開口を介して複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0145】
図26は、定量供給機構2の第5の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の下部には供給路235が設けられ、その供給路235には振動子234が設置されている。収容機構1に収容された調製粒子31は、図示しないオリフィスを通過して所定の量が供給路235に供給される。供給路235に供給された調製粒子31は、振動子234の振動により供給路235から供給される。
【0146】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重により図示しないオリフィスを通過して外部(供給路235)に落下するので、過度に押し固められることはない。また、供給路235に供給された調製粒子31も振動子234の振動により外部に落下するので、調製粒子31の性状が変化することはない。つまり、調製粒子31はその性状が変化することなく定量供給機構2から外部に供給される。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0147】
またさらに、複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給されることになる。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0148】
図27は、定量供給機構2の第6の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の下部に溝が形成された回転盤が配置され、回転盤の回転方向の先にはスクレーパが配置されている。
【0149】
回転盤の溝に導入された調製粒子31は、回転盤が回転することで収容機構1より供給される。そして、溝に導入された調製粒子31はスクレーパによって掻き出される。
【0150】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重により回転盤の表面に接触し、溝に導入された後スクレーパによって掻き出されるので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0151】
またさらに、回転盤の複数の溝を介して複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、エアロゾル化機構4において、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0152】
図28は、定量供給機構2の第7の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の下部に、スクリューが設けられ、スクリューの端部にはスクリューを回転させるための図示しないモータが備えられている。また、スクリューをスムーズに回転させるために、スクリューには一定の長さの外壁が設けられており、外壁の両端部は開放されている。スクリューの溝に導入された調製粒子31は、スクリューが回転することで収容機構1より供給される。このとき、調製粒子31は外壁とのクリアランスで一定量にすりきられて移動し、外壁の端部より一定速度で落下する。
【0153】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりスクリューの表面に接触するので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0154】
またさらに、スクリューにより複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、エアロゾル化機構4において、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0155】
図29は、定量供給機構2の第8の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の下部には、オリフィス237が設けられ、その下方にはベルトコンベア236が地軸に対してほぼ水平に配置されている。
【0156】
オリフィス237によってすりきられた調製粒子31はベルトコンベア236の上部に乗って供給される。ベルトコンベア236は一定速度で運転されるため、調製粒子31は所定の長さを移動した後に、ベルトコンベア236の端部より一定速度で落下する。
【0157】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりオリフィス237を通過してベルトコンベア236の上に落下するので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0158】
またさらに、ベルトコンベア236を介して複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、エアロゾル化機構4において、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
【0159】
図30は、定量供給機構2の第9の具体例を例示するための模式図である。
本具体例においては、調製粒子31が収容された収容機構1の下部にオリフィス238が設けられ、更にそのオリフィス238を開閉するためのシャッター239が設けられている。オリフィス238の開口形状は調製粒子31の大きさに応じて適宜決定されており、シャッター239を開閉することで、調製粒子31の供給と停止をさせることができる。
【0160】
本具体例においては、収容機構1の中で、調製粒子31は、その自重によりオリフィス238を通過して外部に落下するので、過度に押し固められることはない。つまり、調製粒子31はつぶれることなく供給されるため、定量供給機構2から性状の変化した調製粒子31が供給されることを抑制することができる。そのため、前述した平均圧壊強度、円径度、安息角などの性状の調製がされた調製粒子31をそのまま供給することができるので、供給が安定し、スタックも無く目標どおりの安定した供給を達成することができる。
【0161】
またさらに、オリフィス238を介して複数の調製粒子31がほぼ同時および連続的に供給される。つまり、エアロゾル化機構4においては、常に多数の調製粒子31が連続的に供給され、調製粒子31の供給量は時間的にみて平均化される。従って、エアロゾル化機構4において、常に一定量の調製粒子31が安定して供給され、一定の微粒子濃度のエアロゾルを安定して発生させることができる。
一定値以上の結合強度及び管理された形状を有する調製粒子を前述した定量供給機構に用いても、供給途中で調製粒子が破壊、解砕されることがないため好適である。
【0162】
次に、エアロゾル化機構4について具体例を例示しながら説明する。
図31は、エアロゾル化機構の第1の具体例を例示するための模式図である。
エアロゾル化機構4aには、調製粒子31をガスと共に噴出する供給口1502と、その前方に設けられた機械的障壁としての衝撃板1504と、排出口1505とが設けられている。
【0163】
供給口1502から噴出された調製粒子31は、衝撃板1504に衝突した時に、衝撃力を受ける。この衝撃力により、調製粒子31が解砕し、一次粒子30P、または数個の一次粒子30Pが凝集した程度の凝集粒30Qを含んだ状態のものがガス中に分散してエアロゾル32となる。エアロゾル32はガス流にのって排出口1505より排出される。
【0164】
また、衝撃板1504を回転させるようにすれば、調製粒子31の衝突点の運動ベクトルが、エアロゾル32の噴射の運動ベクトルと略対向するようになるので、調製粒子31に対する衝撃力を増加させることができる。その結果、エアロゾル32中の微粒子濃度の均質化をより図ることができる。
【0165】
衝撃板1504の材質としては硬質のものが好ましく、例えば、アルミナや炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミなどのセラミックスとすることができる。衝撃板1504に衝突させる速度は調製粒子31が十分に解砕される程度でよく、衝撃板1504の表面に衝突の衝撃によって構造物が形成される程度より遅いほうがよい。
【0166】
この機械的衝撃によって調製粒子31がエアロゾルデポジション法における構造物形成に寄与する一次粒子30Pまで完全に解砕されることが理想であり、このとき最も構造物形成効率が向上する。しかしながら、実質的にはおおよその解砕がされ、構造物形成が工業的に利用できる程度の構造物形成効率を維持できればよい。これは時間当たりに形成できる膜厚によって知ることができる。
【0167】
図32は、エアロゾル化機構の第2の具体例を例示するための模式図である。
エアロゾル化機構4bには、調製粒子31を供給する供給口1502と、その前方に設けられた機械的障壁としての衝突板1504aと、排出口1505とが設けられている。ガス供給口1507は、衝突板1504aに対して略平行となるように設けられ、ガス供給口1507の前方には排出口1505が設けられている。
【0168】
調製粒子31はガス流に乗って供給され、衝突板1504aと衝突することで一次粒子30P、または数個の一次粒子30Pが凝集した程度の凝集粒30Qに解砕される。衝突した地点へガス供給口1507からガスを噴射することで、衝突板1505aに付着する圧粉体を吹き飛ばすことができ、均一なエアロゾルを発生させることができる。
【0169】
図33は、エアロゾル化機構の第3の具体例を例示するための模式図である。
エアロゾル化機構4cには、調製粒子31を供給する供給口1502と、その前方に圧力障壁を形成させるためのガス供給口1507aと、排出口1505とが設けられている。また、ガス供給口1507aは、排出口1505が設けられた管路と略同軸に設けられている。
【0170】
調製粒子31はガス流に乗って供給され、ガス供給口1507aにより形成された圧力障壁と衝突する。このとき、調製粒子31には剪断力が働くので、調製粒子31は一次粒子30P、または数個の一次粒子30Pが凝集した程度の凝集粒30Qに解砕される。そして、ガス供給口1507から噴射されるガスにより、均一なエアロゾルが形成される。
【0171】
図34は、エアロゾル化機構の第4の具体例を例示するための模式図である。
エアロゾル化機構4dには、エアロゾルが流れる流路に沿って、流路径の大きい箇所1506と小さい箇所1508とが交互に設けられている。このようにすると、流路径の小さい箇所1508においてはガスが圧縮され、流路径の大きい箇所1506においてはガスが膨張する。このような圧縮と膨張とを繰り返すと、エアロゾルに含まれる調製粒子31に剪断力が作用する。この剪断力により、調製粒子31は一次粒子30P、または数個の一次粒子30Pが凝集した程度の凝集粒30Qに解砕される。
【0172】
尚、流路径の大きい箇所1506と小さい箇所1508の数は、例示したものに限定されるわけではなく、供給される調製粒子31の大きさや強度などに応じて適宜変更することができる。
【0173】
図35は、エアロゾル化機構の第5の具体例を例示するための模式図である。
エアロゾル化機構4eには、第1のガス供給口1507bと、第2のガス供給口1507cとが設けられている。そして、第1のガス供給口1507bと、第2のガス供給口1507cとは、その軸線が互いに交差するようにして設けられている。
【0174】
そのため、第1のガス供給口1507b、第2のガス供給口1507cから供給された調製粒子31同士を衝突させることができる。この衝突により、調製粒子31は一次粒子30P、または数個の一次粒子30Pが凝集した程度の凝集粒30Qに解砕される。尚、本実施の形態によれば、調製粒子31の壁面への衝突が避けられ、不純物が入りにくいという利点がある。
一定値以下の結合強度及び管理された形状を有する調製粒子を前述したエアロゾル化機構に用いることで、調製粒子は解砕されやすく、一次粒子リッチのエアロゾルとなりやすい。従って複合構造物の形成にとって好適である。
【符号の説明】
【0175】
1 収容機構、2 定量供給機構、3 ガス供給機構、4 エアロゾル化機構、5 吐出口、6 固気混相流形成機構、30P 微粒子、31 調製粒子、32 エアロゾル、33 固気混相流、100 複合構造物形成システム(エアロゾルデポジション装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法による複合構造物形成方法であって、前記脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体である調製粒子を複数、収容機構に収容し、
前記収容機構から前記調製粒子をエアロゾル化機構に供給し、
前記エアロゾル化機構において前記供給された前記調製粒子を解砕してエアロゾルを形成し、
前記エアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記構造物と前記基材との複合構造物を形成すること、を特徴とする複合構造物形成方法。
【請求項2】
前記調製粒子と、ガス供給機構から導入されたガスと、を混合して固気混相流とし、
前記固気混相流を前記エアロゾル化機構に供給すること、を特徴とする請求項1に記載の複合構造物形成方法。
【請求項3】
前記調製粒子は、前記収容機構から供給される際に実質的に解砕されないようにするために必要な平均圧壊強度を有すること、を特徴とする請求項1または2に記載の複合構造物形成方法。
【請求項4】
前記調製粒子は、前記エアロゾル化機構へ供給される途中では実質的に解砕されず、エアロゾル化機構において実質的に解砕されるのに必要な平均圧壊強度を有すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項5】
前記調製粒子は、前記エアロゾル化機構において機械的衝撃を加えられることで解砕されること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項6】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.47MPa以下であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項7】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.34MPa以下であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項8】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.015MPa以上であること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項9】
前記調製粒子の平均の円形度は、0.65以上であること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項10】
前記調製粒子に含まれる前記脆性材料微粒子同士が化学的結合をしていないこと、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項11】
前記調製粒子の平均円相当径は、20μm以上、500μm以下であること、を特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項12】
前記調製粒子のD10は、6.6μm以上であること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項13】
前記調製粒子の粒度分布偏差割合は、0.59以下であること、を特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項14】
前記調製粒子の安息角は、48度以下であること、を特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の複合構造物形成方法。
【請求項15】
脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けて噴射することにより前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させるエアロゾルデポジション法に用いられる調製粒子であって、
前記調製粒子は、平均一次粒子径が0.1μm以上、5μm以下の前記脆性材料微粒子を含む複数の粒子を固めた集合体であること、を特徴とする調製粒子。
【請求項16】
前記調製粒子は、収容機構から供給される際に実質的に解砕されないようにするために必要な平均圧壊強度を有すること、を特徴とする請求項15記載の調製粒子。
【請求項17】
前記調製粒子は、エアロゾル化機構へ供給される途中では実質的に解砕されず、エアロゾル化機構において実質的に解砕されるのに必要な平均圧壊強度を有すること、を特徴とする請求項15または16に記載の調製粒子。
【請求項18】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.47MPa以下であること、を特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項19】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.34MPa以下であること、を特徴とする請求項15〜18のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項20】
前記調製粒子の平均圧壊強度は、0.015MPa以上であること、を特徴とする請求項15〜19のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項21】
前記調製粒子の平均の円形度が0.65以上であること、を特徴とする請求項15〜20のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項22】
前記調製粒子に含まれる前記脆性材料微粒子同士が化学的結合をしていないこと、を特徴とする請求項15〜21のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項23】
前記調製粒子の平均円相当径が20μm以上、500μm以下であること、を特徴とする請求項15〜22のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項24】
前記調製粒子のD10が6.6μm以上であること、を特徴とする請求項15〜23のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項25】
前記調製粒子の粒度分布偏差割合が0.59以下であること、を特徴とする請求項15〜24のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項26】
前記調製粒子の安息角が48度以下であること、を特徴とする請求項15〜25のいずれか1つに記載の調製粒子。
【請求項27】
脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に衝突させて前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物と前記基材との複合構造物を形成するエアロゾルデポジション法に用いる複合構造物形成システムであって、
請求項15〜26のいずれか1つに記載の調製粒子を収容する収容機構と、
前記収容機構から前記調製粒子を供給する供給機構と、
前記供給された調製粒子に向けてガスを導入するガス供給機構と、
前記ガスを混流した前記調製粒子に対して衝撃を加えることで解砕してエアロゾルを形成させるエアロゾル化機構と、
前記エアロゾルを基板上に噴射する吐出口と、を備えることを特徴とする複合構造物形成システム。
【請求項28】
前記供給した前記調製粒子と、前記ガス供給機構から導入されたガスと、を混合して固気混相流を形成する固気混相流形成機構と、を備えることを特徴とする請求項27記載の複合構造物形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−242942(P2009−242942A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53493(P2009−53493)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】