説明

複合構造用接着剤の押出し成形

【課題】労働コスト、プロセス時間を削減し、充填材を取り付ける前に予め製造する必要をなくすことが可能な接着充填材を成形する方法が必要である。
【解決手段】充填材を押し出すことによってプロセス時間と労働コストを削減する、充填材を製造する方法及び装置が提供されている。構造充填材は、流動性の充填材の材料を押出し、押出された充填材を複合構造部材の一つの上にセットし、複合部材を作製することによって、少なくとも第1及び第2複合部材の間の隙間に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、複合構造を作製する方法及び装置に関し、さらに具体的には、複合パーツ間の充填材として使用される構造接着剤の押出し成形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合構造部材を互いに接合させるときに、部材間の接着ラインに沿って隙間又は空間が存在する可能性があり、これらの隙間又は空間を埋めて接着力を高める必要がある場合がある。例えば、航空機産業においては、例えばストリンガー等の複合胴体スティフナーは、ストリンガーと胴体外板との間の半径接着ラインに接着充填材を含むことができる。レイアップを形成中に層が曲がるあるいは折れるところにも空間が存在する可能性がある。接着ラインの空間を埋める、しばしばヌードル又はフィラーと表記される三角形の断面ストリップの形態の接着充填材が適用される。充填材は連続的に精密にカットされロール成形された接着性の積層ストリップから製造することができる。この製造プロセスでは、異物片の検査が要求されるだけでなく、充填材を手でストリンガー内に取り付ける必要がある。したがって、現在のプロセスでは大きな労働力を要し、品質管理の徹底が要求され、取り付ける前に充填材を予め製造しておく必要があり得る。充填材を予め製造しなければならないため、予め製造した充填材を冷えた環境、通常冷凍庫に保存して充填材の形状を維持しなければならない可能性がある。さらに、正確なカット及び連続的な成形プロセスのために、現在のプロセスを自動化することは難しい可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、労働コスト、プロセス時間を削減し、充填材を取り付ける前に予め製造する必要をなくすことが可能な接着充填材を成形する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によれば、充填材を押し出すことによってプロセス時間と労働コストを削減する、充填材を製造する方法及び装置が提供されている。充填材は複合構造部材上に直接押出して複合構造内の空間を埋めるか、あるいは充填材の断面形状を維持するのに使用することができるツール上に押出して、成形された充填材を構造部材上にセットすることができる。開示の方法により、予め充填材を製造し保存する必要性を実質的に除去することができる。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも第1及び第2複合部材の間の隙間に構造充填材を取り付ける方法が提供されている。充填材は流動性の充填材の材料を押出して、この充填材を第1複合構造部材上にセットすることによって成形される。次に第1及び第2構造部材を複合部材間の隙間内部に位置づけされた充填材とともに組立てることができる。流動性の充填材の材料を直接第1複合構造部材上に押出すことによって、又は充填材をツール上に押出してこのツールを使用して充填材を構造部材上にセットすることによって、充填材を第1複合部材上にセットすることができる。本方法はまた、充填材の材料を加熱して粘度を変化させることによって、充填材の材料を配合するときにその粘度を制御するステップも含むことができる。
【0006】
本方法の別の実施形態によれば、流動性の充填材の材料を押出してある長さの未硬化の充填材を形成することによって、複合構造用の構造充填材が成形される。流動性の充填材の材料が押出される量は制御可能である。流動性の充填材の材料の粘度も制御可能である。押し出された長さの充填材の材料を硬化させ、ディスペンスガンと基板を相対的に移動させて、ノズルを介して流動性の充填材の材料を基板上に押出すことにより成形する。一実施形態においては、基板は構造部材を含むことができ、その一方で別の実施形態では、基板は充填材を構造部材上にセットするのに使用されるツールを含むことができる。
【0007】
別の実施形態によれば、複合構造内の隙間用の構造充填材を製造する装置が提供されている。この装置は、ツール上に充填材を押出す手段を含む。このツールは複合構造上に充填材を送るのに使用することができる。ディスペンス手段は、流動性の充填材の材料を保持する本体と、それを通して流動性の充填材の材料を押出すことができるノズルを含むことができる。ディスペンス手段はまた、流動性の充填材の材料を本体からノズルに流す手段も含むことができる。流動性の充填材の材料の粘度を制御する手段も設けることができる。
【0008】
本発明の実施形態によって、プロセス時間、労働コストを削減し、充填材を予め製造し保存する必要性を除去することができる、接着充填材を押出す方法及び装置の必要が満たされる。下に説明する実施形態も本発明を構成するものである。
実施形態11 複合構造用構造充填材を成形する方法であって、
流動性の充填材の材料を押出すことによって、ある長さの未硬化の充填材を成形し、
流動性の充填材の材料を押出す量を制御し、
流動性の充填材の材料の粘度を制御し、
前記長さの未硬化の充填材を硬化させるステップを含む方法。
実施形態12 実施形態11の方法であって、
前記長さの未硬化の充填材を成形するステップが、ディスペンスガン及び基板を相対的に移動させることによって行われ、
流動性の充填材の材料を押出すステップが、ノズルを介して流動性の充填材の材料を基板上に押出すステップを含む方法。
【0009】
実施形態13 実施形態11の方法であって、
前記長さの未硬化の充填材の材料が所望の断面形状に成形される方法。
実施形態14 実施形態13の方法であって、
前記長さの未硬化の充填材が、前記長さの充填材の材料の所望の断面形状にほぼ一致する断面形状を有するノズルを介して充填材の材料を押出すことにより、所望の断面形状に成形される方法。
【0010】
実施形態15 実施形態12の方法であって、
基板が複合構造である方法。
実施形態16 実施形態12の方法であって、
基板がツールであり、
ツールを使用して、一分量の充填材の材料を複合構造上にセットするステップをさらに含む方法。
【0011】
実施形態17 実施形態12の方法であって、
基板がツールであり、
ツールを使用して一分量の充填材の材料の断面を成形するステップをさらに含む方法。
実施形態18 複合構造内の隙間のための構造充填材を製造する装置であって、
充填材を押出す手段と、
充填材をその上に押出すことができ、複合構造上に充填材を移すことができるツール
を備える装置。
【0012】
実施形態19 実施形態18の装置であって、ディスペンス手段が、
流動性の充填材の材料を保持する本体と、
それを通して流動性材料を押出すことができるノズルと、
流動性の充填材の材料を本体からノズルを通して流出させる手段と、
充填材の材料を押し出す量を制御する手段と、
流動性の充填材の材料の粘度を制御する手段
を含む装置。
実施形態20 実施形態19の装置であって、
粘度を制御する手段が、流動性の充填材の材料を加熱する手段を含み、
押出し量を制御する手段が、制御可能なポンプ流量を有するポンプを含む装置。
【0013】
実施形態21 実施形態20の装置であって、
加熱手段が本体上のヒーターを含む装置。
実施形態22 実施形態20の装置であって、
ツールが、流動性の充填材の材料を所望の断面形状に成形するツール表面を含む装置。
【0014】
実施形態23 実施形態20の装置であって、
ツールが、充填材がツール上に保持される第1位置と、複合構造上にセットするために充填材が取り外される第2位置との間で互いに相対的に移動可能である第1及び第2部分を含む装置。
実施形態24 複合構造内の隙間を埋めるのに使用される構造充填材を製造する装置であって、
ある量の未硬化の流動性の充填材の材料を保持する本体と、
流動性の充填材の材料がそれを通って本体から押出されることができるノズルと、
流動性の充填材の材料を本体からノズルを通して流出させる本体の移動可能なプランジャーと、
本体に取り付けられたモータと、
プランジャーを移動させるためのモータとプランジャーの間に接続された駆動部と、
流動性の充填材の材料の粘度を制御するための本体上のヒーターと、
押出された充填材の断面を成形し、充填材を複合構造上に移すためのツールを備える装置。
【0015】
複合構造内の隙間を埋めるのに使用される構造充填材を成形する方法であって、
ディスペンサを流動性の充填材の材料で充填し、
ディスペンサとツールを相対的に移動させ、
流動性の充填材の材料をディスペンサからツール上に押出して充填材を形成し、
ディスペンサの中にある流動性の充填材の材料を加熱することによって、流動性の充填材の材料の粘度を制御し、
ツールを使用して押出された充填材の断面形状を成形し、
ツールを使用して複合構造上に充填材を移してセットし、
充填材を硬化させるステップを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は接着充填材を押出す装置の機能ブロック図である。
【図2】図2は胴体外板上のハット形状のストリンガーを示す断面図であり、ストリンガーと外板の間の半径接着ラインに沿った空間を埋めるのに使用される接着充填材を示している。
【図3】図3は接着充填材を押出す装置のブロック及び線図を組み合わせた図である。
【図4】図4は図3に示す装置の一部を形成するノズルの断面図である。
【図5】図5は図4に示すノズルの底面図である。
【図6】図6は図4及び5に示すノズルの上面図である。
【図7】図7は装置の代替実施形態の線図である。
【図8】図8は装置の別の実施形態のブロック図である。
【図9】図9は図8に示す装置の斜視図である。
【図10】図10はツール一式の端面図であり、接着充填材を図2に示すストリンガー上にセットするのに使用される連続ステップを示す。
【図11】図11は三角形を有する接着充填材を押出すのに使用されるディスペンサノズルの断面図である。
【図12】図12は接着充填材を冷却しストリンガー上にセットするのに使用されるツール一式の端面図である。
【図13】図13はストリンガーを硬化させるツールの端面図であって、接着充填材をストリンガー上にセットする準備をするために反転された搬送ツールを示している。
【図14】図14はその上に押出される一対の接着充填材を有する平坦な複合材料の一分量の端面図である。
【図15】図15は図14の一分量の複合材料からストリンガーを形成するのに使用される成形ツールの端面図である。
【図16】図16は接着充填材を有するI字形状の断面を有する複合構造である。
【図17】図17は接着充填材を押出して複合部材上にセットする方法を図示するフロー図である。
【図18】図18は接着充填材が、ストリンガーを形成するのに使用される平坦な一分量の複合材料上に押出される、ストリンガーを製造する方法を図示するフロー図である。
【図19】図19は押出された接着充填材の断面を形成し、充填材をストリンガー上にセットする方法を図示するフロー図である。
【図20】図20は運搬装置を使用して押出された充填材をストリンガー上にセットする手順を示すフロー図である。
【図21】図21は航空機の製造及び保守手順のフロー図である。
【図22】図22は航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず図1及び2を参照すると、開示された実施形態は番号25で全体的に示される装置に関し、この装置は接着充填材32を形成し、これを2つの複合構造部材36、40の間の接着ライン35に沿った隙間又は空間34にセットするのに使用できる。図示した実施形態においては、構造部材36はハット形状のストリンガーを含み、構造部材40は航空機(図示せず)の胴体外板(図2)を含む。ストリンガー36は胴体外板40を強化し補強する機能を持つ。ストリンガー36は外板40に接着された又は外板40と同時硬化されたフランジ38を含む。接着ライン35に沿って延びる外板40及び半径形状の角(図示せず)の間のストリンガー36の長さに沿って、わずかな隙間34が形成され得る。しばしば「ヌードル」とも表記される充填材32は、接着ライン35に沿って隙間34を埋めることにより、ストリンガー36と外板40の間の接着力を高める。ブラダー37は、ストリンガー36と外板40を圧着及び/又は接着又は同時硬化する際に、ストリンガー36を加圧するマンドレルとしての役目を果たす。
【0018】
特に図1を参照すると、装置25はコントローラ52によって動くディスペンスガン30を概して含み、このコントローラ52は例えば限定しないが、コンピュータ又はPLC(プログラマブル論理制御装置)を含むことができる。ディスペンスガン30は、例えば市販の構造接着剤等の流動性の接着材料45(図3)を含有するカートリッジ42を保持する剛体40(ガン本体)を広く含む。本体40上のヒーター44は、カートリッジ42内の接着材料45を加熱して接着材料45の粘度、したがってその流量特性を制御するために設けることができる。モータ46によりプランジャー48が起動され、このプランジャー48によりカートリッジ42内の接着材料45が、コントローラ52によって決定される押出し量でノズル50を通って押し出される。
【0019】
装置25の更なる詳細が図3に示されている。本体40は概して円筒状であり、その中に開口部56を有する端壁54を含む。好適な構造接着材料45で充填されたカートリッジ42は本体40の内部に格納され、壁54の開口部56を通るネジ切りされた排出口58を含む。ネジ切りされた排出口58は、その中を通って接着材料45が押出されることができるノズル開口部62を有するノズル50のネジ切りされた端部60を受けるように構成されている。本体40の一端にあるキャップ68を取り外すことができ、これによりカートリッジ42を交換することが可能になる。
【0020】
本体40は、例えば限定しないが、金属等の熱伝導性材料からできていてよく、電気式加熱ブランケット44によって包むことができ、この加熱ブランケット44を使用して接着材料45を加熱することにより、接着材料45の粘度、したがってその流量特性を制御することができる。加熱ブランケット44の温度はコントローラ52によって制御することができる。開示された実施形態においては加熱ブランケット44が図示されているが、様々な他の技術及び装置を採用して接着材料45を加熱することができる。コントローラ52によって操作されるモータ46はスクリュードライバ66を介してプランジャー64に接続されている。モータ46の操作により、カートリッジ42の内部で接着材料45に圧力を加えるプランジャー64の移動が制御され、これにより接着材料45が、モータ46とコントローラ52の速度によって決まる押出し量でノズル50を通って押出される。
【0021】
ノズル50を通って接着材料45が押出される量は、コントローラ52を操作するのに使用される保存されたプログラム70によって決定することができる。例えば、オペレータは72においてパーツ番号を入力することができ、この結果、特定のパーツ用の押出し量を決定する保存された特定のプログラム70が選択される。
【0022】
ノズル50の更なる詳細が図4〜6に図示されている。ノズル50は、細長い円筒形の本体74を含むことができ、この本体74はネジ切りされた排出口58に受け入れられるネジ切りされた端部60を有するため、ノズル50をディスペンスガン30に取り外し可能に取り付けることができる。ノズル50の反対側の端部62は、接着材料45がその中から押出される排出口64を含む。排出口64の断面形状により、押出される充填材32の断面形状が決定する。
【0023】
図7は装置の代替実施形態25aを図示しており、この装置では接着材料45が熱的に絶縁された供給ライン78を介してバルク供給源76からディスペンスガン30aに供給される。バルク供給源76は、接着材料45の粘度を所望のレベルに維持するためのヒーター77と、接着充填材をディスペンスガン30aに送り込む定量ポンプ79を含むことができる。ディスペンスガン30aからの接着材料45の押出し量は、定量ポンプ79によって決定し、また、少なくとも部分的に接着材料45が加熱される温度によって決定することもできる。ディスペンスガン30aの変形した形態はまた、接着材料45が押出される直前の粘度を調節する加熱ブランケット(図示せず)も含むことができる。
【0024】
ここで、接着充填材32を例えばストリンガー36等の構造部材上に直接押出す方法で使用することができる機器を示す図8及び9に注目する。ストリンガー36はストリンガー36を所望の形状に成形するのに使用することができる、ストリンガーアセンブリ支持トレイ86の中に保持されている。支持トレイ86はフランジ38が上向きである、ストリンガー36を成形し支持するツール86aを含むことができる。ヘッド80は、ストリンガー36の長手軸85とほぼ並んだ誘導行路82上の直線運動用に取り付けられている。例えば上述したような一対のディスペンスガン30は、ヘッド80上に横方向に間隔をおいて取り付けられ、ディスペンスガンのノズル30はそれぞれ、2つの接着充填材のライン又はストリップ32が埋めるべき隙間32(図2)を境界するストリンガー36の表面上に直接押出されるように、ストリンガー36と並んでいる。ヘッド80の直線運動は、コントローラ52によって操作されるモータ84によって駆動される。コントローラ52は、ディスペンスガン30から接着充填材の材料45が押出される量も制御する。
【0025】
図8及び9に示す実施形態においては、接着充填材32はストリンガー36上に直接押出されるため、充填材32を別の作業で成形する必要性だけでなく、充填材32を取付け準備ができるまで保存する必要性、そして充填材32を取り付ける必要性が除去される。
【0026】
ここで、接着充填材32をストリンガー36上に位置づけしセットするのに使用できるツール88を示す図10及び11に注目する。ツール88は、ある長さの充填材32を受ける対向する傾斜面95を有する第1及び第2部分88a、88bを有しており、充填材32はこの実施形態においては、図11に示すノズル50の三角形状を有するノズル開口部64aによって形成されたほぼ三角形の断面を有する。
【0027】
使用中、接着充填材32は前述したディスペンスガン30(図3参照)を使用して、充填材32が傾斜面95によって支持されるように、ツール88上に直接押出される。接着充填材32がツール88上に押出しされた後に、ツール88は、ストリンガー36を形成し、圧着し、及び/又は硬化させるのに使用されるツール92、94の中に支持されることができるストリンガー36の位置まで運ばれる。ここで注目すべきことは、ストリンガー36は図10では便宜上実線で表されているが、ストリンガー36はプロセスのこの時点において複数の個別の層(図示せず)を含んでいる。ツール88は、充填材32が セットされるべきストリンガー36上の領域90の上に垂直に整列する軸93に沿って位置している。矢印105で示すように、ツール部分88a、88bは、接着充填材32が傾斜面95を離れ、ツール部分88a、88b上の側壁97によって誘導されてストリンガー36の領域90上に下方に滑動するまで、互いから離れるように横方向に移動する。
【0028】
傾斜面95により、押出された接着充填材32の三角形が、充填材32をストリンガー36上にセットする直前まで維持されやすくなる。しかしながら、接着充填材32の形状をさらに維持しやすくするために、ツール88を冷却することができる。
【0029】
ここで、接着充填材32をストリンガー36上にセットする代替方法を示す図12及び13に注目する。一対の接着充填材32は、前述したディスペンスガン30(図3)を使用して、搬送プレート96の表面上に直接押出される。搬送プレート96は、搬送プレート96を冷却する冷却ブロック98上で支持されることができ、これにより押出された接着充填材32を冷却して充填材32の断面形状を維持する。図示した実施形態では、充填材32は図11に示すノズル50の三角形の押出し口64aと一致する三角形の断面を有するように図示されている。
【0030】
接着充填材32が軽く接着された搬送プレート96は、この実施例において図面ではツール92、94の中に支持されているストリンガー36の位置まで運ばれる。搬送プレート32は次に反転され、充填材32がセットされる領域90の上に垂直に位置合わせされる。搬送プレート96は次に充填材32がストリンガー36に接触し接着されるまで下方に移動し、その後搬送プレート96は次の取付けシーケンスの準備のためにブロック98に戻ることができる。
【0031】
ここで図14及び15を参照すると、ディスペンスガン30(図3)を使用して接着充填材32を直接平坦な複合材料の一分量100の上に押出すこともできる。その上に充填材32が押出された平坦な複合材料の一分量100は次に、ツール一式102の中にセットされ、その後ツールプレート104a上に取り付けられた雄型ツール104を使用して平坦な複合材料の一分量100を所望の形状に成形し、図示した実施例においてこの所望の形状はハット形状のストリンガー36である。平坦な複合材料の一分量100の成形とほぼ同時に、雄型ツール104とプレート104aを組み合わせて剛性の接着充填材32を、ストリンガー36が外板40上に作製されたときに、接着ライン35に沿って隙間34(図2)を埋める形状に成形する。
【0032】
図16は、「I」字形状の断面を有する別の標準的な複合構造101を示し、この複合構造101は例えば限定しないが梁を含むことができる。複合構造101は外向きに折れたフランジ105を有するウェブ103と、ウェブ103の端部にキャップ107を含む。ウェブ103とキャップ107が交差するところに、前述した接着充填材32で埋めることができる隙間32が形成されている。
【0033】
図17は、例えばストリンガー36等の複合部材上にある長さの接着充填材32を押出す方法の大まかなステップを示す。ステップ108で開始し、通常一式のツール(図示せず)上に複合層を形成することによって複合部材が形成される。ステップ109において、前述したディスペンスガン30を用いてある長さの接着充填材32が押出される。充填材の材料が押出されているとき、押出し量がステップ111において制御され、押出された充填材の材料の粘度はステップ113で制御される。ステップ110では、押出された充填材32が複合部材の、複合部材と別の構造(図示せず)との間の埋められるべき隙間又は空間34がある位置にセットされる。ある実施形態では、図8及び9に関連して先に説明したように、充填材32を複合部材上に直接押出すことができる。ステップ112において、複合構造が組立てられ、この中で、押出された充填材が取付けられた複合部材が少なくとも一つのほかの複合部材と嵌合する又はそうでなければ組立てられている。最後にステップ114において、複合構造及び充填材32が硬化される。
【0034】
図18は、装置25(図1及び3)を使用した代替方法のステップを示し、この方法は概して図14及び15に関連して先に説明した方法に対応する。ステップ116において、ストリンガーの一分量を含むことができる平坦な複合材料の一分量100(図14)が積層される。次にステップ118において、一以上の充填材32が平坦な複合材料の一分量100の上に直接押出される。ステップ120では、平坦な複合材料の一分量100が充填材32とともに成形される。ステップ122では、充填材32とともに成形されたストリンガー36が圧着され硬化される。最後にステップ124において、ストリンガー36は例えば前述した胴体外板(図2)40等の第2複合部材上に取り付けられる。
【0035】
図19は、さらに別の方法の実施形態を示し、ここで接着充填材32は例えば図10に示すツール88等の基板上に押出される。ステップ126で開始し、ツール88は、充填材32の断面形状を保ちやすくするために任意に冷却することができる。次にステップ128では、充填材32をツール88上に押出すことができる。次にステップ130において、ツールをストリンガー36の上に位置づけし、そのあとステップ132において、充填材32がツール88からとりはずされて、最後にツール88から取り外された充填材32がステップ134に示すようにストリンガー上にセットされる。
【0036】
図11〜13に関連して先に説明したプロセスに概して対応する更なる方法の実施形態を図20に示す。ステップ136で開始し、ブロック98を冷却し、その後ステップ138において搬送プレート96を冷却したブロック98上にセットする。次にステップ140において、一以上の長さの充填材32を冷却ブロック98上に支持されている搬送プレート96の上に直接押出す。ステップ142において、搬送プレート96を使用して押出された充填材32をストリンガー36又は他の複合部材の位置まで運ぶ。最後にステップ144において、搬送プレート96を使用して充填材32をストリンガー36上にセットする。
【0037】
次に図21及び22を参照すると、本発明の実施形態は、図21に示すような航空機の製造及び保守方法150と、図22に示すような航空機152において使用することができる。試作段階においては、例示の方法150は、航空機152の仕様及び設計154と材料の調達156を含むことができる。製造中は、航空機150の構成要素及びサブアセンブリの製造158とシステム統合160が行われる。その後、航空機152は検査及び納入162を経て就航164される。顧客によって就航されている間、航空機152には所定の保守及び点検166(変更、再構成、改装も含むことができる)が予定され得る。
【0038】
本方法152の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客等)によって行う又は実施することができる。この説明のために、システムインテグレータは限定しないが、任意の数の航空機メーカー、及び主要システムの下請け業者を含むことができ;第三者は限定しないが、任意の数の供給メーカー、下請け業者、及びサプライヤを含むことができ;オペレータは、航空会社、リース会社、軍部、サービス組織等であってよい。
【0039】
図22に示すように、例示の方法150で製造された航空機152は、複数の系統170と内装172を有する機体168を備えることができる。高レベル系統170の例は、一以上の推進系統174、電気系統176、油圧系統178、及び環境系統180が挙げられる。任意の数の他の系統を備えることができる。航空宇宙での実施例を示したが、本発明の原理は例えば自動車産業等の他の産業分野に応用することが可能である。
【0040】
本明細書に具現化された装置は、任意の一以上の製造及び保守方法150の段階において採用することができる。例えば、製造プロセス158に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機152が就航している間に製造される構成要素又はサブアセンブリと同じ方法で加工又は製造することができる。また、一以上の装置の実施形態を、例えば、実質的に組立てしやすくする、又は航空機152にかかる費用を削減することによって、製造段階158及び160において用いることが可能である。同様に、一以上の装置の実施形態を、航空機152が就航している間に、例えば限定しないが、保守及び点検166に用いることができる。
【0041】
本発明の実施形態を特定の実例となる実施形態に関連させて説明してきたが、当然ながら特定の実施形態は説明のためであり、限定するものではなく、当業者が他の変形例を発想することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
25 装置
30 ディスペンスガン30
32 接着充填材
34 隙間、空間
35 接着ライン
36 複合構造部材、ストリンガー
37 ブラダー
38 フランジ
40 複合構造部材、胴体外板、ディスペンスガン本体
42 カートリッジ
44 ヒーター、電気式加熱ブランケット
45 流動性の接着材料
46 モータ
48 プランジャー
50 ノズル
52 コントローラ
54 端壁
56 開口部
58 排出口
60 ノズルのネジ切りされた端部
62 ノズル開口部
64 プランジャー、排出口
66 スクリュードライバ
68 キャップ
70 プログラム
74 ノズル本体
76 バルク供給源
77 ヒーター
78 供給ライン
79 定量ポンプ
80 ヘッド
82 誘導行路
84 モータ
85 ストリンガーの長手軸
86 ストリンガーアセンブリ支持トレイ
88 ツール
90 ストリンガー上の領域
92 ツール
93 軸
94 ツール
95 傾斜面
96 搬送プレート
97 側壁
98 冷却ブロック
100 平坦な複合材料の一分量
101 複合構造
102 ツール一式
103 ウェブ
104 雄型ツール
105 フランジ
107 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2複合部材の間の隙間に構造充填材を取り付ける方法であって、
流動性の充填材の材料を押出すことによって充填材を形成するステップ、
当該充填材を第1複合構造部材上にセットするステップ、及び
第1及び第2複合部材を組立てるステップ
を含む方法。
【請求項2】
第1複合構造部材上に充填材をセットするステップが、流動性の充填材の材料を第1複合構造部材上に押出すことによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充填材の材料の粘度及び充填材の材料の押出し容量のうちの少なくとも一つを制御するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
粘度を制御するステップが充填材の材料を加熱するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
流動性の充填材の材料を押出すステップが、充填材の材料を運搬装置上に押出すステップを含み、
第1複合構造上に充填材をセットするステップが、運搬装置を使用して第1複合構造部材上に充填材をセットするステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
充填材の材料が運搬装置上に押出される前に運搬装置を冷却するステップ
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
流動性の充填材の材料を押出すステップが、ツール上に充填材の材料を押出すステップを含み、当該方法がさらに、
ツールを使用して充填材を成形するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
充填材をセットするステップが、ツールを使用して充填材を第1複合構造部材上に配置するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
流動性の充填材の材料を押出すステップが、充填材の材料を実質的に平坦な複合材料の一分量上に押出すステップを含み、当該方法がさらに、
その上に充填材を有する平坦な複合材料の一分量を、第1複合構造部材に成形するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
充填材と、第1及び第2複合構造部材を同時硬化するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複合構造内の隙間用構造充填材を製造する装置であって、
充填材を押出す手段と、
その上に充填材を押出して、充填材を複合構造上に移すことができるツールと
を備える装置。
【請求項12】
ディスペンス手段が
流動性の充填材の材料を保持する本体と、
それを通して流動性材料を押出すことができるノズルと、
流動性の充填材の材料を、本体からノズルを通して流す手段と、
充填材の材料の押出し容量を制御する手段と、
流動性の充填材の材料の粘度を制御する手段と
を備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
粘度を制御する手段が、流動性の充填材の材料を加熱する手段を備え、
押出し量を制御する手段が、制御可能なポンプ流量を有するポンプを備える、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
加熱手段が本体上のヒーターを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ツールが、流動性の充填材の材料を所望の断面形状に成形するツール表面を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
ツールが、充填材がツール上に保持される第1位置と、複合構造上にセットするために充填材が取り外される第2位置との間で互いに相対的に移動可能である第1及び第2部分を含む、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−137567(P2010−137567A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−277332(P2009−277332)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】