説明

複合樹脂成形品の製造方法

【課題】容易に成形でき、しかも高精度で成形品を製造できる複合樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】フィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料をバインダー樹脂で結合してなる複合素材(30,30',30'') を用い、複合素材を破砕し、複合素材の破砕片を平面上又は所定の立体形状の面上に並べて加熱してそのバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧し、バインダー樹脂を硬化させることによってプレート状又は所定の立体形状の複合樹脂成形品(31,31'')を製造する。複合素材の原料には例えば水和金属化合物を用いることができる。バインダー樹脂には生分解プラスチックを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複合樹脂成形品の製造方法に関し、特に容易に成形できるとともに、高い精度で複合樹脂成形品を製造できるようにした方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車ではインストルメントパネル、アームレスト、ドアトリムなどの内装材に樹脂成形品が用いられることが多い。また、床板や壁材等の建築用内装材などにも樹脂成形品が用いられることが多くなった。
【0003】
例えば、40〜60重量%の木粉を混合した塩化ビニル層の裏面に、20重量%以下の木粉を混合した塩化ビニル層を積層形成し、所望の強度と質感を得るようにした自動車用内装材が提案されている(特許文献1)。また、木粉を混合した塩化ビニル層の表面に塩化ビニル層を加熱溶着し、厚みのある軟化樹脂層を形成するようにした自動車用内装材が提案されている(特許文献2)。
【0004】
さらに、木粉を混合した樹脂複合材の表面をサンディングして木粉を露出させ、その表面に水性接着剤によって表面化粧材を接着し、木粉樹脂複合材と表面化粧材との接着強度をアップさせるようにした建築用内装材が提案されている(特許文献3)。
【0005】
ところで、最近は自動車の内装材や建築用内装材などの樹脂成形品に不燃性や難燃性を付与することが要求されている(特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特公平03−64308号公報
【特許文献2】特開昭60−219049号公報
【特許文献3】特許第3648590号公報
【特許文献4】特開2000−290474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献5記載の樹脂成形品では無機充填材を添加して不燃性や難燃性を付与しているので、無機充填材の量を増加させると、不燃性や難燃性を向上できるものの、樹脂成形品の50重量%を超えると粘度が増加する結果、例えば薄板への成形が困難になる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、容易に成形できるとともに、高精度で成形品を製造できるようにした複合樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る複合樹脂成形品の製造方法は、フィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料をバインダー樹脂で結合してなる複合素材を用い、該複合素材を粒状又は片状に破砕し、該複合素材の破砕粒及び/又は破砕片を平面上又は製品形状の面上に並べて加熱してそのバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧し、上記バインダー樹脂を硬化させることにより、プレート状又は所定の立体形状の複合樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つはフィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料とバインダー樹脂とを結合した複合素材を用い、これを一旦適当な大きさに破砕し、破砕粒や破砕片を平面上又は立体形状の面上に並べて加熱して破砕粒や破砕片のバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧することにより、プレート状又は立体形状の複合樹脂成形品を製造するようにした点にある。
【0011】
これにより、複合素材の製造中に粘度の増加などの原因により所望の形状への成形が困難な場合であっても複合素材を破砕することができれば、所望の形状に容易にかつ高精度で成形できる。例えば、不燃性又は難燃性を付与するための原料、例えば大量の水和金属化合物とバインダー樹脂とを混練すると、粘度が次第に増大し、例えば薄板などへの成形が非常に困難である。これに対し、本発明では複合素材の破砕粒や破砕片を並べて加熱してバインダー樹脂を軟化又は溶融させ加圧しているので、高粘度の複合素材であっても容易にかつ高い精度でもって薄板に成形できる。
【0012】
さらに、複合樹脂成形品には複合素材の原料、例えば水和金属化合物が大量に含有されているので、樹脂のみで成形品を製造する場合に比して樹脂の量が少なくなり、樹脂成形品を安価に製造できる。さらに、複合樹脂成形品を廃棄する場合、複合樹脂成形品を回収して適当な大きさに破砕することにより、新たに複合樹脂成形品の原料として用いることができるので、リサイクル性に優れている。
【0013】
ここで、複合素材の原料はフィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の形態をなし、バインダー樹脂で結合されて複合素材を構成し得るものであればよく、例えば水和金属化合物を用いて複合樹脂成形品に不燃性や難燃性を付与することができるが、他の原料、例えば木片、木粉及び/又は木材スライス片を用いた複合樹脂成形品の製造にも同様に適用することができる。
【0014】
複合素材の原料に水和金属化合物を用いると、水和金属化合物によって複合樹脂成形品に難燃性又は不燃性を付与することができる。水和金属化合物は例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを挙げることができる。これらは加熱によって化合物中の水分が分離して難燃性や不燃性を発揮すると考えられる。
【0015】
水和金属化合物は複合樹脂成形品に難燃性又は不燃性を付与することのできる量とする。具体的には複合素材の30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上とするのがよい。
【0016】
水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの場合、複合素材の製造時に水分が分離しないように加熱する必要があることから、バインダー樹脂は水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの水分が分離しない温度で軟化し溶融する樹脂を選択するのが望ましい。後述のポリ乳酸系の生分解性プラスチックの溶融温度は160°C以下であるので、難燃性又は不燃性の複合樹脂成形品のバインダー樹脂として最適であるが、軟化温度又は溶融温度が200°C以下の熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンを用いることもできる。
【0017】
複合素材の原料には難燃性又は不燃性の助剤、例えばリン酸エステルやアンチモン化合物を添加することもできる。
【0018】
水和金属化合物以外の複合素材の原料、例えば木片、木粉、木材スライス片などを用いる場合、複合樹脂成形品における量は特に限定されず、複合樹脂成形品の物性などに応じて任意に選択される。
【0019】
また、バインダー樹脂は例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、その他の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、バインダー樹脂には加熱又は加圧によって発泡する樹脂ビーズなどを複合素材の強度を低下させない程度の量だけ含ませてもよい。この場合には複合樹脂成形品を構成するバインダー樹脂に部分的に発泡が起こり、複合樹脂成形品を軽量化することができる。
【0020】
また、バインダー樹脂には生分解性プラスチックを用いることもできる。生分解性プラスチックにはポリ乳酸系の生分解性プラスチック、脂肪族系ポリエステル系の生分解性プラスチック、加熱によって軟化溶融し得るその他の公知の生分解性プラスチックを用いることができる。
【0021】
特に、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックの場合、加熱すると軟化して粘着性が増加することから、加熱したローラなどで加工することは難しいが、本発明では例えば軟化したポリ乳酸系の生分解性プラスチックに複合素材の原料、例えば水和金属化合物を添加し混合しているので、生分解性プラスチックの粘着性が低下し、ローラや金型などによって任意の形状に加工することが可能である。
【0022】
複合素材の原料、例えば水和金属化合物はバインダー樹脂と混練するが、混練機で混練し、又は1軸又は2軸の押出機で攪拌しながら押し出し、あるいは混練機で混練した後、1軸又は2軸の押出機に移してさらに攪拌することにより、原料とバインダー樹脂とを混練することができる。
【0023】
また、混練物は混練機又は押出機から押し出し(混練機から押出し機に移して押出し機から押し出してもよい)、ローラで加圧することもでき、又縦ローラ及び横ローラで縦横から加圧するようにしてもよい(縦ローラに代え、横ローラの両側に型部を設け、横ローラの加圧力でもって混練物の両側の型部に押し付けて横方向からの加圧を得るようにしてもよい)。
【0024】
成形型及び加圧プレートは水冷することによって混練物を加圧状態に保持したままで冷却することができる。しかし、ローラ加圧の場合には成形型及び加圧プレートによる場合と同様の方法を採用できない。そこで、ローラ加圧の場合には加圧した後に冷却を行う方法を採用すれば同様の結果が得られる。
【0025】
使用済みの複合素材をリサイクルする場合、回収した複合素材を適当な大きさ、例えば一辺が5mm〜20mmの大きさに破砕し、適当な熱源によって加熱してバインダー樹脂を軟化又は溶融させ、必要に応じてバインダー樹脂を添加し、複合素材の原料の全部又は一部として用いることもできる。
【0026】
使用済みの複合素材を新たな複合素材にリサイクルする場合にも原料とバインダー樹脂の適切な比率を維持する必要がある。
【0027】
複合樹脂成形品は表面樹脂層を形成して所定の製品形状に加圧成形することができるが、複合樹脂成形品の表面に合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層し、あるいは軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねる際に、所定の製品形状に成形することもできる。この複合樹脂成形品の成形には金型やローラなどを用い、絞り成形、曲げ成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形などを採用することができる。
【0028】
合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートと複合樹脂成形品とは接着剤によって接着するようにしてもよく、複合樹脂成形品のバインダー樹脂と表面樹脂層の合成樹脂材料との親和性によって相互に結合するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る複合樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を示し、これは複合素材の原料に水和金属化合物を用いた例である。本例の複合樹脂成形品を製造する場合、水和金属化合物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを準備する。この水和金属化合物は平均外径10μm〜35μmの粉状のものを用いる。また、例えば廃プラスチックに由来するバインダー樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンを破砕機によって適当な大きさのチップに破砕する。なお、これらは1種でもよく、2種が混ざったものでもよい。また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックをバインダー樹脂としても用いることもできる。
【0030】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、破砕したバインダー樹脂のチップを混練機10内に投入し、攪拌しながら溶融させる。バインダー樹脂のチップの投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。バインダー樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生する場合には加熱ヒータによる加熱温度はバインダー樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0031】
バインダー樹脂が十分に軟化又は溶融すると、準備した複合素材の原料である水和金属化合物を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、軟化・溶融したバインダー樹脂が複合素材の原料(水和金属化合物)の表面を確実にコーティングするように混練する。複合素材の原料は一度に大量に投入すると、軟化・溶融した樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機10への投入前に複合素材の原料を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。
【0032】
また、バインダー樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、加熱温度やバインダー樹脂の物性によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0033】
水和金属化合物と軟化・溶融したバインダー樹脂とが十分に混練されると、混練物をローラ型プレス機11に供給し、混練物を適切な加圧力で挟んで送り、加圧状態を維持してバインダー樹脂を硬化させる。ローラ型プレス機11は上側及び下側のローラ列にベルトを無端状にかけわたして構成されている。また、終端側のローラは水冷しておき、混練物を加圧状態のままで冷却するようにするのがよい。なお、水冷に代え、エアーを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
【0034】
混練物の送り速度はローラ列を出たときに混練物が十分に固まっている速度とする。また、上下のローラ列による加圧力は後工程における破砕が容易に行えるような形状に成形できる加圧力とする。
【0035】
なお、バインダー樹脂が破砕しやすい物性を有する場合にはローラ型プレス機11による成形工程は必ずしも設ける必要はなく、混練機10で得られた混練物を直接破砕するようにしてもよい。
【0036】
こうして混練物が十分に硬化すると、プレート状の複合素材30が得られる。得られた複合素材30を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさの粒状又は片状に破砕する。なお、破砕粒又は破砕片の寸法は後の工程において複合素材30を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0037】
そして、複合素材30の破砕粒又は破砕片を加熱装置、例えば2軸(又は1軸)の押出し機(他の公知の加熱装置を用いてもよい)13に投入し、複合素材30の破砕粒又は破砕片をスクリューの間で押しつけ合うとともに、押出し機13のシリンダ内面に押しつけ、摩擦熱によって軟化させる一方、ローラ型プレス機14を加熱し、軟化した複合素材30の破砕粒又は破砕片をローラ型プレス機14に押し出して並べ、ローラ型プレス機14で加圧してプレート状の複合樹脂成形品31を製造する。
【0038】
このプレート状の複合樹脂成形品31は製品の厚みから表面樹脂層の厚みを差し引いた厚みにプレスされるが、予め製造した複合素材30の原料としているので、高い寸法精度が得られる加圧力でもってプレスすることができる。
【0039】
次に、得られた複合樹脂成形品31に樹脂製、例えばポリプロピレンやポリエチレン製のフィルム(シート又はプレートでもよい)32を積層させながらローラ型プレス機15に送り込み、加熱して複合樹脂成形品31の表面にフィルム32を結合させて表面樹脂層を形成する。同じ操作を繰り返して複合樹脂成形品31の上面、下面及び側面に表面樹脂層を形成してもよい。
【0040】
こうして製品の素材33が得られると、素材33を例えば金型16内にセットし、加熱加圧して所定の立体形状に加工すると、製品34が得られる。この製品34は図2に示されるように複合素材34Aの表面を樹脂層34Bで被覆した構造をなし、表面から見ると、全体が樹脂だけで製造されているように見えることとなる。
【0041】
図3は第2の実施形態を示し、図において図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機11に代え、1軸又は2軸の押出機11’を用いて複合素材30’を製造し、これを破砕工程12で破砕するようにしている。
【0042】
なお、混練機10は必ずしも用いる必要はなく、図4に示されるように、複合素材の原料、例えば水和金属化合物とバインダー樹脂を押出機11’に投入して混練することもできる。
【0043】
また、本例では複合素材30’の破砕粒又は破砕片を押出し機13ではなく、フィーダ13’によって破砕粒又は破砕片のままローラ型プレス機14に供給し、平面上に並べて加熱加圧し、プレート状の複合樹脂成形品31を製造するようにしている。
【0044】
図5は第3の実施形態を示し、図において図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機15によって製品の素材33を製造する際に、押出し機17によって軟化又は溶融した樹脂をプレート状の複合樹脂成形品31上に押し出し、表面樹脂層を形成するようにしている。
【0045】
図6は第4の実施形態を示し、図において図1ないし図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では製品の素材33をプレスするローラ型プレス機15に代え、金型16を用い、下型16Aと上型16Bの間に複合樹脂成形品31と樹脂製フィルム32とを積層した状態でセットし、これを加熱加圧することによって複合樹脂成形品31と樹脂製フィルム32を結合して複合樹脂成形品31の表面に樹脂層を形成するとともに、同時に所定の製品形状に成型するようにしている。
【0046】
なお、第4の実施形態では下型16Aの上に基材31と樹脂製フィルム32を積層してセットするようにしたが、複合素材30又は30’の破砕粒及び/又は破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、上型16Bで加圧して製品形状の複合樹脂成形品を製造した後、樹脂製フィルム32を重ねて上型16Bで加圧して表面樹脂層を形成するようにしてもよい。また、複合素材30又は30’の破砕片を下型16Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、その上に樹脂製フィルム32を重ねて加熱するとともに上型16Bで加圧して製品形状の複合樹脂成形品と表面樹脂層とを形成することもできる。
【0047】
また、複合素材30又は30’を製造するローラ型プレス機11に代え、金型を用いて加圧してもよく、又多段ローラを通過させて加圧と冷却とを繰り返してバインダー樹脂を硬化させて複合素材30又は30’を製造するようにしてもよい。
【0048】
また、上記の例では複合素材30又は30’を製造し、これを破砕して複合樹脂成形品を製造するようにしたが、廃棄された複合樹脂成形品を回収して複合素材を取り出し、これを原料として複合樹脂成形品を製造することもできる。
【0049】
図7は第5の実施形態を示し、これは複合素材の原料に水和金属化合物を用い、バインダー樹脂にポリ乳酸系の生分解プラスチックを用い、表面樹脂層を形成しないようにした例である。本例の複合樹脂成形品を製造する場合、水和金属化合物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを準備する。この水和金属化合物は平均外径10μm〜35μmの粉状のものを用いる。他方、バインダー樹脂としてポリ乳酸系の生分解性プラスチックの適当なサイズ、例えば150μm〜250μmの粉状のものを準備する。
【0050】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部をバインダー樹脂の軟化温度、例えば100°C〜150°Cまで上昇させておき、バインダー樹脂を混練機10内に投入し、攪拌しながら軟化させる。バインダー樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。
【0051】
バインダー樹脂が十分に軟化すると、準備した水和金属化合物を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、軟化したバインダー樹脂と水和金属化合物とを十分に混練する。バインダー樹脂を長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。
【0052】
水和金属化合物とバインダー樹脂とが十分に混練され、混練機10から混練物を取り出すと、複合素材30''が得られる。この複合素材30''を破砕機12で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において複合素材30''を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0053】
そして、複合素材30''の破砕片をフィーダ13に投入し、複合素材30''の破砕片をローラ型プレス機14上に並べ、ローラ型プレス機14で適切な温度、例えば160°C程度に加熱して破砕片のバインダー樹脂を軟化させるとともに加圧してプレート状の複合樹脂成形品31''を製造する。
【0054】
この得られた複合樹脂成形品31''は水和金属化合物によって難燃性又は不燃性が付与されており、難燃性又は不燃性を有する自動車用内装材や建築用内装材に用いることができる。
【0055】
本例の方法によって水酸化アルミニウム70重量%、ポリ乳酸系の生分解性プラスチック30重量%の複合樹脂成形品を製造したところ、表面が極めて平滑な複合樹脂プレートが得られ、しかも厚みは1.5mm以上任意に設定することができた。この複合樹脂プレートは硬度及び表面平滑性から磨かれた石材のようであった。
【0056】
また、ポリ乳酸系の生分解性プラスチックに代え、エチレン酢酸ビニル(EVA)をバインダー樹脂として用い、水酸化アルミニウム80重量%及びEVA20重量%からなる表面が極めて平滑な複合樹脂プレートが得られ、しかも厚みは1.5mm以上任意に設定することができた。
【0057】
なお、バインダー樹脂にポリ乳酸系の生分解性プラスチックやエチレン酢酸ビニル(EVA)を用いた場合のように、複合樹脂成形品の平滑な表面が得られる場合には表面樹脂層は必ずしも形成する必要はない。
【0058】
また、複合素材の原料には水和金属化合物に代え、木片、木粉及び/又は木材スライス薄片を用いることもでき、図1ないし図7に示される方法を用いて複合樹脂成形品を製造することができる。
【0059】
さらに、図7の例においてローラ形プレス機14に代えて金型を用い、上型と下型との間でプレスを行って板状(又は立体形状)の複合樹脂成形品33”を金型成形するようにしてもよい。
【0060】
また、本発明は水和金属化合物や木片、木粉、木材スライス薄片以外の複合素材の原料、例えばフィラー状(短繊維状)の炭素繊維やボロン繊維などの強化繊維とバインダー樹脂とからなる複合素材を用いた複合樹脂成形品にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る複合樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。
【図2】上記実施形態において得られた複合樹脂成形品の断面図である。
【図3】第2の実施形態を模式的に示す図である。
【図4】第2の実施形態の変形例を示す図である。
【図5】第3の実施形態を模式的に示す図である。
【図6】第4の実施形態における金型成形の工程を示す図である。
【図7】第5の実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 混練機
11 ローラ型プレス機
11' 押出し機
12 破砕機
13 押出し機
13’ フィーダ
14 ローラ型プレス機
15 ローラ型プレス機
16 金型
30、30’、30'' 複合素材
31、31'' 複合樹脂成形品
32 合成樹脂フィルム
33 製品の素材
34 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー状、粉状、粒状、片状又は塊状の原料をバインダー樹脂で結合してなる複合素材を用い、
該複合素材を粒状又は片状に破砕し、
該複合素材の破砕粒及び/又は破砕片を平面上又は所定の立体形状の面上に並べて加熱してそのバインダー樹脂を軟化又は溶融させるとともに加圧し、上記バインダー樹脂を硬化させることによってプレート状又は所定の立体形状の複合樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
上記バインダー樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1記載の複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
上記バインダー樹脂が生分解性プラスチックである請求項1記載の複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
上記複合素材の原料が水和金属化合物であり、
上記複合樹脂成形品は水和金属化合物によって難燃性又は不燃性が付与されている請求項1記載の複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
上記水和金属化合物が水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムである請求項4記載の複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
上記複合素材の原料には難燃性又は不燃性の助剤が添加されている請求項5記載の記載の複合樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
上記助剤がリン酸エステル又はアンチモン化合物である請求項6記載の記載の複合樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−100491(P2008−100491A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328338(P2006−328338)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】