説明

複合機

【課題】設置場所の選択肢の自由度を高めることが可能であり、しかも、複合機の上側のスペースを省減することにより室内の有効スペースを拡大させることが可能な手段を提供すること。
【解決手段】複合機10は、プリンタ筐体14、スキャナ筐体15、原稿カバー17、リンク機構50を有する。スキャナ筐体15の上部に原稿保持台30が前後方向にスライド可能に支持されている。原稿カバー17と原稿保持台30とはリンク機構50で連結されている。リンク機構50は、原稿保持台30のスライド動作に連動して原稿カバー17を閉姿勢から中間姿勢の間で回動させる。詳細には、原稿保持台30が引き出されると原稿カバー17が閉姿勢から中間姿勢まで回動し、原稿保持台30が元の位置に戻されると原稿カバー17が中間姿勢から閉姿勢となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部に設けられた画像記録ユニットと、上部に設けられたスキャナユニットとを備えた複合機に関し、特に、原稿保持面を有する原稿保持プレートが可動に構成された複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿の画像を読み取る機能(スキャン機能)を有するスキャナユニットと記録用紙に画像を記録する機能(プリント機能)を有する画像記録ユニットとを備えた複合機が広く知られている。一般的な複合機は、画像記録ユニットが下部に設けられ、スキャナユニットが上部に設けられている。スキャナユニットには、読取対象である原稿が載置される原稿保持プレートと、原稿保持プレートに対して開閉可能な原稿カバーとが設けられている。原稿保持プレートに原稿が載置された後に原稿カバーが閉じられ、その状態でスキャナ動作がスタートすると、原稿保持プレートの下方に配置された読取素子が原稿保持プレートの裏面に沿って移動しつつ、原稿の画像を読み取る。この種の複合機としては、例えば、コンタクトガラスが原稿カバーと同様に回動可能な画像読取装置を備えたものが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−215314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の複合機では、原稿保持面に原稿を載置する際は、原稿保持面を露出させるために、原稿カバーを上方へ回動しなければならない。このため、オフィスなどで使用されているキャビネットやラックに複合機を設置する場合は、原稿カバーの開閉を可能とするために、複合機とその上側にある棚板との間に十分なスペースを確保しなければならない。言い換えると、上記スペースを確保できる場所にしか複合機を設置できないため、従来の複合機では、その設置場所が制限される。また、上記スペースは、複合機がフラットベットスキャナとして使用される場合(つまり、原稿カバーが開閉される場合)に限って必要とされるものであって、例えば複合機がプリンタとして使用される場合は、上記スペースは不必要である。複合機が有する複数の機能それぞれの使用頻度はユーザの使用環境次第であるが、スキャン機能の使用頻度がプリント機能の使用頻度よりも圧倒的に少ない場合は、ユーザは、従来の複合機に対して上記スペースを無駄に感じる場合がある。仮に、上記スペースを十分に確保できない場所に複合機が設置された場合は、原稿カバーの開閉動作が制限される。そのため、ユーザは、原稿カバーを半開き状態にして原稿を原稿保持面に載置することを強いられる。この場合、原稿を原稿保持面に正確に載置することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、設置場所の選択肢の自由度を高めることが可能であり、しかも、複合機の上側のスペースを省減することにより室内の有効スペースを拡大させることが可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、下部に設けられた画像記録ユニットと、上部に設けられたスキャナユニットとを備えた複合機として構成されている。上記スキャナユニットは、ユニット本体と、上記ユニット本体の上部に配置された第1位置と上記ユニット本体から当該装置の正面側へ引き出された第2位置との間でスライド可能に支持され、読み取られる原稿が保持される原稿保持面を有する原稿保持プレートと、上記ユニット本体の背面側を回動中心として上記原稿保持面を覆う第1回動姿勢と上記原稿保持面が露出される第2回動姿勢との間で回動可能なカバー部材と、上記第1位置から上記第2位置への上記原稿保持プレートのスライド動作に連動して上記カバー部材を上記第1回動姿勢から上記第2回動姿勢よりも回動角の小さい第3回動姿勢まで回動させて該第3回動姿勢を維持するリンク機構と、を具備する。
【0007】
このように構成されているため、ユーザは、原稿保持プレートを第1位置から第2位置へ引き出すことによって、原稿保持面に原稿を正確に載置することが可能となる。また、リンク機構によって原稿保持プレートのスライドに連動してカバー部材が第1回動姿勢から第3回動姿勢まで回動されるので、原稿保持面に原稿を載置した後に原稿保持プレートを第1位置に戻しても、原稿の位置がずれることなく正確にセットされる。また、カバー部材は、原稿保持プレートが第1位置から第2位置へ移動したことに連動して、第1回動姿勢から第3回動姿勢まで回動されるが、それ以上は回動されない。このため、複合機の上方に確保すべきスペースを省減することができ、それ故に、室内の有効スペースが拡大する。また、上方に十分なスペースを確保できない狭い場所にも複合機を設置することができるので、複合機の設置場所の選択肢が拡がる。
【0008】
(2) 上記リンク機構は、上記ユニット本体に軸支された回動軸と、上記回動軸に連結され、上記回動軸から当該装置の正面側へ延出され上記カバー部材の裏面を支持する第1アーム及び上記回動軸から当該装置の背面側へ延出され上記原稿保持プレートの上面で支持される第2アームを有するリンクアームと、上記第1アームを上方へ付勢する弾性部材と、上記原稿保持プレートよりも下方に配置され、上記第2アームの先端を支持可能な支持部と、を有していることが好ましい。この構成において、上記原稿保持プレートが上記第1位置から上記第2位置へ向けてスライドされたことによって上記原稿保持プレートによる上記第2アームの先端の支持がなくなると、上記弾性部材の付勢力によって上方へ付勢された上記第1アームによって上記カバー部材が上記第1回動姿勢から上記第2回動姿勢へ向けて回動され、上記第2アームの先端が上記支持部に当接することによって、上記カバー部材の回動が規制されて上記カバー部材は上記第3回動姿勢で静止する。
【0009】
(3) 上記第2アームの先端にコロが設けられていることが好ましい。これにより、第2アームと原稿保持プレートとの接触が円滑となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合機によれば、設置場所の選択肢の自由度を高めることができ、しかも、上側のスペースを省減することにより室内の有効スペースを拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観構成を示す模式斜視図である。
【図2】図2は、レール支持機構40の構成を示す模式斜視図である。
【図3】図3は、図2における切断面III−IIIの断面図である。
【図4】図4は、複合機10に原稿保持台30が収容されたときの原稿保持台30及びリンク機構50の構成及び位置関係を示す模式図である。
【図5】図5は、複合機10から原稿保持台30が引き出されたときの原稿保持台30及びリンク機構50の構成及び位置関係を示す模式図である。
【図6】図6は、原稿保持台30のスライドに連動する原稿カバー17の動作を説明するための模式図であり、図4における切断線VI−VIの模式断面が示されている。
【図7】図7は、原稿カバー17の開閉動作を説明するための模式図であり、図4における切断線VI−VIの模式断面が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0013】
[複合機10の概略構成]
図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観構成を示す模式斜視図であって、(A)には、後述する原稿保持台30(本発明の原稿保持プレートの一例)が複合機10に収容された状態が示されており、(B)には、原稿保持台30が複合機10から手前側(正面側)に引き出された状態が示されている。なお、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1に示される状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0014】
図1に示されるように、複合機10は、高さ(上下方向7の長さ)に対して横幅(左右方向9の長さ)及び奥行き(前後方向8の長さ)が大きい直方体に概ね形成されている。この複合機10は、プリント機能及びスキャン機能を有しており、下部にプリンタ機能を実現するプリンタ装置11が設けられ、上部にスキャン機能を実現するスキャナ装置12が設けられている。一般に、この種の複合機は、スキャナ装置単体に比べて高さが大きく、そのため、スキャナ装置単体に比べて設置場所が限定される。なお、本発明は、上記2つの機能を有する本実施形態の複合機10に限られず、例えば、コピー機能のみを有する複写機、更にファクシミリ機能が付加された複合機などにも適用可能である。
【0015】
[プリンタ装置11の概略構成]
複合機10の下部にインクジェット記録方式のプリンタ装置11(本発明のプリンタユニットの一例)が設けられている。プリンタ装置11は、正面に開口13が形成されたプリンタ筐体14を有する。開口13に記録用紙を収容するためのトレイ24が装着されている。上記プリント機能を実現するための複数の構成要素、例えば、記録用紙を搬送するための搬送ローラや、記録用紙に向けて微小なインク滴を吐出する記録ヘッド、トレイ24から記録ヘッドに至る用紙搬送ガイドなどは、プリンタ筐体14の内部に設けられている。トレイ24から後方へ送り出された記録用紙は、用紙搬送ガイドによって上方へ向けられてUターンするように前方側へ搬送され、その後、上記記録ヘッドに到達する。そして、記録ヘッドによって記録用紙に対する画像記録が行われると、記録用紙は更に前方側へ搬送されて、トレイ24の上面カバー25上に排出される。なお、プリンタ装置11は、インクジェット記録方式のものに限られず、電子写真方式或いは熱転写方式のものであってもよい。
【0016】
[スキャナ装置12の概略構成]
プリンタ装置11の上部にスキャナ装置12(本発明のスキャナユニットの一例)が設けられている。スキャナ装置12は、薄く形成された概ね直方体形状のスキャナ筐体15(本発明のユニット本体の一例)と、原稿保持台30と、原稿カバー17(本発明のカバー部材の一例)と、リンク機構50(本発明のリンク機構の一例)とを有する。上記スキャン機能を実現するための複数の構成要素、例えば、CISやCCDなどの読取素子、読取素子を移動させる駆動機構などは、スキャナ筐体15の内部に設けられている。
【0017】
原稿保持台30は、スキャナ筐体15の上部に設けられている。原稿保持台30は、長方形状のコンタクトガラス31と、コンタクトガラス31の四辺を取り囲むようにしてコンタクトガラス31を支持する枠フレーム32とにより構成されている。枠フレーム32の正面側には取っ手34が設けられている。また、枠フレーム32の後方端部には、後方斜め下方へ傾斜する傾斜板36が設けられている。なお、透明な板状の部材であれば、コンタクトガラス31に代えて、ガラス以外の素材で構成された板部材、例えばアクリル板を採用することも可能である。
【0018】
原稿保持台30は、スキャナ筐体15の上側でスライド可能に支持されている。本実施形態では、原稿保持台30は、スキャナ筐体15の上部に配置されてその上面の開口16を覆う第1位置(図1(A)参照)と、スキャナ筐体15から正面側に引き出されてコンタクトガラス31の全面が露出される第2位置(図1(B)参照)との間でスライド可能となっている。このため、ユーザは、取っ手34を持って前方へ引っ張ることにより原稿保持台30を前方へ引き出すことができる。
【0019】
原稿保持台30のスライド支持機構は、スキャナ筐体15に設けられたレール支持機構40によって実現されている。図2は、レール支持機構40の構成を示す模式斜視図である。図3は、図2における切断面III−IIIの断面図であって、レール支持機構40のストッパー49が詳細に示されている。図1に示されるように、開口16における左右方向9の両端部それぞれにレール41が設けられている。図2に示されるように、レール41は概ね断面がコの字状に形成されており、その溝部に原稿保持台30の枠フレーム32の左右方向9の両端部が挿入されている。レール41は、その溝部に枠フレーム32の両端部を挿入した状態で、原稿保持台30を前後方向8へスライド可能に支持している。本実施形態では、原稿保持台30が、図2(A)に示される第1位置から正面側へ引き出されて図2(B)に示される第2位置に到達すると、レール支持機構40のストッパー49によって、正面側へのそれ以上のスライド移動が規制される。具体的には、レール41の下側支持部42から上方へ突出した突起状のストッパー49がレール41に設けられており、原稿保持台30が第2位置に到達すると、図3に示されるように、ストッパー46が原稿保持台30の枠フレーム32に形成された切り欠き溝45に挿入される。これにより、ストッパー49によって、原稿保持台30が正面側へ引き出されることが規制される。なお、ストッパー49の前方側は傾斜されており、さらに、ストッパー49は、上下方向へ弾性変形可能に形成されている。したがって、原稿保持台30が第2位置から第1位置へスライドされる際には、切り欠き溝45の正面側の縁部46がストッパー49の傾斜面に沿って後方へ移動するとともに、ストッパー49が下方へ弾性変形する。これにより、ストッパー49は切り欠き溝45から外さるので、原稿保持台30が第2位置から第1位置へスライド移動可能となる。
【0020】
スキャナ筐体15には、原稿保持台30の上面を覆うための原稿カバー17が取り付けられている。原稿カバー17は、上記第1位置に配置された原稿保持台30に対して開閉可能なように、スキャナ筐体15の背面部において蝶番などの支持機構18(図6参照)によって支持されている。これにより、原稿カバー17は、背面側を回動中心として、原稿保持台30のコンタクトガラス31の上面を覆う閉姿勢(図7(A)に示される姿勢)と、コンタクトガラス31の上面から上方へ離間した開姿勢(図7(B)に示される姿勢)との間で回動可能となる。原稿カバー17が開姿勢となると、原稿保持台30が上記第1位置に配置されている場合でも、コンタクトガラス31の上面(本発明の原稿保持面に相当)が露出される。なお、上記閉姿勢が本発明の第1回動姿勢に相当し、上記開姿勢が本発明の第2回動姿勢に相当する。
【0021】
このようなスキャナ装置12に原稿の画像を読み取らせる方法は2通りある。一つは、原稿保持台30が上記第1位置に配置された状態で原稿カバー17を閉姿勢から開姿勢まで回動させてコンタクトガラス31の上面を露出させ、そして、コンタクトガラス31上に原稿を載置した後に原稿カバー17を閉姿勢にし、その後、読取動作を開始させる従来の方法である。もう一つは、原稿カバー17が閉姿勢の状態で原稿保持台30を第1位置から第2位置まで引っ張り出してコンタクトガラス31の上面を露出させ、そして、コンタクトガラス31上に原稿を載置した後に原稿保持台30を後方へ押しつけて第1位置まで戻す方法である。但し、後者の方法では、原稿保持台30を第1位置に戻す際に、コンタクトガラス31の上面に載置した原稿が原稿カバー17の裏面と接触して位置ズレを起こしたり、場合によっては、コンタクトガラス31と原稿カバー17との間に原稿が入り込む隙間がないために、原稿保持台30だけが第1位置に進み、原稿が原稿カバー17の下側に入り込まない場合がある。しかしながら、本実施形態の複合機10では、後述するリンク機構50が設けられているために、原稿保持台30が第1位置に戻るまでの間、原稿保持第30はリンク機構50によって持ち上げられた状態を維持する。そのため、上記後者の方法で画像を読み取らせる場合でも、位置ズレを起こすことなく正確に原稿をコンタクトガラス31にセットできる。
【0022】
[リンク機構50]
以下、図4乃至図6を参照して、リンク機構50の構成及び動作について説明する。図4及び図5は、原稿保持台30及びリンク機構50の構成及び位置関係を示す模式図である。図4には、複合機10に原稿保持台30が収容されたときの状態が示されており、(A)は平面図であり、(B)は斜視図である。また、図5には、複合機10から原稿保持台30が引き出された状態が示されており、(A)は平面図であり、(B)は斜視図である。なお、図4(A)及び図5(A)では、説明の便宜上、原稿カバー17及びスキャナ筐体15の一部(後述するリンク収容部52)が省略されており、図4(B)及び図5(B)ではリンク機構50及び原稿保持台30のみが示されている。また、図6は、図4における切断線VI−VIの模式断面図である。また、図4乃至図6では、説明の便宜上、レール支持機構40が省略されている。
【0023】
図4に示されるように、リンク機構50は、スキャナ筐体15の左端部に設けられている。詳細には、スキャナ筐体15の左端部に形成されたボックス状のリンク収容部52(図1参照)の内部に設けられている。このリンク機構50は、上記第1位置から上記第2位置への原稿保持台30のスライド動作に連動して原稿カバー17を上記閉姿勢から上記開姿勢よりも回動角の小さい中間姿勢(本発明の第3回動姿勢に相当)まで回動させて、原稿カバー17を中間姿勢に維持する機能を有する。
【0024】
上記機能を実現するべく、リンク機構50は、前後方向8に沿って延びるリンクアーム54(本発明のリンクアームの一例)と、回動軸56(本発明の回動軸の一例)と、ねじりコイルバネ69(本発明の弾性部材の一例)と、支持板67(本発明の支持部の一例)とにより構成されている。
【0025】
リンクアーム54は、左右方向9の両側面が幅広の鉛直面となる平板部材で形成されている。リンクアーム54の左側面に回動軸56が設けられている。回動軸56は、リンクアーム54の左側面から左方向へ突出した円柱状の部材からなる。本実施形態では、図示されるように、回動軸56は、リンクアーム54の前後方向8の中央部よりも若干後方側に設けられている。リンク収容部52の内部には、スキャナ筐体15と一体に形成された軸受け(不図示)が設けられており、この軸受けに回動軸56が回動可能に支持されている。これにより、リンクアーム54は、回動軸56の軸心を回動中心として回動可能となる。
【0026】
リンクアーム54は、第1アーム58(本発明の第1アームの一例)と第2アーム59(本発明の第2アームの一例)とを有する。第1アーム58は、回動軸56から複合機10の正面側(前方)へ延びている。第1アーム58の先端部(前方側の端部)には、右方向へ延びる円柱状の支軸61が設けられている。この支軸61は、原稿カバー17の裏面に設けられた軸受け溝62(図6参照)に挿入可能な位置及びサイズに形成されている。支軸61が軸受け溝62に挿入されることで、原稿カバー17がその裏面側で第1アームの支軸61によって支持される。なお、原稿カバー17の裏面には、前後方向8に延びるリブ板63が設けられており、軸受け溝62は、リブ板63の前方側に形成されている。この軸受け溝62は、リブ板63の下端(原稿保持台30側の端部)が上方へ向けて溝状に切り欠かれることによって形成される。
【0027】
第2アーム59は、回動軸56から複合機10の背面側(後方)へ延びている。第2アーム59の先端部(後方側の端部)には、右方向へ延びる円柱状の支軸64と、その支軸64に回転可能に支持されたコロ65(本発明のコロの一例)が設けられている。コロ65は、枠フレーム32の左端部上面の支持面33に当接可能な位置に設けられている。コロ65は、原稿保持台60が第1位置に配置されている場合は、枠フレーム32の支持面33で支持されるが、原稿保持台60が第1位置から第2位置へスライドされる過程で、原稿保持台60の後端から下方へ落ちるため、支持面33で支持されなくなる。
【0028】
ねじりコイルバネ69は、回転軸56に支持されている。ねじりコイルバネ69は、第1アーム58を上方へ付勢させる付勢力をリンクアーム54に付与している。この付勢力は、第1アーム58を上方へ持ち上げるとともに、支軸61を介して原稿カバー17を閉姿勢から開方向へ回動させるに足る程度の力に設定されている。このようなねじりコイルバネ69が設けられているため、他の外力が加えられていない状態では、リンクアーム54は、左側面視で回動軸56を中心に反時計回転方向へ回転しようとし、この回転にともなって、第1アーム58が原稿カバー17を同方向(開方向)へ回動させる。なお、上述の条件を満たす付勢力を第1アーム58に付与するものであれば、ねじりコイルバネ69に限られず、様々な弾性部材を適用することが可能である。
【0029】
支持板67は、スキャナ筐体15の背面側に設けられている。この支持板67は、スキャナ筐体15の背面から水平に前方へ突出した板状の部材である。図6に示されるように、支持板67は、原稿保持台30よりも下方に配置されている。この支持板67は、コロ65の直下に設けられている。そのため、コロ65が原稿保持台30で支持されなくなった場合は、コロ65は支持板67によって支持される。
【0030】
[リンク機構50の動作]
このようなリンク機構50が設けられているため、原稿保持台30のスライド動作に連動して原稿カバー17が回動する。以下、リンク機構50の動作について説明する。図6(A)に示されるように、原稿カバー17が閉姿勢であり、原稿保持台30が第1位置にあるときは、コロ65は枠フレーム32の支持面33に当接した状態で静止している。このとき、ねじりコイルバネ69によって回動軸56を中心にして反時計回転方向への付勢力がリンクアーム54に付与されているが、第2アーム59がコロ65を介して枠フレーム32の支持面33によって支持されることで、上記反時計回転方向への回動が規制される。そのため、コロ65が枠フレーム32の支持面33に当接した状態でリンクアーム54は静止状態を維持する。
【0031】
原稿保持台30が第1位置から第2位置へ向けて引き出されると、コロ65は回転しながら原稿保持台30に対して相対的に後方へ移動する。そして、原稿保持台30が更に引き出されてコロ65が傾斜板36を通過すると、コロ65はスキャナ筐体15の背面と原稿保持台30の後端部との隙間に落ち込み、原稿保持台30によって支持されなくなる。これにより、上記反時計回転方向への規制が解除されるので、ねじりコイルバネ69による付勢力によって上方へ付勢されていた第1アームが反時計回転方向へ回転し始め、この回転に伴って原稿カバー17が上方へ持ち上げられる。
【0032】
また、第2アーム59もコロ65と共に反時計回転方向へ回転するが、コロ65が支持板67に当接して支持されると、再び、上記反時計回転方向への回動が規制される。そのため、コロ65が支持板67に当接した状態でリンクアーム54は再び静止状態となる。このとき、原稿カバー17は、開姿勢と閉姿勢との間の中間姿勢(図6(C)参照)まで持ち上げられ、それ以降の上方への移動は規制される。なお、上記中間姿勢は、原稿カバー17の裏面とコンタクトガラス31との間に原稿を載置可能なスペース(隙間)が形成される程度に設定されている。
【0033】
その後、原稿保持台30が第2位置まで引き出されると、コンタクトガラス31の全面が露出される。この状態で、コンタクトガラス31に原稿を載置することが可能となる。コンタクトガラス31に原稿が載置された後に原稿保持台30が第2位置から第1位置へ押し込まれると、コンタクトガラス31に載置された原稿が読み取り可能な位置に配置される。この際、原稿保持台30が第1位置に近づくと、まず、傾斜板36によって掬い上げられるようにしてコロ65が傾斜板36の上面に乗り上がる。そして、更に原稿保持台30が押し込まれて第1位置に配置されると、コロ65が枠フレーム32の支持面33上に配置されて、図6(A)に示される状態となる。なお、原稿保持台30が第2位置から第1位置へスライドされる過程では、原稿カバー17を上方へ付勢する力が軸受け溝62に付与されない。そのため、原稿カバー17は、その自重によって中間姿勢から閉姿勢に戻る。
【0034】
なお、図7に示されるように、原稿カバー17を開姿勢にしてからコンタクトガラス31に原稿を載置する場合は、従来どおり、原稿カバー17の正面側を上方へ持ち上げることにより、原稿カバー17だけを上方へ回動させることができる。
【0035】
[実施形態の効果]
このように、リンク機構50によって原稿保持台30のスライドに連動して原稿カバー17が閉姿勢から中間姿勢まで回動されるので、コンタクトガラス31に原稿を載置した後に原稿保持台30を第1位置に戻しても、原稿の位置がずれることなく正確にセットされる。また、原稿カバー17は中間姿勢まで回動されるが、それ以上は回動されないので、複合機10の上方に確保すべきスペースを省減することができる。そのため、室内の有効スペースが拡大する。また、複合機10の利用が阻害されることなく、上方に十分なスペースを確保できない狭い場所にも複合機10を設置することができるので、複合機の設置場所の選択肢が拡がる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・複合機
11・・・プリンタ装置
12・・・スキャナ装置
14・・・プリンタ筐体
15・・・スキャナ筐体
17・・・原稿カバー
30・・・原稿保持台
31・・・コンタクトガラス
36・・・傾斜板
50・・・リンク機構
54・・・リンクアーム
56・・・回動軸
58・・・第1アーム
59・・・第2アーム
61・・・支軸
62・・・軸受け溝
63・・・リブ板
64・・・支軸
65・・・コロ
67・・・支持板
69・・・ねじりコイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に設けられた画像記録ユニットと、上部に設けられたスキャナユニットとを備えた複合機であって、
上記スキャナユニットは、
ユニット本体と、
上記ユニット本体の上部に配置された第1位置と上記ユニット本体から当該装置の正面側へ引き出された第2位置との間でスライド可能に支持され、読み取られる原稿が保持される原稿保持面を有する原稿保持プレートと、
上記ユニット本体の背面側を回動中心として上記原稿保持面を覆う第1回動姿勢と上記原稿保持面が露出される第2回動姿勢との間で回動可能なカバー部材と、
上記第1位置から上記第2位置への上記原稿保持プレートのスライド動作に連動して上記カバー部材を上記第1回動姿勢から上記第2回動姿勢よりも回動角の小さい第3回動姿勢まで回動させて該第3回動姿勢を維持するリンク機構と、を具備する複合機。
【請求項2】
上記リンク機構は、
上記ユニット本体に軸支された回動軸と、
上記回動軸に連結され、上記回動軸から当該装置の正面側へ延出され上記カバー部材の裏面を支持する第1アーム及び上記回動軸から当該装置の背面側へ延出され上記原稿保持プレートの上面で支持される第2アームを有するリンクアームと、
上記第1アームを上方へ付勢する弾性部材と、
上記原稿保持プレートよりも下方に配置され、上記第2アームの先端を支持可能な支持部と、を有し、
上記原稿保持プレートが上記第1位置から上記第2位置へ向けてスライドされたことによって上記原稿保持プレートによる上記第2アームの先端の支持がなくなると、上記弾性部材の付勢力によって上方へ付勢された上記第1アームによって上記カバー部材が上記第1回動姿勢から上記第2回動姿勢へ向けて回動され、上記第2アームの先端が上記支持部に当接することによって、上記カバー部材の回動が規制されて上記カバー部材は上記第3回動姿勢で静止する請求項1に記載の複合機。
【請求項3】
上記第2アームの先端にコロが設けられている請求項2に記載の複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−139389(P2011−139389A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299197(P2009−299197)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】