説明

複合発電プラント

【課題】複数台のガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて工業プロセスに利用可能な抽気蒸気を得ることを可能とし、ボイラ腐食を抑制するとともに熱効率を向上させる複合発電プラントを提供する。
【解決手段】蒸気タービンと複数のガスタービンで発電機を駆動し、蒸気タービンより蒸気が抽出される抽気蒸気を工業プロセスに利用する複合発電プラントにおいて、副生ガスを燃料とするガスタービンと、天然ガスを燃料とするガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンと、復水器と、復水と補給水を補給貯蔵する給水タンクと、脱気器とを備え、給水タンクと、脱気器と、副生ガス焚きガスタービンと、排熱回収ボイラとからなる副生ガス利用側の給水・蒸気系路と、給水タンクの上流側で復水を分離し給水利用とする、天然ガス焚きガスタービンと、排熱回収ボイラとからなる天然ガス利用側の給水・蒸気系路Aを夫々形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン複合発電プラントに係り、燃料が異なるため燃焼ガスの廃熱条件も異なる複数のガスタービンを熱源として利用して排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気にて蒸気タービンを駆動して発電をするとともに工業プロセスに利用可能な抽気蒸気を得るに好適な複合発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数台のガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた複合発電システムの場合では、ガスタービンは同形式、同燃料、同出力が基本のほうが効率がよいとされている。そのような複合発電において、蒸気タービンから工場送気を行なう場合は蒸気タービンからの復水では不足するため、工場送気相当の補給水が必要である。
ここで、蒸気タービンの一種としてタービンの中間段から蒸気を抽出して、工場送気などの工業プロセスに利用し、同時に発電機等に動力供給を行なう抽気復水タービンは公知であり、かかる抽気タービンを用いた複合発電プラントの従来システム例を図8に示す。
【0003】
図8において、03,04は過熱蒸気生成用の排熱回収ボイラ、05は蒸気を導入してその熱エネルギーを駆動エネルギーに変換する抽気タービン型の蒸気タービン、013は前記蒸気タービン05の駆動力により回転する発電機、023は蒸気タービン05より抽気された抽気蒸気、040は蒸気タービン排出蒸気を奪熱して復水する復水器、043は復水014および補給水016を一旦貯留する給水タンク043、給水中の溶存酸素を除去する脱気器024a,024bを示す。また、排熱回収ボイラ03,04内には、低圧節炭器018、低圧蒸発器019、高圧節炭器020、高圧蒸発器021、高圧過熱器022、ドラム41、42が設けられており、給水015は、低圧節炭器018、低圧蒸発器019、高圧節炭器020、高圧蒸発器021、高圧過熱器022を経て蒸気となって蒸気タービン05に供給される。この給水015を供給する構成は排熱回収ボイラ03,04で同様である。
なお、01,02は発電機012を駆動するガスタービンとし、01は天然ガス09を燃料とする天然ガス焚きガスタービン01、02は各種炉若しくは各種プラント(例えば高炉、転炉、コークス炉、化学プラント等)から排出される副生ガス010を燃料とする副生ガス焚きガスタービンである。
【0004】
このように、図8に示したような構成において、熱蒸気生成用の排熱回収ボイラ03,04の前段側に脱気器024a,024bが夫々備えられている。この脱気器024a,024bは給水中に含まれる溶存酸素を除去するためのものである。給水中の溶存酸素量が多いと、ボイラの構成材料の腐食などの問題点が生じるため、脱気器を備えることで溶存酸素量を規定以下とした状態で発電プラントの稼働を行なっている。
【0005】
また、廃熱条件の異なる複数の熱源を利用した複合発電プラントとして、特許文献1(特開平3−50302号公報)で開示されている。特許文献1は、複数の廃熱条件の異なる熱源と、各熱源対応に設けたバンク構成の異なる複数の排熱回収ボイラと、各排熱回収ボイラにて発生された蒸気で駆動される1台の蒸気タービンとを備える複合発電プラントであって、前記複数の排熱回収ボイラで1つのサイクルを構成すると共に、最も高温の廃熱が流入する排熱回収ボイラの最上流部に、前記蒸気タービンに供給する蒸気を加熱する過熱器を設けている。
【特許文献1】特開平3−50302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8に示した構成では、補給水が多いため排熱回収ボイラの腐食を防ぐためにも脱気器024bが必要となり、脱気器の器内温度が高いため排熱回収ボイラ04入り口の給水温度が高くなる。また、天然ガス焚きガスタービン1から排出される排ガスから熱エネルギーを回収する排熱回収ボイラ03へ給水015を送り込むときも脱気器024aを介して供給しなければならず、給水温度が高くなる。また、脱気器として夫々の排熱回収ボイラに脱気器を設置するとプラントが大型になってしまう。
さらに、特許文献1に開示された発明では、廃熱条件の異なる複数の熱源を利用した複合発電プラントの構成が示めされているに止まっており、抽気蒸気を得ることについては開示されていない。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、複数台のガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて工業プロセスに利用可能な抽気蒸気を得ることを可能とし、ボイラ腐食を抑制するとともに熱効率を向上させる複合発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、燃料を燃焼させることで駆動される複数のガスタービンとその排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ及びその発生蒸気を駆動源とし、かつ、工業プロセスに利用可能な蒸気抽出可能な抽気復水蒸気タービンから構成される複合発電プラントにおいて、
各種炉若しくは各種プラントから排出される副生ガスを燃料利用とする副生ガス焚きガスタービンと、天然ガスを燃料利用する天然ガス焚きガスタービンと、前記夫々のガスタービンからの排ガスが熱源として供給される夫々の排熱回収ボイラと、前記夫々の排熱回収ボイラより得られる蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気を凝縮して水に戻す復水器と、復水器出口に設置された復水ポンプにて昇圧された復水を貯蔵することに加え、純水装置、純水タンクより供給される補給水を貯蔵する給水タンクと、前記給水タンク下流側に設けられ補給水に含まれる溶存酸素を除去する脱気器とを備え、
前記給水タンクと、前記脱気器と、副生ガス焚きガスタービン用排熱回収ボイラとからなる副生ガス利用側の給水・蒸気系路と、
前記復水器と給水タンクの間の復水配管から分岐し、天然ガス焚きガスタービン用排熱回収ボイラとからなる天然ガス利用側の給水・蒸気系路を夫々形成したことを特徴とする複合発電プラントを提案する。
【0009】
本発明によれば、天然ガス焚きガスタービンの排熱回収ボイラへは復水を直接返し、副生ガス焚きガスタービンの排熱回収ボイラへは復水と補給水を混合貯蔵する給水タンクと脱気器とを介在させて給水している。このことにより、天然ガス焚きガスタービンの排熱回収ボイラへは給水温度を下げたまま給水することができるので熱効率が高くなる。一般的に腐食成分がない燃料とされている天然ガスを用いた天然ガス焚きガスタービンの場合、排ガス中の硫黄濃度をほとんど無視することができるので給水温度は低くできる。また、復水を直接返しているために脱気器が不要となる。
また、副生ガス焚きガスタービンの排熱回収ボイラへは脱気器を介在させて給水することにより給水温度が高くでき、副生ガスに含まれる硫黄分によるボイラの腐食を抑制することができる。このとき、脱気器は給水タンク下流側に設けられているので、補給水中に含まれる溶存酸素の不純物をボイラへ供給することなく除去することができる。
なお、各種炉としては高炉、転炉、コークス炉、ガス火炉が挙げられ、各種プラントとしては化学プラント、原子力プラント、廃棄物プラント等が挙げられる。
【0010】
さらに、前記給水タンクを介して副生ガス利用側の給水系路に前記補給水が補給され、前記蒸気タービンより抽気された抽気蒸気の抽気量を賄うことを特徴とする。これにより、抽気蒸気として蒸気タービンより抽気しても蒸気系路内でバランスを取ることができ、安定して抽気蒸気を得ることができる。
【0011】
また、前記した複合発電プラントにおいて、別途供給される燃料で蒸気を生成する併設ボイラを設け、前記併設ボイラと、前記給水タンクと、前記脱気器若しくは別途設置する脱気器とからなる併設給水系路が設けられていることを特徴とする。
このように、併設ボイラへ給水するときも脱気器を介在させることにより、併設ボイラの腐食を抑制することができる。
【0012】
さらにまた、前記蒸気タービンへ蒸気を夫々供給する前記副生ガス利用側の蒸気系路と前記天然ガス利用側の蒸気系路とが並列配置して設けられ、
前記併設蒸気系路が前記2つの蒸気系路と異なる系路で併設ボイラから発生する蒸気を蒸気タービンに供給する第3の系路であることを特徴とする。
【0013】
このようにして、併設ボイラからの蒸気が蒸気タービンに供給され、蒸気タービンの出力が増加する。また、蒸気タービンで抽気を調整することができ抽気圧力・温度の好適値が利用可能となる。
また、上記構成とすることにより、前記副生ガス利用側の給水・蒸気系路と天然ガス利用側の給水・蒸気系路と併設給水・蒸気系路とが夫々設けられるので、天然ガス焚きガスタービン、副生ガス焚きガスタービン、蒸気タービン、併設ボイラの定期検査、発電量見合い、あるいは異常時に何れかひとつが部分停止しても運転継続が可能であり、また抽気蒸気を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、天然ガスガス焚きタービンの排熱回収ボイラへは復水を直接返し、副生ガスガス焚きタービンの排熱回収ボイラへは補給水を給水する給水タンクと脱気器とを介在させて給水している。このことにより、復水を直接返しているために脱気器が不要となり、天然ガスガス焚きタービンの排熱回収ボイラへは給水温度を下げたまま給水することができるので熱効率が高くなる。また、副生ガスガス焚きタービンの排熱回収ボイラへは脱気器を介在させて給水することにより、副生ガスに含まれる硫黄分によるボイラの腐食を防止することができる。このとき、脱気器は給水タンク下流側に設けられているので、補給水中に含まれる溶存酸素をボイラへ供給することなく除去することができる。
さらに、抽気蒸気として蒸気タービンより抽気しても蒸気系路内でバランスを取ることができ、安定して抽気蒸気を得ることができる。
また、併設ボイラへ給水するときも脱気器を介在させることにより、併設ボイラの腐食を抑制することができる。
さらにまた、併設ボイラからの蒸気が蒸気タービンに供給され、蒸気タービンの出力が増加する。また、蒸気タービンで抽気を調整することができ、抽気蒸気は圧力・温度の好適値が利用可能となる。
また、上記構成とすることにより、前記副生ガス利用側の給水・蒸気系路と天然ガス利用側の給水・蒸気系路と併設給水・蒸気系路とが夫々設けられるので、天然ガス焚きガスタービン、副生ガス焚きガスタービン、蒸気タービン、併設ボイラの何れかひとつが部分停止しても稼働し、定期検査時及び効率運転不適合時の片系列運転が可能であり、また抽気蒸気を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明に係る複合発電プラントの実施形態1を示す概略系統図、図2は本発明に係る複合発電プラントの実施形態2を示す概略系統図(運転時)、図3は本発明に係る複合発電プラントの実施形態2を示す概略系統図(定期検査時、部分停止時、若しくは異常運転時)、図4は本発明に係る複合発電プラントの実施形態3を示す概略系統図(運転時・定期検査時、部分停止時、若しくは異常運転時)、図5は本発明に係る複合発電プラントの実施形態4を示す概略系統図(運転時・定期検査時、部分停止時、若しくは異常運転時)、図6は本発明に係る複合発電プラントの実施形態5を示す概略系統図(運転時)、図7は本発明に係る複合発電プラントの実施形態5を示す概略系統図(定期検査時、部分停止時、若しくは異常運転時)、図8は従来の複合発電プラントの概略系統図である。
なお、本発明の実施形態で用いる副生ガスは、高炉からの副生ガス(BFG)、転炉からの副生ガス(LDG)、コークス炉からの副生ガス(COG)などを対象に単味若しくは混合したガスであり、硫黄分を含有する。
(実施形態1)
【0016】
まず、図1を用いて本発明に係る複合発電プラントについて説明する。
図1に示した複合発電プラントは、発電機12を駆動させる天然ガス焚きガスタービン1及び副生ガス焚きガスタービン2、発電機13を駆動させる蒸気タービン5を備えている。
また、蒸気タービン5の駆動エネルギーとして用いる蒸気を生成するため、天然ガス焚きガスタービン1から排出される排ガスから熱エネルギーを回収する排熱回収ボイラ(排ガスボイラ)3と、副生ガス焚きガスタービン2から排出される排ガスから熱エネルギーを回収する排熱回収ボイラ(排ガスボイラ)4とが設けられている。また、蒸気タービン5から抽気蒸気23が抽気される。
【0017】
天然ガス焚きガスタービン1は、腐食成分が含まれない天然ガスが駆動エネルギーとして用いられている。本実施例では液化天然ガス(以下、LNGという)9を用いるが、天然ガスであれば液化に限定されないものとする。LNG9は、LNG気化設備により気化させて燃料ガスとなる。一方、副生ガス焚きガスタービン2は、駆動エネルギーとして前述した副生ガス10が用いられている。
天然ガス焚きガスタービン1及び副生ガス焚きガスタービン2は、それぞれ大気中から空気6を吸込んで圧縮機7にて圧縮し、高圧の空気を燃焼器8へ送る。一方、燃料となるLNG9、副生ガス10が夫々燃焼器8へ供給され、圧縮機7から供給された高圧の空気によって燃料が燃焼し、高温・高圧のガスとなる。高温・高圧のガスは、それぞれ天然ガス焚きガスタービン1と副生ガス焚きガスタービン2を駆動し、さらに発電機12を駆動して電気出力を発生する。
そして、天然ガス焚きガスタービン1と副生ガス焚きガスタービン2で仕事をしたガスタービンの排ガスは、それぞれ後流に備えられた排熱回収ボイラ3,4へ送られる。
【0018】
排熱回収ボイラ3,4内には、低圧節炭器18、低圧蒸発器19、高圧節炭器20、高圧蒸発器21、高圧過熱器22、ドラム41、42が設けられている。
ここで、天然ガス焚きガスタービン1の排熱回収ボイラ3を含む天然ガス利用側の給水・蒸気系路Aについて説明する。排熱回収ボイラ3で排出される蒸気は、蒸気タービン5へ供給される。蒸気タービン5の駆動源として用いられた蒸気は、復水器40によって復水14となり、ポンプ25、ポンプ28を介して、排熱回収ボイラ3内に給水15として送り込まれる。
給水15は、低圧節炭器18に送り込まれて排ガスと熱交換することで加熱され、低圧蒸発器19内で加熱されてドラム41に送り込まれて気液分離される。ドラム41で気液分離された蒸気は、低圧蒸気31となり蒸気タービン5に供給される。また、低圧節炭器18の出口にて一部加熱された給水は、ポンプ29を介して再循環水17となって排熱回収ボイラ3上流側に再循環され、低圧節炭器入り口給水温度を適当な温度に昇温する。
また、給水15はポンプ30にて加圧された後、高圧節炭器20に送り込まれて加熱された後、高圧蒸発器21内で加熱されてドラム42に送り込まれて気液分離される。ドラム42で気液分離された蒸気は、高圧過熱器22で過熱された後、高圧蒸気32として蒸気タービン5に供給される。このようにして、天然ガス利用側の給水・蒸気系路A内においては、復水を直接排熱回収ボイラ3に返して循環する構成となっている。
【0019】
また、副生ガス焚きガスタービン2の排熱回収ボイラ4を含む副生ガス利用側の給水・蒸気系路Bについて説明する。排熱回収ボイラ4で排出される蒸気は、蒸気タービン5へ供給される。蒸気タービン5の駆動源として用いられた蒸気は、復水器40によって復水14となり、ポンプ25を介して、給水タンク43に一旦貯留される。給水タンク43では補給水16が補給される。この補給水16は蒸気タービン5で抽気された抽気蒸気23の抽気量を賄うためのもので、純水が用いられている。
給水タンク43の給水はポンプ26にて脱気器24へ送られる。脱気器24で給水中の溶存酸素を除去した後、ポンプ27にて給水15を排熱回収ボイラ4へ送り込む。
【0020】
この給水15を循環する構成は排熱回収ボイラ3と同様であり、給水15は、低圧節炭器18に送り込まれて排ガスと熱交換することで加熱され、低圧蒸発器19内で加熱されてドラム41に送り込まれて気液分離される。ドラム41で気液分離された蒸気は、低圧蒸気31となり蒸気タービン5に供給される。また、低圧節炭器18の出口にて一部加熱された給水は、ポンプ29を介して再循環水17となって排熱回収ボイラ3上流側に再循環され、低圧節炭器入り口給水温度を適当な温度に昇温する。この温度は腐食防止のためLNG焚きガスタービン側より高い。
また、給水15はポンプ30にて加圧された後、高圧節炭器20に送り込まれて加熱された後、高圧蒸発器21内で加熱されてドラム42に送り込まれて気液分離される。ドラム42で気液分離された蒸気は、高圧過熱器22で過熱された後、高圧蒸気32として蒸気タービン5に供給される。このようにして、副生ガス利用側の給水・蒸気系路B内においては、補給水16を補給する給水タンク43と脱気器24を介して給水15を排熱回収ボイラ4に返して循環する構成となっている。
【0021】
なお、排熱回収ボイラ3,4で排出される低圧蒸気31および高圧蒸気32は、蒸気タービン5へ供給する前に夫々合流させている。また、図1の実施形態1では、低圧、高圧の2系統を備える例を示したが、これ以外に低圧、中圧、高圧の3系統の構成も存在する。さらに、上記した実施形態で示した排熱回収ボイラ内の構成は、適宜他の構成に変更することが可能である。例えば、低圧節炭器18、低圧蒸発器19、高圧節炭器20、高圧蒸発器21、高圧過熱器22の配置や配管等は適宜変更しても支障はない。
【0022】
このように、副生ガス焚きの副生ガス焚きガスタービン2では、副生ガス10中の硫黄分による腐食を抑制するために脱気器24で不純物を除去する。また、腐食成分が含まれないLNG焚きの天然ガス焚きガスタービン1では、復水14を直接排熱回収ボイラ3に返しているので、ボイラ入口給水温度を下げることができ、熱回収率が向上し、高い発電効率が可能となる。
【0023】
次に、図2〜図8を用いて本発明に係る複合発電プラントの実施形態2〜6について説明する。実施形態2〜6はいずれも実施形態1の複合プラントに併設ボイラ51を組み合わせたものである。図2〜図8中の実線が使用ライン、破線が不使用ラインである。
この実施形態2〜6において併設ボイラ51の燃料種別に関係なく、発生蒸気は蒸気タービン5に送気される。抽気蒸気23は蒸気タービン抽気とするが、ガスタービン1台運転など蒸気タービンの部分が負荷運転にて抽気圧力が確保できない場合には、蒸気取り出し位置をより上流側に切り替える。また、天然ガス焚きガスタービン1はDSS(Daily Start Stop)運転も想定して運転できる。
(実施形態2)
【0024】
実施形態2は、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、蒸気タービン5、併設ボイラ51で構成され、発電機を駆動する複合発電プラントにおける通常運転時である。実施形態2における運転時を図2、定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時を図3に示す。なお、実施形態2において、上記した実施形態1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
図2に示した複合発電プラントは、実施形態1と同様に、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、抽気蒸気23を抽気する蒸気タービン5、排熱回収ボイラ3,4、復水器40、補給水16を補給する給水タンク43、脱気器24とを備えている。
また、実施形態1と異なる構成として、併設ボイラ51、脱気器54を備えている。また図示しないが、低圧給水加熱器、高圧給水加熱器も設けられる。
【0025】
図2に示すように、併設給水系路は給水タンク43から分岐して設けられている。副生ガス利用側の給水系路と同様に、給水は給水タンク43と脱気器54を介して併設ボイラ51へ送り込まれる。これにより、給水中の溶存酸素を除去して併設ボイラ51の腐食を抑制する。
【0026】
また、蒸気タービン5に併設ボイラ51から排出される蒸気を供給する。このようにして、併設ボイラ51からの蒸気が蒸気タービンに供給され、蒸気タービン5の出力が増加する。抽気蒸気23は蒸気タービン5より抽気され、蒸気タービン5で抽気蒸気23の量を調整する。
【0027】
図3は実施形態2における定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時であり、主構成は図2と同一であるが、天然ガス焚きガスタービン1が停止している点が図2と異なる。図3のように天然ガス焚きガスタービン1が停止した場合でも稼働し抽気蒸気23を得ることが可能な系統となっている。
なお、天然ガス焚きガスタービン1の定検時も図3と同一である。天然ガス焚きガスタービン1の定検時では、図3破線部に示すように、蒸気は排熱回収ボイラ3から蒸気タービン5へ供給されない。しかし、副生ガス焚きガスタービン2は運転しているので、排熱回収ボイラ4から蒸気が供給される。よって、天然ガス焚きガスタービン1の定検時でも駆動し抽気蒸気23を得ることができる。
(実施形態3)
【0028】
実施形態3は、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、蒸気タービン5、併設ボイラ51で構成され、発電機を駆動する複合発電プラントにおける副生ガス焚きガスタービン2の定検時であり、これを図4に示す。実施形態3では運転時も定期検査時若しくは部分運転時も同一である。
図2と同様に、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、抽気蒸気23を抽気する蒸気タービン5、排熱回収ボイラ3,4、復水器40、補給水16を補給する給水タンク43、脱気器24とを備えている。さらに、併設ボイラ51、脱気器54を備えている。また図示しないが、低圧給水加熱器、高圧給水加熱器も設けられる。
【0029】
また、図4は実施形態2と異なり、運転時も定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時も副生ガス焚きガスタービン2が定検のため運転していない。つまり、図4破線部に示すように、蒸気は排熱回収ボイラ4から蒸気タービン5へ供給されない。しかし、天然ガス焚きガスタービン1は運転しているので、排熱回収ボイラ3から蒸気が供給される。よって、副生ガス焚きガスタービン2の定検時でも駆動し抽気蒸気23を得ることができる。
(実施形態4)
【0030】
実施形態5は、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、蒸気タービン5、併設ボイラ51で構成され、発電機を駆動する複合発電プラントにおける蒸気タービン5の定検時であり、これを図5に示す。実施形態4では運転時も定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時も同一である。
図2と同様に、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、抽気蒸気23を抽気する蒸気タービン5、排熱回収ボイラ3,4、復水器40、補給水16を補給する給水タンク43、脱気器24とを備えている。さらに、併設ボイラ51、脱気器54を備えている。また図示しないが、低圧給水加熱器、高圧給水加熱器も設けられる。
【0031】
図5は実施形態2と異なり、運転時も定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時も蒸気タービン5が定検のため運転せず、天然ガス焚きガスタービン1および副生ガス焚きガスタービン2は停止する。つまり、図5実線部に示すように、運転しているのは併設ボイラ51のみとなり、蒸気タービン5から抽気蒸気が抽気されない。しかし、併設ボイラ51から排出される蒸気を抽気蒸気53として得ることが可能となる。よって、蒸気タービン5の定検時でも駆動し抽気蒸気を得ることができる。
(実施形態5)
【0032】
実施形態5は、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、蒸気タービン5、併設ボイラ51で構成され、発電機を駆動する複合発電プラントにおける併設ボイラ51の定検時である。実施形態5における運転時を図6、定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時を図7に示す。なお、実施形態5において、上記した実施形態1、2と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
図6に示した複合発電プラントは、図2と同様に、天然ガス焚きガスタービン1、副生ガス焚きガスタービン2、抽気蒸気23を抽気する蒸気タービン5、排熱回収ボイラ3,4、復水器40、補給水16を補給する給水タンク43、脱気器24とを備えている。さらに、併設ボイラ51、脱気器54を備えている。また図示しないが、低圧給水加熱器、高圧給水加熱器も設けられる。
【0033】
図6に示すように、併設ボイラ51が定検のため運転していないので、併設ボイラ蒸気系路は図6破線部のように不使用となり、併設ボイラ51からの蒸気が蒸気タービン5へ供給されない。しかし、天然ガス焚きガスタービン1および副生ガス焚きガスタービン2が共に運転しているので、排熱回収ボイラ3,4から蒸気が供給され、併設ボイラ51の定検時でも駆動し十分に抽気蒸気23を得ることができる。
【0034】
図7は定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時であり、主構成は図6と同一であるが、天然ガス焚きガスタービン1が停止している点が図6と異なる。図7のように天然ガス焚きガスタービン1が停止した場合でも副生ガス焚きガスタービン2が駆動しているので排熱回収ボイラ4から蒸気タービン5へ蒸気が供給され駆動し抽気蒸気23を得ることができる。
【0035】
以上のことから、上記構成とすることにより、天然ガス焚きガスタービン、副生ガス焚きガスタービン、蒸気タービン、併設ボイラの何れかひとつが部分停止しても稼働し、定期検査時、部分運転時、若しくは不適合時の片系列運転が可能であり、また抽気蒸気を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、天然ガス焚きガスタービン、副生ガス焚きガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電機を駆動するとともに工業プロセスに利用可能な抽気蒸気を得ることを可能とし、ボイラ腐食を抑制して熱効率を向上させる構成とした複合発電プラントとして有益である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る複合発電プラントの実施形態1を示す概略系統図である。
【図2】本発明に係る複合発電プラントの実施形態2を示す概略系統図(運転時)である。
【図3】本発明に係る複合発電プラントの実施形態2を示す概略系統図(定期検査時、部分運転時、若しくは異常運転時)である。
【図4】本発明に係る複合発電プラントの実施形態3を示す概略系統図(運転時・定期検査時、部分運転時、若しくは異常運転時)である。
【図5】本発明に係る複合発電プラントの実施形態4を示す概略系統図(運転時・定期検査時、部分運転時、若しくは異常運転時)である。
【図6】本発明に係る複合発電プラントの実施形態5を示す概略系統図(運転時)である。
【図7】本発明に係る複合発電プラントの実施形態5を示す概略系統図(定期検査時、部分運転時、若しくは異常運転時)である。
【図8】従来の複合発電プラントの概略系統図である。
【符号の説明】
【0038】
1 天然ガス焚きガスタービン
2 副生ガス焚きガスタービン
3、4 排熱回収ボイラ
5 蒸気タービン
9 液化天然ガス(LNG)
10 副生ガス
12、13 発電機
14 復水
15 給水
16 補給水
23 抽気蒸気
24 脱気器
40 復水器
43 給水タンク
51 併設ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させることで駆動される複数のガスタービンとその排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ及びその発生蒸気を駆動源とし、かつ、工業プロセスに利用可能な蒸気抽出可能な抽気復水蒸気タービンから構成される複合発電プラントにおいて、
各種炉若しくは各種プラントから排出される副生ガスを燃料利用とする副生ガス焚きガスタービンと、天然ガスを燃料利用する天然ガス焚きガスタービンと、前記夫々のガスタービンからの排ガスが熱源として供給される夫々の排熱回収ボイラと、前記夫々の排熱回収ボイラより得られる蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気を凝縮して水に戻す復水器と、復水器出口に設置された復水ポンプにて昇圧された復水を貯蔵することに加え、純水装置、純水タンクより供給される補給水を貯蔵する給水タンクと、前記給水タンク下流側に設けられ補給水に含まれる溶存酸素を除去する脱気器とを備え、
前記給水タンクと、前記脱気器と、副生ガス焚きガスタービン用排熱回収ボイラとからなる副生ガス利用側の給水・蒸気系路と、
前記復水器と給水タンクの間の復水配管から分岐し、天然ガス焚きガスタービン用排熱回収ボイラとからなる天然ガス利用側の給水・蒸気系路を夫々形成したことを特徴とする複合発電プラント。
【請求項2】
前記給水タンクを介して副生ガス利用側の給水系路に前記補給水が補給され、前記蒸気タービンより抽気された抽気蒸気の抽気を賄うことを特徴とする請求項1記載の複合発電プラント。
【請求項3】
請求項1若しくは2記載の複合発電プラントにおいて、別途供給される燃料で蒸気を生成する併設ボイラを設け、
前記併設ボイラと、前記給水タンクと、前記脱気器若しくは別途設置する脱気器とからなる併設給水系路が設けられていることを特徴とする複合発電プラント。
【請求項4】
前記蒸気タービンへ蒸気を夫々供給する前記副生ガス利用側の蒸気系路と前記天然ガス利用側の蒸気系路とが並列配置して設けられ、
前記併設蒸気系路が前記2つの蒸気系路と異なる系路で併設ボイラから発生する蒸気を蒸気タービンに供給する第3の系路であることを特徴とする請求項3記載の複合発電プラント。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−79525(P2009−79525A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249021(P2007−249021)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】