説明

複合管、および複合管を用いた空調配管システム

【課題】 耐傷性、耐候性に優れる複合管及び空調配管システムを提供する。
【解決手段】 管の外表面を樹脂発泡体層で被覆し、前記樹脂発泡体層を保護層で被覆した耐傷性と耐候性に優れた複合管。また、水平面に前記複合管を静置し、前記複合管の樹脂発泡体層と保護層とを合わせた被覆部分の表面に、直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状のステンレス製の圧子を垂直に立て、垂直下向き方向に荷重800gをかけたまま、圧子を複合管に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向に10cm引っ張る引っかき試験を行った場合、生ずる引っかき傷の深さが1mm以下である複合管。および、これらの複合管を用いた空調配管システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合管に関し、詳しくは、空調機の冷熱媒用配管として用いられる、耐候性に優れた複合管および前記複合管を用いた空調配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空調配管システムは、ビルの屋上に設置された室外ユニットと、ビル内に設置された室内ユニットと、それらを接続する冷熱媒用配管とから構成されている。なお、前記冷熱媒用配管は、屋外に敷設されている部分を含む。
冷熱媒用配管としては、管の周囲に高断熱の樹脂発泡体を被覆した複合管が用いられてきたが、樹脂発泡体単独では人による踏みつけ、カラスの突き等に対する耐傷性、ならびに太陽光紫外線に対する耐候性が不足していた。
このため、冷熱媒用配管の屋外に暴露される部分は保護カバーで覆うか、またはテープで保護していた(特許文献1参照)。しかし、前記保護カバーは、管を敷設してから後付けされることになるので、工期の遅延、コストの上昇を招くという問題があった。
【特許文献1】特開2002−310382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、耐傷性、耐候性に優れる複合管及び空調配管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、管に樹脂発泡体層を被覆した後に、前記樹脂発泡体層の外周に保護層を被覆することで耐傷性、耐候性が向上することを見出した。すなわち、本発明は、
(1)管の外表面を樹脂発泡体層で被覆し、前記樹脂発泡体層を保護層で被覆したことを特徴とする耐傷性と耐候性に優れた複合管、
(2)水平面に前記複合管を静置し、前記保護層の表面に、直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状のステンレス製の圧子を垂直に立て、垂直下向き方向に荷重800gをかけたまま、圧子を複合管に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向に10cm引っ張る引っかき試験を行った場合、生ずる引っかき傷の深さが1mm以下であることを特徴とする(1)項記載の耐傷性と耐候性に優れた複合管、
(3)サンシャインウエザオメータにて、ブラックパネル温度が63℃、降雨時間が120分中18分である条件下で、前記複合管を1000時間暴露した後、水平面に前記複合管を静置し、前記保護層の表面に、直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状のステンレス製の圧子を垂直に立て、垂直下向き方向に荷重800gをかけたまま、圧子を複合管に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向に10cm引っ張る引っかき試験を行った場合、生ずる引っかき傷の深さが1mm以下であることを特徴とする(1)項記載の耐傷性と耐候性に優れた複合管、
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合管を用いた空調配管システム、
(5)室外ユニット、室内ユニット、および複合管を備え、複合管のうち少なくとも一部が屋外に暴露されている(4)項記載の空調配管システム、
(6)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合管の製造方法であって、前記保護層が、樹脂発泡体層が被覆された管を蛇腹管成形装置に通すことで被覆されることを特徴とする複合管の製造方法、および、
(7)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合管の製造方法であって、前記保護層が、樹脂発泡体層が被覆された管をあらかじめ成形された保護管に通すことで被覆されることを特徴とする複合管の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の複合管は耐傷性及び耐候性に優れるので、これを用いた空調配管システムでは、屋外暴露配管に保護カバーを必要とせず、工数とコストが削減できるという利点を有する。
また、本発明の複合管は保護層が極めて強固なので、破損する懸念が少ないという利点を有する。
また、複合管の保護層が、樹脂発泡体層が被覆された管をあらかじめ成形された保護管に通すことで被覆される製造方法では、管への樹脂発泡体層の被覆と樹脂発泡体層への保護層の被覆を、既存の設備を変更することなく別々に行うことができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の屋外暴露配管として好適な複合管は、管と、その外表面に被覆された樹脂発泡体層と、さらにその樹脂発泡体層の外周に被覆された保護層とからなる。
【0007】
管としては、銅や鉄等の金属管や樹脂製の管を用いることができる。樹脂製の管の場合は、管を形成する材料としてポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレンやこれらを架橋したもの等が使用されるが、これらに限られるものではない。
【0008】
本発明において、樹脂発泡体を構成する材料としては、目的に応じて任意のものが使用できるが、押出安定性、発泡倍率の上げやすさの観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、スチレンブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂等が挙げられるがこれらに限られるものではない。更に上記各樹脂のシラン変性、カルボン酸変性等の変性体なども用いることができ、またこれらの樹脂は単独、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0009】
前記樹脂発泡体層は架橋していてもよい。架橋する場合は、電子線架橋、化学架橋、水架橋のいずれの方法を使用してもよい。
樹脂発泡体を構成する材料としては、高耐熱性の観点からポリプロピレンがより好ましい。ポリプロピレンを使用する場合、押出加工性と発泡性を考慮すると、樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)は、0.05〜10.0g/10minが好ましく、0.5〜3.0g/10minがより好ましい。
【0010】
樹脂発泡体には、必要に応じて気泡核剤、熱安定剤、加工助剤、滑剤、衝撃改質剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料等が適宜添加されてもよい。
本明細書において、発泡倍率とは棒状発泡体の集合体として構成されるチューブ状発泡体全体の平均値を表す。樹脂発泡体の発泡倍率φは、未発泡の樹脂組成物の密度をρ(g/cm3)、樹脂発泡体の密度をρf(g/cm3)とした時に下記式(1)で定義される。
【0011】
【数1】

【0012】
樹脂発泡体の発泡倍率は5倍以上30倍以下の範囲内にあることが好ましい。樹脂発泡体の発泡倍率が5倍未満では複合管の断熱性が十分ではなくなることがあり、30倍を超えると対流伝熱が大きくなり、やはり断熱性が低くなることがある。断熱性を考慮すると、樹脂発泡体の発泡倍率は5倍以上20倍以下の範囲内にあることがより好ましく、10倍以上15倍以下であることが特に好ましい。
【0013】
本発明の複合管の発泡体樹脂層は、好ましくは、管の外表面に樹脂発泡体を押出発泡法により被覆することにより形成される。押出発泡法とは、押出機に樹脂とともに発泡剤を供給し、ダイから樹脂を押し出すと同時に発泡させる方法であり、この方法によれば樹脂を発泡させると同時に管に被覆させることができる。
【0014】
前記発泡剤としては、ガス発泡剤、蒸発型発泡剤、化学発泡剤などを用いることができる。ガス発泡剤としては窒素ガスや炭酸ガス等を用いることができ、蒸発型発泡剤としてはブタン、ペンタン、メタノール、水等を用いることができ、化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等を用いることができるが、これらに限られるものではない。上記発泡剤の中では、環境への影響を考慮するとガス発泡剤が好ましく、窒素ガス又は炭酸ガスがより好ましく、炭酸ガスが特に好ましい。
【0015】
本発明において、保護層を構成する材料としては、目的に応じて任意のものが使用できるが、成形の容易さを考慮すると、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、前述の樹脂発泡体を構成する材料に用いられるポリオレフィン樹脂として例示された樹脂を用いることができる。保護層を構成するポリオレフィン系樹脂としては施工時の曲げやすさや切断のしやすさを向上させる観点からエチレン酢酸ビニル系樹脂が好ましい。
【0016】
前記保護層は発泡していてもよいが、JIS K 7181に記載の圧縮強さは樹脂発泡体層よりも高くなければならない。
前記保護層には耐候剤を添加してもよい。添加される耐候剤は樹脂に応じてさまざまであるが、紫外線吸収剤、紫外線反射剤、酸化防止剤、光安定剤のいずれを単独、あるいは組み合わせて用いてもよい。耐候剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、保護層を構成する材料にポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、樹脂に対して0.1〜5質量%が好ましい。
【0017】
また、保護層は施工時の外傷や紫外線から発泡層を保護するという作用を有する。
本発明において、保護層の厚さは0.3〜2mmが好ましく、0.5〜1mmがさらに好ましい。
また、保護層の硬度はJIS K 6253のショアAで70以上の硬度が好ましい。
【0018】
本発明の複合管の製造方法について、以下に図面に参照して説明をする。
図1は本発明の複合管の製造方法における、管に樹脂発泡体層を被覆する方法の一例を示す概略説明図(斜視図)である。図1では押出発泡法により管に樹脂発泡体層を被覆している。図1では、押出機10のホッパー12に樹脂を供給し、クロスヘッド11から樹脂発泡体を押し出すと同時に管14に被覆して樹脂発泡体被覆管16を得ることができる。発泡剤の供給方法としては、ホッパー12から樹脂とともに化学発泡剤を供給してもよいし、ガス発泡剤や蒸発型発泡剤をガス供給口13から直接注入してもよい。
【0019】
前記押出発泡法で管に樹脂発泡体層を被覆する場合、押出機10としては単軸押出機、二軸押出機いずれを用いてもよいし、両者を組み合わせたタンデム押出システムを用いてもよい。発泡倍率を高める観点でいえば、樹脂を高度に冷却することのできるタンデム押出システムを用いることが好ましい。
【0020】
前記押出発泡法で管に樹脂発泡体層を被覆する場合、押出機のダイ出口の形状は、円環状あるいは多数の孔で構成されるもの、いずれを用いてもよい。発泡倍率を向上させる観点で言えば、断面積に対する表面積の比が最も小さい円形の断面をもつ複数の孔を配置した多孔ダイを使用することが好ましい。
【0021】
本発明において、樹脂発泡体層被覆管がダイを出た直後にサイジングダイ(図示せず)を通すことで表面の凹凸を平滑化することができる。サイジングダイとしては、目標とする複合管の外径と等しくなるように調節された内径をもつ筒状の金属等を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0022】
図2は本発明の複合管の製造方法における、管に樹脂発泡体層を被覆する方法の別の例を示す概略説明図(斜視図)である。図2に示す方法では、まず短冊状樹脂発泡シート22を発泡シート融着機20に通して発泡シートの端部同士を融着し、次に融着された樹脂発泡体23を管21に被覆することで、樹脂発泡体被覆管24を得ることができる。
発泡体の端部を強固に密着させる方法としては、熱で端部を溶融させてから端部同士を押し付ける方法以外に、接着剤で接着してもよい。
【0023】
図3は本発明の複合管の製造方法における、樹脂発泡体層被覆管に保護層を被覆する方法の一例を示す概略説明図(斜視図)である。図3では押出機で保護層を被覆している。この方法では、管33に樹脂発泡体層34を被覆した樹脂発泡体被覆管を押出機30のクロスヘッド31に供給し、保護層35を被覆することで複合管36を得ることができる。
【0024】
図4は本発明の複合管の製造方法における、樹脂発泡体層被覆管に保護層を被覆する方法の別の例を示す概略説明図(斜視図)である。図4では蛇腹管成形装置で保護層を被覆している。この方法では、管41に樹脂発泡体が被覆された樹脂発泡体層被覆管42を蛇腹管成形装置40に供給することで、保護層43として蛇腹管を被覆した複合管44が得られる。
【0025】
図5は本発明の複合管の製造方法における、樹脂発泡体層被覆管に保護層を被覆する方法のさらに別の例を示す概略説明図(斜視図)である。この方法では、図5(a)に示すように管51に樹脂発泡体層52を被覆させた樹脂発泡体層被覆管53をあらかじめ成形された保護層(保護管)50に通すことで、図5(b)に示すように複合管54を得ることができる。保護層の表面形状は、保護層が手で曲げられる程度に柔らかければ平滑でもよいし、固ければ蛇腹状にして曲げやすくしてもよい。
【0026】
なお、以上の製造方法は、それぞれ本発明を実施するための一例であり、本発明を実現できる方法であれば特に本記載に限定されるものではない。
また、発泡シート融着機、蛇腹管成形装置等についても特に限定はなく、従来用いられているものを適宜用いることができる。
【0027】
また、本発明における、樹脂発泡体層と保護層とを合わせた被覆部分の引っかき強さは、図6の概略説明図(正面図)で示される試験方法により測定する。まず、図6(a)に示すように水平面68に複合管60を静置し、複合管60の保護層の表面にステンレス製の圧子64を垂直に立て、垂直下向き方向66に荷重800gをかける。なお、図6(b)は、圧子64の先端部分(直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状)の拡大図である。続いて、荷重をかけたまま、圧子64を複合管60に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向67に10cm引っ張る。そして複合管60に深さ1mm以上の引っかき傷が生じるかどうかを確認する。本試験は異なる試験片で3回行い、3回とも引っかき傷の深さが1mm以下であった場合に本発明の条件を満たすとする。
【0028】
本発明において、上記の引っかき試験により生じた引っかき傷の深さは1mm以下であることが好ましい。ここで上記の荷重800gという数値は、実用上、最も厳しい負荷と考えられるカラスによる突き刺しにおける荷重と考えられる値とほぼ同様の値である。引っかき傷の深さが1mmを超えると、その傷を起点として更なる裂けが生じたり、傷に水やゴミが蓄積して見栄えが悪くなったりする可能性が高まるからである。傷の深さは0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。傷の深さを1mm以下とするには、例えば、硬い保護層を用いることによって行うことができる。
【0029】
また、サンシャインウエザオメータ(例えば、スガ試験機製、商品名S80)にてブラックパネル温度63℃、降雨時間120分中18分の条件下に、複合管を1000時間暴露する促進暴露試験後においても、引っかき傷の深さは1mm以下であるが好ましい。この場合、複合管を長期間、野外暴露下においても、裂けが生じたり、傷に水やゴミが蓄積して見栄えが悪くなったりする可能性が低いことを意味するものである。傷の深さは0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。上記促進暴露試験後において、傷の深さを1mm以下とするには、例えば、硬い保護層を用い、さらに保護層に耐候剤をまぜることで紫外線による保護層の硬度の低下を防止することによって行うことができる。
【0030】
本発明の空調配管システムは上記の複合管を用いたものである。本発明の空調配管システムは、好ましくは、室外ユニット、室内ユニット、および冷熱媒用配管として上記の複合管を備え、前記複合管のうち少なくとも一部が屋外に暴露されている空調配管システムである。本発明に用いることができる室外ユニットおよび室内ユニットには限定はなく、既知の空気調和機の室外ユニットおよび室内ユニットをいずれも用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
屋外暴露配管の管に樹脂発泡体層を被覆するのに図1で示す押出発泡法を用いた。このとき押出機10としてタンデム押出システム(1段目押出機はφ40mm単軸押出機、2段目押出機はφ65mm単軸押出機)を用い、1段目押出機のシリンダー温度を170〜220℃に、2段目押出機の設定温度を175℃〜220℃に、ダイ温度を170℃に設定した。
【0033】
次に、ホッパー12にポリプロピレン(サンアロマー社製:SD632 MFR=3.0g/10min(230℃;2.16kgf))100重量部とタルク(日本タルク社製:タルクMG)1重量部からなる材料を供給し、さらに発泡剤として炭酸ガスを1段目押出機の側面に設けられたガス供給弁から全押出量に対して3.2重量%の割合で供給した。
管14として直径15.9mm、肉厚1mmの銅管をクロスヘッド11に供給し、樹脂発泡体層をダイから押し出すと同時に銅管に被覆した。ここで、ダイには円環状(内径18mm、外径20mm)の断面を持つダイを使用した。
樹脂発泡体層が被覆された銅管を内径26mmのサイジングダイ(図示せず)に供給し、発泡体肉厚5mm、発泡倍率10.1倍の樹脂発泡体層を被覆した銅管を得た。
【0034】
樹脂発泡体層が被覆された銅管に保護層を被覆するのに図3に示す方法を用いた。押出機30としてφ40mmの単軸押出機を用い、押出機のシリンダーの設定温度を170〜190℃に設定した。保護層の材料としてポリエチレン100重量部に対して耐候剤として紫外線を反射する作用のある酸化亜鉛を5重量部加えた樹脂組成物を押し出し、樹脂発泡体層の周囲に厚さ1mmで被覆した。こうして、銅管の周囲に樹脂発泡体層と保護層を被覆した複合管を得た。得られた複合管を屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0035】
実施例2
屋外暴露配管の管に樹脂発泡体層を被覆するために図2に示す方法を用いた。ここでは、管22として直径15.9mm、肉厚1mmの銅管を用い、この銅管と短冊状に切断した架橋発泡ポリエチレンシート(発泡倍率19.8倍、厚さ10mm)を発泡シート融着機20に供給することで、樹脂発泡体層を被覆した管24を得た。得られた複合管を屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0036】
次に、保護層を被覆するために図5に示す方法を用いた。ここでは、樹脂発泡体層52を被覆した管53をあらかじめ成形された保護管50(ポリエチレン製蛇腹管(厚さ2mm))に通すことで、複合管54を得た。得られた複合管を屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0037】
比較例1
管、樹脂発泡体層の組成および被覆方法は実施例1と同様で、保護層をつけない複合管を作製し、屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0038】
比較例2
管、樹脂発泡体層の組成、被覆方法は実施例2と同様で、保護層をつけない複合管を作製し、屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0039】
比較例3
管、樹脂発泡体層の組成および被覆方法、保護層の被覆方法は実施例1と同様で、保護層の組成のみ紫外線吸収剤を加えない組成に変更したものを作製し、屋外暴露配管として空調配管システムに組み入れた。
【0040】
なお、実施例、比較例の全ての空調配管システムにおいて、屋外に暴露されない部分の冷熱媒用配管としては、銅管の周囲に発泡倍率20倍、肉厚10mmの架橋ポリエチレン(短冊状発泡体の両端を熱融着してパイプ状に成形したもの)を被覆したものを使用した。
【0041】
実施例1〜2、比較例1〜3で得た複合管の樹脂発泡体層の発泡倍率と、樹脂発泡体層と保護層とを含めた被覆層の引っかき強さを前述の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜3は促進暴露試験前後において引っかき傷の深さが小さく、すぐれた耐傷性、耐候性を有した。これに対し、比較例1〜3は引っかき傷が深かった。なお、比較例3は請求項3に係る発明の比較例である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の複合管の製造方法において、管に樹脂発泡体層を被覆する方法の一例を示す概略説明図である。
【図2】本発明の複合管の製造方法において、管に樹脂発泡体層を被覆する方法の一例を示す概略説明図である。
【図3】本発明の複合管の製造方法において、樹脂発泡体層の外周に保護層を被覆する方法の一例を示す概略説明図である。
【図4】本発明の複合管の製造方法において、樹脂発泡体層の外周に保護層を被覆する方法の一例を示す概略説明図である。
【図5】本発明の複合管の製造方法において、樹脂発泡体層の外周に保護層を被覆する方法の一例を示す概略説明図である。図5(a)は、樹脂発泡被覆管および保護層を示す斜視図、図5(b)は複合管を示す斜視図である。
【図6】本発明の複合管の引っかき傷の測定方法を示す概略説明図である。図6(a)は測定方法の全体の概略を示す正面図、図6(b)は圧子先端の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
10 押出機
11 クロスヘッド
12 ホッパー
13 ガス注入口
14 管
15 樹脂発泡体層
16 樹脂発泡体被覆管
20 発泡シート融着機
21 管
22 短冊状樹脂発泡体
23 融着された樹脂発泡体
24 樹脂発泡体被覆管
30 押出機
31 クロスヘッド
32 ホッパー
33 管
34 樹脂発泡体被覆管
35 保護層
36 複合管
40 蛇腹管成形装置
41 管
42 樹脂発泡体層被覆管
43 保護層(蛇腹管)
44 複合管
50 保護層(保護管)
51 管
52 樹脂発泡体層
53 樹脂発泡体層被覆管
54 複合管
60 複合管
61 管
62 樹脂発泡体層
63 保護層
64 圧子
65 垂直下向き方向
66 水平方向
67 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の外表面を樹脂発泡体層で被覆し、前記樹脂発泡体層を保護層で被覆したことを特徴とする耐傷性と耐候性に優れた複合管。
【請求項2】
水平面に前記複合管を静置し、前記保護層の表面に、直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状のステンレス製の圧子を垂直に立て、垂直下向き方向に荷重800gをかけたまま、圧子を複合管に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向に10cm引っ張る引っかき試験を行った場合、生ずる引っかき傷の深さが1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の耐傷性と耐候性に優れた複合管。
【請求項3】
サンシャインウエザオメータにて、ブラックパネル温度が63℃、降雨時間が120分中18分である条件下で、前記複合管を1000時間暴露した後、水平面に前記複合管を静置し、前記保護層の表面に、直径2mmの円柱の先端から2mmの地点から直径が減少したR0.25の突端部を有する形状のステンレス製の圧子を垂直に立て、垂直下向き方向に荷重800gをかけたまま、圧子を複合管に対して垂直に保ちながら2cm/sの速度で水平方向に10cm引っ張る引っかき試験を行った場合、生ずる引っかき傷の深さが1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の耐傷性と耐候性に優れた複合管。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合管を用いた空調配管システム。
【請求項5】
室外ユニット、室内ユニット、および複合管を備え、複合管のうち少なくとも一部が屋外に暴露されている請求項4記載の空調配管システム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合管の製造方法であって、前記保護層が、樹脂発泡体層が被覆された管を蛇腹管成形装置に通すことで被覆されることを特徴とする複合管の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合管の製造方法であって、前記保護層が、樹脂発泡体層が被覆された管をあらかじめ成形された保護管に通すことで被覆されることを特徴とする複合管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−348976(P2006−348976A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172656(P2005−172656)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】