説明

複合金属アルコキシド

【課題】 均質な複合酸化物の原料などとして有用な、構造が明確で分子レベルで均質な新規な複合金属アルコキシドを提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


〔M及びM:互いに相異なって、第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素、R1及びR2:1価の鎖式炭化水素基など、Z:2価の鎖式炭化水素基など、f,g:M又はMが第II族元素の場合は0、M又はMが第III族元素の場合は1、M又はMが第IV族元素の場合は2〕で表される新規な複合金属アルコキシド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合金属アルコキシド、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合金属アルコキシドは、構成元素の組合わせや構造の多様性から所望の機能、特性が得られる可能性があるため、各種用途で検討されている。用途としては、加水分解、脱水縮重合、さらに必要に応じて乾燥、焼成などを含む工程からなるゾルゲル法による複合酸化物の原料、アルキレンオキシドやラクトンの開環重合などの反応触媒成分、エポキシ樹脂など各種樹脂の変成(架橋)剤成分、及び表面処理剤成分などを挙げることができる。特に、第II族、第III族又は第IV族元素(炭素は除く)から選ばれる2種の元素からなる複合酸化物は、耐熱性、耐候性、防汚性などを志向した無機又は無機-有機複合塗料成分、合成又は石油精製などの触媒成分、特定化合物の分離膜・粒子(ゲルクロマトグラフィーの充填剤など)成分、吸収又は吸着剤成分、レンズ、光フィルター、光導波路などの光学材料成分などとして検討されている。また、用途によっては、より均質性(組成、細孔径、細孔容積、細孔径分布など)が高い複合酸化物が求められている。
【0003】
複合酸化物を構成する各元素のアルコキシドを混合し加水分解、縮重合する方法によっても、複合酸化物を得ることができる。しかし、易加水分解性の成分アルコキシドが優先的に加水分解、縮重合してゲルや沈殿を生じることがあった。この問題を解決するために、キレート剤を添加してアルコキシドの安定化を図って加水分解性を緩和する方法、ケイ素の低級アルコキシドなど加水分解に抵抗を示す成分アルコキシドを部分的に加水分解して得られるゾルに、易加水分解性の成分アルコキシドを反応させる方法が知られている。しかしながら、これらの方法では均質性が高い複合酸化物を得るためには不十分である。均質性が高い複合酸化物を得るためには、原料として均質な複合金属アルコキシドを使用することが好ましい。
【0004】
特許文献1には、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの群から選択される少なくとも2種の混合物と、アルカノールアミン、さらにポリオールを反応させることにより得られる金属錯体が開示されている。また、特許文献2には、アミノアルコール、カルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトン化合物およびβ−ケト酸エステル化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、チタンアルコキシド、及びケイ素アルコキシドを反応してなるチタン−シリコン複合前駆体が開示されている。しかし、これらの文献では、得られた化合物の構造が特定されておらず、より均質な複合金属アルコキシドを得るにも十分ではなかった。
【特許文献1】英国特許第1588521号明細書
【特許文献2】特開2001−48892公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
均質な複合酸化物の原料などとして有用な、構造が明確で分子レベルで均質な新規な複合金属アルコキシドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、構造が明確な新規な複合金属アルコキシドを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の複合金属アルコキシドに関する。
1.下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、M及びMは、互いに相異なって、第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を示す。R1及びR2は、互いに同一又は相異なって、置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。Zは置換基を有していてもよい2価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基;置換基を有していてもよい単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基;オキシアルキレン基;又はイミノアルキレン基を示す。f及びgは互いに独立に、M又はMが第II族元素の場合は0を表し、M又はMが第III族元素の場合は1を表し、M又はMが第IV族元素の場合は2を示す。〕で表される新規な複合金属アルコキシド。
2.前記一般式(1)において、第II族元素がMg及びCaからなる群から選択された少なくとも1種であり、第III族元素がB、Al及びGaからなる群から選択された少なくとも1種であり、第IV族元素がSi、Sn、Ti及びZrからなる群から選択された少なくとも1種である項1に記載の複合金属アルコキシド。
3 MがSi又はTiの場合、MはTi及びSi以外の元素である項1又は2に記載の複合金属アルコキシド。
4.下記一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、Mは第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を、R1は置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。aは、Mが第II族元素の場合は2、第III族元素の場合は3、第IV族元素の場合は4を示す。〕で表されるアルコキシドと、下記一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
〔式中、Zは置換基を有していてもよい2価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基;置換基を有していてもよい単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基;オキシアルキレン基;又はイミノアルキレン基を示す。〕で表されるポリオール、及び下記一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
〔式中、MはMとは異なる第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を、R2は置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。bは、Mが第II族元素の場合は2、第III族元素の場合は3、第IV族元素の場合は4を示す。〕で表されるアルコキシドを、1.0:1.8〜2.2:0.9〜1.1の当量比で反応させて得ることを特徴とする下記一般式(1)
【0016】
【化5】

【0017】
〔式中、M、M、R1、R2、Z、f及びgは前記定義に同じ〕で表される複合金属アルコキシドの製造方法。
5.前記一般式(2)で表されるアルコキシドに対して、前記一般式(3)で表されるポリオールを、1.8〜2.2当量反応させ、副生するアルコールを蒸留分離する第一工程と、第一工程で得られる反応生成物と前記一般式(4)で表されるアルコキシドを、前記一般式(2)で表されるアルコキシドに対して0.9〜1.1当量反応させ、副生するアルコールを蒸留分離する第二工程により得られることを特徴とする前記項4に記載の複合金属アルコキシドの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複合金属アルコキシドは有機溶剤への溶解性が高く、溶液状態で経時安定性に優れまた取り扱い易く、均質な複合酸化物を与える原料などとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の前記一般式(1)で表される複合金属アルコキシドについて説明する。
【0020】
及びMは互いに相異なって、第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を示す。
【0021】
第II族元素としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。この中でも、特にMg及びCaが好ましい。第III族元素としては、例えば、B、Al、Ga、In等が挙げられる。この中でも、B、Al及びGaが好ましい。第IV族元素としては、例えば、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Pb、Hf等が挙げられる。この中でも、Si、Sn、Ti及びZrが好ましい。
【0022】
及びRは、互いに同一又は相異なって、置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。R及びRとしては、炭素数1〜8の鎖式炭化水素基が好ましい。
【0023】
1価の鎖式炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、オクタデシル、ビニル、アリル、9−オクタデセニル基等が挙げられる。
【0024】
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
1価の単環もしくは多環の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、2−メチルフェニル、1−ナフチル、ビフェニル、4−ピリジル、6−キノリニル、2−カルバゾリル基等が挙げられる。
Zは置換基を有していてもよい2価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基;置換基を有していてもよい単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基;オキシアルキレン基;又はイミノアルキレン基を示す。
【0026】
2価の鎖式炭化水素基としては、例えば、エチレン、1,2−プロパンジイル、1,3−プロパンジイル、1,3−ブタンジイル、2,3−ブタンジイル、1,4−ブタンジイル、1,6−ヘキサンジイル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジイル、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジイル、2−メチル−2,4−ペンタンジイル、2−メチル−1,3−ヘキサンジイル、1,2−ジフェニル−1,2−エタンジイル、2−ブテン−1,4−ジイル、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジイル、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジイル、2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジイル基等が挙げられる。
【0027】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジイル、1,4−シクロヘキサンジイル基等が挙げられる。
【0028】
単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基としては、例えば、1,2−フェニレン、1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,3−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4,4‘−ジイル、2,3−ピリジル基等が挙げられる。
【0029】
オキシアルキレン基としては、例えば、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCHCHOCHCH−、−CH(CH)CHOCH(CH)CH−、−CH(CH)CHOCH(CH)CHOCH(CH)CH−等が挙げられる。
【0030】
イミノアルキレン基としては、例えば、−CHCHNHCHCH−、−CHCHN(CH)CHCH−、−CHCHN(CHCHOH)CHCH−等が挙げられる。
【0031】
Zに含まれていてもよい置換基の種類は特に限定されないが、水酸基(−OH)であることが好ましい。
【0032】
f及びgは互いに独立に、M又はMが第II族元素の場合は0を表し、M又はMが第III族元素の場合は1を表し、M又はMが炭素以外の第IV族元素の場合は2を示す。
本発明の前記一般式(1)で表される複合金属アルコキシドの具体例としては、下記の構造で示されるものが挙げられる。
【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
本発明の前記一般式(1)で表される複合金属アルコキシドの製造方法について説明する。
【0039】
本発明の前記一般式(1)で表される複合金属アルコキシドは、前記一般式(2)で表されるアルコキシドと、前記一般式(3)で表されるポリオール、及び前記一般式(4)で表されるアルコキシドを、1.0:1.8〜2.2:0.9〜1.1の当量比で反応させることにより得ることができる。式中、M、M、R、R、Z、a及びbは前記と同じである。
【0040】
前記一般式(2)、及び(4)で表されるアルコキシドとしては、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ(n−ブトキシ)アルミニウム、トリ(sec−ブトキシ)アルミニウム、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)チタン、テトラ(n−ブトキシ)ジルコニウム、トリエトキシガリウム、トリイソプロポキシガリウム、トリ(n−ブトキシ)ガリウム、トリ(sec−ブトキシ)ガリウム、テトラエトキシ錫、テトラ(イソプロポキシ)錫、テトラ(n−ブトキシ)錫、テトラ(sec−ブトキシ)錫等が例示できる。
【0041】
前記一般式(3)で表されるポリオールには、鎖式ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族もしくはヘテロ芳香族ポリオール、ポリオキシアルキレングリコール及びポリアルカノールアミンが含まれる。
【0042】
鎖式ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が例示できる。
【0043】
脂環式ポリオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等が例示できる。
【0044】
芳香族もしくはヘテロ芳香族ポリオールとしては、カテコール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,3−ジヒドロキシピリジン等が例示できる。
【0045】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示できる。
【0046】
ポリアルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が例示できる。
【0047】
前記したアルコキシドとポリオールとを反応させる方法としては、以下の反応形態が挙げられる。
【0048】
A.前記一般式(2)で表されるアルコキシド1.0当量と、前記一般式(3)で表されるポリオール1.8〜2.2当量とを反応させて得られるアルコキシドに、前記一般式(4)で表されるアルコキシド0.9〜1.1当量を反応させる形態
B.前記一般式(2)で表されるアルコキシド1.0当量及び(4)で表されるアルコキシド0.9〜1.1当量の混合物と、前記一般式(3)で表されるポリオール1.8〜2.2当量とを反応させる形態
より均質な複合金属アルコキシドを得ることができることから、反応形態Aが好ましい。
【0049】
アルコキシ基の置換反応を完結させるため、各反応で副生するアルコールROH及び/又はROHは、蒸留により分離する。反応形態Aの場合、1段目の反応で副生アルコールROHを蒸留分離し、2段目の反応で副生アルコールROHを蒸留分離してもよいし、2段目の反応時に副生アルコールROH及びROHを、まとめて蒸留分離してもよい。前記一般式(2)、及び(4)で表されるアルコキシドの置換基が異なる場合、副生アルコールとの交換反応が起きる場合があるので、各反応毎に副生アルコールを蒸留分離することが好ましい。さらに、蒸留で分離される副生アルコールの量が、添加したポリオールとほぼ同当量となるように各反応毎に留出を制御することが好ましい。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、トルエンなどの不活性炭化水素溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性溶媒等が使用できる。
反応の雰囲気は特に限定的ではないが、一般に不活性雰囲気が好ましく、例えば、反応容器内を窒素雰囲気とすることが好ましい。
【0050】
反応温度としては、反応させるアルコキシド及びポリオールの反応性、また反応物や使用する溶媒の物性により異なるが、20〜200℃が適当であり、好ましくは20〜150℃である。
【0051】
次に、実施例を示し、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例)
〔実施例1〕:複合金属アルコキシド(5)の合成
容量1Lのガラス製反応容器にテトラエトキシシラン351.6g(1.69mol)、ジエタノールアミン354.9g(3.38mol)を入れて窒素置換を行った後、撹拌しながら70℃で反応液が均一になるまで反応させた。続いて、減圧下に55〜65℃でエタノール158.6g(3.44mol)を留出させ、無色粘稠液体の前駆体546.1g(1.67mol)を得た。
【0053】
次に別の容量500mLのガラス製反応容器にトリイソプロポキシアルミニウム150.5g(0.74mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら先に調製した前駆体240.6g(0.74mol)を55〜65℃で滴下した。70℃で1時間反応後、減圧下に60〜75℃でほとんど留出が無くなるまで副生アルコール88.1g(イソプロピルアルコール1.47mol)を留去し、微黄色固体の複合金属アルコキシド301.6g(0.73mol、収率99.7%)を得た。
【0054】
合成した複合金属アルコキシドの推定構造は、次の通りである。
【0055】
【化11】

【0056】
当該化合物の生成を確認するためにアルミニウム含量、ケイ素含量、赤外吸収スペクトル、水素(H)核磁気共鳴分析(NMR)の測定を行った。結果を以下に示す。
【0057】
アルミニウム含量;6.53% (理論値 6.57%)
ケイ素含量;6.32% (理論値 6.84%)
IRスペクトル(cm-1);3391(N−H伸縮振動)、2972,2933,2886(アルキル基C−H伸縮振動)、1462(アルキル基C−H変角振動)、1113(C−N伸縮振動)、1049(C−O伸縮振動)、769(Si−O伸縮振動)、605(Al−O吸収帯)
H−NMR(in Methanol−d、250MHz);δ(ppm,CDOD;δH4.78に対する化学シフト、括弧内はプロトン比、多重度、帰属):1.08(6H,3,H)、1.13(6H,2,J=6.3Hz,H)、2.65(8H,3,H,H)、3.23(1H,NH)、3.58(8H,4,H,H)、3.82(4H,3,H)、4.15(1H,7,H)
【0058】
〔実施例2〕:複合金属アルコキシド(6)の合成
容量300mLのガラス製反応容器にテトラエトキシシラン56.5g(0.27mol)、ジエチレングリコール57.6g(0.57mol)を入れて窒素置換を行った後、撹拌しながら130℃で反応液が均一になるまで反応させ、更に130℃で3時間熟成させた。続いて、減圧下に55〜65℃でエタノール23.8g(0.52mol)を留出させ、無色液体の前駆体89.0g(0.27mol)を得た。
【0059】
次に別の容量300mLのガラス製反応容器にトリイソプロポキシアルミニウム47.9g(0.23mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら先に調製した中間体77.0g(0.23mol)を50〜60℃で滴下した。70℃で1時間反応後、減圧下に50〜55℃でほとんど留出が無くなるまで副生アルコールを留去し、薄黄色粘稠液体の複合金属アルコキシド95.7g(0.23mol、収率99.0%)を得た。
【0060】
合成した複合金属アルコキシドの推定構造は、次の通りである。
【0061】
【化12】

【0062】
当該化合物の生成を確認するためにアルミニウム含量、ケイ素含量、赤外吸収スペクトル、水素(H)核磁気共鳴分析(NMR)の測定を行った。結果を以下に示す。
【0063】
アルミニウム含量;6.55% (理論値 6.54%)
ケイ素含量;6.29% (理論値 6.81%)
IRスペクトル(cm-1);2972,2929,2883(アルキル基C−H伸縮振動)、1456(アルキル基C−H変角振動)、1150〜1100(C−O−C伸縮振動)、1081(C−O伸縮振動)、789(Si−O伸縮振動)、644,596,555(Al−O吸収帯)
H−NMR(in Methanol−d、250MHz);δ(ppm,CDOD;δH4.78に対する化学シフト、括弧内はプロトン比、多重度、帰属):1.03(6H,3,H)、1.18(6H,2,J=6.7Hz,H)、3.52(8H,3,H,H)、3.63(8H,4,H,H)、3.86(4H,3,H)、4.21(1H,7,H)
【0064】
〔実施例3〕:複合金属アルコキシド(7)の合成
容量300mLのガラス製反応容器にテトラ(n−ブトキシ)チタン75.1g(0.22mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら20〜40℃でジエタノールアミン46.4g(0.44mol)を滴下した。70℃で30分間反応させた後、減圧下に55〜65℃でブタノール31.5g(0.42mol)を留出させ、薄黄色粘稠液体の前駆体89.5g(0.22mol)を得た。
【0065】
次に別の容量300mLのガラス製反応容器にトリイソプロポキシアルミニウム38.0g(0.19mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら先に調製した前駆体74.9g(0.19mol)を50〜60℃で滴下した。80℃で1時間反応後、減圧下に60〜80℃でほとんど留出が無くなるまで副生アルコールを留去し、薄黄色固体の複合金属アルコキシド91.8g(0.19mol、収率101.5%)を得た。
【0066】
合成した複合金属アルコキシドの推定構造は、次の通りである。
【0067】
【化13】

【0068】
当該化合物の生成を確認するためにアルミニウム含量、チタン含量、赤外吸収スペクトル、水素(H)核磁気共鳴分析(NMR)の測定を行った。結果を以下に示す。
【0069】
アルミニウム含量;5.56% (理論値 5.55%)
チタン含量;9.80% (理論値 9.84%)
IRスペクトル(cm-1);3203(N−H伸縮振動)、2957,2927,2867(アルキル基C−H伸縮振動)、1459(アルキル基C−H変角振動)、1117(C−N伸縮振動)、1066(C−O伸縮振動)、680,606,514(Al−O及びTi−O吸収帯)
H−NMR(in Methanol−d、250MHz);δ(ppm,CDOD;δH4.78に対する化学シフト、括弧内はプロトン比、多重度、帰属):0.87(6H,3,H)、1.10(6H,2,J=6.2Hz,H)、1.33(4H,6,H)、1.42(4H,5,H)、2.64(8H,3,H,H)、3.24(1H,NH)、3.48(8H,3,H,H)、3.86(4H,3,H)、4.17(1H,7,H)
【0070】
〔実施例4〕:複合金属アルコキシド(8)の合成
容量300mLのガラス製反応容器にテトラ(n−ブトキシ)チタン75.2g(0.22mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら20〜40℃でジエチレングリコール46.9g(0.44mol)を滴下した。70℃で30分間反応させた後、減圧下に55〜65℃でブタノール33.2g(0.45mol)を留出させ、薄黄色粘稠液体の前駆体88.3g(0.22mol)を得た。
【0071】
次に別の容量300mLのガラス製反応容器にトリイソプロポキシアルミニウム38.5g(0.19mol)を入れて窒素置換を行った後、攪拌しながら先に調製した前駆体76.2g(0.19mol)を50〜60℃で滴下した。80℃で1時間反応後、減圧下に60〜80℃でほとんど留出が無くなるまで副生アルコールを留去し、薄黄色固体の複合金属アルコキシド92.7g(0.19mol、収率100.7%)を得た。
【0072】
合成した複合金属アルコキシドの推定構造は、次の通りである。
【0073】
【化14】

【0074】
当該化合物の生成を確認するためにアルミニウム含量、チタン含量、赤外吸収スペクトル、水素(H)核磁気共鳴分析(NMR)の測定を行った。結果を以下に示す。
【0075】
アルミニウム含量;5.58% (理論値 5.52%)
チタン含量;9.70% (理論値 9.80%)
IRスペクトル(cm-1);2958,2926,2862(アルキル基C−H伸縮振動)、1462(アルキル基C−H変角振動)、1144(C−O−C伸縮振動)、1068(C−O伸縮振動)、680,634,652(Al−O及びTi−O吸収帯)
H−NMR(in Methanol−d、250MHz);δ(ppm,CDOD;δH4.78に対する化学シフト、括弧内はプロトン比、多重度、帰属):0.88(6H,3,H)、1.11(6H,2,J=6.2Hz,H)、1.34(4H,6,H)、1.46(4H,5,H)、3.49(8H,3,H,H)、3.62(8H,3,H,H)、3.87(4H,3,H)、4.20(1H,7,H)
実施例1〜4の複合金属アルコキシドについて、溶解度を調査した結果を以下の表に示す。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
ゾルゲル法による複合酸化物の原料、アルキレンオキシドやラクトンの開環重合などの反応触媒成分、エポキシ樹脂など各種樹脂の変成(架橋)剤成分、及び表面処理剤成分などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

〔式中、M及びMは互いに相異なって、第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を示す。R1及びR2は、互いに同一又は相異なって、置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。Zは置換基を有していてもよい2価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基;置換基を有していてもよい単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基;オキシアルキレン基;又はイミノアルキレン基を示す。f及びgは互いに独立に、M又はMが第II族元素の場合は0を表し、M又はMが第III族元素の場合は1を表し、M又はMが第IV族元素の場合は2を示す。〕
で表される複合金属アルコキシド。
【請求項2】
第II族元素がMg及びCaからなる群から選択された少なくとも1種であり、第III族元素がB、Al及びGaからなる群から選択された少なくとも1種であり、第IV族元素がSi、Sn、Ti及びZrからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の複合金属アルコキシド。
【請求項3】
がSi又はTiの場合、MはTi及びSi以外の元素である請求項1又は2に記載の複合金属アルコキシド。
【請求項4】
下記一般式(2)
【化2】

〔式中、Mは第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を、R1は置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。aは、M1が第II族元素の場合は2、第III族元素の場合は3、第IV族元素の場合は4を示す。〕
で表されるアルコキシドと、下記一般式(3)
【化3】

〔式中、Zは置換基を有していてもよい2価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基;置換基を有していてもよい単環もしくは多環の2価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基;オキシアルキレン基;又はイミノアルキレン基を示す。〕
で表されるポリオール、及び下記一般式(4)
【化4】

〔式中、MはMとは異なる第II族、第III族又は炭素以外の第IV族元素を、R2は置換基を有していてもよい1価の鎖式炭化水素基;置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基;又は置換基を有していてもよい単環もしくは多環の1価の芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基を示す。bは、Mが第II族元素の場合は2、第III族元素の場合は3、第IV族元素の場合は4を示す。〕
で表されるアルコキシドを1.0:1.8〜2.2:0.9〜1.1の当量比で反応させて得ることを特徴とする下記一般式(1)
【化5】

〔式中、M、M、R1、R2、Z、f及びgは前記定義に同じ〕
で表される複合金属アルコキシドの製造方法。
【請求項5】
前記一般式(2)
【化6】

〔式中、M、R1及びaは前記定義に同じ〕で表されるアルコキシドに対して、前記一般式(3)
【化7】

〔式中、Zは前記定義に同じで表されるポリオールを、1.8〜2.2当量反応させ、副生するアルコールを蒸留分離する第一工程と、第一工程で得られる反応生成物と前記一般式(4)
【化8】

〔式中、M、R2及びbは前記定義に同じで表される〕
アルコキシドを、前記一般式(2)で表されるアルコキシドに対して0.9〜1.1当量反応させ、副生するアルコールを蒸留分離する第二工程により得られることを特徴とする請求項4に記載の複合金属アルコキシドの製造方法。

【公開番号】特開2007−8856(P2007−8856A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191006(P2005−191006)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】