説明

複屈折パターンを有する物品の製造方法

【課題】高解像度で耐熱性に優れた複屈折パターンを有する物品の簡便な作製に有用な方法及び材料を提供する。
【解決手段】少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む複屈折パターンを有する物品の製造方法:[1]高分子を含む光学異方性層を含み、該光学異方性層は、20℃より高い温度域に面内レターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下となるレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度は露光によって上昇する複屈折パターン作製材料を用意する工程;[2]該複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;[3]工程2後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折パターンを有する物品の製造方法の製造方法および該方法により得られる液晶表示装置用基板等の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複屈折パターンは様々な形で産業への利用が図られてきた。
特許文献1においては、複屈折パターンの画像記録の方法として利用が提案されており、通常人間の目では識別できない複屈折パターンを、2枚の偏光板で挟むことによって可視化している。この「本来は不可視だが偏光板により可視化される」という複屈折パターンの特徴を積極的に利用した技術が特許文献2に開示されており、本文献においては複屈折パターンの真贋の認証画像としての利用が提案されている。
【0003】
認証画像の分野において、従来は専ら反射ホログラムが用いられてきた。ホログラムは、目視で容易に真贋の判定が可能で、かつコピー機などを用いた単純な複写が困難であることから、認証画像として適している。しかし、近年の技術の普及に伴いホログラムの製造が容易になり目視用のホログラムは真正なものと区別のつかない程の模造品が比較的容易に製造されるようになっている。偽造を回避するため、機械を用いて回折光の方向や強度をより厳密に検出する構造とすることも可能であるが、目視での識別は困難となる。
これに対し、複屈折パターンは偏光板の使用により容易に識別可能であり、かつ製造技術はほとんど広まっていないため、偽造は困難であり認証画像として適している。
【0004】
また、複屈折パターンは、屈折率のパターンによって作製される光学素子である回折格子やバイナリーレンズなどに利用することも可能である。複屈折パターンの利用により、所望の偏光にのみ光学素子としての効果を発揮する偏光分離素子の作製が可能で、プロジェクターや光通信分野への応用が期待できる。
さらに、複屈折パターンは情報記録材料への応用が考えられる。いわゆるフォトポリマーが情報を濃度や屈折率の形で記録するのに対し、複屈折パターン情報を複屈折性の形で記録する。濃度や屈折率が大きさだけを持つスカラー量であるのに対し、複屈折性は大きさと方向を持つベクトル量であるため、より高密度な情報記録が期待できる。
またさらなる複屈折パターンの応用例として、立体映像表示装置への利用が研究されている(特許文献3)。
【0005】
複屈折パターンの作製方法としては、これまでにいくつかの手法が提案されている。
まず一つの手法として、熱を用いる手法がある。例えば前述の特許文献1においては異方性フィルムに対してヒートモードレーザーやサーマルヘッドを用いて画像形成部分に熱を加え、完全にあるいは不完全に異方性を低下させる手法を用いている。また、特許文献2においては位相差フィルムに対して加熱パターンを有するスタンプやレーザーを用いて配向を熱的に緩和する手法を用いている。さらに、特許文献3においては位相差フィルムに対して凸部を有する加熱部材で選択的に位相差を消失する手法を用いている。
【0006】
しかし、上記のように熱を用いて複屈折性を低下させる手法で作製されたパターンはいずれも耐熱性に劣るという欠点がある。すなわち、複屈折性が残っている部分に熱が加わった場合、その部分の複屈折性が低下してしまう恐れがある。また、サーマルヘッドや加熱スタンプを用いる手法では膜厚方向の伝熱と面内方向の伝熱で差をつけることが難しいため、膜厚以下の解像度のパターンを描くことが極めて困難である。レーザーを用いた加熱では高解像度のパターン描画が可能だが、細かいパターンをレーザー走査で描くために加工が長時間になるという問題がある。
【0007】
特許文献1においては、光崩壊性フォトポリマーや光異性化ポリマーを用いて光によって複屈折性を低下させる手法も提案されている。しかしこの手法の場合には作製されたパターンの耐光性が低くなり、特に光学素子として利用する複屈折パターンとしては不適である。
【0008】
複屈折パターンを作製する別の手法として、配向膜を有する支持体上に重合性液晶と重合開始剤を含む塗布液を塗布して配向させた状態でフォトマスクを介したパターン露光を行い露光部の配向を重合固定化、さらに加熱して未露光部を等方相化した上で再度露光を行い、一度目に露光された部分のみに光学異方性を現出させる方法が提案されている(特許文献4、非特許文献1)。しかしながらこの手法では固定前の液晶の配向状態を制御するために系全体の温度を絶妙に制御しながら複数回の露光を行う必要があり、製造プロセスにかかる手間が大きいという問題がある。
【0009】
さらに、複屈折パターンの作製は液晶表示装置の分野でも応用が期待できる。
ワードプロセッサやノートパソコン、パソコン用モニターなどのOA機器、携帯端末、テレビなどに用いられる表示装置としては、CRT(Cathode Ray Tube)がこれまで主に使用されてきた。近年、液晶表示装置(LCD)が、薄型、軽量、且つ消費電力が小さいことからCRTの代わりに広く使用されてきている。液晶表示装置は、液晶セルおよび偏光板を有する。偏光板は保護フィルムと偏光膜とからなり、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる。例えば、透過型LCDでは、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学異方性層を有する光学補償シートを配置することもある。一方、反射型LCDでは、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償シート、および偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶分子、それを封入するための二枚の基板および液晶分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型および反射型のいずれにも適用でき、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)のような表示モードが提案されている。
【0010】
さらに最近では、LCDはその薄型、軽量、且つ消費電力が小さい特性を生かして携帯電話やデジタルカメラのようなモバイル用途用表示装置としても広く用いられるようになった。モバイル用途では屋内だけでなく屋外での使用、あるいは電源供給なしでの長時間使用も必要なため、屋内ではバックライトを用いて透過表示、屋外ではバックライトを使わずに外光を用いて反射表示ができる、半透過型LCDを使うことが望ましい。しかしながら、一つの画素に透過表示と反射表示を併せ持つ半透過型LCDは、透過/反射両方の要求を満たす光学補償シートを必要とするため、光学補償シートを様々な角度で2枚以上貼り合わせたものが必要となり、LCDが厚くなる、ロールツーロールで貼合できないため光学補償シート積層体が高価になる、光学補償シートの角度が様々なため視野角が非対称になる、などの多くの問題を引き起こしていた。
【0011】
この問題を解決するため、半透過型LCDの反射部のみに光学異方性層を形成する方法が提案されている(非特許文献2)。本方法では光配向膜に対して1回目のフォトマスクによる露光と2回目の全面露光とで照射偏光紫外線の偏光方向を45度回転させ、その上で配向させる重合性液晶性化合物の配向方向を変える方法を用いている。この提案によって、半透過型LCDの光学補償シートは不要となり、LCDの大幅な薄型化は達成できるが、2回の偏光紫外線照射を含む3回の紫外線照射、光配向膜層と重合性液晶層の2回の塗布が必要なため、プロセス負荷が大きすぎることが問題となっており、実用化には至っていない。また、この技術では2つの配向ドメインは同じレターデーションを持っていなければならず、LCDのスイッチング設計の自由度が制限されていた。
【特許文献1】特開平3−141320号公報
【特許文献2】特開2007−1130号公報
【特許文献3】特開2005−37736号公報
【特許文献4】英国特許2394718A号
【非特許文献1】Advanced Functional Materials,791-798,16,2006
【非特許文献2】SID Symposium Digest34,194(2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高解像度で耐熱性に優れた複屈折パターンを有する物品の簡便な作製に有用な方法および材料を提供することを課題とする。また、本発明は、偏光板を介さない観察ではほぼ無色透明で、かつ偏光板を介した観察によって容易に識別可能となるパターンを作製する方法および材料を提供することを課題とする。さらに本発明は、パターン状のレターデーションを有する液晶表示装置用基板を製造するための有用な方法を提供することを課題とし、LCD、特に半透過型LCDの光学補償シートの枚数を低減し、LCDの厚みの薄型化に寄与する液晶表示装置用基板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は下記(1)〜(29)を提供するものである。
(1)少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]高分子を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層は、20℃より高い温度域に面内レターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下となるレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度は露光によって上昇する
複屈折パターン作製材料
を用意する工程;
[2]該複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]工程2後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0014】
(2)複屈折パターン作製材料の前記上昇後のレターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない(1)に記載の製造方法。
(3)複屈折パターン作製材料の20℃時の面内レターデーションが10nm以上である請求項1又は2に記載の製造方法。
(4)前記高分子が未反応の反応性基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)前記光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
(6)前記液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する(5)に記載の製造方法。
(7)前記液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する(5)に記載の製造方法。
(8)前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である(7)に記載の製造方法。
【0016】
(9)前記光学異方性層が延伸フィルムからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)前記光学異方性層を2層以上含む(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法。
(11)2層以上の光学異方性層が、遅相軸の向きおよび/または面内レターデーションが互いに異なる光学異方性層を少なくとも2層以上含む(10)に記載の製造方法。
【0017】
(12)前記光学異方性層が、該光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより設けられた層である(1)〜(11)のいずれか1項に記載の製造方法。
(13) 前記工程2の後、かつ前記工程3の前に下記工程13及び14をこの順に含む(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法:
[13] 工程2後に得られる積層体上に別の前記複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[14]該転写後に得られる積層体にパターン露光を行う工程。
【0018】
(14) 前記工程3の後に下記工程24〜26をこの順に含む(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法:
[24]工程3後に得られる積層体上に別の複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[25]工程24後に得られる積層体にパターン露光を行う工程;
[26]工程25後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
(15) 前記複屈折パターン作製材料が光学異方性層上に感光性樹脂層を有し、前記工程2において前記複屈折パターン作製材料は該感光性樹脂層側からパターン露光され、かつ、前記工程2のあとに下記工程9を含む(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法:
[9]該積層体上の不要な感光性樹脂層を除去する工程。
【0019】
(16) (1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる偽造防止手段として用いられる物品。
(17) (1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる光学素子。
(18) (1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる液晶表示装置用基板。
(19)少なくとも次の[101]〜[103]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[101]基板上に少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して光学異方性層を形成する工程
[102]該光学異方性層をパターン露光する工程
[103]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0020】
(20) 少なくとも次の[111]〜[115]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[111]基板上に少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して光学異方性層を形成する工程
[112]該光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程
[113]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程
[114]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程
[115]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0021】
(21) 少なくとも次の[121]〜[123]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[121]少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して得られる光学異方性層と、転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程
[122]該光学異方性層をパターン露光する工程
[123]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0022】
(22) 少なくとも次の[131]〜[135]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[131]少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して得られる光学異方性層と転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程;
[132]光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程;
[133]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程;
[134]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程;
[135]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0023】
(23)少なくとも次の[521]〜[523]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[521]延伸フィルムからなる光学異方性層と、転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程
[522]該光学異方性層をパターン露光する工程
[523]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【0024】
(24) 少なくとも次の[531]〜[535]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[531]延伸フィルムからなる光学異方性層と転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程
[532]該光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程
[533]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程
[534]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程
[535]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程
【0025】
(25)(19)〜(24)のいずれか一項に記載の製造方法により得られる液晶表示装置用基板。
(26) 面内レターデーションRe1の領域と面内レターデーションRe2の領域(ただしRe1>Re2)とを有する光学異方性層を含む(18)または(25)に記載の液晶表示装置用基板。
(27) Re2が5nm以下である(26)に記載の液晶表示装置用基板。
(28) (25)〜(27)のいずれか一項に記載の液晶表示装置用基板を有する液晶表示装置。
(29) 液晶モードが半透過モードである(28)に記載の液晶表示装置。
【0026】
本発明はまた下記(201)〜(212)の複屈折パターン作製材料を提供する。
(201)高分子を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層は、20℃より高い温度域に面内レターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下となるレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度は露光によって上昇する
複屈折パターン作製材料。
(202)上昇後のレターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない(201)に記載の複屈折パターン作製材料。
【0027】
(203)20℃時の面内レターデーションが10nm以上である(201)又は(202)に記載の複屈折パターン作製材料。
(204)前記高分子が未反応の反応性基を有する(201)〜(203)のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料。
(205)前記光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものである(201)〜(204)のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料。
(206)前記液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する(205)に記載の複屈折パターン作製材料。
【0028】
(207)前記液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する(205)に記載の複屈折パターン作製材料。
(208)前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である(207)に記載の複屈折パターン作製材料。
(209)前記光学異方性層が延伸フィルムからなる(201)〜(204)のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料。
(210)前記光学異方性層を2層以上含む(201)〜(209)のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料。
【0029】
(211)2層以上の光学異方性層が、遅相軸の向きおよび/または面内レターデーションが互いに異なる光学異方性層を少なくとも2層以上含む(210)に記載の複屈折パターン作製材料。
(212)前記光学異方性層が、該光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより設けられた層である(201)〜(211)のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料
【0030】
上記の製造方法につき好ましい態様として本発明はさらに下記(30)〜(31)を提供する。
(30)少なくとも次の[211]〜[215]の工程をこの順に含む複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[211](201)〜(212)のいずれかの複屈折パターン作製材料を用意する工程;
[212]該複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[ 213] 工程212後に得られる積層体上に別の前記いずれかの複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[214]工程213後に得られる積層体にパターン露光を行う工程;
[215]工程214後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱ベークする工程。
【0031】
(31)少なくとも次の[221]〜[226]の工程をこの順に含む複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[221](201)〜(212)のいずれかの複屈折パターン作製材料を用意する工程;
[222]該複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[223] 工程222後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程;
[224]工程223後に得られる積層体上に前記いずれかの複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[225]工程224後に得られる積層体にパターン露光を行う工程;
[226]工程225後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【発明の効果】
【0032】
本発明の材料および方法を用いることによって、耐熱性のある高解像度の複屈折パターンを有する物品を得ることができる。複屈折パターンは偏光板を介さない状態ではほぼ無色透明であるが偏光板を介することによって容易に識別可能であり、偽造防止や視覚的効果付与などに効果がある。また上記物品を用いた液晶表示装置用基板の製造方法によって、液晶表示装置の製造工程数をほとんど増やすことなく、液晶セル内にパターン状のレターデーションを有する光学異方性層を設けることができ、従来の半透過型LCDに比べて大幅な薄型化が達成できる。特に転写材料を用いると工程数減によるコストダウンを図ることができる。さらに、上記製造方法により作製されたカラーフィルタ基板を有する半透過型LCDは、薄型化、視野角特性改善に大きく貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0034】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0035】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが実質的に0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0036】
本明細書において、「レターデーション消失温度」とは光学異方性層を20℃の状態より毎分20℃の速度で昇温させた際に、ある温度において該光学異方性層のレターデーションが該光学異方性層の20℃時のレターデーションの30%以下となる温度のことをいう。
【0037】
なお、本明細書において、「レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない」とは、上記のように光学異方性層を250℃まで昇温させても光学異方性層のレターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下とならないことを意味する。
【0038】
[複屈折パターン作製材料]
図1は複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを有する物品を作成することができる材料である。図1(a)に示す複屈折パターン作製材料は支持体(基板)11上に光学異方性層12を有する例である。図1(b)に示す複屈折パターン作製材料は配向層13を有する例である。配向層13は、光学異方性層12として液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものを用いる場合に、液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
【0039】
図1(c)に示す複屈折パターン作製材料はさらに支持体11の上に反射層35を有する例である。図1(d)に示す複屈折パターン作製材料は支持体11の下に反射層35を有する例である。図1(e)に示す複屈折パターン作製材料はさらに複屈折パターン作成後に別の物品の上に貼り付けるために支持体の下に後粘着層16と剥離層17を有する例である。図1(f)に示す複屈折パターン作製材料は転写材料を用いて作られたために支持体11と光学異方性層12の間に転写接着層14を有する例である。図1(g)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。図1(h)に示す複屈折パターン作製材料は自己支持性の光学異方性層12の下に反射層35を有する例である。図1(i)に示す複屈折パターン作製材料はさらにパターン作成後に別の物品の上に貼り付けるために反射層35の下に後粘着層16と剥離層17を有する例である。
【0040】
[転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料]
図2は転写材料として用いられる本発明の複屈折パターン材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料を転写材料として用いることによって、所望の支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、複数の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、または複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
【0041】
図2(a)に示す複屈折パターン作製材料は仮支持体21上に光学異方性層12を有する例である。図2(b)に示す複屈折パターン作製材料はさらに光学異方性層12の上に転写接着層14を有する例である。図2(c)に示す複屈折パターン作製用材料はさらに転写接着層14の上に表面保護層18を有する例である。図2(d)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と光学異方性層12の間に仮支持体上配向層22を有する例である。図2(e)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と仮支持体上配向層22の間に力学特性制御層23を有する例である。図2(f)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。
【0042】
[複屈折パターンを有する物品]
図3は複屈折パターン作製材料を用いた製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品のいくつかの例の概略断面図である。本発明の方法により得られる複屈折パターンを有する物品は少なくとも一層のパターン化光学異方性層112を有する。本明細書において「パターン化光学異方性層」とは「複屈折性が異なる領域をパターン状に有する光学異方性層」を意味する。図3(a)に示す複屈折パターンを有する物品はパターン化光学異方性層112のみから成る例である。図に示す露光部112−Aと未露光部112−Bは異なる複屈折性を有する。図3(b)に示す複屈折パターンを有する物品は支持体11上に支持体側から順に反射層35、転写接着層146およびパターン化光学異方性層112を有する例である。複屈折パターンを有する物品はパターン化光学異方性層を複数層有していてもよく、光学異方性層を複数有することによってはさらに多彩な機能を発揮することができる。図3(c)に示す複屈折パターンを有する物品は光学異方性層を複数層積層した後にパターン露光を行い同一のパターンを与えた例である。このような例は例えば一層の光学異方性層では出せないような大きなレターデーションを有する領域を含むパターンを作製するのに有用である。図3(d)に示す複屈折パターンを有する物品は“光学異方性層形成(転写含む)→パターン露光→ベーク”を複数回繰り返して複数の光学異方性層に互いに独立したパターンを与えた例である。例えばレターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えたい時に有用な例である。図3(e)に示す複屈折パターンは光学異方性層形成(転写含む)とパターン露光を交互に必要数行った後に一度のベークでパターン化した例である。同様の方法によって、工程負荷の大きいベークの回数を最小限に抑えた上で、互いに異なるレターデーションを持った領域を必要な数だけ作製することができる。
【0043】
[液晶表示装置用基板]
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板は、パターン状のレターデーションを有する液晶表示装置用基板であり、基板と、少なくとも一層のパターン状のレターデーションを有する光学異方性層とを有する。本明細書において「パターン状のレターデーションを有する光学異方性層」とは「レターデーションが異なる領域をパターン状に有する光学異方性層」を意味し、通常「面内レターデーションRe1の領域と面内レターデーションRe2の領域(ただしRe1>Re2)とをパターン状に有する光学異方性層」を意味する。なお、本明細書において特に言及しない場合は、「液晶表示装置用基板」と「基板」は通常区別して用いられる。
【0044】
図4は本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板のいくつかの例の概略断面図である。図4(a)に示す液晶表示装置用基板は、基板11上に、パターン状のレターデーションを有する光学異方性層12が形成されたものである。基板11としては透明であれば特に限定はないが、複屈折が小さい支持体が望ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が用いられる。パターン状のレターデーションを有する光学異方性層12は、基板上に液晶性化合物を含む溶液が塗布され、液晶相形成温度で熟成・配向されたあと、その状態のまま熱または電離放射線照射して固化することによって得られた光学異方性層を、パターン露光、加熱することによって得ることができる。光学異方性層12の露光部12Aと未露光部12Bとの間に、加熱工程によりレターデーションの差が生じることによってパターン状のレターデーションを有する光学異方性層が形成される。これによって液晶セル内の異なる表示モード、特に半透過型LCDの透過部と反射部で異なる光学補償を達成することができる。さらに、従来のように温湿度で寸度変化しやすいプラスティック支持体に光学異方性層が設けられている場合と異なり、セル内の光学異方性層を設けると、光学異方性層がガラス基板に強固に保持されているため、温湿度による寸度変化を起こしにくく、LCDのコーナームラを改良することができる。パターン露光の方法は、露光部と未露光部に必要とする露光量差および解像度があれば、市販のレーザ描画装置などによる直接露光でもよいし、フォトマスクを介した露光でもよい。
【0045】
図4(b)に示す液晶表示装置用基板は、基板11と光学異方性層12の間に配向層13が形成されている。液晶性化合物を含む溶液がラビングされた配向層13上に直接塗布された後、液晶相形成温度で熟成・配向され、その状態のまま熱または電離放射線照射して固化することによって光学異方性層12となる。レターデーションの異なる領域の形成は上記と同様に行うことができる。図4(c)に示す液晶表示装置用基板は、基板11とパターン状のレターデーションを有する光学異方性層12の間に転写用接着層14が形成されている。本態様は、図5(a)に示すような転写材料を用いて作製することができる。図4(d)および(e)に示す液晶表示装置用基板は、光学異方性層12の上に感光性樹脂層15を有する態様である。図4(d)はネガ型、(e)はポジ型の感光性樹脂を用いたもので、いずれの場合においても位相差のパターニングのための露光と同時に凹凸パターンが形成できる。本態様は、例えば図4(c)の上に直接感光性樹脂層15を塗布するか、もしくは図5(c)に示すような転写材料を用いて作製することができる。
【0046】
[転写材料(液晶表示装置用基板に用いられる例)]
図5(a)は転写材料の一例で、仮支持体21上に配向層22を介して光学異方性層12が形成されている。光学異方性層12上には転写用接着層14が形成されており、転写材料を転写用接着層14を介して基板にラミネート転写することで液晶表示装置用基板を作製できる。転写用接着層としては、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。良好な転写性を持たせるために、光学異方性層12と配向層22の間の剥離性が高いことが望ましい。図5(b)は、転写工程における気泡混入防止や液晶表示装置用基板上の凹凸吸収のための力学特性制御層23を有する態様である。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましい。図5(c)は、図4(d)または(e)を作製することができる転写材料である。光学異方性層12の下に凹凸を形成するための感光性樹脂層15を有している。本態様を作製するためには、感光性樹脂層15の上に液晶性化合物を配向させることが必要となるが、通常感光性樹脂層上に有機溶媒を用いて液晶性化合物を含む塗布液を塗布すると、有機溶媒で感光性樹脂層が溶解してしまうため液晶性化合物を配向させることができない。そこで、別の仮支持体24上に図5(d)に示すような転写材料を形成し、感光性樹脂層15が仮支持体21に対する転写接着層を兼ねて、光学異方性層12の上に転写用接着層14を形成することで作製することができる。
【0047】
[液晶表示装置用基板(カラーフィルタ層を有する基板)]
図6(a)に本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板であってカラーフィルタ層を有する一例の概略断面図を示す。この例では基板として、上述のガラスや低複屈折性ポリマー等からなる基板上にカラーフィルタ層を有するカラーフィルタ基板が用いられる。本発明の液晶表示装置用基板は、液晶セルを形成する2枚の液晶表示装置用基板のうち、TFT層を有する側の液晶表示装置用基板に比べてプロセス温度が低いカラーフィルタ層を有する側の液晶表示装置用基板として用いることが好ましい。カラーフィルタ層を有する側の液晶表示装置用基板において、基板上には一般にブラックマトリクス31が形成され、その上にカラーフィルタがフォトリソ工程で形成されていればよい。さらにその上に、直接または転写材料から光学異方性層を含む層を作製後、パターン露光等を行い、加熱工程を経ることによってパターン状のレターデーションを有する光学異方性層12が形成される。図6(a)には断面図および上から見た図を示しているが、半透過LCDの場合、RGBからなる一画素の中に透過部33と反射部34が設けられているため、RGBのカラーフィルタ上に部分的またはストライプ状にパターンを形成するとよい。透過部33と反射部34は逆になっても構わないが、半透過型LCDの場合、液晶セルのバックライト側で透過部のみを光学補償することができるため、反射部のみにレターデーションを有することで光学補償できる点が性能向上に大きく寄与できて好ましい。図6(b)にはさらに感光性樹脂層からなる段差層を形成した例を示す。このように、本発明の液晶表示装置用基板によって透過部33と反射部34で高さを変えることができ、それによって液晶セルギャップを変える、いわゆるマルチギャップが可能となる。図6(b)は反射部に突起を有するが、一般に半透過LCDでは透過部より反射部のセルギャップが小さいため、反射部に突起を有する態様が好ましい。逆にする場合は感光性樹脂層をポジ型にすればよい。
【0048】
本発明の液晶表示装置用基板は、透過型LCDに用いても効果を発揮する。図6(c)に透過型LCDを想定した態様を示す。図6(c)は、RおよびGが露光部、Bが未露光部で、B上のレターデーションが小さいか、もしくは実質的にゼロとなっている。R、GおよびBに対する光学補償のためのレターデーションの最適値は一般に異なるため、本発明の液晶表示装置用基板によってRGBの色ごとにレターデーションを調節することができる。本発明の液晶表示装置用基板と一般的な光学補償シートを組み合わせることもでき、さらなる視野角改良効果、特に色視野角改良効果が期待できる。図6(d)はさらにRGBごとにセルギャップも制御する態様である。このマルチギャップによって、さらにLCDの色視野角特性を改良でき、本発明のRGB独立レターデーション制御との組み合わせによって高品位のLCD表示特性を達成することができる。
【0049】
TFT層を有する側の液晶表示装置用基板として本発明の液晶表示装置用基板を用いる場合、光学異方性層はどの位置に形成されてもよいが、TFTアレイ工程はシリコン形成に通常300℃以上の高温プロセスを要することから、TFTを有するアクティブ駆動型の場合、光学異方性層はTFTのシリコン層よりも上であることが好ましい。
【0050】
[液晶表示装置]
図7は本発明の液晶表示装置用基板を含む液晶表示装置の一例の概略断面図である。図7(a)の例は、図6(b)をカラーフィルタ層を有する側の液晶表示装置用基板48として用いた半透過型液晶表示装置である。偏光層41を挟む保護フィルム42および43からなる2枚の偏光板49が粘着剤44を介して液晶セルを形成する上下の液晶表示装置用基板11にそれぞれ貼合されている。一般に液晶セルの下側の液晶表示装置用基板にはTFTなどの駆動素子45が形成されており、半透過型の反射部にのみ、その上にアルミや誘電体多層膜などからなる反射板46が形成されている。液晶セル上下の液晶表示装置用基板の間には液晶47が満たされており、この液晶の配向が電圧印加で変化することにより液晶表示装置がスイッチングされる。上下の液晶表示装置用基板の最表面には、液晶47の配向を決めるために配向膜(図中は省略)が形成され、その上をラビング処理されるのが一般的である。反射部の液晶セルギャップは、反射板46と感光性樹脂層15により形成された段差で透過部と異なるギャップに制御することができる。偏光層を挟む2枚の保護フィルムのうち、43は光学補償シートを用いてもよいし、通常の保護フィルム42を用いてもよい。透過部は上下2枚の光学補償シート43によって視野角が制御され、反射部は上側補償シート43とセル内の光学異方性層12Aによって視野角が制御される。
【0051】
図7(b)に比較例として光学補償シートのみによる半透過型LCDの例を示す。43Aはλ/2板、43Bはλ/4板で、43Aと43Bとで広帯域λ/4となる。上下に広帯域λ/4板を配置し、反射部は上側補償シート43で反射型LCD表示を行い、透過型LCDには不要な上側の広帯域λ/4板を、下側偏光板でキャンセルする必要があり、補償シートとしては上下4枚必要となる。
図7(c)の例は、図6(d)をカラーフィルタ層を有する側の液晶表示装置用基板48として用いた透過型液晶表示装置である。反射板46がない以外の各構成素子は半透過型と同じであるが、透過型の場合、テレビのように画質、特に色味において高品位の表示特性が求められる。そのため、カラーフィルタのRGBごとに最適化された液晶セル設計にすることが望ましい。そこで、光学補償は偏光板49を構成する上下2枚の光学補償シート43の一方または両方と、セル内のパターニングされた光学異方性層12で行い、さらに液晶セルギャップもRGBごとに変化させるマルチギャップにすることによって、自由度の高い液晶セル設計が可能となる。この方式は、特にVAモードもしくはIPSモードにおいて優れた視野角特性を達成することができ好ましい。
【0052】
本発明の製造方法により製造される液晶表示装置用基板は、基板、パターン状のレターデーションを有する光学異方性層、段差を形成する感光性樹脂層を有する。本発明の液晶表示装置用基板は、液晶表示装置の構成部材を作製するのに利用するのが好ましいが、用途は特に限定されない。かかる態様では、前記光学異方性層が液晶表示装置のセルの光学補償に寄与し、即ち、コントラスト視野角を拡大し、液晶表示装置の画像着色を解消するのに寄与する。
【0053】
以下、複屈折パターン作製材料、それを用いた複屈折パターンを有する物品の作製方法および複屈折パターンを有する物品の材料、作製方法等について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0054】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。また、前記光学異方性層は、レターデーション消失温度を有することを特徴とする。レターデーション消失温度は20℃より大きく250℃以下であることが好ましく、40℃〜245℃であることがより好ましく、50℃〜245℃であることがさらに好ましく、80℃〜240℃であることが最も好ましい。
【0055】
また、複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、複屈折パターン作製材料に露光を行う事によりレターデーション消失温度が上昇する光学異方性層を用いる。この結果として、露光部と未露光部とでレターデーション消失温度に差が生じることとなり、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度でベークを行う事により未露光部のレターデーションのみを選択的に消失せしめることが可能となる。この際に露光によるレターデーション消失温度の上昇幅は、未露光部のレターデーションのみの選択的消失の効率及び加熱装置内の温度ばらつきに対するロバストネスを考慮すると、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく20℃以上であることが特に好ましい。また、露光部のレターデーション消失温度が250℃以下の温度域にないと、未露光部のレターデーションを十分に消失させやすくなり好ましい。
【0056】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は高分子を含む。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こり、その結果としてレターデーション消失温度の上昇が起こりやすくなると考えられるためである。
【0057】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行う為、本発明の光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0058】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。参考までに、1〜50nmまでのレターデーションを有する光学異方性層を含む複屈折パターン作製材料に適正条件の露光とベーク(例えば本発明実施例1に示す材料を用いた場合、35mJ(UV−A領域)の紫外線露光と230℃で1時間のベーク)を1回ずつ行って作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で目視で観察した際のパターン識別の容易さ(視認性)についての目安を表1に示す。なお、本明細書において“クロスニコル下”とは吸収軸が略直交になるように重ねた2枚の偏光板の間にサンプルを配置した状態を意味する。
【0059】
【表1】

【0060】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
【0061】
光学異方性層は、上記の様に、液晶セル中に組み込まれることによっては、液晶表示装置の視野角を補償する光学異方性層として機能する。光学異方性層単独で充分な光学補償能を有する態様はもちろん、他の層(例えば、液晶セル外に配置される光学異方性層等)との組み合わせで光学補償に必要とされる光学特性を満足する態様も本発明の範囲に含まれる。また、転写材料が有する光学異方性層が、光学補償能に充分な光学特性を満足している必要はなく、例えば、基板上に転写される過程において実施される露光工程を通じて、光学特性が発現又は変化して、最終的に光学補償に必要な光学特性を示すものであってもよい。
液晶表示装置用基板における前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0062】
[液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0063】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0064】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0065】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0066】
【化1】

【0067】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0068】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0069】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0070】
【化2】

【0071】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0072】
【化3】

【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0079】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
【化12】

【0084】
【化13】

【0085】
【化14】

【0086】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0087】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0088】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0089】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0090】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0091】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0092】
[偏光照射後の紫外線照射による後硬化]
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0093】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0094】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0095】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0096】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0097】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0098】
【化15】

【0099】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0100】
【化16】

【0101】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0102】
【化17】

【0103】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0104】
【化18】

【0105】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0106】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。前述したように光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0107】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。
【0108】
[複屈折パターン作製材料]
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターンを得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、後粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
【0109】
[支持体]
複屈折パターン作製材料は力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料に用いられる支持体には特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。
支持体が液晶表示装置用基板の基板となる場合は、支持体は透明であることが好ましい。液晶表示装置用基板の基板としては、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板でも、ポリマーからなる透明基板でもよい。液晶表示装置用の場合、液晶表示装置用基板作製工程においてカラーフィルタや配向膜のベークのために180℃以上の高温プロセスを要するため、耐熱性を有することが好ましい。そのような耐熱性基板としては、ガラス板もしくはポリイミド、ポリエーテルスルホン、耐熱性ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特に価格、透明性、耐熱性の観点からガラス板が好ましい。また、基板は、予めカップリング処理を施しておくことにより、転写接着層との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、100〜1200μmが一般的に好ましく、300〜1000μmが特に好ましい。
また、本発明の液晶表示装置用基板の製造に用いられる基板は上記のガラス基板上にカラーフィルタ層を有するカラーフィルタ基板であってもよい。
【0110】
[配向層]
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0111】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0112】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0113】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0114】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0115】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0116】
[反射層]
複屈折パターン作製材料は、より容易に識別できる複屈折パターンの作製のために反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。
【0117】
[後粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
【0118】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層をは互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0119】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレターデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレターデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレターデーションを有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
互いにレターデーションおよび遅相軸が異なる2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、パターン状の広帯域λ/4板を作製する場合が挙げられる。広帯域λ/4板の作成法としてλ/4板とλ/2板を互いの遅相軸を60°ずらして積層する手法が発表されており(小野らの研究報告、IDW2005.1411頁)、そのような広帯域λ/4板のパターンを作製するには互いの遅相軸が60°ずれて積層されたλ/4板とλ/2板を有する複屈折パターン作製材料が有用である。
【0120】
[感光性樹脂層]
感光性樹脂層は後述の転写材料における転写接着層として、または液晶表示装置における段差形成のための層として機能する。
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写接着層として用いられる場合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、液晶表示装置用基板等の物品の製造工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0121】
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
【0122】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0123】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0124】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0125】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得る為にはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0126】
【化19】

【0127】
式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0128】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCm2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。Cm2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0129】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
特に好ましい界面活性剤の重量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0130】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0131】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0132】
[複屈折パターン作製材料の作製方法]
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて支持体上に光学異方性層を転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。複屈折パターンを有する物品が液晶表示装置用基板である場合においては、転写材料を用いて形成することによって、特に段差形成用感光性樹脂層を有する製造工程数を減らすことが可能である。
【0133】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0134】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0135】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、上記の感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0136】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0137】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フイルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0138】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0139】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0140】
[力学特性制御層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0141】
[剥離層]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0142】
[表面保護層]
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0143】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0144】
[転写材料を被転写材料上に転写する方法]
転写材料を支持体(基板)等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0145】
[転写に伴う工程]
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0146】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層、例えば電極層等を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0147】
[複屈折パターンを有する物品の作製]
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を作製することができる。
【0148】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように行う。露光部の光学異方性層はレターデーション消失温度が上昇する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0149】
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。
【0150】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレターデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレターデーション消失温度が上昇した露光部はレターデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターン化光学異方性層)が作製される。
光学上の効果を発揮するため、ベーク後の露光部のレターデーションは5nm以上であることが好ましく、10nm以上5000nm以下であることがより好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。5nm以下では作製された複屈折パターンの目視による識別が困難となる(表1参照)。
【0151】
また、光学上の効果を発揮するため、複屈折パターン作製材料中の未露光部のベーク後のレターデーションはベーク前の80%以下となることが好ましく、ベーク前の60%以下となることがより好ましく、ベーク前の20%以下となることがさらに好ましく、5nm未満となることが最も好ましい。特にベーク後のレターデーションが5nm未満となった場合、そこは目視の上ではあたかも複屈折性が全く無かったかのような印象を与える。すなわち、クロスニコル下では黒が、パラニコル下あるいは偏光板+反射板の上では無色が表現できる。このようにベーク後の未露光部のレターデーションが5nm未満となる複屈折パターン作製材料は、複屈折パターンでカラー画像を表現する際、あるいは複数層の異なるパターンを積層して使用する際に有用である。
参考までに、ベーク後の光学異方性層(ベーク前のレターデーション100nm)をクロスニコル下で目視で観察した際に、未露光部のレターデーションのベーク前と比較した残存率と未露光部/露光部差の視認の容易さ、および未露光部の目視観察での色についての目安を表2に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
また、ベークを行った複屈折パターン材料の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域(1度目の未露光部のレターデーションはベークによりすでに消失)、一度目及び二度目ともに露光部である領域で、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0154】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターン作製材料は、上述のように露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製された後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層され、複屈折パターンを有する物品となっていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば表面の傷つきを防止するハードコート層や、複屈折パターンの視認を容易にする反射層などがあげられる。識別を容易とする為、特に複屈折パターンの下に反射層を有することが好ましい。
【0155】
[複屈折パターンを有する物品]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる物品は通常はほぼ無色透明である一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、本発明の作製方法で作製された複屈折パターンを有する物品、特に反射層を含む複屈折パターンを有する物品は通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
【0156】
[光学素子]
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品を構造的な光学素子として用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、本発明の屈折率のパターンによって作製された回折格子は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
【0157】
[液晶表示装置用基板]
さらに、複屈折パターンを有する物品は液晶表示装置用基板であってもよい。
得られる光学異方性層におけるレターデーションRe1を有する領域(露光部)が二軸性を示すと、液晶セル、特にVAモードの液晶セルを正確に光学補償できるので好ましい。液晶性化合物として、反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いる場合、二軸性を発現させるためにはコレステリック配向もしくは傾斜角が厚み方向に徐々に変化しながらねじれたハイブリッドコレステリック配向を、偏光照射によって歪ませることが必要である。偏光照射によって配向を歪ませる方法としては、二色性液晶性重合開始剤を用いる方法(EP1389199 A1)や分子内にシンナモイル基等の光配向性官能基を有する棒状液晶性化合物を用いる方法(特開2002−6138)が挙げられる。本発明においては、いずれも利用できる。
【0158】
前記光学異方性層が正のa−plateの場合、VAモードもしくは半透過型の液晶セルを正確に光学補償できるので好ましい。また、前記光学異方性層が正のc−plateの場合、IPSモードを正確に光学補償できるので好ましい。
VAモード、IPSモードいずれの場合においても、偏光板保護フィルムの一方を光学補償シートとすることが好ましい。VAモードにおいては、偏光板保護フィルムとしての光学異方性層がc−plateであることが好ましく、IPSモードに対しては厚み方向の屈折率が最も小さい二軸性であることが好ましい。本発明の転写材料に用いる一軸性の光学異方性層は、一軸性である棒状の液晶性化合物を液晶のダイレクタが一方向に揃うように配向させることにより作製することができる。このような一軸性配向は、ラビング配向層もしくは光配向層上にカイラル性のない液晶層を配向させる方法、磁場もしくは電場で配向させる方法、延伸やせん断のような外力を与えて配向させる方法などによって実現できる。
本発明においては、前記一軸性もしくは一軸性配向を基板上に形成するか、もしくは仮支持体上に形成したものを基板上に転写して全面に均一な光学異方性層を形成した後、直接もしくはフォトマスクを介してパターン露光し、さらに加熱することによって、Re1とRe2(Re1>Re2)の異なるレターデーションを有するパターンを得ることができる。露光部がRe1となることが好ましい。Re2はRe1の80%以下が好ましく、Re1の50%以下であることがさらに好ましい。
【0159】
また、段差形成を行う場合は、前記加熱工程前に液による現像を行う。露光後の現像工程に用いられる現像液としては特に制約はないが、環境上、防爆上の問題からアルカリ現像が好ましく、特開平5−72724号公報に記載のものなど、公知の現像液を使用することができる。尚、現像液は樹脂層が溶解型の現像挙動をするものが好ましく、例えば、pKa=7〜13の化合物を0.05〜5mol/Lの濃度で含むものが好ましい。また、上記現像液には、更に公知の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0160】
現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。露光後の樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、未硬化部分を除去することができる。尚、現像の前に樹脂層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワーなどにより吹き付け、熱可塑性樹脂層、中間層などを除去しておくことが好ましい。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。洗浄液としては公知のものを使用できるが、(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名「T−SD1(富士写真フイルム(株)製)」、或いは、炭酸ナトリウム・フェノキシオキシエチレン系界面活性剤含有、商品名「T−SD2(富士写真フイルム(株)製)」)が好ましい。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【実施例】
【0161】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0162】
(力学特性制御層(熱可塑性樹脂層)用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────――
力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、重量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、重量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────――
【0163】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、中間層/配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
中間層/配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.1
メタノール 43.21
──────────────────────────────────――
【0164】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は特開2004−123882に記載の方法を基に合成した。LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2はTetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
【0165】

──────────────────────────────────―────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―────
棒状液晶(LC−1−1) 19.57
水平配向剤(LC−1−2) 0.01
カチオン系光重合開始剤
(Cyracure UVI6974、ダウ・ケミカル製) 0.40
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.02
メチルエチルケトン 80.0
───────────────────────────────────────
【0166】
【化20】

【0167】
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
LC−1−1およびLC−2−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
【0168】
──────────────────────────────────―────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―────
棒状液晶(LC−1−1) 9.79
棒状液晶(LC−2−1) 9.78
水平配向剤(LC−1−2) 0.01
カチオン系光重合開始剤
(Cyracure UVI6974、ダウ・ケミカル製) 0.40
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.02
メチルエチルケトン 80.0
──────────────────────────────────―────
【0169】
【化21】

【0170】
(光学異方性層用塗布液LC−3の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−3として用いた。
LC−3−1はWO93/22397に記載の方法を基に合成した。LC−3−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基は共にラジカル性の反応性基であるアクリル基である。
──────────────────────────────────―─────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
棒状液晶(LC−3−1) 31.93
水平配向剤(LC−1−2) 0.07
ラジカル系光重合開始剤(IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1.00
光重合促進剤(KAYACURE DETX−S、日本化薬(株)製)
0.33
メチルエチルケトン 66.67
────────────────────────────────────────
【0171】
【化22】

【0172】
(光学異方性層用塗布液LC−4の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−4として用いた。
LC−4−1、LC−4−2はD. J. Broer et al., Makromol. Chem. 190, 3201-3215 (1989) に記載の方法を基に合成した。
LC−4−3は英国特許2280445号に記載の方法を基に合成した。
LC−3−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基は共にラジカル性の反応性基であるアクリル基である。
LC−4−1、LC−4−2、LC−4−3、LC−4−4は1つの反応性基を有する液晶化合物であり、その反応性基はラジカル性の反応性基であるアクリル基である。
【0173】
──────────────────────────────────―─────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
棒状液晶(LC−3−1) 2.00
棒状液晶(LC−4−1) 10.77
棒状液晶(LC−4−2) 8.33
棒状液晶(LC−4−3) 4.17
棒状液晶(LC−4−4) 3.33
棒状化合物(LC−4−5) 3.33
水平配向剤(LC−1−2) 0.07
ラジカル系光重合開始剤(IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1.00
光重合促進剤(KAYACURE DETX−S、日本化薬(株)製)
0.33
メチルエチルケトン 66.67
──────────────────────────────────―─────
【0174】
【化23】

【0175】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
──────────────────────────────────―─
転写接着層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―─
【0176】
(実施例1:複屈折パターン作製材料、及び複屈折パターンを有する物品の作製)
(光学異方性層チェックサンプルTRC−1および複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ2.4μmの光学異方性層を形成して光学異方性層チェックサンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−B領域(波長280nm〜320nmの積算)において50mW/cm2、照射量はUV−B領域において35mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
【0177】
最後に、光学異方性層チェックサンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0178】
(比較例の光学異方性層チェックサンプルTRC−1−2および複屈折パターン作製用転写材料TR−1−2の作製)
光学異方性層に対する紫外線の照射を全く行わない以外はTRC−1、TR−1と同様にして、光学異方性層チェックサンプルTRC−1−2および複屈折パターン作製用転写材料TR−1−2を作製した。TRC−1−2の光学異方性層は20℃で固体の低分子で、耐MEK性を示さなかった。
【0179】
(比較例の光学異方性層チェックサンプルTRC−2および複屈折パターン作製用転写材料TR−2の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度95℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ2.4μmの光学異方性層を形成して光学異方性層チェックサンプルTRC−2を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において240mW/cm2、照射量はUV−A領域において200mJ/cm2であった。TRC−2の光学異方性層は20℃で固体の高分子であるが、耐MEK性を示さなかった。
【0180】
最後に、光学異方性層チェックサンプルTRC−2の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−2を作製した。
【0181】
(比較例の光学異方性層チェックサンプルTRC−3および複屈折パターン作製用転写材料TR−3の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−3を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、窒素下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.8μmの光学異方性層を形成して光学異方性層チェックサンプルTRC−3を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−3の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK性を示した。
【0182】
最後に、光学異方性層チェックサンプルTRC−3の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−3を作製した。
【0183】
(比較例の光学異方性層チェックサンプルTRC−4および複屈折パターン作製用転写材料TR−4の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−4を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、窒素下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.8μmの光学異方性層を形成して光学異方性層チェックサンプルTRC−4を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−4の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK性を示した。
【0184】
最後に、光学異方性層チェックサンプルTRC−4の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−4を作製した。
【0185】
(光学異方性層の特性が複屈折パターン作製用転写材料に与える影響)
TRC−1〜4の各光学異方性層チェックサンプルの状態および耐MEK性と、そこから作製される複屈折パターン作製用転写材料TR−1〜4が使用に耐え得るかについて表3に示した。
【0186】
【表3】

【0187】
表3から分かるように、低分子からなり耐溶媒性を有さないTRC−1−2の光学異方性層および高分子ではあるが耐溶媒性を有さないTRC−2の光学異方性層は転写接着層の塗布によって複屈折性を失ってしまう為、複屈折パターン作製用転写材料の光学異方性層として用いる事ができない。一方で、耐溶媒性を有するTR−1、TR−3、TR−4の光学異方性層は複屈折パターン作製用転写材料の光学異方性層として用いる事が可能である。
以下では、TR−1、TR−3、TR−4を用いて作製した複屈折パターン作製材料について比較する。
【0188】
(複屈折パターン作製材料BPM―1の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0189】
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。
【0190】
(比較例の複屈折パターン作製材料BPM−3の作製)
複屈折パターン作製用転写材料としてTR−1の代わりにTR−3を用いた以外はBPM−1と同様の手法で、比較例の複屈折パターン作製材料BPM−3を作製した。
【0191】
(比較例の複屈折パターン作製材料BPM−4の作製)
複屈折パターン作製用転写材料としてTR−1の代わりにTR−3を用いた以外はBPM−1と同様の手法で、比較例の複屈折パターン作製材料BPM−4を作製した。
【0192】
(位相差測定)
BPM−1、BPM−3、BPM−4の各サンプルについて、ファイバ型分光計を用いた平行ニコル法により、波長545nmにおける正面レターデーションおよび進相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときの波長545nmにおけるレターデーションを測定した。位相差測定結果を表4に示す。
【0193】
【表4】

【0194】
(レターデーション消失温度の測定)
BPM−1、BPM−3、BPM−4の各サンプルについて、ミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクI(図8)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行い、得られた露光部、未露光部のそれぞれをメトラー社製ホットステージ上で毎分20℃の昇温速度で室温から250℃まで加熱しつつ株式会社ニコン製エクリプスE600Pol偏光顕微鏡で観察し、レターデーション消失温度を測定した。結果を表5に示す。
【0195】
【表5】

【0196】
レターデーション消失温度測定の結果、BPM−1のみが露光部と未露光部との結果が異なっていた。この結果はそれぞれの光学異方性層中の未反応の反応性基の有無、ひいては光学異方性層の作製に用いられた液晶化合物の構造に関係があると考えられる。すなわち、BPM−1の光学異方性層はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基の両者を有する液晶化合物LC−1−1にカチオン系光重合開始剤を加えて露光してカチオン重合させて作製したもので未反応のアクリル基が残存していると考えられるのに対し、BPM−3およびBPM−4の光学異方性層はラジカル性の反応性基であるアクリル基のみを有する液晶化合物にラジカル系光重合開始剤を加えて露光してラジカル重合させて作製したもので未反応の反応性基に乏しいと考えられ、この差がBPM−1のみが露光部と未露光部とにおいてレターデーション消失温度が異なった原因と考えられる。なお、いずれのサンプルにおいても、昇温によるレターデーション消失を示したサンプルは温度を室温に戻してもレターデーションは消失したままだった。
【0197】
(レターデーションパターンの作製)
BPM−1、BPM−3、BPM−4の各サンプルについて、ミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。次いで、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、対応するレターデーションパターンBP−1、BP−3、BP−4を作製した。各サンプルの未露光部および露光部レターデーションを測定した結果を、表6に示す。
【0198】
【表6】

【0199】
未露光部はレターデーション消失温度を有し、露光部はレターデーション消失温度が250℃より大きいBP−1は未露光部と露光部とでレターデーションに明確な差を生じている。一方で、元々レターデーション消失温度を示さないBP−3、露光の前後でレターデーション消失温度が変化しないBP−4のサンプルは未露光部と露光部とでレターデーションに差を生じていない。
これらのサンプルをクロスニコル下においた場合に観察されるパターンを図9に示す。図中、黒ベタで示された部分はクロスニコル下で黒く見える部分であり、斜線部分はクロスニコル下で黄白色に見える部分である。露光前はレターデーション消失温度を持ち、露光後にはレターデーション消失温度を示さなくなったBP−1はパターン露光とベークを順次行うことでレターデーションのパターンを生じ、クロスニコル下の目視で黄白色と黒色の明瞭なパターンを示した。BP−1は未露光部のレターデーションが低く抑えられている為にクロスニコル下で黒色に観察され、このように明瞭なパターン表示が可能となる。
一方で、BP−3は未露光部、露光部ともにレターデーションが残り、BP−4は未露光部、露光部ともにレターデーションが大きく低下し、いずれの場合もレターデーションのパターン形成は困難であった。
【0200】
(実施例2:複数層の光学異方性層を積層した複屈折パターン作製材料)
(複屈折パターン作製用転写材料TR−5の作製)
光学異方性層の厚みを3.6μmにした以外はTR−1と同様にして、複屈折パターン作製用転写材料TR−5を作製した。
(複屈折パターン作製材料BPM−5の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0201】
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−5の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−5をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸方向が概ね一致するように注意した。
2度目のラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板にさらに同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。この際も、先にラミネートした2層の光学異方性層と今回ラミネートした光学異方性層のそれぞれの遅相軸方向が概ね一致するように注意した。ラミネート後、仮支持体を剥離して実施例2の複数層の光学異方性層を積層した複屈折パターン作製材料BPM−5を作製した。
【0202】
(レターデーションパターンの作製)
BPM−5に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。次いで、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、レターデーションパターンBP−5を作製した。サンプルの未露光部および露光部レターデーションを測定した結果を表7に示す。
【0203】
【表7】

【0204】
サンプルは未露光部のレターデーションは極めて低い一方で、露光部では800ナノメートル近い大きなレターデーションが得られている。
このサンプルをクロスニコル下においた場合に観察されるパターンを図10に示す。図中、黒ベタで示された部分はクロスニコル下で黒く見える部分であり、格子部分はクロスニコル下で黄緑色に見える部分である。このように複数の光学異方性層を積層する事で、容易に大きなレターデーション値のパターンを得る事ができる。
【0205】
(実施例3:転写・露光・ベークを複数回繰り返す事による多色パターンの作製)
(複屈折パターン作製用転写材料TR−6の作製)
光学異方性層の厚みを1.2μmにした以外はTR−1と同様にして、複屈折パターン作製用転写材料TR−6を作製した。
(本発明の多色複屈折パターンBP−6の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0206】
複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクII(図11)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。次いで、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った。
【0207】
ベーク後の基板に対し、先程と同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−6をラミネートした。この際、先にラミネートしたTR−1の光学異方性層の遅相軸の方向と今回ラミネートしたTR−6の光学異方性層の遅相軸の方向が一致するように注意した。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIII(図12)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。さらに、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、本発明の多色複屈折パターンBP−6を作製した。
サンプルの未露光部、マスクII露光部およびマスクIII露光部のレターデーションを測定した結果を表8に示す。
【0208】
【表8】

【0209】
サンプルのレターデーションとして未露光部、マスクII露光部およびマスクIII露光部のそれぞれの部分で異なる値が得られている。
このサンプルをクロスニコル下においた場合に観察されるパターンを図13に示す。図中、黒ベタで示された部分はクロスニコル下で黒く見える部分であり、横線部分はクロスニコル下で白色に見える部分、斜線部分はクロスニコル下で薄黄色に見える部分である。このように転写・パターン露光・焼成のサイクルを繰り返して複数の光学異方性層のパターニングを独立に行う事により、容易に多値のレターデーションパターンを得る事ができる。
【0210】
(実施例4:反射層を有する複屈折パターンの作製)
(複屈折パターン作製用転写材料TR−7の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.7μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−B領域(波長280nm〜320nmの積算)において50mW/cm2、照射量はUV−B領域において35mJ/cm2であった。最後に、感光性転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの感光性転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−7を作製した。
【0211】
(反射層を有する複屈折パターンBP−7の作製)
アルミ蒸着ガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0212】
複屈折パターン作製用転写材料TR−7の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。
【0213】
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士写真フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
その後230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、反射層を有する本発明の複屈折パターンBP−7を作製した。
このサンプルの上に偏光板を重ねた場合に観察されるパターンを図14に示す。図中、灰色で示された部分は銀色に見える部分であり、波線部分は青紫色に見える部分である。このように複屈折パターンは反射観察用にも作製が可能であり、その場合偏光板をかざすのみで容易にパターンを識別する事ができる。
【0214】
(実施例5:遅相軸方向の異なる複数の光学異方性層を有する複屈折パターンの作製)
(複屈折パターン作製用転写材料TR−8の作製)
光学異方性層の厚みを3.4μmにした以外はTR−7と同様にして、複屈折パターン作製用転写材料TR−8を作製した。
(遅相軸方向の異なる複数の光学異方性層を有する複屈折パターンBP−8の作製)
アルミ蒸着ガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0215】
複屈折パターン作製用転写材料TR−7の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板をトリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
【0216】
次に、同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−8をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層の遅相軸の方向に対して、後にラミネートした光学異方性層の遅相軸の方向が時計回り方向に60°ずらした方向となるようにラミネートした。
2度目のラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。
【0217】
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士写真フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
その後230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、実施例5の反射層を有する複屈折パターンを作製した。
【0218】
このサンプルの上に、偏光板を重ねた場合に観察されるパターンを図15に示す。この際、先にラミネートした光学異方性層の遅相軸の方向に対して、偏光板の透過軸の方向が時計回り方向に75°ずらした方向となるように重ねた。図中、灰色で示された部分は銀色に見える部分であり、黒ベタ部分は黒色に見える部分である。反射層と偏光板の間に複屈折パターンを挟んで画像を表現する際、黒色を表現するには広帯域のλ/4のレターデーションを有するパターンが必要であり、一般的な一軸の複屈折性パターンでは対応できないが、複屈折パターン作製材料ならば複数層の光学異方性層の積層により広帯域のλ/4のレターデーションを有するパターンも容易に作製可能であり、黒色のパターンを得る事ができる。
【0219】
(実施例6:複屈折パターンを偽造防止手段として用いる物品の作製)
(反射層を有する複屈折パターンBP−9の作製)
アルミ箔を耐熱テープでガラスに仮止めした基板を作製し、この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIV(図16)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。
【0220】
露光後の基板に再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−6をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸方向が概ね一致するように注意した。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクV(図17)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。さらに230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った後に複屈折パターンの積層されたアルミ箔をガラス板から外し、本発明の反射層上多色複屈折パターンBP−9を作製した。BP−9の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図18に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。
作製された複屈折パターンを適当な大きさに切断し、粘着剤で商品券に貼り付けた例を図19に示す。図中の認証部の部分が複屈折パターンの施された反射部である。認証部の複屈折パターンは通常の目視ではほぼ不可視だが、偏光板をかざす事によって二色のパターンとして目視が可能になり、該パターンによって真贋の判別が可能となる。
【0221】
(実施例7:延伸高分子を用いた複屈折パターンの作製)
(光学異方性層用塗布液OL−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液OL−1として用いた。
OL−1−1は2つの反応性基を有する棒状化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
OL−1−2は塗布性改善の目的で添加する界面活性剤である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
【0222】
──────────────────────────────────―────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―────
棒状化合物(OL−1−1) 29.17
水平配向剤(CL−2−1) 0.10
結晶性制御剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン)
3.33
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.07
メチルエチルケトン 66.66
───────────────────────────────────────
【0223】
【化24】

【0224】
(複屈折パターン作製用転写材料TR−10の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液OL−1を塗布、膜面温度110℃で2分間乾燥した後、空気下にて160mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。
次いで、光学異方性層の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した。最後に、作製されたサンプルを、万能試験機テンシロンを用いて90℃において10mm/分の速度で50%延伸して複屈折パターン作製用転写材料TR−10を作製した。TR−10の光学機能層は20℃で固体の高分子で、耐MEK性を示した。
【0225】
(複屈折パターン作製材料BPM―10の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−10を、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−10を作製した。
【0226】
(複屈折パターンの作製)
BPM−10に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。
その後、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD1、富士写真フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
その後230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、本発明の複屈折パターンBP−10を作製した。サンプルの未露光部および露光部のレターデーションを測定した結果を表9に示す。
【0227】
【表9】

【0228】
作製されたサンプルは未露光部と露光部で異なるレターデーションを有する複屈折パターンを示した。このように、本発明の複屈折パターン材料は延伸法を用いて作製する事も可能である。複屈折パターン材料を延伸法で作製する場合、その延伸の度合いによって光学異方性層の光学異方性層を調整することが可能である。
【0229】
(実施例8および9:λ/2、λ/4の位相差を有する転写材料の作製)
(実施例8の転写材料の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いてLC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥し、液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度240mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して、厚さ3.5μmの光学異方性層を形成し、最後に、感光性転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの感光性樹脂層を形成し実施例8の転写材料を作製した。
【0230】
(実施例9の転写材料の作製)
光学異方性層の厚みを1.8μmとした以外は実施例8と同様にして実施例9の転写材料を作製した。
(位相差測定)
ファイバ型分光計を用いた平行ニコル法により、波長545nmにおける正面レターデーションおよび遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときの波長545nmにおけるレターデーションを測定した。位相差測定結果を表10に示す。
【0231】
【表10】

【0232】
(実施例10および11:基板への転写を用いた、レターデーションのパターンを有する液晶表示装置用基板の作製)
(液晶表示装置用基板の作製)
小林駿介編著、カラー液晶ディスプレイ、240頁、産業図書(1994)に記載の一般的な方法で、ガラス基板上にブラックマトリクスおよびRGBの3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板を形成した。その上に、実施例8の転写材料を、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量25mJ/cm2でパターン露光した。
【0233】
次に、230℃のマッフル炉で1時間ベークして、レターデーションのパターンを有する図4(c)の態様の実施例10の液晶表示装置用基板を作製した。さらに実施例9の転写材料を用いた以外は実施例10と同様にして、実施例11の液晶表示装置用基板を作製した。
【0234】
(実施例12および13:基板への転写を用いた、レターデーションと段差のパターンを有する液晶表示装置用基板の作製)
実施例10に用いたカラーフィルタ基板上に、実施例8の転写材料を実施例10と同様にラミネート、仮支持体を剥離後、感光性樹脂層塗布液AD−1をスピンコート塗布し、厚さ2.0μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量25mJ/cm2でパターン露光した。さらに、炭酸Na系現像液(0.06mol/Lの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム(株)製)を用い、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像して感光性樹脂層を現像し、段差層を得た。
【0235】
引き続き洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名「T−SD1(富士写真フイルム(株)製)」を用い、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行った後、230℃のマッフル炉で1時間ベークして、レターデーションをパターン状に有する図4(d)の態様の実施例12の液晶表示装置用基板を作製した。また、実施例9の転写材料を用いた以外は実施例12と同様にして実施例13の液晶表示装置用基板を作製した。実施例12および実施例13のレターデーションのパターンを測定したものを表11に示す。
【0236】
【表11】

【0237】
(実施例14:レターデーションと段差のパターンを有する液晶表示装置用基板を用いた半透過型LCDの作製)
実施例13の液晶表示装置用基板上に透明電極、ポリイミドからなる配向膜を形成し、対向の液晶表示装置用基板に反射板付きTFT基板を用いて、半透過型ECB−LCDを作製した。
パターン露光の代わりに全面露光して実施例13の液晶表示装置用基板と同様に作成した液晶表示装置用基板を実施例13の液晶表示装置用基板の代わりに用いた以外は実施例14と同じものを比較例14−2、パターン露光の代わりに全く露光しなかった以外は実施例13の液晶表示装置用基板と同様に作成した液晶表示装置用基板を実施例13の液晶表示装置用基板の代わりに用いた以外は実施例14と同じものを比較例14−3として作製した。また、図7(b)の構成の半透過型ECB-LCDを比較例14−4として作製した。実施例14、および比較例14−2〜4の目視評価結果を表12に示す。
【0238】
【表12】

【0239】
(実施例15:基板への直接塗布を用いた、レターデーションのパターンを有する液晶表示装置用基板の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワーした。該ガラス基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
上記ガラス基板上に、小林駿介編著、カラー液晶ディスプレイ、240頁、産業図書(1994)に記載の一般的な方法で、ブラックマトリクスおよびRGBの3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板を形成した。
【0240】
上記カラーフィルタ基板上に市販の配向層用塗布液(RN1199A、日産化学工業(株)製)を塗布、乾燥させて220℃1時間で焼成し、配向層を作製した。焼成後の基板の膜厚は60nmであった。
次いで、上記の配向層をラビング処理し、この配向層上に、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布した。これを膜面温度105℃で2分間乾燥し、液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度240mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して、厚さ1.8μmの図4(b)の態様のパターン形成前の液晶表示装置用基板を形成した。
【0241】
続いて、感光性転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して2.0μmの感光性樹脂層を形成し、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を100μmに設定し、露光量100mJ/cm2でパターン露光した。
さらに、炭酸Na系現像液(0.06mol/Lの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム(株)製)を用い、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像して感光性樹脂層を現像し、段差層を得た。
【0242】
引き続き洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名「T−SD1(富士写真フイルム(株)製)」を用い、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行った。
最後に、230℃のマッフル炉で1時間ベークして、レターデーションをパターン状に有する実施例15の液晶表示装置用基板を作製した。
また、実施例15の液晶表示装置用基板の作製法においてガラス基板上にカラーフィルタを形成しないこと以外は実施例15と同様にして、レターデーション測定用基板を作製した。
【0243】
(位相差測定)
前記レターデーション測定用基板を用いて、ファイバ型分光計を用いた平行ニコル法により、波長λにおける正面レターデーションReおよび遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときの545nmにおける斜め40°のレターデーション、斜め−40°のレターデーションを測定した。230℃1時間の焼成前のレターデーション測定結果を表13に、焼成後のレターデーション測定結果を表14に示す。
ここで、斜め40°レターデーションとは、面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として面内の法線方向に対して+40°傾斜した方向から、波長545nmの光を入射させて測定したレターデーションを表す。
【0244】
【表13】

【0245】
【表14】

【0246】
(実施例16:半透過型LCDの作製)
実施例15の液晶表示装置用基板上に透明電極、ポリイミドからなる配向膜を形成し、対向の液晶表示装置用基板に反射板付きTFT基板を用いて、半透過型VA−LCDを作製した。
【0247】
パターン露光の代わりに全面露光した以外は実施例15の液晶表示装置用基板と同様に作成した液晶表示装置用基板を実施例15の液晶表示装置用基板の代わりに用いた以外は実施例16と同様に比較例16−2のLCD、パターン露光の代わりに全く露光しなかった以外は実施例15の液晶表示装置用基板と同様に作成した液晶表示装置用基板を実施例15の液晶表示装置用基板の代わりに用いた以外は実施例16と同様に比較例16−3のLCDとして作製した。また、概ね図7(b)の構成の半透過型VA−LCDを比較例16−4として作製した。実施例16、および比較例16−2〜4の目視評価結果を表15に示す。
【0248】
【表15】

【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】複屈折パターン作製材料の例を示す概略断面図である。
【図2】転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料の例の概略断面図である
【図3】本発明の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品の例の概略断面図である。
【図4】本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板の一例の概略断面図である。
【図5】本発明の液晶表示装置用基板の製造方法に用いられる転写材料の一例の概略断面図である。
【図6】本発明の製造方法により得られるカラーフィルタ層を有する液晶表示装置用基板の一例の概略図である。
【図7】本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板を有する液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【図8】実施例で用いたフォトマスクIの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図9】実施例1で作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で観察したときのパターンの模式図である。
【図10】実施例2で作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で観察したときのパターンの模式図である。
【図11】実施例で用いたフォトマスクIIの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図12】実施例で用いたフォトマスクIIIの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図13】実施例3で作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で観察したときのパターンの模式図である。
【図14】実施例4で作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で観察したときのパターンの模式図である。
【図15】実施例5で作製した複屈折パターンを有する物品をクロスニコル下で観察したときのパターンの模式図である。
【図16】実施例で用いたフォトマスクIVの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図17】実施例で用いたフォトマスクVの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図18】実施例5で作製した複屈折パターンを有する物品を偏光板を介して観察した場合に観察されるパターンの拡大図である。
【図19】実施例5で作製した複屈折パターンを有する物品を適当な大きさに切断し、粘着剤で商品券に貼り付けた例を示す図である。
【符号の説明】
【0250】
11 支持体または基板
12 光学異方性層
12A 光学異方性層の露光部
12B 光学異方性層の未露光部
12F 第一光学異方性層
12S 第二光学異方性層
13 配向層(支持体上)
14 転写用接着層
14A 第一転写接着層
14B 第二転写接着層
14C 第三転写接着層
15 感光性樹脂層
16 後粘着層
17 剥離層
18 表面保護層
21 仮支持体
22 配向層(仮支持体上)
22F 仮支持体上第一配向層
22S 仮支持体上第一配向層
23 力学特性制御層
112 パターン化光学異方性層
112−A パターン化光学異方性層(露光部)
112−B パターン化光学異方性層(未露光部)
112F―A パターン化第一光学異方性層(露光部)
112F―B パターン化第一光学異方性層(未露光部)
112S―A パターン化第二光学異方性層(露光部)
112S―B パターン化第二光学異方性層(未露光部)
112T―A パターン化第三光学異方性層(露光部)
112T―B パターン化第三光学異方性層(未露光部)
24 仮支持体21に転写するための転写材料用仮支持体
31 ブラックマトリクス
32 カラーフィルタ層
33 透過部
34 反射部
35 反射層
41 偏光層
42 セルロースアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)
43 セルロースアセテートフィルム、または光学補償シート
43A λ/2板
43B λ/4板
44 粘着層
45 駆動素子
46 反射板
47 液晶
48 液晶表示装置用基板
49 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]高分子を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層は、20℃より高い温度域に面内レターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下となるレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度は露光によって上昇する
複屈折パターン作製材料
を用意する工程;
[2]該複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]工程2後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項2】
複屈折パターン作製材料の前記上昇後のレターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
複屈折パターン作製材料の20℃時の面内レターデーションが10nm以上である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高分子が未反応の反応性基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記光学異方性層が延伸フィルムからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記複屈折パターン作製材料が光学異方性層を2層以上含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
2層以上の光学異方性層が、遅相軸の向きおよび/または面内レターデーションが互いに異なる光学異方性層を少なくとも2層以上含む請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記光学異方性層が、該光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより設けられた層である請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程2の後、かつ前記工程3の前に下記工程13及び14をこの順に含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法:
[13] 工程2後に得られる積層体上に別の前記複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[14]該転写後に得られる積層体にパターン露光を行う工程。
【請求項14】
前記工程3の後に下記工程24〜26をこの順に含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法:
[24]工程3後に得られる積層体上に別の複屈折パターン作製材料を転写する工程;
[25]工程24後に得られる積層体にパターン露光を行う工程;
[26]工程25後に得られる積層体を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項15】
前記複屈折パターン作製材料が光学異方性層上に感光性樹脂層を有し、前記工程2において前記複屈折パターン作製材料は該感光性樹脂層側からパターン露光され、かつ、前記工程2のあとに下記工程9を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法:
[9]該積層体上の不要な感光性樹脂層を除去する工程。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる偽造防止手段として用いられる物品。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる光学素子。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られる液晶表示装置用基板。
【請求項19】
高分子を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層は、20℃より高い温度域に面内レターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下となるレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度は露光によって上昇する
複屈折パターン作製材料。
【請求項20】
上昇後のレターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない請求項19に記載の複屈折パターン作製材料。
【請求項21】
20℃時の面内レターデーションが10nm以上である請求項19又は20に記載の複屈折パターン作製材料。
【請求項22】
前記光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものである請求項19〜21のいずれか1項に記載の複屈折パターン作製材料。
【請求項23】
前記液晶性化合物が同じ分子内に少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する請求項22に記載の複屈折パターン作製材料。
【請求項24】
前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である請求項23に記載の複屈折パターン作製材料。
【請求項25】
少なくとも次の[101]〜[103]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[101]基板上に少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して光学異方性層を形成する工程;
[102]該光学異方性層をパターン露光する工程;
[103]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項26】
少なくとも次の[111]〜[115]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[111]基板上に少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して光学異方性層を形成する工程;
[112]該光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程;
[113]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程;
[114]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程;
[115]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項27】
少なくとも次の[121]〜[123]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[121]少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して得られる光学異方性層と、転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程;
[122]該光学異方性層をパターン露光する工程;
[123]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項28】
少なくとも次の[131]〜[135]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[131]少なくとも一つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して得られる光学異方性層と転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程;
[132]光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程;
[133]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程;
[134]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程;
[135]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項29】
少なくとも次の[521]〜[523]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[521]延伸フィルムからなる光学異方性層と、転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程;
[522]該光学異方性層をパターン露光する工程;
[523]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項30】
少なくとも次の[531]〜[535]の工程をこの順に含む液晶表示装置用基板の製造方法:
[531]延伸フィルムからなる光学異方性層と転写用接着層とを有する転写材料を用いて、基板上に転写用接着層と光学異方性層をこの順に形成する工程;
[532]該光学異方性層上に感光性樹脂層を形成する工程;
[533]該光学異方性層および感光性樹脂層をパターン露光する工程;
[534]該基板上の不要な感光性樹脂層を除去する工程;
[535]該光学異方性層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
【請求項31】
請求項25〜30のいずれか一項に記載の製造方法により得られる液晶表示装置用基板。
【請求項32】
面内レターデーションRe1の領域と面内レターデーションRe2の領域(ただしRe1>Re2)とを有する光学異方性層を含む請求項31に記載の液晶表示装置用基板。
【請求項33】
Re2が5nm以下である請求項32に記載の液晶表示装置用基板。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか一項に記載の液晶表示装置用基板を有する液晶表示装置。
【請求項35】
液晶モードが半透過モードである請求項34に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−69793(P2009−69793A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299181(P2007−299181)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】