説明

複層樹脂チューブ

【課題】この発明は、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂チューブが有する、難燃性や耐摩耗性の性質を大きく損なうことなく、柔軟性を有する複層樹脂チューブを得ることを課題とする。
【解決手段】外層2に難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用い、内層3に柔軟性を有する樹脂を用い、外層2と内層3とを接着したことを特徴とする複層樹脂チューブ1とする。
このような複層樹脂チューブであると、前述の課題を解決すると共に、最適の難燃性、耐摩耗性、柔軟性、を有するものとなり、スパッタ又は火炎が発生する装置の如何なる箇所にも設置可能な複層樹脂チューブとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複層樹脂チューブであって、詳しくはスパッタや火花又は火炎が発生する環境で稼動する装置に取り付けられる難燃性を有する複層樹脂チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の製造業においては、人間の代わりに作業をする産業用ロボットが用いられており、自動車製造ラインに設置されている溶接ロボットや溶接バーナーなどで使用されるエアチューブ又は冷却水用チューブ等は、常時スパッタ(火花)や火炎に曝される危険がある。例えば、樹脂チューブにスパッタが付着した場合、付着部分から樹脂チューブが溶融、軟化し、穴があいて、冷却液や加圧ガスが抜け出すという欠点があった。また、難燃性を有していない樹脂チューブであると火炎によって燃焼する恐れがあった。
このことから、難燃性を有し(火炎に対し耐久性を有する)融点が高い(スパッタなどに火花によって穴が開きにくい)樹脂チューブとして難燃性ポリエステルエラストマー樹脂チューブが挙げられる。(例えば特許文献1)
【0003】
しかしながら、前記難燃性ポリエステルエラストマー樹脂チューブは、比較的硬質な樹脂であり、チューブの柔軟性を向上させる為に樹脂に配合する柔軟材の量を増やすと、樹脂の融点が下がりスパッタにより溶融しやすくなると共に摩耗しやすくなる、という問題があった。
【特許文献1】特開2002−267055
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明は、スパッタや火花が飛び散る環境で柔軟性を要求される箇所に使用可能な複層樹脂チューブを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1記載の発明)
この複層樹脂チューブは、外層に難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用い、内層に外層よりも柔軟な樹脂を用いたことを特徴とする。
このような構成であると、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂の長所である難燃性を保ちつつ、短所である柔軟性を内層の樹脂により克服することが可能である。
柔軟性を有する樹脂として、ポリウレタンエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
また、このような構成の複層樹脂チューブは、当業者が全く予想し得ないことに、単層の難燃性ポリエステルエラストマー樹脂チューブよりも耐摩耗性が向上した樹脂チューブとなった。
【0006】
(請求項2記載の発明)
この複層樹脂チューブは、請求項1記載の発明に関し、外層に難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用い、内層にポリウレタンエラストマー樹脂を用いたことを特徴とする。
このような構成であると、難燃性試験UL94に準じた試験の実施において、V0相当の性能を有する複層樹脂チューブとなる。
スパッタ又は火炎が発生する装置などに使用する複層樹脂チューブとするには、難燃性試験UL94の実施において、V0相当の性能を有する必要がある。
ポリウレタンエラストマー樹脂には、耐水性のあるエーテル系ポリウレタンエラストマーを用いるのが好ましい。
【0007】
(請求項3記載の発明)
この複層樹脂チューブは、請求項2記載の発明に関し、内層に用いた樹脂が、難燃剤を含有しないことを特徴とする。
ポリウレタンエラストマー樹脂は燃え易い樹脂であるが、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂と組み合わせたことによって、難燃剤を混合しないポリウレタンエラストマー樹脂が内層のチューブであっても、難燃剤を混合したポリウレタンエラストマー樹脂が内層のチューブと同等の難燃性能であった。このような結果は、当業者が全く予想しないものであった。
これによって、高価な難燃剤を内層樹脂に使用する必要が無いことから、複層樹脂チューブの製造コストを削減することができる。
【0008】
(請求項4記載の発明)
この複層樹脂チューブは、請求項2記載の発明に関し、内層に用いた樹脂が、難燃剤を含有することを特徴とする。
内層の樹脂に、難燃剤を含有するポリウレタンエラストマー樹脂を用いてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この複層樹脂チューブは、スパッタや火花が飛び散る環境で柔軟性を要求される箇所に使用可能な複層樹脂チューブとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、この発明の複層樹脂チューブの実施形態を、実施例として各図と共に説明する。
【実施例】
【0011】
図1は実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1の全体図である。
(1.複層樹脂チューブ1の基本的構成について)
この複層樹脂チューブ1は図1に示すように、外層2と、内層3の二層構造である。外層2と内層3は強固に接着したものである。
必要であれば、外層2の外側や、内層3の流路4側や、外層2と内層3の間にさらに層を設けることができる。
複層樹脂チューブ1の外径(図1のr×2)は4〜20mmとするのが好ましい。
複層樹脂チューブ1の内径(図1のr×2)は2〜15mmとするのが好ましい。
外層2と内層3の厚みの比率は、
〔内層3厚み(図1のr−r1)〕:〔外層2厚み(図1のr−r)〕=10〜1:1
とすることができる。4〜3:1とするのが好ましい。
【0012】
(2.外層2の材料について)
外層2には難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用いることができる。ポリエステルポリエーテルブロックコポリマーを主成分とし、臭素化ポリマー、三酸化アンチモンを配合成分とすることによって、融点200℃〜217℃、引火点300℃以上、発火点400℃以上の難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用いるのが好ましい。
具体的には、東洋紡績株式会社のペルプレン(登録商標)を用いた。前記ペルプレンとして、P−50DFR、P−70BF2、P150BF2、P−150BFRを使用することができる。
【0013】
(3.内層3の材料について)
内層3には柔軟性及び耐水性を有する樹脂を用いた。柔軟性及び耐水性を有する樹脂として、ポリウレタンエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、ポリオレフィン樹脂などを用いることができる。外層2に柔軟性を与える効果が大きく、接着性が良好であるポリウレタンエラストマー樹脂を内層3に用いるのが好ましい。
ポリウレタンエラストマー樹脂として、エステル系ポリウレタンエラストマー樹脂、エーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂等が挙げられる。前述のポリウレタンエラストマー樹脂の中でも、加水分解に耐性がある、エーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂を用いるのが好ましい。
【0014】
(下記実施例1における難燃性エーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂)
実施例における難燃性エーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂とは、エーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂70〜80%、三酸化アンチモン5〜10%、ハロゲン含有有機化合物10〜20%、としたものである。
具体的には、BASFジャパン株式会社製の商品名「エラストラン(登録商標) 1190A10FD1」を用いた。
【0015】
(下記実施例2における難燃剤を含有しないエーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂)
難燃剤を含有しないエーテル系ポリウレタンエラストマー樹脂として、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名「ミラクトラン(登録商標) E394POTA」を用いた。
難燃剤であるハロゲン含有有機化合物は高価なものであり、難燃剤が混入されていない樹脂は比較的安価である。
【0016】
(4.外層2と内層3の一体化について)
外層2と内層3の一体化は、境界面で分離しない程度に熱可塑性合成樹脂の2つの異なる層を互いに溶融接着させるのに適した方法でなされている。
したがって、接着剤を使用する必要はなく、溶融した難燃性ポリエステルエラストマー樹脂と溶融したポリウレタンエラストマー樹脂とを別々に押出ヘッドに供給し、一方がまだ溶融している間に他方の上に押出すれば、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂とポリウレタンエラストマー樹脂とは一体化する。
前記溶融接着には、樹脂同士の相性が存在し、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂と、難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂またはポリウレタンエラストマー樹脂とは非常に相性が良く、強い接着力で一体化させることができる。
このような相性の良さは、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂、難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂、ポリウレタンエラストマー樹脂が組成の中に共通する材料を有していることに起因する。
【0017】
(5.実施例記載の複層樹脂チューブ1の特性について)
上述の実施例の複層樹脂チューブ1が有する特性を確かめる実験を行った。
【0018】
(5−1.各種チューブについて)
上述の実施例に基づき、二種類の複層樹脂チューブ1を作成し、二種の比較例となる樹脂チューブを準備した。各種チューブの外径(図1のr×2)は10mmとし、内径(図1のr×2)は6.5mmとした。
【0019】
〔実施例1〕
実施例1の複層樹脂チューブ1は、外層2と内層3を以下のように設定した。
外層2の材質は、東洋紡績株式会社のペルプレン(登録商標)のP50DFRを使用し、外層2の厚み(図1のr-r)は0.4mmとした。
内層3の材質は、BASFジャパン株式会社製のエラストラン(登録商標)1190A10FD1を使用し、内層3の厚み(図1のr-r)は1.35mmとした。
【0020】
〔実施例2〕
実施例2の複層樹脂チューブ1は、外層2と内層3を以下のように設定した。
外層2の材質は、東洋紡績株式会社のペルプレン(登録商標)のP50DFRを使用し、外層2の厚み(図1のr-r)は0.4mmとした。
内層3の材質は、日本ポリウレタン工業株式会社製のミラクトラン(登録商標)E394POTAを使用し、内層3の厚み(図1のr-r)は1.35mmとした。
【0021】
〔比較例1〕
比較例1として、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を材料とした単層樹脂チューブを用いた。難燃性ポリエステルエラストマー樹脂として、東洋紡績株式会社のペルプレン(登録商標)のP50DFRを使用した。
【0022】
〔比較例2〕
比較例2として、難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂を材料とした単層樹脂チューブを用いた。難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂として、BASFジャパン株式会社製のエラストラン(登録商標)1190A10FD1を使用した。
【0023】
(5−2.難燃性試験)
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1について、難燃性試験UL94に準じた実験を実施した。
図2は難燃性試験の全体図である。
比較例1及び比較例2に関しては、単層であることから、難燃性試験UL94の試験方法通りの実験を実施した。即ち、比較例1及び比較例2は、チューブではなく試験片を用いて難燃性試験を行った。
【0024】
〔実施例1及び実施例2の試験方法〕
複層樹脂チューブ1を全長(図1のL)127mm、外径(図1のr×2)10mm、のサンプル試験片とした。各種サンプル試験片を水平に保ち、中央部を10秒間炎に接した後、残炎時間tを測定した。残炎が止まった後、再度同じ箇所を10秒間炎に接し、残炎時間tおよび残炎が止まった後の残燼時間tを測定した。
水平方向のt、t、tの値を得た後、同様に鉛直方向の試験も行った。
【0025】
〔難燃性試験UL94に準じた実験について〕
難燃性の目安となるUL94は、以下のようなものである。
参考ホームページ
http://homepage3.nifty.com/tsato/terms/flammability.html
(UL94について)
材料の難燃性の尺度としてはUL94によるものが広く用いられており、その等級はUL94V-0、94V-0、あるいは単にV−0のように呼ばれる。この難燃性の判定は、規定された寸法の試験片にガスバーナーの炎を当てて試験片の燃焼の程度を調べる燃焼試験によって行なわれる。
UL94に基づく一般的な材料の難燃性の等級としては、難燃性の高いものから順に、5VA、5VB、V−0、V−1、V−2、そしてHBがある。
(水平燃焼試験)
試料を片端で固定して水平に保持し、その自由な端に30秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。炎を離した後に試料が燃焼を続けたならば、その燃焼の速度を測定する。
(垂直燃焼試験)
垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。燃焼が30秒以内に止まったならば、さらに10秒間接炎させる。
(V−0について)
1.いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない。
2.5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない
3.固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
4.試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない。
5.2回目の接炎の後、30秒以上赤熱を続ける試料がない。
(本願実施例の試験と通常のUL94試験との差異)
本願は樹脂チューブの形状において、接炎試験を行ったため、通常のUL94試験に使用される試験片とは異なる態様で試験を行った。
樹脂チューブに関し、「V−0相当」という記載は、「試験片をチューブ形状とした場合に、V−0の結果が得られた」という意味である。
【0026】
〔試験結果〕
水平方向及び垂直方向について得られた試験結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上述の結果から実施例1は、炎に触れたとしても、燃えないものであることがわかる。実施例1及び実施例2は、UL94試験における、V−0相当、の難燃性能であった。
この結果から、実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1は、スパッタ又は火炎が発生する装置に取り付けられる難燃性を有する(即ち、火災発生等の恐れがない)樹脂チューブであることがわかる。
【0029】
上述の難燃性能は、一般的に難燃性能が高いと理解されている難燃性ポリエステルエラストマー樹脂と同等のものである。一方、難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂は、難燃剤を加えることによってV−0の難燃性を有したとしても、融点の低さからスパッタ、火花などにより表面が溶けて穴が空くという問題がある。
【0030】
また、実施例2記載の複層樹脂チューブ1は難燃剤を含有するポリウレタンエラストマー樹脂を用いていないにもかかわらず、実施例1記載の複層樹脂チューブ1と同等の性能であった。
難燃剤は高価なものであるため、実施例2記載の複層樹脂チューブであると、大幅なコストダウンが可能となる。
【0031】
(5−3.接着性試験)
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1について、接着性試験を実施した。
【0032】
〔試験方法〕
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1を、それぞれチューブ長さLを150mmで切り取り、切り取ったチューブを長手方向に切り、長さ150mmの半月状チューブを得た。前記半月状チューブ端部の内層2と外層3をそれぞれ固定し、引張試験機にて20mm/minの引張速度でT字剥離を行った。
【0033】
〔試験結果〕
T字剥離を行った結果、実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1は両方とも、外層2と内層3との界面で剥離した。
チューブ前記T字剥離の試験結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
複層樹脂チューブは一般的に、層同士の剥離力が10N/cm以上であれば良いとされている。実施例1及び実施例2記載の複層樹脂チューブ1においては、剥離力(剥離強度)が50〜55N/cmという極めて優れた結果を得ることができた。
【0036】
(5−4.柔軟性及びキンク試験)
次に各複層樹脂チューブについて、柔軟性及びキンク試験を行った。
【0037】
〔試験方法〕
チューブ長さLを500mmとし、一定の速度でゆっくりと移動させてチューブを両側から折り曲げた際の「チューブ曲げ内側半径(曲げR)」と「応力」を測定した。
また、チューブがキンク(折れる)寸前の、「チューブ曲げ内側半径(キンク半径R)」を測定した。
室温は20℃であった。
【0038】
〔試験結果〕
柔軟性試験の結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
測定の結果、曲げRが40mmの時、実施例1の曲げ応力は6.6(N)、実施例2の曲げ応力は7.9(N)、比較例1の曲げ応力は15.5(N)、比較例2の曲げ応力は7.6(N)となった。すなわち、実施例1及び実施例2記載の複層樹脂チューブ1は、外層2が硬質とされる比較例1の難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用いたとしても、柔軟性能の高い比較例2の難燃性ポリウレタンエラストマー樹脂チューブと同等もしくはそれ以上の柔軟性を示した。
次に、キンク半径は表4に示す結果となった。
【0041】
【表4】

【0042】
このことから、実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1は、柔軟性を有する比較例2のポリウレタンエラストマー樹脂チューブと同等以上の柔軟性とキンク半径を有することがわかった。
そして、実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1は、曲げ応力及びキンク半径が、外層2の厚みと内層3の厚みに依存する。したがって、必要に応じて、厚みを変更し、最適化な柔軟性を有する複層樹脂チューブ1とすることができる。
【0043】
(5−5.耐摩耗性試験)
各種樹脂チューブについて、耐摩耗性試験を行った。
図3は耐摩耗試験の全体図である。
【0044】
〔試験方法〕
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブについての対摩耗性試験は後述の方法で行った。図3に示す耐摩耗性試験装置の回転円盤の上部の支持具(図示せず)に各試料チューブの上端を固定し、下端に500gの重りを吊るした。前記回転円盤は60rpmの一定速度で回転しており、回転円盤の円周には11本の回転摩耗チューブ(各試料チューブと同材質)が等間隔に固定されている。回転させた前記回転摩耗チューブに試料チューブの外表面を接触させ、2000回、4000回、6000回の回数を回転させた後、試料チューブの摩耗量を測定した。
すなわち、この測定によって、複数本のチューブを束ねて使用し、それらのチューブ同士が擦れ合った時の耐久性が確認できる。
実施例1及び実施例2の双方共、同等の結果となった為、表5には合わせて記載した。
【0045】
〔試験結果〕
耐摩耗試験の結果を表5に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1の外層3は、500g重の荷重状況において、66000回(11本×6000回)チューブ同士が擦れあったとしても、樹脂の摩耗量が0.01g未満とすることができる。
実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブの外層3は、表5に示す通り、摩耗機にかけたとしても、摩耗により磨り減った樹脂の量が比較例1及び比較例2記載のチューブよりも極めて少ないものであった。
【0048】
そして、この結果は、当業者の予想を上回ることに、一般的に摩耗に強いと理解されている、比較例1の難燃性ポリエステルエラストマー樹脂の性能を上回るものであった。
即ち、実施例1及び実施例2記載の複層樹脂チューブ1は、外層2と内層3の相乗作用によって、耐摩耗性能が向上したものである。
このような効果は、難燃性ポリエステルエラストマー樹脂の単層チューブ同士であると、剛性が高く、摩耗し易く、実施例1及び実施例2記載のチューブにおいては、内層3を有していることから、剛性が下がり、撓り合う態様によって摩耗量が減少したと推測される。
【0049】
(5−6.破壊圧力試験)
〔試験方法〕
実施例1及び実施例2、比較例1及び比較例2の四種それぞれのチューブを、長さLを150mmとして切り取り、20℃の水温中に5分浸漬させ、切り取ったチューブの一端に封をし、もう一端から、昇圧速度0.12MPa/secで流体を流入させ、チューブの内圧を昇圧させることによって破壊した。
【0050】
〔試験結果〕
破壊圧力試験の試験結果を表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
実施例1及び実施例2の破壊圧力は3MPa前後であり、比較例2のチューブよりも若干劣る性能であったが、利用可能な目標数値を上回るものであった。
【0053】
(6.総合結果)
前述の実験結果から、下記表7と図4を得た。
図4は実施例1及び実施例2と比較例1及び比較例2の性能を示すレーダーチャートである。
【0054】
【表7】

【0055】
表7に示す通り、難燃性、柔軟性、耐摩耗性の条件を満たし、構造上からも耐水性を有する複層樹脂チューブ1を得ることができた。
図4のレーダーチャートを参照にすると、チューブ性能にバラつきがなく、面積が大きいものとなり、実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1は総合的に高性能な樹脂チューブであることがわかる。
このような樹脂チューブであると、ガス、エアー、水、油などの流体を流すことができ、火花が飛び散る箇所や柔軟性を要求される箇所にも使用することができる。このことから、産業用ロボットなど多くの配管用途に使用することができる複層樹脂チューブとなる。
【0056】
(7.その他の実施例)
実施例1及び実施例2記載の複層樹脂チューブ1は、外層2の外面及び内層3の内面に、性能を損なわない範囲内で、その他の層を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1及び実施例2の複層樹脂チューブ1の全体図である。
【図2】難燃性試験の全体図である。
【図3】耐摩耗試験の全体図である。
【図4】実施例1及び実施例2と比較例1及び比較例2の性能を示すレーダーチャート。
【符号の説明】
【0058】
1 複層樹脂チューブ
2 外層
3 内層
4 流路
L チューブ長さ
r 半径


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層に難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用い、内層に外層よりも柔軟な樹脂を用いたことを特徴とする複層樹脂チューブ。
【請求項2】
外層に難燃性ポリエステルエラストマー樹脂を用い、内層にポリウレタンエラストマー樹脂を用いたことを特徴とする請求項1記載の複層樹脂チューブ。
【請求項3】
内層に用いた樹脂が、難燃剤を含有しないことを特徴とする請求項2記載の複層樹脂チューブ。
【請求項4】
内層に用いた樹脂が、難燃剤を含有することを特徴とする請求項2記載の複層樹脂チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−19400(P2010−19400A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182805(P2008−182805)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000247258)ニッタ・ムアー株式会社 (61)
【Fターム(参考)】