説明

複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置

【課題】数値制御装置の内部情報と複数のセンサ信号とを用い、より確実に機械の異常を判定することが可能な異常判定を行う機能を備えた数値制御装置を提供すること。
【解決手段】機械30の各部に配置された複数のセンサにより検知された振動センサからの信号、温度センサからの信号、および湿度センサからの信号は、センサ信号受信回路24に入力すし、AD変換回路23によりアナログ信号をデジタル信号に変換後、ピークホールド回路22、通信回路21を介して数値制御装置10に入力する。数値制御装置10のマイクロプロセッサ14は、複数のセンサ情報(振動情報、温度情報、湿度情報)と、数値制御装置内部情報15aを取り込み、異常判定処理、異常通知処理、異常状態を数値制御装置10が備えた表示装置に表示したり、機械30を停止するためのラダー出力や、異常状態の判断結果を数値制御装置10のメモリに格納する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械を制御する数値制御装置に関し、特に、機械の各部の状態を監視する複数のセンサからの信号を監視する手段を備えた数値制御装置において、前記複数のセンサから得られた検出情報と数値制御装置の内部情報とに基づいて、機械の各部や数値制御装置の状態の異常判定を行うことが可能な数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸やロボットのアームなどでは、プログラムミスやオペレータの操作ミスなどによって、主軸などが他の物体と衝突して想定外の衝突をすることがある。このような衝突が起こると、主軸やロボットアームなどにおいて主軸やロボットアームの構造自体やそれを駆動するためのモータに故障が発生する。こうした故障は加工精度や動作精度などに影響を与えることから、衝突が発生したときには工作機械やロボットの動作を停止させ、点検することが望ましい。例えば、特許文献1には、衝突の原因を特定するために、振動センサの検出信号が大きくなったときに、数値制御装置内部の速度や位置の情報を併せて記録する技術が開示されている。
【0003】
また、従来は、湿度が高くなる夏場や梅雨時期では、気温が低くなる朝の機械の電源投入時にアラームが発生する場合などは、結露に起因する異常が発生したのではないかと、経験的に判断することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−176559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術で説明した特許文献1に開示される技術は、複数の振動センサを機械に設置し、それらの振動センサからの検出信号の差分が予め設定された閾値を超える場合に、衝突が発生したと判定するようにした技術であって、複数のセンサから得られた検知情報と数値制御装置の内部情報とを結び付けて機械系の異常の判定を行うものではない。つまり、機械における衝突の事実は検知できても、アラームの発生原因までは特定できない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、数値制御装置の内部情報と複数のセンサから得られる検知情報とを用い、より確実に機械の異常を判定することが可能な、複数のセンサから得られる検知情報に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、機械を制御する数値制御装置において、前記機械の各部に設置し該機械の各部の状態を監視する複数のセンサと、該複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサから得られる検知情報と前記数値制御装置の内部情報とを用いて該機械に異常があるか否かを判定する異常判定部と、を備えたことを特徴とする複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記複数のセンサは、振動センサ、温度センサ、および湿度センサであり、異常判定に用いる前記内部情報は、主軸および送り軸の負荷情報、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報のうち少なくとも1つの情報であることを特徴とする請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記センサは、温度センサおよび湿度センサ、または絶対湿度センサであり、該温度センサと該湿度センサとを互いに近接して、または該絶対湿度センサを機械の各部に設置し、前記内部情報は、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報であり、前記異常判定部は、前記温度センサから得られる検知温度情報、前記湿度センサから得られる検知湿度情報、および、温度と飽和水蒸気量の関係式を用い、または前記絶対湿度センサから得られる絶対湿度情報を用い、前記機械の電源切断時と電源投入時とにおける空気中の単位体積当りの水蒸気量の差分を差分水蒸気量として求め、該差分水蒸気量に基づいて前記機械の電源投入時の結露発生の有無を推定する結露発生推定手段を備え、前記モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは前記数値制御装置のアラーム情報が発生した時に、前記結露発生推定手段により結露発生が推定された場合には、前記機械の前記温度センサおよび前記湿度センサ、または絶対湿度センサが配置された部位に異常があると判定し、結露をアラーム情報の発生原因の候補とすることを特徴する請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記複数のセンサは、複数の振動センサであり、前記内部情報は、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報であり、前記異常判定部は、前記モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは前記数値制御装置のアラーム情報が発生した時に、前記複数の振動センサから得られる検知振動情報と前記アラーム情報に基づいて、前記アラーム情報発生時に振動による電気信号接続ケーブルの接触不良が発生し易い状況であったか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、数値制御装置の内部情報と複数のセンサから得られる検知情報とを用い、複数のセンサから得られた検出情報と数値制御装置の内部情報とを対応づけることで、より確実に機械の異常を判定することが可能な、複数のセンサから得られる検知情報に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である機械の各部に設置された複数のセンサからの検出信号に基づいて機械の異常判定を行う数値制御装置を説明する図である。
【図2】図1において数値制御装置の内部情報が、主軸および送り軸の負荷情報、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報のいずれか1つである場合を説明する図である。
【図3】本発明において結露発生を推定する場合の実施形態を説明する図である。
【図4】気温と飽和水蒸気量の関係を説明する図である。
【図5】本発明において振動センサから得られる検出振動値と数値制御装置の内部情報とに基づいて振動による電気信号接続ケーブルの接触不良が発生し易い状況であったかどうかを判定する実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図において、同じ構成要素または類似する構成要素については同じ符号を用いて説明している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態である機械の各部に設置された複数のセンサからの検出信号に基づいて機械の異常判定を行う数値制御装置を説明する図である。機械30のコラム31やテーブル32などの複数箇所に、センサ33(1),33(2),33(3),34(4)・・・を配置する。センサとしては、振動センサ、温度センサ、湿度センサの物理量を測定するセンサである。機械30の1つ1つの部位には、前記物理量を測定する複数種類のセンサを組に配置してもよい。また、それぞれの部位に異なる物理量を測定するセンサを配置してもよい。
【0015】
機械30の各部に配置された複数のセンサにより検知された物理量に関連する振動センサからの信号、温度センサからの信号、および湿度センサからの信号は、センサ信号中継装置20のセンサ信号受信回路24に入力する。各センサからの検出信号はアナログ信号であるので、AD変換回路23によりアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換されたセンサ検出信号は、ピークホールド回路22、通信回路21を介して数値制御装置10に入力する。ピークホールド回路22は、振動センサからの信号は変動が激しいことから振動センサから得られる振動のピーク値を保持するために用いられる。
【0016】
数値制御装置10はマイクロプロセッサ14を備えており、マイクロプロセッサ14は、通信回路11を介して取り込まれた複数のセンサ情報(振動情報、温度情報、湿度情報)と、数値制御装置内部情報15aを取り込み、複数のセンサ情報12と数値制御装置内部情報15aにより、異常判定処理、異常通知処理、異常状態を数値制御装置10が備えた表示装置に表示したり、機械30を停止するためのラダー出力や、異常状態の判断結果を数値制御装置10のメモリに格納する処理を行う。数値制御装置内部情報15aは、主軸や送り軸の速度情報、主軸や送り軸の位置情報、時刻情報、あるいは実行プログラム情報である。
【0017】
図2は、数値制御装置内部情報15bが、主軸や送り軸の負荷情報、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報のいずれか1つである場合を説明する図である。機械30の各部に配置される複数のセンサは、振動センサ、温度センサ、湿度センサである。それぞれのセンサで検出された物理量の検出信号は、センサ信号中継装置20に入力し、図1において説明したのと同様な信号処理を行った後に、数値制御装置10に取り込まれる。
【0018】
数値制御装置10では、センサ信号中継装置20から取り込まれた検出情報のうち、振動センサからの振動情報と温度センサからの温度情報とを用い、一方、数値制御装置10の数値制御装置内部情報15bは、主軸の負荷情報と送り軸の負荷情報である。主軸に取り付けられた工具によってワーク(図示せず)を切削する場合、切削異常が発生し、機械30に振動が発生したり、発熱が発生したりしたことを振動センサや温度センサにより検出することができる。振動センサや温度センサで検出された検出信号はセンサ信号中継装置20を介して数値制御装置10に取り込まれる。
【0019】
数値制御装置10のマイクロプロセッサ14は、通信回路11を介して取り込まれた振動情報と温度情報、一方、数値制御装置内部情報15bの主軸の負荷情報や送り軸の負荷情報を取り込み、主軸の切削負荷異常検出結果を通知する。例えば、通知先は、数値制御装置10に付属する表示装置(図示せず)に切削負荷異常の表示を行う。
【0020】
ところで、数値制御装置10や数値制御装置10が制御する機械30において、結露に起因する様々な異常が発生する可能性がある。例えば、機械30の主軸や送り軸を駆動・制御するモータ制御装置は、一般にその各部の電圧や電流を検出するアナログ回路を備えている。
【0021】
このモータ制御装置が備えるアナログ回路用のプリント基板上に結露が発生した場合、結露によってプリント基板表面の絶縁抵抗が大幅に低下する。そうすると、プリント基板表面のリーク電流が大幅に増大して、アナログ回路の信号レベルを狂わせ、アラームの誤検出をするなどの異常発生の原因となる。
【0022】
特に、モータ制御装置の場合、例えば、日中の機械運転中はモータに駆動電力を供給するパワー回路部の発熱により高い周囲温度となる一方で、夜間の電源オフ時にはモータ制御装置の周囲温度が低下して、明け方には、モータ制御装置が設置されている工場内の気温近くまで低下するなど、気温差が大きく結露し易い環境下で使用されることが多い。また、工作機械の場合、加工エリア内で使用されるクーラント液や切削液がミスト状となって機械加工エリア外に浮遊することにより、浮遊するクーラント液や切削液が結露の原因となることもある。
【0023】
図3は、本発明において結露発生を推定することができる本発明の実施形態を説明する図である。機械30の各部に設置した温度センサと湿度センサ(相対湿度センサ)からなるぺアのセンサから得られる温度検出情報と湿度検出情報を用いて、高温時のペアのセンサ周辺の単位体積当たりの水蒸気量を算出し、温度と飽和水蒸気量との関係から、温度が低下した場合に、その時の温度における結露量を推定することで、機械各部の結露の発生可能性を定量的に判定することが可能となり、結露に対する適切な対策を施すことができる。
【0024】
機械30は、主軸モータ、主軸の回転速度を検出する速度センサ、主軸モータを回転させるための電源部や主軸モータ用アンプ、ワークを載置するテーブル、テーブルの移動量を測定するためのスケール、テーブルを移動させるためのサーボアンプと電源部コンバータ、テーブルを移動させるためのサーボアンプの回転位置を検出するためのロータリエンコーダなどを備えている。
【0025】
図3に示されるように、温度センサと湿度センサがペアとして機械30の各部位に取り付けられている。図3では、速度センサのプリアンプ、電源部(コンバータ)、主軸モータ用アンプ、ラダー、信号受信ユニット、リニアスケールのプリアンプ、テーブル駆動用のサーボアンプの電源部(コンバータ)、サーボアンプ、テーブルを移動させるサーボモータの回転位置を検出するロータリエンコーダ、ブレーキの各部に温度センサと湿度センサのペアが取り付けられている。なお、温度センサと湿度センサとを一体構成としたセンサを用いてもよい。
【0026】
機械30の各部に取り付けられた温度センサと湿度センサのペアのセンサからの出力信号はセンサ信号中継装置20を介して数値制御装置10に取り込まれる。数値制御装置10のマイクロプロセッサ14は、温度情報と湿度情報と、数値制御装置内部情報15cの数値制御装置のアラーム情報やモータ駆動装置のアラーム情報とにより、温度センサと湿度センサのペアが取り付けられた付近の結露量の算出を行う。算出された結露量に基づいて、結露し易い状況であったか否かを数値制御装置に付属する表示装置に表示する。
【0027】
例えば、主軸の速度センサ信号異常に関連するアラームが発生した際に、温度センサと湿度センサの検出情報から、速度センサ信号を増幅するプリアンプ付近の結露の発生可能性が大きい場合は、結露による可能性が高いと判断して、その旨を数値制御装置10の画面表示などに通知することができる。
【0028】
同様に、送り軸のサーボ関係では、別置スケール信号のプリアンプ、信号受信ユニット、サーボアンプ用アンプ(インバータ)、サーボアンプ用電源(インバータ)、モータのエンコーダ付近に、それぞれ温度センサと湿度センサのペアを配置して、どの軸のどの機器で結露が発生した場合にも、これを特定することができる。
【0029】
また、図3に示されるように、ラダーやブレーキにも、温度センサと湿度センサのペアを配置して、結露によりラダー動作に異常が発生したブレーキが異常状態となった結果、送り軸の動作が異常となり、サーボ関係のアラームが発生するような場合にも対応できる。
【0030】
次に、図4を用いて、気温と飽和水蒸気量の関係を説明する。空気が含むことができる水蒸気の量には限度がある。その限度まで水蒸気を含む状態を飽和状態という。そのときの水蒸気量を飽和水蒸気量といい、1立方メートルの空気に何グラムの水蒸気が含まれるかで表される。
【0031】
図4に示されるように、空気の温度(気温)が高いほど飽和水蒸気量は大きい。そこで、水蒸気を含む空気が冷やされると、気温が高いうちはすべて水蒸気のままで存在する。しかし、気温が更に低下しその空気が含んでいる水蒸気が飽和に達すると、水蒸気は凝結をはじめて、ものの表面に水滴としてつくようになる。この水滴ができはじめる気温を露点という。
【0032】
湿度は数1式によって算出できる。
【0033】
【数1】

【0034】
数1式を変形し数2式を得る。
【0035】
【数2】

【0036】
図4において温度THは、高温時(機械の電源切断時)を意味する。この高温(温度TH)時での水蒸気量を求める。水蒸気量は、温度センサからの温度情報、湿度センサからの湿度情報、および飽和水蒸気量の関係から、温度THにおける単位体積当たりの水蒸気量を数2式により算出する。
【0037】
一日の作業が終了し機械30などの工作機械を停止し、例えば、翌朝での機械の電源投入時の温度情報と湿度情報と飽和水蒸気量とから低温(温度TL)時における単位体積当たりの水蒸気量を数2式により算出する。高温(温度TH)時と低温(温度TL)時とでの水蒸気量の差(差分水蒸気量)が、結露したと推定される。なお、夜間に、翌朝の機械の再稼働時の低温(温度TL)よりも気温は更に低温になることも考えられる。この場合にも、低温(温度TL)時の温度情報と湿度情報と飽和水蒸気量との関係から結露した量を推定できる。
一般に、湿度センサには、飽和水蒸気量に対する空気中の水蒸気量を%で示した相対湿度(%)の情報を出力する相対湿度センサと、1立方メートルの空気中に含まれる水蒸気量をグラムで示した絶対湿度(g/m3)の情報を出力する絶対湿度センサの2つのタイプがある。絶対湿度センサを用いる場合には、機械の電源切断時に絶対湿度(g/m3)を求め、機械の電源投入時に絶対湿度(g/m3)を求め、両絶対湿度の差から差分水蒸気量を得ることができ、結露量を推定することができる。
相対湿度センサあるいは絶対湿度センサを用いて結露量を推定しても、推定した水蒸気量が全て結露したと扱うことも可能であるが、前記相対湿度センサや前記相対湿度センサを取り付ける機械の部位あるいは機械が設置されている工場の環境条件によって異なるので、予め換算係数を求めておき、該換算係数を用いてより正確に結露量を推定してもよい。
【0038】
機械30の各部での結露した水の量を推定できるので、様々な工場の環境に設置される機械30の環境条件を把握することが可能となり、結露の発生予防の必要な箇所を特定することができる。結露の量が多い機械30の部位には予め防水手段を付加するなどの対策を講じることができる。
【0039】
図5は、本発明において振動センサから得られる検出振動値と数値制御装置の内部情報とに基づいて振動による電気信号接続ケーブルの接触不良が発生し易い状況であったかどうかを判定する実施形態を説明する図である。
【0040】
数値制御装置10、および数値制御装置10により制御される機械30においては、振動に起因する様々な異常が発生する可能性が考えられる。例えば、モータ駆動装置のモータの回転位置信号を受信する受信回路が、許容レベルを上回る振動を受けた場合には、受信回路のコネクタの接続が緩み接触不良が発生し、正しいモータの回転位置データを受信できなくなり、モータ駆動装置のアラームが発生する。
【0041】
検出振動情報を求める本発明の実施形態では、受信回路が受ける振動の大きさを、機械各部に設置された複数の振動センサにより検出した信号によって正確に把握する。受信回路が受ける振動の大きさが、該受信回路が耐えることができる許容範囲を超えており、且つ、モータの回転位置データが正しく受信できないことに起因するモータ駆動装置のアラームが発生した場合に、該受信回路にコネクタの接続の緩みなどの振動に起因する異常が発生したと判定することができる。
【0042】
また、数値制御装置10においては、メカニカルな機械接点を持つリレーにより制御された信号が、制御信号として使用されている場合があるが、リレーが許容レベルを上回る振動を受けた場合に、リレー接点の接触が一瞬離れて接触不良が発生し、制御信号に割れが生じて数値制御装置10のアラームが発生する。この場合にも、機械各部に設置された複数の振動センサからの情報により、許容レベルを大きく上回る振動を該リレーが受けて異常が発生したことを判定することができる。
【0043】
このように、予め判定に使用する振動センサを、振動に起因する異常が発生する可能性がある部位に複数配置しておき、数値制御装置10には予め各振動センサ毎に、配置された位置での許容振動レベルを設定しておけば、振動による異常を特定することができる。
【0044】
なお、振動に起因する機械の異常は、振動を受ける信号や機械の部位によって発生するアラームも様々であり、従来はアラームの発生原因を特定することが困難であった。本実施形態により、機械のどの部位がどのレベルの振動を受けているかを定量的に判断して異常を判定することができるので、アラーム発生原因の特定が容易になり、機械の稼働時間向上に寄与する。
【0045】
図5に示されるように、機械30の内部および機械強電盤内での振動の発生により誤動作の可能性が考えられる機器、主に、信号線のコネクタ接続部、リレーなどのメカニカルな接点による切り替え回路を含む電気回路を有する機器の近傍に振動センサが配置される。
【0046】
図5では、主軸に関連する部位として、速度センサ信号のプリアンプ、主軸モータ用アンプ(インバータ)、主軸アンプ電源部(コンバータ)付近に、それぞれ振動センサを配置しているのは、これらの機器間で信号を接続するためのコネクタによる接続があるためである。
【0047】
送り軸に関連する部位として、スケール信号のプリアンプ、信号受信ユニット、サーボモータ用アンプ(インバータ)、サーボアンプ用電源部(コンバータ)、モータのエンコーダ付近に、それぞれ振動センサを配置しているのも、これらの機器間で信号線のコネクタ接続が存在するためであり、どの機器で振動が発生したとしても、振動発生を特定することができる。
【0048】
例えば、スケール信号の異常に関連するアラームが発生した際に、振動センサからの情報から、スケール信号の受信ユニット付近の振動が許容値を超えて大きい場合には、振動による接触不良が発生した可能性が高いと判断して、その旨を数値制御装置10内の画面表示などで通知することができる。
【0049】
また、図5では、ラダーやブレーキにも振動センサを配置して、振動によりラダーのブレーキ制御信号の接続に接触不良が発生してブレーキが異常状態となった結果、送り軸の動作が異常となりサーボ関係のアラームが発生するような場合にも対応できる。
【符号の説明】
【0050】
10 数値制御装置
11 通信回路
14 マイクロプロセッサ
20 センサ信号中継装置
21 通信回路
22 ピークホールド回路
23 AD変換回路
24 センサ信号受信回路
30 機械
31 コラム
32 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械を制御する数値制御装置において、
前記機械の各部に設置し該機械の各部の状態を監視する複数のセンサと、
該複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサから得られる検知情報と前記数値制御装置の内部情報とを用いて該機械に異常があるか否かを判定する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置。
【請求項2】
前記複数のセンサは、振動センサ、温度センサ、および湿度センサであり、
異常判定に用いる前記内部情報は、主軸および送り軸の負荷情報、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報のうち少なくとも1つの情報であることを特徴とする請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置。
【請求項3】
前記センサは、温度センサおよび湿度センサ、または絶対湿度センサであり、
該温度センサと該湿度センサとを互いに近接して、または該絶対湿度センサを機械の各部に設置し、
前記内部情報は、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報であり、
前記異常判定部は、
前記温度センサから得られる検知温度情報、前記湿度センサから得られる検知湿度情報、および、温度と飽和水蒸気量の関係式を用い、または前記絶対湿度センサから得られる絶対湿度情報を用い、前記機械の電源切断時と電源投入時とにおける空気中の単位体積当りの水蒸気量の差分を差分水蒸気量として求め、該差分水蒸気量に基づいて前記機械の電源投入時の結露発生の有無を推定する結露発生推定手段を備え、
前記モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは前記数値制御装置のアラーム情報が発生した時に、前記結露発生推定手段により結露発生が推定された場合には、前記機械の前記温度センサおよび前記湿度センサ、または絶対湿度センサが配置された部位に異常があると判定し、結露をアラーム情報の発生原因の候補とすることを特徴する請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置。
【請求項4】
前記複数のセンサは、複数の振動センサであり、
前記内部情報は、モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは数値制御装置のアラーム情報であり、
前記異常判定部は、
前記モータ駆動装置のアラーム情報、あるいは前記数値制御装置のアラーム情報が発生した時に、前記複数の振動センサから得られる検知振動情報と前記アラーム情報に基づいて、前記アラーム情報発生時に振動による電気信号接続ケーブルの接触不良が発生し易い状況であったか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の複数のセンサの信号に基づいて機械の異常判定を行う機能を備えた数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−60076(P2011−60076A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210182(P2009−210182)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】