説明

複数の有機EL発光素子を利用した表示装置

【課題】 複数の有機EL素子を用いて形成され、その接合部が視覚的に認識されないような構造を有する大型有機ELディスプレイパネルの提供。
【解決手段】 複数種の副画素から形成される画素、および複数種の副画素の間および画素の周囲に設けられるブラックマトリクスが整列されている色変換フィルタと、複数の有機EL素子とを含み、複数種の副画素は複数種の色変調部から形成され、複数の有機EL素子が貼り合せられて1つの表示素子を形成していることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を用いた表示装置に関するもので、特に複数の有機EL発光素子を用いて、ディスプレイを構成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラー有機ELパネルの実現方法には、3色塗分け法、色変換法(以下、CCM法と称する)、カラーフィルタ法などがある。この方式の中で、CCM法、カラーフィルタ法は、成膜時にメタルマスクを用いる必要が無く、色変換層やカラーフィルタはフォトプロセスでパネル上に作製すればよいため大面積、高精細化に関して有利とされている。(非特許文献1参照)
【0003】
さらに大面積のディスプレイを実現する場合には、従来から複数のパネルを接合して、1つの大型パネルを実現する方式は知られている。(特許文献1および2参照)
【0004】
図2は、複数パネルを接合して大型パネルを実現する従来技術の方法の例を示したもので、4個の小型有機ELパネル5から構成されている。図3に、従来技術のフルカラー実現方法である3色塗り分け法で実現される有機ELパネル5の構造を示す。図3の有機ELパネル5においては、基板52上に複数のスイッチング素子54(TFTなど)が設けられ、複数のスイッチング素子54と1対1に対応する複数の第1電極56が設けられている。複数の第1電極56のそれぞれの上に、有機層からなる赤色発光層58R、緑色発光層58Gおよび青色発光層58Bが設けられ、発光層58のそれぞれは分離壁60によって離隔されている。発光層58および分離壁60の上に一体の構造を有して形成される透明電極62が設けられ、その上に保護層64および表示面を構成する透明シール66(ガラスなど)が形成されている。
【0005】
そのため、複数の有機ELパネル5を用いて大型パネルを実現する際には、それぞれの小型有機ELパネル5の表示面と一体となって、大型パネルの表示面を組み合わせることになる。図2の正面視点から観察する際にはパネルの接合部が認識されないが、斜め視点から観察する際には、小型有機ELパネル5の表示面の歪み、あるいはパネル継ぎ目からの反射などによって接合部が認識される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−43954号公報
【特許文献2】特開2002−372928号公報
【特許文献3】特開平5−134112号公報
【特許文献4】特開平7−218717号公報
【特許文献5】特開平7−306311号公報
【特許文献6】特開平5−119306号公報
【特許文献7】特開平7−104114号公報
【特許文献8】特開平7−48424号公報
【特許文献9】特開平8−279394号公報
【特許文献10】特開平6−300910号公報
【特許文献11】特開平7−128519号公報
【特許文献12】特開平9−330793号公報
【特許文献13】特開平8−27934号公報
【特許文献14】特開平5−36475号公報
【非特許文献1】桜井建弥、「色変換法によるフルカラー有機ELの技術開発状況と展望」、月刊ディスプレイ10月号、59ページ(2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法では、観察する角度によって小型有機ELパネルの接合部が視覚的に認識されてしまうという欠点を有する。より具体的には、図2の正面視点から観察する際にはパネルの接合部が認識されないが、斜め視点から観察する際には、小型有機ELパネル5の表示面の歪み、パネル接合部からの反射、あるいは接合部に隣接する画素の光強度ないし色相の変化などによって接合部が認識される。これは、複数の小型有機ELパネル5を用いて大型パネルを実現する際には、それぞれの小型有機ELパネル5の表示面と一体となって、大型パネルの表示面を形成することに起因する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複数の有機EL素子を用いて大型パネルを形成する際に、その接合部が視覚的に認識されないような構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、複数の有機EL素子を用いて形成される、大型化に適した構造を有する表示装置であって、a)複数種の副画素から形成される画素、および前記複数種の副画素の間および前記画素の周囲に設けられるブラックマトリクスが整列されている色変換フィルタと、b)複数の有機EL素子とを含み、前記複数種の副画素は複数種の色変調部から形成され、前記複数の有機EL素子が貼り合せられて1つの表示素子を形成していることを特徴とする。ここで、前記色変換フィルタは、一体の構造を有してもよい。また、前記有機EL素子の貼り合わせによる接合部が、前記色変換フィルタのブラックマトリクスに相当する位置にある構造を有することが望ましい。さらに、有機EL素子の横方向の接合部端面に反射防止材料を設けてもよい。
【0010】
本発明の表示装置の種々の態様として、1)画素が赤色、青色および緑色の3種の副画素から構成され、前記有機EL素子の横方向の接合部に隣接する副画素が、赤色および青色からなる群から選択される表示色を有する構成;2)有機EL素子の横方向の接合部に隣接する副画素が、その他の副画素よりも小さい寸法を有する構成;または、3)画素が赤色、青色および緑色の3種の副画素から構成され、前記緑色の副画素は前記青色および赤色の副画素よりも小さい寸法を有し、および前記緑色の副画素に隣接するブラックマトリクスの領域に前記有機EL素子の横方向の接合部が配置されている構成を採ることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上に記載した本発明の構成を採ることによって、CCM方式の特徴である色変調部(色変換層および/またはカラーフィルタを含む)をフォトプロセスで大型の1枚基板上に形成して大型の色変換フィルタを作製し、色変換フィルタとは別に、真空成膜プロセスを用いて小型の有機EL素子を大型パネルに必要な複数枚で構成して、それらを重ね合わせることで大型ディスプレイパネルを実現することが可能になる。すなわち、基板の大型化に適応可能なフォトプロセスと、基板の大型化に制限を受ける真空成膜プロセスとを分離して製作することによって、大型のディスプレイパネルを効率よく作製することが可能となる。
【0012】
また、複数の有機EL素子を貼り合わせる際に発生するおそれがある素子の整列の乱れに関して、その接合部に隣接する副画素を適切に選択すること、接合部に隣接する副画素を小型化することによって整列の乱れに対する許容度を向上させることによって、接合部の視覚的認識を防止することが可能となる。また、有機EL素子の接合部に反射防止材料を設けることによっても、接合部の視覚的認識を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の表示装置の一例を図1に示す。図1の構成においては、色変換フィルタ1と、複数の有機EL素子2(図1においては4個の例を示した)とを組み合わせることによって表示装置が構成されている。
【0014】
色変換フィルタ1は、表示装置の表示面に相当する面積において一体として形成されており、および該表示面において複数種の副画素から形成される画素が全面にわたって整列されており、各副画素の間の領域および各画素間の領域にブラックマトリクスが設けられている。図4に示すように、色変換フィルタ1は、透明基板110と、透明基板110上に設けられる複数種の色変調部およびブラックマトリクス130と、色変調部およびブラックマトリクスを覆って形成される保護層140とを含む。色変調部のそれぞれは、カラーフィルタ層122、色変換層124またはカラーフィルタ層122/色変換層124の積層体から構成される。色変調部のそれぞれが副画素120に相当する。図4においては、赤色副画素120R、緑色副画素120G、青色副画素120Bの3色の場合を示したが、2種類または4種類以上の色変調部を用いてもよいことはいうまでもない。また、後述するように、色変換フィルタ1を構成するためのカラーフィルタ層122、色変換層124およびブラックマトリクスのパターニングは一般的な画像様露光−湿式現像の方法を用いて行うことができる。したがって、大型のディスプレイパネルを形成するのに必要な大きさの基板を用いて、比較的簡便な工程によって大型の色変換フィルタ1を形成することが可能である。
【0015】
色変換フィルタ1においては、複数種の副画素120が1つの画素を形成するように配置される。画素は、略正方形の形状を有するように形成されることが好ましい。したがって、各画素中には、略矩形の形状を有する副画素120を整列させることが好ましい。本発明において、「横方向」とは副画素120の矩形形状の短辺の方向を意味し、「縦方向」とは副画素120の矩形形状の長辺の方向を意味する。
【0016】
図4においては、トップエミッション方式のアクティブマトリクス駆動型の有機EL素子の例を示した。複数の有機EL素子2は、基板210上に複数のスイッチング素子220が設けられ、複数のスイッチング素子220に1対1で対応する複数の第1電極230が設けられている。複数の第1電極230の上に有機EL層240が設けられ、その上に一体として形成される第2電極250が形成されている。また、後述するように、本発明における有機EL素子としてパッシブマトリクス駆動型素子を使用することも可能である。また、本発明に用いられる有機EL素子2は、図4に示したような第2電極250側から光を取り出すトップエミッション方式を採用してもよいし、あるいは基板210側から光を取り出すボトムエミッション方式を採用してもよい。ボトムエミッション方式の有機EL素子を用いる場合、有機EL層240などの層を周囲環境から保護するために、色変換フィルタ1への組み合わせの後、色変換フィルタ1周辺部において接着層を用いて接着される封止缶または封止樹脂などを用いて、有機EL素子を周囲環境から隔離することが望ましい。
【0017】
有機EL素子2は、色変換フィルタ1の表示面に相当する面積を形成するのに足る複数枚を準備する。このような構成を採って有機EL素子2を小型化することは、以下の利点を有する。有機EL素子の製作は、真空中での蒸着および/またはスパッタなどの作業を伴うため、真空装置の大きさなどから基板210のサイズに制約がある。有機EL素子2を小型化することによって、そのような制約を回避することができ、また、基板210全面にわたって均一な特性を有する発光部を形成することが容易になるという利点を有するのである。さらに、大きな真空装置の使用を回避できることから、有機EL素子2の製造コストを低減させることも可能となる。一方、色変換フィルタ1については、真空中の操作が不要であるので、上記のような制限がなく大型のものを容易に作製することができる。
【0018】
複数の有機EL素子2を貼り合わせて1つの表示素子とし、さらに1つの色変換フィルタ1と組み合わせることによって、本発明の表示装置を形成することができる。貼り合わせの際に、複数の有機EL素子2を電気的に接続して一体として制御するようにしてもよい。ワイヤボンディングなどの当該技術において知られている任意の方法、あるいはバイアを経由した裏面上での接続などを用いて隣接する2つの有機EL素子を電気的に接続することができる。あるいはまた、それぞれの有機EL素子2を電気的に接続せずに独立的に制御できるようにしてもよい。
【0019】
1つの色変換フィルタ1と複数の有機EL素子2とを組み合わせて形成される本発明の表示装置において、その表示面は、一体に形成される色変換フィルタ1の基板110の表面である。したがって、本発明の表示装置の表示面は、正面視点においても、斜め視点においても、その表示面の歪みによって接合部が視覚的に認識されることはない。
【0020】
図5に、本発明により得られる表示装置(図1中に500として示される接合領域)を色変換フィルタ側から見た上面図を示す。図5においては、4個の有機EL素子2a〜2dが横方向接合部270と縦方向接合部280とにおいて貼り合わせられており、色変換フィルタ1の色変調部に相当する赤色副画素120R、緑色副画素120Gおよび青色副画素120Bが確定されており、3種の副画素が組み合わせられた1つの画素を形成している。副画素が設けられていない部分には、ブラックマトリクス130が設けられている。図5から分かるように、有機EL素子の接合部(横方向接合部270および縦方向接合部280)は、色変換フィルタ1のブラックマトリクス130に相当する位置に配置される。また、4個の有機EL素子2a〜2dのそれぞれに設けられている複数の発光部のそれぞれは、対応する副画素120と同等の寸法を有する。
【0021】
有機EL素子2の貼り合わせにおいては、いくつかの有機EL素子2が所定の位置からずれて貼り合わせられる恐れがある。そのように有機EL素子のずれが発生した場合でも、本発明の表示装置においては、色変換層124における光源からの光の波長分布変換を行う色変換色素からの光の放出が無指向性かつ拡散的であるために、色変換層124の下に発光部が存在しない領域が形成されたとしても、その他の部分から拡散される光によって該領域からも光が放射され、正常な副画素と同様に全面から光が放射され、視覚的に認識可能なほどの光強度および(画素全体としての発光の)色相の変化が発生することがない。また、後述するように本発明の表示装置の青色副画素120Bにおいて色変換層124を用いない場合が可能であるが、その場合でも青色光は肉眼に対する比視感度が低いために、副画素中に発光部が存在しない領域が形成されたとしても、視覚的に認識されるほどの影響を光強度および色相に与えることはない。さらに、本発明の表示装置においては、表示面である基板110の表面に接近して光拡散性の色変換層124が設けられているため、光源が表示面から離れて配置され色変換層を持たない液晶ディスプレイおよびカラーフィルタ方式ELディスプレイに比較して、視野角依存性が低いというさらなる利点がある。
【0022】
本発明の1つの態様において、図5に示すように、横方向接合部270に隣接する副画素は、赤色副画素120Rおよび青色副画素120Bとすることが望ましい。なぜなら、これらの副画素から発せられる赤色光および青色光は肉眼に対する比視感度が低いために、副画素120(RまたはB)と発光部とのずれが発生したとしても、前述の色変換層124の拡散効果とあいまって、接合部が視覚的に認識されることを防止することができる。
【0023】
本発明の別の態様において、図7に示すように横方向接合部270に隣接する副画素を、他の部分の副画素120よりも小さい寸法を有する小型副画素170とすることができる。図7においては、赤色および青色の小型副画素170を設けた場合を示し、および有機EL素子2aの発光部290の内、横方向接合部270に隣接するもののみを示した。小型副画素170は、他の部分の副画素120の面積の40〜75%の面積を有することが望ましい。より好ましくは、小型副画素170は矩形形状を有し、その短辺は他の部分の副画素120の短辺の50〜80%の寸法を有し、その長辺は他の部分の副画素120の長辺の80〜100%の寸法を有することが望ましい。ここで、2色の小型副画素170のそれぞれ(図7においては赤色および青色)は、駆動時にそこから発せられる光の強度とその面積との積が、他の部分の同色の副画素120におけるものと同等になるような電流を流すように作働される。このような小型副画素170を有機EL素子2の接合部(特に横方向接合部270)に隣接して設けることによって、接合部に相当する位置のブラックマトリクスの幅を大きくして、有機EL素子の貼り合わせのずれに対する接合部に隣接する副画素の許容度を大きくすることができる。すなわち、多少のずれが発生したとしても、小型副画素170はその下にある発光部290の領域内となり、小型副画素170から発せられる光強度は影響を受けない。したがって、接合部に隣接する画素全体としても、発せられる光の光強度および色相は影響を受けず、接合部の視覚的な認識を防止することが可能となる。
【0024】
本発明の別の態様において、図6に示すように、色変換フィルタ全体にわたって緑色副画素を小型副画素170Gとし、有機EL素子2の横方向接合部270は、緑色小型副画素170Gに隣接するブラックマトリクスの位置に配置される。図6においては、有機EL素子2aの発光部290の内、横方向接合部270に隣接するもののみを図示した。本態様における小型副画素の寸法は、前述と同様であってもよい。この構成を採ることによって、肉眼に対して比視感度の高い緑色小型副画素170Gに関して、有機EL素子貼り合わせ時のずれに対する緑色副画素の許容度を、接合部に相当する位置のブラックマトリクスの幅の拡大による接合部における向上のみならず、表示装置全体にわたって向上させ、副画素の有効面積が変化しないようにすることができる。もしずれが発生した場合でも、緑色小型副画素170Gから発せられる光の光強度は変化せず、かつ青色副画素120Bまたは赤色副画素120Rが接続部に隣接するが、それらが発する光の比視感度が低いために画素全体としての色相もほとんど影響を受けない。したがって、接合部における光強度および/または色相の変化によって、接合部が視覚的に認識されることはない。
【0025】
本発明の別の態様において、図8に示すように、色変換フィルタ全体にわたって全ての種類の副画素を小型副画素170とする。図8においては、有機EL素子2aの発光部290の内、横方向接合部270に隣接するもののみを図示した。このような構成とすることによって、全種の副画素に関して、有機EL素子貼り合わせ時のずれに対する副画素の許容度を向上させ、副画素の有効面積が変化しないようにすることができる。もしずれが発生した場合でも、それぞれの小型副画素170から発せられる光の光強度は変化せず、したがって画素全体としての色相もほとんど影響を受けない。この効果によって、接合部における光強度および/または色相の変化にる接合部の視覚的認識を防止することができる。
【0026】
上記のいずれの態様においても、色変換フィルタ1に特定の角度を持って入射した外光が有機EL素子2の接合部端面において反射するために、接合部が視覚的に認識される恐れがある。貼り合わせの際に形成される接合部端面における反射を防止するために、図9に示すように、有機EL素子2の接合部端面に反射防止材料を設けることができる。たとえば、反射防止材料としては、可視光の波長領域でガラスの屈折率に近い屈折率を有する紫外線硬化型接着剤、高分子接着剤を用いることができる。用いられるガラスの屈折率は1.5〜1.6程度であり、接着剤としては紫外線硬化型接着剤であるAVR200(スリーボンド社製、屈折率1.56)またはXNR5623(ナガセケムテックス株式会社製、屈折率1.57)を用いることができる。あるいはまた、反射防止材料としてフィルム状樹脂を使用してもよい。用いることができるフィルム樹脂は、その屈折率とガラスの屈折率との差がガラスの屈折率の5%以下であることが好ましい。フィルム状樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、セロハン、ポリエチレンラミネートセロハン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、またはポリカーボネートから作製することができる。
【0027】
以下、本発明の色変換フィルタ1の構造を詳細に示す。透明基板110は、可視光(波長400〜700nm)、好ましくは色変調部120によって変換された光に対して透明であることが必要である。また、透明基板110は、色変調部120および他の必要に応じて設けられる層(後述)の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐えるものであるべきであり、さらに寸法安定性に優れていることが好ましい。透明基板110の材料として好ましいものは、ガラス、ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂を含む。ホウケイ酸ガラスまたは青板ガラス等が特に好ましいものである。
【0028】
色変調部120のそれぞれは、カラーフィルタ層122、色変換層124またはカラーフィルタ層122/色変換層124の積層体から構成される。2種またはそれ以上の種類の色変調部を設けることができるが、好ましくは3種の色変調部、より好ましくは混合により白色を演色できる3種の色変調部、最も好ましくは、赤色変調部120R、緑色変調部120G、青色変調部120Bを設けることが望ましい。
【0029】
色変調部120に用いられるカラーフィルタ層122は、光源として用いる有機EL素子2の有機EL層240を発した光および/または色変換層124で波長分布変換された光の特定の波長域の成分のみを透過させ、色純度の高い出力光を得るための層である。カラーフィルタ層122は、液晶ディスプレイ等、フラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルタ材料を用いて形成することができ、近年はフォトレジストに顔料を分散させた、顔料分散型カラーフィルタ材料が広く用いられてきている。本発明においては、好ましくは、400nm〜550nmの波長を透過する青色カラーフィルタ層122B、500nm〜600nmの波長を透過する緑色カラーフィルタ層122G、600nm以上の波長を透過する赤色カラーフィルタ層122Rを用いることができる。
【0030】
本発明において、色変換層124は、有機EL素子2の有機EL層240を発した光の波長分布変換を行って、所望される波長域の成分を含む光へと変換するための層である。赤色変換層124Rは、近紫外領域ないし可視領域、特には青色ないし青色領域の光を吸収して赤色領域の光に変換するための赤色変換色素を含む。また、緑色変換層124Gは、近紫外領域ないし可視領域、特には青色ないし青色領域の光を吸収して緑色領域の光に変換するための緑色変換色素を含む。さらに、青色変換層124Bは、近紫外領域の光を吸収して青色領域の光に変換するための青色変換色素を含む。これらの色変換層124は、複数種の変換色素を含んでいてもよい。たとえば、赤色変換層124Rが、青色領域の光を緑色領域の光に変換する変換色素および緑色領域の光を赤色領域の光に変換する色素を含んで、全体的な色変換の効率を向上させてもよい。
【0031】
青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の光を発する赤色変換色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−13−ブタジエニル〕−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。
【0032】
青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の光を発する緑色変換色素としては、例えば3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。
【0033】
上記の色変調部120(カラーフィルタ122および色変換層124のそれぞれ)は、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法などを用いて各層の材料を塗布し、続いてフォトリソグラフ法などを用いてパターニングすることによって形成することができる。
【0034】
本発明において、有機EL層240が青色ないし青緑色の光を発し、かつ十分な量の青色領域の成分を含んでいる場合、青色変換層124Bを用いなくてもよい。その場合には、青色フィルタ層122Bを通して色純度を向上させた青色光を発することが可能である。
【0035】
透明基板110の表示領域のうち、色変調部120を形成しなかった部分にはブラックマトリクス130が設けられる。すなわち、各副画素の間の領域および各画素の周囲にブラックマトリクス130が設けられる。ブラックマトリクス130は黒色材料から形成され、表示装置内部への外光入射を制限して、コントラスト比を向上させ、および有機EL素子2の接合部の視覚的認識を防止するのに有効な層である。ブラックマトリクス130は、液晶ディスプレイ等、フラットパネルディスプレイに慣用的に用いられる材料を用いて形成することができる。ブラックマトリクス130は、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法などを用いて各層の材料を塗布し、続いてフォトリソグラフ法などを用いてパターニングすることによって形成することができる。あるいはまた、スクリーン印刷法を用いてブラックマトリクス130を形成してもよい。
【0036】
必要に応じて、色変調部120およびブラックマトリクス130を覆うように保護層140を形成してもよい。保護層140は、色変調部120およびブラックマトリクス130によって形成される凹凸を平坦化し、かつ色変調部120を周囲環境および有機EL素子2から隔離するためのするための層である。保護層140を形成するのに用いることができる有機材料は、たとえば、イミド変性シリコーン樹脂(たとえば特許文献3〜5参照)、アクリル、ポリイミドまたはシリコーン樹脂中に分散された無機金属化合物(TiO、Al、SiOなど、特許文献6、7参照)、エポキシ変性アクリレート樹脂、反応性ビニル基を含むアクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマーのような紫外線硬化型樹脂(特許文献8参照)、レジスト樹脂(特許文献9〜12参照)、無機化合物(ゾル−ゲル法により形成されてもよい、特許文献13参照)、フッ素系樹脂などの光硬化型および/または熱硬化型樹脂(特許文献12、14参照)を含む。上記のような材料から保護層140を形成する際には、たとえば、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法など)、および湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法など)などの、当該技術において知られている任意の方法を用いてもよい。
【0037】
さらに必要に応じて、保護層140の上にパッシベーション層を形成してもよい。パッシベーション層は、可視域における高い透明性(400〜700nmの範囲において透過率50%以上)、100℃以上のTg、鉛筆硬度2H以上の表面硬度を示す材料であって、ガスおよび水蒸気を遮断することができる材料から選択することができる。パッシベーション層を形成するのに好ましい材料は、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnOなどの無機酸化物または無機窒化物を含む。パッシベーション層は、前述の無機酸化物または無機窒化物の単一層であってもよく、あるいはそれらの複数を積層した積層構造を採ってもよい。パッシベーション層の形成には、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法など)、および湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ゾルゲル法など)などの、当該技術において知られている任意の方法を用いることができる。
【0038】
次に、本発明の有機EL素子2の構造を詳細に示す。
【0039】
基板210は、透明であっても不透明であってもよく、積層される層の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐えるものであるべきであり、および寸法安定性に優れていることが好ましい。好ましい材料は、金属、セラミック、ガラス、シリコンなど半導体、ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂を含む。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、基板として用いてもよい。有機発光層からの発光を基板210の側から取り出すボトムエミッション方式を採用する場合には、基板10は、波長400〜800nmの光に対して50%以上の透過率を有することが好ましい。透明な基板10としては、ガラス、シリコン、ならびにポリエチレンテレフタレートおよびポリメチルメタクリレート等の樹脂を用いることが好ましく、ホウケイ酸ガラスまたは青板ガラスを用いることがより好ましい。
【0040】
複数のスイッチング素子220は、複数の第1電極230のそれぞれと1対1で接続され、副画素の点灯/消灯を制御するための素子である。スイッチング素子は、たとえば薄膜トランジスタ(TFT)またはMIMなどの素子を用いて形成することができる。
【0041】
第1電極230は、複数の部分から構成され、有機EL層240に対してキャリア(正孔または電子のいずれか)を注入するための電極である。
【0042】
有機EL層240からの発光を第2電極250側から取り出すトップエミッション方式を採用する場合には、第1電極250は、反射性を有することが好ましい。反射性を有する第1電極250は、高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金と、導電性金属酸化物とを積層することによって形成することができる。導電性金属酸化物は、SnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどを含み、正孔注入効率を向上させるために設けることが望ましい層である。高反射率の金属は、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどを含む。高反射率のアモルファス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを含む。高反射率の微結晶性合金は、NiAlなどを含む。高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金は、蒸着、スパッタなどの当該技術において知られている任意の方法で形成することができる。トップエミッション方式を採用する場合にも、第1電極250を陰極として用いることが可能である。この場合には第1電極250は、前述の高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金から形成される。あるいはまた、高反射率の金属と仕事関数の小さい金属との合金(たとえばMg/Ag合金など)を用いて第1電極250を形成してもよい。第1電極250を陰極として用いる場合、陰極の有機EL層240との界面に電子注入性のバッファ層を設けて、電子注入効率を向上させることが望ましい。
【0043】
バッファ層の材料としては、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などの用いることができるが、それらに限定されるものではない。バッファ層の膜厚は、駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常の場合には10nm以下であることが好ましい。
【0044】
ボトムエミッション方式を採用する場合には、第1電極230は、SnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの導電性金属酸化物から形成される。導電性金属酸化物をスパッタ法を用いて積層することにより第1電極230を形成することができる。ボトムエミッション方式を採用する場合、第1電極230は、波長400〜800nmの光に対して好ましくは50%以上、より好ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。第1電極230は、通常50nm以上、好ましくは50nm〜1μm、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。ボトムエミッション方式において第1電極230を陰極として用いることも可能である。この場合には、陰極の有機EL層240との界面に前述のバッファ層を設けて、電子注入効率を向上させることが望ましい。
【0045】
第2電極250は、一体として形成される共通電極であり、有機EL層240に対してキャリア(正孔または電子のいずれか)を注入するための電極である。
【0046】
トップエミッション方式を採用する場合、第2電極250は有機EL層240からの発光に対する透明性が要求される。この場合には、第2電極250は、波長400〜800nmの光に対して好ましくは50%以上、より好ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。第2電極250は、SnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの導電性金属酸化物から形成される。第2電極250を陰極として用いる場合には、陰極の有機EL層240との界面に前述のバッファ層を設けて、電子注入効率を向上させることが望ましい。
【0047】
ボトムエミッション方式を採用する場合、第2電極250は反射性電極である。この場合、第2電極250は、前述の高反射率の金属、アモルファス合金または微結晶性合金から形成される。あるいはまた、第2電極250が陰極である場合、高反射率の金属と仕事関数の小さい金属との合金(たとえばMg/Ag合金など)を用いて第2電極250を形成してもよい。第2電極250を陰極として用いる場合、陰極の有機EL層との界面に前述のバッファ層を設けて、電子注入効率を向上させることが望ましい。また、ボトムエミッション方式を採用する場合に、第2電極250を陽極として用いることもできる。この場合には、前述の導電性金属酸化物と、反射性金属等との積層構造とすることが望ましい。導電性金属酸化物は、有機EL層側に配置されて正孔注入効率を向上させるために用いられる。
【0048】
第1電極230および第2電極250に挟持される有機EL層240は、有機発光層を少なくとも含み、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および/または電子注入層を含む。これらの各層は、それぞれにおいて所望される特性を実現するのに充分な膜厚を有して形成される。たとえば、下記のような層構成からなるものが採用される。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子注入層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(7)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(上記の構成において、陽極として機能する電極が左側に接続され、陰極として機能する電極が右側に接続される)
【0049】
有機発光層の材料は、所望する色調に応じて選択することが可能であり、例えば青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、スチリルベンゼン系化合物、または芳香族ジメチリデイン系化合物などの1つまたは複数の材料を使用することが可能である。あるいはまた、前述の材料をホスト材料として用い、これにドーパントを添加することによって有機発光層を形成してもよい。ドーパントとして用いることができる材料としては、たとえばレーザ色素としての使用が知られているペリレン(青色)などを用いることができる。
【0050】
電子輸送層の材料としては、PBD、TPOBのようなオキサジアゾール誘導体;TAZのようなトリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;フェニルキノキサリン類;BMB−2T、BMB−3Tのようなチオフェン誘導体;アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)のようなアルミニウム錯体などを用いることができる。
【0051】
電子注入層の材料としては、Alqのようなアルミニウム錯体、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属をドープしたアルミニウム錯体、あるいはアルカリ金属ないしアルカリ土類金属を添加したバソフェナントロリンなどを用いることができる。
【0052】
正孔注入層の材料としては、フタロシアニン(Pc)類(銅フタロシアニン(CuPc)などを含む)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。
【0053】
正孔輸送層の材料としては、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、オキサジアゾール部分構造を有する材料(たとえばTPD、α−NPD、PBD、m−MTDATAなど)を用いることができる。
【0054】
前述の有機EL層240を構成する各層は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
【0055】
なお、上記の説明においては、スイッチング素子220を用いたアクティブマトリクス駆動型の有機EL素子について説明したが、本発明においてはパッシブマトリクス駆動型有機EL素子を用いることも可能である。パッシブマトリクス駆動型有機EL素子は、基板210上に、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる第1電極230を形成し、その上に有機EL層240を形成し、さらに第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる第2電極250を形成することによって得ることができる。ここで、第1の方向と第2の方向とは互いに交差する方向であり、好ましくは直交する方向である。基板210、第1電極230、有機EL層240、第2電極250を形成する材料は、前述のものを用いることができる。
【0056】
必要に応じて、第2電極250以下の構造を覆うようなEL素子パッシベーション層を設けてもよい。EL素子パッシベーション層は、ガスおよび水蒸気を遮断することによって有機EL層の機能劣化を防止するのに有効であり、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnOなどの無機酸化物材料または無機窒化物材料を用いて形成することができる。EL素子パッシベーション層は、前述の無機酸化物または無機窒化物の単一層であってもよく、あるいはそれらの複数を積層した積層構造を採ってもよい。EL素子パッシベーション層の形成には、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法など)、および湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ゾルゲル法など)などの、当該技術において知られている任意の方法を用いることができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
40インチのSVGA規格(800×600画素、各画素はRGBの副画素から構成される)のディスプレイの作製を行った。本実施例では、400×300画素に相当する1200×300の発光部を有する有機EL発光素子(20インチ)を4枚用いた。RGB各副画素のサイズを0.148×0.704mm、副画素間の間隔は0.130mmとした。したがって、画素サイズは0.704mm×0.704mmであり、画素間隔は0.312mmであり、画素ピッチは1.016mmであった。
【0058】
最初に20インチ有機EL素子(400×300画素相当)を形成した。
【0059】
最初に、コーニングガラス基板上に、第1電極の補助電極部として、抵抗率1.5×10−5[Ω・cm]のMoを膜厚300nm、幅100μmで堆積させた。Moの成膜にはDCマグネトロンスパッタ法を用い、Mo上にレジスト剤「OFRP−800」(商品名、東京応化製)を塗布した後、フォトリソグラフィー法にてパターニングを行った。
【0060】
次に、スパッタ法にてITOを全面成膜した。そしてITO上にレジスト剤「OFRP−800」(商品名、東京応化製)を塗布した後、フォトリソグラフィー法にてパターニングを行い、RGB副画素に位置する、幅0.204mm、間隙0.074mm、膜厚100nmの縦方向に延びるストライプパターンからなる第1電極を形成した。本実施例においては、第1電極を陽極として用いた。
【0061】
次に、ポジ型フォトレジスト[WIX−2A](商品名、日本ゼオン製)を用いて、前記副画素に対応する開口部を除いて、基板面全面に厚さ1μmの絶縁膜を形成した。絶縁膜端部の基板面に対する角度は鋭角となっている。
【0062】
本実施例では、絶縁膜としてポジ型フォトレジストを用いたが、他にアクリレート等のネガ型のフォトレジストや、ポリイミド材料、SiOx、SiOxNy、SiNx、TiOx等の無機酸化膜を用いることができる。
【0063】
絶縁膜の膜厚は、パネル駆動時に印加される電圧から算出される絶縁耐圧を持つ必要がある。本実施例に用いたポジ型フォトレジストではおよそ800nm以上の膜厚で形成することにより十分な絶縁耐圧を持つことができた。
【0064】
次に、ネガ型フォトレジスト[ZPN1100](商品名、日本ゼオン製)を用いて、隣接する画素間の中央に配置され、横方向(第1電極のストライプパターンと直交する方向)に延びるストライプパターンからなる厚さ4μmの隔壁を形成した。隔壁の幅は、画素間隙の間隔以下、好ましくは(画素間隙の間隔)−50μm以下であり、100μm以上であればよい。本実施例では、隔壁は逆テーパの断面形状を有し、隔壁の頂部幅は230μmであり、底部幅130μmであり、底部におけるピッチは1.016mmである。
【0065】
次いで、隔壁を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層および電子注入層を真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層として膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)を積層した。正孔輸送層として膜厚20nmの4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)を積層した。ホスト物質として4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、ゲスト物質として4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を用いて膜厚30nmの有機発光層を積層した。電子注入層として膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)を積層した。
【0066】
引き続いて、真空を破ることなしにメタルマスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)を堆積させて、陰極として用いる第2電極を形成した。第2電極は前述の隔壁によって分離され、幅0.786mm、間隙0.230mmの横方向に延びるストライプパターンから形成された。
【0067】
最後に、表示部を含んで、20インチサイズ(406.4mm×304.8mm)に基板から切り出し、4枚の有機EL素子を得た。
【0068】
次に、40インチの一体型の色変換フィルタを作製した。
【0069】
透明基板としてのコーニングガラス(845mm×645mm×1.1mm)上に、スピンコート法を用いて黒色色素を含むレジスト樹脂を塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施し、色変調部(副画素)を形成するための開口部を残して膜厚2μmのブラックマトリックスを形成した。
【0070】
次に、青色フィルター材料(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製:カラーモザイクCB−7001)をスピンコート法にて塗布後、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、幅0.148mm、ピッチ1.016mm、膜厚6μmの縦方向に延びるストライプパターンを有する青色フィルタ層を形成して、青色変調部を得た。
【0071】
次に、蛍光色素としてのクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。この溶液に対して、光重合性樹脂の[V259PA/P5」(新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を、青色フィルタ層を形成した透明基板上にスピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施し、幅0.148mm、ピッチ1.016mm、膜厚10μmの縦方向に延びるストライプパターンを有する緑色変換層を形成して、緑色変調部を得た。
【0072】
そして、蛍光色素としてのクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。この溶液に対して、光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を、上記の各層を形成した透明基板上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施し、幅0.148mm、ピッチ1.016mm、膜厚10μmの縦方向に延びるストライプパターンを有する赤色変換層を形成して、赤色変調部を得た。
【0073】
以上のようにRGB各色の色変調部を形成した透明基板上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射し、膜厚5μmの保護層を形成して、40インチの色変換フィルタを得た。この時、各色変調部のパターンは変形がなく、かつ保護層上面は平坦であった。
【0074】
次に、上記で得られた40インチサイズの色変換フィルタに、20インチサイズの有機EL素子を4枚貼り合わせる。最初に、20インチサイズの有機EL素子のガラス基板接合面(接合部270、280に相当する面)を、高精度な貼り合わせが可能なように高精度研磨剤で平滑に研磨仕上げした。高精度研磨剤としては、酸化セリウムまたは酸化ジルコニウムを添加した酸化セリウムを用いることができる。次に、平坦面を有する支持体を用意し、その上に有機EL素子のガラス基板を載置し、位置合わせを行い、紫外線硬化樹脂であるAVR200(スリーボンド社製、屈折率1.56)を用いて4枚の20インチサイズの有機EL素子の接合面を接合した。次いで、40インチサイズの色変換フィルタに粘性の低いアクリル系接着剤を均一に塗布した後にアライメント位置を確認しながら、上記で得られる20インチサイズのEL素子4枚からなる接合体を配置し、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。
【0075】
最後に、上記の組合せにより得られた色変換フィルタ/有機EL発光素子積層体の有機EL発光素子側(すなわち、両電極および有機EL層の積層体側)を、グローブボックス内の乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、封止缶(ガラス製または金属製のものを用いることができる)を用いて封止した。
【0076】
得られた40インチディスプレイは、16〜30Vの駆動電圧を印加することにより100〜300cd/mの輝度で発光した。
【0077】
(実施例2)
4枚の20インチサイズの有機EL素子からなる接合体の形成を、有機EL素子のガラス基板接合面間にポリエステルのフィルム状樹脂を挟み込んで、接着剤による接合を行うこと以外は、実施例1と同様の手順を用いて、20インチサイズの有機EL素子4枚および40インチサイズの色変換フィルタを用いた40インチディスプレイを形成した。用いたポリエステルのフィルム状樹脂の厚さを25μm以下とすることによって、接着剤の充填不良による有機EL素子接合端面での乱反射を防止し、有機EL素子の接合端面が視覚的に認識されるのを防止する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の表示装置を示す斜視図である。
【図2】従来技術の小型有機ELパネルを用いた表示装置を示す斜視図である。
【図3】従来技術の小型有機ELパネルの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の表示装置の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の表示装置における有機EL素子の接合部を示す上面図である。
【図6】本発明の別の態様における有機EL素子の接合部を示す上面図である。
【図7】本発明の別の態様における有機EL素子の接合部を示す上面図である。
【図8】本発明の別の態様における有機EL素子の接合部を示す上面図である。
【図9】本発明の別の態様における有機EL素子の接合部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 色変換フィルタ
2(a〜d) 有機EL発光素子
5 小型有機ELパネル
6 TFT
52、210 基板
54、220 スイッチング素子
56、230 第1電極
58(R,G,B) 有機EL層
60 分離壁
62、250 第2電極
64 保護層
66 透明シール
110 透明基板
120(R,G,B) 色変調部(副画素)
122(R,G,B) カラーフィルタ層
124(R,G,B) 色変換層
130 ブラックマトリクス
140 保護層
170(R,G,B) 小型副画素
240 有機EL層
270 横方向接合部
280 縦方向接合部
290 発光部
300 反射防止材料
500 接合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の副画素から形成される画素、および前記複数種の副画素の間および前記画素の周囲に設けられるブラックマトリクスが整列されている色変換フィルタと、複数の有機EL素子とを含み、前記複数種の副画素は複数種の色変調部から形成され、前記複数の有機EL素子のそれぞれは前記複数種の副画素に対応する複数の発光部を有し、前記複数の有機EL素子が貼り合せられて1つの表示素子を形成していることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記色変換フィルタは、一体の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記有機EL素子の貼り合わせによる接合部が、前記色変換フィルタのブラックマトリクスに相当する位置にあることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画素は赤色、青色および緑色の3種の副画素から構成され、前記有機EL素子の横方向の接合部に隣接する副画素が、赤色および青色からなる群から選択される表示色を有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記有機EL素子の横方向の接合部に隣接する副画素が、その他の副画素よりも小さい寸法を有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素は赤色、青色および緑色の3種の副画素から構成され、前記緑色の副画素は前記青色および赤色の副画素よりも小さい寸法を有し、および前記緑色の副画素に隣接するブラックマトリクスの領域に前記有機EL素子の横方向の接合部が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数種の副画素のそれぞれは、前記複数の発光部のそれぞれよりも小さい寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記有機EL素子の横方向の接合部端面に反射防止材料を設けたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−164618(P2006−164618A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351525(P2004−351525)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】