説明

要件に従ってNO2を供給する温度制御プレ触媒を用いるディーゼルエンジン排気ガスの酸化窒素除去

ヨーロッパ、北米、および日本におけるディーゼル車の将来の法的義務排気ガス制限値への準拠として、粒子の除去だけでなく、排気ガスからの酸化窒素の効果的除去(deNOx)も必要とされる。「能動的SCRプロセス」がそのための好ましい方法である。本プロセスによって達成される酸化窒素変換は、最適NO/NO比、好ましくは、0.5がSCR触媒の上流に設定される場合に特に高まる。本発明は、エンジンの動作状態から分離されるプレ触媒の温度制御によって、要件に従ってNOを供給する際の問題を解決するプロセスを提案する。関連装置では、少なくとも1つの酸化成分を含有し、その温度がエンジンの動作状態から独立して制御可能なプレ触媒(1)と外部源(3a)からの還元剤のための上流計測設備(3b)を伴うSCR触媒(3c)を含む能動的SCRステージと並列に配列される。粒子フィルタ(2)はプレ触媒と計測設備との間に配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ディーゼルエンジン排気ガスを浄化するプロセス、特に、酸化窒素を除去するプロセス、および本発明のプロセスを実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気ガス中に存在する放出物は、2つの群に分類され得る。すなわち、一次放出物なる用語は、燃料の燃焼プロセスによって、エンジン内で直接形成され、シリンダ排気口における原排気ガス中に存在する汚染ガスを指す。二次放出物とは、排気ガス浄化ユニット中の副産物として形成され得る、汚染ガスである。ディーゼルエンジンからの原排気ガスは、通常の一次放出物(一酸化炭素CO、炭化水素HC、および酸化窒素NO)とともに、最大15重量%の比較的高い酸素含有量を含む。加えて、主に、スート残留物と、可能性としての有機凝集体とを含み、シリンダ中の燃料の部分的不完全燃焼から生じる、粒子放出物もまた存在し得る。
【0003】
ヨーロッパ、北米、および日本におけるディーゼル車の将来の法的義務の排気ガス制限値の遵守は、粒子の除去だけではなく、排気ガスからの酸化窒素の効果的除去(「deNOx」)も必要する。汚染ガス(一酸化炭素および炭化水素)は、好適な酸化触媒上での酸化によって、希薄排気ガス中で容易に無害化可能である。粒子放出物を除去するための好適な装置は、ディーゼル粒子フィルタである(追加の触媒活性被膜の有無は問わない)。窒素への酸化窒素の還元は、高酸素含有量のため、より困難である。周知のプロセスは、酸化窒素貯蔵触媒(NOx貯蔵触媒NSC)の使用に基づくか、または、略して、SCR触媒として知られる好適な触媒上において、通常、還元剤としてのアンモニアによる、選択式触媒還元(SCR)のためのプロセスによるものである。また、例えば、アンモニアが、濃厚動作条件下において、上流の酸化窒素貯蔵触媒上で二次放出物として生成され、このアンモニアは、最初に、下流SCR触媒中に保存され、その後の希薄動作相において、酸化窒素貯蔵触媒を通過する酸化窒素の還元のために利用される、これらのプロセスの組み合わせも周知である。
【0004】
ディーゼルエンジン排気ガスからのNOの除去のためのそのような「受動的」プロセスの使用は、特に、濃厚動作相の提供がディーゼルエンジン内で自由に達成することが不可能であるという事実によって制限される。したがって、酸化窒素貯蔵触媒の再生(窒素への脱離された酸化窒素の同時還元を伴う脱離)、およびNOの変換のためのSCR触媒を必要とする、内部還元剤(NH、また、可能性として、HCまたはCO)の要件に従う再生の両方とも、例えば、ピストンの排気行程の間、排気ガス系またはシリンダ中へのさらなる燃料の注入等、補助的手段の支援によってのみ達成され得る。そのような補助的手段は、望ましくない燃料消費の増加につながり、また、COおよびHCの法的制限への準拠をより困難にする。
【0005】
故に、現在は、「能動的」SCRプロセスが、ディーゼルエンジン排気ガスからのNOの除去のための好ましいプロセスである。ここでは、排気ガス中に存在する酸化窒素の量が、外部源から排気ガス系内に導入される還元剤の補助によって、低減される。還元剤として、アンモニア、あるいは、例えば、尿素またはカルバミン酸アンモニウム等、アンモニアに分解可能な化合物を使用することが、好ましい。前駆体化合物から原位置で生成され得るアンモニアは、均化反応において、排気ガスからの酸化窒素と反応し、SCR触媒上で窒素を形成する。
【0006】
差し迫った法的要件を満たすために、異なる排気ガス浄化装置の組み合わせが、現在は、不可避である。ディーゼルエンジン排気ガスを浄化するための装置は、少なくとも1つの酸化活性触媒と、deNOxのために、還元剤(好ましくは、アンモニアまたは尿素溶液)のための上流計測設備を有するSCR触媒と、外部還元剤源(例えば、尿素溶液を含有する追加タンク)とを含有する必要がある。エンジン内の燃焼プロセスの最適化によって、酸化触媒上の酸素による直接酸化により除去可能であるように、粒子放出物を十分に小量に維持することが不可能である場合、粒子フィルタの追加使用が必要である。
【0007】
対応する排気ガス浄化システムは、既に説明されているが、いくつかは、現在、実践的に試験されている。
【0008】
このように、特許文献1は、酸化触媒が、粒子フィルタの上流に設置される、NOおよび粒子を含有するディーゼル排気ガスの処理のためのシステムについて説明する。還元剤源と、還元剤のための計測設備と、SCR触媒は、粒子フィルタの流出側に配列される。本明細書で説明されるプロセスでは、排気ガス中のNOの割合、したがって、NO/NO比は、酸化触媒上でのNOの少なくとも部分的酸化によって増加し、NO/NO比は、好ましくは、「SCR触媒のために最適な所定のレベルに設定される」(特許文献の請求項12参照)。設定されるべき特定のNO/NO比は、指示されていない。その代わりに、使用されるSCR触媒の種類によって決定される、個々の値としてみなされる([0009]参照)。
【0009】
特許文献2は、同様に、排気ガス中に存在するNOの一部が、最初に、酸化触媒上でNOに酸化され、次いで、排気ガスが、アンモニアとともに、SCR触媒上を通過する、アンモニアによる選択式触媒還元によって、内燃エンジンの希薄排気ガス中に存在する酸化窒素の量を低減するためのプロセスについて説明する。この場合、SCR触媒は、遷移金属と交換されたゼオライトを含有する。この還元触媒の上流に配置される酸化触媒は、排気ガスが、SCR触媒と接触する前に、0.3乃至0.7のNO/NO比を有する酸化窒素混合物を含有するように、選択および定寸される。
【0010】
特許文献3は、酸化窒素の除去が、触媒またはそこから生成されるアンモニアの前に導入される尿素溶液によって、SCR触媒上で実行される、ディーゼル排気ガスを浄化するためのシステムを開示する。酸化触媒は、尿素および還元触媒のために、計測設備の上流に設置され、粒子フィルタは、SCR触媒の流出側に設置される。本システムの改良されたNO変換性能は、SCR触媒中に保存されるアンモニアの量の決定と、触媒の上流において計測されるアンモニアの量の対応する最適化とによって、達成される。
【0011】
外部還元剤のための計測設備と、必要に応じて、粒子フィルタとともに、酸化触媒およびSCR触媒を含有する、排気ガス浄化システムだけではなく、従来技術は、酸化触媒が酸化窒素貯蔵触媒と置換される、システムについても記載する。これは、従来の酸化窒素貯蔵触媒が、酸化窒素をNOに酸化し、次いで、これを硝酸塩として保存可能であるだけでなく、また、多くの場合、排気ガス成分COおよびHCに対して、良好な酸化特性を示すために可能である。
【0012】
例えば、特許文献4は、プレ触媒と、SCR触媒および外部源からの還元剤のための上流計測デバイスを含む、能動的SCRステージとを含有する、ディーゼル排気ガスのための排気ガス浄化システムを開示する。プレ触媒は、ディーゼル排気ガスの適切な構成物質の酸化に作用する。加えて、酸化窒素貯蔵物質を含有する。低温では、原放出物からの酸化窒素は、最初に、プレ触媒中に保存される。排気ガス温度が上昇後、酸化窒素は、プレ触媒から熱的に脱離され、下流還元触媒上において、窒素、また、可能性として、NOに変換される。
【0013】
同様に、特許文献5は、プレ触媒と、SCR触媒および外部源からの還元剤のための上流計測設備を含む、能動的SCRステージと、から成る、排気ガス浄化システムについて説明する。同様に、プレ触媒は、組成の観点から、特許文献4に説明されるシステムと異なるように選択される物質とともに、酸化活性成分および酸化窒素貯蔵物質を含有する。特定の実施形態では、被膜が、粒子フィルタ基板に適用される。システムは、特許文献4に説明されるユニットに類似する手法で動作する。加えて、本文献内のデータに従って、原放出物中0.05乃至0.35であるNO/NO比は、下流SCR触媒上の変換を向上させるために、標的手法中、プレ触媒上において、増加される。SCR触媒のための最適NO/NO比は、0.5であることが認められている。
【0014】
ディーゼルエンジン排気ガスのための従来技術によるこれらすべての排気ガス浄化システムでは、排気ガス浄化装置は、すなわち、排気ガスの組成に基づいて、熱的および化学的の両方において、互いに、かつそれぞれのエンジンの動作状態と連結される。エンジンの動作状態は、原排気ガスの組成、したがって、排気ガス中で利用可能な酸化および還元剤の量の両方を決定し、また、下流触媒の温度を実質的に決定する。したがって、排気ガス浄化装置本体の効率は、エンジンの動作点を継続的に変化させることに決定的に依存する。
【0015】
これは、低い負荷動作点、したがって、低い排気ガス温度(平均250℃未満)が主流である用途における使用には不適であると説明される、従来の排気ガス浄化システムにつながる。そのような用途では、システムの満足のゆく浄化作用のために必要とされる平均排気ガス温度は、エンジンによっては提供されない。これは、例えば、主に、都市の中心部において使用される高負荷ディーゼル車、例えば、都市バスまたは都市清掃車、またはアジア圏における使用が意図される標準的なディーゼル車に該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1054722(B)号明細書
【特許文献2】欧州特許第1147801(A)号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0044456号明細書
【特許文献4】欧州特許第1027919(A)号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/076829号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、排気ガス浄化成分の少なくとも部分的分離によって、少なくとも、プレ触媒と、外部源からの還元剤のための上流計測設備とともに、SCR触媒を含む、能動的SCRステージとを含有する、ディーゼル車のための組み合わせ排気ガス浄化システムの効率の大幅な向上を達成することである。特に、ディーゼル排気ガス中の酸化窒素の量の低減の観点から、排気ガス浄化ユニットの変換性能の向上は、低い排気ガス温度で生じるべきである。この目的は、請求項1の特徴に記載のアンモニアによる選択式触媒還元の請求項7に記載の装置とによって、内燃エンジンの希薄排気ガス中に存在する酸化窒素の量を低減するためのプロセスによって、達成される(以下に包括的に説明される)。
【0018】
本発明は、以下の見解に基づいている。
【0019】
SCR触媒は、還元剤の適切な供給が利用可能な場合に、最良の酸化窒素変換性能を示すことが知られている。理想的には、NH/NOの比は、0.9乃至1.1の範囲である。これは、アンモニアが、能動的SCRプロセスにおける要件に従って調整される量にあることが計測される場合には、問題がない。
【0020】
さらに、最適な酸化窒素変換は、(NO/NO=1)と表される一酸化窒素と二酸化窒素とが等モル量、またはNO/NO比=0.5である場合にのみ達成される。図1は、一例として、鉄交換ゼオライトに基づく従来のSCR触媒に対して、NO/NH=0.9におけるNO/NO比に対する、酸化窒素変換の依存性および変換の選択性を示す。0.5であるNO/NO比においてのみ、約90%の酸化窒素変換が、200乃至500℃の全温度範囲にわたって達成されることが、明確に認められる。NO/NO比の最大の影響は、250℃までの低温範囲において観察される。原排気ガスには通例であるように、NOが導入される排気ガス中に存在しない場合、事実上、変換は200℃を下回る温度では観察されない。一方、NOが全体的にNOから成る場合、近似的に理論変換が250℃で達成されるが、触媒の下流の排気ガスの分析は、相当量のNOの還元が、無害窒素ではなく、亜酸化窒素NOにつながることを示す。150℃程度の低温において75%変換で開始する最適変換と、同時に、窒素に対する最適選択性は、以下の反応式の化学量論に従って、0.5であるNO/NO比においてのみ達成される。
【0021】
2NH + NO + NO =2N + 3H
これは、鉄交換ゼオライトに基づくSCR触媒のみではなく、従来の、すなわち、市販の能動的SCR触媒すべてに該当する。
【0022】
従来技術のプロセスでは、還元触媒の上流のNO/NOまたはNO/NO比は、最初に、エンジンの動作点、排気ガス温度、および原排気ガスの組成によって決定され、次に、流入口および能動的SCRステージの上流に配置される排気ガス浄化装置の種類、数、および活性によって、影響を受ける。
【0023】
NOは、通常、少なくとも1つの酸化活性成分を含有するプレ触媒上を、NOおよび酸素の両方を含有する原放出物を通過させることによって、生成される。変換は、触媒本体の種類、その劣化の状態、排気ガス温度、および原放出物中の酸素分圧によって、決定される。後者2つのパラメータは、酸化反応の平衡位置、したがって、達成可能な最大NO/NO比を決定する。プレ触媒の組成および劣化の状態は、触媒の補助によって、酸化反応のために必要とされる活性化エネルギーを上回り、触媒が「作用を開始する」、最低排気ガス温度(触媒の作用開始温度)を決定する。図2は、一例として、排気ガス温度と、6容量%の酸素含有量において、従来の白金含有酸化触媒上のモデルガス中で得られるNO/NO比との間の関係を示す。実線は、温度の関数として、酸化反応の平衡位置を示す。200℃直下までの低温では、平衡は、完全にNO形成側にある。700℃を上回ると、NOはもはや安定せず、したがって、NOのみが存在する。約400℃において、0.5のNO/NO比が経験される。測定点から成る曲線は、新しく産生された従来の白金含有酸化触媒上における、成分還元モデルガス中に確立される実際のNO/NO比を示す。触媒は、約140℃においてのみ、「作用を開始する」。次いで、NO形成は、約280℃において平衡線が達成されるまで、温度の上昇に伴って急上昇する。約160℃において、0.5のNO/NO比が到達されるが、事実上直ちに超過する。触媒の熱劣化および他の易酸化性排気ガス成分の存在は、酸化活性の同時低減とともに、NO作用開始温度の上昇につながる。劣化の増加に伴って、平衡曲線の達成は、次第に高い排気ガス温度で生じる。触媒が非常に劣化している場合、NO酸化中の50%の変換、したがって、0.5のNO/NO比は、もはや観察されない場合がある。
【0024】
図2は、さらなる調整がなされない酸化触媒上で、最適NO/NO比を保証することが、単純に「受動的」に設定される場合には、いかに困難であるかを明確に示す。さらなる困難点は、加えて、排気ガス浄化システムが、第EP−B−1054722号におけるように、排気ガス浄化装置、例えば、酸化触媒と能動的SCRステージとの間の粒子フィルタをさらに含有する場合に生じる。この場合、フィルタが、少なくとも部分的にスートを含む場合、排気ガスが粒子フィルタを通過する間、NOが消費される。そのとき、強力な酸化剤NOが、スートと反応し、NO/NO比が低下するように、COまたはCOおよびNOを形成する。また、本プロセスは、「CRT効果」(CRT(登録商標)=Continuous Regenerating Trap(連続再生トラップ))として、当業者には知られている。NO/NO比の低下の程度は、粒子フィルタの装填状態、排気ガスのNO含有量、および排気ガス温度に依存する。そのようなシステム配列では、能動的SCRステージに対する要件に従ってNOを供給することは、エンジンの全動作点に対して、かつ自動車の動作期間全体にわたって、もはや保証されることは不可能である。
【0025】
本発明は、プレ触媒の温度制御によって、要件に従ってNOの導入の問題を解決するものであって、それは、エンジンの動作状態から分離して、NO/NO比を決定する。本発明のプロセスに従うと、内燃エンジンからの希薄排気ガス中に存在する酸化窒素の量は、アンモニアによる選択式触媒還元によって低減され、排気ガスは、最初に、還元触媒の上流に配置され、酸化活性触媒成分を含有するプレ触媒上を通過する。排気ガス中に存在する一酸化窒素の一部は、排気ガスが、アンモニアとともに還元触媒上を通過する前に、0.3乃至0.7のNO/NO比を有するように、プレ触媒上において二酸化窒素に酸化される。このプロセスは、所望のNO/NO比が達成されるように、プレ触媒の温度が、温度制御デバイスを使用して、エンジンの動作状態から独立して設定されることを特徴とする。
【0026】
プレ触媒の温度調整のための基準は、一例として、図2に示されるように、新しく産生された状態および熱劣化状態において使用される、触媒の活性測定特性である。これらのデータは、エンジン制御システム内で記録される。本基準に基づいて、必要なNO/NO比を産生するために触媒が有する必要がある、要求温度が規定される。導入されるべき実際の熱量に対する第2の決定パラメータとして必要とされる排気ガスの実際の温度は、プレ触媒の流入側に配置される温度センサによって決定することが可能である。しかしながら、また、それぞれのエンジン動作点の関数としてエンジン制御システム内に記録される特性表から求めることも可能である。センサが、還元触媒の上流に付加的に配列されることにより、そこにおいて優勢であるNO/NO比を測定することができる。本測定の結果は、プレ触媒の温度を設定するための追加的な調整パラメータとして使用可能である。
【0027】
支持体と、触媒活性被膜とを含む、プレ触媒の温度の設定は、好ましくは、支持体の加熱および冷却によって達成される。この目的のために、プレ触媒中に存在する支持体および温度制御デバイスは、1つのユニットを形成する必要がある。これは、支持体から触媒活性被膜中への直接的な固体/固体熱伝導を保証し、熱伝導に関与する媒体の密接な接触および物質のより高い熱容量に起因して、特に、昇温段階において、排気ガス中への熱伝導よりも急速な触媒の加熱/冷却へとつながる。
【0028】
装置に関して、プレ触媒の温度制御は、好ましくは、触媒活性被膜のための支持体としての、電気的に加熱される金属ハニカム体を使用することによって達成される。
【0029】
代替例として、触媒活性被膜は、熱交換装置に適用されることが可能である。伝熱媒体として、周囲空気を使用することが好ましく、周囲空気は、自動車内に存在する二次的空気ポンプによって吸引され、排気ガスユニットの外側に配置され、燃料によって動作し、必要に応じてスイッチを入れることが可能なバーナによって加熱される。また、装置に関するそのような配列の利点は、バーナのスイッチが切られている場合、例えば、エンジン内の不完全燃焼からの残留炭化水素の発熱触媒反応の結果、プレ触媒が強力にヒートアップするとき、プレ触媒の能動的副冷却のためにも使用可能であることである。このようにして、触媒は、急速な熱劣化から保護されることが可能である。
【0030】
特に、プレ触媒支持体の加熱は、車両の低温始動段階の間での急速加熱を保証することにより、最適なNO変換のために必要とされる還元触媒の上流でのNO量が、車両の低温始動段階においても提供される。さらに、低温始動段階の間であっても、COおよびHCの作用開始が達成されるために十分な温度が、プレ触媒上で到達されることを保証することが可能である。したがって、本発明のプロセスが採用される場合、あらゆる有意のガス状放出物は、自動車の低温始動段階の間であっても、効果的に低減され得る。
【0031】
温度制御デバイスによるプレ触媒の加熱は、エンジンの低温始動段階の間だけではなく、エンジンによって提供される排気ガス温度が、プレ触媒の最適動作に対して十分ではない、全動作点において使用することが可能であるため、本発明のプロセスは、従来技術のシステムと異なり、都市バス、都市清掃車両等の「低温」用途にも好適である。
【0032】
また、低温変換をさらに向上させるために、プレ触媒は、好ましくは、酸化窒素貯蔵物質を含有する。これは、特に、200℃を下回る排気ガス温度における原放出物からの酸化窒素を一時的に貯蔵することが可能であり、その結果、例えば、車両の低温始動段階の間、NOが排気ガスユニットを突破することを完全に防止することが可能である。80乃至220℃の範囲の温度においてさえ、酸化窒素に対して良好な貯蔵特性を示す酸化窒素貯蔵物質が、特に、好適である。ここでは、酸化窒素貯蔵物質として、希土類酸化物が好ましい。酸化セリウムまたはセリウムが豊富なセリウムジルコニウム混合酸化物を含有する、酸化窒素貯蔵物質の使用が、特に好ましい。
【0033】
また、加熱されるプレ触媒の触媒被膜中に統合される酸化窒素貯蔵物質は、要件に従って、NOの導入を積極的に支持するために効果的に利用可能である。このことは、排気ガス浄化ユニットが、プレ触媒と能動的SCRステージとの間にディーゼル粒子フィルタを含有する場合に特にあてはまり、これは、外部源からの還元剤のための上流計測設備を伴うSCR触媒を備えている。この場合、還元触媒の上流のNO/NO比は、さらに、粒子フィルタの装填状態と、フィルタ上に存在する任意の触媒活性被膜の酸化活性とによって決定される。
【0034】
プレ触媒中の酸化窒素貯蔵物質と温度制御デバイスとの組み合わせは、プロセスが、管理されることを可能にし、その結果、NO/NO比は、フィルタを越えても、排気ガス温度およびスートによるフィルタの装填に応じて、下流還元触媒の要件に従って最適に設定される。したがって、「CRT効果」、すなわち、NO/NO比の低下をもたらす、COまたはCOおよびNOを形成するスートとのNOの反応は、250℃を上回る温度および適切なスート装填においてのみ、フィルタ上で生じる。「CRT効果」のための条件が満たされる動作点では、フィルタの上流において、好ましくは、0.7を上回るNO/NO比を選択することが必要である。このことが、プレ触媒単独の酸化力によっては達成不可能である場合、比率は、酸化窒素貯蔵物質中に予め保存されたNOの標的熱脱離によって達成することが可能である。エンジンによって達成される排気ガス温度が、NOの熱脱離に対して十分に高くない場合、このプロセスは、プレ触媒の支持体中に統合される温度制御デバイスによる標的方式において、制御されることが可能である。
【0035】
本発明のプロセスは、排気ガス浄化ユニットが、プレ触媒と、外部源からの還元剤のための上流計測設備を伴うSCR触媒を含む能動的SCRステージとに加えて、ディーゼル粒子フィルタを含有する場合に、特に提示される利点を示す。したがって、ディーゼル粒子フィルタは、好ましくは、プレ触媒と計測設備との間に配列される。また、代替例として、ディーゼル粒子フィルタは、還元触媒の流出側に配列されるか、またはSCR活性触媒被膜のための支持体として使用され、計測設備の流出側の還元触媒の代わりに配列されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、図1〜3および実施例によって、以下に例示される。
【図1】図1は、鉄交換ゼオライトに基づく従来の還元触媒上における、酸化窒素変換の依存性および酸化窒素還元の選択性(NO/NO比:α=NO/NH=0.9および空間速度30000 1/h)を示す。触媒は、規定のモデルガス組成において、新たに産生された状態で検証された。黒塗り記号および実線で表される曲線は、NOx変換を示し、対応する白抜き記号および破線で表される曲線は、触媒の下流の排気ガス中のそれぞれのNO濃度を示す。(・)/(o)は、NO/NO=0.5に対する測定値を示す。(▲)/(△)は、NO/NO=0 (R) NO=NOに対する測定値を示す。(■)/(□)は、NO/NO=1 (R) NO=NOに対する測定値を示す。
【図2】図2は、6容量%の酸素含有量を有する成分還元モデルガス中で測定された、従来の白金含有酸化触媒上における、排気ガス温度と設定NO/NOx比との関係を示す。実線=計算された、反応NO+1/2O(R)NOの平衡位置(◇)=従来の白金系酸化触媒上において測定された、NO/NO比(NO=NO+NO
【図3】図3は、本発明のプロセスの好ましい実施形態を実行するための排気ガス浄化システムを示す。(1)温度制御可能プレ触媒(2)粒子フィルタ(任意)(3)能動的SCRステージ(3a)外部還元剤源、例えば、尿素溶液のためのタンク(3b)計測設備、例えば、注入ノズル(3c)還元触媒(SCR触媒)
【図4】図4は試験結果を示し、図中の記号は以下を示す。T1:加熱可能DOC内への流入温度T2:加熱可能DOCからの流出温度T3:SCR触媒内への流入温度T4:SCR触媒からの流出温度NOx3:SCR触媒内へのNOx流入濃度(ppm)NOx4:SCR触媒からのNOx流出濃度(ppm)NO2/NOx:SCR触媒内への流入に基づくモルNO2/NOx比(%)
【発明を実施するための形態】
【0037】
(説明例)
図3は、ディーゼルエンジン用の本発明の排気ガス浄化プロセスを実行するための排気ガスユニットの好ましい構成を示す。
【0038】
ディーゼルエンジンによって産生される原放出物は、最初に、酸化活性触媒成分、好ましくは、酸化窒素貯蔵物質を含有するプレ触媒(1)上を通過する。セリウムが豊富なセリウムジルコニウム混合酸化物(>50重量%のCeO)上に支持される触媒総量に基づいて、0.07乃至5.5g/lの白金を含有する触媒を使用することが好ましい。支持体として、統合された加熱コイル(Emitec製の電気的に加熱される触媒(EHC))と、平方センチメートル当たり16乃至62のセルとを有する、金属ハニカム体を使用することが可能である。プレ触媒の流入口には、プレ触媒の前の排気ガス温度(実際の温度)を測定し、要求温度を計算するために、本情報をエンジン制御システムに伝送する、温度センサ(T)が存在する。EHC内での追加加熱の支援によって、所望のNO/NO比の確立につながる要求温度に維持されるプレ触媒を通過後に、排気ガスは、粒子フィルタ(2)を介して、能動的SCRステージ(3)へと回される。非被膜壁流フィルタは、粒子フィルタとして使用される。粒子フィルタの排気口では、NO/NO比が、好適なセンサ(NO)によって測定され、必要に応じて、測定されたNO/NO比が0.3<NO/NO<0.7の所望の範囲となるまで、プレ触媒における加熱力が、本測定値に基づいて変更される。SCR反応を実行するために必要とされ、排気ガスユニットの外側に配列されるタンク(3a)からもたらされる還元剤は、要件に従って、排気ガス系中への計測設備(3b)を介して、計測される。同様に、必要とされる還元剤、典型的には、尿素溶液の量は、計測位置の上流で決定されるNO値の支援によって決定される。次いで、還元剤とこのように産生される排気ガスとの最適な混合物は、SCR触媒(3c)上を通過し、排気ガスからのNOの最適な除去を保証する。
【0039】
(実施例)
以下のシステムは、エンジン試験台(コモンレール噴射システム、ターボ過給およびAGR、6つのシリンダ、公称電力:180kW搭載3.0 lディーゼルエンジン)上で測定された。
【0040】
エンジンに近接する位置:Pt/Pd触媒、140g/ft、金属加熱可能ハニカム体(消費電力:2kW)=DOC上に被膜
● 車体底面位置:鉄ゼオライト触媒−SCR
● 尿素導入口は、SCR触媒の上流に設置
● 加熱された触媒は、SCR触媒の上流において、約0.5のNO2/NOx比を得るために、スイッチのオン/オフが可能
【0041】
試験においては、エンジンは、200℃のDOC内において、流入温度T1をもたらす、一定動作点(1700minー1、28Nm、排気ガス質量流量:約93kg/h)で実行された。実行時間165秒経過から、一定の4.2mg/秒の尿素水溶液(32.5重量%)が注入される。45ppmのSCR触媒NOx3の上流のNO濃度は、還元剤の添加によって、15.5%の変換に対応する、38ppmのSCR触媒NOx4の下流の値まで低下させられる。約400秒後、加熱された触媒のスイッチが入れられる。NO2/NOx比は、約0.5の値に到達するまで急上昇する。同時に、SCR触媒上におけるNOx変換は、約90%まで増加する。このように、変換の増加が達成され、SCR触媒における温度上昇の重畳効果を大幅に上回り、最適なDOC動作温度を設定するプラス効果を明確に示す。655秒の実行時間において、加熱エネルギーの入力のスイッチを切った後に、NO2形成、したがって、また、SCR触媒上のNOx変換も、DOCを徐々に冷却することに伴って、再び、低減する。
【0042】
(注記:)加熱エネルギーのスイッチを入れた後のレベルNOx3のNOxにおける上昇は、DOC上における還元HC−deNOx変換によって、説明される。
【0043】
(図4の留意点)
T1:加熱可能DOC内への流入温度
T2:加熱可能DOCからの流出温度
T3:SCR触媒内への流入温度
T4:SCR触媒からの流出温度
NOx3:SCR触媒内へのNOx流入濃度(ppm)
NOx4:SCR触媒からのNOx流出濃度(ppm)
NO2/NOx:SCR触媒内への流入に基づくモルNO2/NOx比(%)
【0044】
最適排気ガス浄化結果は、事実上、そのような排気ガス浄化ユニットによって、エンジンのあらゆる有意な動作状態にわたって達成可能である。これは、特に、エンジンによって生成される排気ガス温度が、平均250℃を下回るか、または例えば、第EP−B−1054722号に説明されるように、還元触媒の上流の最適NO/NO比が、「CRT効果」の結果、達成されないことによって、中間粒子フィルタがスートによって少なくとも部分的に装填されるために、不良NO変換が、従来のシステムにおいて達成される、動作点に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアによる選択式触媒還元によって、内燃エンジンからの希薄排気ガス中に存在する酸化窒素の量を低減するプロセスであって、該排気ガス中に存在する一酸化窒素の一部は、プレ触媒上で二酸化窒素に酸化され、該プレ触媒は、少なくとも1つの酸化活性触媒成分を含有し、かつ、該還元触媒の上流に設置されることにより、該排気ガスは、アンモニアとともに該還元触媒上を通過する前において、0.3乃至0.7のNO/NO比を有する、プロセスにおいて、該プレ触媒の温度は、該所望のNO/NO比が達成されるように、温度制御デバイスを使用して該エンジンの動作状態から独立して設定されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記プレ触媒の要求温度は、エンジン制御システム内で記録される、新しく産生された状態および熱劣化した状態における該触媒の活性測定特性のデータに基づいて決定され、前記排気ガスの実際の温度は、該プレ触媒の流入側に配置される温度センサによって決定されるか、またはそれぞれのエンジン動作点の関数として、該エンジン制御システム内で記録される特性の表から求められることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記還元触媒の上流の前記NO/NO比は、センサによって決定され、この値は、前記プレ触媒の温度を設定するための追加の調整パラメータとして使用されることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プレ触媒は、支持体と、触媒活性被膜とを含み、前記温度の設定は、該支持体を加熱または冷却することによって達成されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プレ触媒の触媒活性被膜は、酸化窒素貯蔵物質を含有し、原放出物からの酸化窒素が、200℃を下回る排気ガス温度において、該酸化窒素貯蔵物質内に一時的に保存されることを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プレ触媒の触媒活性被膜は、酸化窒素貯蔵物質を含有し、予め保存されたNOは、250℃を上回る温度において、該酸化窒素貯蔵物質から標的熱脱離によって解放され、かつ、前記所望のNO/NO比を設定するために利用されることが可能であることを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
アンモニアによる選択式触媒還元によって、内燃エンジンからの希薄排気ガス中に存在する酸化窒素の量を低減する装置であって、該装置は、還元触媒と、該還元触媒の上流に配置され、少なくとも1つの酸化活性触媒成分を含有する、プレ触媒と、該排気ガスの流れから独立して還元剤源に接続され、該プレ触媒と該還元触媒との間に配列される、アンモニアまたはアンモニアに分解可能な化合物のための計測設備とを含む、装置において、該プレ触媒の温度は、所望のNO/NO比が達成されるように、該エンジンの動作状態から独立して設定可能である、温度制御デバイスが存在することを特徴とする、装置。
【請求項8】
温度センサが、前記プレ触媒の流入側に配列されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記還元触媒の上流で優勢である前記NO/NO比を測定するためのセンサが、該還元触媒の上流に配列されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プレ触媒が、支持体と、触媒活性被膜とを含み、前記温度制御デバイスが、該プレ触媒中に存在する該支持体とユニットを形成することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
電気的に加熱可能な金属ハニカム体が、支持体として使用されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記触媒活性被膜が、支持体として使用される熱交換装置に適用されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
周囲空気が、伝熱媒体として使用され、自動車中に存在する二次的空気ポンプによって吸引され、バーナによって加熱され、該バーナは、前記排気ガスユニット外に配置され、燃料によって動作させられ、必要に応じて、スイッチを入れることが可能であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記プレ触媒の触媒活性被膜が、酸化窒素貯蔵物質をさらに含有することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
ディーゼル粒子フィルタが、前記プレ触媒と、アンモニアまたはアンモニアに分解可能な化合物のための計測設備との間に配列されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
ディーゼル粒子フィルタが、前記還元触媒の流出側に配列されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
ディーゼル粒子フィルタが、SCR活性触媒被膜のための支持体として使用され、この構成要素が、前記計測設備の流出側の前記還元触媒の代わりに配列されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506818(P2011−506818A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537320(P2010−537320)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010570
【国際公開番号】WO2009/077126
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505446895)ユミコア アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】