説明

覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システム

【課題】覆工コンクリート表面を湿潤に保ちながら、養生温度を所望の温度に調整しうる覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムを提供する。
【解決手段】本発明の覆工コンクリート養生装置100は、前記覆工コンクリート1の表面1aに沿って表面1aから所定距離H離間するように設けられる防水性の断熱シート13と、覆工コンクリート表面1aと断熱シート13とにより形成される湿潤温調養生空間14に霧状の水分を供給する水分供給手段16と、湿潤温調養生空間14内に、温調された空気を送風する送風手段17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
覆工コンクリートなどのコンクリートは、打設後、セメントの水和反応に伴う発熱によってコンクリート温度が上昇し、その後放熱によって徐々に外気温程度まで冷却されることにより、コンクリートの内部と表面との温度差に起因するひび割れや、コンクリートの収縮により地盤等から受ける拘束によるひび割れが発生することがある。また、コンクリートが十分に硬化していない状態で、水和反応に伴う水分の蒸発によりコンクリート表面が乾燥すると、コンクリート表面にひび割れが発生することがある。したがって、コンクリート種類や、トンネル坑内の温度、湿度、コンクリート打設時の初期温度等の種々の条件を考慮した上で、コンクリート表面からの水分の蒸発を防ぐとともに、コンクリート内部の温度上昇を抑制する養生が必要になる。
【0003】
従来、トンネル内に打設された覆工コンクリートの養生温度を保持する覆工コンクリート養生装置として、断熱性シートと覆工コンクリート表面とを隔壁により閉塞して形成した断熱空間を設け、前記断熱空間に空気を充填することにより覆工コンクリートの養生温度を調整する覆工コンクリート養生設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、トンネル内の覆工コンクリートの養生温度を制御する覆工コンクリート養生装置として、遮水シートと覆工コンクリート表面とにより形成された養生空間に、霧状の水を噴霧して湿潤状態を保持することにより、覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生設備が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291690号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】トンネルと地下、452号、vol39、No.4、2008年4月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、送風した空気により断熱空間を設けて覆工コンクリートの養生温度を調整できるものの、たとえば、温暖な季節や地域のような過酷な条件下では、断熱空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0008】
また、非特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、噴霧水を温度調整し、養生空間内の湿度を制御できるものの、覆工コンクリート表面に直接水滴をつけないためには、噴霧量をある水量以下とする必要があった。このため、上記同様、過酷な条件下では、養生空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、覆工コンクリート表面を濡らすことなく湿潤状態を保つとともに、過酷な条件下においても養生温度を所望の温度に調整しうる覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の覆工コンクリート養生装置は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生装置であって、覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる断熱シートと、前記覆工コンクリート表面と前記断熱シートとにより形成される湿潤温調養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、前記湿潤温調養生空間内に、温度調整された空気を送風する送風手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱型前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の覆工コンクリート養生システムは、上記に記載の覆工コンクリート養生装置を含む覆工コンクリート養生システムであって、覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムは、覆工コンクリートの表面を含む湿潤温調養生空間に、霧状の水分を供給するとともに温調した空気を送風することにより、前記湿潤温調養生空間の温度ならびに湿度を調整することができるため、覆工コンクリート表面を濡らすことなく、覆工コンクリート表面の湿潤を保ちながら養生温度を制御して覆工コンクリートのひび割れを防止することができる。また、本発明に係る覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムは、覆工コンクリート打込み中、および打込み完了から脱型までの型枠箇所に温調した空気を送風することにより、打込み中から脱型までの間においても覆工コンクリートの温度を調整することができるため、コンクリートの水和反応に伴う温度上昇を効果的に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図2】図2は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのA−A断面図である。
【図3】図3は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのB−B部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1の変形例に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図5】図5は、図4の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのC−C断面図である。
【図6】図6は、一般的な覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図7】図7は、図6の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのD−D断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る覆工コンクリート養生装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を示す概略図である。ここで、図1は、覆工コンクリート養生装置100を示すトンネル10要部の縦断面図(トンネル掘削方向である軸方向に沿う断面)を示しており、図2は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのA−A断面図(トンネル掘削方向である軸方向に直交する断面)を示しており、図3は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのB−B部分断面図を示している。
【0017】
覆工コンクリート1は、図1に示すように掘削したトンネル10の内壁面10aに吹付コンクリート11を吹き付けてロックボルト(図示せず)を打ち込むことによってトンネル10の内壁面10aの崩落などを防いだ後、吹付コンクリート11の内壁面に防水シート(図示せず)を張り、吹付コンクリート11との間に防水シートを介在する形態で覆工セントルを用いて打設される。覆工セントルは、吹付コンクリート11(防水シート)との間に覆工コンクリート1を打設するための空隙をおいて門型に形成した型枠を有している。この型枠には、前記空隙にコンクリートを流し込むための孔(図示せず)が形成してある。そして、覆工セントルは、型枠の内側から前記孔を介して吹付コンクリート11(防水シート)との間の空隙にコンクリートを流し込むことによって覆工コンクリート1を打設する。覆工セントルは、覆工コンクリート1を打設した後、所定時間(例えば1日〜2日)の養生期間をおいて外される。
【0018】
覆工セントルを外した後、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を設置し、覆工コンクリート1の養生を行うが、覆工セントル箇所においては覆工コンクリート1の打込み直後から覆工コンクリート養生装置100による温度の調整が開始されている。
【0019】
覆工コンクリート養生装置100は、覆工コンクリート1の表面1aに沿って設けられる防水性を有する断熱シート13と、断熱シート13と覆工コンクリート1の表面1aとにより形成する湿潤温調養生空間14を閉塞する隔壁15と、湿潤温調養生空間14に霧状の水分を供給する水分供給手段16と、湿潤温調養生空間14に温調した空気を送風する送風手段17とを備える。
【0020】
図1〜図3に示すように、断熱シート13は、覆工コンクリート1の表面1a側を覆う態様で覆工コンクリート1の表面1aから所定距離H離間させて設けられる。また、湿潤温調養生空間14は、断熱シート13の両端部を覆工コンクリート表面1aにアーチ状に設けた断熱性の隔壁15で密閉して設けられる。断熱シート13は、霧状の水粒子(粒径10〜100μm)の排出を防止できるものであって、かつ、断熱性を有する膜状シートが適している。例えば発泡ウレタンにアルミフィルムを積層したシートが好適に使用される。
【0021】
水分供給手段16は、ノズル16aと、水分供給口16bと、水貯留タンク16cとを有し、水貯留タンク16c内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口16bまで送液後、ノズル16aにより霧状の水分を湿潤温調養生空間14に供給する。水分供給手段16が湿潤温調養生空間14に供給する水分量は、覆工コンクリート表面1aに水が付着しない程度、即ち、湿潤温調養生空間14内の湿度が100%未満となるようにするのが好ましい。水分供給手段16によって供給される水分量が多いほど、コンクリート表面1aを湿潤に保ち、コンクリートの水和反応を促進させるが、供給される水分量が多すぎると、付着した水の気化熱でコンクリート表面のみが急冷され表面ひび割れを発生させたり、水が付着した跡が残存し美観を損ねるため、湿度が100%を超えない範囲でできるだけ高くなるように、水分供給量を調整する。
【0022】
水供給口16bは、断熱シート13に接して設けられ、ノズル16aを支持する。ノズル16aは、ノズル16a先端部から湿潤温調養生空間14内に霧状の水分を供給する。断熱シート13に設けられるノズル16aの貫通口を介し、湿潤温調養生空間14内の霧状水分、および温調された空気が漏れでないよう、断熱シート13とノズル16aとの接触部はシールド処理される。水供給口16bは、後述する台車18の周枠18aに固定するよう設置してもよい。
【0023】
送風手段17は、送風口17aと、排気口17bと、送風する空気の温度調整可能な送風機17cとを有し、送風機17cにより所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口17aまで送風することにより湿潤温調養生空間14に送風する。実施の形態1にかかる送風手段17の送風口17aは、図2に示すように、湿潤温調養生空間14の下半部に設けられ、送風口17aから湿潤温調養生空間14に供給された冷風は、覆工コンクリート1を冷却しながら上昇し、湿潤温調養生空間14の最上部付近に設けられる排気口17bから排出される。送風口17aから供給された冷風は、湿潤温調養生空間14の温度を所望の温度まで低減し、覆工コンクリート1の温度上昇を抑制することができる。覆工コンクリート1は、インバート側の拘束が強く、覆工脚部でひび割れ指数が下がる傾向にあるため、湿潤温調養生空間14の下層部に送風口17aを設けることにより、効果的に覆工コンクリート1の冷却を行うことができる。なお、湿潤温調養生空間14内の温度制御は、送風する空気の温度、風量等により行う。
【0024】
なお、覆工コンクリート養生装置100において、送風口17aを、スプリングライン(SL)や、スプリングライン上部に別途設置してもよい。送風口17aを前記位置に別途設けることにより、温調された空気の送風位置を、覆工コンクリート1の温度、送風手段17により送風する空気温度、および水分供給手段16により供給された霧状の水粒子の分散状況等に基づき選定して、送風することができる。
【0025】
また、送風手段17は、覆工コンクリート1を打設する覆工セントル内に温調した空気を送風する覆工セントル送風ライン(図示しない)を有していてもよい。送風手段17は、覆工セントル送風ラインと湿潤温調養生空間14とに温調した空気の送風を切り替える弁を有し、該弁の切替えにより、打込みから脱型までの期間、打設された覆工コンクリート1を、型枠を介して冷却することもできる。あるいは、覆工コンクリート養生装置100は、送風手段17とは別の送風手段を備えた覆工セントル送風ラインにより、脱型前の覆工コンクリート1を温度調整してもよい。なお、送風手段より覆工セントル内に温調した空気を送風する場合には、温調した空気の拡散を防止して効果的に覆工コンクリート1を冷却するために、覆工セントルの型枠箇所を断熱シートで囲い込むことが好ましい。
【0026】
具体的には、覆工セントルの長さ方向の両端開放部に断熱シートを垂れ下げて覆工セントル内部全体を閉鎖された養生空間として、ここに温調した空気を送り込めばよい。あるいは、覆工セントル型枠部形状にほぼ沿ってその内側に断熱シートを設けるとともに、覆工セントルの長さ方向両端部においても覆工セントルの型枠部と断熱シートとの間に同様に断熱シートを設けることで、型枠部の内側に沿って閉鎖された養生空間を形成し、この限定空間に温調した空気を送り込む等が考えられる。前記限定空間での養生であれば、覆工セントル下方中央部は、工事用車両の通路として開放することが可能となるので好ましい。
【0027】
断熱シート13および隔壁15は、覆工コンクリート1の表面1aに沿うように台車18によって支持される。台車18は、周枠18a、柱18b、梁18c、筋交い18dおよび車輪18eからなる。周枠18aは、図2に示すように覆工コンクリート1の表面1aに沿うように門型に形成してある。柱18b、梁18cおよび筋交い18dは、周枠18aを保持する。車輪18eは、柱18bの先端に設けられ、トンネル軸方向に沿って延設されるレール18fに沿って車輪18eを回転させて、台車18をトンネル10内で移動させる。
【0028】
図1および図2に示すように、台車18は、周枠18aおよび梁18cにより、湿潤温調養生空間14が覆工コンクリート1と同様のアーチ型形状を保つように、断熱シート13を支持する。
【0029】
このように、覆工コンクリート1の表面1aの湿潤を保持する湿潤温調養生空間14に、霧状の水分を供給しながら温調した空気を供給することにより、湿潤温調養生空間の湿度および温度を制御することができるので、温暖な地域、季節等過酷な条件下においても、覆工コンクリート1のひび割れを効果的に防止することができる。
【0030】
なお、実施の形態1の水分供給手段16は、水貯留タンク16c内の水を所定温度に制御しているが、水道管等の水供給手段から水分供給口16bまで直接送液し、ノズル16aにより霧状の水分を湿潤温調養生空間14に供給してもよい。
【0031】
また、実施の形態1では、湿潤温調養生空間14に霧状の水分と温調した空気をそれぞれ独立して供給しているが、温調した空気を排気口17bから排気する際、供給した霧状水分も空気とともに少量排出される。したがって、温調空気の供給・排出量と、これにより排出される霧状水分量の関係を実験等により把握し、水分供給手段16により霧状水分を追加供給して、湿潤温調養生空間14内を所定の湿度に制御することが好ましい。
【0032】
あるいは、湿潤温調養生空間14内に湿度計測手段を設置し、該湿度計測手段により湿潤温調空間14内の湿度を計測し、計測した湿度が所定値以下となった場合に、水分供給手段16により霧状水分を追加供給する構成としてもよい。
【0033】
さらに、実施の形態1の変形例として、送風手段17の送風口17aを湿潤温調養生空間14の天端である最上部、および肩部に設けて、最下段に設けた排気口17bから排出する覆工コンクリート養生装置100Aが例示される。図4は、覆工コンクリート養生装置100Aを示すトンネル10要部の縦断面図(トンネル掘削方向である軸方向に沿う断面)を示しており、図5は、図4の覆工コンクリート養生装置100Aを含むトンネルのC−C断面図(トンネル掘削方向である軸方向に直交する断面)を示す。
【0034】
図4および図5に示すように、本変形例にかかる覆工コンクリート養生装置100Aでは、送風機17cにより所定温度に調整された空気が、湿潤温調養生空間14の天端部および肩部にそれぞれ設けられた送風口17aから、湿潤温調養生空間14に供給される。供給された冷風は、覆工コンクリート1を冷却しながら、湿潤温調養生空間14の最下部に設けられた排気口17bから排出される。排気口17bを下部に設けることにより、排気量の調整が容易となる。
【0035】
また、送風口17aは、天端部ではなく、スプリングライン(SL)や、スプリングライン上部に設置してもよい。送風口17aの配置位置は、覆工コンクリート1の温度、送風手段17により送風する空気温度、および水分供給手段16により供給された霧状の水粒子の分散状況等に基づき選定される。
【0036】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、本発明の覆工コンクリート養生装置を使用する覆工コンクリート養生システムである。
【0037】
トンネル10の掘削や、覆工コンクリートの打設等は連続的に行われており、トンネル10の掘削、覆工コンクリートの打設、その後の覆工コンクリートの養生は同程度の時間に行うことが望ましい。しかしながら、覆工コンクリートの養生を、トンネル10の掘削や覆工コンクリートの打設に要する時間と同程度の時間、かつ同程度のスパンで行った場合、地域、季節等の外部環境要因により所望する強度の発現が得られないおそれがある。本実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生システムは、実施の形態1の覆工コンクリート養生装置と既知の覆工コンクリート養生装置とを組み合わせて覆工コンクリートを養生することにより、コンクリートの種類や地域、季節等の外部環境要因に影響されることなく、所望する程度まで強度発現させるとともに、ひび割れ等の発生を抑制する。
【0038】
図6〜図8を参照して、本発明の実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生システム200を説明する。図6は、特開2006−291690号公報に記載の覆工コンクリート養生装置100Cを示すトンネル要部の縦断面図であり、図7は、図6の覆工コンクリート養生装置100Cを含むトンネルのD−D断面図である。覆工コンクリート養生装置100Cは、図6および図7に示すように、覆工コンクリート1の表面1aと断熱シート13とで形成する断熱空間19に、送風機17cにより温調した空気を、ダクト17dにより送風し、ダクト17eから排気して覆工コンクリートの養生を行う養生装置である。
【0039】
図8は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生システム200を示すトンネル10の縦断面図である。覆工コンクリート養生システム200は、図8に示すように覆工セントル12によって覆工コンクリート1を打設した長さ(トンネル掘削方向である軸方向の長さ)を基準とし、覆工セントル12の型枠長さ分を1スパンとして、トンネル10軸方向の長さが1スパン分の長さと等しい覆工コンクリート養生装置100(図1〜3参照)と、2台の覆工コンクリート養生装置100Cを連続して接続している。
【0040】
覆工コンクリート養生システム200は、覆工セントル12による覆工コンクリート1の打設工程後の、覆工コンクリート1の冷却養生を行う覆工コンクリート養生装置100と、冷却養生後に第1の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100C−1と、第2の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100C−2とからなる。第1保温養生と第2保温養生の養生条件は、同じでも異なっていてもよい。覆工コンクリート養生システム200は、覆工コンクリート1の打設からの経過時間に応じて、覆工コンクリート養生装置100、100C−1および100C−2の養生条件を適宜変更して、覆工コンクリート1の養生を行うことができる。
【0041】
覆工コンクリート1のひび割れが最も多く発生するのは夏季であり、覆工セントル12から覆工コンクリート1が打込まれる段階から、いかに覆工コンクリート1の内部温度を抑制できるかがひび割れ防止のポイントとなる。打込み中から始まる冷却養生工程において、実施の形態1にかかる覆工コンクリート養生装置100を使用すれば、効果的に覆工コンクリート1の内部温度の上昇を抑制でき、その後の保温養生において、図6および図7に示したバルーンタイプの養生装置や、強制送風を伴わないバルーンタイプの養生装置、あるいはミストタイプの養生装置を使用しても、コンクリートの強度発現を図りながら、ひび割れ抑制が可能となる。
【0042】
本実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生システム200では、打設後の覆工コンクリート1を覆工コンクリート養生装置100により養生し、その後バルーンタイプの養生装置100Cで保温養生することにより、コンクリートの種類や、季節、地域等の外部要因に影響されることなく、覆工コンクリート1のひび割れを抑制し、また、所望する程度まで覆工コンクリート1の強度発現が可能になる。
【0043】
実施の形態2の覆工コンクリート養生システム200は、覆工コンクリート養生装置100と2台の覆工コンクリート養生装置100Cを連続して接続して養生するが、コンクリートの種類等や外部環境条件に応じて、覆工コンクリート養生装置100と覆工コンクリート養生装置100Cとを接続して、冷却養生と保温養生を行ってもよい。
【0044】
なお、実施の形態2の覆工コンクリート養生システム200においては、打設後の覆工コンクリート1を覆工コンクリート養生装置100により養生しているが、覆工コンクリート養生装置100に替えて変形例にかかる覆工コンクリート養生装置100Aを使用したシステムでも同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の覆工コンクリート養生装置および覆工コンクリート養生システムは、トンネルに打設された覆工コンクリートの養生に有用であり、特に、コンクリート打設後早期に脱型された覆工コンクリートの養生において、ひび割れを抑制しながら所望する程度まで強度発現させるのに適している。
【符号の説明】
【0046】
1 覆工コンクリート
1a 表面
10 トンネル
10a 内壁面
11 吹付コンクリート
12 覆工セントル
13 断熱シート
14 湿潤温調養生空間
15 隔壁
16 水分供給手段
17 送風手段
18 台車
18a 周枠
18b 柱
18c 梁
18d 筋交い
18e 車輪
18f レール
100 覆工コンクリート養生装置
200 覆工コンクリート養生システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生装置であって、
覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる断熱シートと、
前記覆工コンクリート表面と前記断熱シートとにより形成される湿潤温調養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、
前記湿潤温調養生空間内に、温調された空気を送風する送風手段と、
を備えることを特徴とする覆工コンクリート養生装置。
【請求項2】
前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱型前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の覆工コンクリート養生装置を含む覆工コンクリート養生システムであって、
覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする覆工コンクリート養生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87481(P2012−87481A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232993(P2010−232993)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(505356491)株式会社マシノ (10)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】