説明

視線誘導標

【課題】通行車両等が接触した際には効率的に弾性変形して損傷を防止できると共に、反射部材の剥がれや破損を防止し、かつ優れた光反射性能を有する視線誘導標を提供すること。
【解決手段】誘導標本体と、該誘導標本体に取り付けられる反射部材とを備え、前記誘導標本体は、被設置面に当接されて取り付けられる被設置面取付部と、反射部材が取り付けられて表示部を構成する反射部材取付部と、前記被設置面取付部と反射部材取付部とを接続する接続部とを備えており、前記接続部は、前記反射部材取付部に比して弾性変形容易な部材により形成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線誘導標に関するものであり、より詳しくは、道路近傍に設置される縁石や防護柵、その他道路付帯設備に取り付けられ、道路利用者の交通安全に資するための視線誘導標に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、縁石上や道路上、あるいは防護柵その他の道路付帯設備上に設置され、光反射性の部材を備えることによって、車両の運転者等、道路利用者に対して視線誘導を行い、交通安全を図るための視線誘導標が広く用いられている。
【0003】
このような視線誘導標の代表的なものとしては、誘導標本体と当該誘導標本体に取り付けられる反射部材(いわゆる反射体、反射シートなど)とを備え、当該反射部材としては、ガラスビーズやプリズム反射シートなどを利用した再帰反射性部材を用いたものがある。
【0004】
このような視線誘導標は、通行車両等が接触して変形や脱落などの損傷を受ける恐れが大きい。それゆえ、これを防止するために誘導標本体を弾性変形可能な部材で構成して、これにより、通行車両等が接触した場合には誘導標本体が弾性変形するようにして、損傷を受けないようにするなどの工夫が様々になされてきた(下記特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−121714号公報
【特許文献2】特開2002−206212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の視線誘導標においては、確かに通行車両等の接触による損傷の防止に対しては、非常に効果がある。しかしながら、このような従来の視線誘導標においては、誘導標本体に取り付けられる反射部材は、柔軟性のある反射シートを用いる必要があった。前記従来の視線誘導標は、これに通行車両等が接触した場合には、誘導標本体全体が弾性変形するため、この弾性変形に伴って反射部材も変形する必要があるからである。もし、柔軟性のない反射部材を用いるとすれば、通行車両等の接触により、誘導標本体が弾性変形した場合には、反射部材が誘導標本体から剥がれたり、破損する可能性が非常に高い。
【0007】
一方、一般的に柔軟性のある反射シートは薄く成形される必要があり、そのような制約がなく柔軟性を有しない反射体に比べて光反射性能が劣るものが多い。したがって、前記従来の視線誘導標においては、反射シートを用いることから、光反射性能、言い換えれば道路利用者における視認性をある程度犠牲にせざるを得ない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を克服するためになされたものであり、通行車両等が接触した際には効率的に弾性変形して損傷を防止できると共に、反射部材の剥がれや破損を防止し、かつ優れた光反射性能を有する視線誘導標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る視線誘導標は、誘導標本体と、該誘導標本体に取り付けられる反射部材とを備え、前記誘導標本体は、被設置面に当接されて取り付けられる被設置面取付部と、反射部材が取り付けられて表示部を構成する反射部材取付部と、前記被設置面取付部と反射部材取付部とを接続する接続部とを備えており、前記接続部は、弾性変形可能な部材により形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る視線誘導標によれば、被設置面取付部と反射部材取付部との間に、弾性変形可能な接続部を備えているため、通行車両が視線誘導標に接触した場合でも接続部が効果的に弾性変形し、視線誘導標を損傷せずに済む。また、反射部材取付部に先んじて接続部が弾性変形するので、反射部材取付部に取り付けた反射部材が剥がれたり、破損したりする恐れがない。
【0011】
また、本発明に係る視線誘導標において、被設置面取付部、接続部及び反射部材取付部は、それぞれ板状の部材により形成され、前記接続部及び反射部材取付部は、被設置面取付部に対して垂直に延びるように設けられているようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、接続部がその表裏面方向に弾性変形できるので、当該表裏面双方向からの通行車両等の接触に対して、損傷防止の効果を期待できる。
【0013】
さらに、本発明に係る視線誘導標において、反射部材取付部の外周には、表裏面それぞれに突条が形成されているようにすることもできる。
【0014】
このようにすれば、当該突条が、直接的に通行車両等の接触から反射部材を保護することが可能となり、また、反射部材取付部の強度が高まるので、通行車両等が接触した際には、より一層接続部が反射部材取付部に優先して弾性変形することになり、より効果的に視線誘導標の損傷を防止できる。
【0015】
また、本発明に係る視線誘導標において、接続部には、その表裏面に貫通する貫通孔が形成されているようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、簡単な構成により、接続部を弾性変形容易とすることができる。また、接続部に対する風荷重を軽減するので、通行車両等の接触時以外における接続部の無用の弾性変形を防止することができる。さらに、この視線誘導標の使用原料を減らすことができ、省資源に資するものとなる。
【0017】
また、このように構成することで、本発明に係る視線誘導標をたとえば道路近傍に設置されている防護柵などの支柱の周側面に取り付ける場合、貫通孔に樹脂製或いは金属製のバンドや金具などを挿通させ、当該バンドや金具により視線誘導標を支柱にしっかりと締結することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明に係る視線誘導標によれば、被設置面取付部と反射部材取付部との間に、弾性変形可能な接続部を備えているため、通行車両が視線誘導標に接触した場合でも接続部が効果的に弾性変形し、視線誘導標を損傷せずに済む。また、反射部材取付部に先んじて接続部が弾性変形するので、反射部材取付部に取り付けた反射部材が剥がれたり、破損したりする恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る視線誘導標の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す実施形態における誘導標本体の正面図である。
【図3】図1に示す視線誘導標の平面図である。
【図4】図1に示す視線誘導標の側面図である。
【図5】図3に示すA−A線間における側断面図である。
【図6】図3に示すB−B線間における側断面図である。
【図7】本発明に係る視線誘導標の他の実施形態を示す(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図であり、(d)は(c)図のC−C線における断面図である。
【図8】本発明に係る視線誘導標の更に別の実施形態を示す(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図9】本発明に係る視線誘導標の更に別の実施形態を示す(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係る視線誘導標の一実施形態を示すものであり、誘導標本体2と、反射部材3とにより視線誘導標1が構成されている。
【0022】
誘導標本体2は、図1〜6に示すとおり、被設置面取付部21と、反射部材取付部22と、接続部23とにより構成されている。被設置面取付部21は、平面視八角形状の板状部材により構成され、その底面が視線誘導標1の被設置面に当接するようにして取り付けられる。この被設置面取付部21には、複数のアンカー孔211が形成されており、これにより両面テープや接着剤等を用いた接着式による取り付けのみならず、アンカー式による取り付けも可能なものとなされている。したがって、施工現場において、視線誘導標1の取り付け方法を任意に選択可能となっている。尚、むろん当該アンカー孔211は、必ずしも予め形成されている必要はなく、必要に応じて施工現場で形成するようにしてもよい。
【0023】
反射部材取付部22は、接続部23を介して被設置面取付部21から垂直に立ち上がる板状部材221からなり、その表裏両面の外周縁にはそれぞれ略水平方向に延びる突条222が形成されている。これにより、図5及び図6に示すように、反射部材取付部22の任意の側断面は、略「エ」の字形状となされている。
【0024】
また、板状部材221及び突条222により形成される凹部223には、反射部材3が取り付けられる。この実施形態における反射部材3は、再帰反射性の硬質な反射体3を用いているが、これに替えて軟質の反射体、反射シートなどを適宜適用してもよい。
【0025】
接続部23は、被設置面取付部21と反射部材取付部22とを接続するものであり、被設置面取付部21から垂直に立ち上がる板状の部材であって、その上端辺は反射部材取付部22と一体的に形成されている。図1、図4、図5及び図6等に示すように、接続部23には、その表裏面に貫通する貫通孔231が複数箇所形成されており、これによって、接続部23は、反射部材取付部22に比してその表裏面方向(図4におけるX、Y方向)への弾性変形が容易なものとなされている。
【0026】
この点、この実施形態においては、上述のとおり貫通孔231を形成することにより、接続部23を反射部材取付部22に比して弾性変形容易なものとしているが、この構成に限られるものではない。例えば、これに替えて接続部23を反射部材取付部22よりも薄肉化するようにしてもよいし、あるいは反射部材取付部22と接続部23とを別の材料で形成するようにし、接続部23をより柔軟性のある部材で構成するようにしてもよく、あるいは上記構成を複数組み合わせて採用するようにしてもよい。
【0027】
尚、反射部材取付部22に上述のとおり突条222が設けられていることで、反射部材取付部22は、前記X、Y方向へは弾性変形しにくくなるので、これによっても、接続部23は、反射部材取付部22よりも弾性変形が容易なものとなっている。
【0028】
また、前記貫通孔231が形成されていることで、接続部23にかかる風荷重は軽減されるので、接続部23が弾性変形することが防止される。
【0029】
さらに、この実施形態においては、被設置面取付部21と反射部材取付部22と接続部23とは、ポリウレタン樹脂により一体的に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、被設置面取付部21と反射部材取付部22と接続部23とはそれぞれ別体として成形されたのち、一体的に連結されるようにしてもよい。
【0030】
また、この実施形態においては、誘導標本体2はウレタン樹脂により形成されているが、これに限らずポリ塩化ビニルほか、柔軟性のある合成樹脂材料を使用してもよく、CRやEPDMなどのゴム材料により形成するようにしてもよい。さらに、上述のとおり、被設置面取付部21、反射部材取付部22、及び接続部23をそれぞれ別の材料により形成するようにしてもよい。
【0031】
さらに、この実施形態においては、被設置面取付部21もウレタン樹脂により形成され、柔軟性を備えている。それゆえ、視線誘導標1の被設置面が曲面などの場合でも、当該曲面形状に沿って被設置面取付部21の底面が変形するので、さまざまな形状の被設置面に対して容易に取り付けが可能となっている。すなわち、道路上や縁石上などの平面上のみならず、防護柵等の円筒形状の支柱における側面(周面)にも、両面テープや接着剤などを用いて容易に取り付けることができる。また、様々な形状の被設置面に施工可能であるため、視線誘導標1の被設置面の形状に応じて様々な形状、大きさの誘導標本体2を予め作製する必要がなく、在庫の管理が容易となる。
【0032】
また、図4乃至図6を参照して説明すると、接続部の上端部(反射部材取付部の下端部)には、その表裏面双方に略水平方向に突出する突条222が形成されている。これにより、図6に示す側断面にあるように、接続部23と突条222とが略T字形状となされている。この突条222が形成されていることにより、視線誘導標1に通行車両等が接触して、接続部がX方向、又はY方向に大きく弾性変形した場合、当該突条222の下端部222aが被設置面取付部21の上面に接するようになされており、これによって、通行車両等の接触による荷重は分散される。また、この実施形態においては突条222も接続部23と同様に柔軟性のある部材(ウレタン樹脂)により形成されているおり、より好適に通行車両等の接触による荷重は分散されるので、視線誘導標1がより効率よく保護され、損傷を免れることが可能となる。
【実施例2】
【0033】
図7は、本発明に係る視線誘導標1の別の実施形態を示すものであり、先の実施例1との違いは、被設置面取付部21の上面に複数の突条リブ212が形成されている点である。
【0034】
この複数の突条リブ212を形成したことにより、接続部23が大きく弾性変形した場合には、反射部材取付部22の突条22の下端部222aが、当該突条リブ212に当接するので、より弾性的に被設置面取付部21と反射部材取付部22とが接することとなるため、より一層、視線誘導標1が好適に保護されて損傷の恐れが少なくなり、かつ、反射部材取付部22の復元力が向上する。また、接続部23が大きく弾性変形した際、突条222が突条リブ212に接触することで、反射体212が保護されるものとなされている。
【実施例3】
【0035】
図8は、本発明に係る視線誘導標1の更に別の実施形態を示すものであり、上記実施例との相違点は、反射部材3が、いずれも反射面が上方に傾けられた状態で取り付けられるようになされている点である。
【0036】
このように構成することで、例えばカーブの途中地点に設置されている防護柵や標識等の支柱に視線誘導標1を取り付ける場合に好適なものとなされている。
【実施例4】
【0037】
また、図9は、本発明に係る視線誘導標1の更に別の実施形態を示すものであり、上記実施例との相違点は、反射部材3が、いずれも反射面が水平方向左右(この図面においては右方向)に傾けられた状態で取り付けられるようになされている点である。
【0038】
このように構成することで、例えばカーブの途中における道路上、あるいは縁石上などの水平面上に視線誘導標1を取り付ける場合に好適なものとなされている。
【0039】
以上、本発明に係る視線誘導標について、いくつかの実施形態を例示して説明したが、本発明は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に形態等を変更することが可能なものである。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、いずれも反射部材取付部の表裏両面に反射部材を備えるようにしているが、視線誘導標の設置場所によってはいずれか片面にのみ備えるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 視線誘導標
2 誘導標本体
21 被設置面取付部
211 アンカー孔
212 突条リブ
22 反射部材取付部
221 板状部材
222 突条
223 凹部
23 接続部
231 貫通孔
3 反射部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導標本体と、該誘導標本体に取り付けられる反射部材とを備え、
前記誘導標本体は、被設置面に当接されて取り付けられる被設置面取付部と、
反射部材が取り付けられて表示部を構成する反射部材取付部と、
前記被設置面取付部と反射部材取付部とを接続する接続部とを備えており、
前記接続部は、弾性変形可能な部材により形成されていることを特徴とする視線誘導標。
【請求項2】
被設置面取付部、接続部及び反射部材取付部は、それぞれ板状の部材により形成され、
前記接続部及び反射部材取付部は、被設置面取付部に対して垂直に延びるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の視線誘導標。
【請求項3】
反射部材取付部の外周には、表裏面それぞれに突条が形成されていることを特徴とする請求項2記載の視線誘導標。
【請求項4】
接続部には、その表裏面に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の視線誘導標。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−246929(P2011−246929A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120129(P2010−120129)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】