説明

視野角制御シート及びその製造方法

【課題】複雑な工程や煩雑な作業を要することなく得ることができ、正面方向における光透過率が高く、正面方向から傾斜した方向における遮光性が高く、安価な視野角制御シートを得る。
【解決手段】光入射面2aと、光入射面2aと対向する光出射面2bとを有し、透光性の単一の樹脂層からなるシート本体2と、シート本体2内に設けられており、光入射面2aと交差する方向に延びる複数の遮光部材3とを備え、複数の遮光部材3が光入射面2aの面方向において複数配置されている、視野角制御シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示装置や車両もしくは航空機の窓などに設置され、入射光に対し出射光の見える範囲を限定する用途に用いられる視野角制御シートに関し、より詳細には、樹脂からなるシート本体内に複数の遮光部材が配置されている視野角制御シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯型の液晶表示装置においては、使用者以外の第三者が画面を覗き見することを防止するために、視野角制御シートが用いられている。この種の視野角制御シートは、正面方向における光線透過率が高く、斜め方向の光線透過率が低くされている。そのため、視野角が正面方向及び正面方向からわずかに傾斜した角度範囲に制限されていることが望ましい。
【0003】
下記の特許文献1には、この種の用途に用いられる可撓性のルーバー付きプラスチックフィルムが開示されている。この可撓性のルーバー付きプラスチックフィルムは、以下のようにして製造されている。すなわち、透明なフィルムと不透明なフィルムとを交互に積層し、積層体を得る。この積層体をフィルム積層面と直交する方向にスライスし、フィルム本体を得る。このフィルム本体では、面方向に沿って、上記透明フィルム及び不透明フィルムに由来する透明層と不透明層とが交互に位置している。すなわち、透明層及び不透明層が、フィルム本体のスライスにより形成された一方の面から他方の面に至るように延びており、かつ該透明層と不透明層がスライスにより形成された切断面の面方向に沿って交互に位置している。このフィルム本体では、透明層と不透明層との間の密着力が十分ではない。そこで、上記フィルム本体の片面もしくは両面に、透光性のフィルムをラミネートすることにより一体化されて視野角制御フィルムが得られている。
【0004】
他方、下記の特許文献2には、基材の片面に紫外線硬化性樹脂組成物層を形成し、フォトリソグラフィーによりパターニングし、基材の表面に凸部と凹部とを面方向において交互に配置した構造が得られている。この凹部に吸光性材料を充填することにより、光制御板が得られている。
【0005】
また、下記の特許文献3には、真鍮からなる板の表面に複数の線状の溝を機械加工することにより金型を形成し、該金型を用いてアクリル系樹脂を成型することにより、線状溝に対応した複数の凸部が設けられているアクリル系樹脂シートを得る方法が開示されている。ここでは、線状の溝の側面の角度は、真鍮板表面と直交する方向に対して8.5度傾斜されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−190683号公報
【特許文献2】特開2008−89728号公報
【特許文献3】特開平2−97904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の視野角制御フィルムでは、透明フィルム及び不透明フィルムを交互に積層して積層体を得る工程、該積層体を積層方向に直交する方向にスライスする工程、さらに積層体をスライスして得られたフィルム本体の片面もしくは両面に透光性のフィルムをラミネートして一体化する工程といった煩雑な工程を必要としていた。従って、例えば携帯電話機や携帯型ゲーム機のような非常に小さな液晶表示部分に用いられる視野角制御フィルムを得ようとした場合であっても、製造に際し多数の透明フィルムや積層フィルムを積層しなければならなかった。よって、製造工程が非常に複雑であり、視野角制御シートのコストが非常に高くなるという問題があった。
【0008】
他方、下記の特許文献2に記載の光制御板の製造方法では、凸部の形成に際し紫外線硬化性樹脂組成物をパターニングするという煩雑な工程を必要としていた。そのため、製造工程及び製造装置が煩雑であり、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載の光制御板では、金型の複数の線状の溝の側面の傾斜角度が光線方向に対して8.5度傾斜されているため、正面方向における透過率を十分に高くできない。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、正面方向における光線透過率を高めることができ、かつ出射光の指向性を高めることができ、さらに生産性に優れ、安価に提供し得る視野角制御シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る視野角制御シートは、光入射面と、光入射面と対向する光出射面とを有し、透光性の単一の樹脂層からなるシート本体と、前記シート本体内に設けられており、前記光入射面もしくは光出射面と交差する方向に延びる複数の遮光部材とを備え、光入射面から入射された光が光出射面の一部の領域から出射されるように、前記複数の遮光部材が、前記光入射面もしくは光出射面の面方向に沿って複数配置されており、前記遮光部材の前記光入射面もしくは光出射面と直交する方向に沿う断面に沿う形状が長方形である、視野角制御シートである。
【0012】
本発明に係る視野角制御シートのある特定の局面では、前記遮光部材が、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。この場合には、紫外線硬化性樹脂組成物を凹部に充填した後、紫外線を照射するだけで、遮光部材を形成することができる。
【0013】
本発明に係る視野角制御シートの製造方法は、前記シート本体に複数の凹部を形成する工程と、前記シート本体の前記複数の凹部に遮光性材料からなる複数の遮光層を形成する工程とを備える。
【0014】
本発明に係る視野角制御シートの製造方法のある特定の局面では、前記シート本体を形成する工程が、外周面に前記複数の凹部を反転した形状を有する複数の凸部が設けられている型ロールに前記透光性の樹脂からなるシートを密着させ、前記凸部に対応した凹部が形成される。この場合には、型ロールに溶融状態にあるシート状物または予め用意された透光性の樹脂シートを密着させるだけで、透光性のシート本体を容易に形成することができる。従って、製造工程の簡略化及びコストの低減をより一層果たすことができる。
【0015】
本発明に係る視野角制御シートの製造方法の他の特定の局面では、前記シート本体を形成する工程が、前記シート本体の複数の凹部に対応した複数の凸部が形成されている金型面を有する金型の該金型面上に溶融状態にある樹脂を流し込み、硬化させることによりシート本体が形成される。この場合には、金型に溶融樹脂を供給するだけで、透光性のシート本体を容易に形成することができる。従って、コストを低減することも可能となる。
【0016】
本発明に係る視野角制御シートの製造方法のさらに他の特定の局面では、前記遮光層を形成する工程が、前記シート本体の前記複数の凹部に紫外線硬化性樹脂組成物を充填し、紫外線の照射により硬化させることにより形成される。この場合には、紫外線硬化性樹脂の充填及び紫外線の照射といった簡単な工程で遮光層をシート本体内に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る視野角制御シートでは、透光性の単一の樹脂層からなるシート本体を用いているため、シート本体の製造に際し、複数のフィルム層を積層しスライスするといった煩雑な工程を実施する必要がない。従って、製造工程の簡略化及びコストの低減を果たすことができる。加えて、複数の遮光部材が、上記シート本体の凹部に形成されており、光入射面もしくは光出射面と交差する方向に延びているため、該複数の遮光部材により、複数の遮光部材の延びる方向に沿う光線透過率を高め、該延びる方向から傾斜された方向における光線透過率を十分に低めることができ、それによって視野角の指向性を効果的に高めることができる。
【0018】
よって、本発明によれば、遮光部材の延びる方向における光線透過率が高くかつ視野角の指向性に優れており、かつ安価な視野角制御シートを提供することが可能となる。
【0019】
本発明に係る視野角制御シートの製造方法では、単一の樹脂層からなるシート本体を形成した後に、該シート本体の凹部に複数の遮光部材を形成することにより、本発明の視野角制御シートを得ることができるので、製造工程の簡略化、使用する材料の種類の低減を果たすことができ、従って視野角制御シートのコストを低減することができる。しかも、本発明に従って、遮光部材の延びる方向における光線透過率が高く、かつ視野角の指向性に優れた視野角制御シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る視野角制御シートの断面図であり、(b)はその作用効果を説明するための模式図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の視野角制御シートの製造方法を説明するための模式図であり、(b)は、該製造方法に用いられる型ロールを示す断面図である。
【図3】本発明の実施例3で用意された視野角制御シートを示す正面断面図である。
【図4】本発明の実施例4で用意された視野角制御シートの正面断面図である。
【図5】実施例1〜4における視野角と輝度比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。以下の説明は、図の下面を光入射面としているが、図の上面を光入射面としてもよい。
【0022】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る視野角制御シートを示す正面断面図であり、(b)は作用効果を示す模式図である。
【0023】
視野角制御シート1は、透光性を有する単一の樹脂層からなるシート本体2を有する。シート本体2は、光入射面2aと、光入射面2aとは反対側の面である光出射面2bとを有する。
【0024】
シート本体2は、透光性を有する樹脂により形成されるが、この透光性を有する樹脂としては可視光を透過し得る限り特に限定されるものではない。好ましくは、正面光線透過率が80%以上である樹脂を用いることが望ましい。正面光線透過率が80%以上であれば、光出射面2bから出射される光量を多くすることができる。
【0025】
上記透光性を有する樹脂の具体的な例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、EVA樹脂、ブチラール樹脂などを挙げることができる。透光性を有する樹脂には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などが添加されていてもよい。
【0026】
遮光部材3は、シート本体2内に設けられている。本実施形態では、遮光部材3は、光入射面2aに一端が露出しており、光出射面2b側に延びている。遮光部材3の延びる方向は、光入射面2aと交差する方向であるが、本実施形態では、直交する方向とされている。好ましくは、本実施形態のように、遮光部材3の延びる方向が、光出射面2bと直交する方向であることが望ましい。それによって、光出射面2b側から観察した場合の光量を高めることができる。すなわち、いわゆる正面方向における透過率を高めることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、複数の遮光部材3は、光入射面2aに一端が露出しており、光出射面2b側に延ばされており、但し光出射面2bには至っていないが、逆に、遮光部材は、光出射面2bに露出しており、光入射面2a側に延ばされており、但し光入射面2aに至らないように形成されていてもよい。
【0028】
上記遮光部材3は、光入射面2aと直交する方向に沿う図1(a)に示す断面において、長方形の形状を有する。遮光部材3の延びる方向すなわち長さをL、長さと直交する方向の寸法を幅W2とした場合、長さと幅との比であるアスペクト比L/W2は1〜20の範囲であることが望ましい。アスペクト比が1未満の場合には、視野角制御機能が低下することがあり、20を超えると、シート本体2の厚みが増加し、薄型化が困難となることがある。
【0029】
ここで、遮光部材の断面形状が長方形であるとは、光入射面と直行する方向に対し、断面形状の長辺の角度が0°〜1°の範囲であることを意味する。
【0030】
複数の遮光部材3は、本実施形態では、光入射面2aの面方向に沿って等ピッチで配置されているが、必ずしも等ピッチで配置されている必要はない。もっとも、隣り合う遮光部材3間の間隔は、遮光部材3の幅Wより広いことが好ましい。それによって、正面方向から観察した場合の光透過量を十分に多くすることができる。
【0031】
遮光部材3の幅Wは、50μm以下であることが好ましい。50μmよりも大きくなると、肉眼で見た場合に遮光部材3が見え易くなる。
【0032】
上記遮光部材3は、シート本体2を構成している材料の光線透過率よりも光線透過率が低い限り、適宜の材料により形成することができる。好ましくは、完全に光を遮蔽し得る材料を用いることが望ましい。
【0033】
遮光部材3を構成する材料としては、炭素質材料や金属などを用いることができる。また、好ましくは、樹脂に黒色顔料などの顔料や着色剤を混練してなる材料を用いることが望ましく、その場合には、シート本体2を形成した後に、凹部2cにこのような材料を容易に充填し、遮光部材3を容易に形成することができる。
【0034】
より好ましくは、遮光部材3は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂に、上記黒色顔料や着色剤を混練してなる材料を紫外線の照射により硬化させることにより形成される。この場合には、未硬化の紫外線硬化性樹脂に上記黒色顔料などを混練してなる紫外線硬化性樹脂組成物を、凹部2cに充填し、しかる後紫外線を照射すればよい。従って、遮光部材3を容易に形成することができる。
【0035】
上記紫外線硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0036】
次に、図1(b)を参照して、視野角制御シート1により視野角が制御されることをより具体的に説明する。
【0037】
図1(b)に示すように、光入射面2aから透過してきた光は、矢印Aで示すように、光出射面2bに正対している観察者の目に届くことになる。従って、光入射面2a側が例えば液晶ディスプレイが貼り合わされている場合、光出射面2bに正対している観察者において表示画像を観察することができる。
【0038】
他方、矢印Bで示すように視野角制御シート1の光出射面2bにおいて、光出射面2bと正対している位置よりも側方になる位置Bから第三者が観察しようとした場合、遮光部材3の存在により、光入射面2a側から透過してきた光を観察することはできない。すなわち、横からの覗き見を防止することができる。
【0039】
このように視野角が制限される程度を、図1(b)の光路Cを参照して説明する。光路Cは、光入射面2aに向かって、光入射面2aと直交するZ軸に対して傾斜角度θ2をなす角度で入射した場合の光路を示す。この光路では、遮光部材3の基端をかすめてシート本体2内に至る。シート本体2内に進入するところで、光は屈折し、さらに隣り合う遮光部材3の上端をかすめ、光出射面2bから出ていくこととなる。この場合、シート本体2内の光路部分の軸Zに対する傾斜角度をθ1とする。シート本体2に入射した光は、入射した際に屈折し、さらにシート本体2から光出射面2bを経て外に出射される場合にZ軸に対して傾斜角度θ2方向に再度屈折することとなるが、光路Cよりも矢印Dで示す外側領域では、光路Cで到達する光を観察することができない。
【0040】
従って、視野角制御シート1では、視野角は、光入射面2aと直交する方向に対し、傾斜角度がθ2以下の範囲内となる。このように、視野角制御シート1を用いれば、光出射面2b側において光入射面2aから透過してくる光を観察し得る視野角を一定の範囲に制限することができる。この視野角を狭めるには、すなわち遮光性を高めるには、図1(b)から明らかなように、遮光部材3の長さLを大きくすればよい。すなわち、前述したアスペクト比L/W2を大きくすればよいことがわかる。
【0041】
次に、上記実施形態の視野角制御シート1の製造方法を説明する。視野角制御シート1の製造に際しては、先ず、複数の凹部2cを有するシート本体2を形成し、次に凹部2c内に遮光部材3を形成する。シート本体2の形成方法は特に限定されないが、例えば、図2の(a)及び(b)に示す製造装置11を用いることができる。製造装置11では、溶融押出機12がTダイ12aを有する溶融押出機12のTダイ12aから上記シート本体2を構成する樹脂が溶融状態で押し出される。この押し出されたシート状物が型ロール13とタッチロール14との間に供給される。
【0042】
型ロール13は、図2(b)に示すように、外周面に前述の凹部2cを反転した凸部13aを有する。シート状物が型ロール13とタッチロール14との間に供給されると、型ロール13の外周面にシート状物が密着される。その結果、上記凸部13aを反転した凹部2cがシート状物表面に形成され、このような凹部2cを有するシート本体2が巻取りロール15により巻き取られる。
【0043】
型ロール13とタッチロール14との間に供給される際に、上記凸部13aの転写を高精度に行うには、シート状物は溶融状態に近いことが望ましい。従って、Tダイ12aの温度は、樹脂が分解しない範囲でなるべく高い温度であることが好ましい。より具体的には、シート本体2を構成する樹脂の融解温度をTmとしたとき、上記Tダイ12aの温度はTm以上であることが好ましい。
【0044】
さらに、シート状物が型ロール13に最初に接触する部分において、型ロール13の外周面の温度もTm以上となるように型ロール13が加熱されていることが望ましい。この加熱は、型ロール13を鉄やニッケル等で構成し、高周波誘導加熱を用いることが望ましい。もっとも、加熱方法は特に限定されるものではない。
【0045】
また、型ロール13とタッチロール14との間に樹脂シートを供給し転写法により上記凹部にこの樹脂を形成するに際しては、溶融押出機12を必ずしも用いずともよい。すなわち、予め用意された樹脂シートに加熱し、溶融状態に近い高温状態とし、型ロール13とタッチロール14との間に供給してもよい。
【0046】
さらに、上記のような型ロール13を用いる方法の他、平板状の金型の上面に上記凹部2cを反転した複数の凸部を形成してなる金型を用意し、該金型にシート本体2を構成する樹脂を溶融状態で流延し、硬化させ、シート本体2を得てもよい。
【0047】
その他、様々なプレス成形法、平面スタンパもしくはロールスタンパなどを用いた方法等によって上記シート本体2を得てもよい。
【0048】
上記型ロール13の外周面の凸部13aや、平板状の金型の上面に形成される凸部などのように、シート本体2の凹部2cを形成するための金型面の加工は、適宜の方法で行い得る。例えば、金型の表面をリン含有ニッケルで無電解メッキし、該無電解メッキ層を切削加工することにより形成してもよい。
【0049】
リン含有ニッケルからなるメッキ層を形成し、切削加工により凸部を形成する場合、切削性が良好であるため、アスペクト比が高い遮光部材3を得るための凹部2cを高精度に形成することができる。また、リン含有ニッケルは機械的強度に優れるため、シート本体2に賦形する際、及び金型からシート本体を離型する際の応力による変形等が生じ難い。
【0050】
好ましくは、金型加工によりマザーの金型を形成し、該マザーの金型から作製した複数の金型すなわちマスター版を作製し、該マスター版を用いてシート本体2を得ることが望ましい。マスター版の作製は、公知の方法で例えばマザーの金型にニッケル等の金属メッキを施し、得られたメッキ層を剥がし、金属からなるマスター版を作製する、いわゆる電鋳法を用いることが望ましい。
【0051】
上記のようにしてシート本体2を得た後に、シート本体2の凹部2cに遮光部材3を形成する方法については、前述した適宜の方法を用いることができる。もっとも、好ましくは、凹部2cに遮光部材3を得るための材料を充填するに際し、該材料の粘度は、23℃において15Pa・s以下であることが好ましい。凹部2cの形状にもよるが、粘度が23℃において15Pa・s以下である場合、アスペクト比が高い遮光部材3を形成するための凹部2cを高精度に形成することができる。同様に、上記遮光部材3を得るための材料を凹部2cに充填するに際しては、雰囲気を10kPa以下の減圧下とすることが望ましく、それによって、アスペクト比が高い遮光部材3を得るための凹部2cにも遮光部材3を構成するための材料を確実に充填することができる。
【0052】
遮光部材3の光学濃度すなわちO.D.値は3以上が好ましく、より好ましくは6以上である。それによって、遮光すべき領域において、光をより確実に遮蔽することができる。
【0053】
次に、具体的な実施例につき説明する。
【0054】
(実施例1)
鋼材、ニッケル等からなる円筒状の成形ロールの表面に、リンを10重量%含有するリン含有ニッケルを無電解メッキし、メッキ層を形成した。このメッキ層を、ダイヤモンド工具を用いて切削加工し、凹部2cを形成した。図1(b)に示す凹部2c間のピッチP=65μm、凹部2cの深さに相当するh=100μm、幅W1=W2=10μmとした。
【0055】
このようにして得られた型ロールを図2(a)に示した型ロール13の代わりに用い、その他は図2(a)と同様の製造装置11を用い、シート本体2を得た。使用した樹脂は、ポリメチルメタクリレート樹脂(旭化成社製、商品名:デルペット560F)、屈折率1.49であり、Tダイ12aの温度は200℃とし、シート本体2を得た。得られたシート本体2では、凹部2cのピッチは65μm、深さは100μm、幅Wは10μmであった。
【0056】
このようにして得られたシート本体2をロール15から繰り出し、長さ方向と直交する方向に切断し、矩形のシート本体2を得た。しかる後、遮光部材3を形成するための材料として、紫外線硬化性樹脂組成物(十条ケミカル社製、商品名:レイキュアーGA4190、原液のまま使用)を周囲の雰囲気を3kPaの減圧下に維持し、凹部2c以外をマスクし、凹部2cに塗り込んだ。次に、UV乾燥機を用いて紫外線を照射し、上記紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させた。このようにして、遮光部材3を形成し、視野角制御シート1を得た。
【0057】
なお、上記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化後のO.D.値は6である。
【0058】
図1(b)に示すように、この視野角制御シート1では、計算によると、図1(b)のθ1=tan−1((60−10)/100)=26.6°となり、スネルの法則により、n1×sin(入射角)=n2×sin(屈折角)であるため、1.49×sin26.6°=1×sinθ2より、θ2=41.8°と予想される。なお、n1はシート本体2の屈折率を、n2が空気の屈折率を示す。
【0059】
得られた視野角制御シートの光線透過率を光出射面2b側の様々な位置においてヘイズメーターにより測定した。該視野角制御シートを取り付けない場合の光線透過率を100%とし、これに対する測定値を輝度比(%)とした。結果を図5に示す。
【0060】
実施例1で得られた視野角制御シート1では、光出射面2bと直交する方向においては輝度比が83%と良好な光透過性を示した。これに対して、上記垂直方向と40°傾斜する方向では、輝度比は13%であった。従って、視野角の指向性が非常に高いことがわかる。
【0061】
(実施例2)
紫外線硬化性樹脂組成物の硬化後のO.D.値が2.5となるように調整したことを除いては、実施例1と同様にして視野角制御シートを得、評価した。結果を図5に示す。
【0062】
実施例2で得られた視野角制御シートでは、光出射面2bと垂直方向における輝度比は83%であり、実施例1と同様に正面方向における輝度が十分高かった。もっとも、垂直方向に対して40°傾斜した方向では、輝度比が35%であった。
【0063】
(実施例3)
図3に示すように、遮光部材3のピッチP=56μm、幅W1およびW2を20μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして視野角制御シートを得た。結果を図5に示す。
【0064】
図5から明らかなように、実施例3で得た視野角制御シートでは、光出射面2bと垂直方向の輝度比は50%と低いが、垂直方向と30°傾斜した方向における輝度比は5%であった。従って、視野角の指向性は十分に高いことがわかる。
【0065】
(実施例4)
図4に示すように、遮光部材3のピッチP=73μm、幅W1およびW2を20μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして視野角制御シートを得た。すなわち、遮光部材3の幅Wを図4に示すように20μmと厚くした。結果を図5に示す。実施例4で得られた視野角制御シートでは、光出射面2bと垂直な方向における輝度比は62%と実施例1に比べて若干低下していたが、垂直方向に対して40°傾斜している方向では輝度比は7%であった。従って、実施例1と同様に斜め方向から見た場合の遮光性を効果的に高め得ることがわかる。
【符号の説明】
【0066】
1…視野角制御シート
2…シート本体
2a…光入射面
2b…光出射面
2c…凹部
3…遮光部材
5…シート本体
11…製造装置
12…溶融押出機
12a…Tダイ
13…型ロール
13a…凸部
14…タッチロール
15…ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面と、光入射面と対向する光出射面とを有し、透光性の単一の樹脂層からなるシート本体と、
前記シート本体内に設けられており、前記光入射面もしくは光出射面と交差する方向に延びる複数の遮光部材とを備え、光入射面から入射された光が光出射面の一部の領域から出射されるように、前記複数の遮光部材が、前記光入射面もしくは光出射面の面方向に沿って複数配置されており、
前記遮光部材の前記光入射面もしくは光出射面と直交する方向に沿う断面に沿う形状が長方形である、視野角制御シート。
【請求項2】
前記遮光部材が、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、請求項1に記載の視野角制御シート。
【請求項3】
前記シート本体に複数の凹部を形成する工程と、
前記シート本体の前記複数の凹部に遮光性材料からなる複数の遮光層を形成する工程と
を備える、請求項1または2記載の視野角制御シートの製造方法。
【請求項4】
前記シート本体を形成する工程が、外周面に前記複数の凹部を反転した形状を有する複数の凸部が設けられている型ロールに前記透光性の樹脂を、溶融状態で密着させ、前記凸部に対応した凹部を形成することにより行う、請求項3に記載の視野角制御フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記シート本体を形成する工程が、前記シート本体の複数の凹部に対応した複数の凸部が形成されている金型面を有する金型の該金型面上に溶融状態にある樹脂を流し込み、硬化させることにより行われる、請求項4に記載の視野角制御シートの製造方法。
【請求項6】
前記遮光層を形成する工程が、前記シート本体の前記複数の凹部に紫外線硬化性樹脂組成物を充填し、紫外線の照射により硬化させることにより行う、請求項3〜5のいずれか1項に記載の視野角制御シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−107405(P2011−107405A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262142(P2009−262142)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】