説明

親水性部材、フィン材、アルミニウム製フィン材、熱交換器およびエアコン

【課題】十分な親水性を有し、耐水性、防汚性、耐傷性に優れる親水性膜を有する親水性部材、フィン材、とくに熱交換器用アルミニウム製フィン材を提供することを目的とする。
【解決手段】基材上に、(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマー、及び(B)金属錯体触媒を含有する親水性組成物により形成された親水性膜を設けた親水性部材であって、該親水性膜の水膨潤度が1.5倍以下であることを特徴とする親水性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性膜を基材上に塗布した親水性部材、フィン材、アルミニウム製フィン材、該アルミニウム製フィン材を用いた熱交換器、エアコンに関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。例えば、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩耗性を有することが見出されている(特許文献1)。
【0003】
また、エアコン等に用いられる熱交換器は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下する。
これらの課題を解決するため、熱交換器のフィン材表面を親水性組成物で処理することが知られている(特許文献2〜4)。
また、親水性組成物で処理した熱交換器としては、例えば特許文献5などが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−361800号公報
【特許文献2】特開2003−201577号公報
【特許文献3】特開2005−232269号公報
【特許文献4】特開2005−75841号公報
【特許文献5】特開2007−225174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、架橋構造を有する親水性膜(特に有機架橋親水性膜)は膨潤しやすく、膜の緻密性は低いため、親水性膜を汚染する汚染物質は中に入り込みやすく、その結果、親水性は劣化してしまうという問題があった。本発明は、上記のような従来の課題を解決し、十分な親水性を有し、耐水性、防汚性、耐傷性に優れる親水性膜を有する親水性部材、フィン材、とくに熱交換器用アルミニウム製フィン材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は下記構成の発明により解決された。
1. 基材上に、(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマー、及び(B)金属錯体触媒を含有する親水性組成物により形成された親水性膜を設けた親水性部材であって、該親水性膜の水膨潤度が1.5倍以下であることを特徴とする親水性部材。
2. 水中における該親水性膜と水との屈折率の差が0.14以上であることを特徴とする上記1に記載の親水性部材。
3. 水中における前記親水性膜と水との屈折率の差が0.17以上0.20以下であることを特徴とする上記1または2に記載の親水性部材。
4. 前記親水性組成物中に、さらに、(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーを含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
5. 前記親水性組成物が、(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマー/(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内であることを特徴とする上記4に記載の親水性部材。
6. 前記(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーが下記一般式(1)で表される構造を含むことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、LおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
7. 前記(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーが下記一般式(2)で表される構造を含むことを特徴とする上記4〜6のいずれかに記載の親水性部材。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、AおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
8. 前記親水性膜が親水性組成物を基材上に塗布した後、50℃〜180℃の温度で1時間以上加熱処理を施されたものであることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の親水性部材。
9. 上記1〜8のいずれかに記載の親水性部材を有することを特徴とするフィン材。
10. 上記9に記載のフィン材がアルミニウム製であることを特徴とするアルミニウム製フィン材。
11. 上記10に記載のアルミニウム製フィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
12. 上記11に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。
【発明の効果】
【0011】
本発明の親水性組成物を用いることで、十分な親水性を有し、耐水性、防汚性、耐傷性に優れる親水性部材、とくにエアコンに用いる熱交換器用のアルミニウム製フィン材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の親水性部材は、基材上に、(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマー、及び(B)金属錯体触媒を含有する親水性組成物により形成された親水性膜を設けた親水性部材であって、該親水性膜の水膨潤度が1.5倍以下であることを特徴とする。
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
〔親水性ポリマー〕
本発明で使用される親水性ポリマーは、(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマー((A−1)特定親水性ポリマーとも呼ぶ)であり、好ましくは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリマーである。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(1)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、LおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
【0016】
Xは加水分解性アルコキシシリル基を表すが、好ましくは下記一般式(a)で表される基である。
一般式(a): −Si(R102a(OR1013-a
一般式(a)中、R101は水素原子またはアルキル基、R102は水素原子またはアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を表す。ただし、少なくとも1つのR101はアルキル基を表す。R101またはR102は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0017】
101がアルキル基を表す場合は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基(OR101はメトキシ基)、エチル基(OR101はエトキシ基)などが好ましい。
102がアルキル基を表す場合は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ヘキシル基などが好ましく、アリール基を表す場合は炭素数6〜25のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基などが好ましく、アラルキル基を表す場合は炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的には、スチリル基などが好ましい。
【0018】
親水性ポリマーの繰り返し単位と加水分解性アルコキシシリル基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基LおよびLは、それぞれ独立に単結合または、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組合せから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−、−S−、−CO−、−NH−を含む組合せであることが好ましい。
【0019】
上記一般式(1)において、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基などが挙げられ、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R、R、RおよびRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0020】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0021】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができ、さらに好ましくは炭素原子数1から8までの直鎖状、炭素原子数3から8までの分岐状ならびに炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0022】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0023】
およびLは単結合又は連結基を表す。ここで、LおよびLが有機連結基を表す場合、LおよびLは非金属原子からなる2価の連結基を示すことが好ましく、具体的には、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものであることが好ましい。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0024】
【化4】

【0025】
およびLは、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
【0026】
また、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。また、−CON(Rのように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R、R、RおよびRがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0027】
としては、炭素数1〜8であるものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−COOH、−SO3-NMe4+、−SO3-+、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−SO3-+、−(CHCHO)H、である。該nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0028】
上記、親水性ポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好まく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
親水性ポリマーの共重合比率は、親水性官能基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Yを含有するモノマーのモル比(m)とXを含有するモノマーのモル比(n)が、m/n=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m/n=40/60〜98/2がより好ましく、m/n=50/50〜97/3が最も好ましい。mがm/n=30/70以上の比率であれば親水性が不足することなく、一方、nがm/n=99/1以上の比率であれば、反応性基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されない。M.W.は質量平均分子量を表す。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
上記親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、上記以外にも従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0034】
一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、1万〜5万が最も好ましい。
分子量が大き過ぎると塗布液粘度が上がりすぎる。低すぎると密着性や親水性等が不足する懸念がある。
【0035】
上記、親水性ポリマーは、後述の金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成することができる。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、25℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。粘度は、E型粘度計(商品名:RE80L、東京計器(株)製)で測定することができる。
【0036】
また、上記親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0037】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0038】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0042】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は50質量%以下であることが好ましい。
【0043】
(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーは、親水性組成物中、固形分として5〜99.5質量%含まれることが好ましく、15〜99.5%含まれることがより好ましい。ここで、固形分とは揮発する溶媒を除いたものである。
【0044】
(B)金属錯体触媒
本発明の親水性膜の形成において使用する金属錯体触媒は、親水性ポリマー中の加水分解性アルコキシシリル基の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマー同士の結合を生起させる役割を果たす。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,Sr,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0045】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0046】
好ましい配位子はアセチルアセトン又はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0047】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0048】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0049】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and
Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0050】
また、上記の金属錯体触媒の他に、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
金属錯体触媒は、本発明の親水性膜形成用組成物中に、固形分として、好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%の範囲で使用される。また、(B)金属錯体触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0051】
また、本発明にかかる親水性組成物は、上記(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーのほかに(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーを含有することが好ましい。該(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーとしては、下記一般式(2)で表される構造を含む親水性ポリマーが好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、AおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
【0054】
前記一般式(2)で表される構造を有する親水性ポリマーは、片末端に加水分解性アルコキシシリル基を有する親水性ポリマーであり、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、加水分解性アルコキシシリル基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
一般式(2)で表される構造を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至5万が最も好ましい。
【0055】
上記一般式(2)において、R、Rは、それぞれ独立に、前記一般式(1)のR、R、RおよびRと同様の置換基を表す。Lは、前記一般式(1)のL、Lと同義である。Xは前記一般式(1)のXと同義である。
【0056】
一般式(2)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
上記に例示した親水性ポリマーは、例えば、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0060】
【化12】

【0061】
上記一般式(i)及び(ii)において、A、R〜R、L、Yは、上記一般式(1)と同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
【0062】
(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーは、親水性組成物中、固形分として0〜50質量%含まれることが好ましく、5〜50質量%含まれることがより好ましい。
親水性組成物中、(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマー/(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内であることが好ましい。
【0063】
<Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物>
本発明においては、形成された親水性膜の緻密性を上げることを目的にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(特定アルコキシドとも呼ぶ)を親水性膜形成用組成物中に添加しても良い。特定アルコキシドは、その構造中に加水分解縮合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、前記(A−1)親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
特定アルコキシドは、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(A−1)親水性ポリマー、(B)金属錯体触媒、及び一般式(3)で表される特定アルコキシドを混合して支持体表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0064】
【化13】

【0065】
一般式(3)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R10はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R及びR10がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0066】
以下に、一般式(3)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0067】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0068】
特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜80質量%、更に好ましくは2〜70質量%の範囲で使用される。
特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0069】
<界面活性剤>
本発明においては、前記親水性膜形成用組成物の塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0071】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0072】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0073】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0074】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0075】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0076】
〔抗菌剤〕
本発明における親水性組成物を所望の支持体上に塗設し、親水性膜を形成し、親水性部材とすることができる。
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性膜の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0077】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2’−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0078】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0079】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水性膜のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水性膜表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水性膜や塗布液に対して安定に分散することができ、親水性膜や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」(三愛石油製)も好ましい。
【0080】
抗菌剤の含有量は、一般的には親水性組成物の全体の固形分に対して0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0081】
<無機微粒子>
本発明の親水性膜形成用の組成物には、親水性膜の硬化皮膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、親水性膜中に安定に分散して、膜強度および親水性を十分に保持でき好ましい。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性膜形成用組成物の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0082】
<紫外線吸収剤>
本発明においては、親水性膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0083】
<酸化防止剤>
本発明の組成物および親水性膜の安定性向上のため、親水性膜形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0084】
<溶剤>
本発明の親水性部材の親水性膜形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性膜形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は吸水性膜形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0085】
<高分子化合物>
本発明の親水性膜形成用組成物には、親水性膜の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0086】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0087】
〔基材〕
本発明に用いられる基材(支持体)は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス、プラスチック、ステンレスまたはアルミニウム基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水性膜を塗設できるが、必要に応じ、親水性膜の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0088】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
フィン材として用いる場合、基材としてはアルミニウム製のものが好ましい。
【0089】
基材と親水性膜の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0090】
本発明においては、基材と親水性膜との間に、一層または二層以上の下塗層を設けることができる。
下塗層は、Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させたものであることが好ましい。
Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させた下塗層は、架橋構造を有し、このようなアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
【0091】
Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物としては前述のものが挙げられる。これらのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0092】
下塗層で用いられる不揮発性の触媒とは、沸点が20℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が20℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属錯体(金属のキレート化合物とも称する)やシランカップリング剤が挙げられる。その他、当業界においては触媒として酸またはアルカリが好適に用いられるが、これらも沸点が20℃以上のものであれば特に制限なく適用可能である。たとえば沸点が−83℃の塩酸などは除かれるが、沸点が121℃の硝酸や分解温度が213℃のリン酸などは本発明において不揮発性の触媒として適用される。
金属錯体としては、前述のものが挙げられる。
【0093】
不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性またはアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、さらに詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0094】
下塗層は、基材上に上記アルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、基材上に、塗布し、加熱、乾燥することにより、該組成物が加水分解、重縮合させて、形成することができる。下塗層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
下塗層は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0095】
このようにして得られた下塗層は、その中に不揮発性の触媒が活性を失わずに含有されて存在し、特にその表面にも存在することにより、該下塗層と親水性膜の界面における密着性が極めて高いものとなる。
【0096】
また、下塗層は、プラズマエッチングまたは金属粒子を混入させて微細凹凸を設けることにより、該下塗層と親水性膜の界面における密着性をさらに高いものとすることができる。
【0097】
下塗層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることもできる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0098】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性膜の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/mが好ましく、0.1〜10g/mがより好ましい。
【0099】
〔親水性部材使用時の層構成〕
本発明の親水性部材は、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
1)接着層
本発明の親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂およびこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類または混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0100】
2)離型層
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、さらに離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0101】
3)その他の層
親水性膜の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷付きや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗り層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0102】
〔親水性部材の形態〕
本発明の親水性膜を有する親水性部材は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたものとして供給することもできる。
【0103】
〔表面自由エネルギー〕
親水性膜表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水性膜が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0104】
一般的な親水性膜は水を吸い込むため、膨潤する。このような膜だと汚染物質が膜内部に入り込みやすく汚染されやすい(親水性が劣化する)。逆に水膨潤しにくくすると、汚染物質は膜内部に入り込みにくくなり、汚染されにくいものの、形成された親水性膜の親水性が低い膜になってしまう。本発明における(A−1)特定親水性ポリマーはポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有しているため、加水分解性アルコキシシリル基同士の架橋反応をコントロールして架橋反応をより進行させることで高強度且つ水膨潤しにくい膜(緻密な膜)を形成し、汚染物質により汚染されにくくすることができる。さらに特定親水性ポリマーはそれ自体の親水性も高いので、親水性に優れた膜となる。本発明にかかる親水性膜の水膨潤度は、1.5倍以下である。さらに好ましくは好ましくは1.4倍以下である。水膨潤度が1.5倍を超えると汚染物質が膜内部に入り込みやすくなり、親水性が劣化する。水膨潤度は、親水性部材を純水に10分間浸漬し、水浸漬後の膜厚をエリプソメトリー(J.A.Woollam社製、VASE)で測定し、水浸漬前の膜厚に対する比率で表される。
【0105】
一般的な親水性膜は、水を吸い込み膜内部に水を溜め込むため親水性膜と水との屈折率差は小さくなる。このような親水性膜(緻密性が低い膜)は汚染物質が膜内部に入り込みやすく汚染されやすい(親水性が劣化する)。逆に緻密性を高めると、汚染物質は膜内部に入り込みにくくなり、汚染されにくいものの、形成された親水性膜の親水性が低い膜になってしまう。本発明における(A−1)特定親水性ポリマーはポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有しているため、加水分解性アルコキシシリル基同士の架橋反応をコントロールすることで、緻密な膜を形成し、汚染物質により汚染されにくくすることができる。さらに特定親水性ポリマーは親水性も高いので、親水性に優れた膜となる。本発明にかかる親水性膜と水との屈折率の差は0.14以上であることが好ましく、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.17以上0.20以下である。
親水性膜と水との屈折率の差は、親水性部材を純水に10分間浸漬し、エリプソメトリー(J.A.Woollam社製、VASE)にて親水性膜の屈折率を直接測定し、水との屈折率1.33との差より求めることができる。
【0106】
また、親水性膜のTgは、熱交換器内の発熱に対する耐熱性を持たせるという理由から、40℃〜150℃が好ましい。また、親水性被膜の弾性率は、1GPa〜7GPaが好ましい。
【0107】
本発明の親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性部材は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。本発明の親水性膜の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得られ好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性膜を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0108】
本発明の親水性部材は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶解して塗布液を調製し、適切な基材上に塗布してなる被膜を、熱により硬化させて形成することができる。
【0109】
例えば、(A−1)特定親水性ポリマー、および(B)金属錯体触媒を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、親水性ポリマー成分の加水分解性アルコキシシリル基部分が加水分解し、さらに部分的に縮重合が進行し、親水性膜形成用塗布液となり、これによって高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。
【0110】
親水性膜形成用塗布液の調製は、(A−1)特定親水性ポリマー、および(B)金属錯体触媒を溶媒に溶解して攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲にあることが好ましく、この攪拌により加水分解、縮重合を進行させて、親水性膜形成用塗布液を得ることができる。
【0111】
本発明の親水性部材は、親水性膜形成用塗布液組成物を、適切な基材上に塗布し、加熱、乾燥して表面親水性膜を形成することで得ることができる。親水性膜形成のための加熱乾燥条件は、通常加水分解性アルコキシリル基の架橋反応をより進行させるために高温加熱が施されるが、この場合、架橋反応は速く進行するものの、ある時点で加水分解性アルコキシシリル基の分子運動が抑制され、架橋反応は停止してしまう。本発明においては低温で長い時間加熱処理を施すことで、加水分解性アルコキシシリル基の分子運動が抑制されることなく効率的に架橋反応が進行し、強固かつ緻密な膜が得られ、好ましい。
好ましい加熱温度と加熱時間は50℃〜180℃の温度範囲において、2分〜2時間程度行うことが好ましく、80℃〜160℃の温度範囲で5分〜1.5時間行うことがより好ましく、80℃〜160℃の温度範囲で1時間〜1.5時間行うことがさらに好ましい。
【0112】
本発明の親水性部材は、公知の塗布方法で作製することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0113】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基板または透明なプラスチック基板、レンズ、プリズム、鏡等である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。最も好ましい用途は、自動車用及び建材用のガラスである。
【0114】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝、人工噴水用石材、タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用フィン材、エアコン室内機、カーエアコン、パッケージエアコン舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【0115】
本発明にかかる親水性組成物は、アルミニウム製フィン材に塗布して、親水膜を形成し、エアコンの熱交換器に用いることが好ましい。
エアコンとは、エアーコンディショナー(Air Conditioner)の略で、調温、調湿、調和する装置で、クーラーとヒーターを組み合わせた空気調和装置、すなわち冷暖房機のことであり、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコンなどの総称を指す。
熱交換器とは、高温の流体がもつ熱エネルギーを低温の流体に伝える装置であり、直接接触方式、隔板や蓄熱器を用いる方式があり、加熱器・冷却器・蒸発器・凝縮器などに使用することができる。熱交換器の用途として、例えば室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー(油圧作動の建設機械用オイルを冷却)、自動車のラジエーター(エンジンの過熱や加冷を防ぎ、一定温度に保つもの)、コンデンサー(圧縮された高圧ガスは、圧縮熱で暖かくなっているので、この高圧ガスを前面冷却風で冷やし液化状態に戻すもの)、エバポレーター(エアコン関係の中にあり、冷媒のガスを気化させ、廻りの温度を下げるもの)、インタークーラー、車両用ヒーター等が挙げられる。熱交換器はエアコンの部品であり、熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィン材から構成される。フィン材表面は結露水によるフィンピッチ間のブリッジ生成を防止するため、親水処理がなされている。近年は汚染物質が存在する環境でも長期間親水性が維持されるフィン材が強く求められている(参考文献:特殊機能コーティング技術 p215〜226 2007年 CMC出版、特開2003−201577号公報)。
フィン材にはアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。該アルミニウム材はアルミニウム純度99%以上、150μm以下の厚み、表面粗さ0.1〜0.4μmのものが好ましく用いられる。また、フィン材に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
例えば、熱交換器用フィン材に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0116】
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0117】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O処理により親水化した後、下記組成の第1層塗布液(1)をスピンコート塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの第1層を形成した。室温で十分冷却した後、第1層塗布面に親水性層塗布液(1)を第2層としてバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して乾燥塗布量3.0g/mの第2層を形成し、親水性部材を得た。
【0118】
<第1層塗布液(1)>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC:日産化学製)
100g
・下記ゾルゲル調製液(1) 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0119】
<ゾルゲル調製液(1)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0120】
【化14】

【0121】
<親水性層塗布液(1)>
・下記ゾルゲル調製液(2) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 5.0g
【0122】
<ゾルゲル調製液(2)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン0.25g、オルトチタン酸テトラエチル0.3g、精製水300g中に、下記親水性ポリマー<1>30gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0123】
【化15】

【0124】
(評価)
上記親水性部材について、以下の評価を行った。評価結果を表6に示す。
可視光透過率:分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価した。
表面自由エネルギー:前述の方法で測定した。
膨潤度:親水性部材を純水に10分間浸漬し、浸漬前後の膜厚をエリプソメトリー(J.A.Woollam社製、VASE)により直接測定し、水浸漬による膨潤度を算出した。
防汚性:50mlガラス容器に擬似汚染物質としてパルミチン酸を0.2gとり、親水性膜側がパルチミン酸に曝されるように親水性部材で蓋をして105℃/1時間曝気後、30分流水洗浄、80℃/30分乾燥を1サイクルとし、5サイクル後の接触角を測定した。接触角は協和界面科学製DROP MASTER 500にて蒸留水の水滴接触角を測定した。
引っかき試験:0.1mm径サファイア針に5gから始めて5gきざみにを加重をかけて親水性部材表面を走査し、傷つきが発生した加重を評価(新東科学株式会社製引っかき強度試験機Type18Sで測定)した。加重が大きくても傷つきがないほうが耐久性良好である。
耐水性:120cmサイズの親水性部材を水中で加重1kgをかけてスポンジ往復10回こすり処理を行い、その前後の重量変化から残膜率を測定した。
親水性膜と水との屈折率の差:親水性部材を純水に10分間浸漬し、エリプソメトリー(J.A.Woollam社製、VASE)にて親水性膜の屈折率を直接測定し、水の屈折率1.33との差を求めた。
【0125】
〔実施例2〜5〕
親水性層塗布液(1)を第2層としてバー塗布した後の乾燥を表1に示した乾燥条件に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0126】
【表1】

【0127】
〔比較例1、2〕
親水性層塗布液(1)を第2層としてバー塗布した後の乾燥を表2に示した乾燥条件に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0128】
【表2】

【0129】
〔実施例6〕
親水性層塗布液(1)を親水性層塗布液(2)に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0130】
<親水性層塗布液(2)>
・下記ゾルゲル調製液(3) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 5.0g
【0131】
<ゾルゲル調製液(3)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン0.25g、オルトチタン酸テトラエチル0.3g、精製水300g中に下記親水性ポリマー<2>27g、テトラメトキシシラン3gを混合し、室温で2時間攪拌して、調製した。
【0132】
【化16】

【0133】
〔実施例7〜10〕
親水性層塗布液(2)を第2層としてバー塗布した後の乾燥を表3に示した乾燥条件に変更したこと以外は実施例6と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0134】
【表3】

【0135】
〔実施例11〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み0.15mm)を準備し、下記組成の第1層塗布液(2)をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.1g/mの第1層を形成した。室温で十分冷却した後、第1層塗布面に実施例1で使用した親水性層塗布液(1)を第2層としてバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して乾燥塗布量0.5g/mの第2層を形成し、親水性部材を作成し、評価を行った。
【0136】
<第1層塗布液(2)>
・下記ゾルゲル調製液(4) 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0137】
<ゾルゲル調製液(4)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)4g、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)4gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0138】
〔実施例12〕
親水性層塗布液(1)を親水層塗布液(3)に変えたこと以外は、実施例11と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0139】
<親水性層塗布液(3)>
・下記ゾルゲル調製液(5) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 5.0g
【0140】
<ゾルゲル調製液(5)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン0.25g、オルトチタン酸テトラエチル0.3g、精製水300g中に、親水性ポリマー側鎖Si型として下記親水性ポリマー<1>15g、親水性ポリマー末端Si型として下記親水性ポリマー<3>15gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0141】
【化17】

【0142】
〔実施例13〜15〕
親水性層塗布液(3)を第2層としてバー塗布した後の乾燥を表4に示した乾燥条件に変更したこと以外は実施例12と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0143】
【表4】

【0144】
〔実施例16〜20〕
表面を10分間UV/O処理により親水化したSUS基板(厚み1.1mm)に下記組成の第1層塗布液(3)をスピンコート(1000rpm、30秒)し、100℃、2分間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.5g/mの層を形成した。第1層の水滴接触角は80°であった。さらにその第1層の上に下記組成の第1層塗布液(4)をスピンコート(1000rpm、30秒)し、100℃、10分オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.5g/mの層を形成し、2層構造の第1層を形成した。第1層塗布液(4)により形成した層の水滴接触角は10°であった。続いて該2層構造の第1層の上に、親水性層塗布液(3)中の親水性ポリマーと乾燥条件を表5のように変えたこと以外は実施例12と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。
【0145】
<第1層塗布液(3)>
・エピコート1009(シェルケミカルズジャパン製) 100g
・タケネートD110N(武田薬品工業製、固形分10%) 100g
・メチルエチルケトン 1200g
【0146】
<第1層塗布液(4)>
・PVA105水溶液(クラレ製、固形分6%) 130g
・グリオキザール水溶液(東京化成製、固形分40%) 50g
・エチレングリコールジグリシジルエーテル(東京化成製) 10g
・メタノールシリカ(日産化学製、固形分30%) 30g
・上記アニオン系界面活性剤5質量%水溶液 20g
・水 7600g
【0147】
【表5】

【0148】
【化18】

【0149】
【表6】

【0150】
〔実施例21〜23、比較例3、4〕
親水性層塗布液(3)中の親水性ポリマーと乾燥条件を表7のように変えたこと以外は実施例12と同様の方法で親水性部材を作成し、評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0151】
【表7】

【0152】
【化19】

【0153】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマー、及び(B)金属錯体触媒を含有する親水性組成物により形成された親水性膜を設けた親水性部材であって、該親水性膜の水膨潤度が1.5倍以下であることを特徴とする親水性部材。
【請求項2】
水中における前記親水性膜と水との屈折率の差が0.14以上であることを特徴とする請求項1記載の親水性部材。
【請求項3】
水中における前記親水性膜と水との屈折率の差が0.17以上0.20以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性部材。
【請求項4】
前記親水性組成物中に、さらに、(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項5】
前記親水性組成物中の、(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマー/(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を含有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の親水性部材。
【請求項6】
前記(A−1)ポリマー側鎖に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーが下記一般式(1)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
【化1】

一般式(1)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、LおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
【請求項7】
前記(A−2)ポリマー末端に加水分解性アルコキシシリル基を少なくとも1つ有する親水性ポリマーが下記一般式(2)で表される構造を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の親水性部材。
【化2】

一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、AおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−N(R2、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
【請求項8】
前記親水性膜が親水性組成物を基材上に塗布した後、50℃〜180℃の温度で1時間以上加熱処理を施されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の親水性部材を有することを特徴とするフィン材。
【請求項10】
請求項9に記載のフィン材がアルミニウム製であることを特徴とするアルミニウム製フィン材。
【請求項11】
請求項10に記載のアルミニウム製フィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
【請求項12】
請求項11に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。

【公開番号】特開2009−255500(P2009−255500A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235452(P2008−235452)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】