説明

観察装置

【課題】開蓋時に外部からの強い光が光検出器や撮像素子に入るのを防ぐことによって、外光の影響を受けることなく正確な光検出および撮像を行う。
【解決手段】観察対象となる試料Aを載せるステージ2と、前記試料Aからの光を検出する検出手段と、前記試料Aからの光を前記検出手段に投影する撮像光学系と、これらの全体または一部を覆う遮光部材6と、該遮光部材6に設けられた開口部と、該開口部を開閉する蓋12と、該蓋12の開閉を検出する開閉検出手段7と、前記検出手段へ入射する光を制限する減光手段4と、前記開閉検出手段7により前記蓋12が開かれたことが検出されたとき、前記減光手段4を動作させて前記検出手段へ入射する光量を低減させる制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、例えば、試料が発する蛍光を観察する顕微鏡であって、試料と光学系を暗箱に入れる装置があり、暗箱の蓋を開けた際、試料に光を照射することを停止するとともに、観察者が有害な光を受けないような機構が存在する。すなわち、暗箱の蓋の開閉に連動して、試料への照射光を制御する仕組みが考案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1の顕微鏡は、ステージに載置された試料に対して特定の波長帯域の励起光を照射する蛍光落射用光源を備え、励起光によって前記試料から放射された蛍光を光学系で結像して観察する。そして、試料に外光が入射しないように蛍光顕微鏡の全体又は一部を覆う箱状の遮光部材、遮光部材の一部に設けられた開口部を開閉する蓋、蓋による前記開口部の開閉状態を検出する開閉検出部、蛍光落射用光源から試料に至る光路を開閉するシャッタ、開閉検出部の出力信号に基づいてシャッタの駆動を制御する制御回路を備えている。制御回路は、開口部が閉じられているときに蛍光落射用光源からの光を通過させ、開口部が開けられているときに蛍光落射用光源からの光を遮るように、シャッタを制御するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004‐245979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に生細胞の発光を観察するような微弱な光を検出するような場合、PMT(光電子倍増管)を使ったフォトンカウンティングユニット、EM−CCDなど高感度な光検出器、撮像素子を用いるケースが多い。これらの高感度な光検出器および撮像素子は、一旦、強い光を受けてしまうと、素子内または検出回路内に多くの電荷が蓄積され、その電荷が抜けるのに時間を要することがある。例えば、PMTを用いたフォトンカウンティングユニットでは、強い光を受けた後、電荷が抜けきるために数十分を要することがある。また、EM−CCDでは、一旦強い光を受光した場合、後に取り出す画像データにまで前の電荷が残ってしまい、本来、暗黒であるべき画像データに光信号が残るという不都合がある。
【0006】
例えば観察対象となる試料とその画像(光)を検出するための光学系および撮像素子(EM−CCD)に、外部の光が入射するのを防ぐために暗箱で覆った観察装置を用いて、試料を培養しながら例えば数日間の発光量の変化を観測するような場合、通常は試料、光学系および撮像素子は暗箱内で暗黒状態にできる。しかし、試料への薬剤の注入などの操作で、暗箱の蓋を開けることが発生する。このような場合、開蓋後の画像データが正しくない値を示すという問題や、暗黒であるべき背景が明るい画像になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、開蓋時に外部からの強い光が光検出器や撮像素子に入るのを防ぐことによって、外光の影響を受けることなく正確な光検出および撮像を行う観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、観察対象となる試料を載せるステージと、前記試料からの光を検出する検出手段と、前記試料からの光を前記検出手段に投影する撮像光学系と、これらの全体または一部を覆う遮光部材と、該遮光部材に設けられた開口部と、該開口部を開閉する蓋と、該蓋の開閉を検出する開閉検出手段と、前記検出手段へ入射する光を制限する減光手段と、前記開閉検出手段により前記蓋が開かれたことが検出されたとき、前記減光手段を動作させて前記検出手段へ入射する光量を低減させる制御装置とを備える観察装置を提供する。
本発明によれば、蓋を開けた時に、外部からの強い光が光検出器や検出手段に入るのを防ぐことができ、蓋を閉めて光検出および画像検出を再開しても、外光の影響を受けることなく、正確な光検出および撮像を行うことができる。
上記発明においては、前記減光手段がシャッタまたは減光フィルタであることとしてもよい。
【0009】
本発明は、観察対象となる試料を載せるステージと、前記試料からの光を検出する検出手段と、前記試料からの光を前記検出手段に投影する撮像光学系と、これらの全体または一部を覆う遮光部材と、該遮光部材に設けられた開口部と、該開口部を開閉する蓋と、該蓋の開閉を検出する開閉検出手段と、前記検出手段へ入射する光を制限する減光手段と、前記開閉検出手段により前記蓋が開かれたことが検出されたとき、前記検出手段のゲイン、露光時間または光電変換効率を小さくすることによって感度を低く設定する制御装置とを備える観察装置を提供する。
本発明によれば、余剰の電荷発生を防ぐ設定に切り替えることにより、蓋を開けた時に外部からの強い光が光検出器や検出手段に入ることを防ぐことができ、蓋を閉めて光検出および画像検出を再開しても、外光の影響を受けることなく正確な光検出および撮像を行うことができる。
【0010】
上記発明においては、前記蓋が開かれた状態から閉じられたことを検出したとき、前記検出手段のゲイン、露光時間または光電変換効率を小さくした状態で、少なくとも1回以上の光検出動作または画像検出動作を実行することとしてもよい。
このようにすることで、外部からの光による影響を排除する動作によって、外部からの光の影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開蓋時に外部からの強い光が光検出器や検出手段に入るのを防ぐことによって、外光の影響を受けることなく正確な光検出および撮像を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る観察装置1について図1を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る観察装置1は、観察対象となる試料Aを載せるステージ2と、カメラ制御回路10と、EM−CCDなどの撮像素子(カメラ)5または光検出器(PMT、APD)等の検出手段と、試料Aが発する光を検出し、光検出器または撮像素子5に投影する撮像光学系(例えば、対物レンズ3と結像レンズ13で構成される)と、試料Aおよび撮像素子5への外光の照射を防ぐために、全体または一部を覆う遮光部材からなる暗箱6と、試料の交換および試料へのアクセスを可能とする暗箱6に設けられた開口部と、開口部を開閉する蓋12と、該蓋12の開閉を検出する開閉検出手段(検出スイッチ)7と、光検出器または撮像素子5へ入射する光を遮るシャッタ(または減光手段、NDフィルタ)4とを備え、開閉検出手段7が開蓋を検出したとき、シャッタ制御回路9を動作させ、撮像素子5へ入射する光量をゼロまたは小さくするように動作するようになっている。
【0013】
さらに具体的には、本実施形態に係る観察装置1は、図1に示すように、観察対象となる試料Aを載せるステージ2、試料Aの画像をとらえる対物レンズ3、該対物レンズ3からの光を受けて撮像面に結像させる結像レンズ13、外光を遮るシャッタ4、撮像面の画像を画像信号に変換するカメラ5、これら全体を覆う暗箱6、該暗箱6の開口部を開閉する蓋12、該蓋12の開閉状態を検出する検出スイッチ7、シャッタ4の開閉を制御するシャッタ制御回路9、カメラ5の露光時間などの制御および画像信号の処理などを行うカメラ制御回路10、画像処理などを行うPC11、画像を表示するモニタ8で構成されている。
例えば、細胞の発光現象など、微弱な光を検出する場合、図1に示すように、観察対象となる試料A、該試料Aからの光を検出するための対物レンズ3、結像レンズ13およびカメラ5を暗箱6に入れ、開口部を蓋12で閉じることにより外部からの光が入らない状態を作って試料Aの光を検出する。
【0014】
このような微弱光を検出するためのカメラ5は、非常に感度が高い反面、ある一定以上に強い光が入射すると光電変換により得られた電荷が多くなり過ぎることがあり、1回の画像転送中に全ての電荷を処理することができず、次の画像転送に、処理しきれなかった電荷が残り、結果として、強い光を受けた次の画像の背景が明るくなることがある。つまり、本来、暗黒であるべき画像が暗黒でなくなるという不都合がある。
【0015】
試料Aの発光現象などを観察する場合は、外部の光が入らないように開口部を蓋12で覆って使用しているが、例えば、数日間にわたる発光現象の変化を観察するような場合、観察過程においてで試料Aに対して薬剤を注入する等操作または試料Aへのアクセスが必要になる場合がある。この場合、蓋12を開けなければならず、該蓋12を開けることにより、対物レンズ3などの光学系を通って外部の光がカメラ5に入ることとなる。そして再度蓋12を閉めて画像を取得する際に、本来暗黒であるべき画像に余剰電荷が残ってしまい、背景が明るい画像になるという不都合が生じる。
【0016】
本実施形態では、蓋12の開閉状態を検出する検出スイッチ7を設け、蓋12が閉じている状態から開けられたことを検知したとき、その信号をシャッタ制御回路9に伝え、該シャッタ制御回路9がシャッタを閉じるように制御する。このような動作を行うことにより、蓋12を開けたときに外部の光がカメラ5に入ることを防ぐことができ、上述した問題の発生を防ぐことができる。
【0017】
図2に第1の実施形態の動作フローチャートを示す。暗箱6の蓋12の開閉状態を検出スイッチ7からの信号を読み込むことで判断(SA1)し、蓋12が閉じていると判断された場合は、再度、検出スイッチ7からの信号を読み込む動作(SA1)を繰り返し行う。蓋12が開けられたと判断(SA2)された場合は、シャッタ4を閉じる動作(SA3)を実行する。同様に蓋12の開閉状態を検出スイッチ7からの信号を読み込むことで判断し、蓋12が開いていると判断された場合は、再度、検出スイッチ7からの信号を読み込む動作(SA4)を繰り返し行う。
【0018】
そして、蓋12が閉じられたと判断(SA5)された場合は、シャッタ4を開ける動作を実行(SA6)し、また、スタート時点に戻り、蓋12の状態を読み込む動作(SA1)から繰り返し実行する。
本実施形態では、シャッタ4を用いて光を遮ることとしたが、シャッタ4の代わりに、NDフィルタ等の減光手段を用いることとしてもよい。また、上述した問題が発生しない程度の減光手段をシャッタ4に入れることも同等の効果を得ることができる。減光手段を用いる場合は、カメラ5に入る光がゼロではないので、蓋12を開けた状態で、試料Aの透過画像等を観察することもできる。
【0019】
また、シャッタ4とNDフィルタ等の減光手段とを両方カメラ5の前に設置し、蓋12が開けられたときには、シャッタ4とNDフィルタ両方を動作させ、カメラ5に入る光を遮ることとしてもよい。
このようにすることで、観察者の操作によってシャッタ4を開けておくことも可能となり、必要に応じてシャッタ4だけを開けて蓋12が開いている状態でも、外部からの光による透過光を使って試料Aの画像をカメラ5で観察することもできる。
【0020】
本発明の第2の実施形態に係る観察装置1’は、図3に示すように、観察対象となる試料Aを載せるステージ2、試料Aの画像をとらえる対物レンズ3、該対物レンズ3からの光を受けて撮像面に結像させる結像レンズ13、撮像面の画像を画像信号に変換するカメラ5、これらの装置全体を覆う暗箱6、該暗箱6の開口部を開閉する蓋12、該蓋12の開閉状態を検出する検出スイッチ7、カメラ5の露光時間等の制御および画像信号の処理等を行うカメラ制御回路10、画像処理などを行うPC11、画像を表示するモニタ8で構成されている。本実施形態の観察装置1’は、蓋12の検出スイッチ7からの信号がカメラ制御回路10により検知される構成となっている。
【0021】
本実施形態では第1の実施形態と同様に蓋12の開閉を検出する検出スイッチ7を設け、該検出スイッチ7によって蓋12が閉じている状態から開けられたことが検知されたとき、その信号をカメラ制御回路10に伝達し、該カメラ制御回路10は、カメラ5の検出感度を下げる、あるいは露光時間を短くする等の制御を行い、カメラ5内部で余剰の電荷発生を防ぐ設定に切り替える。このような動作をすることにより、蓋12を開けたときに外部の光による上述の問題を防ぐことができ、外光の影響を受けることなく正確な光検出および撮像を行うことができる。
【0022】
図4に第2の実施形態の動作フローチャートを示す。暗箱6の蓋12の開閉状態を検出スイッチ7からの信号を読み込むことで判断(SB1)し、蓋12が閉じていると判断された場合は、再度、検出スイッチ7からの信号を読み込む動作(SB1)を繰り返し行う。蓋12が開けられたと判断(SB2)された場合は、そのときのカメラ5の検出感度と露光時間を記憶(SB3)し、その後、カメラ5の感度を低くする設定および露光時間を短くする設定を行う(SB4)。同様に暗箱6の蓋12の開閉状態を検出スイッチ7からの信号を読み込むことで判断(SB5)し、蓋12が開いていると判断された場合は、再度、検出スイッチ7からの信号を読み込む動作を繰り返し行う。そして、蓋12が閉じられたと判断(SB6)された場合は、カメラ5の検出感度と露光時間とを記憶しておいた画像取得時の条件に戻す動作(SB7)を実行する。そして、再びスタート時点に戻り、蓋12の状態を読み込む動作(SB1)から繰り返し実行する。
【0023】
以下、本発明の第3の実施形態に係る観察装置について図5を参照して説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る観察装置1’と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。第3の実施形態では、蓋12が開いている状態から、閉じられたことを検出したとき、その後、カメラ5の検出感度を下げる、あるいは露光時間を短く設定し、少なくとも1回ダミーの画像検出および画像データ転送を行い、カメラ5内に蓄積された余剰の電荷を吐き出す動作を行う。その後、通常の画像検出に適した検出感度および露光時間に設定する。このように、蓋12が開けられ外部の光が入っている状態から蓋12が閉じられ暗黒になった際、外部の光による影響を排除する動作を入れることによって、外部の光の影響を防ぐことができる。
【0024】
図5に第3の実施形態の動作フローチャートを示す。暗箱6の蓋12の開閉状態を検出スイッチ7からの信号を読み込むことで判断(SC1)し、蓋12が開いた状態から閉じた状態へ変化したかどうかを確認(SC2)し、蓋12が開いた状態から閉じた状態に変化していないと判断された場合は、検出スイッチ7からの信号を読み込む動作(SC1)を繰り返し行い、蓋12が開いた状態から閉じた状態に変化したと判断された場合、そのときのカメラ5の検出感度および露光時間等の撮像条件を記憶(SC3)した後、カメラ5の検出感度を低く、露光時間を短く設定し、ダミーの画像を数回取り込み(SC4)、再度、記憶しておいた検出感度および露光時間に戻す(SC5)動作を行う。
本実施形態の動作は、第1の実施形態および第2の実施形態の動作と組み合わせてもよいこととする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る観察装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る観察装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る観察装置の全体構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る観察装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る観察装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 観察装置
2 ステージ
3 対物レンズ
4 シャッタ(減光手段)
5 カメラ(撮像素子)
6 暗箱(遮光部材)
7 検出スイッチ(開閉検出手段)
9 シャッタ制御回路
10 カメラ制御回路
12 蓋
13 結像レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象となる試料を載せるステージと、
前記試料からの光を検出する検出手段と、
前記試料からの光を前記検出手段に投影する撮像光学系と、
これらの全体または一部を覆う遮光部材と、
該遮光部材に設けられた開口部と、
該開口部を開閉する蓋と、
該蓋の開閉を検出する開閉検出手段と、
前記検出手段へ入射する光を制限する減光手段と、
前記開閉検出手段により前記蓋が開かれたことが検出されたとき、前記減光手段を動作させて前記検出手段へ入射する光量を低減させる制御装置とを備える観察装置。
【請求項2】
前記減光手段がシャッタまたは減光フィルタである請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
観察対象となる試料を載せるステージと、
前記試料からの光を検出する検出手段と、
前記試料からの光を前記検出手段に投影する撮像光学系と、
これらの全体または一部を覆う遮光部材と、
該遮光部材に設けられた開口部と、
該開口部を開閉する蓋と、
該蓋の開閉を検出する開閉検出手段と、
前記検出手段へ入射する光を制限する減光手段と、
前記開閉検出手段により前記蓋が開かれたことが検出されたとき、前記検出手段のゲイン、露光時間または光電変換効率を小さくすることによって感度を低く設定する制御装置とを備える観察装置。
【請求項4】
前記蓋が開かれた状態から閉じられたことを検出したとき、前記検出手段のゲイン、露光時間または光電変換効率を小さくした状態で、少なくとも1回以上の光検出動作または画像検出動作を実行する請求項1から3のいずれかに記載の観察装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−139475(P2009−139475A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313546(P2007−313546)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】