説明

角型電池

【課題】電池ケースへの挿入性を良好とする扁平な電極体及び同形状の外装体を備えた角型電池であって、該電極体と電池ケースとの間の絶縁が良好に確保される電池を提供する。
【解決手段】本発明により提供される電池は、電極体30と、電極体30が収容される電池ケース40とを備え、電極体30と電池ケース40との間に絶縁性の外装体20を備える。電極体30は、電池ケース40の上端部42の開口部43から、正極集電部35と負極集電部がそれぞれ電池ケース40の幅広面46の両端において上端部42から底部44に亘って配置される横方向に電池ケース40内に収容され、外装体20の内部に配置されて外装体20とともに電極挿入体10を構成する。ここで、電極挿入体10において横方向Pの両端部における厚みLaは電池ケース40の上端部42から底部44に向けて漸減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形状の電極体と該電極体形状に対応した箱状に形成された電池ケースとを備える角型電池に関する。詳しくは、車両搭載用として好適な角型電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。この種の電池においては、シート状正極(以下「正極シート」ということもある。)とシート状負極(以下「負極シート」ということもある。)をシート状のセパレータと共に積層し捲回させた捲回電極体を備えた電池構造が知られている。例えば特許文献1には、正極シートと負極シートがセパレータを介して捲回されている扁平な形状の捲回電極体を備えた電池が開示されている。
【特許文献1】特開2003−249423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電池においては扁平な形状の電極体と電池ケースとを別々に製造し、次いで該電極体を電池ケースに収容する必要がある。電池ケースとしては物理的強度が大きいという観点から金属製のケースが通常使用されており、この場合には金属製ケースと電極体とを絶縁するために、典型的には電極体を外装体(例えば絶縁性フィルム)で包装する工程が行われている。このような包装工程を含む電池の製造工程の一例として、電池は以下のように構築される。すなわち、まず扁平電極体をこれと対応する扁平箱形状の外装体に収容(包装)し、次いで上記電極体とともに該外装体を電池ケースに収容し、その後該電池ケースの上端部の開口部を蓋体で塞ぐことによって電池が構築される。
【0004】
しかしながら、従来の電池の構成では外装体が角部を有する箱型形状であるため、外装体(および電極体)を電池ケースに挿入し難いという問題があった。例えば電池ケースの平面視における四隅(コーナー部)がR形状の場合には、外装体の角部が電池ケースのコーナー部に干渉し得るため、外装体に収容された電極体の挿入性が悪化していた。またこのような構成の電極体では電池ケースへの挿入時において、場合によっては上記外装体にシワ、折れ(座屈)、破れ等が生じる虞があった。かかる場合には該外装体の絶縁機能が損傷し、該電極体と電池ケースとの間の絶縁がとれずに内部短絡する虞があるため、上記外装体のシワ等の発生を防止する必要がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電池ケースへの挿入性を良好とする扁平な電極体および同形状の外装体を備えた角型電池であって、該電極体と電池ケースとの間の絶縁が良好に確保される電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく本発明によって提供される角型電池は、扁平な形状の電極体と、該電極体が収容される箱状の電池ケース(典型的には扁平な箱状ケース)とを備える。前記電極体における幅広面からみて所定の方向の中央部分は正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている活物質層付与部を形成している。また、前記幅広面からみて該活物質層付与部の両端のうちの一方の端部は正極活物質層が付与されずに正極集電体の露出した部分が積層されている正極集電部を形成しており、他方の端部は負極活物質層が付与されずに負極集電体の露出した部分が積層されている負極集電部を形成している。そして、前記電極体と前記電池ケースとの間には、該電極体と電池ケースとを隔離する絶縁性の外装体であって該電極体の形状に対応した外装体が備えられている。前記電極体は、前記電池ケースの上端部に形成される開口部から、前記正極集電部と前記負極集電部がそれぞれ該電池ケースの幅広面の両端において上端部から底部に亘って配置される横方向に該電池ケース内に収容されるとともに、該電池ケース内においては前記外装体の内部に配置されて該外装体とともに扁平な箱状の電極挿入体を構成している。ここで、前記電極挿入体において、前記横方向の両端部における厚みは前記電池ケースの上端部から底部に向けて漸減していることを特徴とする。
【0007】
かかる構成の電池によれば、電極体の形状に対応した(典型的には扁平な箱状に形成された)外装体と該外装体の内部に配置(収容)された扁平な形状の電極体とからなる電極挿入体では、上記横方向の両端部における厚みが上記電池ケースの上端部から底部に向けて漸減している。すなわち、上記電極挿入体の横方向の両端部(および該両端部を含む所定の領域)では、その端面(または、上記横方向と直交する厚み方向に沿って切断して得られる縦断面)の形状がテーパー形状(V字状)を呈している。したがって、上記底部側の上記両端部の厚みは、上記電池ケースの内壁面の上端部に形成される開口部における上記厚み方向の長さよりも小さくなっている。このことにより、以下の効果が奏される。まず、かかる電極挿入体は、上記のような形状の両端部を有するため、単純な直方体状の(すなわち上記両端部の端面または上記縦断面が長方形であるような)電極挿入体に比べて、上記電池ケースの上記開口部から容易に収容することができる。また、上記電極挿入体を構成する上記外装体は、典型的にはその上端部が開口しており当該開口部分から電極体を例えば挿入することにより配置可能である。上記電極挿入体と同形状である該外装体の厚み方向の長さについてもその上端部(開口)側が底部側よりも大きく広がっているので、上記電極体を上記外装体に容易に挿入して内部に配置することができる。
【0008】
さらに、かかる構成の電池によれば、上記電極挿入体の電池ケースへの挿入時において、該電極挿入体が上記電池ケースの上端部における開口部や該ケースの内部空間を構成する内壁面等と干渉することが回避され得るため、上記電極挿入体の外装体(例えばシート状の樹脂材料からなる絶縁フィルム)におけるシワ、折れ、破れ等の発生が防止され得る。このため、電極挿入体の挿入時に生じ得るシワ等が電池性能に及ぼす悪影響(例えば内部短絡等)を未然に防ぐことができる。
【0009】
ここで開示される電池の好ましい一態様として、前記電極挿入体において、前記横方向の前記両端部を除く中央部分の厚みは前記電池ケースの上端部から底部にかけてほぼ一定であることを特徴とする。
【0010】
かかる構成の電池によれば、電極挿入体において横方向の両端部を除く中央部分(上記両端部に挟まれた部分であって上記横方向の中央を中心として含む所定の部分)の厚みは、上記電池ケースの上端部から底部にかけて一定であり、上記電池ケースの開口部における厚み方向に沿う長さに対応している。すなわち上記両端部を除く中央部分では、その厚み方向に沿って切断して得られる縦断面形状は、V字状(テーパー状)ではなくU字状になっている。このため、電極体を外装体の内部に配置する際に、該電極体の両端部の厚みを漸減させるのみで該電極体を上記外装体の形状に対応させることができる。このことにより、該電極体を過度に変形させることなく該電極体を上記外装体の内部に容易に配置できるとともに、該電極体の過度の変形に伴う電池性能への悪影響も回避し得る。
【0011】
ここで開示される電池の好ましい他の一態様として、前記電極挿入体において、前記横方向の前記両端部を含む所定の領域では、該電極挿入体の厚みは前記横方向の中央に近い側から前記両端部に向かって漸減しており、かつその漸減の程度は前記横方向と直交する方向であって前記電池ケースの上端部から底部に向かう方向にいくに従い徐々に大きくなっていくことを特徴とする。
【0012】
かかる構成の電池によれば、上記横方向の両端部を含む所定の領域では、その電極挿入体の厚みは、上記横方向の中央に近い方の側から上記両端部に向かって漸減している。すなわち、上記電極挿入体の上記横方向に沿う横断面形状は、扁平な長方形の四隅の出隅部分(角部)が切り取られたような扁平な八角形状になっている。これに加えて、上記厚みの漸減の程度は電池ケースの上端部から底部に向かって大きくなっているため、上記漸減の程度が最も大きい底部における横断面は、上記出隅部分の切り欠き(切り取られ部分)が最も大きくなるような形状になっている。このことにより、例えば底部のコーナー部がR形状となっている電池ケースに対して上記形状の電極挿入体を(例えば挿入により)収容する際には、上記電極挿入体の特に底部における横方向の両端部が上記電池ケースの上記コーナー部に干渉することなく、上記電極挿入体をスムーズに挿入して収容できる。このことにより、上記電極挿入体を構成する外装体や電極体の横方向の両端部において上記干渉によるシワや折れ、破れ、さらには変形といった不具合の発生が防止され得る。
【0013】
また、扁平で単純な直方体状の電極挿入体の場合には、その横断面形状は長方形であるため、その四隅の各出隅部分が上記電池ケースのコーナー部に干渉しないように、上記電極挿入体を構成する電極体のサイズを全体的に小さくしていた。しかし、かかる構成の電池によれば、電極挿入体の特に底部の横断面形状において、上記長方形の四つの出隅部分が切り欠いたようになっているので、該出隅部分がコーナー部に干渉することが避けられる。したがって、上記電極体の寸法をその分大きくでき、かかる構成の電池は容量の大きな電池となり得る。
【0014】
ここで開示される技術のより好ましい適用対象として、前記電極体は、シート状の正極集電体に正極活物質層が付与されてなる正極と、シート状の負極集電体に負極活物質層が付与されてなる負極とがセパレータを介して積層されてともに捲回されてなる捲回電極体が例示される。かかる電極体の捲回軸方向は、前記横方向と平行である。そして、前記電極体における前記捲回軸方向の中央部分は正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている活物質層付与部を形成している。前記捲回軸方向の両端部のうちの一方は、正極活物質層が付与されずに正極集電体の露出した部分が積層されてなる正極集電部を形成しており、前記捲回軸方向の両端部のうちの他方は、負極活物質層が付与されずに負極集電体の露出した部分が積層されてなる負極集電部を形成している。
【0015】
このような構成の電極体を備えた電池の好ましい一態様では、前記電極挿入体における捲回軸方向の両端部の前記電池ケースの上端部から底部に向けて厚みが漸減している部分は、それぞれ、前記正極集電部および負極集電部に相当することを特徴とする。かかる構成の電池によれば、上記電極挿入体を構成する外装体の内部に上記電極体を挿入して配置する際に、上記電極挿入体の捲回軸方向(すなわち横方向)の両端部を含む所定の領域は容易に上記のような形状に形成され、かつその形状は保持され得る。したがって電池ケースに収容し易い電極挿入体の形状が保持され得る。
【0016】
また、上記のような構成の電極体を直接電池ケースに収容する際には、特に正極集電部および負極集電部において上記電池ケースと上記電極体とが干渉し易く、上記各集電部の破れ等の不具合が発生する虞があった。しかし、かかる構成の電池によれば、上記電極体は上記形状の電極挿入体として上記電池ケースに収容され得るので、上記虞は解消されて上記電極体の不具合も回避され得る。
【0017】
ここで、上記電極挿入体において、典型的には、その捲回軸方向の中央部分は前記電極体の活物質層付与部に相当しており、該中央部分における上記電極挿入体の厚みは上記活物質層付与部の厚みに対応している。上記電極体の活物質層付与部は正極および負極の各活物質層がセパレータを介して積層されている部分であるため、その部分を変形させてその厚みを調整することは難しい。しかし、上記電極挿入体の上記中央部分の厚みは電池ケースの上端部から底部にかけて一定であり上記活物質層付与部の厚みに対応するため、上記電極体の上記外装体の内部への収容時には上記電極体を収容(挿入)し易く、かつ挿入後も上記電極体を大きく変形させずに上記電極挿入体の全体形状を保持できる。
【0018】
ここで開示される電池の好ましい他の一態様として、前記外装体は、シート状の絶縁性樹脂材料から形成されていることを特徴とする。
【0019】
かかる構成の電池によれば、上記外装体がシート状の絶縁性樹脂材料からなることにより、該樹脂材料製のシートを折り曲げる等すれば、外装体を上記電池ケースに挿入し易くかつシワ等の発生が防止され得る形状に容易に作製することができる。また、上記外装体にシート状の樹脂材料が用いられることにより、上記電池ケースの内部における上記外装体が占め得るスペース(すなわち電極体と電池ケースの内壁面との隙間)を最小限に抑えることができる。このため、その分上記電極体を大きくして容量の大きな電池を作製することができる。
【0020】
ここで開示されるいずれかの電池は、上記のように外装体を備えた構成であっても外装体と電池ケースとの干渉が回避され、電池ケースと電極体との絶縁が確保された良好な電池性能を発揮し得ることから、車両に搭載される電池(例えば自動車等の車両の電源)として好適に利用され得る。したがって本発明によると、ここで開示されるいずれかの電池を備えた車両が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電池の構成や構築手順、電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0022】
本明細書において「電池」とは、所定の電気エネルギーを取り出し得る蓄電装置をいい、特定の蓄電機構(電極体や電解質の構成)に限定されない。すなわち、リチウム二次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等のいわゆる化学電池の他、電気二重層キャパシタのように種々の化学電池と同様の産業分野で同様に使用され得る蓄電素子(物理電池)を包含する用語である。
【0023】
以下、図面を参照にしながら本発明による実施の形態を説明する。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。
【0024】
以下、角型形状のリチウムイオン電池100を例にして、本発明に係る電池について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0025】
図1〜図5を参照にしながら本実施形態に係る電池100の構成について説明する。図1は、電極体30と該電極体30が内部に配置された外装体20とからなる電極挿入体10が電池ケース40内に収容された状態を説明する模式的な正面断面図である。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図3は、図1におけるIII−III線断面図である。図4は、図1におけるIV−IV線断面図である。図5は、電極挿入体10の模式的な全体斜視図である。
【0026】
電池100の好ましい一実施形態(本実施形態)を示す図1に示されるように、ここで開示されるリチウムイオン電池100は、正極および負極を備えた扁平な形状の電極体30と、該電極体30および電解質が収容され該電極体30の形状に対応した扁平な箱状の電池ケース40とを備える。電極体30は、該電極体30の形状に対応した扁平な箱状の外装体20の内部に配置(収容)されており、該外装体20とともに電極挿入体10を構成している。電極体30は、外装体20に収容された状態で、すなわち電極挿入体10として電池ケース40の内部に配置されている。なお、本実施形態に係る電池ケース40では後述のように上端部42に開口部43が形成されており、電池100は該開口部43を閉塞する蓋体を備え得るが、本発明を特徴づけるものではないため、該蓋体を図示していない。
【0027】
図1〜4に示されるように、本実施形態に係る電池ケース40では、その内壁面で囲まれた空間(内部空間)が扁平な電極挿入体10の形状に対応した扁平な箱型形状(角型)に形成されている。電池ケース40の上記内壁面は、扁平な略長方形の底面(底部44)と、該底部44の長手方向に沿う両端から直立した互いに対向する2枚の幅広面46と、該底部44の短手方向に沿う両端から直立した互いに対向する2枚の幅狭面48とから構成されている。幅広面46と幅狭面48の各面同士で構成される四隅にはコーナー部45が形成されており、該コーナー部45はR形状となっている。また、上述のように電池ケース40の上端部42は電極挿入体10(電極体30)が挿入され得る開口部43となっている。
【0028】
電池ケース40の材質としては、軽量で熱伝導性が良好で高強度な金属材料を好ましく採用することができる。このような金属材料として、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ステンレス、ニッケルメッキ鋼等が挙げられ、典型的にはアルミニウムが用いられる。
【0029】
扁平な形状の電極体30は、シート状の正極集電体に正極活物質層が付与されてなる正極(正極シート)34と、シート状の負極集電体に負極活物質層が付与されてなる負極(負極シート)36とがセパレータ39を介して積層されることにより構成されている。図1に示されるように、電極体30は、その幅広面32からみて所定方向の中央部分に形成されている活物質層付与部38と、該幅広面32からみて活物質層付与部38の両側のうち一方の側の端部に形成された正極集電部35と、他方の側の端部に形成された負極集電部37とを備えている。活物質層付与部38では、正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている。また、正極集電部35および負極集電部37では、正極活物質層および負極活物質層が付与されずに正極集電体および負極集電体が露出した部分であって活物質層付与部38の両端部のうちの各端部からそれぞれはみ出した部分が積層されている。
【0030】
電極体30は、電極挿入体10として電池ケース40に収容されている。このとき電極体30は、その幅広面32が電池ケース40の幅広面46に対向するようにして、かつ上記正極集電部35と負極集電部37のそれぞれが電池ケース40の幅広面46の両端において上端部42から底部44に亘って配置されるようにして、電池ケース40の内部に収容されている。また、上記電池ケース40に収容されている電極体30において、正極集電部35および負極集電部37は、その幅広面32からみて電池ケース40の上端部42から底部44に亘って(帯状に)配置され、当該正極集電部35、活物質層付与部38、および負極集電部37は、上記上端部42から底部44に向かう縦方向と直交する方向であって幅広面32に平行な方向に沿って(並列して)いる。この方向を横方向Pとする。
【0031】
電極体30の構成は、扁平な形状を有し、その幅広面32からみて横方向Pの中央部分に活物質層付与部38と、その両側の端部に正極集電部35と負極集電部37とを備える構成であれば、特に限定されない。例えば複数枚の正極シートと複数枚の負極シートを複数枚のシート状セパレータ(あるいはセパレータとして機能し得る固体またはゲル状電解質)とともに交互に積層して得られる積層型電極体でもよい。また、長尺状の正極シートと負極シートをセパレータを介して積層し長手方向に沿って捲回することにより得られる捲回型電極体(捲回電極体)でもよい。本実施形態に係る電極体30として、捲回電極体を採用し、捲回軸方向と直交する方向に沿って押しつぶすことにより扁平な形状にした電極体を好ましく用いることができる。ここで、本実施形態に係る電極体(捲回電極体)30の捲回軸方向は上記横方向Pと平行(同じ)である。
【0032】
また、電池ケース40に収容されている電極体30の配置については、該電極体30の正極集電部35および負極集電部37(の長手方向)がその幅広面32からみて上記横方向Pに沿って(帯状に)配置され、該正極集電部35、活物質層付与部38および負極集電部37が、横方向Pと直交する方向であって電池ケース40の上端部42(または底部44)から底部44(または上端部42)に向かう縦方向(典型的には垂直方向)に沿う配置であってもよい。すなわち、上記電極体30が捲回電極体であれば、その捲回軸方向が上記縦方向(垂直方向)と平行(同じ)になるような配置であってもよい。なお、かかる場合において、正極集電部35および負極集電部37は、上記上端部42側および上記底部44側のそれぞれに配置されるが、どちらの集電部が上記上端部42(または底部44)側に配置されるかについては適宜設定されればよく、特に限定されない。ここで、上記底部44側に配置され得る正極集電部35または負極集電部37のどちらか一方は、他方(すなわち上端部42側)に配置される集電部の厚みよりも薄くなるように厚み方向Qに潰されていること(特に横方向Pの両端部18,19において潰されていること)が好ましい。このように底部44側に配置される集電部をつぶして厚みを薄くすることにより、電池ケース40への挿入性を向上させることができる。
【0033】
また、電池ケース40の高さ寸法(上記垂直方向に沿う長さ)と電極体30の高さ寸法との関係については、上記電池ケース40に収容された状態にある上記電極体30が該電池ケース40の上端部42における開口面(開口部43)から突出しなければ、特に限定されない。
【0034】
上記電極体30は、上記正極集電部35には図示しない正極リード端子(正極集電端子)、および上記負極集電部37には図示しない負極リード端子(負極集電端子)が(例えば各端部における縦方向の中央部分付近に)それぞれ接続された状態で外装体20とともに電池ケース40内に収容され得る。
【0035】
次に外装体20について説明する。図1〜5に示されるように、外装体20は、電極体30の形状に対応した扁平な箱状に形成されており、その上端部は開口している。また、外装体20は電極体30を内部に配置した状態で(すなわち電極挿入体10として)電池ケース40内に収容されるため、電極体30と電池ケース40の内壁面(幅広面46および幅狭面48)との間に配されて、該電極体30と電池ケース40とを電気的に隔離している。本実施形態に係る外装体20は、シート状(フィルム状)の絶縁性樹脂材料から形成されており、例えば所定形状に切り取られた樹脂製フィルムが上記扁平な箱状に折り曲げられて組み立てられることにより形成されている。なお、上記外装体20は、上記電極体30と電池ケース40との絶縁性が確保される限りにおいて、例えばその一部(底部でもよい)に、端子を取り出すための端子取出し孔等を備えた構成であってもよい。
【0036】
次に電極挿入体10について図2〜5を参照にしつつ説明する。電極挿入体10は、電極体30と該電極体30が内部に配置(収容)された外装体20とから構成され、扁平な箱状に形成されて、電池ケース40内に収容されている。
【0037】
図3および図5に示されるように、電極挿入体10の形状は、上記横方向Pの両端部18,19(ここで、「両端部18および19」は、特に限定しない限り、横方向Pの「両端部」および「該両端部を含む所定領域」の両方を包含することとする。)における厚み(厚み方向Qの長さ)Laが電池ケース40の上端部42から底部44に向けて漸減した形状となっている。すなわち、電極挿入体10の横方向Pの両端部18,19における厚み方向Qに沿った縦断面は、上記上端部42に対応する電極挿入体10の上端部12から上記底部44に対応する電極挿入体10の底部14への縦方向(典型的には垂直方向)に沿ってテーパー形状(またはV字形状)を呈している。このため、上記上端部12における上記両端部18,19の厚みLaは、電池ケース40の内部空間(または幅狭面48)の厚み方向Qの長さLに対応している(ほぼ一致、あるいはごく僅かに小さい)が、漸減されることにより上記底部14では上記長さLよりも小さくなっている。
【0038】
また、図2および図5に示されるように、上記の電極挿入体10において、横方向Pの両端部18,19を除く中央部分16の厚みLbは電池ケース40の上端部42から底部44にかけてほぼ一定であり、電池ケース40の上記幅狭面48の厚み方向Qの長さLに対応している。すなわち、電極挿入体10の上記中央部分16における厚み方向Qに沿った縦断面は、上記上端部42から底部44に向けてU字形状を呈している。
【0039】
したがって、電極挿入体10の厚み、すなわち横方向Pの両端部18,19における厚みLaと該両端部18,19を除く中央部分16の厚みLbは、電池ケース40の上端部12においては互いに一致(La=Lb)し、上記厚み方向Qの長さLに対応しているが、底部14に向かうに従って徐々に両者に開きが生じて上記両端部18,19における厚みLaが小さくなって(漸減して)いく(La<Lb)。このことにより、図4および図5に示されるように、上記両端部18,19(を含む所定の領域)における電極挿入体10の厚みLaは、上記中央部分16側から両端部18,19側への横方向Pに向かって漸減し、かつその漸減の程度は上記上端部12から底部14(すなわち電池ケース40の上端部42から底部44)に向かうに従って徐々に大きくなっていく。すなわち、横方向Pに沿って電極挿入体10を切断して得られる横断面の形状は、扁平な長方形の四隅の出隅部分が切り取られたような扁平な八角形状になっている。これに加えて、上記漸減の程度が最も大きくなり得る上記底部14近傍における電極挿入体10の横断面形状は、上記出隅部分の切り欠き(切り取られ部分)が最も大きい八角形状になっている。このことにより、電池ケース40におけるR形状のコーナー部45と電極挿入体10の両端部18,19とは特に底部44(あるいは底部14)付近において互いの干渉が回避されて、該電極挿入体10は該電池ケース40内に収容されている。
【0040】
上述のとおり、本実施形態に係る電極挿入体10において、その構成要素である電極体30として捲回電極体が好ましく採用される。かかる場合には、上記横方向Pは捲回電極体30の捲回軸方向と平行(同じ)である。このことにより、電極挿入体10における横方向Pの両端部18,19を除く中央部分16であって厚みLbが上端部12から底部14に向けてほぼ一定である部分は、電極体30の活物質層付与部38に相当していることが好ましい。また上記横方向(捲回軸方向)Pの両端部18,19のうち一方の端部18側および他方の端部19側は電極体30のそれぞれ正極側および負極側に相当していることが好ましく、さらに該両端部18,19を含む所定の領域であって厚みLaが上記上端部12から底部14に向けて漸減している部分(領域)は、それぞれ、正極集電部35および負極集電部37に相当していることが好ましい。なお、どちらの端部が上記正極(または負極)側に相当するのかは、特に限定されない(図1〜図4においては、端部18は正極集電部35、端部10は負極集電部37に相当している)。電極体30と電極挿入体10との各部分が上記のような対応関係にあることにより、電極体30は、上記活物質層付与部38の両側からはみ出た状態にある正極集電部35と負極集電部37における上記底部14付近の厚みがやや潰されている(薄くなっている)のみで大きな変形や座屈を生じることなく、外装体20内に配置されて、該外装体20とともに電極挿入体10を構成している。
【0041】
電極挿入体10の全体形状において、その底部14(底面部分)の形状は該電極挿入体10を構成する電極体30の形状に対応させればよく、特に限定されない。例えば、図2または図3に示されるように、電極体30が捲回電極体である場合には、R形状、あるいは押し潰されて扁平な捲回電極体30における上記底部14側の側面の曲率に対応させた形状にすればよい。また、電極体30が積層型の電極体である場合には、電極挿入体10の底部の形状はフラット(平坦)であってもよい。
【0042】
また、電極挿入体10は、その全体形状として上記のような形状を有していればよく、電極挿入体10の構成要素である電極体30自体が上記のような電極挿入体10の全体形状に一致している必要はない。したがって、電極体30単体の全体(外観)形状は特に限定されない。例えば、外装体20内に配置されて電極挿入体10として電池ケース40内に収容されている電極体30は、その横方向(捲回軸方向)Pの両端部18,19(すなわち正極集電部35と負極集電部37に相当する部分)には図示しない正極および負極用の端子がそれぞれ接続され得る。このため、例えば、上記両集電部35,37が捲回軸中心部分において厚み方向Qの両側から挟まれるようにして該端子を接続させている形態における電極体30では、その端面形状は中心がくびれた瓢箪形状となり得る。このような形状の電極体30が外装体20内に配置されていても、電極挿入体10としての形状が、上記のように厚みLaが漸減するような両端部18,19を備える形状であればよい。
【0043】
次に、本実施形態の電池100の構築(作製)方法について図1〜図6を参照にしつつ説明する。図6は、ガイド体52a,52bを用いて電極体30の捲回軸方向の両端部における正極集電部35および負極集電部37の厚みを(あるいは電極挿入体10の横方向Pの両端部18,19の厚みを)減じて外装体20(あるいは電池ケース40)に収容する方法を模式的に示した図である。
【0044】
まず、本実施形態に係る捲回電極体30は、通常のリチウムイオン電池の捲回電極体と同様にして構築することができる。すなわち、長尺状の正極シート34と長尺状の負極シート36とを2枚の長尺シート状セパレータ39とともに積層して長手方向に沿って捲回し、得られた捲回体を捲回軸方向に対して直交する方向から押し潰すことによって扁平な形状に作製され得る。
【0045】
正極シート34は、長尺シート状の正極集電体の長手方向の一方の端部側に所定幅で長手方向に沿って正極活物質層を付与(典型的には塗布)し、かつ他方の端部側に正極活物質層を塗布せずに正極集電体を露出させた部分を設けることにより作製され得る。負極シート36についても同様であり、長尺シート状の負極集電体の長手方向の一端側に負極活物質層を付与した部分と、他端側に負極集電体が露出した部分を設けることにより作製され得る。
【0046】
ここで、正極シート34と負極シート36の捲回方法については、まず正極シート34、セパレータ39、負極シート36、セパレータ39の順でともに積層し、さらに該正極シート34と負極シート36とを幅方向(短手方向)に位置をずらした状態で捲回する。この結果として、得られた捲回電極体30の捲回軸方向の中央部分には正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている活物質層付与部38が形成される。また該活物質層付与部38の両側、すなわち捲回軸方向の両端部のうちの一方には、正極集電体が露出した部分が積層されてなる正極集電部35が活物質層付与部38から外方にはみ出すように形成され、もう一方には、負極集電体が露出した部分が積層されてなる負極集電部37が活物質層付与部38から外方にはみ出すように形成される。なお、このようにして得られた捲回電極体30において、典型的にはその正極集電部35および負極集電部37には図示しない正極リード端子および負極リード端子がそれぞれ付設され、これらのリード端子はさらに正極(外部)端子および負極(外部)端子のそれぞれに電気的に接続され得る。
【0047】
かかる捲回電極体30を構成する材料および部材自体は、従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。正極シート34において、正極集電体にはアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の金属からなる箔材を好適に使用することができる。正極活物質としては従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、リチウムニッケル系複合酸化物(リチウムとニッケルとを構成金属元素として含む酸化物であって、ニッケルサイトの一部がコバルトやアルミニウム等の他の金属元素で置換されたものを含む。典型的にはLiNiO)、リチウムコバルト系複合酸化物(典型的にはLiCoO)、リチウムマンガン系複合酸化物(典型的にはLiMn)等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。例えば、厚さ5μm〜20μm(例えば15μm)程度の長尺状アルミニウム箔を正極集電体として使用し、その表面の所定領域に常法によりリチウムニッケル系複合酸化物を主体とする正極活物質層を形成することによって好適な正極シート34が得られる。
【0048】
一方、負極シート36において、負極集電体には銅箔、その他の負極に適する金属箔が好適に使用することができる。負極活物質としては従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボンやアモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物(リチウムチタン酸化物等)、リチウム遷移金属窒化物等が挙げられる。例えば、厚さ5μm〜20μm(例えば10μm)程度の長尺状銅箔を使用し、その表面の所定領域に常法によって炭素系材料(典型的にはグラファイト)を主体とする負極活物質層を形成することによって好適な負極シート36が得られる。
【0049】
また、正極シート34および負極シート36の間に使用される好適なセパレータ39としては、合成樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン)により構成されたものが例示される。例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる厚さ5μm〜30μm(例えば25μm)程度の多孔質セパレータシートを好適に使用することができる。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状電解質を使用する場合には、一般的に用いられている合成樹脂製(例えばポリプロピレン製)のセパレータが不要な場合(すなわちこの場合には電解質自体がセパレータとして働く。)があり得る。
【0050】
本実施形態に係る外装体20は、シート状(フィルム状)の絶縁性樹脂材料を好ましく用いて作製することができる。例えば、上記シート状の樹脂材料を所定形状(例えば上記扁平な箱体を展開して得られる形状)に切り抜き、次いでこの切り抜かれたシートを折り曲げて扁平な箱型形状に組み立てることにより好適な外装体20が得られる。複数枚のシートあるいは複数パーツを溶接等により貼り合わせて(組み合わせて)上記箱形状に形成してもよい。外装体20に使用される好適なシート状絶縁性樹脂材料としては、絶縁性が良好で耐熱性が高い樹脂材料であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂材料を好適に使用することができる。かかる樹脂材料の厚さとしては、100μm程度であることが好ましいが、電池100の構成条件等(電極体30が電池ケース40の内部空間に占める割合等)により適宜変更され得る。また、上記シート材料同士を貼り合わせる場合には、ヒートバー等による熱溶着が好ましく採用され得るが特に限定されず、例えば超音波溶接やレーザー溶接等の溶接方法についても適宜使用することができる。厚みの薄いシート状の材料から形成される外装体20は、電池ケース40に電極体30とともに収容されても、外装体20自体の占めるスペースを最小限に抑えることができるので、好ましく用いることができる。
【0051】
上記扁平な箱状の外装体20内に扁平な形状の電極体30を収容する際には、電極体30の捲回軸方向が外装体20の上端部における開口面(横方向Pおよび厚み方向Qを含む平面)に対して平行になるようにして、かつ外装体20の幅広面と電極体30の幅広面32とが対向する(平行になる)ようにして電極体30を収容(典型的には挿入)する。これにより電極挿入体10が構成される。またこのときの電極挿入体10では、その横方向Pの両端部18,19を含む領域であって中央部分16側から両端部18,19に向かって厚みLaの漸減している領域は、上記電極体30における正極集電部35および負極集電部37のそれぞれに相当している。
【0052】
ここで、上記電極体30を上記外装体20に挿入する方法は特に限定されないが、例えば、図6に示されるような一対のローラ状のガイド体52a,52bを採用し、これらを外装体20の上端部に設けられている開口より上方の2箇所に配置することにより容易に挿入することができる。すなわち、対向するガイド体52a,52b同士に挟まれる空間部の間隔を、外装体20の上記横方向Pの両端部における底部の厚み方向Qの長さ(すなわち電極挿入体10の上記両端部18,19における底部14の厚みLa)に設定しておく。次いで電極体30の挿入時に、電極体30の捲回軸方向の両端部をそれぞれ上記ガイド体52a,52bの間の上記空間部に配置し、該空間部に電極体30の上記両端部を押し込みながら該電極体30を外装体20内に挿入すれば、正極集電部35と負極集電部37における少なくともガイド体52a,52bに挟まれた部分の厚みは上記空間部の間隔に一致するので、外装体20の上端部における開口から電極体30を容易に収容することができる。
【0053】
外装体20が上記のようにシート状の絶縁性樹脂材料から形成される場合には、所定形状に切り抜かれた上記材料製のシート上の所定位置に電極体30を配置し、該電極体30を配置した状態で外装体20を組み立ててもよい。かかる場合には、扁平な形状の外装体20に上記電極体30を挿入により収容する煩雑さが解消され得る。
【0054】
上記のようにして得られた電極挿入体10を電池ケース40内に収容する。このとき、電極挿入体10は、その横方向Pの両端部18,19の厚みLaが該電極挿入体10の上端部12から底部14に向かって漸減しており、また両端部18,19(すなわち電極体30の正極集電部35と負極集電部37に相当する部分)においても、上記厚みLaは中央部分16側から両端部18,19に向かって漸減しており、かつその漸減の程度は上端部12から底部14に向かう縦(垂直)方向にいくに従い徐々に大きくなっている。電極挿入体10がこのような形状をしているため、該電極挿入体10を電池ケース40の上端部42に形成された開口部43から容易に収容することができる。また、この収容時において電極挿入体10が電池ケース40の内壁面(幅広面46および幅狭面48)やコーナー部45に干渉することがなく、スムーズに挿入できるとともに、上記電極挿入体10の横方向Pの両端部18,19において該電極挿入体10を構成する外装体20や電極体30の上記干渉によるシワや折れ、破れ、さらには変形といった不具合の発生が効果的に防止され得る。したがって、このような不具合が電池性能に及ぼす悪影響(例えば内部短絡等)を未然に防ぐことができる。
【0055】
電池ケース40内に電極挿入体10を収容するにあたり、上記のように電極挿入体10に対して横方向Pの両端部18,19の厚みLaを漸減させた形状(端部形状)に予め形成しておき、その後該電極挿入体10を上記電池ケース40内に収容(挿入)してもよい。すなわち上記形状の外装体20を採用して上記端部形状の電極挿入体10を予め形成しておいてもよい。あるいは電池ケース40への挿入と同時(またはその直前)に上記両端部18,19を上記形状に形成してもよい。後者の場合には、横方向Pの両端部の厚みが漸減されていない単なる扁平な直方体形状の外装体を使用することができる。また、かかる場合には、例えば、上述の図6に示されるようなガイド体52a,52b等を利用することにより、上記端部形状を好ましく形成することができる。このような外装体の内部に電極体30を配置して得られる電極挿入体であって単なる扁平な直方体形状の電極挿入体に対して、上記ガイド体52a,52bを適用することにより、電池ケース40への挿入時に上記端部形状が形成されるので、当該形状を備える電極挿入体として電池ケース40内に容易に挿入することができる。
【0056】
上記のように電極挿入体10を電池ケース40内に収容した後、例えば電池ケース40に形成された図示しない注液口から適当な電解質(典型的には電解液)を注入する。そして電池ケース40を封止することによって電池100が構築される。上記電解質として、例えば非水溶媒(ジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒等)の中に適当な支持塩(ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)等のリチウム塩)を適当量(例えば濃度1M)溶解した非水電解液を好ましく用いることができる。
【0057】
以上、本発明を好適な一つの実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施形態とは異なる別の実施形態として、例えば以下に示すような電極挿入体を備えた電池が挙げられる。例えば、かかる電極挿入体としては、熱硬化性の絶縁性樹脂材料等を用いて扁平な箱型形状に成形加工(例えば射出成形)された外装体から構成されるものであってもよい。あるいはアルミニウム等の金属板を箱状に折り曲げて加工し、その側面を溶接等して所定形状に形成した後に、その内壁面に絶縁性の樹脂コーティングを施すことにより得られる外装体から構成され得る電極挿入体でもよい。かかる外装体に電極体を収容して電極挿入体を構成するには、上述のようにガイド体52a,52bを利用することにより容易に行うことができる。このような実施形態に係る電池では、外装体をシート状材料から箱型形状に組み立てる必要がなくなるとともに、上記外装体と電極体とからなる電極挿入体を電池ケースに挿入するときに該電池ケースとの干渉により生じ得る該電極挿入体(外装体)のシワや折れ等の発生がより高い次元で防止され得る。このため、かかる電池はシワ等の発生に起因する電池性能(例えば電池ケースと電極体の間の絶縁機能)の低下がより効果的に回避され、良好な性能を有する電池となり得る。
【0058】
また、電池の種類は上述したリチウムイオン電池に限られず、電極体の構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池、例えばリチウム金属やリチウム合金を負極とするリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミニウム電池、あるいは電気二重層キャパシタであってもよい。
【0059】
なお、本実施形態に係る電池100は、図7に示されるように、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用し得る。したがって本発明は、図7に模式的に示されるように、かかる電池100を単電池として複数個配列して組電池100Aを構築し、かかる組電池100Aを電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】電極体と該電極体が内部に配置された外装体とからなる電極挿入体が電池ケース内に収容された状態を説明する模式的な正面断面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線断面図である。
【図5】電極挿入体の模式的な全体斜視図である。
【図6】ガイド体を用いて電極体(あるいは電極挿入体)を外装体(あるいは電池ケース)に収容する方法を模式的に示した図である。
【図7】本実施形態に係る電池を備えた車両を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0061】
a 電極挿入体の横方向の両端部を含む領域の厚み
b 電極挿入体の両端部を除く中央部分の厚み
P 横方向
Q 厚み方向
1 車両
10 電極挿入体
12 上端部
14 底部
16 両端部を除く中央部分
18 正極集電部側の端部
19 負極集電部側の端部
20 外装体
30 電極体
32 幅広面
34 正極シート
35 正極集電部
36 負極シート
37 負極集電部
38 活物質層付与部
39 セパレータ
40 電池ケース
42 上端部
44 底部
45 コーナー部
46 幅広面
100 電池(リチウムイオン電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な形状の電極体と、該電極体が収容される箱状の電池ケースとを備える角型電池であって、
前記電極体における幅広面からみて所定の方向の中央部分は正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている活物質層付与部を形成しており、前記幅広面からみて該活物質層付与部の両端のうちの一方の端部は正極活物質層が付与されずに正極集電体の露出した部分が積層されている正極集電部を形成しており、他方の端部は負極活物質層が付与されずに負極集電体の露出した部分が積層されている負極集電部を形成しており、
前記電極体と前記電池ケースとの間には、該電極体と電池ケースとを隔離する絶縁性の外装体であって該電極体の形状に対応した外装体が備えられており、
前記電極体は、前記電池ケースの上端部に形成される開口部から、前記正極集電部と前記負極集電部がそれぞれ該電池ケースの幅広面の両端において上端部から底部に亘って配置される横方向に該電池ケース内に収容されるとともに、該電池ケース内においては前記外装体の内部に配置されて該外装体とともに扁平な箱状の電極挿入体を構成しており、
前記電極挿入体において、前記横方向の両端部における厚みは前記電池ケースの上端部から底部に向けて漸減していることを特徴とする、角型電池。
【請求項2】
前記電極挿入体において、前記横方向の前記両端部を除く中央部分の厚みは前記電池ケースの上端部から底部にかけてほぼ一定であることを特徴とする、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電極挿入体において、前記横方向の前記両端部を含む所定の領域では、該電極挿入体の厚みは前記横方向の中央に近い側から前記両端部に向かって漸減しており、かつその漸減の程度は前記横方向と直交する方向であって前記電池ケースの上端部から底部に向かう方向にいくに従い徐々に大きくなっていくことを特徴とする、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記電極体は、シート状の正極集電体に正極活物質層が付与されてなる正極と、シート状の負極集電体に負極活物質層が付与されてなる負極とがセパレータを介して積層されてともに捲回されてなる捲回電極体であり、
該電極体の捲回軸方向は前記横方向と平行であり、
前記電極体における前記捲回軸方向の中央部分は正極活物質層が付与された部分と負極活物質層が付与された部分とが積層されている活物質層付与部を形成しており、前記捲回軸方向の両端部のうちの一方は正極活物質層が付与されずに正極集電体の露出した部分が積層されてなる正極集電部を形成しており、前記捲回軸方向の両端部のうちの他方は負極活物質層が付与されずに負極集電体の露出した部分が積層されてなる負極集電部を形成しており、
前記電極挿入体における前記捲回軸方向の両端部の前記電池ケースの上端部から底部に向けて厚みが漸減している部分は、それぞれ、前記正極集電部および負極集電部に相当することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記外装体は、シート状の絶縁性樹脂材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池を備える車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−277443(P2009−277443A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126346(P2008−126346)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【特許番号】特許第4359857号(P4359857)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】