説明

角穴掘削マシン

【課題】バケットやブームが掘進ケーシング内の各部に当たらないように駆動される角穴掘削マシンを提供する。
【解決手段】バケット12を上下方向に回動させるブーム55と、このブーム55を掘進ケーシング30に対して前後方向に移動するスライドフレーム70とを備え、バケット掘削機10が切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集める角穴掘削マシン1であって、スライドフレーム70の前後位置を検出する前後位置検出器と、ブーム55の上下方向の回動位置を検出するブーム回動位置検出器と、スライドフレーム70の前後位置検出値とブーム55の回動位置検出値とに応じてバケット掘削機10が掘進ケーシング30内の各部に当たらないようにブーム55の上下方向の回動範囲を規制するブーム回動範囲規制手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山に角穴を掘削する角穴掘削マシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道線路、道路などの路線下に立体交差するトンネル(横断構造物)を構築する工法として、長尺の鋼材管などからなる断面角形あるいはコの字形のエレメントを複数用いてトンネル覆工壁を形成するトンネル構築工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このトンネル構築工法は、図12の(a)、(b)に示すように、例えば水平ボーリングによって削孔した路線101下の地山102の穴にワイヤ103を挿入した後、ワイヤ103の掘削発進側104に角穴掘削マシン105とエレメント106を接続して、掘削到着側107からワイヤ103を牽引する。牽引とともに角穴掘削マシン105を駆動してエレメント106枠内を掘削し、掘削発進側104から掘削到着側107へとエレメント106を貫通させる。一つのエレメント106が貫通すると、隣接する箇所から次の掘削およびエレメント挿入を開始する。こうして連なる各エレメント106の内部には、掘削された土砂などを排出するためのコンベア110や角穴掘削マシン105を駆動するための油圧配管109、配線類などが設けられる。
【0004】
上記の作業をトンネルの外枠に沿って順次行っていき、最終的に地山非開削の状態で例えば図13に示す箱型のトンネル覆工壁が形成される。
【0005】
従来、エレメント106の先端部に設置される角穴掘削マシン105として、回転するセンターカッタを用いて硬い地山を掘削するセンターカッタタイプのもの(例えば、特許文献2参照)と、複数のハンマ掘削機を用いて軟らかい地山を掘削する打撃ハンマタイプのもの(例えば、特許文献3参照)がある。
【0006】
特許文献3に開示された打撃ハンマタイプの角穴掘削マシンは、地山に進入する推力が与えられる中空の掘進ケーシングを備え、掘進ケーシングの内側に複数のハンマ掘削機とバケット掘削機とコンベアなどを備えている。バケット掘削機はバケットを動かすことによって切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集め、集められた土砂をコンベアによって搬出して、連続掘進が行われる。
【特許文献1】特開平11−247579号公報
【特許文献2】特開2000−160993号公報
【特許文献3】特開2003−035092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の角穴掘削マシンは、掘進ケーシングの内側にてバケット掘削機を前後方向に移動するとともに、バケット掘削機が上下方向に回動するブームを介してバケットを動かすため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たり、掘進ケーシング30内に設けられるカメラや照明器等を破損する心配がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バケットやブームが掘進ケーシング内の各部に当たらないように駆動される角穴掘削マシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地山に進入する推力が与えられる中空の掘進ケーシングと、この掘進ケーシング内に設けられるバケット掘削機とを備え、このバケット掘削機は、切羽を掘削するバケットと、このバケットを上下方向に回動させるブームと、このブームを掘進ケーシングに対して前後方向に移動するスライドフレームとを備え、バケット掘削機が切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集める角穴掘削マシンに適用する。
【0010】
そして、スライドフレームの前後位置を検出する前後位置検出器と、ブームの上下方向の回動位置を検出するブーム回動位置検出器と、スライドフレームの前後位置検出値とブームの回動位置検出値とに応じてバケット掘削機が掘進ケーシング内の各部に当たらないようにブームの上下方向の回動範囲を規制するブーム回動範囲規制手段とを備えることを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、バケット掘削機はスライドフレームの前後位置に応じた所定の範囲内でブームとバケットを上下動させるため、バケットやブームが掘進ケーシング内の各部に当たらないように切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は角穴掘削マシン1の側面図であり、図2は角穴掘削マシン1を上から見た平面図である。
【0014】
角穴掘削マシン1は前記多数の覆工エレメントを用いて覆工を行うトンネル構築工法に用いられるもので、牽引装置によって牽引されながら地山を掘進し、角穴掘削マシン1に続いて地山に覆工エレメントを挿入(貫入)するようになっている(図12参照)。
【0015】
図1、2に示すように、角穴掘削マシン1は、地山に進入する推力が与えられる掘進ケーシング30と、切羽を打撃力によって掘削する複数のハンマ掘削機(削岩機)20と、切羽を掘削するとともに掘削された土砂を集めるバケット掘削機10と、バケット掘削機10によって集められた礫や土砂を後方に搬送するコンベア(図示せず)などを備える。
【0016】
図4は角穴掘削マシン1を後ろから見た背面図である。図4に示すように、掘進ケーシング30は断面四角形の鋼管からなり、左右の側板33、34と上板35および下板36を有する。左右の側板33、34は略垂直方向に延び、上板35および下板36は略水平方向に延びている。
【0017】
掘進ケーシング30には四つの隅部から継ぎ手31が突出し、各継ぎ手31が既に挿入された覆工エレメント4の継ぎ手(ガイドレール)にスライド自在に係合する。掘進ケーシング30は覆工エレメントの継ぎ手によって掘進方向に案内されることにより所定の軌道で地山に進入し、施工精度が確保される。
【0018】
角穴掘削マシン1は、掘進ケーシング30のクランプ39に図示しないワイヤが連結され、このワイヤが牽引装置に牽引されることによって推力が与えられる。なお、角穴掘削マシン1は、掘進ケーシング30が後方の覆工エレメントを介して押されることによって推力が与えられる構成にしてもよい。
【0019】
図3は角穴掘削マシン1を前から見た正面図である。図3に示すように、掘進ケーシング30の内側に少なくとも対向する2辺に沿って複数のハンマ掘削機20が並んで設けられる。本実施の形態では、左右の側板33、34に沿ってそれぞれ6つのハンマ掘削機20が並んで配置され、各ハンマ掘削機20によって掘進ケーシング30の外形線に沿った掘削が行われる構成とする。なお、ハンマ掘削機20が設けられる個数はこれに限らず、また、上板35および下板36にも複数のハンマ掘削機20が並んで配置される構成としてもよい。
【0020】
各ハンマ掘削機20は図示しないロッドの先端に掘削工具(歯先)22が連結され、この掘削工具22が切羽に押し付けられるのに伴ってハンマ掘削機20が自動的に駆動油圧が供給される。ハンマ掘削機20は図示しないシリンダ内に収められたピストンを油圧によって進退させてロッドの後端面を打撃し、掘削工具22が切羽に繰り返し打ち込まれて切羽を掘削するようになっている。
【0021】
掘進ケーシング30の内側には左右のハンマ掘削機20列の間に排土空間37が設けられる。この排土空間37にバケット掘削機10と図示しないコンベアが配置される。各ハンマ掘削機20の打撃によって掘削された礫や土砂がバケット掘削機10とコンベアによって排土空間37を通して搬出されることにより、ハンマ掘削機20の作動を止めることなく連続掘進が行える。
【0022】
バケット掘削機10は、図1、図2に示すように、三次元方向に動かされるバケット12を備え、バケット12の先端には複数の爪19が突出している。このバケット12によって切羽を削り落とす機能と、バケット12によって掘削された礫や土砂をコンベアへと集める機能とを持っている。
【0023】
図5はバケット掘削機10を上から見た平面図であり、図6はバケット掘削機10の側面図である。図5、6に示すように、バケット掘削機10は、掘進ケーシング30の上板35に沿って前後方向に移動するスライドフレーム70を備え、このスライドフレーム70によってバケット12を前後方向に動かすようになっている。
【0024】
スライドフレーム70の左右の側部には一対のローラ71と一対のローラ72がそれぞれ取り付けられる。掘進ケーシング30の上板35には各ローラ71、72を転接させる一対のレール73が設けられる。
【0025】
スライドフレーム70は一対の油圧シリンダ74によって駆動される。図6に示すように、各油圧シリンダ74はそれぞれのシリンダ基端部がピン75を介してスライドフレーム70の後部に連結され、それぞれのロッド先端部がピン76を介して掘進ケーシング30の前部に連結される。
【0026】
スライドフレーム70は、各油圧シリンダ74が伸張することにより後退し、各油圧シリンダ74が収縮することにより前進する。
【0027】
バケット掘削機10は、スライドフレーム70に対して左右方向に旋回する旋回フレーム65を備え、この旋回フレーム65によってバケット12を左右方向に動かすようになっている。
【0028】
バケット掘削機10は、旋回フレーム65をスライドフレーム70に対して回動可能に支持するピン(垂直回動支持軸)66と、旋回フレーム65をピン66を支点に回動させる一本の油圧シリンダ67とを備える。
【0029】
図6、7に示すように、スライドフレーム70にはピン66の上下端部を支持する上下のブラケット部77、78と、このブラケット部77、78の基端部が結合される箱形の後方ケース部79とを形成する。
【0030】
油圧シリンダ67はそのシリンダ基端部がピン68を介してスライドフレーム70の側部に連結され、図8に示すようにそのロッド先端部がピン69を介して旋回フレーム65の側部に連結される。
【0031】
油圧シリンダ67が伸張することにより、旋回フレーム65はスライドフレーム70に対して図5にて左回り方向に回動し、油圧シリンダ67が収縮することにより、旋回フレーム65はスライドフレーム70に対して図5にて右回り方向に回動する。油圧シリンダ67が図5に示す中立位置にある場合、旋回フレーム65とブーム55が掘進ケーシング30の中心線上に位置する。
【0032】
バケット掘削機10は、旋回フレーム65に対して上下方向に揺動するブーム55を備え、このブーム55によってバケット12を上下方向に動かすようになっている。
【0033】
ブーム55は旋回フレーム65に対してピン(水平回動支持軸)56によって回動可能に支持される。
【0034】
バケット掘削機10は、ブーム55をピン56を支点に回動させる一対の油圧シリンダ57とを備える。各油圧シリンダ57はそれぞれのシリンダ基端部がピン58を介して旋回フレーム65に連結され、それぞれのロッド先端部がピン59を介してブーム55の中程に連結される。
【0035】
各油圧シリンダ57が伸張することにより、ブーム55は旋回フレーム65に対して下方向に回動し、各油圧シリンダ57が収縮することにより、ブーム55は旋回フレーム65に対して上方向に回動する。
【0036】
バケット掘削機10は、バケット12をブーム55の先端部に対して回動可能に支持するピン(水平回動支持軸)56と、バケット12に連係して回動するリンク17、18と、リンク17、18を介してバケット12をピン13を支点に回動させる一本の油圧シリンダ14とを備える。
【0037】
油圧シリンダ14はそのシリンダ基端部がピン15を介してブーム55の中程に連結され、そのロッド先端部がピン16(水平回動支持軸)を介してリンク17、18の各基端部に連結される。
【0038】
リンク17の先端部はピン(水平回動支持軸)23を介してバケット12に連結される。一対で設けられる各リンク18の先端部はピン(水平回動支持軸)24を介してブーム55に連結される。
【0039】
油圧シリンダ14が伸張することにより、バケット12はブーム55に対して下方向に回動し、油圧シリンダ14が収縮することにより、バケット12はブーム55に対して上方向に回動する。
【0040】
油圧シリンダ14の伸縮作動がリンク17、18を介してバケット12に伝えられることにより、油圧シリンダ14がブーム55に干渉することがなく、バケット12の回動角度範囲が確保される。
【0041】
図6に示す側面図において、ブーム55を回動させる各油圧シリンダ57とバケット12を回動させる油圧シリンダ14とは、互い交差するように配置されている。これにより、ブーム55まわりの限られたスペースにおいて、各油圧シリンダ57と油圧シリンダ14とを介装することが可能となる。
【0042】
なお、バケット掘削機10に設けられる油圧シリンダ14、57、67、74の本数は、これに限らず、要求される出力などに応じて任意に設定される。
【0043】
スライドフレーム70には油圧バルブスタンド5が設けられ、この油圧バルブスタンド5によって油圧シリンダ14、57、67、74、ハンマ掘削機20に加圧作動油が給排される。油圧バルブスタンド5の作動は地山の外側に設けられる図示しないコントローラによって制御される。
【0044】
掘進ケーシング30内にはカメラ2、照明器3が設けられ、このカメラ2によって撮影される様子を見ながらハンマ掘削機20やバケット掘削機10の動作を遠隔操作できるようになっている。
【0045】
角穴掘削マシン1は、スライドフレーム70の前後位置を検出する前後位置検出器(図示せず)と、スライドフレーム70に対する旋回フレーム65の左右方向の回動位置を検出する旋回フレーム回動位置検出器(図9など参照)と、スライドフレーム70の位置と旋回フレーム65の位置とに応じてバケット掘削機10が掘進ケーシング30内の各部に当たらないように旋回フレーム65の回動範囲を規制する旋回フレーム回動範囲規制手段と、旋回フレーム65に対するブーム55の上下方向の回動位置を検出するブーム回動位置検出器(図9〜11など参照)と、スライドフレーム70の位置とブーム55の位置とに応じてバケット掘削機10が掘進ケーシング30内の各部に当たらないようにブーム55の回動範囲を規制するブーム回動範囲規制手段とを備える。
【0046】
前後位置検出器は、バケット12の大部分が掘進ケーシング30の内側に位置することを検出する内側位置検出用リミットスイッチ(図示せず)と、バケット12の先端部が掘進ケーシング30の前端より前方に所定距離(例えば200mm)だけ突出する前端位置検出用リミットスイッチ(図示せず)とが設けられる。
【0047】
スライドフレーム70には内側位置検出用ストライカ(図示せず)と前端位置検出用ストライカ(図示せず)とが設けられる。
【0048】
バケット12が図1に軌跡B1で示す範囲内で移動する位置より後方にスライドフレーム70があると、内側位置検出用ストライカが内側位置検出用リミットスイッチに対峙し、内側位置検出用リミットスイッチはOFFからONになってこの検出信号をコントローラに出力する。
【0049】
バケット12が図1に軌跡B1で示す範囲内で移動する位置と軌跡B2で示す範囲内で移動する位置との間にスライドフレーム70があるとき、前端位置検出用のストライカが前端位置検出用リミットスイッチに対峙し、前端位置検出用リミットスイッチはOFFからONになってこの検出信号をコントローラに出力する。
【0050】
コントローラは、内側位置検出用リミットスイッチと前端位置検出用リミットスイッチとの検出信号をそれぞれ入力することにより、スライドフレーム70の位置を次のよう判定する。
・内側位置検出用リミットスイッチがON、前端位置検出用リミットスイッチがOFFの場合、コントローラはバケット12の大部分が掘進ケーシング30の内側に位置する内側位置にスライドフレーム70があると判定する。
・内側位置検出用リミットスイッチがOFF、前端位置検出用リミットスイッチがONの場合、コントローラはバケット12の一部分が掘進ケーシング30の外側に位置する前端位置(バケット12が図1に軌跡B1、B2で示す範囲内で移動する位置)にスライドフレーム70があると判定する。
・内側位置検出用リミットスイッチがOFF、前端位置検出用リミットスイッチがOFFの場合、コントローラはバケット12の大部分が掘進ケーシング30の外側に位置する外側位置(バケット12が図1に軌跡B2、B3で示す範囲内で移動する位置)にスライドフレーム70があると判定する。
【0051】
図9は旋回フレーム回動位置検出器を上から見た平面図であり、図10は旋回フレーム回動位置検出器の側面図であり、図11は旋回フレーム回動位置検出器を図10の矢印A方向から見た図である。
【0052】
図9に示すように、旋回フレーム回動位置検出器は、旋回フレーム65の後部から突出する左右旋回ストライカ61、62と、左右旋回ストライカ61、62の位置を検出する左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64とを備える。
【0053】
左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64はスライドフレーム70の後方ケース部79の内部に取り付けられる。
【0054】
左右旋回ストライカ61、62はその基端部が旋回フレーム65の背後部に締結され、その中程が後方ケース部79の開口を挿通し、その先端部が後方ケース部79の内部に位置する。
【0055】
旋回フレーム65が左方向に所定角度だけ回動すると、左旋回ストライカ61の先端部が左旋回位置検出用リミットスイッチ63に対峙し、非接点式の左旋回位置検出用リミットスイッチ63がOFFからONになる。
【0056】
旋回フレーム65が右方向に所定角度だけ回動すると、右旋回ストライカ62の先端部が右旋回位置検出用リミットスイッチ64に対峙し、非接点式の右旋回位置検出用リミットスイッチ64がOFFからONになる。
【0057】
コントローラは、左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64の検出信号に基づいて旋回フレーム65の位置を次のよう判定する。
・左旋回位置検出用リミットスイッチ63がON、右旋回位置検出用リミットスイッチ64がOFFになる場合、旋回フレーム65が左方向に所定角度だけ回動した位置にあると判定する。
・右旋回位置検出用リミットスイッチ64がON、左旋回位置検出用リミットスイッチ63がOFFになる場合、旋回フレーム65が右方向に所定角度だけ回動した位置にあると判定する。
・左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64が共にOFFになる場合、旋回フレーム65が旋回中立位置(掘進ケーシング30の中心)に対して所定角度範囲内にあると判定する。
【0058】
旋回フレーム回動範囲規制手段として、コントローラは油圧シリンダ67の作動を次のように制御する。
【0059】
コントローラは、スライドフレーム70が内側位置にある状態では、油圧シリンダ67を旋回フレーム65を旋回中立位置に戻す制御を行う。これにより、バケット12が図2に実線で示すように掘進ケーシング30の中央に保持されるため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たらない。
【0060】
コントローラは、スライドフレーム70が前端位置(バケット12が図1に軌跡B1、B2で示す範囲内で移動する位置)にある状態では、左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64がそれぞれONになる検出信号を入力すると、油圧シリンダ67の伸縮作動を停止する制御を行う。これにより、旋回フレーム65がそれ以上に旋回せず、ブーム55の左右方向の回動範囲が規制されるため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たらない。
【0061】
コントローラは、スライドフレーム70が外側位置(バケット12が図1に軌跡B2、B3で示す範囲内で移動する位置)にある状態では、左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64の検出信号に関係なく油圧シリンダ67の伸縮作動を制御する。これにより、旋回フレーム65は油圧シリンダ67のストローク範囲内で旋回するが、バケット12が掘進ケーシング30の外側に位置するため、バケット12内の各部に当たらない。
【0062】
図9に示すように、ブーム回動位置検出器は、ブーム55の回動にワイヤ41を介して連動するブーム連係ストライカ45と、ブーム連係ストライカ45の位置を検出する第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ51、52、53とを備える。
【0063】
図10、11に示すように、旋回フレーム65の後方に設けられる後方ケース部79は後方を向くように傾斜した下面80を有し、ケース部下面80から突出したピン50が設けられる。ブーム連係ストライカ45は、ピン50によって回動可能に支持され、後方ケース部下面80に沿って回動する。
【0064】
ブーム連係ストライカ45は、ピン50によって支持される回動中心部から延びるレバー部46と、このレバー部46の先端部から曲折して延びる第一ストライカ部47と、ピン50によって支持される回動中心部からレバー部46と反対方向に互いに段差をもって延びる第二、第三ストライカ部48、49とを有する。
【0065】
ブーム連係ストライカ45を初期位置に戻すように付勢するスプリング40が設けられる。スプリング40はその一端がピン81を介してレバー部46の先端部に連結され、その他端がピン82を介して後方フランジ83の前部に連結される。後方フランジ83の後部にはバルブスタンド5が締結される。
【0066】
ワイヤ41の一端はピン91を介してレバー部46の先端部に連結され、その他端がピン92を介してブーム55の中程の上部に連結される。スライドフレーム70にはガイドチューブ92が取り付けられ、旋回フレーム65にはガイドチューブ93が取り付けられ、各ガイドチューブ92、93の間には樹脂製のアウタチューブ(図示せず)が介装される。旋回フレーム65には中継シーブ94が取り付けられる。ワイヤ41は、中継シーブ94に掛け回され、ガイドチューブ93、アウタチューブ、ガイドチューブ92を挿通している。これにより、ワイヤ41は、ブーム55が上下方向に回動する動きをブーム連係ストライカ45に伝え、ブーム55が左右方向に回動する動きをブーム連係ストライカ45に伝えない。
【0067】
ブーム55が下方に回動するのに伴って、ブーム連係ストライカ45はスプリング40に抗して図11にて左方向に回動し、第一ストライカ部47が第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51に対峙すると、非接点式の第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51がONになる。
【0068】
ブーム55が上方に回動するのに伴って、ブーム連係ストライカ45はスプリング40に引っ張られて図11に実線で示す位置に来ると、第二ストライカ部48が第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52に対峙し、非接点式の第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52がONになる。
【0069】
ブーム55がさらに上方に回動するのに伴って、第三ストライカ部49が第三ブーム位置検出用リミットスイッチ53に対峙すると、非接点式の第三ブーム位置検出用リミットスイッチ53がONになる。なお、このとき、第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52が引き続きONになっている。
【0070】
コントローラは、第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ51、52、53の検出信号に基づいてブーム55の位置を次のよう判定する。
・第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51がON、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ52、53がOFFになる場合、ブーム55が下限位置にあると判定する。
・第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51がOFF、第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52がON、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ53がOFFになる場合、ブーム55が掘進ケーシング30内の上限位置にあると判定する。
・第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51がOFF、第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52がON、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ53がONになる場合、ブーム55が掘進ケーシング30の前端上限位置にあると判定する。
【0071】
ブーム回動範囲規制手段として、コントローラは油圧シリンダ67の作動を次のように制御する。
【0072】
コントローラは、第一ブーム位置検出用リミットスイッチ51がONになる検出信号を入力すると、各油圧シリンダ57の伸長作動を停止する制御を行う。これにより、ブーム55がそれ以上に下方に回動せず、ブーム55の回動範囲が規制されるため、バケット12が切羽を必要以上に深く掘削しない。
【0073】
コントローラは、スライドフレーム70が内側位置にある状態では、第二ブーム位置検出用リミットスイッチ52がONになる検出信号を入力すると、各油圧シリンダ57の収縮作動を停止する制御を行う。これにより、ブーム55がそれ以上に回動せず、掘進ケーシング30内ではバケット12が図1に軌跡B1で示す範囲内で移動するため、バケット12が掘進ケーシング30の先端部などに当たることが回避されるとともに、ブーム55上の油圧シリンダ14が掘進ケーシング30内のカメラ2、照明器3などに当たることが回避される。
【0074】
コントローラは、スライドフレーム70が前端位置(バケット12が図1に軌跡B1、B2で示す範囲内で移動する位置)にある状態では、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ53がONになる検出信号を入力すると、各油圧シリンダ57の収縮作動を停止する制御を行う。これにより、ブーム55がそれ以上に回動せず、バケット12が図1に軌跡B2で示す範囲内で移動するため、ブーム55上の油圧シリンダ14が掘進ケーシング30内のピン76などに当たることが回避される。
【0075】
コントローラは、スライドフレーム70が外側位置(バケット12が図1に軌跡B2、B3で示す範囲内で移動する位置)にある状態では、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ52、53の検出信号に関係なく、各油圧シリンダ57の収縮作動を制御する。これにより、油圧シリンダ57は最大ストロークで伸縮作動し、図1に軌跡B3で示す範囲内で移動するが、バケット12が掘進ケーシング30の外側に位置するため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たらない。
【0076】
以上のように構成されて、次に作用及び効果について説明する。
【0077】
角穴掘削マシン1は牽引装置によって掘進ケーシング30が牽引され、掘進ケーシング30に設けられた各ハンマ掘削機20とバケット掘削機10が切羽を掘削し、地山を掘進する。
【0078】
各ハンマ掘削機20はその掘削工具22が切羽に繰り返し打ち込まれるとともに、バケット掘削機10がバケット12を回動させて切羽を掘削する。
【0079】
掘進ケーシング30が地山を掘進するとき、掘進ケーシング30の内側では掘削された礫や土砂がバケット掘削機10とコンベアを介して搬出される。
【0080】
本実施の形態では、地山に進入する推力が与えられる中空の掘進ケーシング30と、この掘進ケーシング30内に設けられるバケット掘削機10とを備え、このバケット掘削機10は、切羽を掘削するバケット12と、このバケット12を上下方向に回動させるブーム55と、このブーム55を掘進ケーシング30に対して前後方向に移動するスライドフレーム70とを備え、バケット掘削機10が切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集める角穴掘削マシン1であって、スライドフレーム70の前後位置を検出する前後位置検出器(図示せず)と、ブーム55の上下方向の回動位置を検出するブーム回動位置検出器(図9〜11など参照)と、スライドフレーム70の前後位置検出値とブーム55の回動位置検出値とに応じてバケット掘削機10が掘進ケーシング30内の各部に当たらないようにブーム55の上下方向の回動範囲を規制するブーム回動範囲規制手段とを備える。
【0081】
これにより、バケット掘削機10はスライドフレーム70の前後位置に応じた所定の範囲内でブーム55とバケット12を上下動させるため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たらないように切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集めることができる。
【0082】
本実施の形態では、ブーム回動位置検出器は、ブーム55の回動にワイヤ41を介して連動するブーム連係ストライカ45を備え、このブーム連係ストライカ45の位置を検出する構成としたため、ブーム回動位置検出器を構成する第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ51、52、53などをブーム55などに干渉しない位置に設けることが可能となり、これらの破損を防止できる。
【0083】
また、第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ51、52、53などをブーム55の背後に設けることにより、地山を掘進する掘進ケーシング30内にその背後から作業者が入って第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ51、52、53などのメンテナンスを行うことが容易になる。
【0084】
なお、ブーム回動位置検出器は、リミットスイッチに限らず、例えばストロークセンサ等を設けても良い。
【0085】
本実施の形態では、スライドフレーム70に対して左右方向に旋回する旋回フレーム65を備え、この旋回フレーム65に対してブーム55を上下方向に回動可能に連結し、スライドフレーム70に対する旋回フレーム65の左右方向の回動位置を検出する旋回フレーム回動位置検出器(図9など参照)と、スライドフレーム70の前後位置検出値と旋回フレーム65の回動位置検出値とに応じてバケット掘削機10が掘進ケーシング30内の各部に当たらないように旋回フレーム65の回動範囲を規制する旋回フレーム回動範囲規制手段とを備える。
【0086】
これにより、バケット掘削機10はスライドフレーム70の前後位置に応じた所定の範囲内でブーム55とバケット12を左右動させるため、バケット12やブーム55が掘進ケーシング30内の各部に当たらないように切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集めることができる。
【0087】
本実施の形態では、旋回フレーム回動位置検出器は、旋回フレーム65の後部から突出する左右旋回ストライカ61、62を備え、この左右旋回ストライカ61、62の位置を検出する構成としたため、旋回フレーム回動位置検出器を構成する左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64などをブーム55などに干渉しない位置に設けることが可能となり、これらの破損を防止できる。
【0088】
なお、旋回フレーム回動位置検出器は、リミットスイッチに限らず、例えばストロークセンサ等を設けても良い。
【0089】
本実施の形態では、旋回フレーム65を回動可能に支持するピン(垂直回動支持軸)66と、このピン66をスライドフレーム70に対して支持する上下のブラケット部77、78と、このブラケット部77、78が結合される箱形の後方ケース部79とを備え、旋回フレーム回動位置検出器は左右旋回ストライカ61、62の位置を検出する左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64を備え、この左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64を後方ケース部79の内側に設けたため、旋回フレーム回動位置検出器が後方ケース部79によって保護され、左右旋回位置検出用リミットスイッチ63、64などの破損を防止できる。
【0090】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の角穴掘削マシンは、前記多数の覆工エレメントを用いて覆工を行うトンネル構築工法に用いられるものに限らず、例えばケーブルなどを通す穴の施工に用いられるものなどに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態を示す角穴掘削マシンの側面図。
【図2】同じく角穴掘削マシンの平面図。
【図3】同じく角穴掘削マシンの正面図。
【図4】同じく角穴掘削マシンの背面図。
【図5】同じくバケット掘削機の平面図。
【図6】同じくバケット掘削機の側面図。
【図7】同じく図6のA−A線に沿う矢視図。
【図8】同じくバケット掘削機の正面図。
【図9】同じくバケット掘削機の平面図。
【図10】同じくバケット掘削機の側面図。
【図11】同じく図6の矢印A方向から見た矢視図。
【図12】従来のトンネル掘削工法を示す断面図。
【図13】同じく地山にエレメントを挿入して覆工壁を形成した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0093】
1 角穴掘削マシン
10 バケット掘削機
12 バケット
30 掘進ケーシング
41 ワイヤ
45 ブーム連係ストライカ
51、52、53 第一、第二、第三ブーム位置検出用リミットスイッチ
55 ブーム
61、62 左右旋回ストライカ
63、64 左右旋回位置検出用リミットスイッチ
65 旋回フレーム
70 スライドフレーム
77、78 ブラケット部
79 後方ケース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に進入する推力が与えられる中空の掘進ケーシングと、
この掘進ケーシング内に設けられるバケット掘削機とを備え、
このバケット掘削機は、
切羽を掘削するバケットと、
このバケットを上下方向に回動させるブームと、
このブームを掘進ケーシングに対して前後方向に移動するスライドフレームとを備え、
バケット掘削機が切羽を掘削するとともに掘削された礫や土砂を集める角穴掘削マシンであって、
前記スライドフレームの前後位置を検出する前後位置検出器と、
前記ブームの上下方向の回動位置を検出するブーム回動位置検出器と、
前記スライドフレームの前後位置検出値と前記ブームの回動位置検出値とに応じて前記バケット掘削機が前記掘進ケーシング内の各部に当たらないように前記ブームの上下方向の回動範囲を規制するブーム回動範囲規制手段とを備えたことを特徴とする角穴掘削マシン。
【請求項2】
前記ブーム回動位置検出器は、
前記ブームの回動にワイヤを介して連動するブーム連係ストライカを備え、
このブーム連係ストライカの位置を検出する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の角穴掘削マシン。
【請求項3】
前記スライドフレームに対して左右方向に旋回する旋回フレームを備え、
この旋回フレームに対して前記ブームを上下方向に回動可能に連結し、
前記スライドフレームに対する前記旋回フレームの左右方向の回動位置を検出する旋回フレーム回動位置検出器と、
前記スライドフレームの前後位置検出値と前記旋回フレームの回動位置検出値とに応じて前記バケット掘削機が前記掘進ケーシング内の各部に当たらないように前記旋回フレームの回動範囲を規制する旋回フレーム回動範囲規制手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の角穴掘削マシン。
【請求項4】
前記旋回フレーム回動位置検出器は、
前記旋回フレームの後部から突出する左右旋回ストライカを備え、
この左右旋回ストライカの位置を検出する構成としたことを特徴とする請求項3に記載の角穴掘削マシン。
【請求項5】
前記旋回フレームを回動可能に支持するピンと、
このピンを前記スライドフレームに対して支持するブラケット部と、
このブラケット部が結合される箱形の後方ケース部とを備え、
前記旋回フレーム回動位置検出器は前記左右旋回ストライカの位置を検出する左右旋回位置検出用リミットスイッチを備え、
この左右旋回位置検出用リミットスイッチを前記後方ケース部の内側に設けたことを特徴とする請求項4に記載の角穴掘削マシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−121189(P2009−121189A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298469(P2007−298469)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】