触媒コンバータの製造装置および製造方法
【課題】圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能な触媒コンバータの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】筒状部材2の内部に、触媒担体8,11の外周に緩衝部材9,11を設けた柱状の触媒4,5を、緩衝部材9,11を筒状部材2の内周面で滑らせつつ、筒状部材2の内部へ筒状部材2の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、前記圧入において触媒4,5に付与される圧入方向の圧入荷重Fおよび触媒4,5の圧入方向の圧入変位Xを検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重Ffから圧入開始直後の初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする。
【解決手段】筒状部材2の内部に、触媒担体8,11の外周に緩衝部材9,11を設けた柱状の触媒4,5を、緩衝部材9,11を筒状部材2の内周面で滑らせつつ、筒状部材2の内部へ筒状部材2の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、前記圧入において触媒4,5に付与される圧入方向の圧入荷重Fおよび触媒4,5の圧入方向の圧入変位Xを検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重Ffから圧入開始直後の初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバータの製造装置および製造方法に関し、更に詳細には、触媒の圧入圧力により品質を管理できる触媒コンバータの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、触媒コンバータが搭載されており、特にDPF触媒、DOC触媒は、ディーゼルエンジンの排気性能を決定する重要部品である。しかし、これらの触媒は大変脆く、排気ガスを通過させるためのコンテナ内への圧入時には、破損させることなく高精度で圧入する必要がある。
【0003】
また、排気規制が厳しくなった昨今では、コンパクトで高性能な触媒コンバータの要求から、機能の異なる2段の触媒を圧入する構造等が採用されているが、圧入時に触媒を破損することなく、かつ圧入位置を正確に管理することが求められる。
【0004】
触媒の損傷の有無や圧入位置を管理するためには、従来より、圧入荷重を計測してその絶対値で管理する方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、例えば2段の触媒を圧入する構造では、触媒が圧入方向に薄い場合があり、圧入時に傾きが生じて圧入荷重がばらつき易いため、圧入荷重の絶対値による損傷の有無や圧入変位の管理は困難である。
【特許文献1】特開2001−256934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能な触媒コンバータの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る触媒コンバータの製造方法は、筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重および触媒の圧入方向の圧入変位を検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重から圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る触媒コンバータの製造装置は、筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造装置であって、前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重を検出する圧力検出手段と、前記圧入において触媒の圧入方向の圧入変位を検出する圧入変位検出手段と、前記圧入検出手段により検出された圧入終了直前の終期圧入荷重から、圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段と、を有すること特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明に係る触媒コンバータの製造方法は、終期圧入荷重から初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別するため、圧入荷重を相対値で評価でき、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能である。
【0010】
上記のように構成した本発明に係る触媒コンバータの製造装置は、終期圧入荷重から初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段が設けられているため、圧入荷重を相対値で評価でき、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態における触媒コンバータを示す断面図、図2は第1実施形態に係る触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【0013】
第1実施形態における触媒コンバータ1は、例えばディーゼル排気処理装置であり、図1示すように、筒状部材であって内部に収容空間3を備えるコンテナ2と、コンテナ2の内部に収納される2つの柱形状の第1触媒4および第2触媒5と、2つの触媒の間に設けられる環形状のワッシャ6と、を備えている。
【0014】
第1触媒4は、触媒としての機能を果す第1触媒担体8と、第1触媒担体8の外周に巻かれる第1触媒担体保持マット9と、を有している。
【0015】
また、第2触媒5も同様に、触媒としての機能を果す第2触媒担体10と、第2触媒担体10の外周に巻かれる第2触媒担体保持マット11と、を有している。
【0016】
第1実施形態における触媒コンバータ1がディーゼル排気処理装置である場合には、第1触媒担体8は、例えばディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)に対応し、第2触媒担体10は、例えばディーゼル用酸化触媒(DOC)に対応する。
【0017】
触媒担体保持マット9,11は、酸化アルミ繊維からなる緩衝部材であり、熱による膨張のほとんどない無膨張マットであるが、他の材質からなるマットを使用することもできる。
【0018】
ワッシャ6は、金属製である環形状のワッシャ本体部13の両面に、金属繊維の集合体であるワッシャ緩衝材14が設けられており、それぞれの面のワッシャ緩衝材14が、第1触媒4および第2触媒5に接している。
【0019】
次に、本実施形態に係る触媒コンバータ1の製造装置15について説明する。
【0020】
触媒コンバータ1の製造装置15は、図2に示すように、コンテナ2を固定するための筒状部材固定部16と、筒状部材固定部16に固定されるコンテナ2の開口部に向って断面積が漸次減少するテーパ部17を有する案内部材18と、案内部材18のテーパ部17に向って貫通する保持穴19を有するセットスリーブ20と、触媒4,5をコンテナ2の内部に圧入するための押圧手段21と、を備えている。
【0021】
筒状部材固定部16は、コンテナ2のフランジ部29を案内部材18に対して押圧して固定する。
【0022】
セットスリーブ20は、保持穴19に、コンテナ2に圧入される前の触媒4,5を保持することができる。
【0023】
押圧手段21は、例えば油圧シリンダにより進退動する圧入ラム23を備えており、セットスリーブ20に保持されて製造装置15に配置された触媒4,5を、案内部材18を介してコンテナ2の内部へ圧入することができる。この押圧手段21は、例えばマイクロコンピュータである制御手段25により制御される。
【0024】
押圧手段21には、圧入荷重検出手段26である例えばロードセル(不図示)が取り付けられ、圧入時の圧入方向の圧入荷重Fを計測できる。また、押圧手段21には、圧入変位検出手段27が取り付けられ、圧入時の圧入方向の変位である圧入変位Xを計測できる。なお、圧入変位Xは圧入ラム23のストロークに対応するものである。これらの圧入荷重検出手段26および圧入変位検出手段27からの信号は、制御手段25に入力され、計測された圧入荷重Fおよび圧入変位Xが制御手段25の内部の記憶媒体に格納される。また、制御手段25には、所定の設定値を入力するための設定手段28が接続されている。
【0025】
次に、第1実施形態に係る触媒コンバータ1の製造方法について説明する。
【0026】
図3は第1実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャート、図4はセットスリーブにより第1触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図5は押圧手段による触媒の圧入の際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図6は押圧手段による触媒の圧入完了時を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図7は圧入荷重のサンプリング範囲を示す触媒コンバータの断面図、図8は圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフ、図9は不具合が生じた場合を示す圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【0027】
初めに、図4に示すように、筒状部材固定部16にコンテナ2を設置し、筒状部材固定部16と案内部材18の間にフランジ部29を挟持して、コンテナ2を固定する。次に、第1触媒4が設置されたセットスリーブ20を、保持穴19がテーパ部17と連通するように配置する。この後、図5,6に示すように、押圧手段21を作動させて圧入ラム23により第1触媒4を押圧する(S1)。これにより、第1触媒4は案内部材18のテーパ部17により第1触媒担体保持マット9がコンテナ2の収容空間3へ案内されつつ圧入される。圧入の際には、圧入荷重検出手段26および圧入変位検出手段27により、圧入荷重Fおよび圧入変位Xが計測される。
【0028】
圧入の際の圧入荷重Fの計測は、図7、図8に示すように、第1触媒4が、圧入開始直後の圧入変位X1からX2の範囲である第1計測範囲Y1と、圧入終了直前の圧入変位X3からX4の範囲である第2計測範囲Y2において実施する。なお、これらの圧入変位X1〜X4および後述する閾値Aは、設定手段28によって予め入力される。
【0029】
まず、第1触媒4が圧入変位X1に達すると、圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S2,S3)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X2に達するまで実施される(S4,S5)。この後、この第1計測範囲Y1内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である初期圧入荷重Fsを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S6)。
【0030】
上述の圧入変位X1は、第1触媒4の全体がコンテナ2内に入った地点であり、圧入変位X2は、圧入荷重Fが安定する地点であることが好ましい。すなわち、第1触媒4がコンテナ2内に圧入された直後は、圧入荷重Fが安定していない可能性があるため、確実に安定した値を得るために、第1計測範囲Y1における最大圧入荷重を初期圧入荷重Fsとしている。なお、圧入直後の安定した圧入荷重Fが計測できるのであれば、第1計測範囲Y1のように範囲を指定するのではなく、所定の圧入変位Xにおける圧入荷重Fを初期圧入荷重Fsとすることも可能である。
【0031】
この後、圧入終了直前において、第1触媒4が圧入変位X3に達すると、再び圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S7,S8)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X4に達するまで実施され、圧入変位X4に達すると、サンプリングが終了されるとともに(S9,S10)、押圧手段21による圧入が終了する(S11)。そして、この第2計測範囲Y2内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である終期圧入荷重Ffを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S12)。この後、圧入ラム23を戻して第1触媒4の設置が完了する。
【0032】
上述の圧入変位X3は、圧入終了地点として設計的に決まる圧入変位X4の直前で任意に設定できるが、寸法公差によって第1触媒4がコンテナ下部30に接する等の不具合が生じる可能性のある最前部の地点であることが好ましい。すなわち、圧入終了の直前は、不具合が生じる可能性が高いため、不具合の生じる蓋然性の高い圧入変位X3からX4の範囲における最大圧入荷重を、終期圧入荷重Ffとしている。
【0033】
圧入の際に不具合が生じると、図9に示すように、通常、圧入荷重Fが過大となるピークPが生じる。したがって、第2計測範囲Y2内に突出したピークPがある場合には、この値が終期圧入荷重Ffとなり、確実に不具合を検出することができる。なお、圧入終了直前の不具合発生時の圧入荷重Fの変化を計測できるのであれば、第2計測範囲Y2のように範囲を指定するのではなく、所定の圧入変位Xにおける圧入荷重Fを終期圧入荷重Ffとすることも可能である。
【0034】
この後、式(1)に示すように終期圧入荷重Ffから初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差が、所定の閾値A以下か否かが算出され(S13)、結果が例えばモニター等の表示手段(不図示)に出力される(S14)。式(1)を満たす場合には、不具合は生じていないと判別でき、式(1)を満たさない場合には、設置位置がずれたり、第1触媒4がコンテナ下部30に接して触媒割れが生じる等の不具合が発生して終期圧入荷重Ffが過大となっていると識別できる。
【0035】
【数1】
【0036】
このように、本実施形態では、圧入荷重Fを絶対値で評価するのではなく、初期圧入荷重Fsと終期圧入荷重Ffの相対値で評価するため、例えば第1触媒4が圧入方向に薄いために傾き安く、図8に示すように、製品毎に圧入荷重Fにばらつきが生じる場合であっても、良好に不具合を検出することができる。特に、本実施形態のような2つの触媒4,5が圧入される構造では、それぞれの触媒4,5の圧入方向の厚さが薄い場合があるため、有効である。
【0037】
図10はワッシャを設置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図11は第2触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【0038】
第1触媒4を圧入した後には、図10に示すように第1触媒4に接してワッシャ6を設置し、セットスリーブ20に第2触媒5を保持して配置する。この後、図11に示すように、第1触媒4と同様にして第2触媒5を圧入する。なお、第2触媒5における圧入変位X1,X2,x3およびX4は、場合に応じて第1触媒4における値と異なる値となるが、同一の式(1)にて不具合の発生を判別できる。
【0039】
ただし、第2触媒5は、第1触媒4と異なり、圧入変位Xの終了地点として設計的に決まる圧入変位X4は、ワッシャ6のワッシャ緩衝材14と接する地点である。これ以上圧入すると、第2触媒5がワッシャ6のワッシャ本体部13と衝突して第2触媒5が損傷し、または第2触媒5がワッシャ6を介して第1触媒4を押し下げてワッシャ6により第1触媒4が損傷したり、場合によっては第1触媒4がコンテナ下部30まで押し下げられて、第1触媒4が損傷する可能性もある。
【0040】
したがって、第2触媒5における圧入変位X3は、圧入変位X4の直前で任意に設定できるが、寸法公差により前述の不具合の発生が生じる可能性のある最前部の地点であることが好ましい。これにより、圧入変位X3からX4の第2計測範囲Y2内での不具合を、良好に検出することができる。
【0041】
また、従来では、圧入荷重Fの上限値と下限値を設定し、圧入荷重Fを絶対値で管理しているため、第1触媒4と第2触媒5で異なる上限値および下限値を設定する必要があるが、本実施形態の方法では、終期圧入荷重Ffから初期圧入荷重Fsを除した値である相対値で評価をするため、第1触媒4および第2触媒5のそれぞれの閾値Aに大きな差は生じず、共通の閾値Aを適用することも可能である。なお、当然に、第1触媒4と第2触媒5の閾値Aを異ならせることも可能である。
【0042】
<第2実施形態>
前述した第1実施形態は、圧入が完了した後に、事後的に不具合の発生を識別するものであるが、第2実施形態は、圧入の際に実時間で製品の不具合の発生を識別するものである。
【0043】
図12は、第2実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【0044】
なお、触媒コンバータ1の製造装置15の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
まず、第1実施形態と同様に、押圧手段21を作動させて圧入ラム23により第1触媒4を押圧する(S21)。第1触媒4が圧入変位X1に達すると、圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S22,S23)。この後、圧入荷重Fを警告荷重Fkと比較し(S24)、圧入荷重Fが警告荷重Fk以下である場合には計測を続行し、圧入荷重Fが警告荷重Flを超える場合には、サンプリングを停止するとともに押圧手段21を停止して(S25,S26)、不具合の発生を知らせる結果を、例えばモニター(不図示)に出力する(S27)。この警告荷重Fkは、圧入初期に触媒に過度の傾きが生じる等の不具合が発生する場合の閾値であり、これにより、圧入初期の不具合を実時間で良好に検出できる。
【0046】
計測が続行されると、圧入荷重Fのサンプリングは、第1触媒4が圧入変位X2に達するまで実施される(S28,S29)。この後、この第1計測範囲Y1内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である初期圧入荷重Fsを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S30)。
【0047】
この後、圧入終了直前において、第1触媒4が圧入変位X3に達すると、再び圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S31,S32)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X4に達するまで実施されるが、この間において、式(2)に示すように、逐次実時間で計測される実時間圧入変位Xrでの実時間圧入荷重Frから初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差を算出して、この値が所定の閾値A以下か否かが算出される(S33)。
【0048】
式(2)を満たす場合には、不具合は生じていないとして計測が続行され、式(2)を満たさない場合には、設置位置がずれたり、第1触媒4がコンテナ下部30に接して触媒割れが生じる等の不具合が発生して実時間圧入荷重Frが過大となっていると識別でき、サンプリングを終了するとともに(S25)、押圧手段21を停止し(S26)、結果を例えばモニターに出力して終了する(S27)。
【0049】
【数2】
【0050】
第1触媒4が圧入変位X4に達すると、サンプリングが終了されるとともに(S34,S35)、押圧手段21による圧入が終了され(S36)、結果が例えばモニターに出力される(S37)。この後、圧入ラム23が戻されて第1触媒4の設置が完了する。
【0051】
第2実施形態では、実時間で不具合の発生を監視できるため、不具合が発生した時点で圧入を終了することができ、製作時間を短縮できる。
【0052】
なお、第2触媒5についても同様の手法により圧入されるため、説明を省略する。
【0053】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、第2実施形態における警告荷重Fkを第1実施形態に適用してもよい。また、装置の配置に特に制限はなく、例えば上下が反転した形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態における触媒コンバータを示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【図4】セットスリーブにより第1触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図5】押圧手段による触媒の圧入の際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図6】押圧手段による触媒の圧入完了時を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図7】圧入荷重のサンプリング範囲を示す触媒コンバータの断面図である。
【図8】圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【図9】不具合が生じた場合を示す圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【図10】ワッシャを設置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図11】第2触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図12】第2実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 触媒コンバータ、
2 コンテナ(筒状部材)、
3 収容空間、
4 第1触媒、
5 第2触媒、
6 ワッシャ、
8 第1触媒担体、
9 第1触媒担体保持マット(緩衝部材)、
10 第2触媒担体、
11 第2触媒担体保持マット(緩衝部材)、
13 ワッシャ本体部、
14 ワッシャ緩衝材、
15 製造装置、
16 筒状部材固定部、
17 テーパ部、
18 案内部材、
19 保持穴、
20 セットスリーブ、
21 押圧手段、
23 圧入ラム、
25 制御手段、
26 圧入荷重検出手段、
28 設定手段、
29 フランジ部、
30 コンテナ下部、
A 閾値、
F 圧入荷重、
Fs 初期圧入荷重、
Ff 終期圧入荷重、
Fk 警告荷重、
Fr 実時間圧入荷重、
X,X1,X2,X3,X4 圧入変位、
Xr 実時間圧入変位、
Y1 第1計測範囲、
Y2 第2計測範囲。
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバータの製造装置および製造方法に関し、更に詳細には、触媒の圧入圧力により品質を管理できる触媒コンバータの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、触媒コンバータが搭載されており、特にDPF触媒、DOC触媒は、ディーゼルエンジンの排気性能を決定する重要部品である。しかし、これらの触媒は大変脆く、排気ガスを通過させるためのコンテナ内への圧入時には、破損させることなく高精度で圧入する必要がある。
【0003】
また、排気規制が厳しくなった昨今では、コンパクトで高性能な触媒コンバータの要求から、機能の異なる2段の触媒を圧入する構造等が採用されているが、圧入時に触媒を破損することなく、かつ圧入位置を正確に管理することが求められる。
【0004】
触媒の損傷の有無や圧入位置を管理するためには、従来より、圧入荷重を計測してその絶対値で管理する方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、例えば2段の触媒を圧入する構造では、触媒が圧入方向に薄い場合があり、圧入時に傾きが生じて圧入荷重がばらつき易いため、圧入荷重の絶対値による損傷の有無や圧入変位の管理は困難である。
【特許文献1】特開2001−256934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能な触媒コンバータの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る触媒コンバータの製造方法は、筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重および触媒の圧入方向の圧入変位を検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重から圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る触媒コンバータの製造装置は、筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造装置であって、前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重を検出する圧力検出手段と、前記圧入において触媒の圧入方向の圧入変位を検出する圧入変位検出手段と、前記圧入検出手段により検出された圧入終了直前の終期圧入荷重から、圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段と、を有すること特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明に係る触媒コンバータの製造方法は、終期圧入荷重から初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別するため、圧入荷重を相対値で評価でき、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能である。
【0010】
上記のように構成した本発明に係る触媒コンバータの製造装置は、終期圧入荷重から初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段が設けられているため、圧入荷重を相対値で評価でき、圧入荷重にばらつきが生じる場合でも、触媒の損傷の有無や圧入位置の管理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態における触媒コンバータを示す断面図、図2は第1実施形態に係る触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【0013】
第1実施形態における触媒コンバータ1は、例えばディーゼル排気処理装置であり、図1示すように、筒状部材であって内部に収容空間3を備えるコンテナ2と、コンテナ2の内部に収納される2つの柱形状の第1触媒4および第2触媒5と、2つの触媒の間に設けられる環形状のワッシャ6と、を備えている。
【0014】
第1触媒4は、触媒としての機能を果す第1触媒担体8と、第1触媒担体8の外周に巻かれる第1触媒担体保持マット9と、を有している。
【0015】
また、第2触媒5も同様に、触媒としての機能を果す第2触媒担体10と、第2触媒担体10の外周に巻かれる第2触媒担体保持マット11と、を有している。
【0016】
第1実施形態における触媒コンバータ1がディーゼル排気処理装置である場合には、第1触媒担体8は、例えばディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)に対応し、第2触媒担体10は、例えばディーゼル用酸化触媒(DOC)に対応する。
【0017】
触媒担体保持マット9,11は、酸化アルミ繊維からなる緩衝部材であり、熱による膨張のほとんどない無膨張マットであるが、他の材質からなるマットを使用することもできる。
【0018】
ワッシャ6は、金属製である環形状のワッシャ本体部13の両面に、金属繊維の集合体であるワッシャ緩衝材14が設けられており、それぞれの面のワッシャ緩衝材14が、第1触媒4および第2触媒5に接している。
【0019】
次に、本実施形態に係る触媒コンバータ1の製造装置15について説明する。
【0020】
触媒コンバータ1の製造装置15は、図2に示すように、コンテナ2を固定するための筒状部材固定部16と、筒状部材固定部16に固定されるコンテナ2の開口部に向って断面積が漸次減少するテーパ部17を有する案内部材18と、案内部材18のテーパ部17に向って貫通する保持穴19を有するセットスリーブ20と、触媒4,5をコンテナ2の内部に圧入するための押圧手段21と、を備えている。
【0021】
筒状部材固定部16は、コンテナ2のフランジ部29を案内部材18に対して押圧して固定する。
【0022】
セットスリーブ20は、保持穴19に、コンテナ2に圧入される前の触媒4,5を保持することができる。
【0023】
押圧手段21は、例えば油圧シリンダにより進退動する圧入ラム23を備えており、セットスリーブ20に保持されて製造装置15に配置された触媒4,5を、案内部材18を介してコンテナ2の内部へ圧入することができる。この押圧手段21は、例えばマイクロコンピュータである制御手段25により制御される。
【0024】
押圧手段21には、圧入荷重検出手段26である例えばロードセル(不図示)が取り付けられ、圧入時の圧入方向の圧入荷重Fを計測できる。また、押圧手段21には、圧入変位検出手段27が取り付けられ、圧入時の圧入方向の変位である圧入変位Xを計測できる。なお、圧入変位Xは圧入ラム23のストロークに対応するものである。これらの圧入荷重検出手段26および圧入変位検出手段27からの信号は、制御手段25に入力され、計測された圧入荷重Fおよび圧入変位Xが制御手段25の内部の記憶媒体に格納される。また、制御手段25には、所定の設定値を入力するための設定手段28が接続されている。
【0025】
次に、第1実施形態に係る触媒コンバータ1の製造方法について説明する。
【0026】
図3は第1実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャート、図4はセットスリーブにより第1触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図5は押圧手段による触媒の圧入の際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図6は押圧手段による触媒の圧入完了時を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図7は圧入荷重のサンプリング範囲を示す触媒コンバータの断面図、図8は圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフ、図9は不具合が生じた場合を示す圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【0027】
初めに、図4に示すように、筒状部材固定部16にコンテナ2を設置し、筒状部材固定部16と案内部材18の間にフランジ部29を挟持して、コンテナ2を固定する。次に、第1触媒4が設置されたセットスリーブ20を、保持穴19がテーパ部17と連通するように配置する。この後、図5,6に示すように、押圧手段21を作動させて圧入ラム23により第1触媒4を押圧する(S1)。これにより、第1触媒4は案内部材18のテーパ部17により第1触媒担体保持マット9がコンテナ2の収容空間3へ案内されつつ圧入される。圧入の際には、圧入荷重検出手段26および圧入変位検出手段27により、圧入荷重Fおよび圧入変位Xが計測される。
【0028】
圧入の際の圧入荷重Fの計測は、図7、図8に示すように、第1触媒4が、圧入開始直後の圧入変位X1からX2の範囲である第1計測範囲Y1と、圧入終了直前の圧入変位X3からX4の範囲である第2計測範囲Y2において実施する。なお、これらの圧入変位X1〜X4および後述する閾値Aは、設定手段28によって予め入力される。
【0029】
まず、第1触媒4が圧入変位X1に達すると、圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S2,S3)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X2に達するまで実施される(S4,S5)。この後、この第1計測範囲Y1内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である初期圧入荷重Fsを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S6)。
【0030】
上述の圧入変位X1は、第1触媒4の全体がコンテナ2内に入った地点であり、圧入変位X2は、圧入荷重Fが安定する地点であることが好ましい。すなわち、第1触媒4がコンテナ2内に圧入された直後は、圧入荷重Fが安定していない可能性があるため、確実に安定した値を得るために、第1計測範囲Y1における最大圧入荷重を初期圧入荷重Fsとしている。なお、圧入直後の安定した圧入荷重Fが計測できるのであれば、第1計測範囲Y1のように範囲を指定するのではなく、所定の圧入変位Xにおける圧入荷重Fを初期圧入荷重Fsとすることも可能である。
【0031】
この後、圧入終了直前において、第1触媒4が圧入変位X3に達すると、再び圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S7,S8)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X4に達するまで実施され、圧入変位X4に達すると、サンプリングが終了されるとともに(S9,S10)、押圧手段21による圧入が終了する(S11)。そして、この第2計測範囲Y2内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である終期圧入荷重Ffを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S12)。この後、圧入ラム23を戻して第1触媒4の設置が完了する。
【0032】
上述の圧入変位X3は、圧入終了地点として設計的に決まる圧入変位X4の直前で任意に設定できるが、寸法公差によって第1触媒4がコンテナ下部30に接する等の不具合が生じる可能性のある最前部の地点であることが好ましい。すなわち、圧入終了の直前は、不具合が生じる可能性が高いため、不具合の生じる蓋然性の高い圧入変位X3からX4の範囲における最大圧入荷重を、終期圧入荷重Ffとしている。
【0033】
圧入の際に不具合が生じると、図9に示すように、通常、圧入荷重Fが過大となるピークPが生じる。したがって、第2計測範囲Y2内に突出したピークPがある場合には、この値が終期圧入荷重Ffとなり、確実に不具合を検出することができる。なお、圧入終了直前の不具合発生時の圧入荷重Fの変化を計測できるのであれば、第2計測範囲Y2のように範囲を指定するのではなく、所定の圧入変位Xにおける圧入荷重Fを終期圧入荷重Ffとすることも可能である。
【0034】
この後、式(1)に示すように終期圧入荷重Ffから初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差が、所定の閾値A以下か否かが算出され(S13)、結果が例えばモニター等の表示手段(不図示)に出力される(S14)。式(1)を満たす場合には、不具合は生じていないと判別でき、式(1)を満たさない場合には、設置位置がずれたり、第1触媒4がコンテナ下部30に接して触媒割れが生じる等の不具合が発生して終期圧入荷重Ffが過大となっていると識別できる。
【0035】
【数1】
【0036】
このように、本実施形態では、圧入荷重Fを絶対値で評価するのではなく、初期圧入荷重Fsと終期圧入荷重Ffの相対値で評価するため、例えば第1触媒4が圧入方向に薄いために傾き安く、図8に示すように、製品毎に圧入荷重Fにばらつきが生じる場合であっても、良好に不具合を検出することができる。特に、本実施形態のような2つの触媒4,5が圧入される構造では、それぞれの触媒4,5の圧入方向の厚さが薄い場合があるため、有効である。
【0037】
図10はワッシャを設置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図、図11は第2触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【0038】
第1触媒4を圧入した後には、図10に示すように第1触媒4に接してワッシャ6を設置し、セットスリーブ20に第2触媒5を保持して配置する。この後、図11に示すように、第1触媒4と同様にして第2触媒5を圧入する。なお、第2触媒5における圧入変位X1,X2,x3およびX4は、場合に応じて第1触媒4における値と異なる値となるが、同一の式(1)にて不具合の発生を判別できる。
【0039】
ただし、第2触媒5は、第1触媒4と異なり、圧入変位Xの終了地点として設計的に決まる圧入変位X4は、ワッシャ6のワッシャ緩衝材14と接する地点である。これ以上圧入すると、第2触媒5がワッシャ6のワッシャ本体部13と衝突して第2触媒5が損傷し、または第2触媒5がワッシャ6を介して第1触媒4を押し下げてワッシャ6により第1触媒4が損傷したり、場合によっては第1触媒4がコンテナ下部30まで押し下げられて、第1触媒4が損傷する可能性もある。
【0040】
したがって、第2触媒5における圧入変位X3は、圧入変位X4の直前で任意に設定できるが、寸法公差により前述の不具合の発生が生じる可能性のある最前部の地点であることが好ましい。これにより、圧入変位X3からX4の第2計測範囲Y2内での不具合を、良好に検出することができる。
【0041】
また、従来では、圧入荷重Fの上限値と下限値を設定し、圧入荷重Fを絶対値で管理しているため、第1触媒4と第2触媒5で異なる上限値および下限値を設定する必要があるが、本実施形態の方法では、終期圧入荷重Ffから初期圧入荷重Fsを除した値である相対値で評価をするため、第1触媒4および第2触媒5のそれぞれの閾値Aに大きな差は生じず、共通の閾値Aを適用することも可能である。なお、当然に、第1触媒4と第2触媒5の閾値Aを異ならせることも可能である。
【0042】
<第2実施形態>
前述した第1実施形態は、圧入が完了した後に、事後的に不具合の発生を識別するものであるが、第2実施形態は、圧入の際に実時間で製品の不具合の発生を識別するものである。
【0043】
図12は、第2実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【0044】
なお、触媒コンバータ1の製造装置15の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
まず、第1実施形態と同様に、押圧手段21を作動させて圧入ラム23により第1触媒4を押圧する(S21)。第1触媒4が圧入変位X1に達すると、圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S22,S23)。この後、圧入荷重Fを警告荷重Fkと比較し(S24)、圧入荷重Fが警告荷重Fk以下である場合には計測を続行し、圧入荷重Fが警告荷重Flを超える場合には、サンプリングを停止するとともに押圧手段21を停止して(S25,S26)、不具合の発生を知らせる結果を、例えばモニター(不図示)に出力する(S27)。この警告荷重Fkは、圧入初期に触媒に過度の傾きが生じる等の不具合が発生する場合の閾値であり、これにより、圧入初期の不具合を実時間で良好に検出できる。
【0046】
計測が続行されると、圧入荷重Fのサンプリングは、第1触媒4が圧入変位X2に達するまで実施される(S28,S29)。この後、この第1計測範囲Y1内でサンプリングされた圧入荷重Fの最大圧入荷重である初期圧入荷重Fsを、例えば制御手段25に存在する記録媒体に格納する(S30)。
【0047】
この後、圧入終了直前において、第1触媒4が圧入変位X3に達すると、再び圧入荷重Fのサンプリングを開始する(S31,S32)。サンプリングは、第1触媒4が圧入変位X4に達するまで実施されるが、この間において、式(2)に示すように、逐次実時間で計測される実時間圧入変位Xrでの実時間圧入荷重Frから初期圧入荷重Fsを除した値である圧入荷重差を算出して、この値が所定の閾値A以下か否かが算出される(S33)。
【0048】
式(2)を満たす場合には、不具合は生じていないとして計測が続行され、式(2)を満たさない場合には、設置位置がずれたり、第1触媒4がコンテナ下部30に接して触媒割れが生じる等の不具合が発生して実時間圧入荷重Frが過大となっていると識別でき、サンプリングを終了するとともに(S25)、押圧手段21を停止し(S26)、結果を例えばモニターに出力して終了する(S27)。
【0049】
【数2】
【0050】
第1触媒4が圧入変位X4に達すると、サンプリングが終了されるとともに(S34,S35)、押圧手段21による圧入が終了され(S36)、結果が例えばモニターに出力される(S37)。この後、圧入ラム23が戻されて第1触媒4の設置が完了する。
【0051】
第2実施形態では、実時間で不具合の発生を監視できるため、不具合が発生した時点で圧入を終了することができ、製作時間を短縮できる。
【0052】
なお、第2触媒5についても同様の手法により圧入されるため、説明を省略する。
【0053】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、第2実施形態における警告荷重Fkを第1実施形態に適用してもよい。また、装置の配置に特に制限はなく、例えば上下が反転した形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態における触媒コンバータを示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【図4】セットスリーブにより第1触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図5】押圧手段による触媒の圧入の際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図6】押圧手段による触媒の圧入完了時を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図7】圧入荷重のサンプリング範囲を示す触媒コンバータの断面図である。
【図8】圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【図9】不具合が生じた場合を示す圧入変位と圧入荷重の関係を示すグラフである。
【図10】ワッシャを設置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図11】第2触媒を配置した際を示す触媒コンバータの製造装置の断面図である。
【図12】第2実施形態に係る製造装置の制御手段における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 触媒コンバータ、
2 コンテナ(筒状部材)、
3 収容空間、
4 第1触媒、
5 第2触媒、
6 ワッシャ、
8 第1触媒担体、
9 第1触媒担体保持マット(緩衝部材)、
10 第2触媒担体、
11 第2触媒担体保持マット(緩衝部材)、
13 ワッシャ本体部、
14 ワッシャ緩衝材、
15 製造装置、
16 筒状部材固定部、
17 テーパ部、
18 案内部材、
19 保持穴、
20 セットスリーブ、
21 押圧手段、
23 圧入ラム、
25 制御手段、
26 圧入荷重検出手段、
28 設定手段、
29 フランジ部、
30 コンテナ下部、
A 閾値、
F 圧入荷重、
Fs 初期圧入荷重、
Ff 終期圧入荷重、
Fk 警告荷重、
Fr 実時間圧入荷重、
X,X1,X2,X3,X4 圧入変位、
Xr 実時間圧入変位、
Y1 第1計測範囲、
Y2 第2計測範囲。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、
前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重および触媒の圧入方向の圧入変位を検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重から圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする触媒コンバータの製造方法。
【請求項2】
前記圧入荷重差が所定の閾値を超える場合に、製造される触媒コンバータに不具合が発生している判別することを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項3】
前記初期圧入荷重は、圧入開始直後の圧入変位の所定範囲である第1計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項4】
前記第1計測範囲は、圧入開始直後の所定の値から、圧入荷重の安定する所定の値の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項5】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項6】
前記製造される触媒コンバータの不具合の発生の判別は、前記圧入が終了した後に実施されることを特徴とする請求項5に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項7】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における実時間での圧入荷重であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項8】
前記製造される触媒コンバータの不具合の発生の判別は、前記圧入の実施の際に、実時間で実施されることを特徴とする請求項7に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項9】
前記製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別された場合には、前記触媒の圧入を停止することを特徴とする請求項8に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項10】
前記第2計測範囲は、筒状部材の内部における触媒の設置位置の寸法公差範囲で決定されることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項11】
筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造装置であって、
前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重を検出する圧力検出手段と、
前記圧入において触媒の圧入方向の圧入変位を検出する圧入変位検出手段と、
前記圧入検出手段により検出された圧入終了直前の終期圧入荷重から、圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段と、を有すること特徴とする触媒コンバータの製造装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記圧入荷重差が所定の閾値を超える場合に、製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別することを特徴とする請求項11に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項13】
前記初期圧入荷重は、圧入開始直後の圧入変位の所定範囲である第1計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項11または12に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項14】
前記第1計測範囲は、圧入開始直後の所定の値から、圧入荷重の安定する所定の値の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項15】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記圧入が終了した後に、圧入荷重差の算出を実施することを特徴とする請求項15に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項17】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における実時間での圧入荷重であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記圧入の実施の際に、圧入荷重差の算出を実時間で実施することを特徴とする請求項17に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項19】
前記制御手段は、製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別された場合に、前記触媒の圧入を停止することを特徴とする請求項18に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項20】
前記第2計測範囲は、触媒の筒状部材の内部における設置位置の寸法公差範囲で決定されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項1】
筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造方法であって、
前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重および触媒の圧入方向の圧入変位を検出し、圧入終了直前の終期圧入荷重から圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差により、圧入における不具合の発生を判別することを特徴とする触媒コンバータの製造方法。
【請求項2】
前記圧入荷重差が所定の閾値を超える場合に、製造される触媒コンバータに不具合が発生している判別することを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項3】
前記初期圧入荷重は、圧入開始直後の圧入変位の所定範囲である第1計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項4】
前記第1計測範囲は、圧入開始直後の所定の値から、圧入荷重の安定する所定の値の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項5】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項6】
前記製造される触媒コンバータの不具合の発生の判別は、前記圧入が終了した後に実施されることを特徴とする請求項5に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項7】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における実時間での圧入荷重であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項8】
前記製造される触媒コンバータの不具合の発生の判別は、前記圧入の実施の際に、実時間で実施されることを特徴とする請求項7に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項9】
前記製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別された場合には、前記触媒の圧入を停止することを特徴とする請求項8に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項10】
前記第2計測範囲は、筒状部材の内部における触媒の設置位置の寸法公差範囲で決定されることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造方法。
【請求項11】
筒状部材の内部に、触媒担体の外周に緩衝部材を設けた柱状の触媒を、緩衝部材を筒状部材の内周面で滑らせつつ、筒状部材の内部へ筒状部材の軸心方向に圧入する触媒コンバータの製造装置であって、
前記圧入において触媒に付与される圧入方向の圧入荷重を検出する圧力検出手段と、
前記圧入において触媒の圧入方向の圧入変位を検出する圧入変位検出手段と、
前記圧入検出手段により検出された圧入終了直前の終期圧入荷重から、圧入開始直後の初期圧入荷重を除した値である圧入荷重差を算出する制御手段と、を有すること特徴とする触媒コンバータの製造装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記圧入荷重差が所定の閾値を超える場合に、製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別することを特徴とする請求項11に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項13】
前記初期圧入荷重は、圧入開始直後の圧入変位の所定範囲である第1計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項11または12に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項14】
前記第1計測範囲は、圧入開始直後の所定の値から、圧入荷重の安定する所定の値の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項15】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における圧入荷重の最大値であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記圧入が終了した後に、圧入荷重差の算出を実施することを特徴とする請求項15に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項17】
前記終期圧入荷重は、圧入終了直前の圧入変位の所定範囲である第2計測範囲内における実時間での圧入荷重であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記圧入の実施の際に、圧入荷重差の算出を実時間で実施することを特徴とする請求項17に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項19】
前記制御手段は、製造される触媒コンバータに不具合が発生していると判別された場合に、前記触媒の圧入を停止することを特徴とする請求項18に記載の触媒コンバータの製造装置。
【請求項20】
前記第2計測範囲は、触媒の筒状部材の内部における設置位置の寸法公差範囲で決定されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の触媒コンバータの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−69718(P2008−69718A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249619(P2006−249619)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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