説明

触媒入り反応器の積層型筐体

【課題】 燃料電池の改質器や、脱硫器等の反応器において、原料ガス等の気体2を反応器内部の各触媒に均一に流通させること。
【解決手段】 エレメント4を環状の溝状に形成し、それを多段に積層して最上段に上蓋6を配置する。そして、各エレメント4の底面4bに連通孔5を設け、それが隣接するエレメント4において互いに周方向に異なるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一例として燃料電池システムの改質器や、脱硫器として利用できる触媒入り反応器の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に供給される燃料ガスは、炭化水素と水蒸気との混合ガスを改質することによって製造される水素ガスである。この改質に用いられる改質装置は、一般的にメタンやLNG等の化石燃料の炭化水素系の原料ガスと水蒸気とを混合し、それを改質触媒を有する改質器に供給し、その原料ガスを水素リッチなガスに改質するものである。
【0003】
このような改質器の筐体は、一例として、図4に示すごとく外筒13と内筒14とが同芯に配置され、それらの上下両端が上蓋6と下蓋12により閉塞され、内部に改質触媒が充填される。そして、この筐体11が排気ガスやヒーター等の熱源3によって、改質温度に昇温されるとともに、原料ガスである気体2が一方の入口パイプ9から筐体11内に供給され、改質触媒によって改質された後に、他方の出口パイプ10からそれが流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204343号公報
【特許文献2】特許第414578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示す触媒入り反応器の筐体は、原料ガスである気体2が一方の入口パイプ9から改質触媒を介して他方の出口パイプ10に流通するとき、気体2はその最短距離を流通しがちである。そのため、図4において、右上部および左下部の触媒への気体の流通量が他の部分に比べて少ないおそれがある。そのため、気体2は各部分を不均一に流通し、改質効率が悪くなるおそれがある。また、上記各種特許文献では、複数の筒体を持ち、それらの間を接合するものであるが、構造が複雑で製造が面倒であるとともに、各種改質触媒の充填も面倒である欠点もある。
そこで、本発明は気体2が各部の触媒に均一に流通するとともに、製造の容易な触媒入り反応器の筐体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、内部に触媒(1)が収納され、その内部に気体(2)が流通し、外周が熱源(3)により加熱されて、その触媒(1)により気体(2)を変化させる触媒入り反応器の筐体において、
夫々上端が開放され、底面(4b)と両側壁(4a)とで環状の溝が形成され、その底面(4b)に連通孔(5)が設けられた同一径の複数のエレメント(4)を有し、各エレメント(4)に触媒(1)が収納され、
一方のエレメント(4)の上端開放端に、他方のエレメント(4)の底面(4b)が載置され且つ、隣接するエレメント(4)で交互に前記連通孔(5)がその周方向に異なるようにして、重ね合わされ、
最上段のエレメント(4)の上端の開放端が上蓋(6)で閉塞され、積層方向の一端のエレメント(4)から前記気体(2)が流入して、そのエレメント(4)内を周方向に流通し、その連通孔(5)から次段のエレメント(4)に流入し、それが次段のエレメント(4)内を周方向に流通して、順次、隣接する段の各エレメント(4)に流通するように構成したことを特徴とする触媒入り反応器の積層型筐体である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の触媒入り反応器の積層型筐体において、
隣接するエレメント(4)の各連通孔(5)が周方向に互いに180度位置ずれして配置された触媒入り反応器の積層型筐体である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の触媒入り反応器の積層型筐体において、
各エレメント(4)の互いに整合する位置に仕切(7)が設けられ、隣接するエレメント(4)の各連通孔(5)がその仕切(7)の一方側と他方側とに交互に配置された触媒入り反応器の積層型筐体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の触媒入り反応器の積層型筐体は、環状の溝状に形成されたエレメント4が、重ね合わされるとともに、その最上段のエレメント4に上蓋6が設けられ、各エレメント4内を気体2が周方向に流通して、順次次段のエレメント4に流通するように構成したから、エレメント4内の触媒の各部に均一に気体2が流通し、性能のよい反応器を提供できる。
しかも、本発明の筐体は、環状の溝状のエレメント4の積層体で構成できるので、製造が容易で、量産性の高い低コストの筐体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の触媒入り反応器の積層型筐体の軸断面説明図。
【図2】同積層型筐体8の斜視説明図。
【図3】本発明の積層型筐体8の他の実施例を示す説明図。
【図4】従来型触媒入り反応器の筐体の斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)
図1および図2は本発明の触媒入り反応器の積層型筐体の第1実施例である。
これは、同一形の複数のエレメント4を多段に積層したものであり、各エレメント4には触媒1が充填されている。図1の例では、作図の都合上、下から2段目のみのエレメント4に触媒1を隙間なく充填してあるが、他のエレメント4も2段目と同様である。
【0012】
各エレメント4は、一例として、ステンレス鋼板等の耐熱・耐腐食性の金属材料からなり、金属板のプレス加工により、底面4bと一対の側壁4aとで環状の溝状に形成されている。そして、上端は開放され、底面4bの一箇所に連通孔5が設けられている。連通孔5は、この例では説明の都合上、比較的大きな孔に図示されているが、触媒1の粒径以下の多数の小孔がその位置に配置される。あるいは、大きな連通孔5の表面に金網またはパンチングメタルを被着しても良い。この例では何れにしても、底面4bの周方向の一箇所のみに連通孔5が設けられている。
【0013】
エレメント4の上端開口縁は、その金属材の板厚分拡開され、そこに段付き部4cを形成する。そして、この段付き部4cに上段のエレメント4の底面が載置され、最上段に上蓋6が載置される。なお、エレメントの開口縁の段付き部4cに代え、エレメント4の断面を逆台形状にし、各エレメントの底が下段の開口縁に嵌着するようにしてもよい。
【0014】
この時、連通孔5の位置は図1および図2に示すごとく、上下に隣接するエレメント4で周方向に180°異なった位置に設けられる。最上段のエレメント4の連通孔5は、その上蓋6が貫通する入口パイプ9から180°周方向に離間した位置にある。出口パイプ10も最下段から2番目の連通孔5の位置から周方向に180°離れた位置で、その底面4bに出口パイプ10が貫通する。
【0015】
このような積層型筐体8は、全体が組立てられた状態で、各接触部が一体的にろう付けまたは溶接により接合されて、各エレメント4間およびそれと上蓋6との間が気密に接合される。そして、この例では、熱源3として高温の排ガスが積層型筐体8の中心孔内を流通し、一方の入口パイプ9から原料ガスである気体2が供給され、各エレメント4内を時計方向、及び反時計方向に同時に流通し、最上段のエレメント4の底面の連通孔5から第2段目のエレメント4内に移動する。なお、熱源をエレメントの外側の周囲に配置してもよい。或いは、その周囲と中心孔内の両者に熱源を配置してもよい。それらの熱源はヒータであってもよい。
【0016】
そして、気体2は第2段目のエレメント4内を第1段とは逆方向に流通し、第3段目のエレメント4に移動する。このようにして、多段に形成されたエレメント4内の触媒1各部を流通し、その間に改質されて、最下段の出口パイプ10より流出する。即ち、気体2は、各エレメント4内を周方向に流通する間に改質され、水素リッチな燃料ガスとなる。
【0017】
この例では改質器として用いたが、それに替えて原料ガスの脱硫器として用いることも可能である。この場合、熱源3として適宜なヒータや他の熱源を用いることができる。その熱源として、外周が円筒形の改質器をその内部(中心孔)に挿入することも可能である。
【0018】
図2は気体2の流通状態を示す説明図であり、各エレメント4の連通孔5が互いに180°離間し、比較的偏平なエレメント4の流路内を周方向に気体2が流通するため、その気体2を触媒の各部に略均一に流通させることができる。それにより、性能のよい反応器を提供できる。
【0019】
(第2実施例)
次に図3は、各エレメント4の一箇所に仕切7を配置したものであり、隣接するエレメント4の交互にその連通孔5を仕切7の一方側と他方側に配置したものである。そして、気体2が仕切7の一方側に供給されて、それが一例として第1段目では、時計方向に360度移動し、その第1段目の連通孔5から第2段目のエレメント4に移動し、その第2段目では、反時計方向に気体2が360度流通する。このように、この例では気体2が環状に流通するものである。
【符号の説明】
【0020】
1 触媒
2 気体
3 熱源
4 エレメント
4a 側壁
4b 底面
4c 段付き部
5 連通孔
【0021】
6 上蓋
7 仕切
8 積層型筐体
9 入口パイプ
10 出口パイプ
11 筐体
12 下蓋
13 外筒
14 内筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に触媒(1)が収納され、その内部に気体(2)が流通し、外周が熱源(3)により加熱されて、その触媒(1)により気体(2)を変化させる触媒入り反応器の筐体において、
夫々上端が開放され、底面(4b)と両側壁(4a)とで環状の溝が形成され、その底面(4b)に連通孔(5)が設けられた同一径の複数のエレメント(4)を有し、各エレメント(4)に触媒(1)が収納され、
一方のエレメント(4)の上端開放端に、他方のエレメント(4)の底面(4b)が載置され且つ、隣接するエレメント(4)で交互に前記連通孔(5)がその周方向に異なるようにして、重ね合わされ、
最上段のエレメント(4)の上端の開放端が上蓋(6)で閉塞され、積層方向の一端のエレメント(4)から前記気体(2)が流入して、そのエレメント(4)内を周方向に流通し、その連通孔(5)から次段のエレメント(4)に流入し、それが次段のエレメント(4)内を周方向に流通して、順次、隣接する段の各エレメント(4)に流通するように構成したことを特徴とする触媒入り反応器の積層型筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒入り反応器の積層型筐体において、
隣接するエレメント(4)の各連通孔(5)が周方向に互いに180度位置ずれして配置された触媒入り反応器の積層型筐体。
【請求項3】
請求項1に記載の触媒入り反応器の積層型筐体において、
各エレメント(4)の互いに整合する位置に仕切(7)が設けられ、隣接するエレメント(4)の各連通孔(5)がその仕切(7)の一方側と他方側とに交互に配置された触媒入り反応器の積層型筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−726(P2013−726A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137606(P2011−137606)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】