説明

触媒反応器

フィッシャー・トロプシュ合成のためのコンパクトな触媒反応器(50)であって、該触媒反応器は、反応器モジュール(70)を有し、該モジュールは、ガス混合物および冷却流体をそれぞれ運ぶための、交互に配置された多数の第1および第2のフローチャネルを構成する。例えば金属箔などの基板を有する取り出し可能なガス透過性触媒構造物(82)が、その中で合成反応が起こるようになっている各フローチャネルに備えられる。反応器モジュール(70)は、圧力容器(90)内に封じ込まれ、圧力容器内の圧力は、ほぼ高圧反応ガス混合物の圧力であるように準備される。その結果、モジュール内の全てのフローチャネルは、それらの周囲の圧力であるか、圧縮下であるかのいずれかであり、どの部分も張力下にない。これにより、モジュールの設計が簡単になり、且つ触媒によって占められる反応器体積の割合が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスをより長い鎖状炭化水素に転換する化学工程での使用、特にフィッシャー・トロプシュ合成を行うために適した触媒反応器に関し、且つ化学工程を行うためのそのような触媒反応器を含むプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第01/51194号および同第03/048034号(アクセンタス社)には、メタンを水蒸気と反応させて、第1の触媒反応器で一酸化炭素および水素を発生させ、それから、生じたガス混合物を用いて、第2の触媒反応器でフィッシャー・トロプシュ合成を行う工程が記載される。全体の結果は、メタンを、通常は周囲条件下で液体である、より高い分子量の炭化水素に転換することにある。工程の2つステージ、水蒸気/メタン改質およびフィッシャー・トロプシュ合成は、異なる触媒および、反応がそれぞれ吸熱および発熱なので、それぞれ反応ガスにあるいは反応ガスから伝達されるべき熱を必要とする。2つの異なるステージのための反応器は、幾分異なる要求に従わなければならない。フィッシャー・トロプシュ合成は、通常、水蒸気/メタン改質よりも高圧だが低温で行われ、フィッシャー・トロプシュ反応器の熱伝達チャネルでは、冷却流体のみが必要とされるが、水蒸気/メタン改質に必要とされる熱は、典型的には、触媒燃焼によって提供されるので、適当な触媒を必要とする。
【0003】
各々の場合で、反応器は、好ましくはプレートのスタックとして形成され、プレートの間にフローチャネルが構成され、異なる流体のためのフローチャネルが、スタック中で交互になっている。触媒を必要とするそれらのチャネルでは、触媒は、好ましくは、セラミックコーティングで触媒を担持する、波形の金属基板の形態をなし、そのような波形構造は、触媒が使い尽くされたとき、チャネルから取り出せる。しかしながら、2つの流体の間に大きな圧力差がある場合には、これは、プレートを曲げる傾向があるので、触媒構造とプレートとの間の熱伝達が妨げられ、触媒構造を取り出すあるいは交換することが難しく、更に、もしプレートが圧力差に抵抗するのに十分強いはずであれば、プレートはより厚く、および/またはチャネルはより狭くなければならず、反応器の全体積の割合としてのフロー体積は、より小さくなる傾向がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、フィッシャー・トロプシュ合成のためのコンパクトな触媒反応器が提供され、該触媒反応器は、反応器モジュールを有し、該モジュールは、第1および第2の流体をそれぞれ運ぶための、モジュール内に交互に配置された多数の第1および第2のフローチャネルを構成し、第1の流体は、フィッシャー・トロプシュ合成を受けるガス混合物であり、その圧力は周囲圧力より高く、第2の流体は、冷却流体であり、各フローチャネルは、その中で化学反応が起こるようになっていて、金属基板を有する取り出し可能なガス透過性の触媒構造物を収容し、反応器モジュールは、圧力容器内に封じ込まれ、圧力容器内の圧力は、より高圧であるいずれかの流体の圧力とほぼ等しい圧力であるように準備されている。
【0005】
圧力容器内の圧力は、ほぼ、より高い圧力の流体の圧力であるので、プレートのスタック内の全てのフローチャネルは、それらの周囲の圧力であるか、圧縮下であるかのいずれかである。その結果、プレートのスタックのどの部分も張力下にない。好ましくは、ガス混合物は高圧の流体であり、このガス混合物は、第1のフローチャネルに達するためか、(ガス混合物がフィッシャー・トロプシュ合成を受けた後)第1のフローチャネルを去るためかのいずれかのために、圧力容器の少なくとも一部の中を流れるように準備される。次いで、フィッシャー・トロプシュ合成を受けたガス混合物を、圧力容器の中を流れるように準備することの利点は、圧力容器が、生成物炭化水素の液滴とガス生成物との間の分離の第1のステージを提供することができることにある。
【0006】
従って、第2の態様では、本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成のためのそのようなコンパクトな触媒反応器を提供し、該触媒反応器は、圧力容器内に封じ込まれた適当な反応器モジュールを含み、圧力容器内の圧力は、フィッシャー・トロプシュ反応チャネル中の圧力とほぼ等しくなるように準備されている。
【0007】
フィッシャー・トロプシュ反応器は、典型的には、約200℃の温度で行われるので、広範な材料を、反応器モジュールのために選ぶことができる。例えば、反応器モジュールは、アルミニウム合金、ステンレス鋼あるいは高ニッケル合金、あるいはその他の鋼合金で作られるのがよい。
【0008】
好ましくは、触媒構造のための金属基板は、例えばクロム15%、アルミニウム4%、およびイットリウム0.3%を有する鉄(例えば、Fecralloy(商標))のような、アルミニウム含有フェライト鋼(an aluminium-bearing ferritic steel)などの、加熱されたとき付着性酸化アルミニウムの表面コーティングを形成する、鋼合金である。この金属が空気中で加熱されたとき、金属は、アルミナの付着性酸化物コーティングを形成し、それが、合金を更なる酸化および腐食から保護する。セラミックコーティングがアルミナの場合には、これは、表面上の酸化物コーティングに結合するように見える。基板は、金網あるいはフェルトシートであるのがよいが、好ましい基板は、例えば、100μm以下の薄い金属箔であり、基板は、波形、ディンプル状、あるいはプリーツ状であってもよい。
【0009】
触媒材料を有するそのような触媒構造は、フローチャネル中に挿入されるのがよく、フィッシャー・トロプシュ反応のためのフローチャネルは、熱を除去するフローチャネルと交互になっている。フローチャネル中の触媒構造の金属基板は、熱伝達および触媒表面積を高める。触媒構造は、モジュール中のチャネルから取り出せるので、もし触媒が使い尽くされるようになれば、交換することができる。
【0010】
反応器モジュールは、プレートのスタックを含むのがよい。例えば、第1および第2のフローチャネルは、それぞれのプレートの溝によって構成され、プレートは、積み重ねられて、それから互いに結合される。変形例では、フローチャネルは、キャストレーションの、且つ平らなシートと交互に積み重ねられた、薄い金属シートによって構成されるのがよく、フローチャネルの縁部は、密封ストリップによって構成されるのがよい。反応器モジュールを形成するプレートのスタックは、例えば、拡散接合、蝋付け、あるいは熱間静水圧圧縮成形によって一緒に結合される。本発明の特定の利点は、構成材料からなる反応器モジュールの体積の割合(触媒を含まない)は、60%以下、好ましくは50%および更に35%以下がよい。
【0011】
従って、より長い鎖状炭化水素を得るべく天然ガスを処理するためのプラントは、合金ガスを形成するためにメタンを水蒸気と反応させる水蒸気/メタン改質反応器と、より長い鎖状炭化水素を生成するための本発明のフィッシャー・トロプシュ反応器と、を、有するのがよい。必要とされる良い熱接触を確保するために、フィッシャー・トロプシュ反応のためのチャネルは、好ましくは深さ10mm以下である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を、一例としてのみ、且つ添付図面を参照して、今、更に、より詳細に記載する。
【0013】
本発明は、天然ガス(主としてメタン)をより長い鎖状炭化水素に転換するための化学的方法に関連している。この方法の第1のステージは、水蒸気改質を伴い、すなわち、
2O+CH4→CO+3H2
のタイプの反応である。
この反応は吸熱であり、第1のガスフローチャネル内の、ロジウムあるいは白金/ロジウムによって引き起こされるのがよい。この反応を引き起こすために必要な熱は、発熱であり、且つ隣接した第2のガスフローチャネル内の白金触媒によって引き起こされる、メタンあるいは水素のような可燃性ガスの燃焼によって与えられる。両方の場合で、触媒は、好ましくは、典型的には厚さ100μm以下のコーティングを金属基板上に形成する、安定化アルミナ支持体上である。燃焼反応は、大気圧で起こるが、改質反応は、4気圧と5気圧との間で起こる。燃焼によって発生する熱は、隣接したチャネルを分離する金属シートを通して伝えられる。
【0014】
次いで、水蒸気/メタン改質によって生じたガス混合物は、より長い鎖状炭化水素、すなわち、
nCO+2nH2→(CH2n+nH2
を発生させるフィッシャー・トロプシュ合成を行うために用いられ、これは、鉄、コバルトあるいは溶融マグネタイトのような触媒の存在下で、典型的には190℃と280℃との間の高温で、且つ典型的には1.8MPaと2.1MPa(絶対値)との間の高圧で起こる発熱反応である。フィッシャー・トロプシュ合成のための好ましい触媒は、コバルト約10〜40%(アルミナと比較した重量で)と、コバルト重量の10%以下である、ルテニウム、白金、またはガドリニウムのような助触媒と、酸化ランタンのような塩基性助触媒と、を有する、特定の表面積140〜230m2/gのγ−アルミナのコーティングを含む。
【0015】
今、図1を参照すると、プラントの構成要素を示すフロー図として、化学工程の全体を示す。天然ガス原料5は、主として、この例では、ある割合のより高い炭化水素C2乃至C11を有するメタンからなる。典型的には、これらのより高い炭化水素は、天然ガス源に依存して、10%v/vまで存在する。ガス原料5は、例えば、1.0MPa(10気圧)の圧力である。
【0016】
ガス圧力を、バルブ8によって0.6MPaに調整し、次いで、ガス5を、触媒燃焼からの高温排気ガスを使用して熱交換器10で約400℃まで予熱し、それから、固体床脱硫システム12に送る。次いで、脱硫天然ガス5を、例えば、流体渦混合器14で、水蒸気と混合する。ガス/水蒸気混合物を、触媒燃焼からの熱排気ガスを使用して、熱交換器16で加熱し、ガス混合物を500℃の温度にする。混合物は、断熱固定床予備改質器18に入り、そこで混合物は、ニッケルあるいは白金/ロジウム系メタン生成触媒に接触する。より高い炭化水素は、水蒸気と反応して、メタンおよびCOを形成する。
【0017】
ガスは、低い温度、典型的には450℃で予備改質器18を出る。それから、改質器20に入る前に、バルブ19によって、圧力は0.45MPa(絶対圧力)まで下げられる。改質器20は、良好な熱接触状態にある吸熱および発熱反応のための流路を構成し、且つ適当な触媒を収容するプレートのスタック(積み重ね)から作られた、上述したタイプのコンパクトな触媒反応器である。改質器20の改質器チャネルは、改質触媒を収容し、水蒸気とメタンが反応して、一酸化炭素および水素を形成する。改質器内の温度は、入口における450℃から出口における約800〜850℃まで増大する。混合器14に供給される水蒸気とガスの流量は、改質器20に送り込まれる水蒸気:炭素のモル比が1.2〜1.6の間、好ましくは1.3と1.5の間であるような流量である。従って、ガス5のより高い炭化水素含有量に依存して、予備改質器18の入口での水蒸気と炭素の比は、これよりも高い必要がある。
【0018】
改質反応器20での吸熱反応のための熱は、フィッシャー・トロプシュ合成からのテールガス22である、短鎖炭化水素と水素の混合物の触媒燃焼によって供給され、このテールガス22は、空気送風機24によって供給される空気の流れと結合される。燃焼は、改質反応器20内の隣接したフローチャネル内の燃焼触媒の上で起こる。燃焼ガス路は、改質ガス路に対して同流である。
【0019】
一酸化炭素と水素の混合物は、800℃以上で改質器20から出て、且つ該混合物を水蒸気上昇熱交換器26に通すことによって、400℃以下に冷却される。水が、ポンプ28によってこの熱交換器26に供給され、それ故に、改質工程のための水蒸気が、制御バルブ30を通して混合器14に供給される。ガス混合物は、冷却水を用いて熱交換器32で約60℃まで更に冷却され、従って余分な水は凝縮し、サイクロン33および分離容器34の中を通ることによって分離される。次いで、ガス混合物は、コンプレッサー36によって約2.5倍の圧力まで圧縮され、熱交換器40によって再び冷却され、第2のサイクロン41および分離容器42の中を通って凝縮するあらゆる水を除去する。分離された水は、水蒸気上昇回路に再循環される。次いでガスは、第2のコンプレッサー44で20気圧(2.0MPa)に圧縮される。
【0020】
次いで、高圧の一酸化炭素および水素の流れは、触媒フィッシャー・トロプシュ反応器50に送り込まれ、これは再び、上述したようなプレートのスタックから形成されたコンパクトな触媒反応器であり、反応混合物は、一組のチャネルの中を流れ、冷却流体は他の組のチャネルの中を流れる。
【0021】
フィッシャー・トロプシュ合成からの反応生成物、主に水と、パラフィンのような炭化水素は、熱交換器54およびサイクロン分離器56の中を通ることによって、冷却されて液体を凝縮し、熱交換器54およびサイクロン分離器56に続く分離チャンバ58内で、3つの相の水、炭化水素およびテールガスが分離し、炭化水素生成物は大気圧で安定化される。気相で残る炭化水素と余分な水素ガス(フィッシャー・トロプシュテールガス22)は、集められそして分けられる。ある割合は、減圧バルブ60を通って、(上述のように)改質器20での触媒燃焼工程のための燃料を提供する。残りのテールガス62は、電力発電機64を駆動するガスタービン63に送り込まれる。
【0022】
ガスタービン64は、プラントのための全ての電力を発電し、且つ余剰を外へ出す能力を有する。主なプラント電力要求は、コンプレッサー36および44と、ポンプ24および28であり、電気は、また、水蒸気発生のためにプロセス水を提供するための真空蒸留ユニットを作動するのに用いられる。
【0023】
今、図2を参照すると、フィッシャー・トロプシュ反応器50に使用するのに適した反応器ブロック70を示し、反応器70は断面で、且つ明瞭のために構成要素を分離して示す。反応器70は、フィッシャー・トロプシュ合成のためのチャネルと交互になる冷却流体のためのチャネルを構成するように、間隔をへだてた、厚さ1mmの平らなプレート72のスタックからなる。冷却流体チャネルは、厚さ0.75mmのキャストレーションプレート74によって構成される。キャストレーションの高さ(典型的には1乃至4mmの範囲)は、この例では、2mmであり、厚さ2mmの中実縁ストリップ76が側に沿って備えられ、連続するリガメントは6mm離れている(配置を以下でより詳細に記載する)。フィッシャー・トロプシュ合成のためのチャネルは、高さ5mmのものであり、高さ5mm、350mmだけ間隔をへだてられ、そのため、真っ直ぐな貫通チャネルを構成する、四角形断面のバー78によって構成される。
【0024】
今、図3を参照すると、反応器ブロック70を部分的に切除して、反応器50を断面で示す。上述したように、反応器ブロック70は、フローチャネルを構成するために、互いに分離された平らなプレート72のスタックからなる。スタックの互い違いのチャネルの向きは、ほぼ直交している。各平らなプレート72は、厚さ1.0mmそして1070mm平方である。フィッシャー・トロプシュ反応のためのチャネルは、触媒担持波形箔82を収容し、且つ合成ガス混合物がパイプ84を通して高圧で供給されるヘッダー83から、反応器ブロック70の中を真っ直ぐに延び(示すように上から下まで)、平らなプレート72は、350mmの間隔で、上から下まで走る、断面が5mm平方のバー78によって離れて保持され、従って、連続する平らなプレート72間に、並んでいる3つのチャネルがある。冷却流体チャネルのために、平らなプレート72は、キャストレーションシート74によって離れて保持され、冷却流体チャネルは、その長さに沿って走る、6mm幅である高さ2mmのキャストレーションに形成され厚さ0.25mmのシートの長いストリップから構成される。キャストレーションストリップは、入口87と出口88との間に通路を提供するように、長さ86に切られ、且つこれらが横方向の流路(示すように水平方向)を構成するために、並んで置かれる。これらのポート87および88に隣接したキャストレーションストリップ86の一端部は、直角に切断され、他の端部は45°に切断され、且つキャストレーションストリップの三角形のピース89は、それらの間につながりを設けるように配置される。従って、冷却流体のための流路全体は、破線矢印によって示すように、フィッシャー・トロプシュチャネルの中の流れに対して部分的に共流れであるジグザグ通路である。平らなプレート72、バー78およびキャストレーションストリップ86および89は、アルミニウム合金、例えば、3003グレード(マンガン約1.2%および銅0.1%を有するアルミニウム)からなるのがよい。
【0025】
スタックは、上述したように組み立てられ、それから、例えば蝋付けによって一緒に結合されて、反応器ブロック70を形成する。それから、適当な触媒を有する波形の金属箔触媒担体82が、フィッシャー・トロプシュ合成のためのチャネルの中に挿入される。
【0026】
図3の破線矢印は、入口87と出口88との間を通るとき、反応器ブロック70により、冷却流体がフィッシャー・トロプシュチャネルの幅にわたって3回横切ることを示し、変形例では、冷却流体は、幅を2回だけ横切ってもよいし、あるいは更にまた、冷却流体は3回より多く通ってもよい。冷却流体チャネル中の、近接して間隔をへだてたキャストレーションは、曲げに抵抗する硬さを提供する。
【0027】
反応器ブロック70は、炭素鋼圧力容器90内に取付けられ、支持バー92によって支持される。圧力容器90の内側面は、腐食あるいは鉄カルボニルの形成を抑制するために、例えばクロムなどでコーティングされるのがよい。圧力容器90は、半球形端部を有する円筒形であるのがよい。合成ガスのためのパイプ84および、冷却流体をポート87に供給し、ポート88から流出させるパイプ97と98は、圧力容器90の壁を貫いて延びる。液体生成物のための出口ポート96が、容器90の底部にあり、ガス生成物のための出口ポート100が容器90の頂部にある。
【0028】
反応器50の使用中、冷却流体は0.7MPaで供給され、合成ガスは2.0MPaで供給される。フィッシャー・トロプシュ合成の生成物および未反応ガスは、反応器ブロック70の底部から圧力容器90の中へ出るので、圧力容器90内の圧力も約2.0MPaである。反応器ブロック70から出るガス流によって運ばれた液滴は、速度が減少するにつれてバルクガス流れから離れ、そして底部に落下し、その代わりに、液滴は、圧力容器90内で表面に衝突して合体するので、液体は、底部に流下し、出口ポート96から流出する。残りのガスは、出口ポート100から出て、図1に関して記載したように処理される。
【0029】
上述した液体/ガス分離機構を補うために、脱ミストパッキングを、圧力容器90内に設けてもよい。変形例としてあるいは追加的に、サイクロン分離器を、圧力容器90内に設置してもよく、この分離器は、ガス流(液滴を含有するかもしれない)が入る接線方向入口と、出口ポート100に連結されたガス出口と、脱同伴した液滴のための液体出口と、を有し、この分離器は、好ましくは、パイプを介して、容器90の底部の、液体生成物の高さより下に連通する。
【0030】
外部圧力シェル90の使用は、反応器ブロックのどの部分も引張力に抵抗する必要がないので、金属が反応器ブロック70に強度を与える必要を減じるのを助けることが理解されるであろう。冷却流体チャネルは、圧縮下にあるが、キャストレーションストリップ74によってほぼ剛性に保たれる。従って、圧力シェル90により、単位体積当りの触媒のより高い装填量を達成することができる。これは、72のようなプレートを著しく薄くできるので、反応器ブロックの体積のより大きな割合が、フローチャネルによって占められ、それによって空隙率を増大させるので、触媒の在庫全体を増大させることができるからである。例えば、このフィッシャー・トロプシュ反応器では、構造材料からなる体積の割合は、70%以上から35%以下にまで減じることができる。それは、また、フローチャネルの壁の曲げモーメントを最小にし、それによって歪みを減じるので、触媒箔82と隣接した壁との間の接触を改善し、そして熱伝達を改善し、且つ除去あるいは挿入をより簡単にもする。圧力シェル90は、比較的簡単な形状を有するので、在来の圧力容器の規格に設計することができる。圧力シェル90は、また、反応器ブロック70からの漏出の場合には、本質的に第2の閉じ込めを提供し、それは、絶縁するのが容易な、且つ移動および設置が容易な形状であり、且つ反応器の全体のサイズを、著しく増大させることがない。
【0031】
図3に示すようなフィッシャー・トロプシュ反応器50の場合、反応器ブロック70とシェル90との間の空間を、ガスと液体反応生成物との間の相分離を開始するために使用することができるので、次の生成物分離器の体積と費用を減じるという利点がある。アルミニウムのような比較的低コスト材料を、反応器ブロック70を形成するために使用することができるという更なる利点もある。更なる利点は、反応器ブロック70の下端部にヘッダーを備えないので(図示するように)、一旦圧力容器90を開放すれば、触媒箔82の交換を容易に成し遂げることができることである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の反応器を有する化学プラントのフロー図を示す。
【図2】フィッシャー・トロプシュ合成に適した反応器ブロックの一部の断面図を示す。
【図3】図2の反応器ブロックを有する反応器の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成のためのコンパクトな触媒反応器であって、
反応器モジュールを有し、該反応器モジュールは、第1および第2の流体をそれぞれ運ぶための、モジュール内に交互に配置された多数の第1および第2のフローチャネルを構成し、
第1の流体は、フィッシャー・トロプシュ合成を受けるガス混合物であり、その圧力は、周囲圧力より高く、第2の流体は、冷却流体であり、
各フローチャネルは、その中で化学反応が起こるようになっていて、金属基板を有する取り出し可能なガス透過性触媒構造物を収容し、
反応器モジュールは、圧力容器内に封じ込まれ、
圧力容器内の圧力は、より高圧であるいずれかの流体の圧力とほぼ等しい圧力であるように準備されている、
ことを特徴とする反応器。
【請求項2】
ガス混合物が、より高圧の流体であり、且つ第1のフローチャネルに達するためか、あるいは第1のフローチャネルを去るためかのいずれかのために、圧力容器の少なくとも一部の中を流れるように準備される、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
合成反応を受けたガス混合物は、それから、圧力容器の中を流れるように準備され、それによって圧力容器は、液滴とガス生成物とを分離する第1のステージを提供する、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
圧力シェルは、反応器モジュールとは異なる材料のものである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項5】
構造材料からなる体積の割合は、60%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項6】
前記割合は、50%以下である、請求項5に記載の反応器。
【請求項7】
フィッシャー・トロプシュ合成のためのコンパクトな触媒反応器であって、
反応器モジュールを有し、該反応器モジュールは、第1および第2の流体をそれぞれ運ぶための、モジュール内に交互に配置された多数の第1および第2のフローチャネルを構成する反応器モジュールを有し、
第1の流体は、フィッシャー・トロプシュ合成を受けるガス混合物であり、その圧力は、周囲圧力より高く、
第2の流体は、冷却流体であり、
各フローチャネルは、その中で化学反応が起こるようになっていて、金属基板を有する取り出し可能なガス透過性触媒構造物を収容し、
反応器モジュールは、圧力容器内に封じ込まれ、
圧力容器内の圧力は、フィッシャー・トロプシュ反応チャネル中の圧力とほぼ等しい圧力に準備されている、
ことを特徴とする反応器。
【請求項8】
合成ガスを生成するための水蒸気改質反応器と、
より長い鎖状炭化水素を生成するための、請求項1乃至7のいずれか1項に記載されたフィッシャー・トロプシュ反応器と、
を有する、天然ガスをより長い鎖状炭化水素に転換するためのプラント。
【請求項9】
添付図面の図2および3を参照して示す、実質的に上記に記載されたフィッシャー・トロプシュ反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526943(P2008−526943A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550859(P2007−550859)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050008
【国際公開番号】WO2006/075193
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506313567)コンパクトジーティーエル パブリック リミテッド カンパニー (13)
【Fターム(参考)】