説明

触媒用微粒子

【課題】 この触媒用微粒子は酸化還元活性が高く、水処理等の液相反応に用いた場合には分散媒から容易に分離するができる。
【解決手段】 結晶性炭素粒子に金属微粒子が担持された触媒用微粒子であって、該触媒用微粒子の平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にあり、触媒用微粒子中の金属微粒子の担持量が金属として1〜50重量%の範囲にある。金属微粒子の平均粒子径が1〜50nmの範囲にあり、結晶性炭素粒子の平均粒子径(一次粒子径)が5〜500nmの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子を炭素粒子に担持させた触媒用微粒子であって、特に、水処理用触媒、電極触媒、アルコール、べンゼン等の酸化反応触媒として好適な触媒用微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化還元反応用の触媒成分として、種々の金属、合金が用いられており、これらの金属、合金は単独で、または担体に担持して用いられている。金属や合金を比表面積の高い担体に担持すれば金属が高分散し、活性の高い触媒が得られることは良く知られている。また、金属と単体の組み合わせによっては、選択性、触媒寿命等が向上することがあることも知られている。
液相で触媒が用いられる場合には、触媒自体が高活性であることに加えて、活性金属成分が溶媒に溶出しないことや、高分散することが求められている。
【0003】
べンゼンの酸化反応触媒としては、例えば、K.Otsuka etal., Catal.Today, 57, 71 (2000)に、電極触媒が記載されている。
また、アリル型アルコールの酸化反応触媒としては、例えば、K.Ebitani et al.,Langmuir,15,3562(1999)に、金属クラスター触媒が記載されている。
【0004】
また、本願出願人は、水処理用触媒として、特開2004−97893号公報(特許文献1)において、無機酸化物担体および/またはカーボン担体に、Pt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、Feから選ばれる1種または2種以上の金属微粒子および/または合金微粒子が担持されてなる、平均粒子径が5nm〜20μmの範囲にある硝酸性窒素含有水処理用触媒を開示している。
しかしながら、前記した各触媒はさらに活性の向上が求められている。
【特許文献1】特開2004−97893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸化還元活性が高く、かつ、水処理等の液相反応に用いた場合には分散媒から容易に分離することのできる触媒用微粒子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、結晶性炭素粒子に金属微粒子が担持された触媒用微粒子であって、該触媒用微粒子の平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にあり、触媒用微粒子中の金属微粒子の担持量が金属として1〜50重量%の範囲にあることを特徴とするものである。
前記金属がPt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、Fe、Rh、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Crから選ばれる1種または2種以上の金属または合金であることが好ましく、前記金属微粒子の平均粒子径が1〜50nmの範囲にあることが好ましい。
前記結晶性炭素粒子の平均粒子径(一次粒子径)が5〜500nmの範囲にあることが好ましく、前記結晶性炭素粒子の比表面積が20〜3000m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0007】
前記結晶性炭素粒子の結晶構造がグラファイト構造であり、結晶子間距離が1〜30nmの範囲にあることが好ましい。
前記結晶性炭素粒子が、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、黒鉛から選ばれる1種または2種以上の結晶性炭素化合物からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の触媒用微粒子は、比表面積の高い結晶性炭素粒子に平均粒子径の小さい金属微粒子が担持されているので、酸化還元活性が高い。また、前記結晶性炭素粒子が疎水性を有していれば、水処理触媒等として用いた場合、処理水と容易に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る触媒用微粒子の最良の形態について説明する。
本発明に係る触媒用微粒子は、金属微粒子が結晶性炭素粒子に担持されてなり、平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にある。
金属微粒子
本発明における金属微粒子としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、Fe、Rh、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Crから選ばれる1種または2種以上の金属または合金であることが好ましい。
水処理用触媒の金属微粒子なら、Pt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、またはFeが好ましい。電極触媒の金属微粒子なら、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Cu、Fe、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Ru、Mo、Crが好ましい。アルコール、べンゼン等の酸化反応触媒の金属微粒子なら、Pd,Ru,Pt等が好ましい。
【0010】
好ましい2成分以上の組み合わせとしては、Pd-Cu、Pd-Au、Pd-W、Pd-V、Pd-Mo、Pd-Fe、Pd-Cu/Pd、Pd-Cu-Ru、Pd-Cu-Fe、Pd-Cu-Au、Pt-Cu、Pt-Au、Pt-W、Pt-V、Pt-Mo、Pt-Fe、Pt-Cu/Pd、Pt-Cu-Ru、Pt-Cu-Fe、Pt-Cu-Au等が挙げられる。
なお、ここで合金とは、2種以上の金属成分が均一に混合しているもの(上記において例えば「Pd-Cu」と表記)に限らず、混合物であるもの(上記において「Cu/Pd」と表記)も含んで意味している。また、これらの金属成分は結晶性であっても非晶質であってもよい。
【0011】
金属微粒子の平均粒子径は1〜50nm、さらには1〜10nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が1nm未満の場合は、初期性能は高いが、再生等を繰り返すことによって移動して他の金属微粒子と凝集する傾向があり、長期にわたって初期性能を維持することが困難である。平均粒子径が50nmを越えると、反応物、酸化剤あるいは還元剤等の吸着量が低下するとともに活性化能も低下し、酸化還元活性が低下する。
金属微粒子の粒子径は、例えば、FE-TEM(STEM-HAADF法)により測定することができる。
【0012】
結晶性炭素粒子
本発明における結晶性炭素粒子としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、黒鉛などが挙げられる。このような結晶性炭素粒子は金属微粒子との結合力が強く、処理中の金属の処理液への溶出を抑制することができ、また担体から容易に脱離することがなく、このため長期処理が可能である。
一方、活性炭のような無定形炭素粒子(非結晶性炭素粒子)は、化学的安定性、機械的強度(安定性)が低い上に、粒子径が大きく親水性が高い場合があり、本発明の触媒用微粒子の担体としては、不適当である。
【0013】
結晶性炭素粒子の平均粒子径(一次粒子径)は5〜500nm、さらには10〜100nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径(一次粒子径)が5nm未満の場合は、結晶性が低いためか、前記結晶性炭素粒子を用いる効果が不充分となる傾向がある。平均粒子径(一次粒子径)が500nmを超えると、比表面積が低く、金属微粒子を高分散した状態に担持することができないために、即ち、担体表面で金属微粒子が凝集した状態となるため充分な活性が得られないことがある。
なお、ここで結晶性炭素粒子の平均粒子径を一次粒子径と規定したのは、触媒用微粒子の担体として用いる結晶性炭素粒子は、概ね触媒用微粒子の粒子径と同じく平均粒子径が5nm〜1μmの範囲にあれば凝集体であっても非凝集体であってもよく、このときの非凝集体を一次粒子として意味したものである。
【0014】
結晶性炭素粒子の比表面積は20〜3000m2/g、さらには500〜2000m2/gの範囲にあることが好ましい。比表面積が20m2/g未満の場合は、所定量の金属微粒子を担持した場合、金属微粒子が結晶性炭素粒子の表面で凝集した状態となるため充分な活性が得られないことがある。比表面積が3000m2/gを超えるものは、微粒子の集合体であり、結晶性が低く、酸化還元活性や後述する疎水性等の結晶性炭素粒子を用いる効果が不充分となる傾向がある。
【0015】
前記結晶性炭素粒子は、触媒用微粒子が液相反応に用いられる場合において、当該分散媒や溶媒との親和性が低いものであることが好ましい。即ち、分散媒や溶媒が水あるいは水と相溶性の高い分散媒等であれば、結晶性炭素粒子は疎水性であることが好ましく、他方、分散媒や溶媒が親油性であれば、結晶性炭素粒子は親水性であることが好ましい。本発明の触媒用微粒子の担体として先に列挙したものは、疎水性の結晶性炭素粒子である。
例えば、担体としての結晶性炭素粒子が疎水性であると、反応終了後あるいは必要に応じて反応を停止した後、処理水表面に触媒が分離して浮遊するから、セラミックスフィルター等の特別の装置を用いることなく、触媒を分離することが可能である。特に、微細な粒子の場合には、通常の方法で分離が困難であっても、容易に分離することができる。
なお、結晶性炭素粒子の粒子径が大きく、通常の方法で容易に分離できる場合には、結晶性炭素粒子を硝酸などの酸で処理して親水性にして用いることも可能である。
【0016】
本発明に用いる結晶性炭素粒子はグラファイト構造を有し、結晶子径が2〜100nmの範囲にあり、結晶子間距離が1〜30nm、さらには1〜10nmの範囲にあることが好ましい。
結晶子間距離が1nm未満となることはなく、結晶子間距離が30nmを超えるものは結晶性が不充分で、酸化還元活性や後述する疎水性等の結晶性炭素粒子を用いる効果が不充分となる傾向がある。
【0017】
触媒用微粒子
本発明に係る触媒用微粒子は、平均粒子径が5nm〜1μm、さらには10nm〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。
触媒用微粒子の平均粒子径が5nm未満のものは、凝集する傾向が強く、触媒の調製が困難であったり、得られたとしても凝集して分散性が低下し、充分な性能を発揮できないことがある。平均粒子径が1μmを越えると、液相反応等で用いる場合、分散媒等の循環あるいは撹拌が弱くなると沈降することがあり、さらに反応物との接触効率が低下して充分な酸化還元活性が得られないことがある。
【0018】
触媒用微粒子中の金属微粒子の担持量は、金属として1〜50重量%、さらには2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。担持量が1重量%未満の場合は、酸化還元活性が不充分となる。担持量が50重量%を越えると、担持することが困難であるとともに、仮に担持できても酸化還元活性がさらに向上することもないので、経済性が低下する。また、担持した金属微粒子同士が互いに合体して粒子成長することがあり、活性が低下することがある。
【0019】
触媒用微粒子の製造方法
本発明に係る触媒用微粒子は、前記した粒子径範囲にあり、分散媒に分散した場合でも沈降等することなく反応物と効率的に接触し、充分な酸化還元活性が得られれば、特に制限はなく従来公知の方法を用いて製造することができる。
以下、本発明の触媒用微粒子の製造方法を3つ例示的に説明する。
【0020】
第1の製造方法
前記した結晶性炭素粒子の分散液を調製する。これに、所定量の1種または2種以上の金属塩水溶液を加え、結晶性炭素粒子に金属塩水溶液を吸収させ、次いで乾燥し、その後200〜800℃の温度で、還元ガス例えばH2、NH3雰囲気下で通常0.5〜6時間程度還元処理することによって触媒用微粒子を得ることができる。
金属塩としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム、塩化白金、硝酸銀、塩化銅、硝酸ニッケル、酢酸ルテニウムなど、前記した金属の塩で水に可溶な塩を用いることができる。
乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、静置乾燥、ロータリーエバポレーター等、従来公知の方法を採用することができる。
上記において、還元温度が200℃未満の時は、金属塩の還元が不充分となり、金属微粒子の生成が不充分となる。還元温度が800℃を越えると、金属微粒子が粒子成長しすぎたり、触媒用微粒子が強く凝集して分散性が低下することがあり、充分な酸化還元活性が得られないことがある。好ましい還元温度は250〜600℃の範囲である。
【0021】
第2の製造方法
前記した結晶性炭素粒子の分散液を調製する。これに、所定量の1種または2種以上の金属塩水溶液を加え、ついで還元剤(水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、次亜リン酸ソーダ、ヒドラジン、硫酸第一鉄等)を加え、結晶性炭素粒子上に金属を析出させる。ついで、必要に応じてオートクレーブ処理(100〜300℃で水熱処理)する。オートクレーブ処理により、溶液中に析出した金属微粒子を結晶性炭素粒子上に析出させることができる。
最後に金属微粒子が担持された結晶性炭素粒子を濾過分離し、第1の方法と同様にして乾燥した後、加熱処理(好ましくは不活性ガスまたは還元ガス雰囲気下で加熱処理)することによって触媒用微粒子を得る。
【0022】
第3の製造方法
例えば、パラジウム−銅合金の微粒子であれば、硝酸パラジウムと硝酸銅との混合水溶液に、生成する金属微粒子の分散安定化剤としてのクエン酸の水溶液に還元剤として硫酸第一鉄を溶解した溶液を添加して、Pd-Cu合金微粒子分散液を調製する。このPd-Cu合金微粒子分散液に結晶性炭素粒子の分散液を混合してPd-Cu合金微粒子を結晶性炭素粒子担体に担持した触媒用微粒子分散液を調製する。なお、このときの担持は、互いの粒子のゼータ電位の差により、結晶性炭素粒子の表面にPd-Cu合金微粒子が担持されるものであって、金属微粒子のゼータ電位は負、結晶性炭素粒子のゼータ電位は正である。
最後に金属微粒子が担持された結晶性炭素粒子を濾過分離し、第1の方法と同様にして乾燥し、ついで加熱処理(好ましくは不活性ガスまたは還元ガス雰囲気下で加熱処理)することによって触媒用微粒子を得る。
【0023】
上記各製造方法によって、平均粒子径が5nm〜1μm、さらには10nm〜0.5μmの範囲にある触媒用微粒子が得られる。
また、触媒用微粒子中の金属微粒子の含有量は1〜50重量%、さらには2〜20重量%の範囲とすることができる。
以下に示す実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
触媒(1)の調製
純水100gに、合金微粒子を構成するパラジウムと銅の重量比が70/30となるように硝酸パラジウム2水和塩7.4g及び硝酸銅3水和塩4.9gを溶解した金属塩水溶液に、安定化剤として濃度30重量%のクエン酸三ナトリウム水溶液265gと還元剤として濃度25重量%の硫酸第一鉄水溶液129g(硝酸パラジウムと硝酸銅の合計モル数の2倍量のモル数に相当)を加え、窒素雰囲気下で20時間攪拌して合金微粒子の分散液を得た。合金微粒子の平均粒子径は4nmであった。
得られた分散液を遠心分離器により水洗して不純物を除去した後、水に分散させ、濃度10重量%の合金微粒子(1)の分散液とし、これに結晶性炭素化合物としてカーボンブラック(キャボット(株)製:Vulcan XC-72R、平均粒子径31nm、比表面積230m2/g、結晶子径3.3nm)5gを純水495gに均一に混合した分散液を添加し、この混合液のpHを6に調整して1時間撹拌した。ついで、この混合液を100℃で乾燥させ触媒(1)を調製した。触媒(1)の金属担持量は20重量であった。
【0025】
撥水浮遊性(1)の評価
得られた触媒(1)5gを100mlの水に分散させ、200rpmで5分間撹拌した後、撹拌を停止し、触媒(1)の浮遊状態を観察し、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
触媒(1)が全量水面上に浮遊していた。 :◎
触媒(1)の80%以上が水面上に浮遊し、他は水中に分散していた。 :○
触媒(1)の50%〜80%未満が水面上に浮遊し、他は水中に分散していた。 :△
触媒(1)の50未満が水面上に浮遊し、他は水中に分散あるいは沈降していた。:×
【0026】
硝酸性窒素含有水の処理
硝酸ナトリウム(関東化学(株)製:特級)61.3gを純水に溶解して硝酸性窒素含有水25kgを調製した。このときの硝酸性窒素の含有量はNとして400ppmであった。
ついで、水処理槽に硝酸性窒素含有水を投入し、硝酸性窒素含有水を循環させながらこれに触媒(1)1000gを分散させた。このときの硝酸性窒素含有水中の触媒(1)の分散濃度は3.8重量%である。
ついで水素ガスを水処理槽の下部から注入し、水処理槽を200rpmで攪拌しながら硝酸性窒素含有水を処理した。処理条件は、液温25℃、液循環量70L/min、液圧力0.45MPa、水素圧力0.45MPa 、水素の注入流量0.48NL/minである。なお、水処理中は濃度1重量%の硫酸にて、硝酸性窒素含有水のpHを5〜6の範囲に調整した。
【0027】
水素ガスの供給開始後、5分毎に処理液を採取し、窒素分析装置(ブランルーベ(株)製:AAS−III)により硝酸性窒素(NO3+NO2)およびNH3の分析を行った。
硝酸性窒素の還元は85分(NO3+NO2が0ppmとなった時点)で終了し、このときの副生NH3濃度、水素の供給量、および水素利用率(N2生成、NH3副生)、水素未利用率を表1に示した。
【実施例2】
【0028】
触媒(2)の調製
実施例1において、結晶性炭素化合物としてカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製:ケッチェンブラックEC、平均粒子径30nm、比表面積820m2/g、結晶子径3.0nm)を用いた以外は同様にして、触媒(2)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(2)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例3】
【0029】
触媒(3)の調製
実施例1において、結晶性炭素化合物としてカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製:ケッチェンブラックEC600JD、平均粒子径31nm、比表面積1280m2/g、結晶子径3.1nm)を用いた以外は同様にして触媒(3)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(3)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例4】
【0030】
触媒(4)の調製
実施例1において、結晶性炭素化合物としてカーボンブラック(電気化学工業(株)製:デンカブラック FX−35、平均粒子径26nm、比表面積133m2/g、結晶子径4.3nm)を用いた以外は同様にして触媒(4)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(4)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例5】
【0031】
触媒(5)の調製
実施例1において、結晶性炭素化合物としてカーボンブラック(電気化学工業(株)製:デンカブラック OAB−100、平均粒子径37nm、比表面積88m2/g、結晶子径5.7nm)を用いた以外は同様にして触媒(5)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(5)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例6】
【0032】
触媒(6)の調製
実施例3において、合金微粒子を構成するパラジウムと銅の重量比が90/10となるように硝酸パラジウムおよび硝酸銅を加えた以外は同様にして、濃度10重量%の合金微粒子(2)の分散液とした。合金微粒子の平均粒子径は3nmであった。
ついで、合金微粒子(2)の分散液を用いた以外は同様にして触媒(6)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(6)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例7】
【0033】
触媒(7)の調製
実施例3において、合金微粒子を構成するパラジウムと銅の重量比が50/50となるように硝酸パラジウムおよび硝酸銅を加えた以外は同様にして、濃度10重量%の合金微粒子(3)の分散液とした。合金微粒子の平均粒子径は5nmであった。
ついで、合金微粒子(3)の分散液を用いた以外は同様にして触媒(7)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(7)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例8】
【0034】
触媒(8)の調製
純水100gに、合金微粒子を構成するパラジウムと銅の重量比が70/30となるように硝酸パラジウム2水和塩7.4g及び硝酸銅3水和塩4.9gを溶解した金属塩水溶液に、安定化剤として濃度30重量%のクエン酸三ナトリウム水溶液265gと還元剤として濃度25重量%の硫酸第一鉄水溶液258g(硝酸パラジウムと硝酸銅の合計モル数の4倍量のモル数に相当)を加え、窒素雰囲気下で20時間攪拌して合金微粒子の分散液を得た。合金微粒子の平均粒子径は10nmであった。
得られた分散液を遠心分離器により水洗して不純物を除去した後、水に分散させ、濃度10重量%の合金微粒子(4)の分散液を得た。ついで、合金微粒子(4)の分散液を用いた以外は実施例3と同様にして触媒(8)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(8)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例9】
【0035】
触媒(9)の調製
純水100gに、合金微粒子を構成するパラジウムと銅と銀の重量比が63/27/10となるように硝酸パラジウム2水和塩7.4g、硝酸銅3水和塩4.9g、硝酸銀1.8gを溶解した金属塩水溶液に、安定化剤として濃度30重量%のクエン酸三ナトリウム水溶液265gと還元剤として濃度25重量%の硫酸第一鉄水溶液129g(硝酸パラジウムと硝酸銅と硝酸銀の合計モル数の1.9倍量のモル数に相当)を加え、窒素雰囲気下で20時間攪拌して合金微粒子の分散液を得た。合金微粒子の平均粒子径は5nmであった。
得られた分散液を遠心分離器により水洗して不純物を除去した後、水に分散させ、濃度10重量%の合金微粒子(5)の分散液を得た。ついで、合金微粒子(5)の分散液を用いた以外は実施例3と同様にして触媒(9)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(9)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例10】
【0036】
触媒(10)の調製
実施例3において、予めカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製:ケッチェンブラックEC600JD、平均粒子径31nm、比表面積1280m2/g、結晶子径3.1nm)を硝酸に分散させ60℃で12時間攪拌した後、遠心分離器により水洗し、乾燥して親水性化したカーボンブラック(平均粒子径31nm、比表面積1250m2/g、結晶子径3.0nm)を結晶性炭素化合物として用いた以外は同様にして触媒(10)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(10)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【実施例11】
【0037】
アリルアルコールの酸化反応
実施例10と同様にして調製した触媒(10)9.0gを酢酸150mlとサイナミルアルコール6.1g(0.045mol)が入った反応容器に添加し、60℃で3時間、酸素雰囲気下攪拌しながら反応させた。反応後に攪拌を停止したところ触媒は液面に浮遊した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析し、生成したサイナムアルデヒドを定量した。生成したサイナムアルデヒドは47.8gで、収率は81%であった。これらの評価結果を表2に示した。
【0038】
撥油浮遊性(2)の評価
触媒(10)5gを100mlのベンゼンに分散させ、200rpmで5分間撹拌した後、撹拌を停止し、触媒(10)の浮遊状態を観察し、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
触媒(10)が全量液面上に浮遊していた。 :◎
触媒(10)の80%以上が液面上に浮遊し、他は液中に分散していた。 :○
触媒(10)の50%〜80%未満が液面上に浮遊し、他は液中に分散していた。 :△
触媒(10)の50未満が液面上に浮遊し、他は液中に分散あるいは沈降していた。:×
【比較例1】
【0039】
触媒(R1)の調製
実施例1において、カーボンブラックの代わりに活性炭(和光純薬工業(株)製:活性炭素粉末、平均粒子径50μm、比表面積1155m2/g、結晶子径2nm以下)を用いた以外は同様にして触媒(R1)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(R1)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【比較例2】
【0040】
触媒(R2)の調製
純水100gに、金属換算で濃度が10重量%となり、合金微粒子を構成する銅とパラジウムの重量比が2/1となるように硝酸銅および硝酸パラジウムを加え、これに、無定形炭素微粒子(御国色素(株)製:平均粒子径109nm)190gを加えて1時間撹拌した。次いで、凍結乾燥した後、H2−N2混合ガス雰囲気下、250℃で2時間加熱処理して触媒(R2)を調製した。
硝酸性窒素含有水の処理
実施例1において、触媒(R2)を用いた以外は同様の条件で硝酸性窒素含有水の処理を実施した。これらの処理の結果および撥水浮遊性(1)の評価結果を表1に示した。
【比較例3】
【0041】
アリルアルコールの酸化反応
比較例1と同様にして調製した触媒(R1)を用いた以外は実施例11と同様にしてアリルアルコールの酸化反応を行い、結果を表2に示した。また、撥油浮遊性(2)の評価を行い、結果を表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性炭素粒子に金属微粒子が担持された触媒用微粒子であって、該触媒用微粒子の平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にあり、触媒用微粒子中の金属微粒子の担持量が金属として1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする触媒用微粒子。
【請求項2】
前記金属がPt、Au、Ag、Pd、Ru、Cu、Ni、W、V、Mo、Fe、Rh、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sb、Crから選ばれる1種または2種以上の金属または合金であることを特徴とする請求項1に記載の触媒用微粒子。
【請求項3】
前記金属微粒子の平均粒子径が1〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒用微粒子。
【請求項4】
前記結晶性炭素粒子の平均粒子径(一次粒子径)が5〜500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触媒用微粒子。
【請求項5】
前記結晶性炭素粒子の比表面積が20〜3000m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の触媒用微粒子。
【請求項6】
前記結晶性炭素粒子の結晶構造がグラファイト構造であり、結晶子間距離が1〜30nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の触媒用微粒子。
【請求項7】
前記結晶性炭素粒子が、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、黒鉛から選ばれる1種または2種以上の結晶性炭素化合物からなる請求項1〜6のいずれかに記載の触媒用微粒子。

【公開番号】特開2006−167580(P2006−167580A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363036(P2004−363036)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】