説明

計測装置

【課題】短時間でかつ小型の構成で容易に除振状態の解除・復帰を行うこと。
【解決手段】ワークを搬送し、所定の計測位置に位置決めする搬送動作を少なくとも含む非計測シーケンスと、ワークを計測する計測シーケンスとを交互に設定可能な計測装置において、除振手段(除振台3、ベース4、除振部5)と、除振手段を固定する固定手段(Zステージ1、保持部2)と、を少なくとも有し、計測シーケンスにおいては除振手段を作動させ、非計測シーケンスにおいては固定手段を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測装置に関し、特に、非計測シーケンスと計測シーケンスとを交互に設定可能な計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高精度の測定器、加工機等の精密機器は通常、圧縮空気を用いた除振機構に載せられている。このような除振機構はダンパー性能を有しているために位置決め精度を確保することは困難であり、搬送装置と連携させて精密機器のワークを交換しようとした場合、搬送装置と精密測定器の相対位置をある程度の精度に抑えなくてはならない。このため、精密機器と搬送装置を一緒に除振機構に載せたり、精密機器を載せた除振機構の除振状態を解除し、試料の交換後に除振状態を復帰する必要があった。一般に除振機構においては、除振台がベースから圧縮空気で浮いているため、除振状態の解除、復帰のためには手間と時間がかかるという問題があった。
【0003】
一方、除振状態の解除、復帰の時間短縮のために、実公平3−42316号公報では、空気ばねを用いた除振機構において、本来の除振機構用空気ばねとは別に固定用空気ばねを用意し、除振状態を解除する場合には除振機構用空気ばねの空気を抜かずに固定用空気ばねに圧縮空気を導入して除振機構を固定し、除振状態を復帰する場合には固定用空気ばねの空気を抜くことを開示している。
【特許文献1】実公平3−42316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術には以下のような問題点がある。
【0005】
1.除振機構を解除しない場合には、精密機器(ワーク)と搬送装置の両方を載せるための大型の除振機構が必要である。
【0006】
2.除振機構の解除に空気ばねを用いた場合、解除時は除振用空気ばね以上の力が必要なため、作業に手間と時間がかかる。さらに、復帰時は固定用空気ばねから空気を抜かなければならず、さらに手間と時間がかかってしまう。また、除振位置と除振解除位置とが異なる。除振位置と除振解除位置を合わせるためには、復帰後、ワークの位置を再調整しなければならない。
【0007】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、短時間でかつ小型の構成で容易に除振状態の解除・復帰が可能な計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、ワークを搬送し、所定の計測位置に位置決めする搬送動作を少なくとも含む非計測シーケンスと、前記ワークを計測する計測シーケンスとを交互に設定可能な計測装置において、除振手段と、前記除振手段を固定する固定手段と、を少なくとも有し、前記計測シーケンスにおいては前記除振手段を作動させ、前記非計測シーケンスにおいては前記固定手段を作動させる。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記固定手段は、前記除振手段を保持するために上下方向に可動な保持部と、前記保持部を支持する複数の支柱とから構成される。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記除振手段は、複数の溝または穴からなる勘合部を有し、前記固定手段は、前記複数の溝または穴に対応する複数の突起部を有し、前記勘合部と前記突起部とが嵌合して前記除振手段を一意に位置決めする。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、第1乃至第3のいずれか1つの態様において、前記除振手段は、ベースに設置された圧縮気体、磁力あるいは、バネあるいはゴム状弾性部材により支持された板状部材により構成されている。
【0012】
また、本発明の第5の態様は、第3の態様において、前記固定部材の突起部は互いに向き合って、前記除振手段を略水平方向に挟持することによって、前記除振手段の位置を一意に固定する。
【0013】
また、本発明の第6の態様は、第1乃至第5のいずれか1つの態様において、前記除振手段を覆うための、開閉窓を有する遮蔽カバーをさらに有し、前記開閉窓を開閉してワークを搬送する。
【0014】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様において、ワークの移動を検出するための検出器をさらに有し、前記検出器の検出出力に基づいて前記開閉窓を開閉する。
【0015】
また、本発明の第8の態様は、第6または第7の態様において、前記計測シーケンスにおいて前記開閉窓を閉じて前記除振手段を作動させ、前記非計測シーケンスにおいて前記開閉窓を開放して前記ワークを搬送あるいは前記固定手段を作動させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短時間でかつ小型の構成で容易に除振状態の解除・復帰を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1(A)は本発明の第1実施形態に係る計測装置の除振状態の構成を示しており、図1(B)はその上面図である。この構成では、ベース4上に圧縮気体、磁力あるいは、バネあるいはゴム状弾性部材により支持された板状部材などで構成される2対の除振部5が配置され、さらにその上に除振台3が配置されている。上記ベース4と、除振部5と、除振台3とは除振手段を構成している。除振台3の両側面には一対の支柱としてのZステージ1により支持され、上下方向に駆動可能な一対の保持部2が配置されている。保持部2と、Zステージ1とは固定手段を構成している。
【0019】
本実施形態の計測装置は、上記したような除振手段と固定手段とを備え、かつ、ワークを計測する計測シーケンスにおいて除振手段を作動させ、ワークを搬送し、所定の計測位置に位置決めする搬送動作を少なくとも含む非計測シーケンスにおいて固定手段を作動させるようにしたことを特徴とする。
【0020】
上記した構成において、ワークを搬送する際、一対の保持部2を図1(A)に示すような除振状態から、保持部2を上方に移動させて除振性をロック状態にする(図1(C))。除振台3は、除振状態では常に除振動作を行っているために位置が不定であり、ワークの搬送が困難である。一方、ロック状態では除振台3の位置が固定されてワークの搬送が容易となる。
【0021】
なお、圧縮空気を用いた除振システムの場合、ロック状態ではフィードバックを停止(空気弁を遮断)する。
【0022】
上記の第1実施形態において、除振台3を保持部2により完全に持ち上げず、除振状態より数mmだけ持ち上げるようにすれば保持部2の負担を軽減することができる。
【0023】
(第2実施形態)
図2(A)は本発明の第2実施形態に係る計測装置の除振状態の構成を示しており、図2(B)はその上面図である。この構成では、ベース4上に圧縮気体、磁力あるいは、バネあるいはゴム状弾性部材により支持された板状部材などで構成される2対の除振部5が配置され、さらにその上に除振台3が配置されている。除振台3の両側面には除振台3をロックするために左右に移動可能な一対のロック機構6が配置されている。除振台3にはロック機構6の突起部としてのロック部材6−1を受けるための溝(勘合部)3−1が施されており、ロック状態での位置決め精度が出せるようになっている。溝3−1ではなく穴であっても良い。図2(C)は除振台3がロックされた状態を示している。ロック部材6−1が勘合部としての溝3−1に嵌合することにより除振台3が一意に位置決めされる。
【0024】
図3は、ロック機構6について説明するための図である。図3は、1つのモータで一対のロック部材6−1を両方向に同時に移動させる構成を示しており、力点の移動量の2倍だけ移動するようにレイアウトされている。Fixは支点である。
【0025】
ロック時には図示せぬモータによりロック機構6のロック部材6−1は互いに向き合ってそれぞれ内方向に略水平に移動して除振台3を挟持し、その位置を一意に固定する。
【0026】
また、一対のロック部材6−1のそれぞれの移動量が同じであればこのレイアウトに限定されるものではない。
【0027】
図4は、第2実施形態の第1の変形例を説明するための図である。この変形例では、ロック部材6−1の先端の形状が図4(A)のように尖っているのではなく、図4(B)に示すように、球状にしたことを特徴とする。図4(C)は、本変形例に係る計測装置の上面図である。このように球状のロック部材を2対用いることで上下方向だけでなく水平方向の位置精度を向上させることができる。
【0028】
図5は、第2実施形態の第2の変形例を説明するための図である。この変形例では、ロック部材6−1の形状を三角柱とし、その一辺を除振台3の溝3−1に線接触させて保持するようにしたことを特徴とする。
【0029】
図6は、第1実施形態の第2の変形例を説明するための図である。本変形例は、第1実施形態の保持部2と、第2実施形態のロック部材6−1とを組み合わせた実施形態である。
【0030】
(第3実施形態)
図7(A)は本発明の第3実施形態に係る計測装置の除振状態(計測時)の構成を示している。この構成では、ベース4上に圧縮気体、磁力あるいは、バネあるいはゴム状弾性部材により支持された板状部材などで構成される2対の除振部5が配置され、さらにその上に除振台3が配置されている。除振台3の両側面には除振台3をロックするために左右に移動可能な一対のロック機構6が配置されている。
【0031】
上記した除振機構上には、高精度の測定器や顕微鏡などの精密計測部100が搭載されており、全体が遮蔽カバーとしての外装カバー7により覆われている。さらに、外装カバー7の側面には開閉窓8が設けられている。ワーク10はこの開閉窓8を通じて本体内外に搬送される。図6(B)はワーク10が本体外に搬送された状態を示している。さらに、開閉窓8の近くには開閉窓8が開放されたことを検出するセンサ9が設けられている。このセンサ9は、計測時においてセンサ9からの光がXYステージ11により遮られない場合の反射光量と、搬送時においてXYステージ11が移動してセンサ9からの光がXYステージ11により遮られた場合の反射光量の差異に基いて除振状態とロック状態とを判別することができる。
【0032】
上記した構成において、ワーク10を載せたXYステージ11が搬送位置に移動するときにセンサ9を横切る。このセンサ9は図示せぬコントローラとともに開閉窓8の開閉を制御するだけでなく、除振/ロック状態の制御も行っている。すなわち、コントローラは開閉窓8を開放するとともに除振機構をロック状態にする(図6(B))。この状態で、図示せぬ外部搬送ユニットとの間でワーク10の交換を行うことができる。ワーク10の交換後、XYステージ11は再び計測位置に移動する。XYステージ11がセンサ9の位置から離れるため開閉窓8は閉じられ、除振機構は除振状態となる(図6(A))。
【0033】
なお、本実施形態では外装カバー7と開閉窓8を用いて遮光性を考慮したが、遮光の必要がない場合には外装カバー7や開閉窓8は不要となる。また、ワーク10の交換は、XYステージ11を駆動して横方向から実施したが、上方にワーク交換用の開閉窓を設けてZステージとすることによっても同様の効果を得ることができる。
【0034】
本実施形態によれば、短時間でかつ小型の構成で容易に除振状態の解除・復帰を行うことが可能になる。また、搬送システムとの受け渡しが容易にでき、また、簡便に種々の機器に組み込むことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る計測装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る計測装置の構成を示す図である。
【図3】ロック機構6について説明するための図である。
【図4】第2実施形態の第1の変形例を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の第2の変形例を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の第2の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1 Zステージ
2 保持部
3 除振台
4 ベース
5 除振部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送し、所定の計測位置に位置決めする搬送動作を少なくとも含む非計測シーケンスと、前記ワークを計測する計測シーケンスとを交互に設定可能な計測装置において、除振手段と、前記除振手段を固定する固定手段と、を少なくとも有し、前記計測シーケンスにおいては前記除振手段を作動させ、前記非計測シーケンスにおいては前記固定手段を作動させることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記除振手段を保持するために上下方向に可動な保持部と、前記保持部を支持する複数の支柱とから構成されることを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【請求項3】
前記除振手段は、複数の溝または穴からなる勘合部を有し、前記固定手段は、前記複数の溝または穴に対応する複数の突起部を有し、前記勘合部と前記突起部とが嵌合して前記除振手段を一意に位置決めすることを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記除振手段は、ベースに設置された圧縮気体、磁力あるいは、バネあるいはゴム状弾性部材により支持された板状部材により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の計測装置。
【請求項5】
前記固定部材の突起部は互いに向き合って、前記除振手段を略水平方向に挟持することによって、前記除振手段の位置を一意に固定することを特徴とする請求項3に記載の計測装置。
【請求項6】
前記除振手段を覆うための、開閉窓を有する遮蔽カバーをさらに有し、前記開閉窓を開閉してワークを搬送することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の計測装置。
【請求項7】
ワークの移動を検出するための検出器をさらに有し、前記検出器の検出出力に基づいて前記開閉窓を開閉することを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記計測シーケンスにおいて前記開閉窓を閉じて前記除振手段を作動させ、前記非計測シーケンスにおいて前記開閉窓を開放して前記ワークを搬送あるいは前記固定手段を作動させることを特徴とする請求項6または7に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266761(P2006−266761A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82548(P2005−82548)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】