説明

計算機システム及びリモートレプリケーション方法

【課題】マスタLUからバックアップLUへのデータ転送量を低減することにある。
【解決手段】マスタ側ホスト計算機の要求に基づいて必要な処理を実行するマスタLU21a−1とマスタLUデータをリモートレプリケーションする第1のバックアップLU21b−1及び当該第1のバックアップLUのデータをレプリケーションする第2のバックアップLU21b−2とを備えた計算機システムにおいて、第1のバックアップLUが故障により閉塞後に回復した場合、第2のバックアップLU21b−2の全データを回復した第1のバックアップLUにコピーし、さらに第2のバックアップLUにコピーされていない第1の差分情報D1と第2の差分情報D2をマージ処理した分だけのデータを、マスタLU21a−1から第1のバックアップLU21b−1にリモートレプリケーション処理する計算機システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるストレージ装置のマスタ論理ユニットのデータをリモートサイトに設置される別のストレージ装置のバックアップ論理ユニットにリモートレプリケーション機能により複製する計算機システム及びリモートレプリケーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、外部記憶装置を備えた計算機システムでは、当該外部記憶装置のデータを適宜別の記憶装置にバックアップ処理することが行われている。当該外部記憶装置から別の記憶装置へのバックアップ処理時、リモートレプリケーション機能が使用される。ここで、リモートレプリケーション機能とは、あるストレージ装置のマスタ論理ユニット(以下、マスタLU(LU:ロジカルユニット)と呼ぶ)のある時点の内容を、別のストレージ装置のバックアップ論理ユニット(以下、バックアップLUと呼ぶ)に複製する機能である。この複製したデータ(スナップショットデータ)の主なる用途はデータのバックアップである。このようにあるストレージ装置とは十分に距離が離れたリモートサイトに別のストレージ装置をバックアップ用として設置する理由は、火災,地震,洪水等の災害時に重要なデータの消失を未然に回避するためであり、ひいては計算機システムの可用性を向上させることができる。マスタLUとは、ホスト計算機上で動作するアプリケーションの実行により、当該アプリケーションから要求されたデータの読み出し/書き込みが行われるLU(論理ディスク)をいう。バックアップLUとは、マスタLUのデータの複製を保持しておくLU(論理ディスク)をいう。リモートレプリケーション機能を実現し、かつ災害時にマスタ論理LUデータの消失を未然に回避するためには、マスタLUとは別のリモートサイトに当該マスタLUと同じ大きさのバックアップLUが用意される。
【0003】
ところで、従来、スナップショットデータの採取には、次の2種類の方法が用いられている。
第1のデータ採取方法は、スナップショットデータの採取が指示されるまで、マスタLUの内容とバックアップLUの内容を一致化させる同期化を行う。通常、計算機システムは常時稼動していることが多いので、例えば業務の終了後その他の理由に基づき、ホスト計算機からスナップショットデータの採取が指示されると、マスタLUからバックアップLUを切り離して同期を停止する。その後、ホスト計算機はマスタLUだけにデータの読み・書きを実行し、一方、スナップショットデータの採取指示により、マスタLUからバックアップLUにスナップショットデータが採取される。そして、同期停止後、マスタLUに書き込まれたデータとバックアップLUに採取されたスナップショットデータとの差分情報が管理され、例えば業務の開始などによる再同期の際には差分情報に基づくマスタLUの差分データをバックアップLUに書き込むことにより、マスタLUの内容全てをコピーする必要がなく、短時間に再同期を行うことが可能となる。
【0004】
第2のデータ採取方法は、スナップショットデータの採取指示を受けてから、マスタLUのデータとバックアップLUのデータとの同期を行う。この同期に先立ち、差分情報に基づいてマスタLUの差分データをバックアップLUに複製するが、このとき新たにマスタLUに書き込みが発生した場合、マスタLUの旧データの読み出し→バックアップLUへの旧データの書き込み→マスタLUへの新データの書き込みの順序で処理する必要がある。
【0005】
本発明の対象とする技術内容は、2種類のデータ採取方法のうち、第1のデータ採取方法に類する技術であると言える。この第1のデータ採取方法では、スナップショットデータが採取されたバックアップLUから、外部の例えば磁気テープにバックアップを行った後、バックアップLUの内容を再度マスタLUと一致させる再同期処理が必要となる。この再同期には、差分情報に基づいてマスタLUの差分データのみがバックアップLUにコピーされ、データ転送量を抑える仕組みになっている。
【0006】
ところで、第1のデータ採取方法において、バックアップLUのHDDが種々の要因により故障すると、バックアップLUのデータが利用できない,いわゆるLU閉塞状態が生ずる。この場合、バックアップLU閉塞後の再同期では、マスタLUからバックアップLUに全データをコピーする必要がある。しかし、リモートレプリケーションにおいては、マスタLUとバックアップとの間の回線容量が大きくないことから、マスタLUから大容量のデータを転送するには負担が大き過ぎる問題がある。
【0007】
そこで、リモートサイトに設置するストレージ装置にバックアップLUをマスタとする別のバックアップLUを追加し、バックアップすることが考えられる。つまり、リモートサイトのストレージ装置に複数のバックアップLUを設ける構成である。
【0008】
ところが、前述したようにマスタ側のストレージ装置から十分に離れたリモートサイトにバックアップ用のストレージ装置を設置し、当該バックアップ用ストレージ装置内に複数のバックアップLUを備えたシステムは既に提案されている(特許文献1)。
【0009】
このシステムは、常時はマスタとなるストレージ装置内のマスタLUとバックアップ用ストレージ装置内の第1のバックアップLUとが同期状態にあり、かつ当該第1のバックアップLUの内容をバックアップ用ストレージ装置内の第2のバックアップLUにコピー処理する。この状態において、何らかの要因によってメインLU内のファイルが消失した場合、第2のバックアップLUの内容をセカンダリホストにのせ、セカンダリホストで回復させたいファイルを第1のバックアップLUにコピーし、当該第1のバックアップLUをマスタとし、ストレージ装置内のマスタLUと再同期し、必要なファイルを回復処理するものである。
【特許文献1】特開2003−233518号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した特許文献1の技術は、何らかの要因によってマスタLU内のファイルが消失した場合であって、バックアップLUから回復させたいファイルだけを再同期によりコピーする処理である。従って、論理ディスク内のファイルレベル単位のデータの回復処理であり、それほどデータの転送量が問題にならない。
【0011】
しかし、マスタLUの全データが消失し、かつ全データを必要する場合、第2のバックアップLUから第1のバックアップLUに全データをコピーし、さらに第1のバックアップLUからマスタLUに全データをコピーする必要がある。一般に、リモートレプリケーションにおいては、マスタ側ストレージ装置とバックアップ側ストレージ装置との間の回線容量が大きくない。よって、再同期により全データをコピーする場合、前述したように大容量データの転送は大きな負担となる。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、バックアップLU閉塞後の回復時、マスタLUからバックアップLUへのデータ転送量を低減化し、伝送回線の負担を少なくする計算機システム及びリモートレプリケーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 上記課題を解決するために、本発明に係る計算機システムは、マスタ側ホスト計算機の要求に基づいて必要な処理を実行するマスタLUを有する第1のストレージ装置と、前記マスタLUのデータをリモートレプリケーションする第1のバックアップLU及び当該第1のバックアップLUをマスタとし、当該第1のバックアップLUのデータをレプリケーションする第2のバックアップLUを有するリモートサイトの第2のストレージ装置とを備えた計算機システムであって、
前記第2のストレージ装置は、前記マスタLUのデータを前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーションし、かつ当該第1のバックアップLUのデータを前記第2のバックアップLUにレプリケーションしているとき、当該第1のバックアップLUが故障により閉塞し、その後に回復した場合、前記第2のバックアップLUの全データを前記回復した第1のバックアップLUにコピーする全データコピー手段と、前記第1のバックアップLUの閉塞時点において当該第1のバックアップLUのデータ更新位置と前記第2のバックアップLUのデータコピー位置とから得られる第2の差分情報を前記第1のストレージ装置に送信し、その結果として当該第2のストレージ装置から返送されてくる前記マスタLUの補充データを前記第1のバックアップLUにコピー補充するデータ補充回復手段とを設け、
前記第1のストレージ装置は、前記第1のバックアップLUの回復に基づき、前記マスタLUのデータ更新位置と前記閉塞までに前記マスタLUから前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーションしたコピー位置とから第1の差分情報を算出し、前記第2のストレージ装置から送られてくる第2の差分情報に当該第1の差分情報をマージ処理した結果の情報に基づいて前記マスタLUから前記第1のバックアップLUへの前記補充データをリモートレプリケーションする両差分情報マージ処理手段を設けた構成である。
【0014】
従って、この発明は、以上のような構成とすることにより、第1のバックアップLUの修復・交換等によって回復した後、第2のバックアップLUの全データを第1のバックアップLUにコピーした後、さらに第2のストレージ装置側で求めた第2の差分情報と第1のストレージ装置で求めた第1の差分情報とをマージした情報に基づいてマスタLUから第1のバックアップLUにリモートレプリケーションしてデータ補充するので、当該マスタLUから第1のバックアップLUへのデータ転送量は、第2のバックアップLUの全データ分だけ削減でき、よってデータの転送量の低減化により、伝送回線の負担を少なくでき、かつ速やかに再同期に入ることが可能となる。
【0015】
なお、前記第1のストレージ装置としては、前記マスタLUと前記第1及び第2のバックアップLUとの同期処理を実行する同期処理手段と、この同期処理手段による同期処理の廃止に伴い、前記マスタLUのデータを前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーションするリモートレプリケーション処理手段と、前記第1のバックアップLUの故障による閉塞後に前記マスタ側ホスト計算機のアプリケーションの実行により前記マスタLUに対してデータの読み/書きを実行するデータ読み/書き実行手段と、この当該データの読み/書き実行時を含んで前記リモートレプリケーション処理時の前記マスタLUのデータ更新位置と前記閉塞までに前記マスタLUから前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーションしたコピー位置とを記録する履歴データ記録手段とを新たに追加rすれば、第1の差分情報を算出可能とすることができる。
【0016】
また、前記第2のストレージ装置としては、前記リモートレプリケーション処理時に前記第1のバックアップLUのデータを前記第2のバックアップLUにレプリケーションするレプリケーション処理手段と、このレプリケーション処理時に前記第1のバックアップLUのデータ更新位置と前記第2のバックアップLUのデータコピー位置とを記録する履歴データ記録手段とを新たに追加すれば、第2の差分情報を算出可能とすることができる。
【0017】
(2) また本発明は、マスタ側ホスト計算機の要求に基づいて必要な処理を実行するマスタLUを有する第1のストレージ装置と、前記マスタLUのデータをリモートレプリケーションする第1のバックアップLU及び当該第1のバックアップLUのデータをレプリケーションする第2のバックアップLUを有するリモートサイトの第2のストレージ装置とを備えた計算機システムにおいて、
前記マスタLUのデータを前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーションし、かつ当該第1のバックアップLUのデータを前記第2のバックアップLUにレプリケーションしているとき、当該第1のバックアップLUが故障により閉塞し、その後に回復した場合、前記第2のバックアップLUの全データを前記回復した第1のバックアップLUにコピーする全データコピーステップと、前記第1のバックアップLUの閉塞時点において当該第1のバックアップLUのデータ更新位置と前記第2のバックアップLUのデータコピー位置とから得られる第2の差分情報を前記第1のストレージ装置に送信するステップと、前記第1のバックアップLUの回復に基づき、前記マスタLUのデータ更新位置と前記閉塞までに前記マスタLUから前記第1のバックアップLUにリモートレプリケーション処理したコピー位置との第1の差分情報を算出し、前記第2のストレージ装置から送られてくる第2の差分情報に当該第1の差分情報をマージ処理した結果の情報に基づいて前記マスタLUから前記第1のバックアップLUへの前記補充データをリモートレプリケーションするステップと、このリモートレプリケーションによって送られてくる前記マスタLUの補充データを前記第1のバックアップLUにコピー補充するステップとを有するリモートレプリケーション方法である。
【0018】
このリモートレプリケーション方法においても、前記(1)の計算機システムと同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1のバックアップLUの故障による閉塞後に回復した時、第2のバックアップLUの全データをコピーするので、マスタLUからバックアップLUへのデータ転送量を低減でき、伝送回線の負担を軽減することができる計算機システム及びリモートレプリケーション方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る計算機システムの一実施の形態を示す構成図である。この計算機システムは、地震,火災,水害等の災害によるデータの消失を未然に回避する観点から、リモートサイトに各種のアプリケーションを実行するマスタ側ホスト計算機10a及びバックアップ側ホスト計算機10bが設置されている。これらホスト計算機10a,10bにはそれぞれ外部記憶装置としてのストレージ装置20a,20bが接続されている。両ストレージ装置20a,20bは伝送ライン30で接続されている。
【0021】
マスタ側ホスト計算機10aに接続されるストレージ装置20aは、ディスク装置21aとストレージコントローラ22aとで構成されている。ディスク装置21aは、例えば1台の論理ディスク装置21a−1で構成される。論理ディスク装置21a−1は、ディスク記憶装置、例えばハードディスクドライブ(HDD)を用いて構成される。論理ディスク装置21a−1には論理ユニット(ロジカルユニット)が割り当てられる。論理ディスク装置21a−1に割り当てられた論理ユニットは、マスタ側ホスト計算機10aがアプリケーションを実行することにより、当該アプリケーションに従ってデータの読み出し/書き込みが行われるマスタ論理ユニット(以下、マスタLUと呼ぶ)として用いられる。従って、以下、論理ディスク装置21a−1をマスタLUと称する。このマスタLUはリモートレプリケーションのマスタLUとも言える。
【0022】
一方、バックアップ側ホスト計算機10bに接続されるストレージ装置20bは、ストレージ装置20aと同様に、ディスク装置21bとストレージコントローラ22bとによって構成される。ディスク装置21bは、例えば2台の論理ディスク装置21b−1と論理ディスク装置21b−2とで構成される。論理ディスク装置21b−1に割り当てられる論理ユニットは、マスタLU21a−1のデータをリモートレプリケーションにより複製し保持するバックアップ論理ユニット(以下、第1のバックアップLUと呼ぶ)として用いられる。従って、第1のバックアップLUは、リモートレプリケーションのバックアップLUと言える。
【0023】
また、論理ディスク装置21b−2に割り当てられる論理ユニットは、第1のバックアップLUをマスタLUとし、当該第1のバックアップLUのデータをレプリケーションにより複製し保持するバックアップ論理ユニット(以下、第2のバックアップLUと呼ぶ)である。
【0024】
次に、マスタ側のストレージコントローラ22aは、マスタ側ホスト計算機10aの要求に応じてマスタLU21a−1に対するアクセス制御を行う。このストレージコントローラ22aは、当該コントローラ22aの主制御部を構成するマイクロプロセッサ23aと、このマイクロプロセッサ23aが実行する制御プログラムであるファームウェア24aと、差分テーブル25aとが設けられている。なお、マイクロプロセッサ23aにはファームウェア24aに従ってマスタLU21a−1からバックアップ側ホスト計算機10bに接続されるストレージ装置20bにリモートレプリケーションによりバックアップ(スナップショット採取)するためのバックアップタスクを含んでいる。同図において、27a,28aはポートである。
【0025】
差分テーブル25aは、マスタLU21a−1の各論理ブロックアドレス領域に対応付けられたビットで構成されるビットマップ形式のテーブルである。差分テーブル25aは、マスタLU21a−1のみにデータ更新された際の論理ブロックアドレス領域に対応付けられたビットをフラグONとする。
【0026】
一方、バックアップ側のストレージコントローラ22bは、マスタ側ホスト計算機10a及びバックアップ側ホスト計算機10bの要求に応じてバックアップLU21b−1,バックアップLU21b−2に対するアクセス制御を行う。このストレージコントローラ22bは、当該コントローラ22bの主制御部を構成するマイクロプロセッサ23bと、このマイクロプロセッサ23bが実行する制御プログラムであるファームウェア24bと、差分テーブル25bとが設けられている。なお、マイクロプロセッサ23bにはファームウェア24bに従って第1のバックアップLU21b−1から第2のバックアップLU21b−2にレプリケーションによりバックアップ(スナップショット採取)するためのバックアップタスクを含んでいる。27b,28bはポートである。
【0027】
差分テーブル25bにおいては、第1のバックアップLU21b−1の各論理ブロックアドレス領域に対応付けられたビットで構成されるビットマップ形式のテーブルで構成される。この差分テーブル25bは、第1のバックアップLU21b−1のデータ更新された論理ブロックアドレス領域のデータ更新位置に対応付けられたテーブルビットをフラグONとする。
【0028】
前記マスタ側のストレージコントローラ22aは、機能的には、図2に示すように構成されている。
すなわち、ストレージコントローラ22aは、マスタ側ホスト計算機10aによるアプリケーションの要求に基づき、マイクロプロセッサ23aがファームウェア24aに従ってマスタLU21a−1と第1及び第2のバックアップLU21b−1,21b−2との同期処理を実行する同期処理手段221aと、、第1のバックアップLU21b−1が故障による閉塞後にマスタ側ホスト計算機10bのアプリケーションの実行によりマスタLUにデータの読み/書きを実行するデータ読み/書き実行手段222aと、前述したマスタLU21a−1から第1のバックアップLU21b−1へのリモートレプリケーション処理時及び第1のバックアップLU21b−1の閉塞後にマスタ側ホスト計算機10bからマスタLU21a−1に書き込まれるデータに基づき、差分テーブル25aにマスタLU21a−1のデータ更新位置をビットフラグONにより記録する履歴データ記録手段223aと、両差分情報マージ処理手段224aとが設けられている。従って、履歴データ記録手段223aによる記録に基づき、差分テーブル24aのビットフラグ位置から第1の差分情報を算出可能となる。前記両差分情報マージ処理手段224aは、第1のバックアップLU21b−1の回復後にバックアップ側ストレージ装置20bから送信されてくる後記する第2の差分情報とをマージし、このマージ処理した第1及び第2の差分情報に従って、マスタLU21a−1のデータを第1のバックアップLU21bにリモートレプリケーションする機能をもっている。
【0029】
一方、前記バックアップ側のストレージコントローラ22bは、機能的には、図3に示すように構成されている。
バックアップ側ホスト計算機10bによるアプリケーションの要求に基づき、マイクロプロセッサ23bがファームウェア24bに従ってマスタLU21b−1と第1及び第2のバックアップLU21b−1,21b−2との同期処理を実行する同期処理手段221bと、レプリケーション処理時の第1のバックアップLU21b−1に書き込まれるデータに基づき、差分テーブル25bに第1のバックアップLU21b−1のデータ更新位置をビットフラグONにより記録し、またコピー完了テーブル26bに第2のバックアップLU21b−2のコピー位置とを記録する履歴データ記録手段222bと、第1のバックアップLU21b-1の修復又は交換によって回復したとき、第2のバックアップLU21b-2の全データを第1のバックアップLU21b-1にコピーする全データコピー手段223bと、データ補充回復手段224bとが設けられている。データ補充回復手段224bは、差分テーブル25bのデータ更新位置とコピー完了テーブル26bのコピー位置とから第2の差分情報を算出し、マスタ側のストレージコントローラ22aに送信し、当該ストレージコントローラ22aにて第2の差分情報と第1の差分情報とをマージした差分情報に基づき、マスタLU21a−1からリモートレプリケーションされてくるデータを第1のバックアップLUに補充する機能をもっている。
【0030】
次に、以上のような計算機システムの動作及び本発明に係るリモートレプリケーション方法について図4ないし図7を参照して説明する。
【0031】
(1) 同期処理について。
【0032】
マスタ側ホスト計算機10bは、アプリケーションの実行により、ストレージ装置20a,20bのマイクロプロセッサ23a,23bに対し、マスタLU21a−1の内容とバックアップLU21b−1,21b−2の内容とを一致させる2重化制御、つまり同期化処理を要求する。ここで、ストレージ装置20aは、図4に示す同期処理を実行する(S1)。また、バックアップ側ホスト計算機10bにおいても、ストレージ装置20aにおいても、マイクロプロセッサ23bを介して同期処理の要求を受け、図5(a)に示すように当該マイクロプロセッサ23bに同期処理の指示を出し、同期化処理を実行する(S21)。これらステップS1,S21は同期処理手段221a、同期処理ステップに相当する。同期処理は、マスタ側ホスト計算機10aからディスク装置21a,21bにデータの書き込みに対し、マスタLU21a−1へのデータ書き込み→第1のバックアップLU21b−1へのデータ書き込み→第2のバックアップLU21b−2へのデータ書き込みを実行する。書き込みデータは、各LU21a−1,LU21b−1,LU21b−2の同一の論理ブロックアドレスに書き込む。そして、第2のバックアップLU21b−2へのデータ書き込みが完了すると、マイクロプロセッサ23b及び23aを通してマスタ側ホスト計算機10aに書き込み完了データが送られる。この同期処理は、システム管理者の業務その他の要望に基づき、任意の時間継続する。図6の(イ)は同期処理状態を表している。しかし、本発明においては、同期処理は必ずしも必須要件ではなく、マスタLU21a−1とバックアップLU21b−1,21b−2と非同期処理の関係であっても構わない。
【0033】
(2) 同期処理廃止によるレプリケーション処理について。
【0034】
マスタ側ホスト計算機10aは、システム管理者の業務その他の要望に基づくアプリケーションの実行により、スナップシュットデータを採取するための指示を出すと、マイクロプロセッサ23aは、同期処理廃止と判断し、スナップシュットデータの採取が行われる(S2)。マイクロプロセッサ23aは、その採取指示に基づき、伝送ライン30を通してバックアップ側ホスト計算機10bにスナップシュット採取指示データを送信する(S3)。
【0035】
一方、バックアップ側ホスト計算機10bは、スナップシュット採取指示データを受けると、第2のバックアップLU21b−2の切り離し指示と判断し(S22)、マイクロプロセッサ23bを介して第1のバックアップLU21b−1から第2のバックアップLU21b−2を切り離すための処理を実行する(図6の(ロ)参照)。
【0036】
一方、バックアップ側ホスト計算機10bのストレージコントローラ22bは、第1のバックアップLU21b−1にデータ書き込みを実行する。(S23)。このとき、ストレージコントローラ22bは、リモートレプリケーションによって第1のバックアップLU21−1のみにデータ更新された際の論理ブロックアドレス領域と対応関係にある差分テーブル25bのビットをフラグONとする(S24)。
【0037】
(3) 第1のバックアップLU21b−1の閉塞について。
【0038】
ところで、以上のようにリモートレプリケーション処理及びリモートレプリケーション処理を実行しているとき、図6(ハ)に示すように第1のバックアップLU21b−1が障害によって閉塞すると、当該第1のバックアップLU21b−1のデータを利用できなくなる。ストレージコントローラ22bがLU21b−1閉塞と判断すると(S25)、レプリケーション処理を終了させるとともに、伝送ライン30を通してマスタ側のストレージコントローラ22aにLU閉塞を通知し、処理を終了する。このとき、差分テーブル25bはLU21b−1閉塞時のビットON状態を保持する。ここで、メンテナンス要員による第1のバックアップLUの修復や交換等の復旧作業が行われる。
【0039】
一方、マスタ側ホスト計算機10aは、マスタLU21a−1へのデータの読み出し/書き込みを継続する(S4:データ読み書き実行手段223aに相当する)。その結果、ストレージコントローラ22aは、マスタLU21a−1に対するデータの更新が行われるたびに、そのデータの書き込まれたマスタLU21a−1の論理ブロックアドレス領域と対応関係にある差分テーブル26aのビットをフラグONしていく(S5)。コピー完了テーブル27aは、マスタLU21a−1へのデータの読み出し/書き込みに対し、LU21b−1閉塞時のビットON状態を保持している。ステップS9は履歴データ記録手段224aに相当する。
【0040】
(4) LU21b−1へのデータ復旧処理について。
【0041】
ストレージ装置20bの第1のバックアップLU21b−1が修復又は交換によって回復すると、バックアップ側ホスト計算機10bは、例えば図6(b)に示すような処理を実行する。すなわち、バックアップ側ホスト計算機10bは動作開始をストレージコントローラ22bに要求する。ストレージコントローラ22bは、ファームウェア24bの制御プログラムに従い、第1のバックアップLU21b−1が正常に利用できるか否かを判断し(S31)、利用可能と判断したとき、LU回復データを伝送ライン30を通してマスタ側ホスト計算機10aに通知する(S32)。しかる後、ストレージコントローラ22bは、図6の(ニ)に示すように、第2のバックアップLU21b−2に格納されている全データを第1のバックアップLU21b−1にコピーする(S33:全データコピー手段223b、全データコピーステップに相当する)。従って、第1のバックアップLU21b−1へのデータ回復に際し、第2のバックアップLU21b−2の全データ分は伝送ライン30を使用することなく内部コピー処理でデータの一部を回復させることができる。
【0042】
また、ストレージコントローラ22bは、差分テーブル25bのビットフラグ位置とコピー完了テーブル26bとのビットフラグ位置(コピー完了位置)とから差分情報D2を算出する(S34)。この差分情報D2とは、同期処理廃止に基づいて第1のバックアップLU21b−1から第2のバックアップLU21b−2を切り離した後からLU21B-1閉塞までにおける第1のバックアップLU21b−1のデータ書き込み更新と第2のバックアップLU21b−2へのデータコピー完了までの論理ブロックアドレス領域と言える。例えばビットマップテーブルで表現すれば、図7の(ヘ)に示すようにビットマップテーブルの黒塗りビットがフラグONで表すことができる。
【0043】
そこで、ストレージコントローラ22bは、差分情報D2を算出すると、当該差分情報D2を伝送ライン30を通してストレージコントローラ22aに送信する(S35:差分情報送信ステップに相当する)。
【0044】
一方、ストレージコントローラ22aは、ストレージコントローラ22bからのLU回復データを受けて、第1のバックアップLU21b−1の再同期化したかを判断した後(S6)、同じくストレージコントローラ22bから差分情報D2が送られてくるのを待つ(S7)。ここで、ストレージコントローラ22aは、差分情報D2を受け取ると、差分テーブル25aのビットフラグ位置のビットフラグ位置から差分情報D1を算出する(S8)。この差分情報D1とは、例えばビットマップテーブルで表現すれば、図7の(ト)に示すようにビットマップテーブルの黒塗りビットがフラグONで表すことができる。
【0045】
ストレージコントローラ22aは、このようにして差分情報D2及びD1を取得すると、これら差分情報D2及びD1をマージ処理した後(S9)、同期処理を行う(S10)。
【0046】
バックアップ側のストレージコントローラ22bは、図6の(ホ)に示すようにマスタLU21a−1の差分情報(D2+D1)に対応するデータを補充データとして第1のバックアップLU21b−1にコピーする(S36:データ補充ステップに相当する)。
【0047】
従って、第1のバックアップLU21b−1には、図7の(ヘ)と(ト)とのビットフラグを足し合わせた分のデータ(チ)がコピーされる。つまり、第1のバックアップLU21b−1は、マスタLU21a−1の全部のデータがコピーされたこととなり、再同期処理が可能となる。
【0048】
従って、以上のような実施の形態によれば、第1のバックアップLU21b−1が障害により閉塞した後、修復又は交換により回復したとき、第2のバックアップLU21b−2に既にコピーされている全データを回復した、第1のバックアップLU21b−1にコピーし、さらに第2のバックアップLU21b−2にコピーされていないが、マスタLU21a−1に書き込まれているデータについては、第1の差分情報D1と第2の差分情報D2をマージ処理した分だけのデータを、マスタLU21a−1から第1のバックアップLU21b−1にリモートレプリケーション処理すればよいので、ストレージコントローラ22aからのデータ転送量を第2のバックアップLU21b−2に既にコピーされている全データ分低減することができる。よって、伝送ライン30の負担を軽減でき、伝送ライン30を効率よく使用することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、各実施の形態は組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る計算機システムの一実施の形態を示す構成図。
【図2】マスタ側のストレージコントローラの一例を示す機能ブロック図。
【図3】バックアップ側のストレージコントローラの一例を示す機能ブロック図。
【図4】マスタ側のストレージコントローラの動作及び本発明に係るリモートレプリケーション方法を説明する図。
【図5】バックアップ側のストレージコントローラの動作及び本発明に係るリモートレプリケーション方法を説明する図。
【図6】本発明に係る計算機システム及びリモートレプリケーション方法の変化履歴を示す図。
【図7】第1の差分情報D1と第2の差分情報D2とをマージ処理した結果の模擬的なビットマップのデータ補充例を説明する図。
【符号の説明】
【0051】
10a…マスタ側ホスト計算機、10b…バックアップ側ホスト計算機、21a,21b…ディスク装置、21a−1…マスタLU、21b−1,21b−2…バックアップLU、22a,22b…ストレージコントローラ、23a,23b…マイクロプロセッサ、25a,25b…差分テーブル、221a…同期処理手段、222a…データ読み書き実行手段、223a…履歴データ記録手段、224a…両差分情報マージ処理手段、221b…同期処理手段、222b…履歴データ記録手段、223b…全データコピー手段、224b…データ補充回復手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ側ホスト計算機の要求に基づいて必要な処理を実行するマスタ論理ユニットを有する第1のストレージ装置と、前記マスタ論理ユニットのデータをリモートレプリケーションする第1のバックアップ論理ユニット及び当該第1のバックアップ論理ユニットをマスタとし、当該第1のバックアップ論理ユニットのデータをレプリケーションする第2のバックアップ論理ユニットを有するリモートサイトの第2のストレージ装置とを備えた計算機システムにおいて、
前記第2のストレージ装置は、
前記マスタ論理ユニットのデータを前記第1のバックアップ論理ユニットにリモートレプリケーションし、かつ当該第1のバックアップ論理ユニットのデータを前記第2のバックアップ論理ユニットにレプリケーションしているとき、当該第1のバックアップ論理ユニットが故障により閉塞し、その後に回復した場合、前記第2のバックアップ論理ユニットの全データを前記回復した第1のバックアップ論理ユニットにコピーする全データコピー手段と、前記第1のバックアップ論理ユニットの閉塞時点において当該第1のバックアップ論理ユニットのデータ更新位置から得られる第2の差分情報を前記第1のストレージ装置に送信し、その結果として当該第1のストレージ装置から返送されてくる前記マスタ論理ユニットの補充データを前記第1のバックアップ論理ユニットにコピー補充するデータ補充回復手段とを設け、
前記第1のストレージ装置は、
前記第1のバックアップ論理ユニットの回復に基づき、前記マスタ論理ユニットのデータ更新位置から第1の差分情報を算出し、前記第2のストレージ装置から送られてくる第2の差分情報に当該第1の差分情報をマージ処理した結果の情報に基づいて前記マスタ論理ユニットから前記第1のバックアップ論理ユニットへの前記補充データをリモートレプリケーションする両差分情報マージ処理手段を設けたことを特徴とする計算機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計算機システムにおいて、
前記第1のストレージ装置は、
前記マスタ論理ユニットと前記第1のバックアップ論理ユニットとの同期処理を実行する同期処理手段と、前記第1のバックアップ論理ユニットの故障による閉塞後に前記マスタ側ホスト計算機のアプリケーションの実行により前記マスタ論理ユニットに対してデータの読み/書きを実行するデータ読み/書き実行手段と、この当該データの読み/書き実行時の前記マスタ論理ユニットのデータ更新位置を記録する履歴データ記録手段とを設け、前記第1の差分情報を算出可能とすることを特徴とする計算機システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の計算機システムにおいて、
前記第2のストレージ装置は、
前記第1のバックアップ論理ユニットと前記第2のバックアップ論理ユニットとの同期処理を実行する同期処理手段と、この同期処理手段の同期処理を廃止してから、前記マスタ論理ユニットと前記第1のバックアップ論理ユニットの間の同期処理に伴う、前記第1のバックアップ論理ユニットのデータ更新位置を記録する履歴データ記録手段とを設け、前記第2の差分情報を算出可能とすることを特徴とする計算機システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の計算機システムにおいて、
前記第1のストレージ装置の両差分情報マージ処理手段は、
前記第1のバックアップ論理ユニットの閉塞後に当該第1のバックアップ論理ユニットの回復を判断する論理ユニット回復判断手段と、この判断手段によって当該第1のバックアップ論理ユニットが回復したと判断した場合、前記第1のバックアップ論理ユニットの閉塞後に前記履歴データ記録手段によって記録された前記マスタ側ホスト計算機からデータ更新された更新位置から第2の差分情報を算出する差分情報算出手段と、前記第1のストレージ装置から第2の差分情報を受け取ると、当該第2の差分情報に前記第1の差分情報をマージするマージ処理手段と、このマージ処理手段によってマージ処理された結果の情報に基づいて前記マスタ論理ユニットから前記第1のバックアップ論理ユニットへの前記補充データをリモートレプリケーションする手段とを有することを特徴とする計算機システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項3に記載の計算機システムにおいて、
前記第2のストレージ装置のデータ補充回復手段は、
前記第1のバックアップ論理ユニットが障害により閉塞した場合、前記履歴データ記録手段によって記録された前記マスタ論理ユニットから当該第1のバックアップ論理ユニットに同期処理によりデータ更新された更新位置から第2の差分情報を算出する差分情報算出手段と、前記第1のバックアップ論理ユニットが回復した場合、論理ユニット回復データを送信した後、前記第2の差分情報を送信する手段と、この手段により当該第2の差分情報を前記第1のストレージ装置に送信した後、マージ処理された結果の情報に基づいて前記マスタ論理ユニットからリモートレプリケーションされてくる前記補充データを前記第1のバックアップ論理ユニットにコピーする手段を設けたことを特徴とする計算機システム。
【請求項6】
マスタ側ホスト計算機の要求に基づいて必要な処理を実行するマスタ論理ユニットを有する第1のストレージ装置と、前記マスタ論理ユニットのデータをリモートレプリケーションする第1のバックアップ論理ユニット及び当該第1のバックアップ論理ユニットのデータをレプリケーションする第2のバックアップ論理ユニットを有するリモートサイトの第2のストレージ装置とを備えた計算機システムにおいて、
前記マスタ論理ユニットのデータを前記第1のバックアップ論理ユニットにリモートレプリケーションし、かつ当該第1のバックアップ論理ユニットのデータを前記第2のバックアップ論理ユニットにレプリケーションしているとき、当該第1のバックアップ論理ユニットが故障により閉塞し、その後に回復した場合、前記第2のバックアップ論理ユニットの全データを前記回復した第1のバックアップ論理ユニットにコピーする全データコピーステップと、前記第1のバックアップ論理ユニットの閉塞時点において当該第1のバックアップ論理ユニットのデータ更新位置から得られる第2の差分情報を前記第2のストレージ装置に送信するステップと、前記第1のバックアップ論理ユニットの回復に基づき、前記マスタ論理ユニットのデータ更新位置から得られる第1の差分情報を算出し、前記第2のストレージ装置から送られてくる第2の差分情報に当該第1の差分情報をマージ処理した結果の情報に基づいて前記マスタ論理ユニットから前記第1のバックアップ論理ユニットへの前記補充データをリモートレプリケーションするステップと、このリモートレプリケーションによって送られてくる前記マスタ論理ユニットの補充データを前記第1のバックアップ論理ユニットにコピー補充するステップとを有することを特徴とするリモートレプリケーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−106883(P2006−106883A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289158(P2004−289158)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】