説明

計量容器および使い捨て医療用品セット

【課題】樹脂により形成された計量容器の側壁部の強度を向上するとともに計量容器内に挿入された器具が側壁部の内側に引っかかることを防止する。
【解決手段】使い捨て医療用品セットに含まれる医療用ビーカーである計量容器1では、側壁部11の下段部112の内側面である第2内側面1121の上端の径が、上段部111の内側面である第1内側面1111の下端の径よりも小さくされ、接続面1131により第1内側面1111の下端と第2内側面1121の上端とが接続されることにより、側壁部11の内側面1101に段差が形成される。これにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度が向上される。また、計量容器1では、下段部112の第2内側面1121が略円筒面状とされ、第2内側面1121上に、中心軸J1に向かって突出する凸部が設けられない。その結果、計量容器1内に挿入された器具が側壁部11の内側に引っかかることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を計量する樹脂により形成された計量容器、および、当該計量容器を備える使い捨て医療用品セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手術室や病室等の医療施設内において医療処置が行われる際には、薬品や生理食塩水等の液体の計量にビーカー等の計量容器が利用されており、感染防止等の衛生管理の質の向上の観点から、熱可塑性樹脂製の使い捨てビーカーが利用されることが多い。
【0003】
近年、医療処置前に行われる医療用品の準備作業の効率化、および、これらの医療用品の在庫管理の簡素化等のため、医療処置の内容に合わせて用意された複数の医療用品を梱包した使い捨て医療用品セットが使用されており、非特許文献1に示されるように、上記使い捨てビーカーが使い捨て医療用品セットに含まれる場合もある。このような使い捨て医療用品セットでは、使い捨てビーカーをトレイ上に横向きに載置して(すなわち、使い捨てビーカーの側壁部がトレイ底面に接触するように載置して)梱包することにより、当該使い捨て医療用品セットを薄型化することが行われている。
【非特許文献1】”セットパック製品(麻酔セット)”、[online]、川本産業株式会社、3頁、[平成19年7月19日検索]、インターネット<http://www.kawamoto-sangyo.co.jp/products/pdf/syujyutu_p01.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような使い捨て医療用品セットの搬送および保管は、通常、複数の使い捨て医療用品セットが積み重ねられた状態で行われるため、下側の使い捨て医療用品セット内において、樹脂製の使い捨てビーカーに対して側壁部をトレイに向けて押圧する荷重が加えられ、使い捨てビーカーの側壁部が塑性変形してしまうおそれがある。また、複数の使い捨て医療用品セットが積み重ねられた状態で加熱されたガスの付与による滅菌処理が行われる場合もあり、荷重と熱とにより使い捨てビーカーの側壁部が大きく塑性変形する可能性もある。
【0005】
このような問題の対策として、例えば、使い捨てビーカーの側壁部の内側面に、上下方向に伸びるとともに周方向に配列された複数の薄板状の補強部材を設けることにより側壁部の強度を向上することが考えられる。しかしながら、医療処置が行われる際には、使い捨てビーカー内の生理食塩水等に手術用の器具等の一部を浸しつつ、当該器具を使い捨てビーカー内で回転させることにより器具の洗浄等が行われることがあり、器具が側壁部の内側面から突出する補強部材に引っかかって使い捨てビーカーが倒れてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、樹脂により形成された計量容器の側壁部の強度を向上することを目的としており、また、計量容器内に挿入された器具が側壁部の内側に引っかかることを防止することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液体を計量する樹脂により形成された計量容器であって、略円筒状の側壁部と、前記側壁部の下端を閉塞する略円板状の底部とを備え、前記側壁部の内側面が、略円筒面状の第1内側面と、前記第1内側面の下側に設けられるとともに上端の径が前記第1内側面の下端の径よりも小さい略円筒面状の第2内側面と、前記第1内側面の前記下端と前記第2内側面の前記上端とを接続して段差を形成する円環状の接続面とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の計量容器であって、前記第1内側面を有する前記側壁部の上段部の上端が前記側壁部の上端であり、前記第2内側面を有する前記側壁部の下段部の下端が前記側壁部の下端である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の計量容器であって、前記下段部の上端部が、前記上段部の下端部よりも厚い。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の計量容器であって、前記下段部の全体が、前記上段部の前記下端部よりも厚い。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の計量容器であって、前記下段部の外側面に沿って伸びるリブ群をさらに備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の計量容器であって、前記リブ群が、前記下段部の前記外側面に沿って上下方向に伸びるとともに周方向に配列された複数のリブである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2ないし6のいずれかに記載の計量容器であって、前記下段部の上下方向の高さが、前記側壁部の前記上下方向の高さの10%以上45%以下である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の計量容器であって、前記側壁部に容積目盛が設けられており、前記下段部の容積が、前記容積目盛の最大値の10%、20%、25%、30%、33%、40%および50%のいずれかに等しい。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の計量容器であって、前記底部の下面の外周縁に沿うとともに前記底部から下側に突出する略円環状の高台をさらに備え、前記高台の少なくとも下端部が周方向において隙間を有する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の計量容器であって、前記側壁部および前記底部が熱可塑性樹脂により形成されている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の計量容器であって、医療にて使用される。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の計量容器であって、使い捨て医療用品セットに含まれる。
【0019】
請求項13に記載の発明は、使い捨て医療用品セットであって、請求項12に記載の計量容器と、前記計量容器と同形状のもう1つの計量容器とを備え、前記計量容器の前記底部の外径が前記もう1つの計量容器の前記接続面の内径よりも大きく、かつ、外径よりも小さく、前記計量容器が前記もう1つの計量容器内に挿入されている。
【0020】
請求項14に記載の発明は、使い捨て医療用品セットであって、請求項12に記載の計量容器と、略円筒状の側壁部、および、前記側壁部の下端を閉塞する略円板状の底部を備えるもう1つの計量容器とを備え、前記計量容器の前記第2内側面と前記もう1つの計量容器の外側面との間に僅かな隙間を設けつつ前記もう1つの計量容器が前記計量容器内に挿入されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、計量容器の側壁部の強度を向上することができるるとともに、計量容器内に挿入された物体が側壁部の内側に引っかかることを防止することができる。また、請求項3ないし6の発明では、側壁部の強度をより向上することができる。さらに、請求項8の発明では、計量容器内の液体のおよその量を容易に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る計量容器1を示す斜視図である。計量容器1は、医療処置において薬品や生理食塩水等の液体の計量に使用される医療用ビーカーであり、図2に示すように、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療用品のセットである使い捨て医療用品セット6に含まれている。
【0023】
図2に示す使い捨て医療用品セット6は、同形状の複数(本実施の形態では2つ)の計量容器1、複数のシリンジ62、ドレープ63、および、これらの構成を収容するとともに平面視において略矩形状のトレイ61を備え、計量容器1、シリンジ62、ドレープ63およびトレイ61が図示省略の包装部材により梱包されている。使い捨て医療用品セット6では、1つの計量容器1がもう1つの計量容器1内に挿入されており、これら2つの計量容器1が横向きに(すなわち、図1に示す側壁部11をトレイ61の底面に接触させつつ)トレイ61上に載置される。なお、使い捨て医療用品セット6では、図2に示すシリンジ62やドレープ63に代えて、あるいは、シリンジ62等に加えて、他の様々な医療用品を含んでいてもよい。
【0024】
図1に示すように、計量容器1は、所定の中心軸J1を中心とする略円筒状の側壁部11、側壁部11の下端を閉塞する円板状の底部12、および、底部12の下面の外周縁に沿うとともに底部12から中心軸J1に平行な方向(以下、「中心軸J1方向」という。)の下側に突出する略円環状の高台13を備える。側壁部11の上端である開口縁114には注ぎ口14が設けられ、高台13の下端部には複数の切り欠き131が設けられる。切り欠き131は、高台13の下端から高台13と底部12との境界まで設けられていてもよい。換言すれば、高台13の少なくとも下端部が、中心軸J1を中心とする周方向において隙間を有する。
【0025】
計量容器1の側壁部11、底部12、高台13および注ぎ口14は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等、耐薬品性が高い熱可塑性樹脂により形成されており、本実施の形態では、ポリプロピレンを射出成型することにより、側壁部11、底部12、高台13および注ぎ口14が形成される。
【0026】
図3は、中心軸J1を含む断面にて計量容器1を切断した縦断面図である。図1および図3に示すように、側壁部11の内側面1101には、側壁部11の内径が下方に向かって急激に減少する段差が設けられており、以下の説明では、側壁部11の当該段差よりも上側(すなわち、開口縁114側)の部位、および、下側(すなわち、底部12側)の部位をそれぞれ、「上段部111」および「下段部112」と呼ぶ。上段部111の上端は、側壁部11の上端である開口縁114となっており、下段部112の下端は、側壁部11の底部12に接続される下端となっている。
【0027】
本実施の形態では、側壁部11、上段部111および下段部112の上下方向(すなわち、中心軸J1方向)の高さはそれぞれ、100mm、70mmおよび30mmとされ、下段部112の高さは側壁部11の高さの30%である。計量容器1では、下段部112の上下方向の高さは、側壁部11の上下方向の高さの10%以上45%以下とされる。
【0028】
側壁部11の内側面1101は、上段部111の内側面である略円筒面状の第1内側面1111下段部112の内側面である略円筒面状の第2内側面1121、および、第1内側面1111の中心軸J1方向の下端と第2内側面1121の中心軸J1方向の上端とを接続して段差を形成する円環状の接続面1131を備える。接続面1131は、下段部112の上端面の一部であり、中心軸J1に垂直な円環面となっている。
【0029】
第1内側面1111は、注ぎ口14が形成される部位を除き、中心軸J1を中心としておよそ中心軸J1方向を向く直線を回転した場合に形成される回転面(包絡面)であり、第1内側面1111の径は、下端から上端に向かって(すなわち、第1内側面1111と接続面1131との境界から開口縁114に向かって)漸次増大する。第1内側面1111の下側に設けられる第2内側面1121も、第1内側面1111と同様に、中心軸J1を中心としておよそ中心軸J1方向を向く直線を回転した場合に形成される回転面状であり、第2内側面1121の径も、下端から上端に向かって(すなわち、第2内側面1121と底部12との境界から第2内側面1121と接続面1131との境界に向かって)漸次増大する。本実施の形態では、第1内側面1111の上端の径である開口縁114の内径(ただし、注ぎ口14が設けられている部位を除く。以下、特に断りがない限り同様である。)は105mmとされ、第2内側面1121の下端の径は85mmとされる。また、第2内側面1121の上端の径は、第1内側面1111の下端の径よりも8mm小さくされる。
【0030】
図3に示すように、計量容器1では、下段部112の全体が上段部111の下端部(すなわち、上段部111の下端近傍の部位)よりも厚く、本実施の形態では、下段部112の厚さ、および、上段部111の下端部の厚さはそれぞれ、5mmおよび1mmとされる。上段部111の上部には、上段部111の下端部よりも厚い上部厚肉部1115が、中心軸J1を中心とする全周に亘って設けられており、上段部111の外側面である第1外側面1112では、上部厚肉部1115の外側面である上段上部外側面1113と上部厚肉部1115よりも下側の部位の外側面である上段下部外側面1114との間に段差が形成されている。
【0031】
また、上段下部外側面1114、および、下段部112の外側面である第2外側面1122は、中心軸J1を中心としておよそ中心軸J1方向を向く1本の直線を回転した場合に形成される回転面状であり、第2外側面1122の下端から上段下部外側面1114の上端に向かって(すなわち、第2外側面1122と底部12との境界から上段下部外側面1114と上段上部外側面1113との境界に向かって)径が漸次増大している。換言すれば、下段部112の第2外側面1122は、上段下部外側面1114を含む略円筒面上に位置しており、これにより、計量容器1の把持が容易とされる。
【0032】
計量容器1では、図1に示すように、側壁部11に容積目盛115が設けられており、容積目盛115の目盛線は最大値の10%毎に設けられている。本実施の形態では、容積目盛115の最大値は500ml(ミリリットル)とされ、下段部112の容積は200mlとされる。換言すれば、下段部112の容積は、容積目盛115の最大値の40%に等しくされ、接続面1131の上下方向の位置が容積目盛115の目盛線に一致している。その結果、計量容器1内の液体の表面が接続面1131よりも上または下において目盛線の間に位置する場合であっても、接続面1131を基準として液体のおよその量を容易に視認することができる。なお、計量容器1では、下段部112の容積は、必ずしも容積目盛115の最大値の40%に等しくされる必要はないが、容積目盛115の最大値の10%、20%、30%、40%および50%のいずれかに等しくされることが好ましい。これにより、接続面1131の上下方向の位置が容積目盛115の目盛線に一致し、計量容器1内の液体のおよその量を容易に視認することが可能となる。
【0033】
図4は、図2に示す使い捨て医療用品セット6において重ねられた同形状の(すなわち、構造および大きさが同じ)2つの計量容器1の縦断面図である。図4に示すように、各計量容器1では、底部12の外径が接続面1131の内径よりも大きく外径よりも小さくされるため、図4中の上側の計量容器1の底部12の外径は、図4中の下側の計量容器1の接続面1131の内径よりも大きく外径よりも小さくなる。その結果、下側の計量容器1の側壁部11の内側面1101と、下側の計量容器1内に挿入された上側の計量容器1の側壁部11の外側面1102とが密着することが防止され、その結果、重ねられた複数の計量容器1を互いに離間させることが容易とされる。
【0034】
計量容器1では、上述のように、図3に示す側壁部11の下段部112の内側面である第2内側面1121の上端の径が、上段部111の内側面である第1内側面1111の下端の径よりも小さくされ、接続面1131により、第1内側面1111の下端と第2内側面1121の上端とが接続されることにより、側壁部11の内側面1101に段差が形成される。これにより、計量容器1の側壁部11に対する側方からの荷重(すなわち、中心軸J1を中心とする径方向からの荷重)は、円環面状の接続面1131に対してほぼ平行な方向(すなわち、荷重により接続面1131の変形が生じにくい方向)から加わることとなるため、計量容器1では、側方からの荷重に対する側壁部11の強度が向上される。その結果、側方からの荷重による計量容器1の塑性変形を抑制(または、防止)することができる。したがって、計量容器1は、搬送時や保管時、あるいは、加熱滅菌時に積み重ねられることにより荷重が加えられる使い捨て医療用品セット6に含まれてトレイ61上に横向きに載置される医療用の計量容器に特に適している。
【0035】
また、下段部112の全体が上段部111の下端部よりも厚くされることにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度がより向上される。さらには、下段部112が上段部111の下端部と同等の厚さとされる場合に比べて、底部12の径が増大するとともに下段部112の重量も増大することにより、底部12を下にして計量容器1を立てた際の計量容器1の安定性を向上することができる。
【0036】
側壁部11では、下段部112の高さが側壁部11の高さの10%以上とされることが好ましく、これにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度がより確実に向上される。また、下段部112の高さが側壁部11の高さの45%以下とされることにより、同容量かつ開口縁の径が同じであって内側面に段差が設けられない計量容器と比べて側壁部11の高さが過剰に高くなることが防止されるとともに、側壁部11の形成に使用される熱可塑性樹脂の量が過剰に多くなることを防止して計量容器1のコスト増大を抑制することができる。
【0037】
計量容器1では、下段部112の第2内側面1121が略円筒面状(具体的には、中心軸J1を中心としておよそ中心軸J1方向を向く直線を回転した場合に形成される回転面状)とされ、第2内側面1121上に、中心軸J1に向かって突出するリブ等の凸部が設けられない。これにより、医療処置時に手術用の器具等を計量容器1内の液体に浸したり、その状態で回転させて器具の洗浄が行われる際等に、計量容器1内に挿入された器具等の物体が側壁部11の内側に引っかかることが防止され、計量容器1の転倒や計量容器1内の液体の飛散等が防止される。したがって、計量容器1は、医療における使用に特に適しており、使い捨て医療用品セット6に含まれる計量容器としても特に適しているといえる。
【0038】
また、上段部111の第1内側面1111も、注ぎ口14が設けられる部位を除き、下段部112の第2内側面1121と同様に略円筒面状(具体的には、中心軸J1を中心としておよそ中心軸J1方向を向く直線を回転した場合に形成される回転面状)とされることにより、計量容器1内に挿入された器具が側壁部11の内側に引っかかることがより確実に防止される。
【0039】
計量容器1では、底部12の下面に略円環状の高台13が設けられることにより、底部12の強度が向上される。その結果、側方からの荷重による計量容器1の塑性変形をより確実に抑制(または、防止)することができる。また、高台13の下端部が周方向において隙間を有することにより、重ねられた複数の計量容器1を酸化エチレンガス等のガス雰囲気下にてガス滅菌する際に、計量容器1の高台13の内側の部位、および、当該計量容器1が挿入された他の計量容器1において高台13の内側と対向する部位に確実にガスを付与することができ、ガス滅菌の信頼性を向上することができる。
【0040】
計量容器1では、上段部111の上端、および、下段部112の下端をそれぞれ側壁部11の上端および下端とし、側壁部11の内側面1101において接続面1131による段差を1つだけ形成することにより、計量容器1の構造が簡素化され、計量容器1の製造が容易とされる。また、側壁部11、底部12、高台13および注ぎ口14が熱可塑性樹脂により形成されるため、射出成型により計量容器1を容易に形成することができる。
【0041】
計量容器1の容積目盛115の最大値は500mlには限定されず、例えば、100mlまたは200mlとされてよい。容積目盛115の最大値が100mlとされる場合、開口縁114の内径および側壁部11の高さは、例えば、65mmおよび72mmとされ、容積目盛115の最大値が200mlとされる場合、開口縁114の内径および側壁部11の高さは、例えば、77mmおよび80mmとされる。いずれの大きさの計量容器1も、容積目盛115の目盛線が最大値の10%毎に設けられている場合、下段部112の容積は、容積目盛115の最大値の10%、20%、30%、40%および50%のいずれかに等しくされることが好ましい。これにより、接続面1131の上下方向の位置が容積目盛115の目盛線に一致し、計量容器1内の液体のおよその量を容易に視認することが可能となる。また、容積目盛115の目盛線が最大値の25%毎に設けられている場合、下段部112の容積が容積目盛115の最大値の25%または50%とされることにより、計量容器1内の液体のおよその量が容易に視認される。計量容器1の容積目盛115の最大値は、例えば、300mlとされてもよく、この場合、開口縁114の内径および側壁部11の高さは、例えば、双方共に90mmとされる。当該計量容器1において容積目盛115の目盛線が最大値の1/3毎に設けられている場合、下段部112の容積が容積目盛115の最大値の1/3(すなわち、約33%)とされることにより、上記と同様に、計量容器1内の液体のおよその量を容易に視認することができる。
【0042】
図5は、容積目盛115の最大値がそれぞれ100ml,200ml,300mlおよび500mlである計量容器1a,1b,1cおよび計量容器1が中心軸J1方向に重ねられた状態を示す縦断面図である。図5に示すように、計量容器1a,1b,1cはそれぞれ、計量容器1と同様に、略円筒状の側壁部11、並びに、側壁部11の下端を閉塞する略円板状の底部12を備える。
【0043】
計量容器1aは計量容器1b内に挿入され、計量容器1bは計量容器1c内に挿入され、計量容器1cは計量容器1に挿入されており、この状態で4つの計量容器が図6に示す使い捨て医療用品セット6aのトレイ61上に横向きに載置される。図5に示すように、計量容器1aの側壁部11の外側面1102と計量容器1bの側壁部11の第2内側面1121との間、計量容器1bの側壁部11の外側面1102と計量容器1cの側壁部11の第2内側面1121との間、および、計量容器1cの側壁部11の外側面1102と計量容器1の側壁部11の第2内側面1121との間には僅かな隙間が設けられる。その結果、図6に示す使い捨て医療用品セット6a内において重ねられた複数の計量容器のがたつきが低減される。
【0044】
使い捨て医療用品セットでは、また、略円筒状の側壁部と側壁部の下端を閉塞する略円板状の底部を備えるとともに側壁部の内側面に段差が設けられない他の計量容器が、当該計量容器の側壁部の外側面と図3に示す計量容器1の側壁部11の第2内側面1121との間に僅かな隙間を設けつつ計量容器1内に挿入された状態で、これら2つの計量容器がトレイ上に横向きに載置されてもよい。この場合も、上記と同様に、使い捨て医療用品セット内において重ねられた複数の計量容器のがたつきが低減される。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る計量容器について説明する。図7および図8はそれぞれ、第2の実施の形態に係る計量容器1dの縦断面図および底面図である。図7に示すように、計量容器1dでは、側壁部11の下段部112の全体の厚さが、上段部111の下端部の厚さ(本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、1mm)と等しくされる。また、図7および図8に示すように、計量容器1dは、下段部112の外側面である第2外側面1122に沿って上下方向(すなわち、中心軸J1に平行な方向)に伸びるとともに中心軸J1を中心とする周方向に等ピッチにて配列された薄板状の複数(本実施の形態では、6つ)のリブ15を備える。その他の構造は、図1および図3に示す計量容器1と同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。なお、図7では、図の理解を容易にするために、平行斜線を付すことなくリブ15を描いている。
【0046】
複数のリブ15は、側壁部11等と同様に熱可塑性樹脂により形成されており、図7に示すように、各リブ15の上下方向に伸びるエッジ(すなわち、中心軸J1を中心とする径方向の外側のエッジ)は、側壁部11の上段部111の上段下部外側面1114を含む略円筒面上に位置しており、これにより、計量容器1dの把持が容易とされる。
【0047】
計量容器1dでは、第1の実施の形態と同様に、側壁部11の下段部112の内側面である第2内側面1121の上端の径が、上段部111の内側面である第1内側面1111の下端の径よりも小さくされ、接続面1131により、第1内側面1111の下端と第2内側面1121の上端とが接続されることにより、側壁部11の内側面1101に段差が形成される。これにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度を向上することができ、側方からの荷重による計量容器1dの塑性変形を抑制(または、防止)することができる。
【0048】
また、第1の実施の形態と同様に、下段部112の第2内側面1121が略円筒面状とされることにより、計量容器1d内に挿入された器具が側壁部11の内側に引っかかることが防止され、計量容器1dの転倒や計量容器1d内の液体の飛散等が防止される。
【0049】
第2の実施の形態に係る計量容器1dでは、特に、下段部112の第2外側面1122に沿う複数のリブ15が設けられることにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度がより向上される。また、各リブ15が上下方向に伸びているため、リブが上下方向以外の方向に伸びている場合に比べて、計量容器1dの射出成型による製造の際に金型の離型が容易とされ、計量容器1dの製造を簡素化することができる。
【0050】
計量容器1dでは、下段部が上段部の下端部と同等の厚さであり、かつ、リブが設けられない計量容器に比べて、底部12近傍の部位の重量が増大することにより、底部12を下にして計量容器1dを立てた際の計量容器1dの安定性を向上することができる。さらには、下段部112の全体を上段部111の下端部よりも厚くする場合に比べて熱可塑性樹脂の使用量を低減し、計量容器1dの製造コストの増大を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0052】
第1の実施の形態に係る計量容器1では、側壁部11の下段部112の第2外側面1122は、必ずしも上段下部外側面1114を含む略円筒面上に位置する必要はなく、当該略円筒面よりも径方向の内側または外側に位置していてもよい。例えば、下段部112の第2外側面1122が上記略円筒面よりも径方向の僅かに内側に位置する場合、当該形状により、計量容器1の把持が容易とされる。また、第2の実施の形態に係る計量容器1dでも同様に、各リブ15の上下方向に伸びるエッジは、上段下部外側面1114を含む略円筒面よりも径方向の内側または外側に位置していてもよく、当該略円筒面よりも僅かに内側に位置することにより、計量容器1dの把持が容易とされる。
【0053】
第1の実施の形態に係る計量容器では、必ずしも下段部112の全体が上段部111の下端部よりも厚くされる必要はなく、例えば、図9の縦断面図に示すように、計量容器1eの下段部112の上端部(すなわち、下段部112の上端近傍の部位)のみが上段部111の下端部よりも全周に亘って厚くされ、下段部112の上端部以外の部位の厚さは、上段部111の下端部の厚さに等しくされてもよい。このように、下段部112の上端部が上段部111の下端部よりも厚くされることにより、下段部112の全体の厚さが上段部111の下端部の厚さに等しくされる場合に比べて、側方からの荷重に対する側壁部11の強度をより向上することができる。
【0054】
なお、下段部112の上端部は、上述のように、全周に亘って連続的に厚くされてもよく、当該上端部において、複数の厚肉部が全周に亘って等ピッチにて配置されてもよい。また、図10.Aの底面図および図10.Bの側面図に示すように、計量容器1fの下段部112の上端部から下端部へと上下方向に伸びる複数の厚肉部16が、周方向に等ピッチてに設けられてもよい。
【0055】
第2の実施の形態に係る計量容器では、必ずしも上下方向に伸びる複数のリブ15が設けられる必要はなく、例えば、図11の側面図に示すように、計量容器1gの下段部112の第2外側面1122に沿って周方向に伸びる円環板状の1つのリブ15aが設けられてもよい。換言すれば、第2の実施の形態に係る計量容器では、下段部112の第2外側面1122に沿って伸びるリブ群(すなわち、1つまたは複数のリブ)が設けられていればよく、これにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度が向上される。
【0056】
上記実施の形態に係る計量容器では、側壁部11の接続面1131は、必ずしも中心軸J1に垂直な円環面とされる必要はなく、下方に向かって径が漸次減少する円環状の面(逆円錐台状の面)とされてもよい。
【0057】
また、側壁部11の上端部の外径が上方向に向かうに従って漸次増大し、当該上端部における上下方向に関する外径の増大率(すなわち、上下方向の単位長さ当たりの外径の増大率)が、上段部111の上端部以外の部位の外径の増大率よりも大きくされてもよい。このように、側壁部11の上端部をいわゆるフレア形状とすることにより、側方からの荷重に対する側壁部11の強度がより向上される。
【0058】
上述の実施の形態に係る計量容器では、側壁部11の内側面1101に接続面1131が1つだけ設けられているが、複数の接続面1131が側壁部11の内側面1101に設けられてもよい。例えば、側壁部11の内側面1101に2つの接続面が設けられる場合、内側面1101は、上端が側壁部11の上端となる略円筒面状の第1内側面、第1内側面の下側に設けられるとともに上端の径が第1内側面の下端の径よりも小さい略円筒面状の第2内側面、第2内側面の下側にて下端が底部12に接続されるとともに上端の径が第2内側面の下端の径よりも小さい略円筒面状の第3内側面、第1内側面の下端と第2内側面の上端とを接続する円環状の接続面、および、第2内側面の下端と第3内側面の上端とを接続する円環状のもう1つの接続面を備えることとなり、側方からの荷重に対する側壁部11の強度がより向上される。
【0059】
計量容器では、側壁部11、底部12、高台13、注ぎ口14およびリブ15は、必ずしも熱可塑性樹脂により形成される必要はなく、他の種類の樹脂により形成されてもよい。
【0060】
上述の計量容器は、必ずしも使い捨て医療用品セットに含まれる必要はなく、単体にて準備されて手術室等の医療施設において医療用として使用されてよい。また、上述の計量容器の構造は、医療用ビーカー以外の様々な医療用の計量容器、あるいは、医療以外の用途に使用される計量容器に適用されてよい。さらには、医療以外の他の用途に使用することを意図して製造された上記構造を有する計量容器が、使い捨て医療用品セットの構成品とされて医療用として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る計量容器の斜視図である。
【図2】使い捨て医療用品セットの平面図である。
【図3】計量容器の縦断面図である。
【図4】重ねられた計量容器の縦断面図である。
【図5】重ねられた計量容器の縦断面図である。
【図6】使い捨て医療用品セットの他の例を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る計量容器の縦断面図である。
【図8】計量容器の底面図である。
【図9】計量容器の他の例を示す縦断面図である。
【図10.A】計量容器の他の例を示す底面図である。
【図10.B】計量容器の他の例を示す側面図である。
【図11】計量容器の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,1a〜1g 計量容器
6,6a 使い捨て医療用品セット
11 側壁部
12 底部
13 高台
15,15a リブ
111 上段部
112 下段部
115 容積目盛
131 切り欠き
1101 内側面
1102 外側面
1111 第1内側面
1121 第2内側面
1122 第2外側面
1131 接続面
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を計量する樹脂により形成された計量容器であって、
略円筒状の側壁部と、
前記側壁部の下端を閉塞する略円板状の底部と、
を備え、
前記側壁部の内側面が、
略円筒面状の第1内側面と、
前記第1内側面の下側に設けられるとともに上端の径が前記第1内側面の下端の径よりも小さい略円筒面状の第2内側面と、
前記第1内側面の前記下端と前記第2内側面の前記上端とを接続して段差を形成する円環状の接続面と、
を備えることを特徴とする計量容器。
【請求項2】
請求項1に記載の計量容器であって、
前記第1内側面を有する前記側壁部の上段部の上端が前記側壁部の上端であり、前記第2内側面を有する前記側壁部の下段部の下端が前記側壁部の下端であることを特徴とする計量容器。
【請求項3】
請求項2に記載の計量容器であって、
前記下段部の上端部が、前記上段部の下端部よりも厚いことを特徴とする計量容器。
【請求項4】
請求項3に記載の計量容器であって、
前記下段部の全体が、前記上段部の前記下端部よりも厚いことを特徴とする計量容器。
【請求項5】
請求項2に記載の計量容器であって、
前記下段部の外側面に沿って伸びるリブ群をさらに備えることを特徴とする計量容器。
【請求項6】
請求項5に記載の計量容器であって、
前記リブ群が、前記下段部の前記外側面に沿って上下方向に伸びるとともに周方向に配列された複数のリブであることを特徴とする計量容器。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれかに記載の計量容器であって、
前記下段部の上下方向の高さが、前記側壁部の前記上下方向の高さの10%以上45%以下であることを特徴とする計量容器。
【請求項8】
請求項7に記載の計量容器であって、
前記側壁部に容積目盛が設けられており、
前記下段部の容積が、前記容積目盛の最大値の10%、20%、25%、30%、33%、40%および50%のいずれかに等しいことを特徴とする計量容器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の計量容器であって、
前記底部の下面の外周縁に沿うとともに前記底部から下側に突出する略円環状の高台をさらに備え、
前記高台の少なくとも下端部が周方向において隙間を有することを特徴とする計量容器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の計量容器であって、
前記側壁部および前記底部が熱可塑性樹脂により形成されていることを特徴とする計量容器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の計量容器であって、
医療にて使用されることを特徴とする計量容器。
【請求項12】
請求項11に記載の計量容器であって、
使い捨て医療用品セットに含まれることを特徴とする計量容器。
【請求項13】
使い捨て医療用品セットであって、
請求項12に記載の計量容器と、
前記計量容器と同形状のもう1つの計量容器と、
を備え、
前記計量容器の前記底部の外径が前記もう1つの計量容器の前記接続面の内径よりも大きく、かつ、外径よりも小さく、前記計量容器が前記もう1つの計量容器内に挿入されていることを特徴とする使い捨て医療用品セット。
【請求項14】
使い捨て医療用品セットであって、
請求項12に記載の計量容器と、
略円筒状の側壁部、および、前記側壁部の下端を閉塞する略円板状の底部を備えるもう1つの計量容器と、
を備え、
前記計量容器の前記第2内側面と前記もう1つの計量容器の外側面との間に僅かな隙間を設けつつ前記もう1つの計量容器が前記計量容器内に挿入されていることを特徴とする使い捨て医療用品セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10.A】
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【図10.B】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−202904(P2009−202904A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47223(P2008−47223)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】