説明

記憶装置および記憶装置のスピンドルモータの制御方法

【課題】記憶装置を迅速に起動させる。
【解決手段】記憶装置100は、SPM109を起動する前に、または、起動前からターゲット回転数で安定するまでの間の常時、電圧および温度監視部101aが、ディスクエンクロージャー部内の温度と、SPMドライバ103に印加される電圧を測定し、電流量制限値算出部101eが、この測定結果に応じた、SPMドライバ103の定格電流を超えない最適な電流量制限値を算出し、モータ制御部101fがSPMドライバ103を制御して、この最適な電流量制限値を越えないように、SPM109に印加する電流を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置および記憶装置のスピンドルモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ装置には、例えば、磁気ディスク装置のように、ディスク状の記憶媒体を搭載し、この記憶媒体との間で情報を読み書きする記憶装置が内蔵または接続されている。このような記憶装置は、スピンドルモータ(以下、SPMと略記する)による記憶媒体の回転と、記憶媒体との間で情報を読み書きするためのボイスコイルモータ(以下、VCMと略記する)による、ヘッドが取り付けられているアクチュエータの揺動とによって、ヘッドを記憶媒体の目標位置に位置付ける。
【0003】
ここで、ヘッドを記憶媒体の目標位置に位置付けて、記憶媒体との間で情報を読み書きするためには、記憶媒体の回転数が定常状態に達していなければならない。しかし、記憶媒体の慣性モーメントと、SPMへ印加される電流量に応じたSPMの駆動力との関係上、記憶装置に電源が投入されてから記憶媒体の回転数が定常状態に達するまでに時間がかかり、記憶装置を迅速に起動させることができず、ヘッドを記憶媒体の目標位置に迅速に位置付けることができない場合があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されるように、SPMに供給される電源電圧値を測定し、この測定された電源電圧値に応じて、記憶装置の最大許容電力以内でSPMに供給可能な最大電流値を計算し、この計算された最大電流値に対応するSPM起動電流をSPMへ印加することによって、より迅速にSPMを起動させることが可能なSPMの制御方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−237195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術では、以下の問題点があった。すなわち、電力は、抵抗値と、電流量の自乗との積で表される。よって、記憶装置の最大許容電力は、抵抗値が一定であれば、記憶装置へ印加が許容される電流量の自乗に正比例することになる。逆に、最大許容電力が一定で決まっていれば、記憶装置へ印加が許容される電流量も、自ずと決まることとなる。
【0007】
ここで、記憶装置の最大許容電力は、記憶装置の故障を防止するために、最も保守的に設定される必要がある。そのため、記憶装置が使用される想定環境の範囲内で、記憶装置の最大許容電力を最小とするために、記憶装置へ印加が許容される電流量を最少とする必要があった。
【0008】
そして、記憶装置に供給される電源電圧が一定である場合には、最大許容電力が小さいと、記憶装置、特に、SPMへ印加可能な電流量を少なくしなければならない。SPMへ印加可能な電流量が少ないと、SPMの回転が開始されてから定常状態に至るまでの時間がかかり、記憶装置を迅速に起動させ、ヘッドを記憶媒体の目標位置に迅速に位置付けることがなおも困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題点(課題)を解消するためになされたものであって、記憶装置を迅速に起動させ、ヘッドを記憶媒体の目標位置に迅速に位置付けることが可能な記憶装置および記憶装置のスピンドルモータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置であって、自装置内の温度を測定する温度測定部と、前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定部と、前記温度測定部によって測定された前記温度と、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出部と、前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記電流量制限値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記電流量制限値算出部は、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧と、所定基準電源電圧との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記温度測定部によって測定された前記温度に基づいて、前記スピンドルモータを始動させるために前記スピンドルモータへ印加する指示電流量値を算出する指示電流量値算出部と、前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこなう周波数位相同期部とをさらに有し、前記印加電流量制御部は、前記スピンドルモータを始動させるために、前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流を前記スピンドルモータへ印加し、前記周波数位相同期部は、前記印加電流量制御部によって前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流が前記スピンドルモータへ印加された後に、前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこない、前記電流量制限値算出部は、前記周波数位相同期部によって前記周波数位相同期がおこなわれた後に、前記電流量制限値を算出し、前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記印加電流制御部によって電流が印加されて前記スピンドルモータの回転が加速された後に、前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったか否かを判定する定常状態判定部をさらに有し、前記定常状態判定部によって前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったと判定されるまで、前記温度測定部は、自装置内の最新の温度を測定し、前記電源電圧測定部は、前記スピンドルモータに供給される最新の電源電圧を測定し、前記電流量制限値算出部は、前記最新の温度と、前記最新の電源電圧とに基づいて、前記電流量制限値を再算出し、前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって再算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記指示電流量値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記指示電流量値を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶媒体の慣性モーメントに基づく回転に必要な駆動力が、前記温度測定部によって測定された前記温度に依存しない一定の所定電流量制限値を超えないように制御して印加された電流量での前記スピンドルモータの出力トルクに対して大きいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置のスピンドルモータの制御方法であって、自装置内の温度を測定する温度測定ステップと、前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定ステップと、前記温度測定ステップによって測定された前記温度と、前記電源電圧測定ステップによって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出ステップと、前記電流量制限値算出ステップによって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定された温度と、測定された電源電圧とに基づいて算出された、スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を超えないようにスピンドルモータへ印加する電流量を制御するので、温度および電源電圧に応じて電流量制限値を可変とし、より多く電流をスピンドルモータへ印加可能とするため、記憶装置の起動を早め、延いては、記憶装置が内蔵または接続されるコンピュータ装置の記憶装置へのアクセス能力を高めて、コンピュータ装置全体のスループットを向上させることができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明によれば、測定された温度と所定基準温度との差、測定された電源電圧と所定基準電源電圧との差、測定された温度と所定基準温度との比、または、測定された電源電圧と所定基準電源電圧との比に基づく簡単な演算によって電流量制限値を算出するので、低い処理負荷で、可変の電流量制限値を算出することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、温度測定部によって測定された温度に基づく指示電流量値だけの電流をスピンドルモータへ電流が印加されてスピンドルモータが始動した後に、周波数位相同期をおこなうので、スピンドルモータの回転数が低い段階での周波数位相同期を容易におこなうことができるという効果を奏する。また、位相周波数位相同期後かつスピンドルモータを加速前に電流量制限値を算出し、この電流量制限値を超えないように、スピンドルモータへ印加する電流量を制御するので、より効率的に、スピンドルモータの始動および加速をおこなうことができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば、スピンドルモータの回転が定常状態に至ったと判定されるまで、測定される最新の温度と、最新の電源電圧とに基づいて、電流量制限値を再算出し、再算出された電流量制限値を超えないようにスピンドルモータへ印加する電流量を制御してスピンドルモータの回転を加速するので、スピンドルモータの回転が加速中の温度および電源電圧の変化に追従して、より効率的に、スピンドルモータの加速をおこなうことができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、測定された温度と所定基準温度との差、測定された温度と所定基準温度との比に基づく簡単な演算によって指示電流量値を算出するので、低い処理負荷で、可変の指示電流量値を算出することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、測定された前記温度が所定温度以上である場合に、スピンドルモータへ電流を印加しないので、スピンドルモータおよび印加電流量制御部の回路の保護を図ることができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、記憶媒体の慣性モーメントが、測定された温度に依存しない一定の所定電流量制限値を超えないように制御して印加された電流量でのスピンドルモータの出力トルクに対して大きい場合に、電流量制限値算出部によって算出された、測定された温度に依存する電流量制限値を超えないようにスピンドルモータへ印加する電流量を制御するので、スピンドルモータの出力トルクを高めることができ、スピンドルモータを始動および加速させ、記憶媒体の回転をすばやく定常状態へ移行させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照し、本発明の記憶装置および記憶装置のスピンドルモータの制御方法にかかる実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、記憶媒体を磁気ディスク、記憶装置を磁気ディスク装置とする。すなわち、コンピュータ装置に、外部記憶装置として内蔵または外付けで接続される磁気ディスク装置を示すが、これに限定されず、コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置であれば、広く一般に適用可能である。
【0026】
なお、以下の実施例では、MCU(Micro Controller Unit)や集積回路などの負荷回路に、電流が供給されることを、電流の印加と呼ぶ。また、同様の負荷回路に、電圧がかけられることを、電圧の印加と呼ぶ。また、以下の実施例では、特記しない限り、温度の単位は[℃]、電圧の単位は[V]、電流(電流量)の単位は[mA]または[A]、電力の単位は[W]、トルクの単位は[N・m]、トルク定数の単位は[N・m/A]、慣性モーメントの単位は[Kg・m]とする。また、[s]は、『秒』をあらわし、[rpm]は、『1分間あたりの回転数』をあらわす。
【実施例1】
【0027】
先ず、実施例1にかかる記憶装置の構成について説明する。図1は、実施例1にかかる記憶装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施例1にかかる記憶装置100は、回路基板上に、MCU101と、VCMドライバ102と、SPMドライバ103とを有する。また、記憶装置100は、電源供給部104を有する。また、さらに、記憶装置100は、ディスクエンクロージャー部に、温度測定センサ105と、アクチュエータ107を揺動させるためのVCM106と、アクチュエータ107の先端に取り付けられたヘッド108と、円盤状の記憶媒体110の中心に回転軸を取り付けて記憶媒体110を回転させるSPM109とを有する。
【0028】
なお、電源供給部104は、単一電源であり、例えば、5[V]の電圧をMCU101、VCMドライバ102およびSPMドライバ103に供給する。
【0029】
また、記憶装置100は、接続されるコンピュータ装置からの、ヘッド108を介して記憶媒体へ書き込む書き込みデータ信号にECC(Error Correcting Code)コード生成して付加するHDC(Hard Disk Controller)、HDCから入力された書き込みデータ信号の変調および記録補償をおこなうライトチャネル、ライトチャネルから入力されたデータ信号を増幅して、記憶媒体110への書き込みのためにヘッド108へ出力するライトアンプを有する。しかし、実施例1では、これらについての記載および図示を省略する。
【0030】
また、同様に、ヘッド108を介して記憶媒体から読み出した読み出しデータ信号の増幅をおこなうプリアンプと、プリアンプから入力された読み出しデータ信号の波形等化、ビタビ復号および復調をおこなうリードチャネルと、リードチャネルから入力された読み出しデータ信号をECCエラー訂正して、接続されるコンピュータ装置へ出力するHDCとを有する。しかし、実施例1では、これらについての記載および図示を省略する。
【0031】
MCU101は、VCMドライバ102およびSPMドライバ103を制御する制御装置である。MCU101は、電圧および温度監視部101aと、SPM監視部101bと、ファームウェアコミュテーション処理部101cと、FLL(Frequency Locked Loop)およびPLL(Phase Locked Loop)処理部101dと、電流量制限値算出部101eとを有する。
【0032】
電圧および温度監視部101aは、電源供給部104からMCU101、VCMドライバ102およびSPMドライバ103に印加される電圧を監視するとともに、温度測定センサ105によって検知されるディスクエンクロージャー部内の温度を監視する。
【0033】
また、電圧および温度監視部101aは、温度測定センサ105によって検知されるディスクエンクロージャー部内の温度が、記憶装置100の動作保証範囲内でなければ、記憶装置100の起動を中止する。
【0034】
SPM監視部101bは、SPM109の回転情況、具体的には、SPM109が回転中であるか否か、そして、回転中であれば回転が定常状態であるか否かを監視する。ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ファームウェアコミュテーション処理によって、VCMドライバ102に指示電流量値を出力する。また、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、図2一例を示すファームウェアコミュテーション設定テーブルを格納している。また、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、後述の基準温度Tを記憶している。
【0035】
ここで、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ファームウェアコミュテーション処理においてVCMドライバ102に出力する指示電流量値を、温度測定センサ105によって検知されて電圧および温度監視部101aによって監視されるディスクエンクロージャー部内の最新の温度と、前述のファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている、基準となる指示電流量値Iとに基づいて算出する。
【0036】
すなわち、Aをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iをファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている指示電流量値とすると、指示電流量値Idesigの算出は次式に基づいて算出される。
【0037】
【数1】

【0038】
または、Aをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iをファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている指示電流量値として、指示電流量値Idesigを次式に基づいて算出してもよい。
【0039】
【数2】

【0040】
または、Aをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iをファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている指示電流量値として、指示電流量値Idesigを次式に基づいて算出してもよい。
【0041】
【数3】

【0042】
すなわち、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、図2に一例を示すファームウェアコミュテーション設定テーブルを参照し、SPM109の第1相、第2相、第3相の順序、かつ、電流印加方向(1)〜(6)の順序で、順次、指示電流量値および印加時間を読み出して、読み出した指示電流量値をTとして、上記(1)式〜(3)式のいずれかに基づいて、指示電流量値Idesigを算出し、前述の算出された指示電流量値Idesigをモータ制御部101fに出力する。
【0043】
そして、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ファームウェアコミュテーション設定テーブルから1行ずつ、電流印加方向(1)〜(6)の順序で、対応する指示電流量値および印加時間を読み出して、それぞれの指示電流量値Idesigおよび印加時間を算出してモータ制御部101fに出力するまでの処理を、電流印加方向(6)の行まで繰り返す。
【0044】
ファームウェアコミュテーション処理によって、例えば、SPM109が、図3に一例を示すような三相モータであるとすると、SPM109の相および電流印加方向を、抵抗がRの第1相(図3に示す電流印加方向(1)、次いで電流印加方向(2))、抵抗がRの第2相(図3に示す電流印加方向(3)、次いで電流印加方向(4))、抵抗がRの第3相(図3に示す電流印加方向(5)、次いで電流印加方向(6))と変化させながら、上記(1)式〜(3)式のいずれかに基づいて算出された指示電流量値Idesigを、モータ制御部101fを介してSPMドライバ103に指示し、指示電流量値Idesigに相当する電流をSPM109に印加させることによって、SPM109の回転を始動させることができる。
【0045】
上記(1)式〜(3)式のいずれかに基づいて算出された指示電流量値Idesigに相当する電流をSPM109に印加させることによって、ディスクエンクロージャー部内の最新の温度Tによっては、ファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている、基準となる指示電流量値Iよりも大きな電流をSPM109に印加することとなるので、SPM109の回転をより迅速に始動させることが可能になる。
【0046】
FLLおよびPLL処理部101dは、SPM109の回転の周波数および位相を、所定の周波数および位相に同期させる処理をおこなう。電流量制限値算出部101eは、温度測定センサ105によって検知されて電圧および温度監視部101aによって監視されるディスクエンクロージャー部内の最新の温度、または、電源供給部104から印加される電圧に基づいて、VCMドライバ102に出力する電流量制限値を算出する。また、電流量制限値算出部101eは、後述する基準温度T(または、後述する基準電圧V)および後述する基準電流量制限値Iを記憶している。
【0047】
すなわち、Bをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iを基準電流量制限値とすると、電流量制限値Idistの算出は次式に基づいて算出される。
【0048】
【数4】

【0049】
または、Bをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iを基準電流量制限値として、電流量制限値Idistを次式に基づいて算出してもよい。
【0050】
【数5】

【0051】
または、Bをある正定数、Tをディスクエンクロージャー部内の最新の温度、Tを基準温度、Iを基準電流量制限値として、電流量制限値Idistを次式に基づいて算出してもよい。
【0052】
【数6】

【0053】
または、Cをある正定数、電源供給部104によって印加される最新の電圧をV、Vを基準電圧、Iを基準電流量制限値として、電流量制限値Idistを次式に基づいて算出してもよい。
【0054】
【数7】

【0055】
または、Cをある正定数、電源供給部104によって印加される最新の電圧をV、Vを基準電圧、Iを基準電流量制限値として、電流量制限値Idistを次式に基づいて算出してもよい。
【0056】
【数8】

【0057】
または、Cをある正定数、電源供給部104によって印加される最新の電圧をV、Vを基準電圧、Iを基準電流量制限値として、電流量制限値Idistを次式に基づいて算出してもよい。
【0058】
【数9】

【0059】
そして、電流量制限値算出部101eは、上記(4)式〜(9)式のいずれかに基づいて算出された電流量制限値Idistをモータ制御部101fに出力する。電流量制限値Idistが入力されたモータ制御部101fは、VCM106およびSPM109を制御して、VCM106およびSPM109の速度制御をおこなう。
【0060】
また、電流量制限値Idistが入力されたモータ制御部101fは、ファームウェアコミュテーション処理部101cによって算出された指示電流量値Idesigおよび対応する印加時間を、VCMドライバ102へ出力する。また、モータ制御部101fは、電流量制限値算出部101eによって算出された電流量制限値Idistを記憶するとともに、SPMドライバ103へ出力する。
【0061】
VCMドライバ102は、電流をVCM106に印加する。また、SPMドライバ103は、電流量制限値Idistに相当する電流量を超えないように制御しながら、SPM109に電流を印加する。なお、VCMドライバ102およびSPMドライバ103は、一般的には、ワンチップの集積回路に実装されるものである。
【0062】
上記(4)式〜(9)式のいずれかに基づいて算出された電流量制限値Idistに相当する電流を超えない最大電流をSPM109に印加させることによって、ディスクエンクロージャー部内の最新の温度T(または、最新の電圧V)によっては、基準電流量制限値Iよりも大きな電流をSPM109に印加することが可能になるので、SPM109の回転の加速をより迅速におこなうことが可能になる。
【0063】
次に、実施例1にかかるスピンドルモータ起動処理について説明する。図4は、実施例1にかかるスピンドルモータ起動処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、モータ制御部101fは、SPMドライバ103の初期化をおこなう(ステップS101)。
【0064】
続いて、電圧および温度監視部101aは、電源供給部104によってMCU101、VCMドライバ102およびSPMドライバ103に印加される最新の電圧と、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度とを測定する(ステップS102)。
【0065】
続いて、電圧および温度監視部101aは、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度が、記憶装置100の動作保証範囲内であるか否かを判定する(ステップS103)。記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度が、記憶装置100の動作保証範囲内であると判定された場合に(ステップS103肯定)、ステップS104へ移り、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度が、記憶装置100の動作保証範囲内であると判定されなかった場合に(ステップS103否定)、スピンドルモータ起動処理は終了する。
【0066】
続いて、SPM監視部101bは、SPM109が回転中であるか否かを判定する(ステップS104)。SPM109が回転中であると判定された場合に(ステップS104肯定)、ステップS106へ移り、SPM109が回転中であると判定されなかった場合に(ステップS104否定)、ステップS105へ移る。
【0067】
ステップS105では、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、図5を参照して後述するファームウェアコミュテーション処理をおこなう。続いて、FLLおよびPLL処理部101dは、SPM109の回転の周波数および位相を、所定の周波数および位相に同期させる(ステップS106)。
【0068】
続いて、電流量制限値算出部101eは、ステップS102で測定された最新の温度および最新の電圧に基づいて、電流量制限値を算出する(ステップS107)。続いて、電流量制限値算出部101eは、ステップS107で算出した電流量制限値を、モータ制御部101fにセットする(ステップS108)。
【0069】
続いて、SPMドライバ103は、モータ制御部101fにセットされている電流量制限値を越えないように、電流量を徐々に増大させて、所定時間にわたってSPM109に印加することによって、記憶媒体110の回転を加速させる(ハードウェア加速、ステップS109)。
【0070】
続いて、SPM監視部101bは、SPM109の回転数が、安定回転数であるセトリング回転数に到達したか否かを判定する(ステップS110)。SPM109の回転数が、安定回転数であるセトリング回転数に到達したと判定された場合に(ステップS110肯定)、ステップS111へ移り、SPM109の回転数が、安定回転数であるセトリング回転数に到達したと判定されなかった場合に(ステップS110否定)、ステップS109へ移る。
【0071】
ステップS111では、モータ制御部101fは、一定の電流量をSPM109に印加してセトリング(回転安定待ち)をおこなう。続いて、SPM監視部101bは、ターゲット(目標)回転数でSPM109の回転が安定しているか否かを判定する(ステップS112)。ターゲット回転数でSPM109の回転が安定していると判定された場合に(ステップS112肯定)、スピンドルモータ起動処理は終了し、ターゲット回転数でSPM109の回転が安定していると判定されなかった場合に(ステップS112否定)、ステップS111へ移る。
【0072】
次に、図4のステップS105で示したファームウェアコミュテーション処理について説明する。図5は、実施例1にかかるファームウェアコミュテーション処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、電圧および温度監視部101aは、装置の最新の温度を測定する(ステップS201)。
【0073】
続いて、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ファームウェアコミュテーション設定テーブルを参照して、ファームウェアコミュテーション設定テーブルの先頭から順番に、1行だけ行を読み出す(ステップS202)。
【0074】
続いて、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ステップS202で読み出されたファームウェアコミュテーション設定テーブルの行に記憶されている指示電流量値と、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度に基づいて、指示電流量値を算出する(ステップS203)。
【0075】
続いて、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、モータ制御部101fを介してSPMドライバ103に対して、SPM109の電流印加指示される相に、ステップS203で算出された指示電流量値相当の電流量を、ファームウェアコミュテーション設定テーブルに記憶されている印加時間にわたって印加するように指示する(ステップS204)。
【0076】
続いて、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ステップS202でファームウェアコミュテーション設定テーブルの最終行を読み出したか否かを判定する(ステップS205)。ステップS202でファームウェアコミュテーション設定テーブルの最終行を読み出したと判定された場合に(ステップS205肯定)、スピンドルモータ起動処理のステップS106(図4)へ復帰し、ステップS202でファームウェアコミュテーション設定テーブルの最終行を読み出したと判定されなかった場合に(ステップS205否定)、ステップS206へ移る。
【0077】
ステップS206では、ファームウェアコミュテーション処理部101cは、ファームウェアコミュテーション設定テーブルにおいて、SPM109の電流印加指示する相および/または電流印加方向を一つ進める。この処理が終了すると、ステップS202へ移る。
【0078】
次に、実施例1にかかるスピンドルモータの温度電圧特性について説明する。図6は、実施例1にかかるスピンドルモータの温度電圧特性の一例を示す図である。なお、同図における各曲線において、指示可能値は、SPM109およびSPMドライバ103印加が許容される温度ごと電圧ごとの最大電流量(すなわち、温度に応じて変化する指示電流量値)を示す。
【0079】
同図に示すように、従来は、例えば、装置内の温度および最大電流の特性を有するSPM109およびSPMドライバ103の場合、動作保証する温度や電圧をそれぞれ0[℃]から65[℃]まで、4.5[V]から5.5[V]までとすると、この条件のうち、SPM109のコイル抵抗が下がる低温でSPMドライバ103のピーク電流が出る電圧は、0[℃]の5.5[V]である。
【0080】
従来技術では、0[℃]の5.5[V]という条件下でSPMドライバ103の定格を満たす電流量制限値を、すべての温度に適用していた。そのため高温の低電圧下では、電流量制限が過剰となり、SPM109の起動時間が遅くなってしまっていた。
【0081】
一方、実施例1では、上記(4)式〜(9)式のいずれかによって各温度電圧での電流量制限値を求めるため、従来技術のように電流量制限が過剰とはならず、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度、SPMドライバ103に印加される電圧、温度によるSPM109のコイル抵抗の変化、SPM109の加速度定数(トルク定数)の変化などに追従して、より迅速なSPM109の起動を実現でき、また、起動の成功率を向上させることができる。
【0082】
なお、上記実施例1では、SPM109を、例えば、5[V]で駆動するとするが、例えば、5[V]より大きな電圧の12[V]で駆動する場合と同等のデータ記録再生性能を実現できる。また、例えば、3.5インチ磁気ディスクの磁気ディスク装置を、5[V]の単一電源で動作させることができるため、磁気ディスク装置の電源を5[V]に統一でき、装置構成の簡略化が可能となる。
【0083】
例えば、従来の3.5インチ磁気ディスクの磁気ディスク装置は、12[V]単一電源駆動か、5[V]と12[V]の併用電源駆動で動作していた。しかし、3.5インチ磁気ディスクの磁気ディスク装置は、3.5インチ磁気ディスクが4枚搭載されており、4枚の磁気ディスクの慣性モーメントは、約1.6×10−4[Kg・m]、標準的なスピンドルモータのトルク定数は、10x10−3[N・m/A]、標準的なスピンドルモータのコイル抵抗は、2.5[Ω]であることから、6[s]以内に7200[rpm]まで回転が到達するには、逆起電力を考慮しない場合でも、起動電流が約2[A]必要となる。
【0084】
ここで、5[V]で駆動するスピンドルモータ制御IC(SPMドライバ103)のモータ駆動能力は、5[V]/2.5[Ω]=2[A]となるので、4枚の磁気ディスクを回転させることは可能であるが、逆起電力が発生することを考えると、余裕(マージン)がない。しかも、5[V]で駆動するスピンドルモータ制御ICの最大定格は1.5[A]程度であるため、最大定格を超えてしまう。
【0085】
そこで、ディスクエンクロージャー部内の所定の温度の上昇にともなってスピンドルモータのコイル抵抗が2.5[Ω]から上昇したとする、この温度上昇に応じて、スピンドルモータへ印加する起動電流の制限値を、スピンドルモータ制御ICの最大定格の許容範囲内で引き上げる。引き上げられた起動電流の制限値を超えない最大限の電流をスピンドルモータに印加する。このようにすることによって、5[V]で駆動するスピンドルモータ制御ICの最大定格の範囲で最大限の電力量が得られる。
【0086】
また、磁気ディスク装置のディスクエンクロージャー部内の温度の上昇にともなうスピンドルモータのコイル抵抗の上昇に応じてスピンドルモータに印加する電流を変化させる場合に、磁気ディスクの起動スピードを、従来の磁気ディスク装置と同等でよいとしたとき、スピンドルモータに供給する電力の観点からは、スピンドルモータのコイル抵抗が上昇した分だけ、印加する電流量を少なくすることができることから、磁気ディスク装置の消費電力の低減を図ることができる。また、磁気ディスク装置の電源の小型化および単一電源化が可能であり、システム負荷の低減を図ることができる。
【0087】
さらには、磁気ディスク装置のディスクエンクロージャー部内の温度の上昇にともなうスピンドルモータのコイル抵抗の上昇が所定値以上である場合には、磁気ディスクの起動スピードを、従来の磁気ディスク装置よりも速くしつつ、スピンドルモータに印加する電流量を少なくすることができる。
【0088】
他方、低コイル抵抗かつ高トルクのスピンドルモータを使用し、ディスクの枚数を4枚から3枚へと減らし、ターゲット回転数を下げることでも、5[V]の単一電源で、磁気ディスクを駆動することが可能となる。
【0089】
具体的には、磁気ディスクの枚数を3枚に減らし、3枚の磁気ディスクの慣性モーメントが1.2×10−4[Kg・m]、スピンドルモータのトルク定数を6×10−3[Nm/A]、コイル抵抗を1.25[Ω]とすると、6[s]以内に3600[rpm]まで回転が到達するには、逆起電力を考慮しない場合で、起動電流が約1.26[A]であればよく、5[V]で駆動するスピンドルモータ制御ICの駆動能力は5[V]/1.25[Ω]=4[A]程度となり、余裕(マージン)があり、また、スピンドルモータ制御ICの最大定格1.5[A]も満たすことができる。
【0090】
低コイル抵抗かつ高トルクのスピンドルモータを使用し、ディスクの枚数を4枚から3枚へと減らし、ターゲット回転数を下げることによって、例えば、従来の磁気ディスク装置のパフォーマンスアイドル時の消費電力の低減を図ることができる。また、磁気ディスク装置の電源の小型化および単一電源化が可能であり、システム負荷の低減を図ることができる。
【0091】
上記実施例1をまとめると、次のようになる。すなわち、従来は、ファームウェアコミュテーション処理では、SPM109に印加する指示電流量は、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度や、SPMドライバ103への印加電圧にかかわらず、一定の値を用いていた。そのため、温度によるSPM109のコイルの抵抗値の変化や加速度定数のバラツキ、SPMドライバ103の定格電流のバラツキに対応できず、ファームウェアコミュテーション処理が成功するか否かは、温度やSPMドライバ103の個体差に大きく依存性があった。
【0092】
そこで、実施例1では、次のようにして、ファームウェアコミュテーション処理時の指示電流量値を補正することで、ファームウェアコミュテーション処理の成功率の改善を行う。すなわち、温度ごとの電流実効値の変化を予め測定しておき、最適な指示電流量値の温度変化係数A(上記(1)式に現れる)および/またはA(上記(2)式に現れる)および/またはA(上記(3)式に現れる)を求めておく。
【0093】
そして、ファームウェアコミュテーション処理の前に、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度を測定し、この測定結果に応じた、動作保証されている温度範囲で、SPMドライバ103の定格電流を超えない最適な指示電流量値を算出して、SPM109に印加する指示電流を変化させる。
【0094】
また、従来は、電流量制限値は、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度や、SPMドライバ103への印加電圧にかかわらず、一定の値を用いていた。また、SPMドライバ103およびSPM109を動作保証する温度電圧環境内で、一定の電流制限値を用いるために、最悪条件を考慮した値を設定しなければならなかった。そのため、温度および/または印加電圧の条件によっては、SPM109に印加する電流を過剰に制限してしまうこととなり、記憶装置100の起動時間の遅延につながっている場合があった。
【0095】
そこで、次のようにして、電流量制限値を補正することで、記憶装置100の起動時間の改善を行う。すなわち、温度ごとおよび/または電圧ごとにおけるSPMドライバ103の定格を満たす電流値を予め測定しておく。
【0096】
先ず、予め、温度による電流量制限値の変化係数B(上記(4)式に現れる)および/またはB(上記(5)式に現れる)および/またはB(上記(6)式に現れる)を求めておく。または、予め、電圧による電流量制限値の変化係数C(上記(7)式に現れる)、C(上記(8)式に現れる)、C(上記(9)式に現れる)を求めておく。
【0097】
そして、SPM109を起動する前に、または、起動前からターゲット回転数で安定するまでの間の常時、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度と、MCU101、VCMドライバ102およびSPMドライバ103に印加される電圧を測定し、この測定結果に応じた、SPMドライバ103の定格電流を超えない最適な電流量制限値を算出し、この最適な電流量制限値を越えないように、SPMドライバ103およびSPM109に印加する電流を変化させる。
【0098】
従来は、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の温度にかかわらず、記憶装置100を起動させていた。しかし、電源断時の回転停止で発生する逆起電力がスピンドルモータ制御IC(SPMドライバ103)にかかるときに、温度条件によっては、逆起電力が最大定格を超えてしまう。そこで、スピンドルモータ制御ICの最大定格を超える逆起電力が流れるような温度では、SPM109を起動させないようにすることによって、スピンドルモータ制御ICの回路を保護することが可能になる。
【0099】
以上のようにすると、SPMドライバ103の定格電流を超えないようにしてSPMドライバ103の回路保護を図りつつ、SPM109に許容される最大限の電流を印加してSPM109の回転開始の迅速化を図ることができる。
【実施例2】
【0100】
次に、図7を参照して、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と比較して、スピンドルモータ起動処理が異なるのみで、その他は実施例1と同一であるので、同一部分の説明を省略する。
【0101】
図7は、実施例2にかかるスピンドルモータ起動処理手順を示すフローチャートである。同図に示す実施例2にかかるスピンドルモータ起動処理手順は、実施例1にかかるスピンドルモータ起動処理手順と比較して、ステップS110の判定が否定の場合に、ステップS109へ移るのではなく、ステップS113へ移る点が異なる。
【0102】
ステップS113では、電圧および温度監視部101aは、記憶装置100のディスクエンクロージャー部内の最新の温度と電源供給部104によってMCU101、VCMドライバ102およびSPMドライバ103に印加される最新の電圧とを測定する。ステップS113が終了すると、ステップS107へ移る。
【0103】
このように、SPM109の回転がセトリング回転数に到達するまで、最新の温度および最新の電圧を常時測定し、これら最新の温度および最新の電圧に基づいて、電流量制限値を再計算することによって、温度および電圧の変化に電流量制限値を追従させ、常に最適な電流量制限値に基づいて、SPMドライバ103およびSPM109に電流を印加することとなり、SPMドライバ103の定格電流を超えないようにする回路保護およびSPM109の回転のより迅速な起動を図ることが可能になる。
【0104】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。また、実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0105】
また、上記実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記実施例で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0106】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0107】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)(またはMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)などのマイクロ・コンピュータ)および当該CPU(またはMPU、MCUなどのマイクロ・コンピュータ)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されてもよい。
【0108】
以上の実施例1および実施例2を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0109】
(付記1)コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置であって、
自装置内の温度を測定する温度測定部と、
前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定部と、
前記温度測定部によって測定された前記温度と、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出部と、
前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御部と
を有することを特徴とする記憶装置。
【0110】
(付記2)前記電流量制限値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする付記1に記載の記憶装置。
【0111】
(付記3)前記電流量制限値算出部は、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧と、所定基準電源電圧との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする付記1に記載の記憶装置。
【0112】
(付記4)前記電流量制限値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との比に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする付記1、2または3に記載の記憶装置。
【0113】
(付記5)前記電流量制限値算出部は、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧と、所定基準電源電圧との比に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする付記1、2または3に記載の記憶装置。
【0114】
(付記6)前記温度測定部によって測定された前記温度に基づいて、前記スピンドルモータを始動させるために前記スピンドルモータへ印加する指示電流量値を算出する指示電流量値算出部と、
前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこなう周波数位相同期部と
をさらに有し、
前記印加電流量制御部は、前記スピンドルモータを始動させるために、前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流を前記スピンドルモータへ印加し、
前記周波数位相同期部は、前記印加電流量制御部によって前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流が前記スピンドルモータへ印加された後に、前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこない、
前記電流量制限値算出部は、前記周波数位相同期部によって前記周波数位相同期がおこなわれた後に、前記電流量制限値を算出し、
前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速する
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0115】
(付記7)前記印加電流制御部によって電流が印加されて前記スピンドルモータの回転が加速された後に、前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったか否かを判定する定常状態判定部をさらに有し、
前記定常状態判定部によって前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったと判定されるまで、前記温度測定部は、自装置内の最新の温度を測定し、前記電源電圧測定部は、前記スピンドルモータに供給される最新の電源電圧を測定し、前記電流量制限値算出部は、前記最新の温度と、前記最新の電源電圧とに基づいて、前記電流量制限値を再算出し、
前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって再算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0116】
(付記8)前記指示電流量値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記指示電流量値を算出することを特徴とする付記6または7に記載の記憶装置。
【0117】
(付記9)前記指示電流量値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との比に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする付記6または7に記載の記憶装置。
【0118】
(付記10)前記温度測定部によって測定された前記温度が所定温度以上であるか否かを判定する温度判定部をさらに有し、
前記温度判定部によって前記温度が所定温度以上であると判定された場合に、前記印加電流量制御部は、前記スピンドルモータへ電流を印加しないことを特徴とする付記1〜9のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0119】
(付記11)前記記憶媒体の慣性モーメントに基づく回転に必要な駆動力が、前記温度測定部によって測定された前記温度に依存しない一定の所定電流量制限値を超えないように制御して印加された電流量での前記スピンドルモータの出力トルクに対して大きいことを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0120】
(付記12)直径が3.5インチの円盤状の記憶媒体と、
前記記憶媒体を回転させるスピンドルモータと、
前記記憶媒体との間で情報を読み書きするヘッドを駆動するアクチュエータと
を有し、
前記スピンドルモータおよび前記アクチュエータに、5ボルトの単一電源から電源電圧が供給されることを特徴とする記憶装置。
【0121】
(付記13)コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置のスピンドルモータの制御方法であって、
自装置内の温度を測定する温度測定ステップと、
前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定ステップと、
前記温度測定ステップによって測定された前記温度と、前記電源電圧測定ステップによって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出ステップと、
前記電流量制限値算出ステップによって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御ステップと
を含むことを特徴とする記憶装置のスピンドルモータの制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、記憶装置を迅速に起動させ、ヘッドを記憶媒体の目標位置に迅速に位置付けて、迅速に記憶媒体との間で情報を読み書き可能にしたい場合に有用であり、記憶装置が内蔵または接続されたコンピュータ装置の記憶装置へのアクセス処理能力を高め、コンピュータ装置全体のスループットを高めたい場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施例1にかかる記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1にかかるファームウェアコミュテーション設定テーブルの一例を示す図である。
【図3】実施例1にかかるスピンドルモータにおけるファームウェアコミュテーション順序の一例を示す図である。
【図4】実施例1にかかるスピンドルモータ起動処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例1にかかるファームウェアコミュテーション処理手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例1にかかるスピンドルモータの温度電圧特性の一例を示す図である。
【図7】実施例2にかかるスピンドルモータ起動処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
100 記憶装置
101 MCU
101a 電圧および温度監視部
101b SPM監視部
101c ファームウェアコミュテーション処理部
101d FLLおよびPLL処理部
101e 電流量制限値算出部
101f モータ制御部
102 VCMドライバ
103 SPMドライバ
104 電源供給部
105 温度測定センサ
106 VCM
107 アクチュエータ
108 ヘッド
109 SPM
110 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置であって、
自装置内の温度を測定する温度測定部と、
前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定部と、
前記温度測定部によって測定された前記温度と、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出部と、
前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御部と
を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記電流量制限値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記電流量制限値算出部は、前記電源電圧測定部によって測定された前記電源電圧と、所定基準電源電圧との差に基づいて、前記電流量制限値を算出することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記温度測定部によって測定された前記温度に基づいて、前記スピンドルモータを始動させるために前記スピンドルモータへ印加する指示電流量値を算出する指示電流量値算出部と、
前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこなう周波数位相同期部と
をさらに有し、
前記印加電流量制御部は、前記スピンドルモータを始動させるために、前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流を前記スピンドルモータへ印加し、
前記周波数位相同期部は、前記印加電流量制御部によって前記指示電流量値算出部によって算出された前記指示電流量値だけの電流が前記スピンドルモータへ印加された後に、前記スピンドルモータの回転の位相周波数位相同期をおこない、
前記電流量制限値算出部は、前記周波数位相同期部によって前記周波数位相同期がおこなわれた後に、前記電流量制限値を算出し、
前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって算出された前記電流量制限値を超えないように印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速する
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記印加電流制御部によって電流が印加されて前記スピンドルモータの回転が加速された後に、前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったか否かを判定する定常状態判定部をさらに有し、
前記定常状態判定部によって前記スピンドルモータの回転が定常状態に至ったと判定されるまで、前記温度測定部は、自装置内の最新の温度を測定し、前記電源電圧測定部は、前記スピンドルモータに供給される最新の電源電圧を測定し、前記電流量制限値算出部は、前記最新の温度と、前記最新の電源電圧とに基づいて、前記電流量制限値を再算出し、
前記印加電流量制御部は、前記電流量制限値算出部によって再算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御して前記スピンドルモータの回転を加速することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の記憶装置。
【請求項6】
前記指示電流量値算出部は、前記温度測定部によって測定された前記温度と、所定基準温度との差に基づいて、前記指示電流量値を算出することを特徴とする請求項5に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記記憶媒体の慣性モーメントに基づく回転に必要な駆動力が、前記温度測定部によって測定された前記温度に依存しない一定の所定電流量制限値を超えないように制御して印加された電流量での前記スピンドルモータの出力トルクに対して大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の記憶装置。
【請求項8】
コンピュータ装置に外部記憶装置として接続される、印加される電流量に応じて回転するスピンドルモータの回転によって記憶媒体を回転させることによって、ヘッドを前記記憶媒体の目標位置へ位置付ける記憶装置のスピンドルモータの制御方法であって、
自装置内の温度を測定する温度測定ステップと、
前記スピンドルモータに供給される電源電圧を測定する電源電圧測定ステップと、
前記温度測定ステップによって測定された前記温度と、前記電源電圧測定ステップによって測定された前記電源電圧とに基づいて、前記スピンドルモータへ印加される電流量を制限するための電流量制限値を算出する電流量制限値算出ステップと、
前記電流量制限値算出ステップによって算出された前記電流量制限値を超えないように前記スピンドルモータへ印加する電流量を制御する印加電流量制御ステップと
を含むことを特徴とする記憶装置のスピンドルモータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−187624(P2009−187624A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26950(P2008−26950)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】