説明

記憶装置共有システム

【課題】 アクセス権の移転が繰り返されることによって、多くの時間が浪費されてしまうこと。
【解決手段】 調停部5、ホスト3aが連続コマンドを発行するのを、アクセス権解放信号を受信してから所定の時間が経過するまで待つ(以下、所定の時間を待ち時間とする)。待ち時間においては、ホスト3bからのアクセス請求信号があっても、アクセス譲渡信号はホスト3bに対して伝送されない。調停部5は、ホスト3aが前回のコマンドに連続するコマンド(以下、連続コマンドという)を待ち時間内に発行すれば、ホスト3aに対してアクセス譲渡信号を送信する。他方、調停部5は、ホスト3aが連続コマンドを待ち時間内に発行しなければ、ホスト3bに対してアクセス譲渡信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置とその数よりも多数のホストとが接続される記憶装置共有システムに関するものであって、より詳しくは、ナビゲーションやオーディオ等の機能を含む車載機器システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、単数のストレージに対して複数のホストから同時にアクセス可能にするための調停方法が知られている(特許文献1を参照)。この調停方法においては、一のホストからのコマンド発行要求がある場合、このホストに対してアクセス権を付与するか否かは他のホストの状態に応じて決められる。例えば、一のホストからのコマンド発行要求がある場合、他のホストの状態がコマンド実行中であれば、一のホストに対してアクセス権は付与されず(他のホストの状態がコマンド実行終了になった後にアクセス権は付与される)、他方、他のホストの状態が待機中であれば、一のホストに対してアクセス権は付与される。また、一のホストからのコマンド発行要求及び他のホストからのコマンド発行要求が同時にある場合、両ホストのうち優先順位が高いものに対してアクセス権は付与される。
【特許文献1】特開2005−327230号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、車載機器システムにおいては、一のホスト及び他のホストが一のアプリケーション及び他のアプリケーションをそれぞれ同時に実行している。
【0004】
具体的には、各ホストは、データ転送等のコマンドを複数回にわたって発行し、アプリケーションを実行している。他方、複数回のコマンド発行によって転送されるべきデータは、それぞれ近隣領域に記憶されている。つまり、コマンドが連続的に発行されることを前提として、データの転送のために行われるシークや回転待ちが少なくなり、待ち時間も少なくなる(図1(a)を参照)。
【0005】
ところが、アクセスすべき領域が転送されたデータによって定まる場合、コマンドを連続的に発行することは容易ではない。この場合、アクセスすべき領域が定まるまでの時間は、タイムラグとなってしまう。
【0006】
背景技術によれば、一のホストが複数回のコマンド発行を行っている場合、前述のタイムラグが発生すると、他のホストがアクセス権を得てしまう。一のホストは、他のホストのアクセスが終了した後に、複数回のコマンド発行のうち残部を続行する。つまり、アクセス権が交互に移転するので、データの転送のために行われるシークや回転待ちが多くなる(図1(b)を参照)。そして、シークや回転待ち等の時間は一般的には数msから数十msであるので、アクセス権の移転が繰り返されることによって、多くの時間が浪費されてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る記憶装置共有システムは、記憶装置と、その数よりも多数のホストと、前記記憶装置に対する前記ホストからのアクセスを調停する調停部を備える記憶装置共有システムにおいて、前記調停部は、一のホストが一のコマンドの実行終了を通知してからの時間が予め定められた待ち時間内であれば、他のホスト側に対して前記記憶装置へのアク
セス権を付与しないことを特徴とするものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0008】
「記憶装置」としては、各種プログラムやデータ等を記憶する装置であって、一例として、ハードディスクドライブ等が考えられる。
【0009】
「調停部」とは、ハードウエア又はハードウエアとソフトウエアとの協働によって調停に係る処理を具体的に実現するための部品である。
【0010】
「調停部」は、好ましくは、前記調停部は、前記一のホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行すれば、前記一のホスト側に対してアクセス権を付与し、他方、前記一のホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行せず、かつ、前記他のホストがコマンドを発行していれば、前記他のホスト側に対してアクセス権を付与する。
【0011】
「側」とは、調停部よりも各ホスト側を意味する。例えば、調停部とホストとの間に何ら部品(ソフトウエア部品も含む)が存在しなければ、「側」は、ホストを意味する。他方、調停部とホストとの間に何ら部品(ソフトウエア部品も含む)が存在すれば、「側」は、当該部品及びホストを意味する。
【0012】
この「部品」の例として、「前記ホストと前記調停部との間には仮想デバイスが設定されている」ことがある。「仮想デバイス」は、好ましくは、前記記憶装置へのアクセス権を保有するためのレジスタを有する。このとき、「調停部」は、前記調停部は、前記ホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行しなければ、前記仮想デバイスのうちこのホスト側に設定されたものに対して前記記憶装置へのアクセス権の解放を要求する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、アクセス権の移動を制限することによって、アプリケーションの実行を効率化することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る記憶装置共有システムを実施するための最良の形態は、図2から図6までで示される。
【0015】
<実施の形態1に係るハードウエア構成について>実施の形態1に係るハードウエアの構成は、図2で示される。記憶装置共有システム1は、単数の記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)2と、複数のホスト3と、セレクタ4と、調停部5とを備える。調停部5は、メモリやプロセッサ等のコンピュータの基本要素からなる。
【0016】
<実施の形態1に係るイベントについて>実施の形態1に係るイベントは、図3で示される。アクセス請求信号は、ホスト3から調停部5に伝達される。各ホスト3は、記憶装置2に記憶されたアプリケーションを読み出すために、アクセス請求信号を出力する。
【0017】
アクセス譲渡信号は、調停部5から複数のホスト3の何れか1つに伝達される。調停部5は、アクセス請求信号に含まれる優先順位等を用いてアクセス譲渡信号の出力先を決定する。これによって、複数のホスト3のうち何れか1つが記憶装置2にアクセス可能な状態となる。
【0018】
アクセス権解放信号は、アクセス権を保有しているホスト3から調停部5に伝達される
。ホスト3は、記憶装置2へのアクセスが不要になったことを条件として、アクセス権解放信号を出力する。
【0019】
本実施の形態では、調停部5は、アクセス権解放信号が伝達された後、特徴的な処理を実行する。以下の説明では、アクセス権解放信号は、ホスト3aから調停部5に伝達されたものとする。
【0020】
調停部5、ホスト3aが連続コマンドを発行するのを、アクセス権解放信号を受信してから所定の時間が経過するまで待つ(以下、所定の時間を待ち時間とする)。待ち時間においては、ホスト3bからのアクセス請求信号があっても、アクセス譲渡信号はホスト3bに対して伝送されない。
【0021】
調停部5は、ホスト3aが前回のコマンドに連続するコマンド(以下、連続コマンドという)を待ち時間内に発行すれば、ホスト3aに対してアクセス譲渡信号を送信する。他方、調停部5は、ホスト3aが連続コマンドを待ち時間内に発行しなければ、ホスト3bに対してアクセス譲渡信号を送信する。
【0022】
<実施の形態1における効果>実施の形態1によれば、調停部5は、ホスト3aが連続コマンドを発行するのを、アクセス権解放信号を受信してから所定の時間が経過するまで待つので、ホスト3aで発行されるコマンドが連続的に実行され、ホスト3aにおけるアプリケーションが効率的に実行される(図1を参照)。
【0023】
<実施の形態2に係るハードウエア構成について>実施の形態2に係るハードウエアの構成は、図4で示される。記憶装置共有システム10は、複数のホスト3とセレクタ4との間に仮想デバイス6を備えている。仮想デバイス6は、レジスタとしてのタスクファイル7を備えている。仮想デバイス6の機能は、ホスト3と記憶装置2とが1対1で接続される場合と同様の処理を実現することにある。その余の構成は、実施の形態1の構成と同じである。
【0024】
<実施の形態2に係るイベントについて>実施の形態2に係るイベントは、図5で示される。本実施の形態では、仮想デバイス6は、ビジー状態を、コマンド受信の旨を通知(以下、コマンド受信通知という)してからアクセス権を得るまで維持することを特徴とする。仮想デバイス6がビジー状態を維持している間、ホスト3はコマンドを実行することができない。ビジー状態は、仮想デバイス6内のタスクファイル7に保持される。具体的な処理手順は、次のとおりである。
【0025】
コマンドは、ホスト3から仮想デバイス6に伝達される。ここで、各ホスト3は、記憶装置2に記憶されたアプリケーションを読み出すために、コマンドを発行する。
【0026】
コマンド受信通知は、仮想デバイス6から調停部5に伝達される。ここで、仮想デバイス6は、ホスト3で発行されたコマンドを受信すると、その旨を通知する。
【0027】
アクセス権は、調停部5から仮想デバイス6に伝達される。ここで、調停部5は、コマンド受信通知に含まれる各ホストの優先順位に従って1つの仮想デバイス6に対してアクセス権を譲渡する。また、仮想デバイス6は、ビジー状態を解除する。ビジー状態が解除されると、ホスト3はコマンドを実行する。
【0028】
コマンド実行が終了した旨(以下、コマンド終了通知)は仮想デバイス6から調停部5に伝達される。ここで、仮想デバイス6は、ホストがコマンド実行を終了すると、その旨を通知する。調停部5は、コマンド終了通知を受けた後、実施の形態1での処理を同じ処
理を実行する。
【0029】
<実施の形態2における効果>本実施の形態によれば、記憶装置2とホスト3との間に仮想デバイス6が設定されているので、記憶装置2とホスト3とが1対1で接続される場合と同様の処理を実現することができる。
【0030】
<変形例>実施の形態2の変形例は、図6で示される。仮想デバイス6は、アクセス権が譲渡された場合に、ビジー状態を解除するとともに、タスクファイル7に対してアクセス権を保有している旨を設定してもよい。アクセス権を保有している旨がタスクファイル7に設定されている場合、ホスト3がコマンドを発行しても、仮想デバイス6は、ホスト3に対してビジー状態を提示せず、コマンド受信の旨を調停部5に通知する。他方、調停部5は、仮想デバイス6からコマンド終了通知を受けてからコマンド受信通知を受けるまでの時間が所定の時間を超えると、アクセス権を保有している仮想デバイス6に対してアクセス権の解放を要求する。アクセス権が解放されると、アクセス権は他のホスト3に対して譲渡される。変形例によれば、仮想デバイス6がアクセス権を保有するので、調停部5による調停が不要となる。すなわち、コマンドがその発行後に直ちに実行され、処理がより効率的に行われる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、アプリケーションの実行を効率化することができるという効果を有し、ナビゲーションやオーディオ等の機能を含む車載機器システム等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)本発明が目的とすべき処理を示す図 (b)本発明が解決すべき課題を示す図
【図2】実施の形態1に係るハードウエア構成を示す図
【図3】実施の形態1に係るイベントを示す図
【図4】実施の形態2に係るハードウエア構成を示す図
【図5】実施の形態2に係るイベントを示す図
【図6】変形例に係るイベントを示す図
【符号の説明】
【0033】
1 記憶装置共有システム
2 記憶装置
3 ホスト
5 調停部
6 仮想デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置と、その数よりも多数のホストと、前記記憶装置に対する前記ホストからのアクセスを調停する調停部を備える記憶装置共有システムにおいて、
前記調停部は、一のホストが一のコマンドの実行終了を通知してからの時間が予め定められた待ち時間内であれば、他のホスト側に対して前記記憶装置へのアクセス権を付与しないことを特徴とする記憶装置共有システム。
【請求項2】
前記調停部は、前記一のホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行すれば、前記一のホスト側に対してアクセス権を付与し、他方、前記一のホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行せず、かつ、前記他のホストがコマンドを発行していれば、前記他のホスト側に対してアクセス権を付与することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置共有システム。
【請求項3】
前記ホストと前記調停部との間には仮想デバイスが設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記憶装置共有システム。
【請求項4】
前記仮想デバイスは、前記記憶装置へのアクセス権を保有するためのレジスタを有することを特徴とする請求項3に記載の記憶装置共有システム。
【請求項5】
前記調停部は、前記ホストが前記一のコマンドに連続する他のコマンドを前記待ち時間内に発行しなければ、前記仮想デバイスのうちこのホスト側に設定されたものに対して前記記憶装置へのアクセス権の解放を要求することを特徴とする請求項4に記載の記憶装置共有システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−264881(P2007−264881A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87062(P2006−87062)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】