記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラム
【課題】吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラムを提供する。
【解決手段】描画制御部100が試験画像データを生成し、印刷装置12の液滴吐出ヘッド122に配列された各液滴吐出素子に、試験画像を描画させる。利用者は、上記試験画像が描画された記録媒体を参照し、ずれ位置がないか否かを確認する。ずれ位置があった場合には、その位置を示す符号を操作部16を介して入力する。操作受付部102は、入力された符号を不良情報として受け付ける。操作受付部102は、受け付けた符号を補正部104に渡し、補正部104は、吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定する。次に、補正部104は、上記特定した吐出方向性不良の液滴吐出素子の影響を低減するために、印字動作を補正するための補正情報を生成する。
【解決手段】描画制御部100が試験画像データを生成し、印刷装置12の液滴吐出ヘッド122に配列された各液滴吐出素子に、試験画像を描画させる。利用者は、上記試験画像が描画された記録媒体を参照し、ずれ位置がないか否かを確認する。ずれ位置があった場合には、その位置を示す符号を操作部16を介して入力する。操作受付部102は、入力された符号を不良情報として受け付ける。操作受付部102は、受け付けた符号を補正部104に渡し、補正部104は、吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定する。次に、補正部104は、上記特定した吐出方向性不良の液滴吐出素子の影響を低減するために、印字動作を補正するための補正情報を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷装置の高速化、高画質化に伴い、印字ヘッドの高密度化、多印字素子化が進んでいる。特に、印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された印字ヘッドを備え、ページ幅分を一括で印字可能な印刷装置も多数提案されており、このような印刷装置の場合には、印字ヘッドに搭載される液滴吐出素子等の印字素子の数が数千になるものも存在する。
【0003】
このような従来の印刷装置においては、インクの吐出方向が正常方向からずれてしまう吐出方向性不良あるいはインクの吐出が不能となる不吐出等の動作不良の印字素子を特定し、印字動作を補正して画像品質の劣化を最小限にとどめる方法が多数提案されている。このため、動作不良の印字素子の特定が極めて重要である。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、基準ノズルと検査対象ノズルとにより、検査対象ノズルから吐出されたインクの吐出方向のずれを検出する印刷動作状態判定システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−262813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の記録媒体の発明は、互いに等しい距離離間し、始点・終点が各々直線上に配置され、所定方向に互いに平行に描画される所定本数の直線の組を含み、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、
【数5】
となっている、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作試験を行うための試験画像が描画されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式1)の代わりに
【数6】
とされていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式2)の代わりに
【数7】
とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の発明において、前記直線の組が前記所定方向に複数描画されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記直線の組を複数含む直線群が複数形成され、各直線群に含まれる組の数が互いに異なり且つ各直線群に含まれる組の数は互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記各直線群では、隣接する前記直線の組が、前記所定方向に直交する方向に前記液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6記載の発明において、前記各直線群における直線の間隔より大きいまたは小さい間隔の直線の組がさらに描画されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の印刷制御装置の発明は、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させる描画制御手段を備え、前記描画制御手段は、複数配列された前記液滴吐出素子の各々に、前記記録媒体の所定方向に互いに平行に直線を描かせ、前記直線の幅と隣接する直線からの間隔との関係が、
【数8】
となる前記試験画像を描画させることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の印刷システムの発明は、記録媒体に画像データを印字する液滴吐出素子が複数配列された液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を前記記録媒体に描画させる描画制御手段と、前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付ける不良情報受付手段と、前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正する補正手段と、を備え、前記描画制御手段は、複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせて前記試験画像を描画させることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記補正手段が、前記不良情報に基づいて、前記記録媒体の同一領域を液滴吐出ヘッドによる複数回の走査により印字する記録方法と1回の走査により印字する記録方法とを切り替えることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記不良情報受付手段が、吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記補正手段が、前記不良情報に基づいて、前記吐出方向性不良の液滴吐出素子の印刷データを所定割合で間引き、間引いた印刷データを隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記不良情報には吐出方向性不良の有無及び程度が含まれ、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、吐出方向性不良の程度が所定のレベルを超えた液滴吐出素子の印刷データを全て隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする。
【0018】
請求項13記載の印刷制御プログラムの発明は、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させ、前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正し、前記試験画像を記録媒体に描画させるために、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0020】
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の程度がより小さい液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の程度がさらにより小さい液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、特定可能な液滴吐出素子の数を増やすことができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定を容易に行うことができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、視認しやすい試験画像を実現できる。
【0025】
請求項7の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、吐出方向性不良の程度の大小を容易に判定できる。
【0026】
請求項8の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷制御装置を提供できる。
【0027】
請求項9の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷システムを提供できる。
【0028】
請求項10の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体と不良情報とに応じて適宜記録方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0029】
請求項11の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体と不良情報とに応じて適宜印刷データの処理方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0030】
請求項12の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、吐出方向性不良の有無及び程度に応じて適宜印刷データの処理方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0031】
請求項13の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷制御プログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0033】
図1には、本発明にかかる印刷システムの一実施形態における機能ブロック図が示される。図1において、印刷システムは、印刷制御装置10および印刷装置12を含んで構成されている。印刷制御装置10は、アプリケーション14から取得した印刷対象である画像データを印刷装置12が処理可能な形式のデータに変換し、印刷装置12に出力する。印刷装置12は、印刷制御装置10から受け取った変換後の画像データを印刷出力する。なお、アプリケーション14は、印刷対象である画像データを印刷指示とともに印刷制御装置10に出力する機能を有する一般的なソフトウエアである。
【0034】
上記印刷制御装置10は、描画制御部100、操作受付部102、補正部104、出力部106、表示制御部108及び記憶部110を含んで構成されている。
【0035】
描画制御部100は、中央処理装置(CPU)及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、アプリケーション14から取得した画像データを印刷装置12が処理可能な印刷データに変換する。また、後述する印刷装置12の液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させるために、試験画像データの生成も行う。なお、上記試験画像データの生成は、記憶部110に予め記憶しておいたデータを使用してもよいし、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポート等の適宜な通信インターフェース等を介して外部から取得したデータを使用してもよい。
【0036】
操作受付部102は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、操作部16からの入力を受け付ける。この入力には、例えば印刷装置12に設けられた液滴吐出ヘッド122に複数配列された液滴吐出素子のうち、不吐出または吐出方向性不良等の動作不良が生じている液滴吐出素子に関する不良情報が含まれる。不良情報は、動作不良が生じている液滴吐出素子の番号等の情報である。
【0037】
補正部104は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、上記不良情報に基づいて液滴吐出ヘッド122の印字動作を補正する補正情報を生成する。この補正情報を生成する際に、補正部104は、動作不良の液滴吐出素子を特定する処理も行う。動作不良の液滴吐出素子の特定については後述する。
【0038】
出力部106は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、描画制御部100が生成した印刷データ、試験画像データ等を通信部18を介して印刷装置12に出力する。
【0039】
表示制御部108は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、利用者に不良情報の入力を要請する画像等を表示部20に表示する動作を制御する。
【0040】
記憶部110は、CPUの作業メモリとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスク装置等の磁気記憶装置その他のコンピュータが読み取り可能な記憶装置により実現され、上記CPUの処理動作を制御するプログラム、試験画像データ等を記憶する。
【0041】
なお、操作部16は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等のデータ入力装置により実現され、利用者が動作不良の液滴吐出素子に関する不良情報等を入力するために使用する。また、通信部18は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポート等の適宜な通信インターフェースにより実現され、出力部106と印刷装置12との間でデータの授受を行う。また、表示部20は、液晶ディスプレイ等の表示装置により実現され、表示制御部108の制御に基づいて各種画像を表示する。
【0042】
また、印刷装置12は、ヘッド駆動部120、液滴吐出ヘッド122及び媒体搬送部124を含んで構成されている。
【0043】
ヘッド駆動部120は、印刷制御装置10から受け取った印刷データ、試験画像データ等に基づいて液滴吐出ヘッド122の動作を制御する。
【0044】
液滴吐出ヘッド122は、インク滴を吐出する液滴吐出素子が複数配列されて構成され、印刷用紙等の記録媒体に画像を印刷する。なお、液滴吐出素子は、圧電素子等の容量性負荷により構成されている。
【0045】
媒体搬送部124は、上記液滴吐出ヘッド122により画像が印刷される記録媒体を、液滴吐出ヘッド122の印字タイミングに同期して搬送する。
【0046】
なお、本実施形態では、インク滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた印刷装置を例に説明するが、これに限定されるものではない。液滴吐出ヘッドを備える印刷装置としては、例えば、フィルムやガラス上にインク等を吐出してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、溶解状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置、液状の金属を吐出して配線パターンを形成する装置及び液滴を吐出して膜を形成する各種の成膜装置であってもよく、液滴を吐出するものであればよい。
【0047】
図2(a)、(b)、(c)には、描画制御部100が生成した試験画像データに基づいて印刷装置12が印刷出力した試験画像の説明図が示される。ここで、図2(a)は液滴吐出ヘッド122の概略図であり、図2(b)は試験画像の例であり、図2(c)は滴吐出ヘッド122に吐出方向性不良の液滴吐出素子が存在している場合の試験画像の例である。
【0048】
図2(a)において、滴吐出ヘッド122には、n個の液滴吐出素子が配列されている。液滴吐出素子は白抜きの丸印で示されている。なお、液滴吐出素子の番号は、0から始まりn−1まで(n個)となっている。なお、矢印A方向が紙送り方向であり、液滴吐出ヘッド122には、紙送り方向に交差(例えば直交)する方向に液滴吐出素子が配列されている。なお、図2(a)は、液滴吐出素子の吐出口が一列に配列された例であるが、液滴吐出素子の吐出口の配置はこれに限られず、矢印A方向の紙送り方向に直交する方向の位置が等間隔であればよく、液滴吐出素子の吐出口が2次元的に配列されていてもよい。
【0049】
また、図2(b)において、試験画像は、描画制御部100が生成した試験画像データに基づいて、液滴吐出ヘッド122に配列されたn個の液滴吐出素子に、記録媒体の所定方向(紙送り方向)に等しい長さの直線の組を描画させたものである。液滴吐出素子は、液滴吐出ヘッド122に等しい間隔で配列されているので、試験画像として描画された線も互いに等しい距離離間している。また、各直線の始点・終点は各々紙送り方向Aに交差する直線上に配置されているが、始点・終点が配置された直線は紙送り方向Aに直交していなくてもよく、斜めに傾いていてもよい。
【0050】
図2(c)の例では、7番目の液滴吐出素子の吐出方向が6番目の液滴吐出素子方向にずれている。このため、7番目と8番目の液滴吐出素子が描画した直線の間隔が広くなる。この間隔が広くなった位置をずれ位置という。本例では、ずれ位置を利用者が確認することにより吐出方向性不良(適正な方向に液滴を吐出できない状態)を検出することができる。
【0051】
なお、吐出方向性不良ではなく液滴を吐出しない不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる。この直線が不存在となった位置を消失位置といい、消失位置を利用者が確認することにより不吐出の液滴吐出素子を検出することができる。
【0052】
図3には、上記試験画像において、利用者が吐出方向性不良を確認し易くするための描画方法の説明図が示される。図3において、直線αが液滴吐出素子により複数本描画されている。また、直線βは、直線αの始点・終点が配置された直線である。なお、直線αは、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の数だけ描画されるが、図3ではその一部が示されている。また、直線βが描画されていたほうが利用者が吐出方向性不良を確認しやすいと考えられるが、必ずしも描画されている必要はない。
【0053】
ここで、利用者が吐出方向性不良を確認し易くするためには、直線αの幅Wと互いに隣接する直線の間隔(直線α同士の間隔)Lとの関係が、
【数9】
であることがよい。また、
【数10】
とすれば、直線の描画位置のより小さなずれを検出でき、
【数11】
とすれば、さらに小さなずれを検出できる。以上に述べた各関係については、実施例にて詳細に説明する。
【0054】
図4(a)、(b)には、試験画像の他の例が示される。本例は、35個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122にて描画した試験画像であり、直線の組が複数形成されている。
【0055】
図4(a)において、試験画像は、描画制御部100が、液滴吐出ヘッド122に複数(35個)配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、この部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数(5個及び7個)の組合せとなるように複数種類設定し、各種類の部分配列毎に、部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に記録媒体の所定方向(紙送り方向A)に直線を順次描かせるように試験画像データを生成し、印刷装置12に描画させたものである。なお、液滴吐出ヘッド122には、紙送り方向Aに交差(例えば直交)する方向に液滴吐出素子が配列されている。また、各組の直線の長さは略等しい距離とするのが好適である。
【0056】
図5には、液滴吐出ヘッド122における液滴吐出素子の配列例が示される。図5では、35個の液滴吐出素子が配列されている。ここで、液滴吐出素子に0番から34番(総数35個)の番号を割り付けると、液滴吐出素子の数が5個の部分配列は7個(a〜g)設定され、それぞれの部分配列a〜gには、0番〜4番、5番〜9番、10番〜14番、15番〜19番、20番〜24番、25番〜29番、30番〜34番の液滴吐出素子が含まれることになる。これらの部分配列内で互いに対応する位置にある液滴吐出素子、すなわちI:(0,5,10,15,20,25,30)番、II:(1,6,11,16,21,26,31)番、III:(2,7,12,17,22,27,32)番、IV:(3,8,13,18,23,28,33)番、V:(4,9,14,19,24,29,34)番の液滴吐出素子により、上記括弧の順序(I〜V)で紙送り方向に平行に直線を描画させることにより、互いに等しい距離離間した7本の平行線で構成される直線の組が5個形成された5段画像が描画される。ここで、各直線の組を構成する平行な直線は、等しい長さとするのが好適であるが、視認性を低下させなければ互いに異なる長さとしてもよい。なお、図4(a)では、上記各括弧内の液滴吐出素子が同時に線の描画を行った例が示されているが、同一の組に含まれる各線の始点・終点が各々直線上に配置されるタイミングで各液滴吐出素子に描画を行わせてもよい。これにより、紙送り方向に斜めにずれた試験画像を形成することもできる。また、図4(a)では、上記括弧の順序で、各括弧に記載された液滴吐出素子に平行線を描画させているが、括弧の順序はこれに限定されず、他の順序であってもよい。なお、図4(a)の例では、上記括弧の順序(I〜V)で線の組を描画しているので、隣接する各組が、紙送り方向Aに直交する方向に液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されている。
【0057】
同様にして、液滴吐出素子の数が7個の部分配列は5個設定されるので、互いに等しい距離離間した5本の平行線で構成される線の組が7個形成された7段画像が描画される。
【0058】
以上のように、図4(a)では、上記5段画像及び7段画像により構成される2つの直線群により試験画像が形成されている。この場合、各直線群に含まれる組の数は、各部分配列に含まれる液滴吐出素子の数に等しく5個と7個になっており、互いに1以外の公約数を有さない(この関係を以後「互いに素」という)数の組合せとなっている。この試験画像は、ヘッド駆動部120の制御により液滴吐出ヘッド122の1回の走査で描画されるように構成するのが好適である。なお、試験画像には、液滴吐出素子識別用の符号を描画してもよい。この符号は、上記組に付した0から始まる番号であり、5段画像では0〜4の番号が、7段画像では0〜6の番号が付されている。なお、この符号は、上記線の組を描画する際に使用する液滴吐出素子を表す括弧(5段画像ではI〜V)の順序を表しているが、上述したとおりこの順序はI,II,III,IV,Vである必要はない。この順序が変更された場合には、対応する図4(a)の符号の順序も変更される。例えば、括弧IとIIに所属する液滴吐出素子の描画順序が入れ替わると、対応する符号も0→1の順序が1→0となる。
【0059】
以上に述べた5段画像及び7段画像においても、各組の直線の幅と互いに隣接する直線の間隔とは、上記式(1)、式(2)または式(3)の関係を満たしているのが好適である。
【0060】
図4(b)には、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の一部に吐出方向性不良のが生じた場合の試験画像の例が示される。本例においては、吐出方向性不良の液滴吐出素子が2個発生しており、それぞれ不良1、不良2と呼ぶ。このような吐出方向性不良の液滴吐出素子により、5段画像及び7段画像のそれぞれにおいて、直線の間隔が広くなっている部分が生じている。これは、本来より図の上側に吐出方向がずれたためである。
【0061】
本実施形態にかかる試験画像では、この直線の間隔が広くなっている部分の位置(ずれ位置)に基づいて、補正部104が以下のように吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定する。なお、吐出方向性不良ではなく不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる消失位置が生じるので、不吐出の液滴吐出素子を検出することもできる。
【0062】
液滴吐出素子の番号を0から始まる番号とし、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号をXとすると、5段画像においては、X÷5の余りに相当する符号の位置にずれ位置が現れ、7段画像においては、X÷7の余りに相当する符号の位置にずれ位置が現れる。また、各直線群に含まれる組の数すなわち段数は互いに素の関係になっており、これらの組合せと上記Xとは1対1の関係となる。このため、段数の積が特定できるXの最大値となる。
【0063】
図4(b)の例において、不良1によるずれ位置は、5段画像の符号0の位置と7段画像の符号3の位置である。これらの符号の数値を、利用者が操作部16から入力し、操作受付部102が入力された符号の数値を補正部104にわたす。ここで、不良1の液滴吐出素子の番号をXとし、利用者が入力したずれ位置との関係を合同式で表すと、
(1)X≡0(mod5)。これは、番号Xを5で割ると余りが0であることを意味している。
(2)X−3≡0(mod7)。これは、番号Xから3を引いた数を7で割ると余りが0であることを意味している。
【0064】
上記(1)より、Xは5の倍数であるからX=5kとおき、(2)の合同式に代入する。
(3)5k−3≡0(mod7)。従って、5k≡3(mod7)。さらに変形して7k−2k≡3(mod7)。
【0065】
ここで、7kは7で割り切れる(余りが0)ので、
(4)−2k≡3(mod7)。従って、2k≡−3(mod7)。従って、2k≡4(mod7)となり、k≡2(mod7)となる。
【0066】
よって、kは7で割ると2余る数であるので、k=7l+2と書ける。ここで、lは整数である。Xをlで表すと、
(5)X=5k=5(7l+2)=35l+10。ただし、0≦X≦34なのでX=10となり、不良1の液滴吐出素子の番号は10であることがわかる。
【0067】
また、不良2によるずれ位置は、5段画像の符号1の位置と7段画像の符号5の位置である。従って、これを合同式で表すと、X≡0(mod5)、及びX−3≡0(mod7)となる。これらを、不良1の場合と同様にして解くと、X=26となり、不良2の液滴吐出素子の番号は26であることがわかる。
【0068】
以上のようにして、本実施形態にかかる試験画像によれば、合同式という数式を使用して吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定することができる。なお、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定は、逐次代入法により演算して求める方法もある。例えば、不良1の例では、X=5aとして、0≦X≦34の範囲で満たす候補をテーブル化(0,5,10,15,20,25,30)し、この中からX=7b+3を満たすものを、3を引いて7で割り切れるか否かの判定を行って求め、その値(この場合10)を吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号として特定する。
【0069】
また、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定には、所定のテーブルを使用してもよい。
【0070】
図6(a)、(b)には、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定に使用するテーブルの例が示される。図6(a)、(b)は、35個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122において吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定するためのテーブルである。
【0071】
図6(a)には、各液滴吐出素子のそれぞれに吐出方向性不良が発生した場合に、5段画像及び7段画像のそれぞれにおいて発生するずれ位置が、液滴吐出素子の番号毎に整理されている。図5(a)から分かるように、各ずれ位置の符号は、液滴吐出素子番号を段数(5及び7)で割った余りの数値であることがわかる。
【0072】
また、図6(b)は、図6(a)を5段画像におけるずれ位置で整理したテーブルである。図6(b)から分かるように、5段画像におけるずれ位置と7段画像におけるずれ位置とは、35個の液滴吐出素子に対して唯一の組み合わせであることがわかる。
【0073】
補正部104は、利用者が操作部16から入力した符号に基づき、上記図6(a)または図6(b)を参照して吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定することができる。例えば、上述した不良1の場合では、5段画像のずれ位置が符号0、7段画像のずれ位置が符号3であるので、図6(a)または図6(b)から吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を10番と特定できる。同様に、不良2の場合には、5段画像のずれ位置が符号1、7段画像のずれ位置が符号5であるので、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を26番と特定できる。
【0074】
以上に述べた実施形態においては、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を試験画像上で数える必要がなく、ずれ位置が属する組の位置を確認すればよいので、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定を容易に且つ正確に行うことができる。
【0075】
なお、図4(a)、(b)の例では、5×7=35個の液滴吐出素子特定する試験画像であったが、液滴吐出素子の配列は必ずしも35個のように互いに素な数の積になるとは限らない。この場合には、試験画像を構成する直線の組のうち一部の組で直線の本数を他の組と異なる本数として対応すればよい。例えば34個の液滴吐出素子の配列の場合には、直線の数が1本少ない直線の組が1つ存在することになる。
【0076】
また、図4(a)、(b)の例では、5段画像と7段画像との2つの直線群により構成された試験画像であったが、例えば7段画像と11段画像との2つの直線群により試験画像を構成するなど、各直線群に含まれる組の数が互いに素となっている他の試験画像であってもよい。試験画像を構成する直線群の数も2つに限られず、例えば3段画像と5段画像と7段画像との3つの直線群により構成される試験画像など、3つ以上の直線群により構成される試験画像であってもよい。
【0077】
図7には、試験画像のさらに他の例が示される。図7では、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の数が多数になった場合の例である。印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された液滴吐出ヘッドにおいては、液滴吐出素子数が多くなり、例えば7880個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122もある。
【0078】
図7の例では、上述した線の組が5個形成された5段画像、6個形成された6段画像及び7個形成された7段画像により試験画像が形成されている。ここで、5,6,7は互いに素であり、5×6×7=210個の液滴吐出素子を、それぞれの段のずれ位置から唯一特定することができる。しかし、これ以上の数の液滴吐出素子を特定するためには、さらに段数の多い試験画像を追加する必要があり、直線の間隔が広くなって、上記式(1)〜式(3)の関係を維持できなくなる。したがって、上記7880個の液滴吐出素子を唯一特定することが困難となる。そこで、本例の試験画像では、液滴吐出ヘッド122における液滴吐出素子の並び方向に、210個の液滴吐出素子が描画した直線毎に区切り、単位試験画像を構成している。この単位試験画像内の210本の直線は、図4(a)、(b)で説明した手順と同様にして各段数と等しい数の直線の組により、5段画像(直線数42本)、6段画像(直線数35本)及び7段画像(直線数30本)が形成されている。また、各単位試験画像を区別するための番号も付加されている。この番号は0から付されている。なお、図7では、試験画像を構成する各直線は記載を省略している。また、吐出方向性不良の液滴吐出素子により生じたずれ位置が2本の平行線で示されている。
【0079】
図7の場合、12番目の単位試験画像内において、5段画像の符号1の位置、6段画像の符号4の位置及び7段画像の符号1の位置にずれ位置が生じている。この結果から、図4(a)、(b)で説明した合同式または所定のテーブルを使用して、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を、12番目の単位試験画像における106番と特定することができる。次に、左に単位試験画像の番号が12番であることより、210×12+106=2416番の液滴吐出素子に吐出方向性不良が発生していることが認識できる。
【0080】
図7の例においても、吐出方向性不良ではなく不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる消失位置が生じるので、不吐出の液滴吐出素子を検出することもできる。
【0081】
なお、本実施形態の液滴吐出ヘッド122は、印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された型式であるので、符号を試験画像の外に描画することが困難であるので、試験画像内に描画している。
【0082】
図8には、本実施形態にかかる印刷制御装置10の動作例のフローが示される。図8において、描画制御部100が試験画像データを生成し、印刷装置12の液滴吐出ヘッド122に配列された各液滴吐出素子に、試験画像を描画させる(S101)。この試験画像は、印刷用紙等の記録媒体に描画される。また、印刷装置12がカラー印刷機能を有する場合には、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄)の各色毎に試験画像を描画する。
【0083】
次に、利用者が、上記試験画像が描画された記録媒体を参照し、ずれ位置がないか否かを確認する。ずれ位置があった場合には、その位置を示す符号を操作部16を介して入力する。操作受付部102は、入力された符号を不良情報として受け付ける。また、不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、消失位置を示す符号を不良情報として入力する(S102)。この場合の操作受付部102が、本発明の不良情報受付手段として機能する。
【0084】
操作受付部102は、受け付けた符号を補正部104に渡し、補正部104では、上述した図2(a)、(b)、(c)、図4(a)、(b)及び図7で説明した手順により、吐出方向性不良または不吐出(両者を合わせて動作不良という)の液滴吐出素子を特定する(S103)。特定した動作不良の液滴吐出素子に関する情報は、記憶部110に記憶しておくのが好適である。
【0085】
次に、補正部104は、上記特定した動作不良の液滴吐出素子の影響を低減するために、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の印字動作を補正するための補正情報を生成する(S104)。
【0086】
印字動作の補正は、例えば使用する記録媒体が普通紙であるか光沢紙であるかの情報を予め取得しておき、記録媒体の種類に応じて印字動作を変更することが好適である。一般に、光沢紙は、高画質に対する要請が高く、吐出方向性不良に対して感度が高い用紙である。これに対して、普通紙は、高印字速度に対する要請が高く、吐出方向性不良に対する感度が緩慢な用紙である。また、印字方法としては、記録媒体の同一領域を1回の走査にて画像形成が完了する1パス記録と、複数回の走査にて画像形成が完了する多パス記録とがある。1パス記録では、高印字速度となるが、動作不良の液滴吐出素子があると高画質の実現は困難である。一方、多パス記録では、印字速度は低くなるが、吐出方向性不良や機械的な改行誤差が複数回のスキャンにより平均化されるため、スジ、むらの低減が可能となり、高画質を実現できる。また、あるラインに対して、複数回ノズルが通過する制御が可能となる為、動作不良の液滴吐出素子があったとしても、その液滴吐出素子で印字予定だった部分を他の正常な液滴吐出素子で代替記録が可能となり、この点でも高画質が実現できる。そこで、1パス記録で印字中に上記S103のステップで動作不良の液滴吐出素子が特定された場合、記録媒体が普通紙のときは1パス記録を続行し、光沢紙のときは多パス記録に切り替える旨の補正情報を補正部104が生成することが好適である。
【0087】
さらに、上記1パス記録と多パス記録との切替は、以下の表1に示す基準に従って行ってもよい。なお、表1の内容は、予め記憶部110に記憶させておく。
【表1】
【0088】
表1においては、記録媒体が普通紙の場合には、動作不良の液滴吐出素子として不吐出の液滴吐出素子が存在する場合及び不吐出と吐出方向性不良の液滴吐出素子が同時に存在する場合に、多パス記録に切り替え、当該動作不良の液滴吐出素子を使用せず、他の動作が正常な液滴吐出素子に印字させる。これに対して、動作不良の液滴吐出素子が吐出方向性不良の液滴吐出素子のみの場合には1パス記録とし、吐出方向性不良の液滴吐出素子をそのまま使用する。普通紙では、吐出方向がずれても目立たない場合が多いからである。
【0089】
一方、記録媒体が光沢紙の場合には、動作不良の液滴吐出素子が存在する場合には、不吐出及び吐出方向性不良のいずれの場合でも、多パス記録に切り替え、当該動作不良の液滴吐出素子を使用せず、他の動作が正常な液滴吐出素子に印字させる。
【0090】
図9には、本実施形態にかかる印刷制御装置10の他の動作例のフローが示される。図9は、液滴吐出素子の状態に応じて補正部104が印刷データの処理方法を変更する場合の動作例である。
【0091】
図9において、描画制御部100が生成した印刷データを補正部104が取得する(S201)。この印刷データは、各液滴吐出素子をON(吐出動作)またはOFF(不吐出動作)とするデータとなっている。
【0092】
次に、補正部104は、各液滴吐出素子の状態を確認し、不吐出の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S202)。不吐出の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを隣接する液滴吐出素子のOFFデータに移動し、隣接する液滴吐出素子によりインク滴の吐出を行うように印刷データを補正する(S203)。これにより、不吐出の液滴吐出素子が描画すべき画素を、隣接の液滴吐出素子が代わりに描画することになる。このため、多パス記録では画素の消失を防止でき、1パス記録でも消失した画素を隣の画素に置き換えて、画素の消失を目立たなくすることができる。
【0093】
一方、S202において不吐出の液滴吐出素子がない場合またはS203において補正処理を行った後に、補正部104は吐出方向性不良の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S204)。吐出方向性不良の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを一定の割合で間引き、間引いた分を隣接する液滴吐出素子に付加するように印刷データを補正する(S205)。上記ONデータを間引く割合を適宜決定することにより、吐出方向性不良を目立たなくすることができる。
【0094】
補正部104は、以上のステップで生成した補正情報を出力部106から印刷装置12に出力する(S206)。
【0095】
図10には、試験画像のさらに他の例が示される。図10において、試験画像は、5段画像、6段画像、7段画像及び10段画像により形成されている。これらのうち、5段画像、6段画像及び7段画像は不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号(0から209番までの210個)を特定するための試験画像である。また、10段画像は、吐出方向性不良の液滴吐出素子について、吐出方向性不良の程度すなわち吐出方向のずれが大か小かを判定するための試験画像である。
【0096】
なお、図10の例では、吐出方向性不良の程度を判定する試験画像として10段画像、すなわち5段画像、6段画像及び7段画像の各直線群における直線の間隔より大きい間隔で直線が描画されたものを使用したが、小さい間隔で直線が描画されていてもよい。例えば、3段画像を使用すれば5段画像、6段画像及び7段画像の各直線群における直線の間隔より小さい間隔で直線が描画された試験画像となる。
【0097】
利用者は、試験画像を参照し、消失位置(不吐出)またはずれ位置(吐出方向性不良)の符号および液滴吐出素子の動作不良が不吐出なのか吐出方向性不良なのかの情報を操作部16から入力する。また、吐出方向性不良の場合、5段画像、6段画像及び7段画像のずれ位置は必ず入力し、10段画像のずれ位置は、ずれ位置が視認できた場合のみ入力する。これは、10段画像の場合、直線の間隔が広くなるので、吐出方向性不良が小さいと見えにくい(視認できない)からである。この結果、10段画像のずれ位置の入力がある場合には吐出方向性不良が大であり、この入力がない場合には吐出方向性不良が小と判定することができる。
【0098】
以上のように、図10の試験画像によれば、吐出方向性不良大、吐出方向性不良小、不吐出の液滴吐出素子を特定することができる。
【0099】
図11には、本実施形態にかかる印刷制御装置10のさらに他の動作例のフローが示される。図11は、図10で特定された吐出方向性不良大、吐出方向性不良小の液滴吐出素子に応じて補正部104が印刷データの処理方法を変更する場合の動作例である。
【0100】
図11において、描画制御部100が生成した印刷データを補正部104が取得する(S301)。この印刷データは、各液滴吐出素子をON(吐出動作)またはOFF(不吐出動作)とするデータとなっている。
【0101】
次に、補正部104は、各液滴吐出素子の状態を確認し、不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S302)。不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを隣接する液滴吐出素子のOFFデータに移動し、隣接する液滴吐出素子によりインク滴の吐出を行うように印刷データを補正する(S303)。これにより、不吐出及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子が描画すべき画素を、隣接の液滴吐出素子が代わりに描画することになる。これにより、不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子の画像品質への影響を軽減できる。
【0102】
一方、S302において不吐出及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子がない場合またはS303において補正処理を行った後に、補正部104は吐出方向性不良小の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S304)。吐出方向性不良小の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを一定の割合で間引き、間引いた分を隣接する液滴吐出素子に付加するように印刷データを補正する(S305)。上記ONデータを間引く割合を適宜決定することにより、吐出方向性不良を目立たなくすることができる。
【0103】
補正部104は、以上のステップで生成した補正情報を出力部106から印刷装置12に出力する(S306)。
【0104】
なお、上記図8、図9及び図11の各ステップを実行するためのプログラムは、通信手段により提供してもよいし、CDROM等の記憶媒体に格納して提供してもよい。
【実施例】
【0105】
以下に、図3に示された直線αの幅Wと互いに隣接する直線の間隔(直線α同士の間隔)Lとの比(W/L)が吐出方向性不良の判別容易性に与える影響を検討した実施例を説明する。
【0106】
図12には、吐出方向性不良の判別可能範囲の実験結果が示される。図12の横軸はW/Lの値であり、縦軸は、吐出方向性不良の液滴吐出素子が描画した直線のずれ量Xと直線αの幅Wとの比(X/W)である。これらの2軸に対してW,L,Xの値を変化させ、複数の座標(W/L,X/W)に対応する条件で目視により直線のずれの視認可能性を評価した。具体的には、1段画像から10段画像までの試験画像の中に、意図的に直線のずれを発生させ、そのずれが発生している箇所が目視にて視認できるか否かを評価した。なお、線幅Wに関しては、異なる複数の駆動信号を使用してインク滴径を異ならせることによって複数条件用意し、DA6000により測定した値とした。
【0107】
本実施例で採用した実験条件は、
・線の間隔(10種):44,88,132,176,220,265,309,353,397,441μm
・ずれ量(5種):8.8,17.6,26.5,35.3,44.1μm
・線幅(15種):32.7,41.7,49.6,52.5,62.1,63.5,73.1,74.1,78.9,82.7,91.0,102.0,112.0,120.0,135.0μm
【0108】
以上の450条件に関して、ずれの発生箇所を視認可能な場合を○、視認不可能な場合を×を図12に表示した。
・記録用紙 :普通紙(富士ゼロックス社製 C2紙)
・使用インク :ブラック
・線幅測定装置 :王子計測機器社製 DA6000
【0109】
図12に示されるように、0.15<W/L<0.90の範囲では、ずれ量/線幅(X/W)にて0.4以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、2段画像〜11段画像で30μmのずれが視認可能となる。
【0110】
また、0.20<W/L<0.70の範囲では、X/Wにて0.2以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、3段画像〜8段画像で15μmのずれが視認可能となる。
【0111】
さらに、0.35<W/L<0.65の範囲では、X/Wにて0.15以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、3段画像〜5段画像で11.25μmのずれが視認可能となる。
【0112】
以上より、W/Lとしては、視認すべきずれ量と線幅との関係に応じて、上記3つの範囲に設定するのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明にかかる印刷システムの一実施形態における機能ブロック図である。
【図2】試験画像の説明図である。
【図3】試験画像の描画方法の説明図である。
【図4】試験画像の他の例を示す図である。
【図5】液滴吐出ヘッドにおける液滴吐出素子の配列例を示す図である。
【図6】吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定に使用するテーブルの例を示す図である。
【図7】試験画像のさらに他の例を示す図である。
【図8】本発明にかかる印刷制御装置の動作例のフロー図である。
【図9】本発明にかかる印刷制御装置の他の動作例のフロー図である。
【図10】試験画像のさらに他の例を示す図である。
【図11】本発明にかかる印刷制御装置のさらに他の動作例のフロー図である。
【図12】吐出方向性不良の判別可能範囲の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
10 印刷制御装置、12 印刷装置、14 アプリケーション、16 操作部、18 通信部、20 表示部、100 描画制御部、102 操作受付部、104 補正部、106 出力部、108 表示制御部、110 記憶部、120 ヘッド駆動部、122 液滴吐出ヘッド、124 媒体搬送部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷装置の高速化、高画質化に伴い、印字ヘッドの高密度化、多印字素子化が進んでいる。特に、印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された印字ヘッドを備え、ページ幅分を一括で印字可能な印刷装置も多数提案されており、このような印刷装置の場合には、印字ヘッドに搭載される液滴吐出素子等の印字素子の数が数千になるものも存在する。
【0003】
このような従来の印刷装置においては、インクの吐出方向が正常方向からずれてしまう吐出方向性不良あるいはインクの吐出が不能となる不吐出等の動作不良の印字素子を特定し、印字動作を補正して画像品質の劣化を最小限にとどめる方法が多数提案されている。このため、動作不良の印字素子の特定が極めて重要である。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、基準ノズルと検査対象ノズルとにより、検査対象ノズルから吐出されたインクの吐出方向のずれを検出する印刷動作状態判定システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−262813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な記録媒体、印刷制御装置、印刷システム及び印刷制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の記録媒体の発明は、互いに等しい距離離間し、始点・終点が各々直線上に配置され、所定方向に互いに平行に描画される所定本数の直線の組を含み、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、
【数5】
となっている、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作試験を行うための試験画像が描画されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式1)の代わりに
【数6】
とされていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式2)の代わりに
【数7】
とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の発明において、前記直線の組が前記所定方向に複数描画されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記直線の組を複数含む直線群が複数形成され、各直線群に含まれる組の数が互いに異なり且つ各直線群に含まれる組の数は互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記各直線群では、隣接する前記直線の組が、前記所定方向に直交する方向に前記液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6記載の発明において、前記各直線群における直線の間隔より大きいまたは小さい間隔の直線の組がさらに描画されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の印刷制御装置の発明は、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させる描画制御手段を備え、前記描画制御手段は、複数配列された前記液滴吐出素子の各々に、前記記録媒体の所定方向に互いに平行に直線を描かせ、前記直線の幅と隣接する直線からの間隔との関係が、
【数8】
となる前記試験画像を描画させることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の印刷システムの発明は、記録媒体に画像データを印字する液滴吐出素子が複数配列された液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を前記記録媒体に描画させる描画制御手段と、前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付ける不良情報受付手段と、前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正する補正手段と、を備え、前記描画制御手段は、複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせて前記試験画像を描画させることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記補正手段が、前記不良情報に基づいて、前記記録媒体の同一領域を液滴吐出ヘッドによる複数回の走査により印字する記録方法と1回の走査により印字する記録方法とを切り替えることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記不良情報受付手段が、吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記補正手段が、前記不良情報に基づいて、前記吐出方向性不良の液滴吐出素子の印刷データを所定割合で間引き、間引いた印刷データを隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記不良情報には吐出方向性不良の有無及び程度が含まれ、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、吐出方向性不良の程度が所定のレベルを超えた液滴吐出素子の印刷データを全て隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする。
【0018】
請求項13記載の印刷制御プログラムの発明は、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させ、前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正し、前記試験画像を記録媒体に描画させるために、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0020】
請求項2の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の程度がより小さい液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の程度がさらにより小さい液滴吐出素子の有無を目視にて容易に特定可能な記録媒体を提供できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、特定可能な液滴吐出素子の数を増やすことができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定を容易に行うことができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、視認しやすい試験画像を実現できる。
【0025】
請求項7の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、吐出方向性不良の程度の大小を容易に判定できる。
【0026】
請求項8の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷制御装置を提供できる。
【0027】
請求項9の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷システムを提供できる。
【0028】
請求項10の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体と不良情報とに応じて適宜記録方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0029】
請求項11の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体と不良情報とに応じて適宜印刷データの処理方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0030】
請求項12の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、吐出方向性不良の有無及び程度に応じて適宜印刷データの処理方法を選択できる印刷システムを提供できる。
【0031】
請求項13の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子を目視にて容易に特定可能な試験画像を描画するための印刷制御プログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0033】
図1には、本発明にかかる印刷システムの一実施形態における機能ブロック図が示される。図1において、印刷システムは、印刷制御装置10および印刷装置12を含んで構成されている。印刷制御装置10は、アプリケーション14から取得した印刷対象である画像データを印刷装置12が処理可能な形式のデータに変換し、印刷装置12に出力する。印刷装置12は、印刷制御装置10から受け取った変換後の画像データを印刷出力する。なお、アプリケーション14は、印刷対象である画像データを印刷指示とともに印刷制御装置10に出力する機能を有する一般的なソフトウエアである。
【0034】
上記印刷制御装置10は、描画制御部100、操作受付部102、補正部104、出力部106、表示制御部108及び記憶部110を含んで構成されている。
【0035】
描画制御部100は、中央処理装置(CPU)及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、アプリケーション14から取得した画像データを印刷装置12が処理可能な印刷データに変換する。また、後述する印刷装置12の液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させるために、試験画像データの生成も行う。なお、上記試験画像データの生成は、記憶部110に予め記憶しておいたデータを使用してもよいし、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポート等の適宜な通信インターフェース等を介して外部から取得したデータを使用してもよい。
【0036】
操作受付部102は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、操作部16からの入力を受け付ける。この入力には、例えば印刷装置12に設けられた液滴吐出ヘッド122に複数配列された液滴吐出素子のうち、不吐出または吐出方向性不良等の動作不良が生じている液滴吐出素子に関する不良情報が含まれる。不良情報は、動作不良が生じている液滴吐出素子の番号等の情報である。
【0037】
補正部104は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、上記不良情報に基づいて液滴吐出ヘッド122の印字動作を補正する補正情報を生成する。この補正情報を生成する際に、補正部104は、動作不良の液滴吐出素子を特定する処理も行う。動作不良の液滴吐出素子の特定については後述する。
【0038】
出力部106は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、描画制御部100が生成した印刷データ、試験画像データ等を通信部18を介して印刷装置12に出力する。
【0039】
表示制御部108は、CPU及びCPUの処理動作を制御するプログラムを含んで実現され、利用者に不良情報の入力を要請する画像等を表示部20に表示する動作を制御する。
【0040】
記憶部110は、CPUの作業メモリとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスク装置等の磁気記憶装置その他のコンピュータが読み取り可能な記憶装置により実現され、上記CPUの処理動作を制御するプログラム、試験画像データ等を記憶する。
【0041】
なお、操作部16は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等のデータ入力装置により実現され、利用者が動作不良の液滴吐出素子に関する不良情報等を入力するために使用する。また、通信部18は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポート等の適宜な通信インターフェースにより実現され、出力部106と印刷装置12との間でデータの授受を行う。また、表示部20は、液晶ディスプレイ等の表示装置により実現され、表示制御部108の制御に基づいて各種画像を表示する。
【0042】
また、印刷装置12は、ヘッド駆動部120、液滴吐出ヘッド122及び媒体搬送部124を含んで構成されている。
【0043】
ヘッド駆動部120は、印刷制御装置10から受け取った印刷データ、試験画像データ等に基づいて液滴吐出ヘッド122の動作を制御する。
【0044】
液滴吐出ヘッド122は、インク滴を吐出する液滴吐出素子が複数配列されて構成され、印刷用紙等の記録媒体に画像を印刷する。なお、液滴吐出素子は、圧電素子等の容量性負荷により構成されている。
【0045】
媒体搬送部124は、上記液滴吐出ヘッド122により画像が印刷される記録媒体を、液滴吐出ヘッド122の印字タイミングに同期して搬送する。
【0046】
なお、本実施形態では、インク滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた印刷装置を例に説明するが、これに限定されるものではない。液滴吐出ヘッドを備える印刷装置としては、例えば、フィルムやガラス上にインク等を吐出してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、溶解状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置、液状の金属を吐出して配線パターンを形成する装置及び液滴を吐出して膜を形成する各種の成膜装置であってもよく、液滴を吐出するものであればよい。
【0047】
図2(a)、(b)、(c)には、描画制御部100が生成した試験画像データに基づいて印刷装置12が印刷出力した試験画像の説明図が示される。ここで、図2(a)は液滴吐出ヘッド122の概略図であり、図2(b)は試験画像の例であり、図2(c)は滴吐出ヘッド122に吐出方向性不良の液滴吐出素子が存在している場合の試験画像の例である。
【0048】
図2(a)において、滴吐出ヘッド122には、n個の液滴吐出素子が配列されている。液滴吐出素子は白抜きの丸印で示されている。なお、液滴吐出素子の番号は、0から始まりn−1まで(n個)となっている。なお、矢印A方向が紙送り方向であり、液滴吐出ヘッド122には、紙送り方向に交差(例えば直交)する方向に液滴吐出素子が配列されている。なお、図2(a)は、液滴吐出素子の吐出口が一列に配列された例であるが、液滴吐出素子の吐出口の配置はこれに限られず、矢印A方向の紙送り方向に直交する方向の位置が等間隔であればよく、液滴吐出素子の吐出口が2次元的に配列されていてもよい。
【0049】
また、図2(b)において、試験画像は、描画制御部100が生成した試験画像データに基づいて、液滴吐出ヘッド122に配列されたn個の液滴吐出素子に、記録媒体の所定方向(紙送り方向)に等しい長さの直線の組を描画させたものである。液滴吐出素子は、液滴吐出ヘッド122に等しい間隔で配列されているので、試験画像として描画された線も互いに等しい距離離間している。また、各直線の始点・終点は各々紙送り方向Aに交差する直線上に配置されているが、始点・終点が配置された直線は紙送り方向Aに直交していなくてもよく、斜めに傾いていてもよい。
【0050】
図2(c)の例では、7番目の液滴吐出素子の吐出方向が6番目の液滴吐出素子方向にずれている。このため、7番目と8番目の液滴吐出素子が描画した直線の間隔が広くなる。この間隔が広くなった位置をずれ位置という。本例では、ずれ位置を利用者が確認することにより吐出方向性不良(適正な方向に液滴を吐出できない状態)を検出することができる。
【0051】
なお、吐出方向性不良ではなく液滴を吐出しない不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる。この直線が不存在となった位置を消失位置といい、消失位置を利用者が確認することにより不吐出の液滴吐出素子を検出することができる。
【0052】
図3には、上記試験画像において、利用者が吐出方向性不良を確認し易くするための描画方法の説明図が示される。図3において、直線αが液滴吐出素子により複数本描画されている。また、直線βは、直線αの始点・終点が配置された直線である。なお、直線αは、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の数だけ描画されるが、図3ではその一部が示されている。また、直線βが描画されていたほうが利用者が吐出方向性不良を確認しやすいと考えられるが、必ずしも描画されている必要はない。
【0053】
ここで、利用者が吐出方向性不良を確認し易くするためには、直線αの幅Wと互いに隣接する直線の間隔(直線α同士の間隔)Lとの関係が、
【数9】
であることがよい。また、
【数10】
とすれば、直線の描画位置のより小さなずれを検出でき、
【数11】
とすれば、さらに小さなずれを検出できる。以上に述べた各関係については、実施例にて詳細に説明する。
【0054】
図4(a)、(b)には、試験画像の他の例が示される。本例は、35個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122にて描画した試験画像であり、直線の組が複数形成されている。
【0055】
図4(a)において、試験画像は、描画制御部100が、液滴吐出ヘッド122に複数(35個)配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、この部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数(5個及び7個)の組合せとなるように複数種類設定し、各種類の部分配列毎に、部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に記録媒体の所定方向(紙送り方向A)に直線を順次描かせるように試験画像データを生成し、印刷装置12に描画させたものである。なお、液滴吐出ヘッド122には、紙送り方向Aに交差(例えば直交)する方向に液滴吐出素子が配列されている。また、各組の直線の長さは略等しい距離とするのが好適である。
【0056】
図5には、液滴吐出ヘッド122における液滴吐出素子の配列例が示される。図5では、35個の液滴吐出素子が配列されている。ここで、液滴吐出素子に0番から34番(総数35個)の番号を割り付けると、液滴吐出素子の数が5個の部分配列は7個(a〜g)設定され、それぞれの部分配列a〜gには、0番〜4番、5番〜9番、10番〜14番、15番〜19番、20番〜24番、25番〜29番、30番〜34番の液滴吐出素子が含まれることになる。これらの部分配列内で互いに対応する位置にある液滴吐出素子、すなわちI:(0,5,10,15,20,25,30)番、II:(1,6,11,16,21,26,31)番、III:(2,7,12,17,22,27,32)番、IV:(3,8,13,18,23,28,33)番、V:(4,9,14,19,24,29,34)番の液滴吐出素子により、上記括弧の順序(I〜V)で紙送り方向に平行に直線を描画させることにより、互いに等しい距離離間した7本の平行線で構成される直線の組が5個形成された5段画像が描画される。ここで、各直線の組を構成する平行な直線は、等しい長さとするのが好適であるが、視認性を低下させなければ互いに異なる長さとしてもよい。なお、図4(a)では、上記各括弧内の液滴吐出素子が同時に線の描画を行った例が示されているが、同一の組に含まれる各線の始点・終点が各々直線上に配置されるタイミングで各液滴吐出素子に描画を行わせてもよい。これにより、紙送り方向に斜めにずれた試験画像を形成することもできる。また、図4(a)では、上記括弧の順序で、各括弧に記載された液滴吐出素子に平行線を描画させているが、括弧の順序はこれに限定されず、他の順序であってもよい。なお、図4(a)の例では、上記括弧の順序(I〜V)で線の組を描画しているので、隣接する各組が、紙送り方向Aに直交する方向に液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されている。
【0057】
同様にして、液滴吐出素子の数が7個の部分配列は5個設定されるので、互いに等しい距離離間した5本の平行線で構成される線の組が7個形成された7段画像が描画される。
【0058】
以上のように、図4(a)では、上記5段画像及び7段画像により構成される2つの直線群により試験画像が形成されている。この場合、各直線群に含まれる組の数は、各部分配列に含まれる液滴吐出素子の数に等しく5個と7個になっており、互いに1以外の公約数を有さない(この関係を以後「互いに素」という)数の組合せとなっている。この試験画像は、ヘッド駆動部120の制御により液滴吐出ヘッド122の1回の走査で描画されるように構成するのが好適である。なお、試験画像には、液滴吐出素子識別用の符号を描画してもよい。この符号は、上記組に付した0から始まる番号であり、5段画像では0〜4の番号が、7段画像では0〜6の番号が付されている。なお、この符号は、上記線の組を描画する際に使用する液滴吐出素子を表す括弧(5段画像ではI〜V)の順序を表しているが、上述したとおりこの順序はI,II,III,IV,Vである必要はない。この順序が変更された場合には、対応する図4(a)の符号の順序も変更される。例えば、括弧IとIIに所属する液滴吐出素子の描画順序が入れ替わると、対応する符号も0→1の順序が1→0となる。
【0059】
以上に述べた5段画像及び7段画像においても、各組の直線の幅と互いに隣接する直線の間隔とは、上記式(1)、式(2)または式(3)の関係を満たしているのが好適である。
【0060】
図4(b)には、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の一部に吐出方向性不良のが生じた場合の試験画像の例が示される。本例においては、吐出方向性不良の液滴吐出素子が2個発生しており、それぞれ不良1、不良2と呼ぶ。このような吐出方向性不良の液滴吐出素子により、5段画像及び7段画像のそれぞれにおいて、直線の間隔が広くなっている部分が生じている。これは、本来より図の上側に吐出方向がずれたためである。
【0061】
本実施形態にかかる試験画像では、この直線の間隔が広くなっている部分の位置(ずれ位置)に基づいて、補正部104が以下のように吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定する。なお、吐出方向性不良ではなく不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる消失位置が生じるので、不吐出の液滴吐出素子を検出することもできる。
【0062】
液滴吐出素子の番号を0から始まる番号とし、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号をXとすると、5段画像においては、X÷5の余りに相当する符号の位置にずれ位置が現れ、7段画像においては、X÷7の余りに相当する符号の位置にずれ位置が現れる。また、各直線群に含まれる組の数すなわち段数は互いに素の関係になっており、これらの組合せと上記Xとは1対1の関係となる。このため、段数の積が特定できるXの最大値となる。
【0063】
図4(b)の例において、不良1によるずれ位置は、5段画像の符号0の位置と7段画像の符号3の位置である。これらの符号の数値を、利用者が操作部16から入力し、操作受付部102が入力された符号の数値を補正部104にわたす。ここで、不良1の液滴吐出素子の番号をXとし、利用者が入力したずれ位置との関係を合同式で表すと、
(1)X≡0(mod5)。これは、番号Xを5で割ると余りが0であることを意味している。
(2)X−3≡0(mod7)。これは、番号Xから3を引いた数を7で割ると余りが0であることを意味している。
【0064】
上記(1)より、Xは5の倍数であるからX=5kとおき、(2)の合同式に代入する。
(3)5k−3≡0(mod7)。従って、5k≡3(mod7)。さらに変形して7k−2k≡3(mod7)。
【0065】
ここで、7kは7で割り切れる(余りが0)ので、
(4)−2k≡3(mod7)。従って、2k≡−3(mod7)。従って、2k≡4(mod7)となり、k≡2(mod7)となる。
【0066】
よって、kは7で割ると2余る数であるので、k=7l+2と書ける。ここで、lは整数である。Xをlで表すと、
(5)X=5k=5(7l+2)=35l+10。ただし、0≦X≦34なのでX=10となり、不良1の液滴吐出素子の番号は10であることがわかる。
【0067】
また、不良2によるずれ位置は、5段画像の符号1の位置と7段画像の符号5の位置である。従って、これを合同式で表すと、X≡0(mod5)、及びX−3≡0(mod7)となる。これらを、不良1の場合と同様にして解くと、X=26となり、不良2の液滴吐出素子の番号は26であることがわかる。
【0068】
以上のようにして、本実施形態にかかる試験画像によれば、合同式という数式を使用して吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定することができる。なお、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定は、逐次代入法により演算して求める方法もある。例えば、不良1の例では、X=5aとして、0≦X≦34の範囲で満たす候補をテーブル化(0,5,10,15,20,25,30)し、この中からX=7b+3を満たすものを、3を引いて7で割り切れるか否かの判定を行って求め、その値(この場合10)を吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号として特定する。
【0069】
また、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定には、所定のテーブルを使用してもよい。
【0070】
図6(a)、(b)には、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定に使用するテーブルの例が示される。図6(a)、(b)は、35個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122において吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定するためのテーブルである。
【0071】
図6(a)には、各液滴吐出素子のそれぞれに吐出方向性不良が発生した場合に、5段画像及び7段画像のそれぞれにおいて発生するずれ位置が、液滴吐出素子の番号毎に整理されている。図5(a)から分かるように、各ずれ位置の符号は、液滴吐出素子番号を段数(5及び7)で割った余りの数値であることがわかる。
【0072】
また、図6(b)は、図6(a)を5段画像におけるずれ位置で整理したテーブルである。図6(b)から分かるように、5段画像におけるずれ位置と7段画像におけるずれ位置とは、35個の液滴吐出素子に対して唯一の組み合わせであることがわかる。
【0073】
補正部104は、利用者が操作部16から入力した符号に基づき、上記図6(a)または図6(b)を参照して吐出方向性不良の液滴吐出素子を特定することができる。例えば、上述した不良1の場合では、5段画像のずれ位置が符号0、7段画像のずれ位置が符号3であるので、図6(a)または図6(b)から吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を10番と特定できる。同様に、不良2の場合には、5段画像のずれ位置が符号1、7段画像のずれ位置が符号5であるので、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を26番と特定できる。
【0074】
以上に述べた実施形態においては、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を試験画像上で数える必要がなく、ずれ位置が属する組の位置を確認すればよいので、吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定を容易に且つ正確に行うことができる。
【0075】
なお、図4(a)、(b)の例では、5×7=35個の液滴吐出素子特定する試験画像であったが、液滴吐出素子の配列は必ずしも35個のように互いに素な数の積になるとは限らない。この場合には、試験画像を構成する直線の組のうち一部の組で直線の本数を他の組と異なる本数として対応すればよい。例えば34個の液滴吐出素子の配列の場合には、直線の数が1本少ない直線の組が1つ存在することになる。
【0076】
また、図4(a)、(b)の例では、5段画像と7段画像との2つの直線群により構成された試験画像であったが、例えば7段画像と11段画像との2つの直線群により試験画像を構成するなど、各直線群に含まれる組の数が互いに素となっている他の試験画像であってもよい。試験画像を構成する直線群の数も2つに限られず、例えば3段画像と5段画像と7段画像との3つの直線群により構成される試験画像など、3つ以上の直線群により構成される試験画像であってもよい。
【0077】
図7には、試験画像のさらに他の例が示される。図7では、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の数が多数になった場合の例である。印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された液滴吐出ヘッドにおいては、液滴吐出素子数が多くなり、例えば7880個の液滴吐出素子が配列された液滴吐出ヘッド122もある。
【0078】
図7の例では、上述した線の組が5個形成された5段画像、6個形成された6段画像及び7個形成された7段画像により試験画像が形成されている。ここで、5,6,7は互いに素であり、5×6×7=210個の液滴吐出素子を、それぞれの段のずれ位置から唯一特定することができる。しかし、これ以上の数の液滴吐出素子を特定するためには、さらに段数の多い試験画像を追加する必要があり、直線の間隔が広くなって、上記式(1)〜式(3)の関係を維持できなくなる。したがって、上記7880個の液滴吐出素子を唯一特定することが困難となる。そこで、本例の試験画像では、液滴吐出ヘッド122における液滴吐出素子の並び方向に、210個の液滴吐出素子が描画した直線毎に区切り、単位試験画像を構成している。この単位試験画像内の210本の直線は、図4(a)、(b)で説明した手順と同様にして各段数と等しい数の直線の組により、5段画像(直線数42本)、6段画像(直線数35本)及び7段画像(直線数30本)が形成されている。また、各単位試験画像を区別するための番号も付加されている。この番号は0から付されている。なお、図7では、試験画像を構成する各直線は記載を省略している。また、吐出方向性不良の液滴吐出素子により生じたずれ位置が2本の平行線で示されている。
【0079】
図7の場合、12番目の単位試験画像内において、5段画像の符号1の位置、6段画像の符号4の位置及び7段画像の符号1の位置にずれ位置が生じている。この結果から、図4(a)、(b)で説明した合同式または所定のテーブルを使用して、吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号を、12番目の単位試験画像における106番と特定することができる。次に、左に単位試験画像の番号が12番であることより、210×12+106=2416番の液滴吐出素子に吐出方向性不良が発生していることが認識できる。
【0080】
図7の例においても、吐出方向性不良ではなく不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、本来描画されるべき直線が不存在となる消失位置が生じるので、不吐出の液滴吐出素子を検出することもできる。
【0081】
なお、本実施形態の液滴吐出ヘッド122は、印字幅が記録媒体の被記録領域の幅以上に形成された型式であるので、符号を試験画像の外に描画することが困難であるので、試験画像内に描画している。
【0082】
図8には、本実施形態にかかる印刷制御装置10の動作例のフローが示される。図8において、描画制御部100が試験画像データを生成し、印刷装置12の液滴吐出ヘッド122に配列された各液滴吐出素子に、試験画像を描画させる(S101)。この試験画像は、印刷用紙等の記録媒体に描画される。また、印刷装置12がカラー印刷機能を有する場合には、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄)の各色毎に試験画像を描画する。
【0083】
次に、利用者が、上記試験画像が描画された記録媒体を参照し、ずれ位置がないか否かを確認する。ずれ位置があった場合には、その位置を示す符号を操作部16を介して入力する。操作受付部102は、入力された符号を不良情報として受け付ける。また、不吐出の液滴吐出素子が存在する場合には、消失位置を示す符号を不良情報として入力する(S102)。この場合の操作受付部102が、本発明の不良情報受付手段として機能する。
【0084】
操作受付部102は、受け付けた符号を補正部104に渡し、補正部104では、上述した図2(a)、(b)、(c)、図4(a)、(b)及び図7で説明した手順により、吐出方向性不良または不吐出(両者を合わせて動作不良という)の液滴吐出素子を特定する(S103)。特定した動作不良の液滴吐出素子に関する情報は、記憶部110に記憶しておくのが好適である。
【0085】
次に、補正部104は、上記特定した動作不良の液滴吐出素子の影響を低減するために、液滴吐出ヘッド122に配列された液滴吐出素子の印字動作を補正するための補正情報を生成する(S104)。
【0086】
印字動作の補正は、例えば使用する記録媒体が普通紙であるか光沢紙であるかの情報を予め取得しておき、記録媒体の種類に応じて印字動作を変更することが好適である。一般に、光沢紙は、高画質に対する要請が高く、吐出方向性不良に対して感度が高い用紙である。これに対して、普通紙は、高印字速度に対する要請が高く、吐出方向性不良に対する感度が緩慢な用紙である。また、印字方法としては、記録媒体の同一領域を1回の走査にて画像形成が完了する1パス記録と、複数回の走査にて画像形成が完了する多パス記録とがある。1パス記録では、高印字速度となるが、動作不良の液滴吐出素子があると高画質の実現は困難である。一方、多パス記録では、印字速度は低くなるが、吐出方向性不良や機械的な改行誤差が複数回のスキャンにより平均化されるため、スジ、むらの低減が可能となり、高画質を実現できる。また、あるラインに対して、複数回ノズルが通過する制御が可能となる為、動作不良の液滴吐出素子があったとしても、その液滴吐出素子で印字予定だった部分を他の正常な液滴吐出素子で代替記録が可能となり、この点でも高画質が実現できる。そこで、1パス記録で印字中に上記S103のステップで動作不良の液滴吐出素子が特定された場合、記録媒体が普通紙のときは1パス記録を続行し、光沢紙のときは多パス記録に切り替える旨の補正情報を補正部104が生成することが好適である。
【0087】
さらに、上記1パス記録と多パス記録との切替は、以下の表1に示す基準に従って行ってもよい。なお、表1の内容は、予め記憶部110に記憶させておく。
【表1】
【0088】
表1においては、記録媒体が普通紙の場合には、動作不良の液滴吐出素子として不吐出の液滴吐出素子が存在する場合及び不吐出と吐出方向性不良の液滴吐出素子が同時に存在する場合に、多パス記録に切り替え、当該動作不良の液滴吐出素子を使用せず、他の動作が正常な液滴吐出素子に印字させる。これに対して、動作不良の液滴吐出素子が吐出方向性不良の液滴吐出素子のみの場合には1パス記録とし、吐出方向性不良の液滴吐出素子をそのまま使用する。普通紙では、吐出方向がずれても目立たない場合が多いからである。
【0089】
一方、記録媒体が光沢紙の場合には、動作不良の液滴吐出素子が存在する場合には、不吐出及び吐出方向性不良のいずれの場合でも、多パス記録に切り替え、当該動作不良の液滴吐出素子を使用せず、他の動作が正常な液滴吐出素子に印字させる。
【0090】
図9には、本実施形態にかかる印刷制御装置10の他の動作例のフローが示される。図9は、液滴吐出素子の状態に応じて補正部104が印刷データの処理方法を変更する場合の動作例である。
【0091】
図9において、描画制御部100が生成した印刷データを補正部104が取得する(S201)。この印刷データは、各液滴吐出素子をON(吐出動作)またはOFF(不吐出動作)とするデータとなっている。
【0092】
次に、補正部104は、各液滴吐出素子の状態を確認し、不吐出の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S202)。不吐出の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを隣接する液滴吐出素子のOFFデータに移動し、隣接する液滴吐出素子によりインク滴の吐出を行うように印刷データを補正する(S203)。これにより、不吐出の液滴吐出素子が描画すべき画素を、隣接の液滴吐出素子が代わりに描画することになる。このため、多パス記録では画素の消失を防止でき、1パス記録でも消失した画素を隣の画素に置き換えて、画素の消失を目立たなくすることができる。
【0093】
一方、S202において不吐出の液滴吐出素子がない場合またはS203において補正処理を行った後に、補正部104は吐出方向性不良の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S204)。吐出方向性不良の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを一定の割合で間引き、間引いた分を隣接する液滴吐出素子に付加するように印刷データを補正する(S205)。上記ONデータを間引く割合を適宜決定することにより、吐出方向性不良を目立たなくすることができる。
【0094】
補正部104は、以上のステップで生成した補正情報を出力部106から印刷装置12に出力する(S206)。
【0095】
図10には、試験画像のさらに他の例が示される。図10において、試験画像は、5段画像、6段画像、7段画像及び10段画像により形成されている。これらのうち、5段画像、6段画像及び7段画像は不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子の番号(0から209番までの210個)を特定するための試験画像である。また、10段画像は、吐出方向性不良の液滴吐出素子について、吐出方向性不良の程度すなわち吐出方向のずれが大か小かを判定するための試験画像である。
【0096】
なお、図10の例では、吐出方向性不良の程度を判定する試験画像として10段画像、すなわち5段画像、6段画像及び7段画像の各直線群における直線の間隔より大きい間隔で直線が描画されたものを使用したが、小さい間隔で直線が描画されていてもよい。例えば、3段画像を使用すれば5段画像、6段画像及び7段画像の各直線群における直線の間隔より小さい間隔で直線が描画された試験画像となる。
【0097】
利用者は、試験画像を参照し、消失位置(不吐出)またはずれ位置(吐出方向性不良)の符号および液滴吐出素子の動作不良が不吐出なのか吐出方向性不良なのかの情報を操作部16から入力する。また、吐出方向性不良の場合、5段画像、6段画像及び7段画像のずれ位置は必ず入力し、10段画像のずれ位置は、ずれ位置が視認できた場合のみ入力する。これは、10段画像の場合、直線の間隔が広くなるので、吐出方向性不良が小さいと見えにくい(視認できない)からである。この結果、10段画像のずれ位置の入力がある場合には吐出方向性不良が大であり、この入力がない場合には吐出方向性不良が小と判定することができる。
【0098】
以上のように、図10の試験画像によれば、吐出方向性不良大、吐出方向性不良小、不吐出の液滴吐出素子を特定することができる。
【0099】
図11には、本実施形態にかかる印刷制御装置10のさらに他の動作例のフローが示される。図11は、図10で特定された吐出方向性不良大、吐出方向性不良小の液滴吐出素子に応じて補正部104が印刷データの処理方法を変更する場合の動作例である。
【0100】
図11において、描画制御部100が生成した印刷データを補正部104が取得する(S301)。この印刷データは、各液滴吐出素子をON(吐出動作)またはOFF(不吐出動作)とするデータとなっている。
【0101】
次に、補正部104は、各液滴吐出素子の状態を確認し、不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S302)。不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを隣接する液滴吐出素子のOFFデータに移動し、隣接する液滴吐出素子によりインク滴の吐出を行うように印刷データを補正する(S303)。これにより、不吐出及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子が描画すべき画素を、隣接の液滴吐出素子が代わりに描画することになる。これにより、不吐出の液滴吐出素子及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子の画像品質への影響を軽減できる。
【0102】
一方、S302において不吐出及び吐出方向性不良大の液滴吐出素子がない場合またはS303において補正処理を行った後に、補正部104は吐出方向性不良小の液滴吐出素子があるか否かを判断する(S304)。吐出方向性不良小の液滴吐出素子がある場合には、当該液滴吐出素子に割付られたONデータを一定の割合で間引き、間引いた分を隣接する液滴吐出素子に付加するように印刷データを補正する(S305)。上記ONデータを間引く割合を適宜決定することにより、吐出方向性不良を目立たなくすることができる。
【0103】
補正部104は、以上のステップで生成した補正情報を出力部106から印刷装置12に出力する(S306)。
【0104】
なお、上記図8、図9及び図11の各ステップを実行するためのプログラムは、通信手段により提供してもよいし、CDROM等の記憶媒体に格納して提供してもよい。
【実施例】
【0105】
以下に、図3に示された直線αの幅Wと互いに隣接する直線の間隔(直線α同士の間隔)Lとの比(W/L)が吐出方向性不良の判別容易性に与える影響を検討した実施例を説明する。
【0106】
図12には、吐出方向性不良の判別可能範囲の実験結果が示される。図12の横軸はW/Lの値であり、縦軸は、吐出方向性不良の液滴吐出素子が描画した直線のずれ量Xと直線αの幅Wとの比(X/W)である。これらの2軸に対してW,L,Xの値を変化させ、複数の座標(W/L,X/W)に対応する条件で目視により直線のずれの視認可能性を評価した。具体的には、1段画像から10段画像までの試験画像の中に、意図的に直線のずれを発生させ、そのずれが発生している箇所が目視にて視認できるか否かを評価した。なお、線幅Wに関しては、異なる複数の駆動信号を使用してインク滴径を異ならせることによって複数条件用意し、DA6000により測定した値とした。
【0107】
本実施例で採用した実験条件は、
・線の間隔(10種):44,88,132,176,220,265,309,353,397,441μm
・ずれ量(5種):8.8,17.6,26.5,35.3,44.1μm
・線幅(15種):32.7,41.7,49.6,52.5,62.1,63.5,73.1,74.1,78.9,82.7,91.0,102.0,112.0,120.0,135.0μm
【0108】
以上の450条件に関して、ずれの発生箇所を視認可能な場合を○、視認不可能な場合を×を図12に表示した。
・記録用紙 :普通紙(富士ゼロックス社製 C2紙)
・使用インク :ブラック
・線幅測定装置 :王子計測機器社製 DA6000
【0109】
図12に示されるように、0.15<W/L<0.90の範囲では、ずれ量/線幅(X/W)にて0.4以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、2段画像〜11段画像で30μmのずれが視認可能となる。
【0110】
また、0.20<W/L<0.70の範囲では、X/Wにて0.2以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、3段画像〜8段画像で15μmのずれが視認可能となる。
【0111】
さらに、0.35<W/L<0.65の範囲では、X/Wにて0.15以上のずれを視認可能となる。この場合、600dpi、線幅75μmで試験画像を描画した場合に、3段画像〜5段画像で11.25μmのずれが視認可能となる。
【0112】
以上より、W/Lとしては、視認すべきずれ量と線幅との関係に応じて、上記3つの範囲に設定するのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明にかかる印刷システムの一実施形態における機能ブロック図である。
【図2】試験画像の説明図である。
【図3】試験画像の描画方法の説明図である。
【図4】試験画像の他の例を示す図である。
【図5】液滴吐出ヘッドにおける液滴吐出素子の配列例を示す図である。
【図6】吐出方向性不良の液滴吐出素子の特定に使用するテーブルの例を示す図である。
【図7】試験画像のさらに他の例を示す図である。
【図8】本発明にかかる印刷制御装置の動作例のフロー図である。
【図9】本発明にかかる印刷制御装置の他の動作例のフロー図である。
【図10】試験画像のさらに他の例を示す図である。
【図11】本発明にかかる印刷制御装置のさらに他の動作例のフロー図である。
【図12】吐出方向性不良の判別可能範囲の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
10 印刷制御装置、12 印刷装置、14 アプリケーション、16 操作部、18 通信部、20 表示部、100 描画制御部、102 操作受付部、104 補正部、106 出力部、108 表示制御部、110 記憶部、120 ヘッド駆動部、122 液滴吐出ヘッド、124 媒体搬送部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに等しい距離離間し、始点・終点が各々直線上に配置され、所定方向に互いに平行に描画される所定本数の直線の組を含み、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、
【数1】
となっている、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作試験を行うための試験画像が描画されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
請求項1記載の記録媒体において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式1)の代わりに
【数2】
とされていることを特徴とする記録媒体。
【請求項3】
請求項2記載の記録媒体において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式2)の代わりに
【数3】
とされていることを特徴とする記録媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の記録媒体において、前記直線の組は前記所定方向に複数描画されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項5】
請求項4記載の記録媒体において、前記直線の組を複数含む直線群が複数形成され、各直線群に含まれる組の数が互いに異なり且つ各直線群に含まれる組の数は互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなっていることを特徴とする記録媒体。
【請求項6】
請求項5記載の記録媒体において、前記各直線群では、隣接する前記直線の組が、前記所定方向に直交する方向に前記液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の記録媒体において、前記各直線群における直線の間隔より大きいまたは小さい間隔の直線の組がさらに描画されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させる描画制御手段を備え、
前記描画制御手段は、複数配列された前記液滴吐出素子の各々に、前記記録媒体の所定方向に互いに平行に直線を描かせ、前記直線の幅と隣接する直線からの間隔との関係が、
【数4】
となる前記試験画像を描画させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項9】
記録媒体に画像データを印字する液滴吐出素子が複数配列された液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を前記記録媒体に描画させる描画制御手段と、
前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付ける不良情報受付手段と、
前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正する補正手段と、
を備え、
前記描画制御手段は、複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせて前記試験画像を描画させることを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、前記記録媒体の同一領域を液滴吐出ヘッドによる複数回の走査により印字する記録方法と1回の走査により印字する記録方法とを切り替えることを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記不良情報受付手段は、吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、前記吐出方向性不良の液滴吐出素子の印刷データを所定割合で間引き、間引いた印刷データを隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする印刷システム。
【請求項12】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記不良情報には吐出方向性不良の有無及び程度が含まれ、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、吐出方向性不良の程度が所定のレベルを超えた液滴吐出素子の印刷データを全て隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させ、
前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、
前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正し、
前記試験画像を記録媒体に描画させるために、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷制御プログラム。
【請求項1】
互いに等しい距離離間し、始点・終点が各々直線上に配置され、所定方向に互いに平行に描画される所定本数の直線の組を含み、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、
【数1】
となっている、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の動作試験を行うための試験画像が描画されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
請求項1記載の記録媒体において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式1)の代わりに
【数2】
とされていることを特徴とする記録媒体。
【請求項3】
請求項2記載の記録媒体において、前記直線の幅と互いに隣接する直線の間隔との関係が、(式2)の代わりに
【数3】
とされていることを特徴とする記録媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の記録媒体において、前記直線の組は前記所定方向に複数描画されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項5】
請求項4記載の記録媒体において、前記直線の組を複数含む直線群が複数形成され、各直線群に含まれる組の数が互いに異なり且つ各直線群に含まれる組の数は互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなっていることを特徴とする記録媒体。
【請求項6】
請求項5記載の記録媒体において、前記各直線群では、隣接する前記直線の組が、前記所定方向に直交する方向に前記液滴吐出ヘッドに配列された液滴吐出素子の間隔だけ位置をずらせて配置されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の記録媒体において、前記各直線群における直線の間隔より大きいまたは小さい間隔の直線の組がさらに描画されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させる描画制御手段を備え、
前記描画制御手段は、複数配列された前記液滴吐出素子の各々に、前記記録媒体の所定方向に互いに平行に直線を描かせ、前記直線の幅と隣接する直線からの間隔との関係が、
【数4】
となる前記試験画像を描画させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項9】
記録媒体に画像データを印字する液滴吐出素子が複数配列された液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出素子の各々により、前記液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を前記記録媒体に描画させる描画制御手段と、
前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付ける不良情報受付手段と、
前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正する補正手段と、
を備え、
前記描画制御手段は、複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせて前記試験画像を描画させることを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、前記記録媒体の同一領域を液滴吐出ヘッドによる複数回の走査により印字する記録方法と1回の走査により印字する記録方法とを切り替えることを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記不良情報受付手段は、吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、前記吐出方向性不良の液滴吐出素子の印刷データを所定割合で間引き、間引いた印刷データを隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする印刷システム。
【請求項12】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記不良情報には吐出方向性不良の有無及び程度が含まれ、前記補正手段は、前記不良情報に基づいて、吐出方向性不良の程度が所定のレベルを超えた液滴吐出素子の印刷データを全て隣接する液滴吐出素子に付加することを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子の各々により、液滴吐出素子の動作状態を確認するための試験画像を記録媒体に描画させ、
前記試験画像に基づいて確認された不吐出または吐出方向性不良の液滴吐出素子に関する不良情報を受け付け、
前記不良情報に基づいて前記液滴吐出ヘッドの印字動作を補正し、
前記試験画像を記録媒体に描画させるために、液滴吐出ヘッドに複数配列された液滴吐出素子を連続して配列される複数の部分配列に分け、前記部分配列を、所属する液滴吐出素子の数が互いに1以外の公約数を有さない数の組合せとなるように複数種類設定し、前記各種類の部分配列毎に、前記部分配列内で互いに対応する位置にある各液滴吐出素子に前記記録媒体の所定方向に直線を順次描かせる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−213261(P2008−213261A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52611(P2007−52611)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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