説明

記録媒体

【課題】再生回数を確実に制限する。
【解決手段】実施形態の記録媒体は、再生回数制限ファイルが書込まれる第1の領域と、前記再生回数制限ファイルが書込まれる前記第1の領域のアドレス範囲内の判定アドレス及び前記再生回数制限ファイルの読出可能回数が書込まれる第2の領域とを有する記憶部と、前記判定アドレスのデータの読出しが行われた読出回数が前記読出可能回数に到達した後、前記再生回数制限ファイルに対する読出し要求に対して、前記再生回数制限ファイルの出力を行わないコントロール部と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SDカード等のフラッシュメモリカードが普及している。コンパクトで使いやすい外形とサイズを備え、更に大容量化により、フラッシュメモリカードは記録媒体として多用されるようになってきている。
【0003】
このようなフラッシュメモリカードにおいては、記録するコンテンツの保護のための機能を有するものがある。例えば、メディアバインド機能を備えたフラッシュメモリカードも開発されている。メディアバインド機能は、メディアIDと暗号技術とを用いて、コンテンツとメディアに関連付けて固定するものであり、暗号化されたコンテンツが別のメディアにコピーされても、別のメディアからはコンテンツを再生不能とするものである。
【0004】
ところで、フラッシュメモリカードに、例えば、プロモーション用のオーディオ・ビデオコンテンツを格納して配布することがある。このようにフラッシュメモリカードを宣伝媒体として用いた場合には、当該プロモーション用のファイルについては、視聴を数回のみに制限したいという要求がある。
【0005】
しかしながら、ホストの機能を用いることなく、カード単体の機能として、所定ファイルについて指定回数だけ再生を許可し、それ以上の再生を不能にすることができるフラッシュメモリカードは開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−347696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、再生回数を確実に制限することができる記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の記録媒体は、再生回数制限ファイルが書込まれる第1の領域と、前記再生回数制限ファイルが書込まれる前記第1の領域のアドレス範囲内の判定アドレス及び前記再生回数制限ファイルの読出可能回数が書込まれる第2の領域とを有する記憶部と、前記判定アドレスのデータの読出しが行われた読出回数が前記読出可能回数に到達した後、前記再生回数制限ファイルに対する読出し要求に対して、前記再生回数制限ファイルの出力を行わないコントロール部と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る記録媒体を示すブロック図。
【図2】メモリ部21のフォーマットを示す説明図。
【図3】第1の実施の形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施の形態を説明するための説明図。
【図5】第2の実施の形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】本発明の第3の実施の形態を説明するための説明図。
【図7】第3の実施の形態においてCPRM用回路14の動作を説明するための説明図。
【図8】第3の実施の形態においてMPU13の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る記録媒体を示すブロック図である。
【0012】
図1において、記録媒体としてのメモリカード10は、メモリ部21とメモリ部21を制御するコントロール部11とによって構成される。メモリ部21としては、例えば、多値NAND型メモリを採用することができる。
【0013】
コントロール部11は、カードインタフェース(IF)部12、MPU13、CPRM用回路14、ROM15、RAM16及びメモリインタフェース(IF)部17を有し、各部はバス18によって接続されている。
【0014】
カードIF部12は図示しないホスト側のカードIF部に接続されて、ホストとの間でデータの授受を行うようになっている。ROM15はMPU13において用いるソフトウェアを記憶する。RAM16は、MPU13の作業用のメモリである。CPRM用回路14は、コンテンツ保護のための規格CPRM(Content Protection for Recordable Media)の保護機能を実現するための回路である。メモリIF部17はメモリ部21に接続されて、メモリ部21との間でデータの授受を行うようになっている。
【0015】
本実施の形態においては、再生回数を制限したいコンテンツをファイルとしてメモリ部21に記憶させる場合には、MPU13は、ホストからの専用コマンドに基づいて、当該ファイル(以下、再生回数制限ファイルという)を記憶させるメモリ部21の開始論理アドレス及び終了論理アドレスを設定すると共に、これらの開始及び終了論理アドレス相互間の論理アドレスである第1及び第2判定論理アドレスを設定するようになっている。MPU13は、これらの第1,第2判定論理アドレスについては、メモリ部21内のシステム管理領域に記憶させるようになっている。
【0016】
なお、MPU13は、開始論理アドレスから終了論理アドレスの間を読出し専用領域に設定する。これにより、以後、この論理アドレス領域に対するデータ書き込みはエラーとなる。
【0017】
図2はメモリ部21のフォーマットを示す説明図である。
【0018】
メモリ部21には、図2に示すように、システム管理領域、機密情報領域、プロテクト領域、一般ユーザ領域及び予備領域が設けられている。システム管理領域は、コントロール部11が内部的に使用する情報を記録する領域である。例えば、システム管理領域には、MPU13のファームウェア、論理アドレス物理アドレス変換テーブル、MPU13用のパラメータ、製造番号等が記憶される。
【0019】
機密情報領域には、コピープロテクション用の内部情報が記憶される。プロテクト領域は、ユーザが認証した場合にアクセス可能な領域である。一般ユーザ領域は、一般ユーザがアクセス可能な領域である。
【0020】
更に、本実施の形態においては、システム管理領域には、判定論理アドレス記憶領域、読出可能回数記憶領域及び読出回数記憶領域が設けられている。
【0021】
図2においては、一般ユーザ領域のファイルシステムとしてFAT16を採用した例を示している。なお、一般ユーザ領域としてFAT16以外のファイルシステムを採用してもよい。
【0022】
一般ユーザ領域には、図2に示すように、ブート領域(ブートセクタ)、FAT領域(FAT1,FAT2),ルートディレクトリ領域(ルートディレクトリ)、データ領域等が含まれる。例えば、ブート領域は0x0000〜0x123ffまでの73KBの領域であり、FAT領域は0x12400〜0x2f1ffまでの115.5KBの領域と0x2f200〜0x4bfffまでの115.5KBの領域であり、ルートディレクトリ領域は0x4c000〜0x4ffffまでの16KBの領域である。
【0023】
再生回数制限ファイルは、他のファイルと同様に、データ領域内の所定の論理アドレスの範囲に記憶される。図2の例では、再生回数制限ファイルが開始及び終了論理アドレス(斜線部)間に記憶されていることを示している。
【0024】
本実施の形態においては、メモリ部21に記録するファイルを再生回数制限ファイルとして再生回数を制限する場合には、MPU13は、ホストからの専用コマンドに基づいて、開始及び終了論理アドレス間の第1,第2判定論理アドレスをシステム管理領域の判定論理アドレス記憶領域に記憶させるようになっている。
【0025】
また、MPU13は、ホストから専用コマンドを受け付けることで、システム管理領域の読出可能回数記憶領域に、当該再生回数制限ファイルについての読出可能回数を記憶させるようになっている。更に、MPU13は、システム管理領域の読出回数記憶領域に、第1,第2判定論理アドレスのデータが読み出される毎に、読出回数をカウントアップしながら、当該ファイルの読出回数を記憶させるようになっている。
【0026】
MPU13は、ホストからの読出しコマンドに応じてデータ領域に記憶されているファイルを読出して、ホストに出力する。この場合において本実施の形態においては、MPU13は、システム管理領域に記憶されている第1,第2判定論理アドレスのデータが読み出された場合には、読出回数をカウントアップし、読出回数が読出可能回数に到達したか否かを判定する。MPU13は、読出回数が読出可能回数に到達すると、次の読出し要求に対して、当該再生回数制限ファイルのデータに代えて0xFFをホストに出力するようになっている。
【0027】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図3を参照して説明する。図3は第1の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【0028】
メモリ部21に対するファイルの書込みは、図示しないホストによって制御される。MPU13は、ホストからのコマンドに従って、ホストから供給されたファイルをメモリ部21の所定のアドレス範囲に書込む。
【0029】
当該ファイルが再生回数制限ファイルである場合には、MPU13は、ホストからの専用コマンドに従って、メモリ部21のシステム管理領域中の判定論理アドレス記憶領域に、再生回数制限ファイルの開始及び終了論理アドレスの間に設定する第1,第2判定論理アドレスを書込む。更に、MPU13は、ホストからの専用コマンドに従って、システム管理領域中の読出可能回数記憶領域に、再生回数制限ファイルの再生回数を規定する読出可能回数の情報を書込む。なお、MPU13は、システム管理領域中の読出回数記憶領域の情報は初期化する。
【0030】
再生回数制限ファイルが記憶されたメモリカード10をユーザが所定のホストに装着して、再生回数制限ファイルの再生を行うものとする。メモリカード10が図示しないホストのカードIF部に装着されると、MPU13はホストから電源供給を受けて動作を開始する。
【0031】
図3のステップS1において、ホストから当該再生回数制限ファイルの読出しが指示されると、MPU13はステップS2において、読出しが指定されたファイルについての判定論理アドレスが判定論理アドレス記憶領域に記憶されているか否かを判定する。判定論理アドレスが記憶されていないファイルについては、MPU13は、処理をステップS8に移行して通常の読出しを行う。
【0032】
読出し指定されたファイルが、判定論理アドレスが記憶されている再生回数制限ファイルである場合には、MPU13は、ステップS3において、システム管理領域の読出回数記憶領域から読出回数の情報を読み出す。次に、MPU13は、ステップS4において、システム管理領域中の読出可能回数記憶領域から読出可能回数を読出して、読出した読出回数が読出可能回数に到達しているか否かを判定する。
【0033】
読出回数が読出可能回数に到達していない場合には、MPU13は次のステップS5において、通常の読出しを行う。ステップS5の通常読出しにおいては、読出しの停止等も可能であり、MPU13は、再生回数制限ファイルの読出し途中において、ホストから読出しを停止するコマンドが送出された場合には、読出しを停止する。
【0034】
MPU13は、ステップS5の通常読出しにおいて、判定論理アドレスのデータが読出されたか否かを判定する(ステップS6)。MPU13は、ステップS5の通常読出しにおいて、第1,第2判定論理アドレスのデータがいずれも読出された場合には、処理をステップS7に移行して読出回数をカウントアップして読出回数記憶領域の情報を更新する。MPU13は、ステップS5の通常読出しにおいて、第1,第2判定論理アドレスのデータが読出されていない場合には、読出回数をカウントアップすることなく処理を終了する。
【0035】
MPU13は、メモリ部21に記憶されたファイルの再生毎に、図3のフローを繰り返す。メモリ部21に記憶された再生回数制限ファイルの読出回数が読出可能回数に到達すると、MPU13は、ステップS4から処理をステップS9に移行する。MPU13は、ステップS9において、ユーザが読出しを指定した再生回数制限ファイルのデータに代えて、規定の出力、例えば、0xFFを出力する。
【0036】
このように、本実施の形態においては、一般ユーザが直接アクセスすることができないメモリのシステム管理領域に、再生回数制限ファイルの読出しを判定するための判定論理アドレス及び読出可能回数を書込み、再生回数制限ファイルの読出しの際に判定論理アドレスのデータの読出しを検出して読出回数を更新し、読出回数が読出可能回数に到達すると、次の読出しに際して再生回数制限ファイルのデータに代えて規定値を出力するようになっている。これにより、ホスト側は汎用の装置を用いた場合でも、メモリカード単体で、再生回数制限ファイルの再生回数を所望の回数に制限することが可能である。
【0037】
なお、本実施の形態においては、読出回数が読出可能回数に到達すると、次の読出しに際して規定値を出力する例について説明したが、再生回数制限ファイルのデータ以外のデータであればどのようなデータであってもよく、更に、データ出力を禁止するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態においては、再生回数制限ファイルを読出したことを、2つの第1,第2判定論理アドレスのデータを読出したことによって検出したが、1つ又は3つ以上の判定論理アドレスのデータを読出したことによって、再生回数制限ファイルの読出しを行ったことを判定してもよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態を説明するための説明図である。本実施の形態のハードウェア構成は第1の実施の形態と同様であり、MPU13によるメモリ制御のみが第1の実施の形態と異なる。
【0040】
本実施の形態においては、図4に示すように、予備領域に再生回数制限ファイルに関連する関連ファイル(斜線部)を記録可能である。なお、関連ファイルは、MPU13により、ホストからの専用コマンドに従って、予備領域に書込まれるようになっている。更に、MPU13は、ホストからの専用コマンドに従って、システム管理領域の再生指定論理アドレス記憶領域に、第1,第2再生指定論理アドレスを書込むようになっている。
【0041】
本実施の形態においては、MPU13は、読出回数が読出可能回数に到達すると、次に再生回数制限ファイルの再生が指示された場合には、再生回数制限ファイルの開始論理アドレスに対応する第1再生指定論理アドレスから所定アドレス範囲の第2再生指定論理アドレスのデータに代えて、予備領域に記憶された関連ファイルのデータを読出して出力するようになっている。
【0042】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図5のフローチャートを参照して説明する。図5において図3と同一のステップには同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施の形態においては、MPU13は、ステップS4において読出回数が読出可能回数に到達したと判定すると、ステップS10においては、システム管理領域の再生指定論理アドレス記憶領域から第1,第2再生指定論理アドレスを読出す。次に、MPU13は、ステップS11において、開始論理アドレスに相当する第1再生指定論理アドレスから第2再生指定論理アドレスの間のデータとして、予備領域に記憶されている関連ファイルのデータを読出して出力する。
【0044】
こうして、読出回数が読出可能回数に到達した後は、予備領域の関連ファイルのデータが出力される。関連ファイルとして、例えば、再生回数制限ファイルに関連する広告情報を記憶させておくことで、再生回数制限ファイルの再生指定により広告情報を再生させることができる。
【0045】
このように本実施の形態においては、再生回数制限ファイルについて指定された再生回数の再生後において、その関連ファイルのデータを再生するようになっており、再生回数制限ファイルの提供者にとって利便性に優れている。
【0046】
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態を説明するための説明図である。本実施の形態のハードウェア構成は第1の実施の形態と同様であり、MPU13によるメモリ制御のみが第1及び第2の実施の形態と異なる。
【0047】
上記第1及び第2の実施の形態においては、ホスト側の機能を用いることなく、メモリカード単体で、再生回数制限を可能にするものである。従って、メモリ部21に記憶されている再生回数制限ファイルを第1及び第2の実施の形態を採用しない他の記録媒体にコピーした場合には、他の記録媒体にコピーされた再生回数制限ファイルについては読出回数を超えて何回でも再生可能である。
【0048】
そこで、本実施の形態においては、SDカード等に採用されているコピープロテクション技術を利用することで、再生回数制限ファイルの再生回数を確実に制限するようになっている。
【0049】
コントロール部11内のCPRM用回路14は、ファイルのメモリ部21への書込みに際して、CPRM規則に従って暗号鍵の書き込みを行う。CPRM規則では、暗号化が施されたファイルは、ユーザ領域内の規定のディレクトリに格納される。
【0050】
CPRM用回路14は、ユーザ領域内の規定のディレクトリに対応したプロテクト領域内のディレクトリ内に、生成された暗号鍵を記憶させる。この場合には、CPRM用回路14は、暗号鍵のファイル名を、ユーザ領域に書込むファイルのファイル名に対応させたファイル名とする。
【0051】
CPRM用回路14は、復号化時においては、ユーザ領域に書込んだファイルに対応した暗号鍵をプロテクト領域から検索する。ファイルに対応する暗号鍵がプロテクト領域から検索されない場合には、ユーザ領域に書込んだファイルを復号化することができない。従って、ユーザ領域に書込んだ再生回数制限ファイルをホスト側の記録媒体にコピーしたとしても、コピー先の記録媒体に記録したファイルを復号化することはできない。
【0052】
しかし、コピー先の記録媒体にコピーした再生回数制限ファイルを、再度メモリ部21のユーザ領域の別のアドレス範囲に書き戻すと、第1及び第2の実施の形態を採用したとしても、書込んだ再生回数制限ファイルを何回でも再生することができてしまう。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、既にユーザ領域に書込まれている再生回数制限ファイルと同一ディレクトリ、同一ファイル名のファイルを書込むことを禁止することで、再生回数を制限するようになっている。
【0054】
即ち、MPU13は、ホストからの専用コマンドに基づいて再生回数制限ファイルを書込む場合には、第1及び第2の実施の形態と同様の書き込みを行うと共に、この書込みに伴って生成され書込まれた再生回数制限ファイルにアクセスするための情報が記憶される変更禁止領域についての情報(開始アドレス及び終了アドレス)を、システム管理領域内の変更禁止領域記憶領域に書込むようになっている。
【0055】
図6においては、変更禁止領域を斜線部によって示してある。即ち、本実施の形態においては、ブートセクタだけでなく、再生回数制限ファイルについて、当該ファイルに対するファイルエントリ、当該ファイルがあるサブディレクトリのディレクトリエントリ、当該ファイルに対するファイルエントリのFATチェイン及び当該ファイル本体に対するFATチェインの記録領域については、MPU13によって書込み等の変更を禁止する変更禁止領域に設定される。
【0056】
MPU13は、再生回数制限ファイルの書き込み時に、変更禁止領域についての情報をシステム管理領域に書込むと共に、ホスト側から書込み要求が発生した場合には、変更禁止領域の情報を読出して書込みを制御する。即ち、MPU13は、書込み要求によって、変更禁止領域に書き込まれているデータ値を変更するような書き込みデータがある場合には、書込み要求に対してエラーを返し、メモリ部21への書き込みを行わないようになっている。
【0057】
なお、データ書き込みが512バイトのセクタ単位で行われることがある。この場合でも、変更禁止領域の設定はバイトアドレス単位で設定される。セクタ単位の書き込みデータ内に一部でも変更禁止領域に既に書き込まれているデータ値を変更するような書き込みデータが含まれている場合には、MPU13は、当該書込み要求に対してエラーを返し、データ書込みを行わないようになっている。
【0058】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図7及び図8を参照して説明する。図7はCPRM用回路14の動作を説明するための説明図であり、図8はMPU13の動作を説明するためのフローチャートである。
【0059】
いま、MPU13が、ホストからの専用コマンドによって、再生回数制限ファイルをメモリ部21に書込むものとする。この場合には、MPU13は、第1及び第2判定論理アドレス、読出可能回数、読出回数、第1及び第2再生指定論理アドレスを、システム管理領域の判定論理アドレス記憶領域、読出可能回数記憶領域、読出回数、再生指定論理アドレス記憶領域に夫々書込む。更に、本実施の形態においては、当該再生回数制限ファイルの書込みに伴って生成されるFATチェインの記録領域、サブディレクトリ及びファイルエントリの記録領域を変更禁止領域に設定し、この変更禁止領域の開始及び終了アドレスを、システム管理領域の変更禁止領域記憶領域に書込む。
【0060】
また、CPRM用回路14は、暗号化された再生回数制限ファイルに対応する暗号鍵をメモリ部21のプロテクト領域に書込む。メモリ部21の一般ユーザ領域とプロテクト領域とは相互に独立したファイルシステムを採用しており、プロテクト領域にアクセスするためにはユーザ認証が必要である。
【0061】
具体例として、図7では、ユーザ領域に「SD AUDIO」というサブディレクトリがあり、このサブディレクトリ内にAOB001.SA1、AOB001.SA2、AOB001.SA3というファイル名の再生回数制限ファイルが記憶されている例を示している。
【0062】
CPRM用回路14は、これらのファイルに対応した暗号鍵をプロテクト領域に書込む。この暗号鍵は、ファイル名として、暗号化するファイルのファイル名の先頭3文字と拡張子とを組み合わせ、拡張子としてKEYが付加されている。例えば、ファイル名が「AOB001.SA1」のファイルに対して、「AOBSA1.KEY」というファイル名の暗号鍵が生成される。なお、生成された暗号鍵には、ユーザ領域内の各ファイル「AOB001.SA1」、「AOB001.SA2」、「AOB001.SA3」に夫々対応したエントリ「Title Key Entry#1〜#3」が含まれる。
【0063】
CPRM用回路14は、ホストからファイルの読出し要求があった場合には、要求されたファイルが格納されるディレクトリ及びファイル名に対応した暗号鍵を、プロテクト領域の対応するディレクトリ及びファイル名で検索する。対応する暗号鍵が存在する場合には、暗号鍵を用いて読出し要求があったファイルが復号化される。こうして、MPU13は、ホスト側からのファイル読出し要求に応じたファイルを出力することができる。
【0064】
しかし、読出し要求があったファイルが格納されたディレクトリに対応するプロテクト領域内のディレクトリに、読出し要求があったファイルのファイル名に対応するファイル名の暗号鍵が存在しない場合には、CPRM用回路14は読出し要求があったファイルに対する暗号鍵を読出すことができず、当該ファイルに対する復号化は行われない。
【0065】
そこで、本実施の形態においては、MPU13は、ブートセクタ以外に、再生回数制限ファイルについては、当該ファイルに対するファイルエントリ、当該ファイルがあるサブディレクトリのディレクトリエントリ、当該ファイルに対するファイルエントリのFATチェイン及び当該ファイル本体に対するFATチェインの記録領域を変更禁止領域に設定し、その情報をシステム管理領域の変更禁止領域記憶領域に書込むことで、再生回数制限ファイルについては同一ディレクトリ及び同一ファイル名での再書き込みを禁止する。
【0066】
図6では、再生回数制限ファイルとしてファイル名が「AOB001.SA1」のファイルが、サブディレクトリ「SD AUDIO」に書込まれている例を示している。MPU13は、ホストからの読出し要求に対して、指定されたファイルのファイル名から、サブディレクトリエントリを読出し、サブディレクトリエントリで指定された「SD AUDIO」のFATチェインを参照して、ファイルエントリを読出す。MPU13は、ファイルエントリで指定されたファイル「AOB001.SA1」のFATチェインを参照して、ユーザ領域に格納されているファイル「AOB001.SA1」を読出して出力する。
【0067】
上述したように、ファイル名が「AOB001.SA1」の再生回数制限ファイルについては、「SD AUDIO」以外のディレクトリに格納されている場合や、他のファイル名に変更されている場合には、CPRM用回路14によって復号することはできない。
【0068】
従って、ホストからの書込み要求に対して、既にユーザ領域に記憶されている再生回数制限ファイルを、他のディレクトリに記憶させたり他のファイル名で記憶させても、CPRM用回路14は復号することはできない。
【0069】
図8のステップS21において、MPU13は、ホストからの書込み要求に対して、変更禁止領域の情報を読出す。MPU13は、ステップS22において、ホストからの書込み要求が変更禁止領域に既に記憶されているデータ値を変更するためのものであるか否かを判定する。書込み要求が変更禁止領域の変更を伴わないものである場合には、MPU13はステップS23において通常の書込み処理を行う。
【0070】
書込み要求が変更禁止領域の変更を伴うものである場合には、MPU13はステップS24においてホストにエラーを返し、メモリ部21への書込み処理を行わない。
【0071】
このように本実施の形態においては、再生回数制限ファイルと同じサブディレクトリの同じファイル名のファイルに関しては、ファイルシステム上でのファイル削除、他の論理アドレス上へのファイル置き換えができなくなる。一方、CPRM用回路14によって、保護対象のファイルとプロテクト領域の暗号鍵とは、コンテンツファイルのファイル名(サブディレクトリ名を含む)によって関連付けられている。従って、再生回数制限ファイルをメモリ部21に書き戻したとしても、指定された再生可能回数を超えた再生を行うことはできず、確実に再生回数を所望の回数に制限することができる。
【0072】
なお、上記実施の形態においては、ディレクトリエントリ、ファイルエントリ全体を変更禁止領域とする例を示したが、エントリ中の一部(例えば、ファイル名、ファイル属性、開始クラスタ)を変更禁止領域として設定してもよい。この場合には、エントリ中のファイルサイズや時間情報等の他のフィールドは更新可能となるが、ファイルシステム上でのファイル削除、他の論理アドレス上へのファイル置き換えはできない。
【0073】
上記各実施の形態においては、SDカードの例について説明したが、他の類似のフラッシュメモリカードにも応用可能である。
10メモリカード、11…コントロール部、13…MPU、14…CPRM用回路、21…メモリ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生回数制限ファイルが書込まれる第1の領域と、前記再生回数制限ファイルが書込まれる前記第1の領域のアドレス範囲内の判定アドレス及び前記再生回数制限ファイルの読出可能回数が書込まれる第2の領域とを有する記憶部と、
前記判定アドレスのデータの読出しが行われた読出回数が前記読出可能回数に到達した後、前記再生回数制限ファイルに対する読出し要求に対して、前記再生回数制限ファイルの出力を行わないコントロール部と、
を具備したことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記記憶部は、前記再生回数制限ファイルに関連する関連ファイルが書込まれる第3の領域を有すると共に、前記第2の領域に、前記第1の領域のアドレス範囲内における再生の開始及び終了位置である第1及び第2再生指定アドレスが記憶され、
前記コントロール部は、前記判定アドレスのデータの読出しが行われた読出回数が前記読出可能回数に到達した後、前記第1再生指定アドレスから前記第2再生指定アドレスの範囲に対応する範囲の前記関連ファイルを読出して出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記第1の領域のアドレス範囲は、前記第1の領域に書込まれる前記再生回数制限ファイルの開始アドレスから終了アドレスまでの範囲であり、
前記判定アドレスは、前記第1の領域のアドレス範囲内に1つ以上設定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記コントロール部は、前記再生回数制限ファイルの書込みに際して前記再生回数制限ファイルのアクセスに必要な情報を生成して前記第1の領域に記憶させると共に、前記アクセスに必要な情報を記憶する領域を変更禁止領域に設定して、前記変更禁止領域の範囲を示す情報を前記第2の領域に記憶させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の記録媒体。
【請求項5】
前記第1の領域は、FATフォーマットで論理フォーマットされており、
前記アクセスに必要な情報は、前記再生回数制限ファイルに対するファイルエントリ及び前記再生回数制限ファイルが格納されるサブディレクトリのディレクトリエントリの全部又は一部、並びに、前記再生回数制限ファイルに対するファイルエントリのFATチェイン及び前記再生回数制限ファイルに対するFATチェインを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−108672(P2012−108672A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256189(P2010−256189)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】