説明

記録装置および記録方法

【課題】記録ヘッド付近で発生しかけたジャムを確実に検出でき、ジャム検出時には、シートの移動と記録動作を停止させることで記録ヘッドの吐出口面の損傷を防ぐことを可能とする。
【解決手段】インクジェット記録には、シートの移動量とさせる移動手段と、シートの先端部を記録位置より上流側に定めた第1の検出位置にて検出する第1の検出手段と、シートの先端部を記録位置より下流側に定めた第2の検出位置にて検出する第2の検出手段と、第2の検出手段によってシートの先端部が検出された後、移動手段の動作量に基づいてシートの先端部の位置を算出する算出手段と、が設けられている。算出手段によって算出された先端部の位置が第2の検出手段に到達する位置であるにもかかわらず、第2の検出手段がシートの先端部を検出していない場合は、シートに異常が発生していると判断し、移動手段の動作および記録手段による記録動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出してシートに画像の記録を行うインクジェット記録装置に関し、特にシートを移動させる移動手段を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、給紙部などから一枚ずつ給送されたシートを搬送手段によって記録ヘッドと対向する記録位置へと搬送し、制御信号に従って記録ヘッドの複数の吐出口から前記記録位置へとインクを吐出させることにより画像の記録を行う。但し、インクジェット記録装置では、シートが正常に搬送されずに、搬送経路に詰まってしまうジャムが発生することがある。ジャムが発生すると記録ヘッドのインク吐出口面とプラテンとの間にシートが挟まった状態で搬送されることがあり、その場合には吐出口面が損傷したり、吐出口に塵埃や他の色のインクが押し込まれて吐出不良や混色が発生したりする可能性がある。この問題を解決するために、特許文献1では、記録ヘッドの上流側近傍に配置したセンサでプラテンからのシートの浮きを検出してジャムと判断し、ジャムが発生した場合には、記録ヘッドをシートから離す制御を行うことを提案している。これにより、ジャムが検出された場合は記録ヘッドが退避されるため、記録ヘッドの破損を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−192799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、センサ位置でプラテンからシートが浮いている場合にはジャムを検出できるが、センサ位置でプラテンからシートが浮いていない場合のジャムは検出することができない。この場合、ジャムが発生しているにも拘わらずシートの搬送と記録動作が継続して行われてしてしまい、記録ヘッドの損傷が生じる。特に、記録ヘッドをシートの搬送方向と交差する方向へと走査させるインクジェット記録装置では、ジャムが発生した後も記録ヘッドが走査を行われて吐出口面が損傷するという問題が生じる。
【0005】
本発明はジャムの発生を確実に検出でき、ジャム検出時には、シートの移動と記録動作を停止させることで記録ヘッドの吐出口面の損傷を防ぐことが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
【0007】
すなわち、本発明の第1の形態は、記録ヘッドに設けた吐出口からインクを吐出してシートに記録を行うインクジェット記録装置において、前記シートを所定の移動方向に沿って移動させる移動手段と、前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録ヘッドと対向する記録位置より前記移動方向において上流側に定めた第1の検出位置にて検出する第1の検出手段と、前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において下流側に定めた第2の検出位置にて検出する第2の検出手段と、前記第2の検出手段によって前記シートの先端部が検出された後、前記移動手段の動作量に基づいて前記シートの先端部の位置を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出されたシートの先端部の位置が、前記第1の検出手段にて検出される位置であるにもかかわらず、前記第2の検出手段が前記シートの先端部を検出していない場合は、前記シートに異常が発生していると判断する判断手段と、前記判断手段によって前記シートに異常が発生していると判断された場合には、前記移動手段の動作および記録手段による記録動作を停止させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の形態は、シートを所定の移動方向に沿って移動させる移動手段を備え、前記移動手段によって所定の記録位置へと移動させたシートに対し記録手段を用いて画像を記録する記録方法であって、前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において上流側に定めた第1の検出位置にて検出する第1の検出工程と、前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において下流側に定めた第2の検出位置にて検出する第2の検出工程と、前記第2の検出手段によって前記シートの先端部が検出された後、前記移動手段の動作量に基づいて前記シートの先端部の位置を算出する算出工程と、前記算出工程によって算出されたシートの先端部の位置が、前記第1の検出手段にて検出される位置であるにもかかわらず、前記第2の検出手段が前記シートの先端部を検出していない場合は、前記シートに異常が発生していると判断する判断工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジャムの発生を確実に検出することができ、ジャム検出時にはシートの移動と記録動作を停止させるため、記録ヘッドにシートが擦り付けられることがなくなり、記録ヘッドを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態におけるインクジェット記録装置の概略を示す断面図である。
【図2】実施形態における記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態における記録装置の搬送動作とキャリッジの往復走査とによって画像形成が行われる過程を説明する図である。
【図4】シートの搬送が正常に行われた場合の記録装置の状態を示す図である。
【図5】シートの搬送動作においてシートに異常が発生した場合の記録装置の状態を示す図である。
【図6】実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態における同時制御動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)の概略構成を示す断面図である。ここに示すインクジェット記録装置は、記録ヘッドをシートの移動方向と交差する方向に沿って移動させつつ記録を行う、所謂シリアル型のインクジェット記録装置となっている。
【0013】
図1において、記録装置1はインクを吐出する複数の吐出口を(図示せず)を備えた記録ヘッド4aを搭載したキャリッジ4を備えている。このキャリッジは、記録ヘッド4aの吐出口が形成された吐出口面4a1と所定の間隔を介して対向するプラテン9上を、図1の紙面と直交する方向に沿って往復移動可能となっている。
【0014】
また、記録装置1は、シート積載部10に積載されたシート束の最上位に位置するシートのみを、搬送ローラ3に向けて給送するシート供給手段としての給送ローラ8が設けられている。本実施形態では、この給送ローラ8から送給されたシートを案内するガイド部材11、搬送ローラ3、プラテン9、拍車5、ガイド部材12、および排紙ローラ7によってシートの移動経路が形成されている。
【0015】
給紙ローラ8がその回転開始から一定量回転すると、シートは搬送ローラ(駆動ローラ)3とこれに対向して設けられた従動ローラ3aとの間に送り込まれ、その時点でシートへの給送力は解除される。なお、この搬送ローラ3と従動ローラ3aとにより、本発明における上流側搬送手段が構成されている。搬送ローラ3は搬送モータの駆動により回転し、給紙ローラ8から送り込まれたシートを移動経路中の下流側(シート搬送方向下流側)に位置するプラテン9上へと搬送する。ここで、キャリッジ4と共に記録ヘッド4を移動させつつ吐出口からインクを吐出させる記録走査と、搬送ローラ3による間欠的な搬送動作とを繰り返すことにより、シートに対して一定幅毎に画像が順次記録されて行く。この搬送ローラ3による搬送動作中、キャリッジ4より下流側にある拍車5と排紙ローラ(駆動ローラ)7も搬送ローラ3と同期して回転する。そしてプラテン9より下流側へと送られたシートは、拍車5とこれに対向する従動ローラ5aとのニップ、排紙ローラ7とこれに対向する従動ローラ7aとのニップに順次送り込まれ、これらの搬送動作によって最終的に記録装置外へと排出される。なお、この排紙ローラ7と従動ローラ7aとにより、本発明における下流側搬送手段が構成されている。
【0016】
一方、本実施形態においては、給紙ローラ8によってシート積載部10から給送されたシートの先端部が給送ローラ8と搬送ローラ3との間に定めた第1の検出位置に存在するか否かを検出するための第1のシート検出手段が設けられている。この第1のシート検出手段20は、第1の検出レバー21と、第1の透過型センサ22とにより構成されている。第1の検出レバー20は、回動支点20aを中心に回動自在に設けられ、外部からの力が加わっていない場合にはその一端部が搬送ローラ3と給送ローラ8との間に定めた第1の検出位置(図1および図4(a)に示す位置PO1)に位置する。また、第1の透過型センサ22は、投光部および受光部を有し、第1の検出レバー20が第1の検出位置P01にあるとき、第2検出レバー20の他端部によって投光部からの光が遮断されてオフ信号を出力する。また、第1の透過型センサ22は、第2検出レバー20が第1の検出位置PO1から外れたときにオン信号を出力する。従って、給送ローラ8から給送されたシートの先端部が第1の位置を通過するとき、第1の検出レバー20はシートに押されて回転し、第1の透過型センサ22からの出力信号はオフ信号からオン信号へと切換わる。さらに、シートの後端部が第1の検出位置より下流側に移動すると、シートによる第1の検出レバー20への押圧力は解除されて同レバー20は第1の位置へと復帰し、第1の透過型センサ22の出力信号はオン信号からオフ信号へと切換わる。
【0017】
さらに、本実施形態には、拍車5と排紙ローラ7との間に定めた第2の検出位置(図1および図4(a)に示す位置PO2)にシートが存在するか否かを検出する第2のシート検出手段30が設けられている。この第2のシート検出手段30は、回動支点30aを中心に回動する第2の検出レバー31と、透光部および受光部を有する透過型センサ22とにより構成されている。この第2のシート検出手段30は、シートの先端部が拍車5を超えて第2の位置PO2を通過すると、検出レバー32がシートに押圧されて第2の位置から回転し、透過型センサ22の出力信号はオン信号からオフ信号へと切換わる。また、シートが第2の位置PO2から外れると、検出レバー32は第2の検出位置PO2へと復帰し、第2の透過型センサ22の出力信号はオン信号からオフ信号へと切換わる。
【0018】
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2において、100は、本実施形態における記録装置の動作およびデータ処理を実行するCPUであり、本発明における算出手段および制御手段としての機能を有する。101はCPU100によって実行される制御動作およびデータ処理を実行するためのプログラムなどを格納したROMである。102はデータを一時的に格納すると共にCPU102が処理を実行するためのワークエリアとして使用されるRAMである。また、103Aは前述の搬送ローラ3、拍車5、および排出ローラ7などを駆動する駆動源としての搬送モータ103を駆動するモータドライバである。104はキャリッジを往復移動させるためのキャリッジモータ(CRモータ)104を駆動するためのモータドライバである。105は給紙ローラ8を回転させる給紙モータ105を駆動するためのモータドライバである。これらモータドライバ103A、104Aおよび105Aは、CPU100からの制御信号によって制御される。106はCPU100記録ヘッドの各吐出口からのインクの吐出を制御するヘッドドライバであり、CPU100から供給される記録データおよび制御信号によって吐出口からのインクの吐出が制御される。また、107はエラー表示などを始め種々の記録動作に関する表示を行う表示部であり、CPU100からの制御信号によってその駆動を制御される。108はCPU100に対して所定の指令やデータを入力する入力部である。また、CPU20には、前述の第1の透過型センサ21および第2の透過型センサ31からの検出信号(オン信号、オフ信号)が入力される。以上の構成は、記録装置1に設けられている。なお、CPU100には、記録装置1の外部に設けられたホストコンピュータ200からの指令やデータが入力される。
【0019】
次に、以上の構成を有するインクジェット記録装置の動作を説明する。
【0020】
図3は、搬送ローラ3、拍車5、排紙ローラ7によるシートの搬送動作とキャリッジ4の往復走査とによって画像形成が行われる過程を説明する図である。
【0021】
図3(a)はキャリッジ4に搭載された記録ヘッド4aによって記録走査が行われる位置(記録位置)と、シートPに記録すべき記録領域とが一致するまで、給紙ローラ8と搬送ローラ3とによってシートを搬送した状態を示している。なお、キャリッジ4は搬送方向と直交する方向に動作し、その過程で記録ヘッド4aからインク滴を吐出することによりシート上に記録を行う。
【0022】
図3(b)は図3(a)で記録位置に搬送されたシートの記録領域に対し、キャリッジ4に搭載された記録ヘッドの記録走査によって画像を記録した状態を示している。図3(c)は搬送ローラ3と拍車5によって、シートPの次の記録領域を記録位置まで搬送した状態を示している。図3(d)は図3(c)で記録位置に搬送されたシートの次の記録領域に対し、記録ヘッドの記録走査によって画像を記録した状態を示している。図3(e)、図3(f)を含む以降の動作は画像形成が終了するまで繰り返えされる。
【0023】
図4は、シートPの搬送が正常に行われた場合の記録装置の状態を示す図である。図4(a)は記録装置のシート積載部10に複数枚のシートPがセットされ、給紙動作が行なわれる前の状態を示している。図4(b)は給紙動作が行われ、第1の透過型センサ22aがシートPの先端部を検出した状態を示している。図4(c)は画像の記録動作を行いながら正常に搬送動作が行われ、第2の透過型センサ31がシートPの先端部を検出した状態を示している。
【0024】
一方、図5は、シートPの搬送動作においてシートに異常が発生した場合の記録装置の状態を示す図である。一般に、シートは種類、状態、および品質によって特性が異なる。例えば、シートによっては、画像の記録中にシートに付着したインク滴の影響を受けてコックリングが発生することがある。また、湿度やインク滴の影響を受けてシートの繊維に沿ったカールが発生することがある。図5(a)、(b)では図4(a)、(b)と同様に給紙動作が行われているが、記録動作においてインクを付与されたシートには、上述のようなコックリングやカールが発生することがある。この場合、シートは搬送動作中に搬送経路内に引掛ることがあり、これが原因でジャムが発生することがある。
【0025】
図5(c)は画像の記録動作における搬送中にシートPにジャムが発生した状態となり、シートPの先端部が第2の検出位置に到達するまで搬送動作を行ったにも拘わらず、第2のシート検出手段30がシートの存在を検出していない状態を示している。図3で説明したように、本実施形態では、搬送ローラ3などによる搬送動作と、キャリッジ4に搭載された記録ヘッドによる記録動作とを繰り返すことによって画像を形成して行く。従って、図5(c)のように搬送動作中にジャムが発生した状態で、引き続き記録走査が実行されると、記録ヘッド4aの吐出口面がジャムの発生したシートに擦り付けられ、吐出口面が損傷するという問題が生じる。本実施形態では、このようなジャムの発生による吐出口面の損傷を回避可能なものとなっている。
【0026】
次に、本実施形態の記録装置において前述のCPU100により実行される制御動作を説明する。本実施形態では、前述の第1のシート検出手段20によってシートの先端部が検出された後、それ以降に実施されるシートの搬送動作量と、第2のシート検出手段30の検出結果とに基づき、CPU100がシートが適正に搬送されたか否かを判断する。そして、適正な搬送が行われていないと判断した場合には、CPU100が即座に記録動作を停止させることにより、記録ヘッド4aにおける吐出口面が損傷するのを回避することができるようになっている。
【0027】
以下、図5のフローチャートに基づき、上記制御動作を詳細に説明する。
【0028】
まず、CPU100はモータドライバ104Aを制御して給紙モータ105を駆動することにより給紙ローラ8を回転させ、シート積層部10に積層されている最上位のシートを搬送ローラ3と従動ローラ3aとのニップに給送する(ステップS100)。なお、このシートの給送動作の間に、シートの先端部は第1のシート検出レバー20を押圧して回転させるため、第1の透過型センサ22からはオン信号がCPU100に入力される。これにより、CPU100はシートの先端部が第1の位置に達したと判断する。給紙ローラ8による給送動作後、CPU100は搬送モータ105を駆動して搬送ローラ3の回転を開始させ、シートの搬送動作を開始させる(ステップS101)。
【0029】
この後、CPU100は、シートの搬送動作とキャリッジ4の走査とを同時に制御する同時制御が可能な位置(以下、同時制御可能位置と称す)までシートが搬送されたか否かを判断する(ステップS102)。ここで、同時制御とは、記録ヘッド4aからのインク吐出時以外はシートの搬送動作とキャリッジ4の走査とをタイミング的にオーバーラップさせて行う制御を指す。この同時制御の一例を図7(a)のタイミングチャートに示す。図7(a)は、シートPの搬送が正常に行われている場合に行われる同時制御を示しており、画像の記録動作が行われないキャリッジ4の走査の加減速制御と、シートの搬送動作の加減速制御とがオーバーラップするタイミングで実施している。これにより、シートの搬送時間と走査時間を短縮することができる。
【0030】
再び図6を参照するに、前述のステップS102において同時制御可能位置までシートが搬送されたと判断された場合には、ステップS103において前述の同時制御を開始した後、ステップS104へと移行する。このステップS104において、CPU100はシートの先端部が第2の検出レバー31を押圧する位置まで搬送されたか否かを判断する(ステップS104)。この判断において利用するシート先端部の現在位置は、第2の検出レバー31から搬送ローラ3までのシートの移動距離と、搬送ローラ3がシートの搬送を始めてからの搬送距離とを加算することによって第1の検出位置PO1からのシートの移動距離が算出される。
【0031】
なお、搬送ローラ3がシートの搬送を始めてからのシートの搬送距離は、例えば、次のようにして算出することができる。
【0032】
本実施形態では、搬送ローラ3の回転はシートの先端部が第1の検出レバー31を押圧されて第1の透過センサの出力信号がオフ信号からオン信号に切換わった時点から開始される。また、給送ローラ8によって給送されるシートが第1の検出レバーから搬送ローラ3のニップに到達するまでの時間も予め求められている。従って、シートの先端部が第1の検出レバーに到達してからシートの先端部が搬送ローラ3のニップに到達するまでの間の搬送ローラが何回転空転するかも予め求められている。よって、CPU100は第1の検出センサの出力信号がオン信号からオフ信号へと切換わった時点からの搬送ローラ3の回転数を搬送モータの駆動量から取得し、その回転数から前述の空転回数を減じた回転数を実際のシート搬送動作時の回転数とする。そして、この搬送時の回転数をシートの搬送距離に換算し、これを搬送ローラ3がシートの搬送を始めてからのシートの搬送距離とする。
【0033】
上記のように算出されたシートの移動距離T0と第1の検出位置PO1から第2の検出位置PO2までの距離Tとを比較し、T0<Tである場合にはシート先端部の現在位置が第2の検出レバー31に到達していないと判断する。また、比較した結果がT0≧Tである場合には、シート先端部の現在位置が第2の検出レバー31に到達していると判断する。ここで、シート先端部が第2の検出レバー31に到達していないと判断され、かつステップS106において記録領域に到達していないと判断された場合には、正常に搬送動作が行われているとして、搬送動作を停止させる(ステップS107)。
【0034】
また、ステップS104において、シートの先端部が第2の検出レバー6に到達する量だけ搬送されていると判断された場合には、ステップS105へ移行する。ステップS105において第2の検出センサ30によりシートの先端部が検出され、ステップS106においてシートが記録領域に到達していると判断された場合、CPU100はシートが正常に搬送されていると判断し搬送動作を停止させる(ステップS107)。このときシートは第2の検出レバー31に到達する量だけ搬送され、第2のシート検出センサ30は先端部を検出しているので(ステップS104)、記録ヘッド4aにより記録領域への印刷動作を行う(ステップS118)。また、ステップS104においてシートの先端部が第2のシート検出センサ30に到達する量だけ搬送されていると判断されたにも拘わらず、第2のシート検出センサ30がシート先端部を検出していないと判断される場合がある(ステップS105)。この場合には、搬送動作中のシートにジャムが発生したと判断して、直ちに搬送動作を停止させる(ステップS107)。この後、ステップS108では、第2の検出レバー31に到達する量だけシートを搬送しているにも拘わらず、第2のシート検出センサ30がシートの先端部を検出していない状態にあるか否かを判断する。ここで、第2のシート検出センサ30がシートの先端部を検出していない状態にあると判断された場合、先にステップS103でキャリッジの同時制御をしていたならば、キャリッジ動作も直ちに停止させる(ステップS109)。その後、記録動作(ステップS111)を行わないように、ジャムエラーとして画像の記録動作を停止させる(ステップS110)。この際、表示部107にジャムエラーを表示させるなどの報知動作を行っても良い。また、ステップS108において第2のシート検出センサ30がシートの先端部を検出している状態にあると判断された場合には、記録動作を行う(ステップS111)。この後、搬送動作とキャリッジの走査との同時制御可能位置までキャリッジが走査したか否か、すなわちキャリッジが一回の走査を完了する位置まで移動したか否かを判断する(ステップS112)。以上の処理を、画像の記録動作が完了するまで繰り返す(ステップS113)。
【0035】
以上説明した制御手段によって、搬送ローラ3、排紙ローラ7、キャリッジ4がどのように動作するかについて、図7のタイミングチャートを参照して説明する。先にも述べたように、図7(a)はシートPの搬送が正常に行われた場合のシートの搬送動作(搬送モータ103の駆動)とキャリッジ動作(CRモータ104)の同時制御を実施した状態を示している。記録ヘッド4aからのインク吐出時以外は、シートの搬送動作とキャリッジ4の走査とをタイミング的にオーバーラップさせることによって記録動作に要する時間を短縮している。
【0036】
図7(b)は同時制御による搬送動作とキャリッジの動作のオーバーラップが開始される前にジャムを検出して搬送動作を強制停止し、その後のキャリッジによる走査を行わないように制御した状態を示している。すなわち、ステップS101による搬送動作は、図中の実線で示すように実施される。この際、第1のシート検出センサ21がシートの先端部を時刻t1で検出し、第2の検出センサにシートの先端部が到達するまでシートが搬送されたはずの時刻t2では、シートの先端部が検出されていない(ステップS105)。このため、第2シートの搬送動作は図中の破線に示すように強制的に停止している(ステップS107)。このとき搬送動作によって搬送されたシートは、キャリッジ4の走査とシート搬送動作とを同時制御可能とする位置まで到達していないため(ステップS110)、キャリッジ4の動作は開始されていない。
【0037】
図 7(c)は、同時制御による搬送動作とキャリッジ4の走査とのオーバーラップが開始された後にジャムを検出して搬送動作を強制停止すると共に、キャリッジの走査も強制停止している状態を示している。すなわち、ステップS101による搬送動作およびキャリッジによる走査は、図中の実線で示すように実施される。この場合、第1の検出センサ31がシートの先端部を時刻t1で検出し、さらにシートの先端部が第2の検出レバー31に到達する前にシートが同時制御可能な位置に到達している(ステップS102)。このため、搬送動作と走査との同時制御が開始されている(ステップS103)。その後、第2の検出レバー32にシートの先端部が到達するように搬送された(ステップS104)時刻t2であってもシートの先端部が第2の検出レバー32にて検出されていないため(ステップS105)、搬送動作は強制停止(ステップS107)されている。さらに、同時制御中のキャリッジ動作も強制停止(ステップS109)されている。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、画像形成中に発生したジャムが発生した場合には、直ちに記録ヘッドの走査と、シートの搬送動作とを停止させるため、ジャムが発生したシートに記録ヘッドを擦り付けることがなくなり記録ヘッドを保護することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、シートの位置に拘わらず同時制御を行う形態を例に採り説明した。しかし、記録ヘッドの保護をより重視する場合には、第2の検出センサ32がシートの先端部を検出するまでは同時制御を行わず、シート先端部を検出した後から同時制御を行う形態を採用することも可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、記録ヘッドをキャリッジと共に記録ヘッドを、シートの搬送方向と直交する方向へと移動させる所謂シリアル型のインクジェット記録装置を例に採り説明した。しかし、本発明は、シリアル型のインクジェット記録装置に限らず、記録ヘッドを固定し、該記録ヘッドに対してシートを搬送するフルライン型のインクジェット記録装置にも適用可能である。この場合、シートにジャムが発生した場合には、搬送手段の動作を停止させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 記録装置
3 搬送ローラ
4 キャリッジ
4a 記録ヘッド
5 拍車
7 排紙ローラ
8 給紙ローラ
100 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに設けた吐出口からインクを吐出してシートに記録を行うインクジェット記録装置において、
前記シートを所定の移動方向に沿って移動させる移動手段と、
前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録ヘッドと対向する記録位置より前記移動方向において上流側に定めた第1の検出位置にて検出する第1の検出手段と、
前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において下流側に定めた第2の検出位置にて検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段によって前記シートの先端部が検出された後、前記移動手段の動作量に基づいて前記シートの先端部の位置を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された先端部の位置が、前記第1の検出手段にて検出される位置であるにもかかわらず、前記第2の検出手段が前記シートの先端部を検出していない場合は、前記シートに異常が発生していると判断する判断手段と、
前記判断手段によって前記シートに異常が発生していると判断された場合には、前記移動手段の動作および記録手段による記録動作を停止させる制御手段と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記記録手段より前記移動方向において上流側に設けた上流側搬送手段と、前記記録手段より前記移動方向において下流側に設けた下流側搬送手段と、前記上流側搬送手段より前記移動方向において上流側に設けたシート供給手段とを備え、前記シート供給手段から供給されたシートを受けて前記上流側搬送手段および前記が搬送し、前記上流側搬送手段で搬送されたシートを下流側搬送手段で搬送することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記上流側搬送手段と下流側搬送手段は、いずれも駆動ローラと従動ローラとからなることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、インク滴を前記シートに吐出して画像を記録する記録ヘッドからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録手段は、前記シートに対し前記記録ヘッドを前記シートの搬送方向と直交する方向に沿って走査させる走査手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記判断手段によって異常が検出された場合には、前記移動手段の動作と記録手段による記録動作の少なくとも一方を停止させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
シートを所定の移動方向に沿って移動させる移動手段を備え、前記移動手段によって所定の記録位置へと移動させたシートに対し記録手段を用いて画像を記録する記録方法であって、
前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において上流側に定めた第1の検出位置にて検出する第1の検出工程と、
前記シートの前記移動方向における先端部を、前記記録位置より前記移動方向において下流側に定めた第2の検出位置にて検出する第2の検出工程と、
前記第2の検出手段によって前記シートの先端部が検出された後、前記移動手段の動作量に基づいて前記シートの先端部の位置を算出する算出工程と、
前記算出手段によって算出された先端部の位置が、前記第1の検出手段にて検出される位置であるにもかかわらず、前記第2の検出手段が前記シートの先端部を検出していない場合は、前記シートに異常が発生していると判断する判断工程と、
を備えたことを特徴とする記録方法。
【請求項8】
前記判断手段によって異常が検出された場合には、前記移動手段の動作と記録手段による記録動作の少なくとも一方を停止させることを特徴とする請求項7に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−45860(P2012−45860A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191386(P2010−191386)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】