説明

記録装置及び記録媒体の斜行修正方法

【課題】記録媒体の斜行が生じたときに記録媒体の位置を補正する記録装置において、記録媒体を搬送する機構の構成が簡素化された記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置は、記録媒体を搬送可能な搬送ローラを有している。また、搬送ローラとは別の位置に配置され、記録媒体を記録装置本体に吸着させるファンと、ファンによる吸着力を領域ごとに制御する吸着力制御手段とを有している。記録媒体の斜行が生じたときに、その斜行に応じて、吸着力制御手段によって領域ごとにファンが制御された状態で記録媒体が搬送される。これにより、記録媒体の搬送量が領域ごとに制御され、記録媒体の斜行が補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の斜行の修正を行う記録装置及び記録媒体の斜行修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置、複写機、ファクシミリ等に装備された記録装置、或いはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合機やワークステーションの出力機器として使用される記録装置として、インクジェット記録装置が広く採用されている。このようなインクジェット記録装置は、画像情報に基づいて用紙やプラスチック薄板(例えばOHPシート)等の記録媒体に、記録ヘッドによって液滴が吐出されて画像(文字や記号等も含む)が記録されるように構成されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、記録が行われる際には、記録媒体が搬送されながら記録されることで記録が連続的に行われる。ところが、記録媒体の搬送が行われているときに、記録媒体が、記録装置本体の所定位置に対してずれて設置されることや、記録中に記録媒体の位置のずれが発生し、いわゆる記録媒体の斜行が発生してしまうことがある。
【0004】
この状態で記録媒体に液滴が吐出されて記録が行われると、記録による実際の液滴の着弾位置が、所望の着弾位置からずれて着弾する虞がある。このようなことが生じないように、記録媒体の搬送の際に記録媒体のずれが生じた場合に、このずれを修正する記録装置について特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1では、記録媒体の幅方向に関して、ローラによる押圧力に差を生じさせ、これにより記録媒体の幅方向で搬送量に差を持たることで記録媒体のずれを修正している記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−035965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の記録装置は、搬送の際の搬送ローラにより記録媒体を挟み込む圧力を記録媒体の幅方向に関して変えることで、記録媒体の送り量についてローラの領域の間で差を生じさせている。このように、特許文献1の記録装置の構成によれば、搬送ローラによって記録媒体の搬送と斜行補正の両方を行うので、搬送ローラに記録媒体を搬送するための機構と斜行補正を行うための機構とが集中する。そのため、特許文献1に開示されている記録装置においては、搬送ローラの機構が複雑である。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、記録媒体の斜行が生じたときに記録媒体の位置を補正する記録装置において、記録媒体を搬送する機構の構成が簡素化された記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の記録装置は、記録媒体を搬送可能な搬送手段と、記録媒体に記録を行う記録手段と、前記搬送手段とは別の位置に配置され、記録媒体を記録装置本体に吸着させる吸着手段と、前記吸着手段による吸着力を領域ごとに制御する吸着力制御手段とを有し、記録媒体の斜行が生じたときに、その斜行に応じて、前記吸着力制御手段によって記録媒体の領域ごとに吸着力が制御された状態で記録媒体が搬送され、記録媒体の搬送量が領域ごとに制御されて記録媒体の斜行が補正されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の記録媒体の斜行修正方法は、記録媒体に斜行が生じたときに、斜行を修正する記録媒体の斜行修正方法であって、記録媒体の斜行を検知する斜行検知工程と、前記斜行検知工程で検知された記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体の領域ごとに吸着力を制御しながら記録媒体を記録装置本体に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程により記録媒体の領域ごとに異なる吸着力を作用させたまま記録媒体を搬送し、搬送量の違いにより記録媒体の斜行を修正する斜行修正工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録装置において、記録媒体の搬送手段と吸着手段とが別々の位置に配置された構成なので、搬送手段の構成を簡素化することができる。従って、搬送手段についての製造コストが抑えられた記録装置を提供することができる。また、搬送手段についての構成が小型化された記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る記録装置の外観を示した斜視図である。
【図2】図1の記録装置おいて、模式的に示したII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1の記録装置において、斜行検知及び斜行補正の制御が行われる際の制御のフローを示すフローチャートである。
【図4】図1の記録装置において、記録媒体に斜行が生じていないときの要部について模式的に示した平面図である。
【図5】図1の記録装置において、記録媒体に斜行が生じているときの要部について模式的に示した平面図である。
【図6】図1の記録装置において、記録媒体に斜行が生じているときに、記録媒体の搬送が行われたときの要部について模式的に示した平面図である。
【図7】図1の記録装置において、記録媒体に斜行が生じ、その後記録媒体について斜行補正が行われたときの要部について模式的に示した平面図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る記録装置において、弁が開けられた状態で、弁によって区画された空間がそれぞれ連通している状態の要部について模式的に示した断面図である。
【図9】図8の記録装置において、弁が閉じられ、弁によって区画されたそれぞれの空間が連通していない状態の要部について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。図1に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としての記録装置1の主要な構成部分についての模式的な斜視図を示す。記録装置1は、インク滴を吐出可能な記録手段としての記録ヘッドを有している。本実施形態では、記録装置1は、キャリッジ110に搭載された記録ヘッドが記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルスキャン形式のインクジェット記録装置である。
【0014】
記録ヘッドの構成について説明する。本実施形態の記録ヘッドには流路が形成されており、その流路内には、発熱素子(電気熱変換体)が備えられている。この発熱素子に通電して、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、流路内のインクが加熱されて膜沸騰により発泡し、そのときの発泡エネルギーによって吐出口からインク滴が吐出される。なお、本実施形態の記録ヘッドは発熱素子により膜沸騰を発生させて発泡させインク滴を吐出する方式としたが、本発明はこれに限定されない。圧電素子を変形させ、これによって記録ヘッド内部の液体を吐出する形式の記録ヘッドが記録装置に適用されても良く、また、他の形式の記録ヘッドが本発明の記録装置に適用されても良い。また、記録装置はインクジェット記録装置でなくとも良く、記録媒体を搬送しつつ記録媒体に記録が行われる記録装置であれば熱転写方式等、他の形式の記録装置であっても良い。
【0015】
記録ヘッドを搭載しているキャリッジ110には、記録媒体105の位置を検知できる光学タイプのセンサが設けられている。センサとしては、発光素子としてLEDが1〜3個配置され、それに対応して受光する素子として、フォトダイオードが1〜3個配置されている。なお、受光素子としては、フォトトランジスタが用いられても良い。これらのセンサが用いられた記録媒体105の斜行検知については後述する。
【0016】
キャリッジ110は、不図示のベルトを介して本体に接続されており、不図示のモータの駆動によって記録媒体の搬送方向に交差する主走査方向に移動可能とされている。記録ヘッドが図1の矢印Aに示される主走査方向に走査されながら記録が行われることで、搬送方向に交差する記録媒体の幅方向に亘って記録を行うことができる。本実施形態では、記録媒体の搬送方向と記録媒体の幅方向は直交している。
【0017】
本実施形態では、記録媒体105の位置を検知するセンサとしては非接触タイプの光学センサが用いられているが、検知手段の方法は特に限定されない。本発明では、記録媒体の位置を検知できれば良く、他の方式が用いられても構わない。
【0018】
記録装置1は、記録装置本体における不図示の記録媒体積載位置から記録が行われる記録位置を通って排紙が行われる不図示の排出部まで搬送されるように、記録媒体105を搬送可能な搬送手段を有している。本実施形態の記録装置1は、記録媒体105の搬送手段として、搬送ローラ104と、記録媒体を挟み込んだ状態で搬送ローラ104を押圧することが可能なピンチローラ103とを有している。搬送ローラ104からはギア107が延びており、ギア107は、モータ109から延びたギア108と、ベルト106を介して駆動力を伝達可能に接続されている。これにより、駆動手段であるモータ109が駆動された際に、発生した駆動力がベルト106を介して搬送ローラ104に伝達され、搬送ローラ104が回転駆動される。
【0019】
記録媒体105が搬送されて搬送ローラ104とピンチローラ103との間に到達すると、記録媒体105は、搬送ローラ104とピンチローラ103との間に挟まれ、ピンチローラ103が搬送ローラ104に押圧される。この状態でモータ109が駆動されると、搬送ローラ104とピンチローラ103との間に挟まれつつ搬送されて、プラテン101の方へ送り出される。
【0020】
図1に示されるプラテン101は、記録装置1における記録ヘッドを搭載したキャリッジ110に対応した位置に形成されている。従って、記録が行われる記録位置は、プラテン上の位置である。プラテン101は、記録媒体105が記録手段としての記録ヘッドに対向する記録位置に到達したときに記録媒体が平らになるように記録媒体105を規制するために形成されており、プラテン101には製造上の精度が求められる。また、記録媒体105とプラテン101とをセンサによって識別するために、記録媒体105とプラテン101とは異なる色を持つことが求められる。記録媒体105は、通常、白色を基調としていることが多い。そのため、本実施形態では、プラテン101は黒色を基調としている。本実施形態では、黒色のプラテン101が採用され、白色の記録媒体が用いられている。しかしながら、プラテン101の色は、記録媒体105の識別ができれば良いため、黒に限定されるものではない。
【0021】
図2に、記録装置における模式的な断面図を示す。図2には、プラテン101周辺における記録装置内部の構造とファン102a、102bについて模式的に示されている。記録装置本体におけるプラテン101下部には、プラテンを構成する壁面によって一部が画成された圧力調整室120が形成されている。圧力調整室120の内部の構造は、図2に示されるようなダクト構造を有している。プラテン101には、記録媒体105と接触する部分に、プラテン101を貫通して記録装置本体におけるプラテン101下部における圧力調整室120の内部と記録装置本体の外部の大気とが連通するように、複数の貫通孔121が設けられている。
【0022】
記録装置本体におけるプラテン101下部の圧力調整室の両端には排気口が形成され、それぞれの排気口付近の領域には、プラテン101下部の空間から空気を排出可能なようにファン102a、102bが設けられている。ファン102a、102bは、ダクト内部の空気を外部へ排出し、プラテン101下部の圧力調整室120を減圧するためのものである。これにより、記録媒体がプラテン101に形成された貫通孔121に対応する位置に到達したときに、プラテン101下部の圧力調整室120を減圧し内部の圧力を調整することで、記録媒体を挟んで記録装置本体側と外気側とで圧力差が生じる。この圧力差によって、プラテン101に記録媒体を吸着することが可能になる。本実施形態では、ファン102a、102bは、回転数がPWM方式によって制御されている。これらのファン102a、102bは、外部からの信号で回転数を制御できるもの、あるいは駆動電圧を変動させる事で回転数を制御するものでも良い。
【0023】
プラテン101下部における圧力調整室120は、仕切り板111により仕切られており、仕切り板111を挟んで図2に示される左側の空間120aと右側の空間120bとに区画されている。そして、区画された二つの空間に、ファン102a、102bが一つずつ配置されている。ファン102a、102bが動作すると、区画された圧力調整室120a、120bのそれぞれの内部の空気が外部に排出されて圧力調整室120内部の圧力が減少し、貫通孔121を介して圧力調整室120の外部と内部との間に差圧が生じる。記録媒体105は、その差圧によりプラテン101に吸着される。
【0024】
図3は、記録媒体105が搬送される際の斜行検知及び斜行補正の制御について説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照しながら説明する。
【0025】
記録装置における記録媒体の積載位置に記録媒体105がセットされた状態で斜行検知及び斜行補正の制御が開始されると、記録媒体の積載位置から連続的に記録媒体105が搬送ローラ104及びピンチローラ103に向かって搬送される。それから、記録媒体105は搬送ローラ104とピンチローラ103の間に挟まれ、搬送ローラ104が回転駆動されることで記録媒体105が搬送されてプラテン101上に送り出される。このように、記録媒体105が積載位置からプラテン101に向かって搬送される。そして、記録媒体105がプラテン101に到達したときにプラテン101の下部でファン102a、102bが駆動することでプラテン101下部の圧力調整室120が減圧され、記録媒体105がプラテン101に吸着される。
【0026】
次に、図3のフローチャートを基に、記録媒体105の主走査方向の位置を以下の方法で検出し、斜行検知を行う方法について説明する。図4には記録媒体105が斜行していない状態の記録装置におけるプラテン101周辺の部分の平面図が示されており、図5には記録媒体105が斜行している状態の記録装置におけるプラテン101周辺の部分の平面図が示されている。
【0027】
斜行の有無を検知する際には、まず一回目の記録媒体の幅方向における端部の位置の検出が行われる(S401)。記録媒体105がプラテン101に吸着された状態で、プラテン101の端部を基準位置として、エンコーダによってキャリッジ110の位置を検出しながらキャリッジ110が走査する。記録媒体105の端部位置の検出の際には、キャリッジ110が走査しながら、キャリッジ110に設けられたLEDによって発光された光が一旦記録媒体上あるいはプラテン101上で反射してフォトダイオードで受光される。前述したように、本実施形態では記録媒体105は白色、プラテン101は黒色である。そのため、プラテン101と記録媒体105との間の光の反射の違いから、フォトダイオードにおける受光レベルが変動する。受光レベルが変動したところが、主走査方向の記録媒体105の端部として検出され、このときのエンコーダによる検出値によって記録媒体105における端部の位置の検出が行われる。そして、このときの記録媒体105の端部の位置が記録装置内部の記憶手段に格納される。
【0028】
次に、二回目の記録媒体105の端部の位置の検出が行われる(S402)。二回目の記録媒体105の位置の検出を行う前に、一旦キャリッジ110を記録媒体上から退避させ、記録媒体105を所定の量だけ送り出す。仮に記録媒体が斜めにセットされている状態で搬送が行われると、その後図6に示されるように、記録媒体が搬送されるに従い記録媒体の幅方向における端部の位置が変わる。記録媒体が図5に示されるように配置されている状態では、記録媒体が搬送されるに伴い、プラテン101における右側のファン102b側の端部から記録媒体の端部までの距離が大きくなる。一方、その逆側では、プラテン101における左側のファン102a側の端部から記録媒体の端部までの距離が小さくなる。図4に示されるように斜行が生じていない状態で記録媒体が配置されている場合には、記録媒体105が搬送されても記録媒体と搬送ローラのそれぞれの端部との間の距離は変わらずに略一定である。
【0029】
記録媒体105が搬送されると、再度キャリッジを走査し、前述と同じ方法で記録媒体105の端部を検出する(S403)。この時のエンコーダを読み取ることにより得られた値から記録媒体の端部の位置の検知が行われる。そして、このときの記録媒体の端部の位置が記憶手段に格納される。
【0030】
次に、一回目及び二回目の記録媒体の位置検知の結果を基に、ステップ404にて、記録媒体105が斜行しているかどうかが判断される(S404)。
【0031】
一回目の記録媒体位置の検出値と2回目の記録媒体位置の検出値とを比較し、それぞれの検出値の差が所定量以内であれば、記録媒体105が斜行せずに真っ直ぐに搬送されていると判断する。これに対し、一回目の記録媒体端部位置の検出値と2回目の記録媒体端部位置の検出値の差が所定量より大きければ、記録媒体に斜行が生じていると判断される。図5、6に示されるように、記録媒体に斜行が生じている状態では、搬送ローラ端部から記録媒体端部までの距離に関して、1回目の検出値d1<2回目の検出値d2となる。1回目の検出値d1と2回目の検出値d2との比較を行い、検出値同士の間に所定量よりも大きな差があれば、記録媒体105が斜行して搬送されたと判断する。このように、記録媒体の斜行を検知する斜行検知工程が行われる。
【0032】
そして、S404で斜行が生じていると判断された場合には、一回目の記録媒体の端部位置の検知結果と二回目の記録媒体の端部位置の検知結果との間におけるプラテン端部位置からの距離の差から斜行量を算出する(S405)。斜行量は、エンコーダの解像度から1カウント値の長さを基準とし、斜行検知で求めたカウント値の差から求める。
【0033】
そして、斜行量が検知されると、この検知された斜行量に基づいて斜行補正が可能であるかどうかが判断される。検知された斜行の量が斜行補正の可能な範囲であれば、次のステップS407におけるそれぞれのファンの回転数の調整工程に進む。もし、検知された斜行の量が修正できる範囲の斜行量を超えて大きく斜行している場合には、斜行補正は行われずに、再度記録媒体105をセットするようにする。このとき、再度の記録媒体のセットについては、ユーザーにその旨を報知することとしても良いし、記録装置が自動的に行うようにしても良い。
【0034】
次に、斜行の補正方法について説明する。S404の斜行が生じているかどうか判断する工程で、斜行が生じていることが検知され、そのときの斜行量が補正の結果記録媒体が正常な位置に配置されるように修正可能なような所定量以下であれば、斜行の補正が行われる。ここでは、例として記録媒体105が斜行した結果、図6に示されるように左側に搬送量を比較的少なくして斜行の修正が行われる場合について説明する。
【0035】
記録媒体105が斜行補正できる範囲内で斜行していれば、まず、記録媒体がプラテンに載置された状態で、斜行量に応じてファン102a、ファン102bを駆動し、ファンの駆動によって圧力調整室120の内部を排気して記録媒体105を吸着させる。このとき、圧力調整室120の内部の圧力と大気圧との差圧によって記録媒体が貫通孔121に吸着される。ここで、本実施形態では、プラテン101の右側において、ファン102bの回転数を左側のファン102aよりも上げ、記録媒体105が右側で比較的強くプラテン101に吸着するようにする。一方、プラテン101の左側において、ファン102aの回転数を右側のファン102bよりも下げてプラテン101への吸着量を比較的弱くする。このようにして、記録媒体の幅方向に関して、ファン102a、102bの回転数に差を持たせることで、プラテン101と記録媒体との間の吸着力に差を持たせている(S407)。このように、斜行検知工程で検知された記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体の領域ごとに吸着力を制御しながら記録媒体を記録装置本体のプラテン101に吸着させる吸着工程が行われる。
【0036】
この状態で、記録媒体は、記録媒体の積載位置から記録位置に向かう方向への通常の搬送方向とは逆方向へ搬送される。このときの記録媒体の搬送は、記録媒体の吸着力が制御されながら行われる。このとき、吸着力が領域ごとに異なる状態で搬送方向とは逆方向に記録媒体を移動させることで、記録媒体の幅方向において搬送量が異なり、搬送量を幅方向で調節することにより記録媒体105の斜行量を減少させる。このとき、吸着力が幅方向に関して偏った状態での記録媒体の搬送によって、その搬送量が記録媒体の幅方向で偏り、この偏りを調節することにより記録媒体の斜行が減少する。記録媒体の斜行が減少したときの記録媒体の状態を図7に示す。図7に示されるように、記録媒体の斜行が修正された後のプラテン101の端部から記録媒体の端部までの距離d3が、二回目の記録媒体位置検知におけるプラテン101の端部から記録媒体の端部までの距離d2よりも小さくなっている。
【0037】
このように、記録媒体の幅方向に関して吸着力に差を持たせた状態で、記録媒体を搬送方向とは逆方向に移動させると、その方向への移動量が記録媒体の幅方向に関して異なる。本実施形態では、記録媒体105の右側のファン102bの回転数が左側のファン102aの回転数よりも小さいので、ファン102b側の領域におけるプラテン101への吸着量がファン102a側よりも弱い。従って、記録媒体におけるファン102b側の部分の方がファン102a側の部分よりも搬送方向とは逆方向への移動量が大きい。このようにして、記録媒体を搬送方向とは逆方向に移動させる際に、記録媒体の幅方向に関して移動量に差を持たせることで、記録媒体における斜行が生じた状態を正常な状態に戻している(S408)。本実施形態では、図7に示されるように、記録媒体の右側の領域の通常の搬送とは逆方向への移動量が左側に比べて多くなる。このように、吸着工程により領域ごとに異なる吸着力を作用させたまま記録媒体を搬送し、搬送量の違いにより記録媒体の斜行を修正する斜行修正工程が行われる。
【0038】
また、本実施形態の記録装置は、吸着手段としてのファン102a、102bによる記録媒体の吸着力を領域ごとに制御する吸着力制御手段を有している。本実施形態の吸着力制御手段は、ファン102a、102bの回転数を制御することで記録媒体の吸着力を制御している。本実施形態では、記録装置側のCPUが吸着力制御手段として機能する。なお、本実施形態の記録装置では、記録装置側のCPUが吸着力制御手段として機能することとしているが、本発明はこれに限定されず、ホスト装置側が吸着力制御手段として機能することとしても良い。
【0039】
次に、ステップS401に戻り、再び斜行を検知するシーケンスS402〜S405を行う。S404の斜行が生じているかどうかを判断する工程で斜行が無いと判断されれば、記録可能状態に移行する。このようにして、記録媒体の斜行の修正から記録媒体のセットまでのシーケンスを終了する。
【0040】
なお、本実施形態の記録装置では、プラテン101下部における記録装置の内部に形成された圧力調整室120が仕切り板111により仕切られ、その圧力調整室120が仕切り板111を挟んで二つの空間120a、120bに区画されている。そして、区画された二つの空間120a、120bには、それぞれファン102a、102bが一つずつ配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、記録媒体の斜行する方向が定まっていれば、ファンはいずれか一方の空間に配置されるのみでも良い。また、圧力調整室が区画される空間の数は二つに限定されず、三つ以上であっても良い。空間が細かく区画されて区画された領域の数が増え、区画されたそれぞれの空間にファンが配置される場合には、区画された領域ごとにファンによる吸着力の調節を行うことができる。そのため、斜行の修正が、領域ごとにより細かく制御される。
【0041】
また、本実施形態では、吸着手段としてプラテン下部の圧力調整室120に排気可能なファン102a、102bを配置して空間内部の圧力を低減することとしているが、吸着手段はこれに限定されない。例えば、ポンプを介して排気することによってプラテン下部の圧力調整室120を減圧し、記録媒体をプラテン101に吸着することとしても良いし、その他の手段によって記録媒体がプラテン101に吸着されるようにしても良い。
【0042】
また、本実施形態では、記録媒体の斜行の補正は、記録媒体の吸着力の制御が行われながら、積載位置から記録位置に向かう方向への搬送方向とは逆方向へ記録媒体が搬送されることで行われている。しかしながら、斜行の補正が行われる際の記録媒体の搬送方向はこれに限定されず、記録媒体が積載位置から記録位置に向かう方向への搬送方向に搬送される際に行われても良い。
【0043】
本実施形態の斜行検知及び斜行補正の制御によれば、記録媒体を搬送する搬送ローラ104の位置と記録媒体のプラテン101への吸着を行う位置とが別々に形成されているので、搬送ローラ104の構成が単純で済む。そのため、記録装置の製造コストを抑えることができる。また、搬送ローラ104の小型化を図ることができるので、記録装置の小型化を図ることができる。
【0044】
また、記録装置が自動的に記録媒体の斜行の補正を行うので、ユーザーの手間を省くことができ、記録装置の操作において煩わしさを感じさせずに済む。
【0045】
また、記録時には、ファンの駆動によって記録媒体がプラテンに吸着された状態で記録を行うことができる。従って、記録媒体がプラテンに吸着されて安定した状態で記録が行われるので、記録によって得られる画像の品質を高めることが可能になる。
【0046】
また、記録媒体の斜行を修正するために記録媒体の搬送方向とは逆方向へ記録媒体を移動させる際に、搬送ローラによって記録媒体が保持されるのみで、その他は非接触の状態で斜行の修正が行われる。そのため、記録媒体の斜行を補正する際に、記録媒体に変形が生じることを抑えることができる。記録媒体に変形が生じることを抑えることができるので、記録媒体が変形した状態で記録が行われることが抑えられ、記録画像の品質が低下することを抑えることができる。また、記録媒体が破損することを防ぐことができ、記録物の信頼性を高めることができる。また、斜行検知及び斜行補正の制御の際に記録媒体の保持以外に外力を作用させる必要が無いので、記録媒体に強度があまり求められずに済み、記録媒体の適用範囲が広げられた記録装置を提供することができる。
【0047】
(第二実施形態)
次に、図8、9を用いて、第二実施形態について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。図8は、第二実施形態に係る記録装置について図示したものである。本実施形態の記録装置では、図8に示されるように、プラテン101下部の圧力調整室120に弁601が配置されている点で第一実施形態の記録装置と異なる。弁601は、弁駆動用ベルト602を介して弁駆動用モータ603に接続され、弁駆動用モータ603を駆動させることで、弁601がプラテンを形成する面に水平あるいは垂直な方向に延びるように、姿勢を変えることが可能である。弁601が、プラテンを形成する面に垂直な方向に延びるように配置されたときには、プラテン101の下部の圧力調整室120を二つに区画させることができる。このように、本実施形態では、記録装置は、その開閉によって圧力調整室120を区画可能な弁601を有している。
【0048】
図8は、弁601が水平状態にあり、プラテン下部の圧力調整室120におけるダクト内部が記録媒体の幅方向に関して連通している状態を示している。一方、図9では、弁601がプラテン101を形成する面に垂直な方向に延びた状態にあり、プラテン101下部の圧力調整室120におけるダクトが弁601で分けられて区画されている。弁601は、弁駆動用モータ603を作動させることで、圧力調整室120内部のダクトを区画する状態に移動している。図9では、記録媒体の幅方向に関して、プラテン下部の圧力調整室120が弁601によって遮断されている。
【0049】
このように、プラテン下部の空間に弁601を配置することで、記録媒体の幅方向に関し、領域ごとに減圧の程度をより細かく制御することが可能になる。従って、斜行が生じたときに、補正により正確に斜行を修正することができるので、補正後の記録媒体の位置精度がより高くなる。また、一回の補正でより正確に記録媒体の位置補正を行うことができるので、補正の回数が少なくなり、斜行補正の制御にかかる時間を短縮化することができる。
【0050】
本実施形態においては、斜行補正後に記録を実行する際に、弁601を水平状態にし、いずれか一つのファンの駆動によって記録媒体をプラテン101に吸着させることが可能となる。従って、記録媒体の斜行の補正を行った後に記録が行われる段階で、記録媒体をプラテン101に吸着させるのに用いられるファンの数を少なくすることができるので電力の消費量を少なく抑えることができる。従って、消費エネルギーを少なくすることができるので、記録装置を使用する際のコストを少なく抑えることができる。
【0051】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0052】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
【0053】
さらに、「インク」または「液体」とは、広く解釈されるべきものであり、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、記録媒体の加工、或いはインクまたは記録媒体の処理に供される液体を言うものとする。ここで、インクまたは記録媒体の処理としては、例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化による定着性の向上や、記録品位ないし発色性の向上、画像耐久性の向上などのことを言う。
【0054】
また、上述した記録装置は、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプの記録装置である。しかし、本発明は記録媒体の幅方向の全域に亘って延在する記録ヘッドを用いるフルラインタイプの記録装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
104 搬送ローラ
110 キャリッジ
102a、102b ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送可能な搬送手段と、
記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記搬送手段とは別の位置に配置され、記録媒体を記録装置本体に吸着させる吸着手段と、
前記吸着手段による吸着力を領域ごとに制御する吸着力制御手段とを有し、
記録媒体の斜行が生じたときに、その斜行に応じて、前記吸着力制御手段によって記録媒体の領域ごとに吸着力が制御された状態で記録媒体が搬送され、記録媒体の搬送量が領域ごとに制御されて記録媒体の斜行が補正されることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録媒体の斜行を検知する検知手段を有し、
前記検知手段によって記録媒体の斜行が検知されたときに、その斜行量が検出され、
前記斜行量に応じて、前記吸着力制御手段によって領域ごとに吸着力が制御された状態で記録媒体が搬送され、記録媒体の搬送量が記録媒体の領域ごとに制御されて記録媒体の斜行が補正されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吸着手段はファンであり、
記録が行われる記録位置は、前記記録手段に対向する位置に記録媒体を規制するためのプラテン上の位置であって、
前記プラテンの下部には圧力調整室が形成され、
前記圧力調整室と大気とが前記記録位置で連通するように、前記プラテンには前記記録位置に貫通孔が形成され、
記録媒体がプラテンに載置されたときに、前記圧力調整室から前記ファンの駆動によって排気することで前記圧力調整室の内部が減圧されて圧力が調節され、前記圧力調整室の圧力と大気圧との差圧によって記録媒体が前記貫通孔に吸着されることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
吸着力制御手段は、記録媒体におけるそれぞれの領域ごとに対応したファンの回転数を制御することで吸着力を領域ごとに制御することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ファンの回転数は、PWM方式によって制御されることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記圧力調整室の内部には、前記圧力調整室を区画可能な弁が配置されていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記圧力調整室における前記弁によって区画されたそれぞれの空間には、排気が可能なファンがそれぞれの空間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
記録媒体に斜行が生じたときに、斜行を修正する記録媒体の斜行修正方法であって、
記録媒体の斜行を検知する斜行検知工程と、
前記斜行検知工程で検知された記録媒体の斜行量に応じて、記録媒体の領域ごとに吸着力を制御しながら記録媒体を記録装置本体に吸着させる吸着工程と、
前記吸着工程により記録媒体の領域ごとに異なる吸着力を作用させたまま記録媒体を搬送し、搬送量の違いにより記録媒体の斜行を修正する斜行修正工程とを有することを特徴とする記録媒体の斜行修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−93660(P2011−93660A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249126(P2009−249126)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】