説明

記録装置及び記録装置の制御方法

【課題】装置を消費電力の少ないスリープモードに移行する際に、不要電磁雑音の影響を抑制しつつ、不要電磁雑音のピークを低減する効果があるがスペクトル拡散しない場合に比べ消費電力が大きくなるSSCGの消費電力を低減して装置全体を省電力にする。
【解決手段】スリープモードに移行する際にSDRAMをセルフリフレッシュ状態に遷移させた後、SSCGをスペクトル拡散されていないクロック信号を出力するモードに移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及びその制御方法に関し、特に、スペクトル拡散されたクロック信号を生成するクロックジェネレータを有するとともにスリープモードを備えた記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタを制御するプリンタコントローラは機能の高度化や複雑化が進み、プロセッサがメモリ上のプログラムを実行してプリンタを制御する情報処理装置の形態として構成されることが多くなっている。こうしたプリンタコントローラの構成方法として、プロセッサやメモリコントローラ、画像処理を行うハードウエアなどをひとつのパッケージに封止した集積回路であるASICを使用して構成することが一般的になってきている。プロセッサやASICの内部回路は専ら外部から入力されるクロック信号やASIC内部に備えたPLLで逓倍した内部クロック信号に同期して動作する構成となっている。従って、プリンタの処理性能を向上させるためには、プリンタコントローラで使用するクロック信号やASIC内部のPLLで生成する内部クロック信号の周波数を高くする。
【0003】
いっぽう、このようなクロック信号の周波数の上昇はプリンタコントローラから放射される不要電磁雑音を増大させる要因となりうる。特に、クロック信号に同期して動作する同期DRAMが電磁雑音の大きな要因の一つとなっている。電子機器から放射される不要電磁雑音は他の電子機器に影響を与えるおそれがあるため、不要電磁雑音の放射強度を制限する規制が各国各地域で規定されている。放射不要電磁雑音のピークを低減するための対策として、所定の周波数変調幅でスペクトル拡散されたクロック信号を出力可能なSSCGと呼ばれるクロックジェネレータICが広く使われている。SSCGは外部端子によってスペクトル拡散の周波数変調幅やスペクトル拡散機能の有効および無効の切り替えを設定することができるものもあり、装置設計者が選択できるようになっている。
【0004】
ところで、近年プリンタにおいても消費電力の低減が求められており、印刷時だけではなく待機時の消費電力を低く抑えることが求められてきている。一方、SSCGのスペクトル拡散機能を有効にした場合、無効にした場合に比べ消費電力が多くなることが知られている。そこで、特許文献1ではICへの入力クロック信号をスペクトル拡散された信号からスペクトル拡散されていない信号に切り替えると共に内蔵のCPUにソフトリセットを設け、クロックの異常発振期間にはCPUの動作が停止可能な情報処理装置を開示している。このような情報処理装置ではスリープモードにおいてSSCGに供給する電力を遮断することができ、待機時の消費電力を低減することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−26082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来例では、IC内部のクロックを極めて遅い周波数で動作中の場合にSSCGの電源を切断するが、不要電磁雑音の要因の一つである同期DRAMのスリープ時における状態に応じたスペクトル拡散の制御ができないという課題があった。
【0007】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、スリープモード時に同期DRAMをセルフリフレッシュ状態に移行するとともにスペクトル拡散されていないクロック信号をSSCGから出力可能な記録装置及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成からなる。
【0009】
即ち、 ホストから受信した記録データに基いて記録媒体に記録を行う記録動作モードと、前記ホストからプリント指示の受信を待ち合わせているスタンバイモードと、装置の消費電力を低減するスリープモードとを備え、前記3つのモードの間で動作モードが移行して記録を行う記録装置であって、装置の各部へ供給するクロック信号を生成するとともに、前記生成されたクロック信号をスペクトル拡散することが可能なクロック生成手段と、装置全体の動作状態を監視する監視手段と、装置全体の動作を制御するCPUと、少なくとも前記記録データを格納する、前記クロック生成手段により生成されたクロック信号により動作する、DRAMとを有し、前記CPUは、前記スタンバイモードにおいて、前記監視手段による監視中に、所定の時間、記録動作に関係する動作が検出されない場合、前記クロック生成手段により生成されるクロック信号をスペクトル拡散されない信号にするよう前記クロック生成手段を制御するとともに、前記DRAMへのクロック信号の供給を停止して、前記スリープモードに移行するよう制御することを特徴とする。
【0010】
また本発明を別の側面から見れば、ホストから受信した記録データに基いて記録媒体に記録を行う記録動作モードと、前記ホストからプリント指示の受信を待ち合わせているスタンバイモードと、装置の消費電力を低減するスリープモードとを備え、前記3つのモードの間で動作モードが移行して記録を行う記録装置の制御方法であって、装置全体の動作状態を監視し、前記スタンバイモードにおいて、前記監視中に、所定の時間、記録動作に関係する動作が検出されない場合、装置の各部へ供給するために生成されるクロック信号をスペクトル拡散されない信号にするようクロックジェネレータを制御するとともに、少なくとも前記記録データを格納するDRAMへのクロック信号の供給を停止して、前記スリープモードに移行するよう制御することを特徴とする記録装置の制御方法を備える。
【発明の効果】
【0011】
従って本発明によれば、記録装置が消費電力の少ないスリープモードに移行する際に同期DRAMをセルフリフレッシュモード状態にするとともにSSCGのスペクトル拡散を無効に制御することができる。これにより、スリープモードにおいて記録装置全体の消費電力が低減され、スペクトル拡散を無効にすることで生じる不要電磁雑音の影響も抑制することが可能になる。また、プリント基板の少ないスペースを使って実現することができるのでコスト的にも利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示したクロック生成分配部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示したクロックジェネレータの端子および機能を説明する図である。
【図5】プリンタコントローラとRAMとクロックジェネレータの結線および信号線の論理関係を説明する図である。
【図6】RAMコントローラが備えるレジスタの構成を示す図である。
【図7】プリンタがスリープモードに移行する処理およびスリープモードから復帰する処理の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0014】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0015】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
またさらに、「記録素子」(「ノズル」という場合もある)とは、特にことわらない限りインク吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0016】
図1は本発明の代表的な実施例であるシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置(以下、プリンタ)の概略構成を示す概観図である。
【0017】
プリンタ100は、図1に示すように架設されたガイドレール101および102に沿ってキャリッジ103が矢印“X”で示される方向(主走査方向)に移動自在にガイドされている。キャリッジ103はキャリッジモータ(不図示)とその駆動力を伝達する無端ベルト等の駆動力伝達機構により主走査方向に往復移動する。キャリッジ103には記録ヘッド104が搭載され、プリンタ100に装着された各色のインクタンク(不図示)からチューブを介してインクが供給される。
【0018】
記録ヘッド104はインクジェット方式の記録ヘッドであり、インク滴を吐出可能な吐出口が主走査方向と交差する方向に配列されてノズル列が形成されている。吐出口からインクを吐出させるための機構として、電気熱変換体(ヒータ)や圧電効果を利用したピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、電気熱変換体の発熱によってインクを発泡させ、発泡の際に生じる発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させる。
【0019】
記録用紙のような記録媒体は、ロール状に巻回されたロール紙105をプリンタ100に装着し、ロール紙105から引き出されたシート端がプリンタ100の挿入口から挿入される。そのシートは搬送ローラ106によって主走査方向と直交する矢印“Y”で示される方向(副走査方向)に搬送される。プリンタ100は、記録ヘッド104を主走査方向に往復移動させながらインク滴を記録媒体に吐出して記録を行う動作と、記録ヘッド104の記録幅に対応する距離だけ記録用紙を副走査方向に搬送する動作とを繰り返すことにより、順次画像を記録する。
【0020】
プリンタ100は、記録動作モード以外の動作モードとしてスタンバイモードとスリープモードの二つのモードを備えている。スタンバイモードでは記録動作を行っていない他はほぼ記録中と同じ状態であり、ホスト装置からプリント指示を受信するとただちに記録を開始することができる状態にある。スリープモードではスタンバイモードよりも消費電力の少ない省電力状態にあり、一部の回路へのクロック信号の停止や電力供給を停止している。スリープモード中にホスト装置からのプリント指示を受信すると、プリンタはクロック信号や電力供給を再開して記録可能な状態へ復帰する。
【0021】
プリンタ100は上述したような機構的な構成をプリンタエンジンということもある。そして、プリンタ100は、プリンタエンジンと、そのプリンタエンジンを制御するとともにホスト装置とのインタフェースとして役割を果たし、装置全体を制御するプリンタコントローラと、電源回路部等から概略構成される。従って、プリンタコントローラは記録データや制御データを処理するので、その意味からすれば、ある種の情報処理装置ということもできる。図1にはプリンタコントローラ200が点線で示されている。
【0022】
以下、情報処理装置としてプリンタコントローラについての実施例を説明する。
【0023】
図2はプリンタコントローラ200の構成を示すブロック図であるが、ホスト装置(以下、ホスト)280とプリンタエンジン290との接続関係も示されている。
【0024】
プリンタコントローラ200は、パーソナルコンピュータ等のホスト280から印刷指示および印刷用の画像データを受信し、受信した画像データをプリンタエンジン290で印刷可能な構成の二値画像データに変換して出力する機能を提供する。プリンタコントローラ200は、CPU201、RAMコントローラ203、ROMコントローラ204、通信インタフェース205、操作部制御回路部206、表示部制御回路部207、及び拡張バス回路部208を備えている。プリンタコントローラ200はさらに、画像処理部209とプリンタエンジンインタフェース210とを備える。これら各ブロックは互いそにバスライン212a〜212jを介してシステムバスブリッジ211に接続されている。
【0025】
これらのブロックはシステムLSIとして一つのパッケージに封止されたプリンタコントローラASIC(アプリケーション専用集積回路)214として実現されている。この他、プリンタコントローラASIC214はクロック生成分配部213を備えている。
【0026】
また、プリンタコントローラ200は、RAM251、ROM252、操作部253、表示部254、機能拡張ユニットを装着する拡張スロット255、クロックジェネレータ256、水晶振動子257を備える。
【0027】
CPU201は、プリンタコントローラ200全体の制御を司る。CPU201は、ROM252またはRAM251に格納された制御プログラムを順次読み出し実行することによって、汎用入出力ポート269の制御、通信インタフェース205の制御、操作部253、及び表示部254の制御を行う。また、CPU201は、受信した画像データを画像形成データに変換するための画像処理部209の制御や、生成された画像形成データをプリンタエンジン290へ転送するためのプリンタエンジンインタフェース210の制御等を行う。
【0028】
CPU201は、プリンタコントローラ200に電源の供給が開始されリセット状態が解除されるとリセットベクタと呼ばれる所定の番地からプログラムを読み出して制御手順を順次実行する。この実施例ではCPU201のリセットベクタに対応するアドレスはROM252に割り当てられており、リセットが解除されるとCPU201はROM252からプログラムコードを読み出して制御手順の実行を開始する。また、CPU201は命令セットにWFI命令(Wait for Interrupt;割り込み待ち命令)を有している。WFI命令を実行すると、CPU201は割り込み信号を受信するまで命令コードの実行を停止し、割り込み信号を受信するとWFI命令の後続の命令コードから実行を再開する。
【0029】
汎用入出力ポートコントローラ202は、プリンタコントローラASIC214の汎用入出力ポート269を制御する機能を備えている。汎用入出力ポート269は、汎用入出力ポートコントローラ202に設けられたレジスタに設定されたパラメータに従って入力ポートまたは出力ポートとして機能する。この実施例のプリンタでは、汎用入出力ポート269の一部の信号を出力として使用し、電源回路部(不図示)の制御等を行っており、プリンタエンジン290への電力の供給を制御している。
【0030】
RAMコントローラ203は、RAMバス261を介してプリンタコントローラASIC214に接続されたRAM251の制御を行う。RAMコントローラ203はCPU201およびDMACを有する各ブロックとRAM251との間で、書き込みまたは読み出しされるデータの中継を行う。RAMコントローラ203は、CPU201および各ブロックからの読み出し要求や書き込み要求に応じて必要な制御信号を生成してRAM251への書き込みやRAM251からの読み出しを実現する。また、RAMコントローラ203はRAM制御レジスタを有し、CPU201がレジスタにライトすると必要な制御信号を生成してRAM251にコマンドを発行する機能を備えている。なお、RAM制御レジスタの詳細については図面を参照して後述する。
【0031】
ROMコントローラ204は、ROMバス262を介してプリンタコントローラASIC214に接続されたROM252の制御を行う。ROMコントローラ204は、CPU201からの読み出し要求に応じて必要な制御信号を生成して、予めROM252に格納された制御手順(プログラム)やデータを読み出し、システムバスブリッジ211を介してCPU201に読み出した内容を送り返す。また、ROM252がフラッシュメモリ等の電気的書換可能なデバイスで構成される場合、ROMコントローラ204は必要な制御信号を発生してROM252の内容を書き換える。
【0032】
通信インタフェース205は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のホスト280との間でデータの送受信を行う機能を備え、ホスト280から受信した画像データを、RAMコントローラ203を介してRAM251に格納する機能を備えている。通信インタフェース205の通信方式としては、USBやIEEE1394などの高速シリアル通信、IEEE1284などのパラレル通信、あるいは100BASE−TXや1000BASE−T等のネットワーク通信などいずれの方式であってもよい。またこれらの複数の通信方式に対応していてもよい。さらには、有線通信方式に限らず、無線通信方式であっても良い。通信インタフェース205は、通信中ではない場合にホスト280から通信の要求を受信するとCPU201に割り込み信号を発行してホスト280からの通信要求を通知する機能を備えている。
【0033】
操作部制御回路部206は、操作部253を構成するスイッチから出力される電気信号の状態をCPU201からのリード命令に対してレジスタ情報として通知する機能を備えている。また、操作部制御回路部206は、スイッチから出力される電気信号の状態に変化が生じると、CPU201に対して割り込み信号を生成する機能を備えている。表示部制御回路部207は、表示部254を構成するLCDおよびLEDランプに電気信号を出力する機能を備える。拡張バス回路部208は、拡張スロット255に装着した機能拡張ユニットを制御する機能を備え、拡張バス265を介して機能拡張ユニットにデータを送信する制御および機能拡張ユニットが出力するデータを受信する制御を行う。拡張スロット255には、大容量記憶機能を提供するハードディスクドライブユニット、あるいはUSBやIEEE1394のほか、IEEE1284などに準拠した通信機能によりホスト装置と通信を行う通信ユニットなどが装着可能である。拡張バス265には割り込み信号も割り当てられており、装着した機能拡張ユニットが出力する割り込み信号をCPU201に通知することができる。
【0034】
画像処理部209は、ホスト280から受信した画像データをプリンタエンジン290で印刷可能な二値画像データに変換する機能を備えている。プリンタエンジンインタフェース210は、プリンタコントローラ200とプリンタエンジン290との間でデータの送受信を行うブロックである。画像処理部209やプリンタエンジンインタフェース210は印刷処理中に動作するブロックであり、プリンタ100がスリープモードの間はクロック信号を停止して電力消費を抑制するクロックゲーティング処理を行う。プリンタエンジンインタフェース210は、DMAC(ダイレクトメモリアクセスコントローラ)を有している。これにより、プリンタエンジンインタフェース210は、画像処理部209で生成されRAM251に格納されている二値画像データを、RAMコントローラ203を介して順次読み出してプリンタエンジン290に転送する。なお、通信インタフェース205、拡張バス回路部208、および画像処理部209は、プリンタエンジンインタフェース210と同様にDMAC機能を有し、メモリアクセス要求を発行する機能を備えている。
【0035】
システムバスブリッジ211は、プリンタコントローラASIC214を構成する各ブロック間を接続する機能を備えるほか、複数のブロックから同時にアクセス要求が発行された場合に、バス権を調停する機能を備えている。CPU201およびDMACを有する各ブロックがRAMコントローラ203を介してRAM251へのアクセス要求をほぼ同時に発行する場合には、システムバスブリッジ211は予め指定されたプライオリティー(優先順位)に従って適切に調停を行う。
【0036】
クロック生成分配部213は、PLL(位相同期回路)および分周器で構成され、プリンタコントローラASIC214の外部から供給される基準クロックを逓倍および分周して出力する機能を実現する。クロック生成分配部213は、プリンタコントローラASIC214を構成する各ブロックやシステムバスブリッジなどに対してクロック信号線(不図示)を介して動作基準となるクロック信号を供給する。プリンタコントローラASIC214は外部から基準クロックを入力する端子としてPLLCLKIN端子を備える。なお、クロック生成分配部の詳細については図面を参照して詳細に後述する。
【0037】
RAM251は同期DRAM(SDRAM)で構成され、CPU201が実行する制御手順の格納、画像処理部209において生成された画像形成データの一時的な記憶、およびCPU201のワークメモリとしての機能などを提供する。また、RAM251は、通信インタフェース205がホスト280から受信した画像データの一時的なバッファリングや拡張バス265を介して接続された機能拡張ユニットとの間で受け渡しされるデータを一時的に保存する。この実施例では、RAM251はDDR2−SDRAMで構成されている。
【0038】
RAMバス261はDDR2−SDRAMで構成されたRAM251とプリンタコントローラASIC214とを電気的に接続するバスで、制御信号線、アドレスバス、バンクアドレスバス、およびデータバスで構成される。制御信号線は、クロックイネーブル信号CKE、チップ選択信号CS、行アドレスストローブ信号RAS、列アドレスストローブ信号CAS、ライトイネーブル信号WE、ならびに差動クロック信号対CKおよびCK#を有している。これら制御信号線の状態の組み合わせにより、データのリードやライトのほか、オートリフレッシュ処理やプリチャージ処理、モードレジスタセット処理のコマンドを通知することができる。
【0039】
RAM251は通常の動作状態よりも消費電力の少ないセルフリフレッシュと呼ばれる動作状態を備えており、クロックイネーブル信号CKEの電位レベルにより通常の動作状態とセルフリフレッシュ状態とを選択することができる。クロックイネーブル信号CKEがLレベルの場合RAM251はセルフリフレッシュ状態となり、クロックイネーブル信号CKEがHレベルの場合RAM251は通常の動作状態となる。また、RAMバス261の制御信号線はデータマスク信号DQM、差動データストローブ信号対DQSおよびDQS#を有している。
【0040】
ROM252はフラッシュメモリ等で構成され、CPU201が実行する制御手順および記録制御に必要なパラメータを格納する。フラッシュメモリは電気的に書き換えが可能な不揮発性デバイスであり、決められたシーケンスに従って制御手順やパラメータの書き換えが可能である。
【0041】
操作部253は、プリンタ100の動作を設定するボタンに連動するスイッチで構成され、これらスイッチの状態を電気信号として出力する機能を備える。また、操作部253は、操作ボタンの操作によるスイッチの状態の変化を電気信号の変化として出力する機能を備えている。操作部253は、プリンタ100の電源のオンおよびオフを指示する電源ボタンを備えている。また、操作部253には、動作モードを切り替えるオンラインボタンやメニュー画面の表示を指示するメニューボタン、メニュー画面から項目を選択するための上下左右方向の十字ボタン、および選択項目を確定するOKボタンを備えている。この他、操作部253は、印刷の停止を指示するストップボタンおよび印刷用紙の給紙方法を選択する給紙選択ボタンを備えている。表示部254は、LEDランプおよびLCD等から構成される。LEDランプはプリンタ100の動作状態や警告をユーザに示し、LCDはプリンタ100の動作状態をユーザに表示する他、操作部253のメニューボタンなどの操作によりメニュー画面を表示する。なお、LCDは内部にLEDを備えバックライト機能を有しており、汎用入出力ポート269を介してバックライトの点灯・消灯の制御が可能である。
【0042】
クロックジェネレータ256は水晶振動子257の基準周波数信号をもとにプリンタコントローラASIC214のPLLCLKIN端子に供給するクロック信号を生成する。この実施例のクロックジェネレータは、スペクトル拡散されたクロック信号およびスペクトル拡散されていないクロック信号を選択的に生成することができる。なお、クロックジェネレータ256の端子構成および動作の詳細は図面を参照して後述する。
【0043】
次に、このプリンタのクロック生成分配部について図面を参照して説明する。
【0044】
図3は、クロック生成分配部213の構成を示すブロック図である。
【0045】
クロック生成分配部213は、PLL301および複数の分周器302a〜302dから構成されている。PLLCLKIN端子を介してクロック生成分配部213に入力されたクロック信号はPLL301によって周波数逓倍された後、各分周器302に入力される。各分周器302はそれぞれ分周比が設定されており、各回路ブロックに必要な周波数のクロック信号に分周される。分周後、クロック生成分配部213から出力されたクロック信号は、CPU201、RAMコントローラ203、システムバスブリッジ211などのプリンタコントローラASIC214を構成する各回路ブロックに供給される。
【0046】
また、クロック生成分配部213から出力されたクロック信号の一部はプリンタコントローラASIC214から端子を介して外部に出力される。このクロック信号は、RAMを構成する同期DRAMや、拡張スロット255に接続された機能拡張ユニットなどプリンタコントローラ200の各回路部に供給される。クロック生成分配部213はCPU201からアクセス可能なレジスタ(不図示)を備えており、各分周器に分周比を設定することや、分周されたクロック信号ごとに出力を停止することができる。これにより、画像処理部209やプリンタエンジンインタフェース210のクロックゲーティング機能を実現する。また、RAM251に供給されるクロック信号の出力を停止する機能も実現される。
【0047】
次に、クロックジェネレータ256について、図面を参照して説明する。
【0048】
図4は図2に示したクロックジェネレータの端子および機能を説明する図である、
図4(a)はクロックジェネレータ256の入力端子と出力端子を示しており、クロックジェネレータ256は、XIN端子、XOUT端子、SSON#端子、およびCLKOUT端子を有している。XIN端子とXOUT端子との間には発振周波数の基準となる水晶振動子257を接続する。SSON#端子はクロックジェネレータ256がスペクトル拡散されたクロック信号またはスペクトル拡散されていないクロック信号のいずれを出力するかを指定する入力端子である。クロックジェネレータで生成されたクロック信号はCLKOUT端子から出力される。この他、クロックジェネレータ256は図示していない端子として電源を供給するVDD端子および基準電位を与えるGND端子を有している。
【0049】
図4(b)は、SSON#端子の状態とクロックジェネレータ256が出力するクロック信号との関係を示している。クロックジェネレータ256はSSON#端子にHレベル信号入力時にはスペクトル拡散されていないクロック信号をCLKOUT端子から出力し、SSON#端子にLレベル信号入力時にはスペクトル拡散されたクロック信号をCLKOUT端子から出力する。なお、この実施例のクロックジェネレータでは、出力基準周波数に対して低周波数側に1%の変調幅でスペクトル拡散されたダウンスプレッドのクロック信号が出力される。
【0050】
次に、RAMバス261の接続について図面を参照して説明する。
【0051】
図5はプリンタコントローラASICとRAMとクロックジェネレータとの結線および信号線の論理関係を説明する図である。
【0052】
図5(a)に示すように、プリンタコントローラASIC214とRAM251はRAMバス261を介して接続されており、このうちクロックイネーブル信号CKEはさらにインバータゲート501に接続されている。インバータゲート501は論理反転素子であり、クロックイネーブル信号CKEの論理を反転した信号がクロックジェネレータ256のSSON#端子に接続されている。
【0053】
図5(b)はクロックイネーブル信号CKEの論理レベルとクロックジェネレータ256のSSON#端子に入力される信号の論理レベルの関係を示している。図5(b)に示すように、クロックイネーブル信号CKEがHレベルの場合はSSON#端子の入力がLレベルとなり、クロックジェネレータ256はスペクトル拡散されたクロック信号を出力する。一方、クロックイネーブル信号CKEがLレベルの場合はSSON#端子の入力はHレベルとなり、クロックジェネレータ256はスペクトル拡散されていないクロック信号を出力する。
【0054】
プリンタコントローラASIC214の回路ブロック各々は、CPU201からアクセス可能なレジスタを備え、レジスタに所定の値をライトして回路ブロックの動作を制御することや、レジスタをリードして各回路ブロックの状態を取得することができる。
【0055】
図6はRAMコントローラが備えるレジスタの構成を示す図である。
【0056】
RAMコントローラ203は図6に示すようにRAM251の動作を制御するレジスタのうちセルフリフレッシュ制御レジスタ601を有している。セルフリフレッシュ制御レジスタ601はRAM251のセルフリフレッシュ動作の開始および終了を制御するレジスタである。
【0057】
セルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット0の値が“0”のときにビット0に値“1”をライトすると、RAMコントローラ203は所定のタイミング仕様を満たしてRAMバス261のクロックイネーブル信号CKEをLレベルに変化させる。これにより、RAM251を構成するSDRAMはセルフリフレッシュ状態に移行する。また、RAM251がセルフリフレッシュ状態のときにセルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット0に値“0”をライトすると、所定のタイミング仕様を満たしてRAMバス261のクロックイネーブル信号CKEをHレベルに変化させる。これにより、RAM251を構成するSDRAMのセルフリフレッシュ状態は解除される。
【0058】
なお、セルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット31〜ビット1は予約(reserved)ビットであり、これらのビットへはつねに“0”をライトする。この実施例のプリンタでは、プリンタコントローラ200に電力供給が開始され装置全体がリセットされた直後におけるセルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット0の値は“1”であり、クロックイネーブル信号CKEはLレベルである。CPU201はリセット後にROM252から命令コードを読み出して処理を開始し、セルフリフレッシュ制御レジスタのビット0に値“0”を書き込むための命令コード列を読み出し実行することでクロックイネーブル信号CKEがHレベルとなる。
【0059】
次に、この実施例のプリンタの動作について図面を参照して説明する。
【0060】
図7はプリンタが省電力状態であるスリープモードへ移行する処理とスリープモードから復帰する処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0061】
プリンタ100はスタンバイモードでは、装置の各部の動作を監視する。そして、その監視中、所定の時間、ホストからの印刷指示など通信インタフェースを介したデータの送受信や操作部からの操作入力がない場合、消費電力の少ないスリープモードに移行し、その途中で図7に示す処理手順を実行する。
【0062】
即ち、ステップS701で、CPU201はプリンタをスリープモードに移行するために各回路ブロックを消費電力の少ない省電力状態にするための処理を実行する。この処理には、プリンタエンジン290への電力の供給の停止、表示部254を構成するLCDのバックライトの消灯、画像処理部209やプリンタエンジンインタフェース210に供給するクロック信号の停止が含まれる。
【0063】
次に、ステップS702では、CPU201はセルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット0に値“1”をライトする。この処理によりクロックイネーブル信号CKEはLレベルになり、RAM251はセルフリフレッシュ状態になる。また、クロックイネーブル信号CKEがLレベルになることで、クロックジェネレータ256のSSON#端子がHレベルになり、CLKOUT端子にはスペクトル拡散されていないクロック信号が出力される。これにより、クロックジェネレータ256の消費電力も低下する。
【0064】
次に、ステップS703では、CPU201はRAM251へのクロックを停止する処理を実行する。この処理では、クロック生成分配部213が備えるレジスタに所定の値をライトすることでプリンタコントローラASIC214からRAM251に供給されるクロック信号が停止される。
【0065】
ステップS704では、CPU201はWFI命令を実行して処理を停止する。ここまでの処理により、プリンタ100は消費電力の少ないスリープモードへの移行が完了する。また、CPU201は割り込み信号を受信するまで後続の命令の実行を停止する。この状態で、通信インタフェース205がホスト280からデータを受信、或いは、操作部253のスイッチが操作されるなどの復帰イベントが検出されると、通信インタフェース205や操作部制御回路部206は割り込みを発行する。それぞれの回路ブロックが発行した割り込みは、割り込みコントローラ(不図示)によって集線および優先順位制御をされてCPU201に割り込みが通知される。CPU201は割り込みを受信するとWFI命令の実行により開始した停止状態を終了してWFI命令を実行した次の命令、即ち、ステップS705から処理を継続する。
【0066】
ステップS705では、CPU201はRAM251へのクロック供給を開始する処理を実行する。この処理では、クロック生成分配部213が備えるレジスタに所定の値をライトすることでプリンタコントローラASIC214からRAM251にクロック信号の供給が開始される。
【0067】
次に、ステップS706では、CPU201はセルフリフレッシュ制御レジスタ601のビット0に値“0”をライトする。この処理によりクロックイネーブル信号CKEはHレベルになり、RAM251はセルフリフレッシュ状態から通常動作状態に復帰する。また、クロックイネーブル信号CKEがHレベルになることで、クロックジェネレータ256のSSON#端子がLレベルになり、CLKOUT端子にはスペクトル拡散されたクロック信号が出力される。
【0068】
ステップS707では、CPU201はプリンタをスリープモードから復帰するために各回路ブロックをスリープモード移行前の状態に戻す処理を実行する。この処理には、プリンタエンジン290への電力供給の開始、表示部254を構成するLCDのバックライトの点灯、画像処理部209やプリンタエンジンインタフェース210に供給するクロック信号の再開処理が含まれる。
【0069】
なお、図7に示したフローチャートにおいて少なくとも破線で囲んだステップS702からステップS706までの処理を実行する命令コード列はROM252に格納されている。CPU201は当該ステップ群の命令の実行を開始する際には、命令が格納されているROM252のアドレスをCPU201のプログラムカウンタに設定する。
【0070】
従って以上説明した実施例に従えば、図7に示したフローチャートに従った処理を行うことにより、プリンタがスリープモードへの移行時、SDRAMのセルフリフレッシュと同期してクロックジェネレータのスペクトル拡散を停止することができる。これにより、クロックジェネレータの消費電力を低減し、スリープモードにおけるプリンタ全体としての消費電力をさらに低減することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストから受信した記録データに基いて記録媒体に記録を行う記録動作モードと、前記ホストからプリント指示の受信を待ち合わせているスタンバイモードと、装置の消費電力を低減するスリープモードとを備え、前記3つのモードの間で動作モードが移行して記録を行う記録装置であって、
装置の各部へ供給するクロック信号を生成するとともに、前記生成されたクロック信号をスペクトル拡散することが可能なクロック生成手段と、
装置全体の動作状態を監視する監視手段と、
装置全体の動作を制御するCPUと、
少なくとも前記記録データを格納する、前記クロック生成手段により生成されたクロック信号により動作する、DRAMとを有し、
前記CPUは、前記スタンバイモードにおいて、前記監視手段による監視中に、所定の時間、記録動作に関係する動作が検出されない場合、前記クロック生成手段により生成されるクロック信号をスペクトル拡散されない信号にするよう前記クロック生成手段を制御するとともに、前記DRAMへのクロック信号の供給を停止して、前記スリープモードに移行するよう制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記スリープモードにおいて、前記監視手段が、記録動作に関係する動作を検出した場合には、前記CPUは前記DRAMへのクロック信号の供給を再開するとともに、前記クロック生成手段により生成されるクロック信号をスペクトル拡散された信号にするよう前記クロック生成手段と制御して、前記スリープモードから復帰するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記DRAMはSDRAMであり、前記SDRAMはセルフリフレッシュ状態と通常動作状態の状態を有し、
前記スリープモードへの移行する時には前記セルフリフレッシュ状態となり、前記スリープモードからの復帰する時には前記通常動作状態になることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録装置は、前記ホストからの記録データを受信して画像処理を行うとともに、前記記録装置の全体を制御するプリンタコントローラと、前記プリンタコントローラにより処理された記録データに基づいて前記記録媒体に記録を行うプリンタエンジンとを含み、
前記プリンタコントローラは、ユーザに情報を表示するためのバックライトを備えたLCDを有しており、
前記スリープモードへ移行する時には、前記CPUはさらに、前記プリンタエンジンや前記バックライトへの電力供給を停止するよう制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記CPUはWFI命令を実行することが可能であり、
前記スリープモードへ移行する時、前記CPUも命令の実行を割り込み信号の受信まで停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
ホストから受信した記録データに基いて記録媒体に記録を行う記録動作モードと、前記ホストからプリント指示の受信を待ち合わせているスタンバイモードと、装置の消費電力を低減するスリープモードとを備え、前記3つのモードの間で動作モードが移行して記録を行う記録装置の制御方法であって、
装置全体の動作状態を監視し、
前記スタンバイモードにおいて、前記監視中に、所定の時間、記録動作に関係する動作が検出されない場合、装置の各部へ供給するために生成されるクロック信号をスペクトル拡散されない信号にするようクロックジェネレータを制御するとともに、少なくとも前記記録データを格納するDRAMへのクロック信号の供給を停止して、前記スリープモードに移行するよう制御することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
前記スリープモードにおいて、記録動作に関係する動作を検出した場合には、前記DRAMへのクロック信号の供給を再開するとともに、前記クロックジェネレータにより生成されるクロック信号をスペクトル拡散された信号にするよう前記クロックジェネレータを制御して、前記スリープモードから復帰するよう制御することを特徴とする請求項6に記載の記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88948(P2013−88948A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227433(P2011−227433)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】